説明

低粘度エチレン系共重合体を含有するゴム組成物およびゴム成形品

【課題】従来技術の問題点を解消した、有用な反応性可塑剤として使用できる新規材料を含有するゴム組成物を提供すること。
【解決手段】低粘度エチレン系共重合体(L)5〜50重量部と、高粘度エチレン系共重合体(H)95〜50重量部〔ただし、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計は100重量部である〕と、架橋剤とを含むゴム組成物であって、前記低粘度エチレン系共重合体(L)および高粘度エチレン系共重合体(H)が、特定の要件を満たすことを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルによって抽出されることなく、良好な成形加工性と物性を付与できる反応性可塑剤を含有するゴム組成物に関する。より詳しくは本発明は、優れた架橋反応性と物性を有し、十分な可塑化効果を示す低粘度エチレン系共重合体を含むゴム組成物、ならびにそれから得られるゴム成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムやエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、主鎖に不飽和結合を持たないため、共役ジエン系のゴムと比較して耐候性、耐熱性および耐オゾン性に優れる。
【0003】
そのため、これらの共重合体ゴムを含むゴム組成物、該組成物の架橋体、および該組成物の発泡体が、上記性質を利用して、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品およびゴム引布等のゴム製品に広く用いられている。
【0004】
特に、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、非共役ポリエンに由来する二重結合が架橋反応に関与でき、架橋反応を起こすことによりゴム製品においてより優れた強度とゴム弾性を達成することができるので、広く使用されている。
【0005】
このようなエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを得ることが可能な触媒として様々な触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
従来は、重合のための触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒が使用されていた。そして触媒についての研究が進み、前記の特許文献1で提案されているような、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒が開発され、非常に立体規則性の高いポリマーの合成が可能になった。
【0006】
これにより、よりゴム製品に適した、例えばより強度に優れたポリマーの製造が可能となっている。
ところで、ゴム成形品を製造する際には、ゴム自体に一定の流動性および成形加工性が求められる。そして、上記した従来の共重合体ゴムは、一定の機械強度とゴム弾性を得るために、分子量を高くする必要があり、一般に前記の流動性や成形加工性を有していない。そこで、その共重合体ゴムにパラフィンオイルなどの鉱物油を可塑剤としてブレンドすることによって、成形時のゴムの流動性および成形加工性を高めることが行われている。
【0007】
なお、たとえば成形品が前記自動車部品、特にブレーキ部品などの場合においては、当該部品はオイル(ブレーキオイル等)と接触するため、部品から共重合体ゴムの一部または前記可塑剤がオイル中に抽出されたり、反対に部品にオイルが吸収されるというようなことがあってはならない。しかしながら、可塑剤の性質上、前記部品を構成する共重合体ゴムからの鉱物油のブリードは避けられず、それゆえ、可塑剤のオイル中(ブレーキオイル等)への一定量の抽出は避けられない。これはオイルや前記部品の品質劣化へとつながる。
【0008】
したがって、このような問題の起こらない可塑剤が望まれており、前記鉱物油の代わりとなる重合体材料の研究が広くおこなわれている。
例えば、上記したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の分子量を、可塑剤として使用できる程度にまで下げることが行われている。このようにして得られた可塑剤を上記ゴムに配合し、成形を行った後、非共役ポリエンに由来する不飽和結合を利用して架橋反応(可塑剤同士および可塑剤とゴムとの架橋反応)を起こすことにより、前記可塑剤を強固に成形品中に固定することができる。これによって、前記のオイル中への抽出の問題を回避している。
【0009】
このようなエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体型の可塑剤としてたとえば、非特許文献1に開示された可塑剤が挙げられる。
しかしこの可塑剤は、従来の触媒をベースに製造されているものと考えられ、触媒洗浄工程に多大な時間とエネルギーを要することから製造コストが高く、また塩素などの不純物を多く含むとともに着色しており、さらに分子構造の不均一さから、ベタツキが激しい、といった問題点を有している。
【0010】
また、特許文献2には、極限粘度が0.4〜1.6dl/gの共重合ゴムを使用したゴム組成物が開示されている。特許文献2には、当該組成物は自動車部品などに好適であると記載されている。
【0011】
しかしながら当該文献の明細書には、そのような極限粘度の低い共重合ゴムをどのようにして製造するのかについて何ら記載がなく、実施例においても、極限粘度が上記範囲のゴムを使用したと記載されるのみである。そのゴムをどのように製造したのかについて何ら記載がなく、また仮に市販品であるとしても、製品名やメーカー名さえも何ら示されていない。このような記載からでは、到底特許文献2において該文献が特許請求している発明に関する共重合ゴムを実際に製造・使用したと認めることはできないし、またそのような共重合ゴムは、特許文献2に実質的に開示されているとは言えない。
【0012】
さらに、特許文献3には、エポキシグラフト化電気回路要素カプセル化組成物として有用な低分子量エチレン/α−オレフィン/(任意に)非共役ポリエン共重合体が開示されている。
【0013】
当該共重合体の数平均分子量は約250〜約20000であり、このような共重合体のテトラリン中135℃で測定した固有粘度は、約0.025〜約0.6dl/gになると特許文献3には記載されている。さらに当該共重合体が、いわゆるメタロセン触媒およびアルミノキサン助触媒を使用して製造できることも特許文献3には記載されている。
【0014】
しかしながら特許文献3では、モノマー成分として非共役ポリエンを含む共重合体は全く製造されておらず、さらに前記触媒を使用することの意義については、製造された共重合体がビニリデン不飽和を示すことが記載されるのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2001−522398号公報
【特許文献2】特開2002−80662号公報
【特許文献3】特開昭62−95304号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】RUBBER WORLD、198巻、3号、8、11ページ(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記で示した従来技術の問題点を解消した、有用な反応性可塑剤として使用できる新規材料を含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、一定の要件を満たす下記の低粘度エチレン系共重合体、および高粘度エチレン系共重合体を含有するゴム組成物が、上記前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0019】
すなわち本発明のゴム組成物は、低粘度エチレン系共重合体(L)5〜50重量部と、高粘度エチレン系共重合体(H)95〜50重量部〔ただし、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計は100重量部である〕と、架橋剤とを含むゴム組成物であって、
前記低粘度エチレン系共重合体(L)は、エチレン[A]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]、および少なくとも一種の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、
(1)前記エチレン[A]に由来する構造単位が、前記共重合体(L)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれ、
(2)前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位が、前記共重合体(L)の全構造単位100モル%中、1.0〜5.0モル%含まれ、
(3)前記共重合体(L)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.25〜0.55dL/gであり、
(4)前記共重合体(L)の、以下の数式[I]で表されるインバージョン値が0.01〜0.50であり:
【0020】
【数1】

