説明

低粘性の化学線硬化性基含有アロファネートの製造方法

【課題】低粘性の放射線硬化性アロファネートを供給する方法を提供する。
【解決手段】0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、1)A)NCO基含有化合物と、B)ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含む混合物(その中に10〜45mol%のヒドロキシエチルアクリレートが含まれる)とを反応させることによって、放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを調製し、2)アロファネート化触媒および第三級アミンの存在下、NCO基含有化合物の更なる添加なしに、同時にまたは続いて、NCO基含有ウレタンを反応させることを含み、A)からの化合物のNCO基と、B)からの化合物のOH基との比が、1.45:1.0〜1.1:1.0である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線への暴露時に重合を伴って反応するエチレン性不飽和活性化基含有ポリイソシアネートの低粘性反応生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性化二重結合を有する被覆系の化学線(例えば、紫外線、赤外線またはその他の電子線)による硬化は、既知であり、産業において確立されている。それは、被覆技術において最も迅速な硬化方法の1つである。この原理に基づく被覆組成物は、例えば、放射線または化学線−硬化性または硬化可能な系と称されている。
【0003】
粘度調節のため、可能な限り少量の有機溶媒を使用すべきである、または全く使用すべきではないという、現代の被覆系に課せられた環境上および経済上の要求のため、既に低粘性である被覆剤原料を使用することに対する要求が存在する。長年にわたってこの目的のために知られてきたのは、とりわけEP−A 0 682 012に記載されているようなアロファネート構造を含有するポリイソシアネートである。
【0004】
産業において、これらの物質は、一価または多価アルコールと、多量の過剰な脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートとの反応によって調製される(GB−A 994 890、EP−A 0 000 194またはEP−A 0 712 840参照)。この反応の後、減圧下での蒸留によって未反応ジイソシアネートを除去する。DE−A 198 60 041によれば、この方法は、ヒドロキシアルキルアクリレートのような活性化二重結合を含有するOH官能性化合物を用いても実施され得るが、特に低モノマー含有生成物の調製に関して問題が生じる。十分に低い残留イソシアネート含有量(0.5重量%未満の残留モノマー)を得るためには、蒸留工程を135℃までの温度で実施しなければならないので、精製工程中でさえ、熱開始により、二重結合は重合を伴って反応できる。これは、理想的な生成物がもはや得られないことを意味する。
【0005】
モノマー含有量が低いアロファネート含有ポリウレタンベース放射線硬化性バインダーの製造方法は、EP−A 0 867 457およびUS−A 5 739 251に記載されている。しかしながら、これらのバインダーは、活性化二重結合を含有せず、代わりに非反応性アリルエーテル基(構造:R−O−CH−CH=CH)を含有する。従って、所望の紫外線反応性を導入する反応性希釈剤(アクリル酸の低分子量エステル)を添加する必要がある。
【0006】
ウレタンおよびイソシアネート以外のイソシアネート誘導体から間接的にアロファネートを調製する試みも多く存在している。例えば、EP−A 0 825 211は、オキサジアジントリオンからアロファネート構造を合成する方法を記載しているが、活性化二重結合を含有する放射線硬化性誘導体については言及していない。放射線硬化性系の特定の態様への転用は、WO 2004/033522に記載されている。
【0007】
もう1つの方法は、アロファネート構造を与えるためのウレトジオンの開環であり(Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium 2001, 第28回、第405〜419頁およびUS−A 2003 0153713参照)、これも既に成功裏に放射線硬化性系に転用されている(WO 2005/092942)。
【0008】
両方法は、出発材料としてグレードが高い原料を必要とし、副生成物を豊富に含むアロファネート生成物しか導かない。
【0009】
US 5 777 024は、活性化二重結合を含有するヒドロキシ官能性モノマーとアロファネート変性イソシアヌレートポリイソシアネートのイソシアネート基との反応による、低粘性放射線硬化性アロファネートの製造方法を記載している。アロファネート基を介して結合している基は飽和されているので、より高い官能性の可能性はない。
【0010】
EP−B 694 531は、放射線硬化性基を含有する親水化アロファネートを製造するための多段法を記載している。しかしながら、このケースでは、まず、NCO−およびアクリレート−官能性ウレタンを調製し、該ウレタンを、親水化し、その後、更なるNCO−およびアクリレート−官能性ウレタンの添加に続いてアロファネート化する。アロファネート化のための処理温度として、100〜110℃の温度が指定されている。
【0011】
最後に、EP−A 1 645 582では、単純ジイソシアネートから出発し、ヒドロキシ官能性アクリレートとの反応により、生成物の蒸留なしに低粘性アロファネートを導く方法が提供された。しかしながら、同方法の欠点は、入手するのが難しいアンモニウム塩を用いた場合しか十分な反応速度が達成されないことである。加えて、記載されている生成物の粘度は、例えばEP−A 0 825 211に記載の方法によって得ることができるアロファネートの粘度ほど低くない。
【0012】
EP 1 645 582に記載の方法の場合には、適当な塩基性亜鉛触媒を用いることにより、より低い粘度が達成され得る。それにも拘わらず、粘度の改良がなお必要とされている。
【特許文献1】EP−A 0 682 012
【特許文献2】GB−A 994 890
【特許文献3】EP−A 0 000 194
【特許文献4】EP−A 0 712 840
【特許文献5】DE−A 198 60 041
【特許文献6】EP−A 0 867 457
【特許文献7】US−A 5 739 251
【特許文献8】EP−A 0 825 211
【特許文献9】WO 2004/033522
【特許文献10】US−A 2003 0153713
【特許文献11】WO 2005/092942
【特許文献12】US 5 777 024
【特許文献13】EP−B 694 531
【特許文献14】EP−A 1 645 582
【非特許文献1】Proceedings of the International Waterborne, High-Solids, and Powder Coatings Symposium 2001, 第28回、第405〜419頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、EP−A 1 645 582に記載されているように低粘性の、化学線によって架橋可能なアロファネート(放射線硬化性アロファネート)が供給される方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
EP−A 1 645 582から出発し、特定のヒドロキシアルキルアクリレートの混合物をこのようなアロファネートの合成のために使用する場合、この種の放射線硬化性アロファネートにおいて、粘度の更なる低下を達成し得ることが見出された。EP−A 1 645 582が同様に低粘性アロファネートの問題を扱っているという事実にも拘わらず、EP−A 1 645 582は、基本的に、これらのヒドロキシアルキルアクリレートの使用は記載しているが、粘度に対するある種の混合物の著しい粘度低下の影響を記載していない。
【0015】
従って、本発明は、0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、
1)A)1種以上のイソシアネート基含有化合物、
B)ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含む混合物(その中に10〜45mol%のヒドロキシエチルアクリレートが含まれる)、