数式[I]において、βγは、前記共重合体の主鎖を構成する任意のメチレン炭素に着目したとき、当該炭素から2ボンド離れた箇所及び反対側の3ボンド離れた箇所にメチン炭素が存在するメチレン炭素の13C−NMRピークの積分値の合計を示し、ββは、主鎖を構成する任意のメチレン炭素に着目したとき、当該炭素から2ボンド離れた両側にメチン炭素が存在するメチレン炭素の13C−NMRピークの積分値の合計を示し、
前記高粘度エチレン系共重合体(H)は、エチレン[A’]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B’]、および少なくとも一種の非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、
(1’)前記エチレン[A’]に由来する構造単位が、前記共重合体(H)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれ、
(2’)前記非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位が、前記共重合体(H)の全構造単位100モル%中、0.5〜5.0モル%含まれ、
(3’)前記共重合体(H)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、1.0〜5.0dL/gである、ゴム組成物である。
【0021】
前記低粘度エチレン系共重合体(L)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は、0.30〜0.50dL/gであることが好ましく、前記エチレン[A]に由来する構造単位は、前記エチレン系共重合体(L)の全構造単位100モル%中、55〜85モル%含まれることが好ましく、前記非共役ポリエン[C]としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0022】
また、前記低粘度エチレン系共重合体(L)のインバージョン値は、0.03〜0.30であることが好ましい。
このような本発明のゴム組成物を成形することによって、上記従来技術に伴う問題点が解決されたゴム成形品が得られる。より具体的には、前記ゴム組成物を成形すると同時に、または成形した後に、架橋を行うことによって、前記ゴム成形品が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、流動性および成形加工性に優れ、また含有成分である反応性可塑剤の着色・ベタツキがなく、オイルによる抽出の非常に少ないゴム成形品を与えることのできるゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明について、ゴム組成物、およびそれから得られるゴム成形品の順に、詳細に説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、特定の低粘度エチレン系共重合体(L)と、特定の高粘度エチレン系共重合体(H)と、架橋剤とを含むことを特徴としている。以下、これら各成分について説明する。
【0025】
〔低粘度エチレン系共重合体(L)〕
前記低粘度エチレン系共重合体(L)は、エチレン[A]に由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位、少なくとも一種の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含む。以下、これらの各モノマー成分について説明する。
【0026】
<[A]エチレン>
エチレン[A]に由来する構造単位は、低粘度エチレン系共重合体(L)(以下単に「共重合体(L)」ともいう)を含む本発明のゴム組成物から得られるゴム成形品に耐低温衝撃性と優れた機械強度を与える。
【0027】
このようなエチレン[A]に由来する構造単位は、その機能を発揮させる点から、共重合体(L)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれており、好ましくは55〜85モル%含まれており、より好ましくは55〜83モル%含まれている。
【0028】
また、共重合体(L)の全構造単位中のエチレン[A]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0029】
<[B]炭素数3〜20のα―オレフィン>
炭素数3〜20のα−オレフィン[B](以下単に「α−オレフィン[B]」ともいう)に由来する構造単位は、低粘度エチレン系共重合体(L)に柔軟性(低結晶性)を与える。
【0030】
α−オレフィン[B]の炭素数は、原料コスト、共重合体(L)の機械的性質および、後述する共重合体(L)を含むゴム組成物から得られる成形品のゴム弾性の観点から、好ましくは3〜8である。
【0031】
このようなα−オレフィン[B]の例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましい。
【0032】
以上説明したα−オレフィン[B]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、α−オレフィン[B]に由来する構造単位は、本発明のゴム組成物の柔軟性と該組成物から得られるゴム成形品の耐低温衝撃性の点から、共重合体(L)の全構造単位100モル%中、通常9〜49モル%含まれており、好ましくは14〜44モル%含まれている。
【0033】
共重合体(L)の全構造単位中のα−オレフィン[B]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0034】
<[C]少なくとも一種の非共役ポリエン>
少なくとも一種の非共役ポリエン[C](以下単に「非共役ポリエン[C]」ともいう)に由来する構造単位は、低粘度エチレン系共重合体(L)に架橋反応性を与える。
【0035】
非共役ポリエン[C]は、重合性の二重結合を二つ以上(通常4個以下)有し、かつその二重結合同士が共役していなければ特に限定されないが、コストの観点から、炭素数5〜20の非共役ジエンが好ましく、炭素数5〜15の非共役ジエンがより好ましい。
【0036】
このような非共役ジエンの例としては、環状非共役ジエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエンおよびメチルテトラヒドロインデンが、鎖状非共役ジエンとして1,4−ヘキサジエンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましく用いられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が特に好ましく用いられる。
【0038】
以上説明した非共役ポリエン[C]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、非共役ポリエン[C]に由来する構造単位は、架橋反応性の点から、共重合体(L)の全構造単位100モル%中、1.0〜5.0モル%含まれており、好ましくは1.0〜4.0モル%含まれており、より好ましくは1.0〜3.5モル%含まれている。
【0039】
共重合体(L)の全構造単位中の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0040】
<低粘度エチレン系共重合体(L)>
低粘度エチレン系共重合体(L)は、以上説明したエチレン[A]、α−オレフィン[B]、および非共役ポリエン「C」に由来する構造単位を含み、前記エチレン[A]および非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が一定の範囲にある。以下、共重合体(L)の特性について説明する。
【0041】
(極限粘度[η])
低粘度エチレン系共重合体(L)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は、0.25〜0.55dL/gと非常に低く、共重合体(L)は、後述する高粘度エチレン系共重合体(H)に優れた流動性および成形加工性を与える反応性可塑剤として有用である。なお、極限粘度が0.25dL/gよりも小さいと十分な架橋反応性を示さず、一方0.55dL/gよりも大きいと、優れた流動性および成形加工性を付与できないので好ましくない。
【0042】
前記極限粘度[η]は、架橋反応性と流動性の観点から好ましくは0.25〜0.50dL/gであり、より好ましくは0.30〜0.50dL/g、更に好ましくは0.30〜0.49dL/gである。
【0043】
従来、可塑剤に用いるような低分子量(すなわち低極限粘度)のポリマーに、構造単位として非共役ポリエン由来の単位を入れることは困難であった。チーグラー・ナッタ触媒では、低分子量ポリマーを重合する反応条件において、触媒の活性種が一様でなく、非共役ポリエンの重合が均一に行われず、偏りが生じてしまうからである。
【0044】
さらに非共役ポリエンの代表であるジエン体に由来する構造単位は、ポリマーの側鎖として遊離の二重結合を有しているが、これの架橋反応性はそれほど良くない。そのため、十分な架橋反応を保証するためには、ポリマー中に一定量以上の非共役ポリエンを入れる必要があった。
【0045】
これを実現するため、非特許文献1では、比較的多くの非共役ポリエンを反応させることでポリマーを製造している。さらに該ポリマー製造手法では、触媒を除去する工程が必要となるため、長時間に及ぶ洗浄処理と熱処理が必要となり、ポリマー中への不純物の残留(例えば塩素など)や変色が問題となる。
【0046】
本発明者らは、特定のメタロセン触媒を用いることで触媒除去工程を排除し、共重合反応を実施して、非共役ポリエンが十分に取り込まれた、十分な流動性を有する程度に極限粘度の低い(すなわち分子量の低い)共重合体を製造することができることを見出した。
【0047】
このような1段階の反応で製造すること、またメタロセン触媒という分子量分布の小さい共重合体を製造することができる触媒を使用して製造することから、低粘度エチレン系共重合体(L)は、[背景技術]で述べた、非特許文献1に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が有している着色・ベタツキといった問題を有していない。また製造コストの点でも優れている。
【0048】
(インバージョン値)
低粘度エチレン系共重合体(L)は、下記数式[I]で表されるインバージョン値が0.01〜0.50という小さい範囲にあることを特徴としている。
【0049】
【数2】

例えば重合成長中の鎖にプロピレンが重合して取り込まれる場合、成長末端の炭素とプロピレンの1位の炭素とが結合する場合と、成長末端の炭素とプロピレンの2位の炭素とが結合する場合の2通りが考えられる。
【0050】
ここで、立体障害の問題や、重合に使用する触媒(メタロセン触媒)の特性から、主に前者、すなわち成長末端の炭素とプロピレンの1位の炭素とが結合する。そして、一定の確率で後者が起こるが、これをインバージョンと言い、インバージョン値は、このインバージョンが起こっている度合いを示す。
【0051】
インバージョン値を求めるため、本発明の共重合体を構成する主鎖に着目する。前記共重合体にはα−オレフィン[B]および非共役ポリエン[C]が取り込まれているため、主鎖から枝が伸びた分岐が存在し、その分岐鎖が結合した主鎖構成炭素はメチン炭素である。
【0052】
ここで、主鎖を構成するメチレン炭素に着目した場合、当該メチレン炭素の隣、あるいはより離れた箇所に前記メチン炭素が存在する。隣にある、すなわち1ボンド離れた箇所にメチン炭素が存在する場合をα、一つメチレン炭素を挟んで2ボンド離れた箇所にメチン炭素が存在する場合をβ、同様に3ボンド離れている場合をγ、4ボンド離れている場合をδ、ならびに5ボンド以上離れている場合をσと表記することにする。
【0053】
そうすると、メチン炭素は着目したメチレン炭素の両サイドに存在するので、例えばあるメチレン炭素について2ボンド離れた箇所および反対側に3ボンド離れた箇所にメチン炭素が存在する場合、そのメチレン炭素をβγと表記する。
【0054】
以下に、それぞれのメチレン炭素が、インバージョンが無い場合と有る場合とで、前記のα〜σを使用してどのようにして表記することができるのか、例を示す。
・インバージョンが無い場合
【0055】
【化1】