C)任意に更なる、NCO反応性基を含有する非放射線硬化性化合物を、
D)任意に触媒の存在下、
反応させることによって、放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを調製し、
2)E)アロファネート化触媒、および
F)任意に第三級アミンの存在下、
イソシアネート基含有化合物の更なる添加なしに、同時にまたは続いて、NCO基含有ウレタンを反応させる
ことを含み、A)からの化合物のNCO基と、B)および使用する場合はC)からの化合物のOH基との比が、1.45:1.0〜1.1:1.0である、方法を提供する。
【0016】
本発明は更に、
a)本発明の方法によって得ることができる1種以上の放射線硬化性アロファネート、
b)任意に、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含有せず、遊離またはブロックトイソシアネート基を含有する、1種以上のポリイソシアネート、
c)任意に、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含有し、場合により遊離またはブロックトNCO基を含有してよい、a)の化合物とは異なる他の化合物、
d)任意に、1種以上の活性水素含有イソシアネート反応性化合物、
e)1種以上の開始剤、
f)任意に溶媒、および
g)任意に助剤および添加剤
を含んでなる被覆組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
成分B)に、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含んでなる混合物を使用し、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートの混合物中のヒドロキシエチルアクリレートの画分が、20〜40mol%である場合、本発明の方法は有利である。
【0018】
成分B)に、100mol%の範囲がヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートの混合物からなる混合物を使用する場合、本発明の方法は有利である。
【0019】
成分A)に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンが存在する場合、本発明の方法は有利である。
【0020】
A)からの化合物のNCO基と、B)および使用する場合はC)からの化合物のOH基との比が、1.35:1.0〜1.3:1.0である場合、本発明の方法は有利である。
【0021】
最終生成物が0.2重量%未満のNCO含有量を有するようになるまでアロファネート化反応を実施する場合、本発明の方法は有利である。
【0022】
本発明は更に、本発明の方法によって得ることができる放射線硬化性アロファネートを提供する。
【0023】
本発明はまた、被覆剤、塗料材料、接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用配合物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂およびシーラントの製造のための、本発明の方法によって得ることができる放射線硬化性アロファネートの使用を提供する。
【0024】
本発明は更に、本発明の方法によって得ることができる放射線硬化性アロファネートを使用して得られた被覆剤で被覆された基材を提供する。
【0025】
好ましくは、A)からの化合物のNCO基と、B)および使用する場合はC)からの化合物のOH基との比は、1.43:1.0〜1.2:1.0、より好ましくは1.35:1.0〜1.3:1.0である。
【0026】
適当なイソシアネート含有化合物A)は、芳香族、脂肪族および脂環式ポリイソシアネートを包含する。適当なポリイソシアネートは、800g/mol未満の数平均分子量を有する式Q(NCO)[式中、nは2〜4の数であり、Qは、芳香族C〜C15炭化水素基、脂肪族C〜C12炭化水素基または脂環式C〜C15炭化水素基である。]で示される化合物である。例えば、以下のものからなる群からのジイソシアネートが適当である:2,4−/2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリイソシアナトノナン(TIN)、ナフチルジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート=IPDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(THDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、3−イソシアナトメチル−1−メチル−1−イソシアナトシクロヘキサン(MCI)、1,3−ジイソオクチルシアナト−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−2−メチルシクロヘキサンおよびα,α,α’,α’−テトラメチル−m−または−p−キシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびこれらの化合物からなる混合物。
【0027】
同様に、ウレトジオン(例えば、Bayer MaterialScience社(ドイツ国レーフエルクーゼン)製Desmodur(登録商標)N3400)またはイソシアヌレート(例えば、Desmodur(登録商標)N3300(高粘度型)またはDesmodur(登録商標)N3600(低粘性型)、共にBayer MaterialScience社(ドイツ国レーフエルクーゼン)製)を形成するための、上記イソシアネートのそれ自身との反応生成物または上記イソシアネートの互いの反応生成物は、イソシアネート含有化合物A)として適当である。
【0028】
プレポリマーを形成するための、上記イソシアネートと他のイソシアネート反応性化合物との反応生成物は、イソシアネート含有化合物A)として更に適当である。このようなイソシアネート反応性化合物は、特に、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよび多価アルコールのようなポリオールである。ポリオールとして、同様に、比較的高分子量のヒドロキシル化合物、および少量の低分子量のヒドロキシル化合物を使用することができる。
【0029】
従って、成分A)の化合物は、本発明の工程に直接挿入され得るか、または、任意の前駆体から出発して、本発明の方法が実施される前に予備反応によって調製され得る。
【0030】
成分A)として、単量体ジイソシアネートを使用することが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを使用することが特に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を使用することが極めて好ましい。
【0031】
化学線は、電磁放射線、電離放射線、特に電子線、紫外線および可視光を意味する(Roche Lexikon Medizin, 第4版;Urban & Fischer Verlag, ミュンヘン、1999)。
【0032】
本発明の目的のための、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基(放射線硬化性基)は、ビニルエーテル基、マレイル基、フマリル基、マレイミド基、ジシクロペンタジエニル基、アクリルアミド基、アクリル基およびメタクリル基であり、ビニルエーテル基、アクリレート基および/またはメタクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0033】
本発明の方法のための成分B)として、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートの混合物を使用する。この混合物が、10〜45mol%、好ましくは20〜40mol%の範囲の2−ヒドロキシエチルアクリレートからなり、90〜100mol%までの対応する不足画分が2−ヒドロキシプロピルアクリレートからなることが、本発明では必須である。
【0034】