・インバージョン(α−オレフィンの2,1−挿入)が有る場合
【0056】
【化2】

以上より、αβ、αδおよびβγは、インバージョンが生じた箇所に認められるメチレン炭素であり、そのような炭素は、インバージョンが起こらない箇所では認められない。前記3種のメチレン炭素のうち、βγのメチレン炭素は、13C−NMRによる測定で、簡便に測定できる(27.5ppm近傍のシングルピーク)。
【0057】
一方、αα、αγ、ββ、βδおよびασは、インバージョンが起こらない箇所に認められるメチレン炭素であり、そのような炭素は、インバージョンが起こった箇所においては認められない。前記5種のメチレン炭素のうち、ββのメチレン炭素は、βγと同様に3C−NMRにより簡便に測定できる(24〜25ppm近傍のダブレットピーク)。
【0058】
したがって、βγのメチレン炭素のシグナルピークの積分値の合計と、ββのメチレン炭素のシグナルピークの積分値の合計との比(βγ/ββ)をインバージョンメチレン炭素の生成量を示す指標(インバージョン値)として設定することができる。
【0059】
一方、非共役ポリエン[C]からもインバージョンとしてカウントされるピークが生成し得るが、本発明においては前記非共役ポリエン[C]の共重合量は1.0〜5.0モル%と小さいので、インバージョン値の計算には含めないものとする。
【0060】
なお、上記インバージョンの算出にはSeger, M. R.および Maciel, G. E.のAnal. Chem. 2004, 76, 5734-5747を参考にすることができる。
また、インバージョン値を求める際の13C−NMR測定は、例えば、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回の条件にて行うことができる。
【0061】
上述の通り低粘度エチレン系共重合体(L)は、上記数式[I]で表されるインバージョン値が0.01〜0.50という小さい範囲にある。このようなインバージョン値が前記の小さい範囲にある共重合体(L)は、非常に均一な分子構造を有し、架橋反応性を与える非共役ジエンが効率よく分子鎖中に導入されているものと考えられる。分子構造の均一性の観点から、インバージョン値は好ましくは0.03〜0.30、より好ましくは0.03〜0.20である。
【0062】
(密度)
低粘度エチレン系共重合体(L)は、柔軟性の観点から、JIS K 7112に準拠して測定される密度が、850〜900kg/m3であることが好ましく、850〜890kg/m3であることがより好ましい。
【0063】
(ガラス転移温度)
低粘度エチレン系共重合体(L)のガラス転移温度(Tg)は、本発明のゴム組成物から得られるゴム成形品の耐低温衝撃性の観点から、−70〜−20℃であることが好ましく、−60〜−30℃であることがより好ましい。
【0064】
次に、以上説明した共重合体(L)の製造に使用されるメタロセン触媒およびそれを用いた重合の条件について説明する。
【0065】
<触媒>
(触媒例1)
前記メタロセン触媒としては、下記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

一般式[I]および[II]においてYは、ケイ素原子もしくは炭素原子である。
【0068】
また一般式[I]および[II]においてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0069】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
前記炭素数が1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール(aryl)基および置換アリール(aryl)基などが挙げられる。
【0070】
より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンジル基およびクミル基を挙げることができ、
メトキシ基、エトキシ基およびフェノキシ基などの酸素含有基、ニトロ基、シアノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基およびN−フェニルアミノ基などの窒素含有基、ボラントリイル基およびジボラニル基などのホウ素含有基、スルホニル基およびスルフェニル基などのイオウ含有基を含むものも前記炭化水素基の例として挙げられる。
【0071】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、そのようなハロゲン置換炭化水素基として例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基およびクロロフェニル基などを挙げることができる。
【0072】
上記ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基および炭化水素置換シロキシ基などを挙げることができる。より具体的には、例えば、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基およびジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などを挙げることができる。
【0073】
上記一般式[I]および[II]におけるR1からR4を有するシクロペンタジエニル基としては、R1からR4が水素原子である無置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、3−フェニルシクロペンタジエニル基、3−アダマンチルシクロペンタジエニル基、3−アミルシクロペンタジエニル基および3−シクロヘキシルシクロペンタジエニル基などの3位1置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジメチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基および3−トリメチルシリル−5−メチルシクロペンタジエニル基などの3,5位2置換シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、この限りではない。
【0074】
遷移金属化合物の合成のし易さ、製造コスト及び非共役ポリエン[C]の共重合能の観点から、無置換(R1〜R4が水素原子)であるシクロペンタジエニル基が好ましい。
前記一般式[I]および[II]におけるR5からR12を有するフルオレニル基としては、
5からR12が水素原子である無置換フルオレニル基、2−メチルフルオレニル基、2−t−ブチルフルオレニル基および2−フェニルフルオレニル基などの2位1置換フルオレニル基、4−メチルフルオレニル基、4−t−ブチルフルオレニル基および4−フェニルフルオレニル基などの4位1置換フルオレニル基、あるいは2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル基および3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,7位もしくは3,6位2置換フルオレニル基、2,7−ジメチル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基および2,7−ジフェニル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,3,6,7位4置換フルオレニル基、あるいは下記一般式[V−I]および[V−II]で表されるような、R6とR7とが互いに結合して環を形成し、R10とR11とが互いに結合して環を形成している2,3,6,7位4置換フルオレニル基などが挙げられるが、この限りではない。
【0075】
【化5】

【0076】
【化6】

一般式[V−I]および[V−II]中、R5、R8、R9、R12は前記一般式[I]あるいは[II]における定義と同様であり、
a、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、隣接した置換基と互いに結合して環を形成していてもよい。
【0077】
前記アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基およびn−ペンチル基を例示できる。
また、一般式[V−I]中、RxおよびRyはそれぞれ独立に炭素数1〜3の不飽和結合を有してもよい炭化水素基であり、RxがRaまたはRcが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、RyがReまたはRgが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、RxおよびRyがともに炭素数1または2の飽和あるいは不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
【0078】
上記一般式[V−I]または[V−II]で表される化合物として、具体的には、下記式[V−III]で表されるオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−IV]で表されるテトラメチルドデカヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−V]で表されるオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基、下記式[V−VI]で表されるヘキサメチルジヒドロジシクロペンタフルオレニル基、及び下記式[V−VII]で表されるb,h−ジベンゾフルオレニル基が挙げられる。
【0079】
【化7】

【0080】
【化8】

【0081】
【化9】

【0082】
【化10】

【0083】
【化11】

これらのフルオレニル基を含む上記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物はいずれも非共役ポリエン[C]の共重合能に優れるが、Yがケイ素原子である場合、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に優れる。Yが炭素原子である場合、R5からR12が水素原子である無置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に非共役ポリエン[C]の共重合能に優れる。
【0084】
重合活性については、Yがケイ素原子および炭素原子いずれの場合も、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する上記一般式[I]および[II]で表される遷移金属化合物が特に優れる。
【0085】
上記一般式[I]においてR13、R14は相互に同一でも異なってもよい。前述の通りR13、R14は炭化水素基になり得るが、その炭化水素基の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニル基、2−ナフチル基、キシリル基、ベンジル基およびm−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0086】
上記一般式[II]で表される遷移金属化合物において、Aは芳香環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、YはこのAと結合し、例えば、下記式[VI-I]に表されるシクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基、下記式[VI-II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)などのシクロメチレンシリレン基などを構成する。
【0087】
【化12】

(式[VI−I]及び[VI−II]において、●は、上記一般式[II]における(置換)シクロペンタジエニル基および(置換)フルオレニル基との結合点を表す。)
また、一般式[II]においてAはYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0088】
YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−I]に表されるシクロヘキシリデン基以外に具体的には、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基およびジヒドロインダニリデン基などを挙げることができる。
【0089】
同様に、YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)以外に具体的には、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基およびシクロヘプタメチレンシリレン基などを挙げることができる。
【0090】
上記一般式[I]および[II]においてMは、チタニウム原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはチタニウム原子またはハフニウム原子である。
一般式[I]および[II]においてQは、ハロゲン原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。
【0091】
前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
前記炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1、1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基およびベンジル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基およびベンジル基である。
【0092】
前記炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、およびs−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0093】
前記アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、t−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテートおよびベンゾエート等のカルボキシレート基、ならびにメシレートおよびトシレート等のスルホネート基等が挙げられる。
【0094】
前記孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、ならびにテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンおよび1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
【0095】
最後に、上記一般式[I]および[II]においてjは1〜4の整数であり、jが2以上の場合は、Qは互いに同一でも異なってもよい。
以上説明した遷移金属化合物の例は、特開平2011-1497号公報に挙げられている。
【0096】
前記遷移金属化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。製造方法として例えば、J.Organomet.Chem.,63,509(1996)、本出願人による出願に係る公報であるWO2006−123759号公報、WO01/27124号公報、特開2004−168744号公報、特開2004−175759号公報および特開2000−212194号公報等記載の方法が挙げられる。
【0097】
(触媒例2)
また、低粘度エチレン系共重合体(L)の製造に使用可能なメタロセン触媒として、下記一般式(X)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0098】
【化13】

式(X)中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、Mはチタンであり、Yは−NR*−であり、Z*は−SiR*2−であり、前記二つのR*はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、pおよびqのうち一方は0であり、他方は1であり、
pが0かつqが1である場合には、Mは+2の酸化状態であり、X’は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは、1,3−ペンタジエンであり、
pが1かつqが0である場合には、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルである。
【0099】
前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物としては、得られる低粘度エチレン系共重合体(L)の超低分子量成分によるフォギングおよびベタが抑制されるといった観点から、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(別名:(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン)(下記式(XI)で表される構造を有する化合物)が特に好ましい。なお、下記式(XI)で表わされる構造を有する化合物は、例えば特表2001−522398号公報に記載された方法で得ることができる。
【0100】
【化14】