また、そこに、10mol%までの他のエチレン性不飽和ヒドロキシル含有化合物が存在することもでき、その例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えばPEA6/PEM6;Laporte Performance Chemicals Ltd.(英国))、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S;Laporte Performance Chemicals Ltd.(英国))、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えばPEM63P、Laporte Performance Chemicals Ltd.(英国))、例えばTone M100(登録商標)(Dow(ドイツ国シュヴァルバッハ))のようなポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性モノ−、ジ−または可能であればより高級のアクリレート、例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであり、これらは、場合によりアルコキシル化されていてよい多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール)を反応させることによって得られる。
【0035】
同様に、B)の(10mol%までの)構成成分として適当なものは、二重結合含有酸と場合により二重結合を含有していてよいエポキシド化合物との反応から得られるアルコール、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートまたはビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物である。
【0036】
更に、同様に、場合により不飽和であってよい酸無水物と場合によりアクリレート基を含有していてよいヒドロキシ化合物およびエポキシド化合物との反応から得られる不飽和アルコールを使用することができる。これらの例は、無水マレイン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物である。
【0037】
やはり、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートの他に、更なる放射線硬化性基を使用しないことが好ましい。
【0038】
本発明の方法では、成分B)のOH官能性不飽和化合物に加えて、同様に化学線への暴露時に非反応性であり、例えば、OH、SHまたはNHのようなNCO反応性基を含有する、化合物C)を使用することができる。
【0039】
例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよび多価アルコールを、成分C)として、生成物の特性に影響を与えるために使用することもできる。ポリオールとして、同様に、比較的高分子量のヒドロキシル化合物、および少量の低分子量のヒドロキシル化合物を使用することができる。
【0040】
比較的高分子量のヒドロキシル化合物は、各々の場合に400〜8,000g/molの平均分子量を有する、ポリウレタン化学で一般的である、ヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリチオエーテル、ヒドロキシポリアセタール、ヒドロキシポリカーボネート、二量体脂肪アルコールおよび/またはエステルアミドを包含し、500〜6,500g/molの平均分子量を有するものが好ましい。好適な比較的高分子量のヒドロキシル化合物は、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリエステルおよびヒドロキシポリカーボネートである。
【0041】
使用され得る低分子量ポリヒドロキシル化合物は、下記のような、62〜399の分子量を有する、ポリウレタン化学で一般的なポリオールである:エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールおよび−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオールおよび−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたは1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドおよび4,3,6−ジアンヒドロへキシトール。
【0042】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学で一般的なポリエーテルであり、例えば、水または上記ポリオールまたは1〜4つのNH結合を有するアミンのような2〜6の価数を有する出発分子を用いて調製された、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンの付加化合物または混合付加化合物、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加化合物または混合付加化合物である。平均2〜4つのヒドロキシル基を含有し、50重量%までの組み込まれたポリエチレンオキシド単位を含有し得る、プロピレンオキシドポリエーテルが好ましい。
【0043】
適当なポリエステルポリオールの例は、多価アルコール、好ましくは二価アルコールおよび任意に付加的に三価アルコールと、多塩基酸、好ましくは二塩基カルボン酸との反応生成物を包含する。遊離ポリカルボン酸の代わりに、ポリエステルを調製するための、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルまたはそれらの混合物を使用することも可能である。ポリカルボン酸は、実際は、脂肪族、脂環式芳香族および/または複素環式であり得、必要に応じて例えばハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。その例としては、以下のものが挙げられる:アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(場合により単量体脂肪酸との混合物としての)オレイン酸のような二量体および三量体脂肪酸、ジメチルテレフタレート、またはビス−グリコールテレフタレート。60℃未満で溶融する、2または3つの末端OH基を含有する、ヒドロキシポリエステルが好ましい。
【0044】
考慮されるポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体(例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲン)とジオールとを反応させることによって得られる。適当なこのようなジオールの例は、以下のものを包含する:エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールおよび−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオールおよび−1,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたは1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールA、または上記ジオールの混合物。ジオール成分は、好ましくは、40重量%〜100重量%の、ヘキサンジオール、好ましくはヘキサン−1,6−ジオール、および/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を含有するヘキサンジオール誘導体を示し、その例は、DE−A 1 770 245に従って1molのヘキサンジオールと少なくとも1mol、好ましくは1〜2molのカプロラクトンとを反応させることにより得られる生成物、またはヘキサンジオール自体のエーテル化によりジ−またはトリヘキシレングリコールを得ることにより得られる生成物である。このような誘導体の製造方法は、例えば、DE−A 1 570 540から既知である。DE−A 3 717 060に記載されているポリエーテル−ポリカーボネートジオールも、極めて良好な効果のために使用され得る。
【0045】
ヒドロキシポリカーボネートは、実質上、直鎖である。しかしながら、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの組み込みの結果として、ヒドロキシポリカーボネートは、場合により少し分岐されていてもよい。この目的に適した化合物の例は、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、グリセロール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドおよび4,3,6−ジアンヒドロへキシトールを包含する。
【0046】
加えて、特に、例えば水性塗料材料のように、水性媒体からの使用が想定される場合、親水化作用を有する基を組み込むことができる。親水化作用を有する基は、事実上カチオン性またはアニオン性のいずれかであり得るイオン基、および/または非イオン親水性基である。カチオン的、アニオン的または非イオン的に分散する化合物は、例えば、スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基またはホスホネート基、或いは塩の形成によって上記基に転化し得る基(潜在的イオン基)を含有する化合物、またはポリエーテル基を含有し、存在するイソシアネート反応性基によって組み込まれ得る化合物である。好ましく適当なイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基およびアミン基である。
【0047】
イオン基または潜在的イオン基を含有する適当な化合物の例は、以下のものである:モノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、並びにモノ−およびジヒドロキシホスホン酸、またはモノ−およびジアミノホスホン酸、並びにそれらの塩、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−またはブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸の付加物(EP−A 0 916 647、実施例1)並びにそのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩;重亜硫酸ナトリウムのブト−2−エン−1,4−ジオールによる付加物、ポリエーテルスルホネート、例えばDE−A 2 446 440(第5〜9頁、式I〜III)に記載されている、2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加物、並びに親水性合成成分としてN−メチルジエタノールアミンのようなカチオン基に転化され得る構造単位。好ましいイオン化合物または潜在的イオン化合物は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を含有する化合物である。特に好ましいイオン化合物は、イオン基または潜在的イオン基として、カルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する化合物であり、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩、またはIPDIとアクリル酸の付加物(EP−A 0 916 647、実施例1)の塩、並びにジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0048】
適当な非イオン的親水化化合物は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導された単位の30重量%〜100重量%の画分を含有する。適当な化合物は、1〜3の官能価を有する直鎖構造のポリエーテル、また、一般式(I):
【化1】

[式中、RおよびRは、相互に独立に、各々、酸素および/または窒素原子によって中断されていてもよい1〜18個の炭素原子を含有する二価の脂肪族、脂環式または芳香族基であり、Rは、アルコキシ末端ポリエチレンオキシド基である。]
で示される化合物を包含する。
【0049】
非イオン的親水化化合物は、例えば、適当なスターター分子をアルコキシル化することにより常套法で得ることができるような、一分子あたり平均5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含有する一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns EncycloPaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, ワインハイム、第31〜38頁)。
【0050】
適当なスターター分子の例は、以下のものである:飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各種異性体)またはヒドロキシルメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシ−メチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなジエチレングリコールモノアルキルエーテル)、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えば、フェノール、クレゾール(各種異性体)またはメトキシフェノール(各種異性体))、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、および複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール)。好ましいスターター分子は飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0051】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらは、アルコキシル化反応において順不同でまたは混合物として使用され得る。
【0052】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、単独のポリエチレンオキシドポリエーテル、またはアルキレンオキシド単位全体の少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%がエチレンオキシド単位からなる混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0053】
特にイオン基含有親水化剤を使用する場合、触媒D)および特にE)の作用へのその影響を調べる必要がある。この理由のため、親水化剤として非イオン性化合物が好ましい。
【0054】
触媒成分D)の適当な化合物は、有機錫化合物、亜鉛化合物またはアミン触媒のような当業者にそれ自体知られているウレタン化触媒を包含する。例として挙げることができる有機錫化合物は、以下を包含する:二酢酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫、ジブチル錫ビス−アセトアセトネート、および例えばオクタン酸錫のようなカルボン酸錫。記載した錫触媒を、場合により、アミノシランまたは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのようなアミン触媒と組み合わせて使用してもよい。亜鉛化合物として、例えば、亜鉛アセチルアセトネート、またはオクタン酸亜鉛を使用できる。
【0055】
好ましくは、ジラウリン酸ジブチル錫またはオクタン酸亜鉛を、D)のウレタン化触媒として使用する。
【0056】
本発明の方法において、触媒成分D)は、使用される場合は、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%の量で使用される。
【0057】
アロファネート化触媒E)として、それ自体当業者に既知のアロファネート化触媒を使用することができ、その例は以下を包含する:亜鉛塩オクタン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネートおよび亜鉛2−エチルカプロエート、またはテトラアルキルアンモニウム化合物、例えば、N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルヘキサノエートまたはコリン2−エチルヘキサノエート。オクタン酸亜鉛を使用することが好ましい。
【0058】
ここで、本発明の目的のための用語「オクタン酸亜鉛」は、工業用異性体混合物も包含し、同様に、様々な異性体オクタン酸塩は、C〜C19脂肪酸の亜鉛塩の画分も含み得る。使用され得る好ましい製品の例は、Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22、またはGoldschmidt GmbH(ドイツ国エッセン)製Tegokat(登録商標)620である。