前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物は、非共役ポリエン[C]の重合性に優れている。また、このようなメタロセン触媒を用いて合成される低粘度エチレン系共重合体(L)は、分子量分布および組成分布が狭く、均一な分子構造を有する共重合体である。このため、共重合体(L)を含むゴム組成物およびそれから得られる成形品は、表面外観に優れる傾向がある。
【0101】
(共触媒)
低粘度エチレン系共重合体(L)は、例えば以上挙げたメタロセン触媒を主触媒とし、ホウ素系化合物および/またはトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を共触媒として用いて合成することができる。
【0102】
前記ホウ素系化合物としては、例えば、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(s−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;
ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、およびジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩;
ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたオキソニウム塩;
ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0103】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、
LiAl(C254、LiAl(C7154、さらに
有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。
【0104】
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0105】
<重合条件>
低粘度エチレン系共重合体(L)を合成する際の反応温度は、通常−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃である。重合圧力は通常0MPaを超えて8MPa(ゲージ圧)以下、好ましくは0MPaを超えて5MPa(ゲージ圧)以下の範囲である。
【0106】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合は平均滞留時間)は、触媒濃度および重合温度などの条件によって異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。さらに、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0107】
上記のようなメタロセン触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、上記一般式[I]、[II]および[X]で示した遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-8モルになるような量で用いられる。
【0108】
前記遷移金属化合物と共に用いられる上記共触媒は、共触媒と、遷移金属化合物中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔共触媒/M〕が、通常0.1/1〜1000/1、好ましくは1/1〜500/1となるような量で用いられる。
【0109】
本発明において、共重合体(L)の製造は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0110】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述のメタロセン触媒および共触媒の存在下に、エチレン[A]、上記α−オレフィン[B]、上記非共役ポリエン[C]および任意にその他のモノマーを共重合し、エチレン[A]・α−オレフィン[B]・非共役ポリエン[C](・その他のモノマー)共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0111】
前記重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロルベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0112】
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合に供するα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。
以上説明した重合溶媒のうち、得られるエチレン系共重合体との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0113】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
例えば以上説明したようにして重合反応を実施し、反応系内にメタノールなどの酸性アルコールを添加することによって、重合反応を終了させることができる。
【0114】
重合反応により得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。具体的には、重合系内に水素を多く存在させることにより、得られるエチレン系共重合体の分子量を小さくすることができ、その結果、本発明における極限粘度の範囲の低粘度エチレン系共重合体(L)を得ることができる。さらに、重合温度をあまり高くせず、穏やかな反応条件に抑えることによって、得られるエチレン系共重合体の分子量を小さく抑え、結果、前記極限粘度の範囲を達成することができる。
【0115】
さらに、使用する共触媒の量により前記エチレン系共重合体の分子量を調節することもできる。
【0116】
〔高粘度エチレン系共重合体(H)〕
本発明のゴム組成物は高粘度エチレン系共重合体(H)(以下単に「共重合体(H)」ともいう)を含み、これに上記の低粘度エチレン系共重合体(L)が反応性可塑剤として配合される。共重合体(H)以外の他の骨格を有するゴム(例えば天然ゴムなどのジエン系ゴム)は、共重合体(L)との混合性が不十分であり、この組み合わせでは共重合体(L)による十分な可塑化効果が発現しない。
前記共重合体(H)は、エチレン[A’]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B’]、および少なくとも一種の非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位を含む。
【0117】
<[A’]エチレン>
エチレン[A’]に由来する構造単位は、高粘度エチレン系共重合体(H)に耐低温衝撃性と優れた機械強度を与える。
【0118】
このようなエチレン[A’]に由来する構造単位は、その機能を発揮させる点から、共重合体(H)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれており、好ましくは55〜85モル%含まれており、より好ましくは55〜83モル%含まれている。
【0119】
また、共重合体(H)の全構造単位中のエチレン[A’]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0120】
<[B’]炭素数3〜20のα―オレフィン>
炭素数3〜20のα−オレフィン[B’](以下単に「α−オレフィン[B’]」ともいう)に由来する構造単位は、高粘度エチレン系共重合体(H)に柔軟性(低結晶性)を与える。
【0121】
α−オレフィン[B’]の炭素数は、原料コストと機械的性質の観点から、好ましくは3〜8である。
このようなα−オレフィン[B’]の例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましい。
【0122】
以上説明したα−オレフィン[B’]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、α−オレフィン[B’]に由来する構造単位は、本発明のゴム組成物の柔軟性と当該組成物から得られるゴム成形品の耐低温衝撃性の点から、共重合体(H)の全構造単位100モル%中、通常9〜49モル%含まれており、好ましくは14〜44モル%含まれている。
【0123】
共重合体(H)の全構造単位中のα−オレフィン[B’]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0124】
<[C’]少なくとも一種の非共役ポリエン>
少なくとも一種の非共役ポリエン[C’](以下単に「非共役ポリエン[C’]」ともいう)に由来する構造単位は、高粘度エチレン系共重合体(H)に架橋反応性を与える。
【0125】
非共役ポリエン[C’]は、二重結合を二つ以上(通常4個以下)有し、かつその二重結合同士が共役していなければ特に限定されないが、コストの観点から、炭素数5〜20の非共役ジエンが好ましく、炭素数5〜15の非共役ジエンがより好ましい。
【0126】
このような非共役ジエンの例としては、環状非共役ジエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエンおよびメチルテトラヒドロインデンが、鎖状非共役ジエンとして1,4−ヘキサジエンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンが挙げられる。
【0127】
これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましく用いられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が特に好ましく用いられる。
【0128】
以上説明した非共役ポリエン[C’]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位は、架橋反応性の点から、共重合体(H)の全構造単位100モル%中、0.5〜5.0モル%含まれており、好ましくは1.0〜4.0モル%含まれている。
【0129】
共重合体(H)の全構造単位中の非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0130】
<高粘度エチレン系共重合体(H)>
高粘度エチレン系共重合体(H)は、以上説明したエチレン[A’]、α−オレフィン[B’]、 および非共役ポリエン「C’」に由来する構造単位を含み、前記エチレン[A’]および非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位の含有量が一定の範囲にある。以下、共重合体(H)の特性について説明する。
【0131】
(極限粘度[η])
高粘度エチレン系共重合体(H)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は、1.0〜5.0dL/gである。極限粘度が1.0dL/gより小さいと本発明のゴム成形品の長期のゴム弾性や耐疲労性が悪く、一方5.0dL/gより大きいと、本発明のゴム組成物の成形加工性が顕著に悪くなるので好ましくない。
前記極限粘度[η]は、ゴム弾性の観点から好ましくは1.5〜4.5dL/gである。
【0132】
(密度)
高粘度エチレン系共重合体(H)は、JIS K 7112に準拠して測定される密度が、通常850〜900kg/m3であり、好ましくは850〜890kg/m3である。
【0133】
(ガラス転移温度)
高粘度エチレン系共重合体(H)のガラス転移温度(Tg)は、通常−70〜−20℃であり、好ましくは−60〜−30℃である。
【0134】
以上説明した共重合体(H)は、例えば共重合体(L)の製造に使用するのと同様のメタロセン触媒および共触媒を用いて製造可能であり、重合条件も同様である。なお、極限粘度を高くするため、水素の使用量を減らしたり、重合温度を高くするなどされる。
【0135】
また、共重合体(H)はその他の公知の種々の方法によっても製造可能であり、例えば三井EPT4045M(三井化学株式会社製)などとして市販もされているので、容易に入手可能である。
【0136】
〔架橋剤〕
本発明のゴム組成物は、上記の共重合体(L)および(H)の他に、架橋剤を含む。前記架橋剤の例としては、加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤が挙げられる。
【0137】
<加硫剤>
前記加硫剤としては、例えば、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂およびオキシム化合物などが挙げられる。
【0138】
前記硫黄系化合物としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびジチオカルバミン酸セレンなどが好ましく、硫黄およびテトラメチルチウラムジスルフィドなどがより好ましい。
【0139】
硫黄系化合物の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部である。配合量が上記範囲内であると、得られる架橋体(ゴム成形品)の機械物性が優れるため好適である。
【0140】
前記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびt−ジブチルヒドロペルオキシドなどが好ましく、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどがより好ましい。
【0141】
有機過酸化物の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100gに対して、通常0.001〜0.05モルである。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる架橋体の機械物性が優れるため好適である。
【0142】
前記フェノール樹脂の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部である。
前記オキシム化合物の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部である。
以上説明した加硫剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
<加硫促進剤>
次に、上記加硫剤として硫黄系化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0144】
前記加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB−P(商品名;大内新興化学工業社製))、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;
ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;
アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;
2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;
ジエチルチオウレアおよびジブチルチオウレアなどのチオウレア系加硫促進剤;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;
エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22−C(商品名;三新化学工業社製))およびN,N'−ジエチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;
ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤;
その他、亜鉛華(例えば、META−Z102(商品名;井上石灰工業社製、酸化亜鉛))などが挙げられる。
【0145】
加硫促進剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.1〜20重量部である。加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上説明した加硫剤および加硫促進剤の配合量が上記範囲にあると、得られる架橋体(ゴム成形品)の機械物性が優れるため好ましい。
【0146】
<加硫助剤>
さらに、上記架橋剤の例として挙げた加硫助剤としては、p−キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系加硫助剤;
エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのアクリル系加硫助剤;
ジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌレート(例えば、M−60(商品名;日本化成社製))などのアリル系加硫助剤;
その他マレイミド系加硫助剤;
ジビニルベンゼン;
酸化亜鉛、酸化マグネシウム/亜鉛華(例えば、META−Z102(商品名;井上石灰工業社製)など)が挙げられ、その用途に応じて適宜選択することができる。
【0147】
加硫助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫助剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常1〜50重量部である。
【0148】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、以上説明した低粘度エチレン系共重合体(L)、高粘度エチレン系共重合体(H)および架橋剤を含む。
【0149】
前記共重合体(L)は、1段階の簡便な共重合反応によって製造することができ、極限粘度が低く、また熱分解をした場合に生じるような異物も含んでいないため、着色・ベタツキがなく、流動性に優れており、共重合体(H)の優れた反応性可塑剤として使用することができる。
【0150】
本発明のゴム組成物における前記架橋剤の含有量は、前述の通りその種類により変わる。さらに共重合体(L)および(H)の含有量は、ゴム弾性と耐疲労性の観点から共重合体(L)が5〜50重量部で共重合体(H)が95〜50重量部であり(ただし、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計は100重量部である)、好ましくは共重合体(L)が10〜40重量部で共重合体(H)が90〜60重量部である。
以上説明した本発明のゴム組成物は、前記共重合体(L)および(H)ならびに架橋剤に加えて、必要に応じてこれら以外のその他の成分を含有してもよい。
【0151】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、発泡剤、発泡助剤、補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、活性剤および吸湿剤等が挙げられ、本発明のゴム組成物の用途、目的等に応じて前記組成物中に配合される。
【0152】
前記発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムなどの無機系発泡剤;
N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびN,N'−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物;
アゾジカルボンアミドおよびアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジドおよび4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などのヒドラジド化合物;
カルシウムアジドおよび4,4'−ジフェニルジスルホニルアジドなどのアジド化合物などの有機発泡剤が挙げられる。
【0153】
また、それらの市販品としては、例えば、ビニホールAC−2F(商品名;永和化成工業社製)、ビニホールAC#LQ(商品名;永和化成工業社製、アゾジカルボンアミド(略号ADCA))、ネオセルボンN#1000SW(商品名;永和化成工業社製、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド(略号OBSH))、およびセルラーD(商品名;永和化成工業社製、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(略号DPT))などが挙げられる。
【0154】
前記発泡剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量の合計100重量部に対して、通常1〜70重量部である。
前記発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進または気泡の均一化などの作用を示す。このような発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸およびクエン酸などの有機酸またはその塩;
尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0155】
これらの市販品としては、例えば、セルペーストK5(商品名;永和化成工業社製、尿素)およびFE−507(商品名;永和化成工業社製、重曹)などが挙げられる。
発泡助剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、0.1〜5重量部である。
【0156】
本発明のゴム組成物には、該組成物から得られるゴム成形品の引張強度、引裂強度および耐摩耗性などの機械的性質を向上させる目的で、補強剤または無機充填剤を配合してもよい。
【0157】
前記補強剤としては、旭#55G、旭#50HGおよび旭#60G(商品名;旭カーボン社製)ならびにシースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FTおよびMTなど)などのカーボンブラック(東海カーボン社製);これらのカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理したもの;シリカ;活性化炭酸カルシウム;微粉タルクおよび微粉ケイ酸などが挙げられる。
【0158】
これらのうち、旭#55G、旭#50HG、旭#60GおよびシーストFEFなどが好ましい。
前記無機充填剤としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルクおよびクレーなどが挙げられ、なかでもタルクが好ましい。また、タルクとしては、例えば、市販のMISTRON VAPOR(日本ミストロン社製)などを用いることができる。
【0159】
補強剤または無機充填剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常30〜800重量部である。
補強剤または無機充填剤の配合量が上記範囲内にあると、本発明のゴム組成物は混練加工性に優れ、得られるゴム成形品(架橋成形体)は強度および柔軟性などの機械的性質ならびに圧縮永久歪みに優れる。
【0160】
上記軟化剤としては、プロセスオイル(例えば、ダイアナプロセスオイル PW−380、ダイアナプロセスオイル PS−430(商品名;出光興産社製))、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルトおよびワセリンなどの石油系軟化剤;
コールタールおよびコールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;
マシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油およびヤシ油などの脂肪油系軟化剤;
蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムおよびラウリン酸亜鉛などの脂肪酸またはその塩;
ナフテン酸、パイン油およびロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレンおよびクマロンインデン樹脂などの合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどのエステル系軟化剤;
その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。
【0161】
これらのなかでも、石油系軟化剤が特に好ましい。軟化剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
このような軟化剤の配合量は、その用途により適宜選択できる。軟化剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対し最大で、通常300重量部である。なお、本発明のゴム組成物から得られるゴム成形品を自動車部品用途に用いる場合には、オイル抽出を避けるため、上記の石油系軟化剤の使用は、最小限に抑えるべきである。
【0162】
本発明のゴム組成物は、通常のゴム組成物と同様に、老化防止剤を使用することにより、その製品寿命を長くすることができる。
前記老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤および硫黄系老化防止剤などの従来公知の老化防止剤が挙げられる。具体的には、フェニルブチルアミンおよびN,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどの芳香族2級アミン系老化防止剤;
ジブチルヒドロキシトルエンおよびテトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタンなどのフェノール系老化防止剤;
ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドなどのチオエーテル系老化防止剤;
ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;
2−メルカプトベンゾイルイミダゾールおよび2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩;
ジラウリルチオジプロピオネートおよびジステアリルチオジプロピオネートなどの硫黄系老化防止剤などが挙げられる。これらの老化防止剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0163】
老化防止剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.3〜10重量部である。老化防止剤の配合量が前記範囲にあると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害を起こさないため好ましい。
【0164】
上記加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ステアリン酸エステル類、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0165】
加工助剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常10重量部以下である。加工助剤の配合量が前記範囲にあると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害を起こさないため好ましい。
【0166】
上記活性剤としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、アクチングB(商品名;吉冨製薬社製)およびアクチングSL(商品名;吉冨製薬社製)などのアミン類;
ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG#4000(商品名;ライオン社製))、レシチン、トリアリレートメリテートならびに脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例えば、Struktol activator 73、Struktol IB 531およびStruktol FA 541(商品名;Scill&Seilacher社製))などの活性剤;
ZEONET ZP(商品名;日本ゼオン社製)などの過酸化亜鉛調製物;
オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド;
合成ハイドロタルサイト;
特殊4級アンモニウム化合物(例えば、アーカード2HF(商品名;ライオン・アクゾ社製))などが挙げられる。
【0167】
これらのうち、ポリエチレングリコール(例えば、PEG#4000(商品名;ライオン社製))およびアーカード2HFが好ましい。
これらの活性剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。活性剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.2〜10重量部である。
【0168】
上記吸湿剤としては、酸化カルシウム(例えば、VESTA−18(商品名;井上石灰工業社製)、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライトおよびホワイトカーボンなどが挙げられる。このうち、酸化カルシウムが好ましい。
【0169】
前記吸湿剤はその用途により適宜選択でき、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。吸湿剤の配合量は、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計100重量部に対して、通常0.5〜15重量部である。
【0170】
<ゴム組成物の特性>
以上説明した本発明のゴム組成物は、上述のごとく優れた流動性および成形加工性を付与することのできる低粘度エチレン系共重合体(L)を含んでおり、この共重合体は着色・ベタツキといった問題を有していない。
【0171】
さらに、前述のように共重合体(L)は、その製造にあたって触媒を洗浄除去する工程を経ずに製造されるので、従来可塑剤として製造されている重合体に比べて、製造コストが優れている。
【0172】
このような共重合体(L)および架橋剤を共重合体(H)に配合してゴム組成物とし、これを成形し、架橋することにより、所望のゴム成形品を得ることができる。具体的には、例えば、本発明のゴム組成物から、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品およびゴム引布等のゴム製品等の成形品を好適に得ることができる。本発明のゴム組成物から得られる種々の用途の成形品については、後により詳細に説明する。
【0173】
本発明のゴム組成物は、優れた反応性可塑剤である低粘度エチレン系共重合体(L)を含んでいるので、流動性に優れ、125℃で測定されるムーニー粘度[ML(1+4)125℃]は通常5〜40、好ましくは10〜40、より好ましくは15〜40、特に好ましくは20〜40である。
【0174】
なお前記ムーニー粘度は、例えばムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K 6300に準拠して測定することができる。
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、重合体成分と添加剤とを混合する種々の公知の方法が採用可能である。
【0175】
前記製造方法の例としては、ゴム組成物に含まれる各成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られている混練機、さらに二軸押出機のような連続混練機等を用いて混合する方法、ゴム組成物に含まれる各成分が溶解または分散した溶液を調製し、溶媒を除去する方法、等が挙げられる。
【0176】
[ゴム成形品]
以上説明した本発明のゴム組成物を成形すると同時に架橋することにより(製造法1)、または成形をした後に架橋することにより(製造法2)、本発明のゴム成形品を得ることができる。
【0177】
前記製造法1の例としては、本発明のゴム組成物を、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームまたはLCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽などを使用した種々の成形法によって所望形状に予備成形し、予備成形と同時に加熱する方法が挙げられる。
【0178】
この方法においては、上述した加硫剤を用い、必要に応じて加硫促進剤および/または加硫助剤も併用する。また、前記加熱の条件は、一般に140〜300℃、好ましくは150〜270℃で、通常0.5〜30分間、好ましくは0.5〜20分間である。このような加熱により架橋反応が起こり、低粘度エチレン系共重合体(L)は、分子同士、又は高粘度エチレン系共重合体(H)と重合反応を起こして高分子を形成し、成形品内に強固に固定され、高い強度を有するゴム成形品が得られる。
【0179】
前記ゴム組成物を成形および架橋する際は、金型を用いてもよいし、用いなくてもよい。金型を用いない場合、本発明のゴム組成物は通常連続的に成形および架橋される。
前記製造法2の例としては、前記ゴム組成物を上記成形法によって予備成形し、成形物を加硫槽内に導入して加熱する方法、および成形物に電子線を照射する方法が挙げられる。
【0180】
加硫槽内に導入して加熱する場合の加熱の条件は、上記の予備成形と同時に加熱する方法における条件と同じである。
次に、電子線を照射する方法では、予備成形されたものに0.1〜10MeVの電子線を、吸収線量が例えば0.5〜35Mrad、好ましくは0.5〜20Mradとなるように照射することによって架橋反応が起こり、上記と同じく低粘度エチレン系共重合体(L)は高分子を形成し、高い強度を有するゴム成形品が得られる。
【0181】
例えば以上説明した方法により製造される本発明のゴム成形品は、様々な分野で用いることが可能である。具体的には、前記成形品として、自動車用部品、船舶用部品、土木建築用部品、医療用部品、電気・電子機器用部品、輸送機およびレジャー用部品、ホース(ラジエータホース、ヒーターホース等)、防振ゴム、シート、各種ベルト、各種パッキン、シーリング材、ポッティング材およびコーティング材等を好適に形成することができる。
【0182】
前記自動車用部品としては、例えば、グラスランチャネル、ウェザーストリップスポンジ、ドアオープニングトリム、シール部材、グロメット、自動車エンジンのガスケット、電装部品もしくはオイルフィルターのシーリング材; イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドICのポッティング材;
自動車ボディ、自動車用窓ガラス、エンジンコントロール基板のコーティング材;
オイルパンもしくはタイミングベルトカバー等のガスケット、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシール、ミラー用の接着剤等が挙げられる。
【0183】
前記ウェザーストリップスポンジとしては、例えば、ドアウェザーストリップ、トランクウェザーストリップ、ラゲージウェザーストリップ、ルーフサイドレールウェザーストリップ、スライドドアウェザーストリップ、ベンチレーターウェザーストリップ、スライディングルーフウェザーストリップ、フロントウィンドゥウェザーストリップ、リアウィンドゥウェザーストリップ、クォーターウィンドゥウェザーストリップ、ロックピラーウェザーストリップ、ドアガラスアウターウェザーストリップおよびドアガラスインナーウェザーストリップ等が挙げられる。
【0184】
上記船舶用部品としては、例えば、配線接続分岐箱、電気系統部品もしくは電線用のシーリング材;電線もしくはガラス用の接着剤等が挙げられる。
上記土木建築用部品としては、例えば、商業用ビルのガラススクリーン工法の付き合わせ目地、サッシとの間のガラス周り目地、トイレ、洗面所もしくはショーケース等における内装目地、バスタブ周り目地、プレハブ住宅用の外壁伸縮目地、サイジングボード用目地に使用される建材用シーラント; 複層ガラス用シーリング材;道路の補修に用いられる土木用シーラント;金属、ガラス、石材、スレート、コンクリートもしくは瓦用の塗料・接着剤;粘着シート、防水シートもしくは防振シート等が挙げられる。
【0185】
上記医療用部品としては、例えば、医薬用ゴム栓、シリンジガスケットおよび減圧血管用ゴム栓等が挙げられる。
上記電気・電子機器用部品としては、例えば、重電部品、弱電部品、電気・電子機器の回路や基板のシーリング材、ポッティング材、コーティング材もしくは接着材;電線被覆の補修材;電線ジョイント部品の絶縁シール材;OA機器用ロール;振動吸収剤;グロメット;またはゲルもしくはコンデンサの封入材等が挙げられる。
【0186】
上記輸送機用部品としては、例えば、自動車、船舶、航空機および鉄道車輌等が挙げられる。
上記レジャー用部品としては、例えば、スイミングキャップ、ダイビングマスクおよび耳栓等のスイミング部材;スポーツシューズおよび野球グローブ等のゲル緩衝部材などが挙げられる。
【0187】
上記防振ゴムとしては、例えば、自動車用防振ゴム(エンジンマウント、液封エンジンマウント、ダンパープーリ、チェーンダンパー、キャブレーターマウント、トーショナルダンパー、ストラットマウント、ラバーブッシュ、バンパーゴム、ヘルパーゴム、スプリングシート、ショックアブソーバー、空気バネ、ボディマウント、バンパーガード、マフラーサポート、ゴムカップリング、センターベアリングサポート、クラッチ用ゴム、デフマウント、サスペンションブッシュ、すべりブッシュ、クッションストラットバー、ストッパ、ハンドルダンパー、ラジエーターサポーターまたはマフラーハンガー)、鉄道用防振ゴム(スラブマット、バラスマットまたは軌道マット)および産業機械用防振ゴム(エキスパンションジョイント、フレキシブルジョイント、ブッシュ、マウント)等が挙げられる。
【0188】
上記シートとしては、例えば、ルーフィングシートおよび止水シート等が挙げられる。
上記各種ベルトとしては、伝動ベルト(Vベルト、平ベルト、歯付きベルト、タイミングベルト)および搬送用ベルト(軽搬送用ベルト、円筒型ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、V型ガイド付き搬送用ベルト)等が挙げられる。
【0189】
上記シーリング材は、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、ガスメーター、電子レンジ、スチームアイロン、漏電ブレーカー用のシール材として好適に用いられる。なお、シーリング材とは、シール(封印,密封)する材料のことをいう。また、機械、電気、化学等各種工業において、接合部や接触部の水密、気密の目的で使用される材料も広義のシーリング材である。
【0190】
上記ポッティング材は、例えば、トランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、太陽電池またはテレビ用フライバックトランスをポッティングするために好適に用いられる。
【0191】
上記コーティング材は、例えば、高電圧用厚膜抵抗器もしくはハイブリッドIC等の各種回路素子;HIC、電気絶縁部品;半導電部品;導電部品;モジュール;印刷回路;セラミック基板;ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤー等のバッファー材;半導電体素子;または光通信用オプティカルファイバーをコーティングするために好適に用いられる。
【0192】
上記以外にも本発明のゴム成形品として、自動車用カップ・シール材(マスターシリンダーピストンカップ、ホイールシリンダーピストンカップ、等速ジョイントブーツ、ピンブーツ、ダストカバー、ピストンシール、パッキン、Oリング、ダイヤフラム、ダムウィンドシールド、ドアミラー用ブラケット、シールヘッドランプ、シールカウルトップ)、産業用シール材(コンデンサパッキン、Oリング、パッキン)、発泡体(ホース保護用スポンジ、クッション用スポンジ、断熱スポンジ、インシュレーションパイプ)、被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品、OA機器ロール(帯電ロール、転写ロール、現像ロール、給紙ロール)、工業用ロール(製鉄用ロール、製紙用ロール、印刷用電線ロール)、アノードキャップ、プラグキャップ、イグニッションケーブル、ランプソケットカバー、端子カバー、ワイパーブレード、各種チューブ(バキュームチューブ、タイヤチューブ)、エアスプリング、シューズソール、シューズヒール、タイヤサイドウォール、ファブリックコーティングなどの用途の成形品を好適に形成することができる。
【実施例】
【0193】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で得られた共重合体の各物性は、以下に示す方法に従い、測定した。
【0194】
〔エチレン[A]に由来する構造単位のモル量〕
1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
〔非共役ポリエン[C]に由来する構造単位のモル量〕
1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
【0195】
〔極限粘度〕
極限粘度[η]は、離合社製 全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0196】
〔インバージョン値〕
ここでのインバージョン値は、ββとβγの比(βγ/ββ)と定義し、13C−NMRスペクトルメーターにより求まるピーク積分値より、下記数式(I)で与えられる。
【0197】
【数3】