【0059】
アロファネート化触媒は、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.001重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0060】
基本的に、D)によるウレタン化反応に対してさえアロファネート化触媒E)を使用することができ、二段階の手順を一段階の反応に単純化することができる。
【0061】
アロファネート化触媒E)は、一回分を、一度に、または何回かに分けて、或いは連続して添加し得る。一度に添加することが好ましい。
【0062】
好ましいオクタン酸亜鉛をアロファネート化触媒として使用する場合、アロファネート化反応は極めてゆっくりと、しばしば不完全に進行し得るので、この場合、成分F)として第三級アミンを使用することが好ましい。適当な第三級アミンは、好ましくは少なくとも9個の炭素原子を含有し、芳香族基だけでなく脂肪族基も存在することができ、それらは互いに架橋していてもよい。アミンは好ましくは更なる官能基を含有しない。適当な化合物の例は、N,N,N−ベンジルジメチルアミン、N,N,N−ジベンジルメチルアミン、N,N,N−シクロヘキシルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N−トリベンジルアミン、N,N,N−トリプロピルアミン、N,N,N−トリブチルアミン、N,N,N−トリペンチルアミンまたはN,N,N−トリヘキシルアミンである。本発明では、N,N,N−ベンジルジメチルアミンの使用が好ましい。
【0063】
また、使用される場合、第三級アミンは、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.01重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0064】
アロファネート化反応は、好ましくは、生成物のNCO含有量が0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満になるまで実施される。
【0065】
基本的に、アロファネート化反応の終了後、残留NCO基含有物と例えばアルコールのようなNCO反応性化合物とは反応することができる。これにより、特に低いNCO含有量を有する生成物が得られる。
【0066】
触媒D)および/またはE)を、当業者に既知の方法によって支持材料に適用することもでき、それらを不均一触媒として使用することもできる。
【0067】
本発明の方法では、任意の所望の時点で、溶媒または反応性希釈剤を使用することができる。
【0068】
適当な溶媒は、それらの添加から本発明の方法の終了までの時間、本発明の方法の生成物中に存在する官能基に対して不活性である。如何なる溶媒も添加しないことが好ましいが、適当な溶媒は、例えば、塗料産業において使用されている溶媒、例えば、炭化水素、ケトンおよびエステル、例えば、トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドである。
【0069】
反応性希釈剤として、紫外線硬化の過程において、同様に(共)重合し、従ってポリマーネットワークに組み込まれ、NCO基に対して不活性である化合物を使用することができる。このような反応性希釈剤は、例えば、P. K. T. Oldring(編)、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, 第2巻、1991、SITA Technology, ロンドン、第237〜285頁に例示されている。それらは、アクリル酸またはメタクリル酸、好ましくはアクリル酸と、単官能性または多官能性アルコールとのエステルであり得る。適当なアルコールの例は、以下を包含する:ブタノール(各種異性体)、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、ヘプタノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)、ノナノール(各種異性体)およびデカノール(各種異性体)、並びに脂環式アルコール(例えば、イソボルノール(isobornol)、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール)、芳香脂肪族アルコール(例えば、フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノール)、並びにテトラヒドロフルフリルアルコール。更に、これらのアルコールのアルコキシル化誘導体を使用することができる。適当な二価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオールおよびトリプロピレングリコールのようなアルコール、またはこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体である。好ましい二価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。適当な三価アルコールは、グリセロールまたはトリメチロールプロパン或いはそれらのアルコキシル化誘導体である。四価アルコールは、ペンタエリスリトールまたはそのアルコキシル化誘導体である。
【0070】
本発明のバインダーは、尚早な重合に対して安定化されなければならない。従って、成分A)またはB)の構成成分として、反応の前および/または間、重合を禁止する安定剤を添加する。これに関して、好ましくはフェノチアジンが使用される。可能な他の安定剤は、フェノール、例えば、パラ−メトキシフェニル、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンまたは2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールである。また、安定化のために、N−オキシル化合物、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド(TEMPO)またはその誘導体も適当である。また、安定剤はバインダーに化学的に組み込まれ得る。これに関して、上記種類の化合物が、特にそれらがなお更なる遊離脂肪族アルコール基または第一級または第二級アミン基を含有し、従って、ウレタン基またはウレア基によって、成分A)の化合物に化学的に結合できる場合、適当である。この目的に特に適当なものは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンN−オキシドである。
【0071】
対照的に、他の安定剤、例えば、HALS(HALS=ヒンダードアミン光安定剤)の種類からの化合物が、余り好ましくはないがE)に使用される。なぜなら、それらは、このような有効な安定化を与えず、その代わりに、不飽和基の「クリーピング」ラジカル重合を導き得ることが知られているからである。
【0072】
安定剤は、それらが触媒D)およびE)の影響下で安定であり、反応条件下、本発明の方法の成分と反応しないように選択されるべきである。そのような反応は、安定化特性の損失を導き得る。
【0073】
尚早な重合に対して反応混合物、特に不飽和基を安定化するために、酸素含有ガス、好ましくは空気を、反応混合物中におよび/または反応混合物上を流通させることができる。イソシアネートの存在下、望まれていない反応を避けるために、ガスが極めて低い含水量を有することが好ましい。
【0074】
一般に、安定剤を本発明のバインダーの製造中に添加し、終了時、長期間の安定性を達成するために、フェノール安定剤を用いて安定化を再度行い、場合により反応生成物を空気で飽和させてよい。
【0075】
本発明の方法では、安定剤成分は、典型的に、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.01重量%〜2.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜1.0重量%の量で使用される。
【0076】
本発明の方法は、100℃以下、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜100℃、特に60〜90℃の温度で行う。
【0077】
本発明の方法の一方または両方の段階を、例えば、スタティックミキサー、押出機または配合機の中で連続的に行うか、或いは、例えば、撹拌反応器の中でバッチ式で行うかは重要ではない。
好ましくは、本発明の方法は、撹拌反応器の中で行う。
【0078】
反応の過程は、反応容器に取り付けられた適当な測定装置を用いて、および/または取り出した試料の分析に基づいて、モニターすることができる。適当な技術は、当業者に既知である。それらは例えば、粘度測定、NCO含有量の測定、屈折率の測定、OH含有量の測定、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外線分光法(IR)および近赤外線分光法(NIR)を包含する。存在する遊離NCO基(脂肪族NCO基について約ν=2,272cm−1の領域)についてのIR分析、並びにA)、B)および使用される場合はC)からの未反応化合物についてのGC分析が好ましい。
【0079】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIに基づく不飽和アロファネートは、好適には、100,000mPas以下、より好ましくは70,000mPas以下の23℃での剪断粘度を有する。
【0080】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIに基づく不飽和アロファネートは、好適には、600〜3,000g/mol、より好ましくは750〜1,500g/molの数平均分子量Mを有する。
【0081】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネートは、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の遊離ジ−および/またはトリイソシアネートモノマーを含有する。
【0082】
本発明の放射線硬化性アロファネートは、被覆剤、塗料および接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用配合物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂およびシーラントを製造するために使用され得る。しかしながら、紫外線硬化のケースで、接着接合またはシールする場合、互いに接合またはシールされる2つの基材のうち少なくとも1つが紫外線に対し透過性であることが必要である。換言すると、それは一般に透明でなければならない。電子線の場合、電子の十分な透過が確実とされるべきである。塗料および被覆剤への使用が好ましい。
【0083】
本発明は更に、
を含んでなる被覆組成物を提供する。
【0084】
成分b)のポリイソシアネートは、それ自体当業者に既知である。本発明では、場合によりイソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基および/またはイミノオキサジアジントリオン基で変性されていてよい、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物を使用することが好ましい。
【0085】
この場合、NCO基はブロックされていてもよく、使用されるブロッキング剤は、成分A)の記載に関連して既に示した化合物である。
【0086】
成分c)の化合物は、特に以下のような化合物を包含する:好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づき、場合によりイソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基および/またはイミノオキサジアジントリオン基で変性されていてもよく、活性水素を含有するイソシアネート基反応性官能基を含有しない、ウレタンアクリレート。
【0087】
NCO含有ウレタンアクリレートは、Bayer AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)から、Roskydal(登録商標)UA VP LS 2337、Roskydal(登録商標)UA VP LS 2396、またはRoskydal(登録商標)UA XP 2510として市販されている。
【0088】
更に、既に記載した、放射線硬化性被覆剤の分野で既知の反応性希釈剤を、c)の構成成分として使用してもよい。但し、それらは、如何なるNCO反応性基も含有しない。
【0089】
成分d)の化合物は、飽和または不飽和であり得る。NCO基と反応する化学官能基は、活性化水素原子を含有する官能基、例えば、ヒドロキシル、アミンまたはチオールである。
【0090】
飽和ポリヒドロキシ化合物が好ましく、その例は、被覆剤、接着剤、印刷インキまたはシーラントの技術から既知であり、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールである。
【0091】
不飽和ヒドロキシ官能性化合物は、例えば、放射線硬化性被覆剤の分野で既知であり、30〜300mgKOH/gのOH価を有する、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレートおよびアクリル化ポリアクリレートである。
【0092】
更に、d)の構成成分として、既に記載した、放射線硬化性被覆剤の分野で既知の反応性希釈剤を、それらがNCO反応性基を含有するならば、使用することができる。
【0093】
ラジカル重合のための成分e)の開始剤として、熱的におよび/または放射線によって活性化され得る開始剤を使用することができる。これに関して、紫外線または可視光によって活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は、それ自体既知の化合物であり、市販されており、一分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とに区別されている。適当な(I型)系は、芳香族ケトン化合物、例えば、第三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは上記タイプの混合物である。更に、(II型)開始剤、例えば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、例えばビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノンおよびα−ヒドロキシアルキルフェノンが適当である。
【0094】
開始剤は、フィルム形成バインダーの重量に基づいて、0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の量で使用され、個々の物質として、または度々得られる有利な相乗効果の故に互いに組合せて、使用することができる。
【0095】
電子線を紫外線の代わりに使用する場合、光開始剤は必要とされない。当業者に知られているように、電子線は、熱放射によって発生し、電位差によって加速される。そして、高エネルギー電子は、チタン箔を通過し、硬化されるバインダー上に誘導される。電子線硬化の一般原理は、"Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints", 第1巻、P K T Oldring(編)、SITA Technology, ロンドン、イングランド、第101〜157頁、1991に詳細に記載されている。
【0096】
また、活性化二重結合の熱硬化の場合、これは、熱分解性ラジカル開始剤を添加することによって起こり得る。当業者に既知であるように、例えば、ペルオキシ化合物、例えば、ジアルコキシジカーボネート(例えばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、ジアルキルペルオキシド(例えばジラウリルペルオキシド)、芳香族または脂肪族酸の過エステル(例えば過安息香酸tert−ブチルまたはtert−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノエート)、無機ペルオキシド(例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム)、有機ペルオキシド(例えば、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、過酸化ジクミル、tert−ブチルヒドロペルオキシド)、またはアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)が適当である。また、高置換1,2−ジフェニルエタン(ベンズピナコール)、例えば、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール、またはそれらのシリル化誘導体も可能である。