13C−NMRの条件は以下の通りである。
【0198】
測定装置:ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)
測定温度:120℃
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1
積算回数:8000回。
【0199】
〔共重合体1〕
攪拌翼を備えた容積23Lの重合器を用いて連続的に、成分[A]:エチレン、成分[B]:プロピレン、成分[C]:5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)からなる三元共重合体の重合反応を80℃にて行った。
【0200】
重合溶媒としてはヘキサン(フィード量3.4L/h)を用いて、エチレンフィード量を210g/h、プロピレンフィード量を200g/h、ENBフィード量を45g/h、および水素(H2)フィード量を12NL/hとして重合器に連続供給した。
【0201】
重合圧力(ゲージ圧)を3.6MPaに保ちながら主触媒として、上記式(XI)で表される構造を有する触媒である(t−ブチルアミド)−ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエンを用いて、供給量が0.0033mmol/hとなるよう重合器に連続的に供給した。
【0202】
また、共触媒としてトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C65)3CB(C65)4]を0.0165mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(以下「TIBA」ともいう。)を1.0mmol/hの供給量となるよう重合器に連続的に供給し、平均滞留時間を30分として反応を行った。
【0203】
このようにして、エチレン、プロピレンおよびENBからなる共重合体を、12.2重量%含む重合液を得た。重合器下部から抜き出した重合液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、フラッシュ乾燥にて共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。得られた共重合体1の物性を表1に示す。
【0204】
〔共重合体2〕
エチレンフィード量を200g/h、プロピレンフィード量を205g/h、ENBフィード量を40g/h、および水素(H2)フィード量を11.2NL/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体2の物性を表1に示す。
【0205】
〔共重合体3〕
エチレンフィード量を290g/h、プロピレンフィード量を145g/hおよびENBフィード量を34g/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体3の物性を表1に示す。
【0206】
〔共重合体4〕
ENBフィード量を18g/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体4の物性を表1に示す。
【0207】
〔共重合体5〕
エチレンフィード量を190g/h、水素(H2)フィード量を13.1NL/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体5の物性を表1に示す。
【0208】
〔共重合体6〕
エチレンフィード量を190g/h、ENBフィード量を57g/h、および水素(H2)フィード量を13.1NL/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体6の物性を表1に示す。
【0209】
〔共重合体7〕
エチレンフィード量を190g/h、プロピレンフィード量を185g/h、ENBフィード量を52g/h、および水素(H2)フィード量を9.9NL/hに変更した以外は共重合体1の合成と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体7の物性を表1に示す。
【0210】
〔共重合体8〕
液状タイプEPDM〔商品名:Trilene67(商標)、Lion copolymer社製、エチレン含量55.8mol%、ENB含量3.4mol%、[η]0.41dl/g、インバージョン値0.91〕。物性を表1に示す。
【0211】
【表1】