【0097】
また、紫外線および熱的に活性化可能な開始剤の組合せを使用することもできる。
成分e)の助剤および添加剤は、上記タイプの溶媒を含む。
【0098】
更に、硬化被覆フィルムの気候安定性を高めるために、e)は、同様に、紫外線吸収剤および/またはHALS安定剤を含むことができる。その組合せが好ましい。紫外線吸収剤は、390nm以下の吸収範囲を有すべきであり、例えば、トリフェニルトリアジン型(例えばTinuvin(登録商標)400(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ国ランペルトハイム)))、ベンゾトリアゾール(例えばTinuvin(登録商標)622(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ国ランペルトハイム)))またはシュウ酸ジアニリド(例えばSanduvor(登録商標)3206(Clariant(スイス国ムテンツ)))が挙げられ、樹脂固体に基づいて0.5重量%〜3.5重量%で添加される。適当なHALS安定剤は、市販されている(Tinuvin(登録商標)292またはTinuvin(登録商標)123(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ国ランペルトハイム))またはSanduvor(登録商標)3258(Clariant(スイス国ムテンツ)))。好ましい量は、樹脂固体に基づいて0.5重量%〜2.5重量%である。
同様に、e)は、顔料、染料、充填材、均展材および脱蔵添加剤を含むことができる。
【0099】
更に、必要に応じて、NCO/OH反応を促進するためのポリウレタン化学から既知の触媒を、e)中に存在させることができる。これらは、例えば、錫塩または亜鉛塩或いは有機錫化合物、錫石鹸および/または亜鉛石鹸、例えば、オクタン酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫、酸化ジブチル錫、または第三級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。
【0100】
被覆される材料への本発明の被覆組成物の適用は、被覆剤技術において既知の一般的な方法、例えば、噴霧、ナイフ塗布、ロール塗り、流し込み、浸漬、スピン塗布、はけ塗りまたは吹き付けによって、或いは印刷技術、例えば、スクリーン、グラビア、フレキソ印刷またはオフセット印刷および転写法によって行う。
【0101】
適当な基材は、例えば、木材、金属(特にワイヤーエナメル加工、コイル被覆、缶被覆または容器被覆の用途に使用される金属を含む)、およびプラスチック(フィルムとしてのプラスチックを含む)、特に、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDM、およびUP(DIN 7728T1に従った略語)、紙、皮革、繊維製品、フェルト、ガラス、木材、木質材料、コルク、無機結合基材、例えば、木質ボードおよび繊維セメントスラブ、電子組立部品または無機基材である。また、種々の上記材料からなる基材を被覆することもでき、または既に被覆された基材、例えば、車両、航空機またはボートおよびそれらの部品、特に車体または外装部材を被覆することもできる。また、例えば、フィルムを製造するために、被覆組成物を基材に一時的に適用し、次いで、それらを部分的または完全に硬化させ、場合によりそれらを再び引き離すこともできる。
【0102】
硬化のため、例えば、存在する溶媒を、フラッシングによって完全にまたは部分的に除去することができる。
【0103】
後にまたは同時に、場合により必要であり得る熱および光化学硬化操作を、順次または同時に行うことができる。
【0104】
必要に応じて、熱硬化を、室温または高温で、好ましくは40〜160℃で、より好ましくは60〜130℃で、極めて好ましくは80〜110℃で行うことができる。
【0105】
光開始剤をd)に使用する場合、放射線硬化は、好ましくは高エネルギー放射線、即ち紫外線または日光、例えば波長200〜700nmの光への暴露によって、或いは高エネルギー電子(電子線、150〜300keV)の照射によって、起こる。使用される光または紫外線の放射線源は、例えば、高圧または中圧水銀ランプである。水銀蒸気は、ガリウムまたは鉄のような他の元素でのドープにより変性することができる。レーザー、パルスランプ(UV閃光ランプの名称で知られている)、ハロゲンランプまたはエキシマーエミッターも、同様に可能である。UVスペクトルの一部が放出されないように、それらの設計の固有の部分として、または特殊なフィルターおよび/または反射体の使用によって、エミッターを備えてもよい。例えば職業衛生のため、例えば、UV−C、またはUV−CおよびUV−Bに属する放射線は、フィルターで除去され得る。エミッターを固定様式で設置して、放射される材料を機械的装置によって放射線源を通過して移動させるようにしてもよく、または、エミッターを可動性にして、放射される材料を硬化の過程で静置しておいてもよい。UV硬化の場合、架橋に通常十分である放射線量は、80〜5,000mJ/cmの範囲内である。
【0106】
所望ならば、照射は、酸素の不存在下、例えば、不活性ガス雰囲気下または低酸素雰囲気下で実施することもできる。適当な不活性ガスは、好ましくは、窒素、二酸化炭素、希ガスまたは燃焼ガスである。更に、照射は、放射線透過媒体で塗膜を覆うことによって実施してもよい。このような媒体の例は、例えば、ポリマーフィルム、ガラス、または水のような液体である。
【0107】
放射線量および硬化条件に依存して、使用される任意の開始剤のタイプおよび濃度を、当業者に既知の方法で変化させることができる。
【0108】
特に好ましくは、固定設置状態の高圧水銀ランプを用いて硬化を実施する。そこで、光開始剤を、被覆剤の固体に基づいて、0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.2重量%〜3.0重量%の濃度で使用する。これらの被覆剤を硬化するため、200〜600nmの波長範囲で測定された、200〜3,000mJ/cmの放射線量を使用することが好ましい。
【0109】
d)において熱的に活性化可能な開始剤を使用する場合、硬化は、温度を上昇させることによって実施される。この場合、熱エネルギーは、放射線、熱伝導および/または熱対流によって、被覆剤中に導入され得る。被覆剤技術において一般的な赤外線ランプ、近赤外線ランプおよび/またはオーブンを用いることが慣例である。
【0110】
適用されたフィルム厚(硬化前)は、典型的には、0.5〜5,000μm、好ましくは5〜1,000μm、より好ましくは15〜200μmである。溶媒を使用する場合、溶媒は、適用後、硬化前に通常の方法によって除去される。
【実施例】
【0111】
全てのパーセントは、他に記載のない限り重量による。
NCO含有量(%)の測定は、DIN EN ISO 11909に基づいて、ブチルアミンとの反応に続く0.1mol/lの塩酸による逆滴定によって行った。
粘度測定は、ISO/DIS 3219:1990に従って、47.94s−1の剪断速度で、プレート−プレート回転粘度計(Haake社(ドイツ国)製Roto Visko 1)を用いて行った。
実験を行った時点で最も一般的であった23℃の周囲温度を、RTと称する。
【0112】
実施例1:本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、20mol%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、80mol%のヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気送り装置(2l/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた2,000ml容のスルホン化用ビーカーに、470.4gのヘキサメチレンジイソシアネート(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmodur(登録商標)H)および100mgのフェノチアジンを導入し、この初期導入物を70℃まで加熱した。50mgのジラウリン酸ジブチル錫(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmorapid(登録商標)Z)を添加し、まず、437.14gのヒドロキシプロピルアクリレートを、次いで、97.52gのヒドロキシエチルアクリレートを、温度が80℃を超えないような速度で滴加した。続いて、5.83%の理論NCO値に到達するまで撹拌を続けた。そして、3.98gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで混合物を約5分間撹拌した。続いて、3.02gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、混合物を80℃で(約20時間)撹拌した。これにより、0.11%の残留NCO含有量および34,200mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0113】