以下の実施例1〜3および比較例1〜5において、ゴム組成物を調製し、以下に示す測定方法により、これらおよび得られるゴム成形品の各種物性を測定した。
【0212】
〔コンパウンド粘度;ML(1+4)125℃)〕
未加硫のゴム組成物の物性試験はJIS K6300に準拠して行なった。具体的には、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、125℃において、ムーニー粘度を測定した。
【0213】
〔コンパウンドのロール加工性評価〕
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、ゴム成分100重量部(低粘度エチレン系共重合体(L)である種々の共重合体(共重合体1〜8)35重量部と、高粘度エチレン系共重合体(H)である三井EPT4045M 65重量部とからなる。三井EPT4045Mは三井化学株式会社製で、エチレン[A’]に由来する構造単位が56.9モル%、非共役ポリエン[C’](5−エチリデン−2−ノルボルネン)に由来する構造単位が2.3モル%、135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が1.64dL/g、インバージョン値が0.11である)に対して、加硫助剤として「酸化亜鉛2種」(商品名;堺化学工業株式会社製)を5重量部、加工助剤としてステアリン酸を1重量部、補強剤として「旭#60G」(商品名;旭カーボン株式会社製、カーボンブラック)を80重量部、参考例にはさらに軟化剤として「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名;出光興産株式会社製)を30重量部追加して混練した。混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間であり、混練排出温度は140〜170℃であった。
【0214】
次いで、混練物が温度40℃となったことを確認した後、6インチオープンロールを用いて前記混練物100gをロールに巻きつけ、その際の状態を観察するとともに、ロールからナイフを用いてコンパウンドを切り出す際のハンドリング性を以下の基準により評価した。
○:ロールへの良好な巻付き性を示し、ロールから容易にコンパウンドを剥がすことできる
×:バギング、または粘着により、安定的にコンパウンドが巻きつかず、ロールからコンパウンドを剥がすことができない。
巻きつけ条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙は0.5mmとした。
【0215】
〔ゴム成形品の調製〕
前記〔コンパウンドのロール加工性評価〕で説明したのと同様の原料を用いて同様の操作により、混練物を調製した。
【0216】
次いで、前記混練物が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて混練物(混練物中の前記ゴム成分の重量を100重量部とする)に加硫促進剤として「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)を0.5重量部、加硫促進剤として「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業株式会社製)を1.0重量部、加硫剤としてイオウを1.5重量部混練した。混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15、ロール間隙は2mmとして混練時間10分間で分出しした。
【0217】
次にこの混練物について、プレス成形機を用いて160℃で20分間加硫を行って、厚み2mmのゴムシートを調製した。得られたゴム成形品について、引張り試験、硬さ試験、抽出性試験、耐オゾン試験を下記方法により行った。
【0218】
〔引張り試験〕
ゴム成形品について、JIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、破断時強度(TB)および破断伸び(EB)を測定した。
【0219】
〔硬さ試験〕
ゴム成形品硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0220】
〔抽出性試験〕
ゴム成形品より2cm四方の試験片を打ち抜き、試験片の重量を測定した後、トルエン150ml中で、試験温度37℃、試験時間72hrで浸漬させた。その後取り出した試験片をドラフト内で1hr放置後さらに真空乾燥機において乾燥温度80℃、乾燥時間2hrで乾燥処理を行い、取り出したあと室温にて30分放置後、試験片重量を測定した。試験後重量より試験前重量を引いて試験前重量で割った値より重量変化率を求めた。
【0221】
〔耐オゾン試験〕
ゴム成形品について、JIS K6259に従い、測定温度40℃、オゾン濃度50±5pphm)、試験時間72hrの条件で耐オゾン試験を行い、ゴム成形品の表面粘着性の有無を側定した。試験前と比較して表面状態が同じ場合を○、粘着性(ベタ)が認められる場合を×とした。
【0222】
〔実施例1〕
本発明のゴム組成物およびゴム成形品は、次のような製造方法によって得た。
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、ゴム成分100重量部[(高粘度エチレン系共重合体(H);三井EPT4045M(三井化学株式会社製)65重量部と、低粘度エチレン系共重合体(L);共重合体1 35重量部とからなる)に対して、加硫助剤として「酸化亜鉛2種」(商品名;堺化学工業株式会社製)を5重量部、加工助剤としてステアリン酸を1重量部、補強剤として「旭#60G」(商品名;旭カーボン株式会社製、カーボンブラック)を80重量部、参考例にはさらに軟化剤として「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名;出光興産株式会社製)を30重量部混練した。混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い混練排出温度は152℃であった。
【0223】
次いで、混練物が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて前記混練物に加硫促進剤として「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)を0.5重量部、加硫促進剤として「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業株式会社製)を1.0重量部、加硫剤としてイオウを1.5重量部混練した。混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙は2mmとして混練時間10分間で分出しした。
【0224】
次にこの混練物について、プレス成形機を用いて160℃で20分間加硫を行って、厚み2mmのゴムシートを調製した。得られたゴム成形品について、上記の引張り試験、硬さ試験、抽出性試験および耐オゾン試験を上記方法により行った。ゴム組成物物性、およびゴムシート成形品の各物性値を表2に示す。
【0225】
〔実施例2〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体2に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0226】
〔実施例3〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体3に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られた組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0227】
〔比較例1〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体4に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0228】
〔比較例2〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体5に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0229】
〔比較例3〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体6に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0230】
〔比較例4〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体7に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0231】
〔比較例5〕
低粘度エチレン系共重合体(L)を、共重合体8に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたゴム組成物の評価結果、およびゴムシート成形品の物性を表2に示した。
【0232】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粘度エチレン系共重合体(L)5〜50重量部と、高粘度エチレン系共重合体(H)95〜50重量部〔ただし、共重合体(L)の重量と共重合体(H)の重量との合計は100重量部である〕と、架橋剤とを含むゴム組成物であって、
前記低粘度エチレン系共重合体(L)は、エチレン[A]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]、および少なくとも一種の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、
(1)前記エチレン[A]に由来する構造単位が、前記共重合体(L)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれ、
(2)前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位が、前記共重合体(L)の全構造単位100モル%中、1.0〜5.0モル%含まれ、
(3)前記共重合体(L)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.25〜0.55dL/gであり、
(4)前記共重合体(L)の、以下の数式[I]で表されるインバージョン値が0.01〜0.50であり:
【数1】

(数式[I]において、βγは、前記共重合体の主鎖を構成する任意のメチレン炭素に着目したとき、当該炭素から2ボンド離れた箇所及び反対側の3ボンド離れた箇所にメチン炭素が存在するメチレン炭素の13C−NMRピークの積分値の合計を示し、
ββは、主鎖を構成する任意のメチレン炭素に着目したとき、当該炭素から2ボンド離れた両側にメチン炭素が存在するメチレン炭素の13C−NMRピークの積分値の合計を示す。);
前記高粘度エチレン系共重合体(H)は、エチレン[A’]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B’]、および少なくとも一種の非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、
(1’)前記エチレン[A’]に由来する構造単位が、前記共重合体(H)の全構造単位100モル%中、50〜90モル%含まれ、
(2’)前記非共役ポリエン[C’]に由来する構造単位が、前記共重合体(H)の全構造単位100モル%中、0.5〜5.0モル%含まれ、
(3’)前記共重合体(H)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、1.0〜5.0dL/gである、ゴム組成物。
【請求項2】
前記低粘度エチレン系共重合体(L)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.30〜0.50dL/gであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エチレン[A]に由来する構造単位が、前記エチレン系共重合体(L)の全構造単位100モル%中、55〜85モル%含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記非共役ポリエン[C]が、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記低粘度エチレン系共重合体(L)のインバージョン値が0.03〜0.30であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を成形して得られるゴム成形品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を成形すると同時に、または成形した後に、架橋を行うことにより得られるゴム成形品。

【公開番号】特開2012−207087(P2012−207087A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72624(P2011−72624)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】