実施例2:本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、40mol%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、60mol%のヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気送り装置(2l/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた2,000ml容のスルホン化用ビーカーに、470.4gのヘキサメチレンジイソシアネート(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmodur(登録商標)H)および100mgのフェノチアジンを導入し、この初期導入物を70℃まで加熱した。50mgのジラウリン酸ジブチル錫(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmorapid(登録商標)Z)を添加し、まず、327.85gのヒドロキシプロピルアクリレートを、次いで、195.05gのヒドロキシエチルアクリレートを、温度が80℃を超えないような速度で滴加した。続いて、5.89%の理論NCO値に到達するまで撹拌を続けた。そして、3.98gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで混合物を約5分間撹拌した。続いて、3.0gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、混合物を80℃で(約20時間)撹拌した。これにより、0.03%の残留NCO含有量および30,100mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0114】
実施例1および2に対する比較例:本発明に従わないアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、100mol%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気送り装置(0.5l/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた500ml容の四ツ口ガラス製フラスコに、230.45gのヘキサメチレンジイソシアネート(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmodur(登録商標)H)および50mgのフェノチアジンを導入し、この初期導入物を70℃まで加熱した。25mgのジラウリン酸ジブチル錫(Bayer MaterialScience社(レーフエルクーゼン)製Desmorapid(登録商標)Z)を添加し、267.18gのヒドロキシプロピルアクリレートを、温度が80℃を超えないような速度で滴加した。次いで、5.78%の理論NCO値に到達するまで撹拌を続けた。2.0gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで混合物を約5分間撹拌した。続いて、1.5gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、混合物を80℃で(約16時間)撹拌した。これにより、0.16%の残留NCO含有量および39,500mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0115】
実施例3:本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.43:1、40mol%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、60mol%のヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気送り装置(2l/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた2,000ml容のスルホン化用ビーカーに、470.4gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび100mgのフェノチアジンを導入し、この初期導入物を70℃まで加熱した。50mgのジラウリン酸ジブチル錫を添加し、まず、306.0gのヒドロキシプロピルアクリレートを、次いで、182.04gのヒドロキシエチルアクリレートを、温度が80℃を超えないような速度で滴加した。続いて、7.33%の理論NCO値に到達するまで撹拌を続けた。そして、3.98gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで混合物を約5分間撹拌した。続いて、2.88gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、混合物を80℃で(約20時間)撹拌した。これにより、0.09%の残留NCO含有量および57,500mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0116】
実施例3に対する比較例:本発明に従わないアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.43:1、100mol%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気送り装置(0.5l/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた500ml容の四ツ口ガラス製フラスコに、238.48gのヘキサメチレンジイソシアネートおよび50mgのフェノチアジンを導入し、この初期導入物を70℃まで加熱した。25mgのジラウリン酸ジブチル錫を添加し、258.06gのヒドロキシプロピルアクリレートを、温度が80℃を超えないような速度で滴加した。次いで、7.19%の理論NCO値に到達するまで撹拌を続けた。1.88gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで混合物を約5分間撹拌した。続いて、1.5gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ドイツ国ランゲンフェルト)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、混合物を80℃で(約20時間)撹拌した。これにより、0.19%の残留NCO含有量および79,000mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0117】
実施例5:被覆組成物および塗料材料
実施例1からの生成物の一部を、3.0%の光開始剤Darocur(登録商標)1173(光開始剤、Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(ドイツ国ランペルトハイム)の市販品)と十分に混合した。90μmの間隙を有するボーンドクターブレード(bone doctor blade)を用いて、混合物をガラス板上に薄いフィルムの形態で適用した。紫外線照射(中圧水銀ランプ、IST Metz GmbH(ドイツ国ニュルティンゲン)製、750mJ/cm)によって、硬くて透明な塗膜を得た。これは、フィルムに対する500gの力での10回の往復ストロークによるスチールウール(等級0/0/0)を用いた引掻きによって、ほとんど損傷しなかった。
【0118】
【表1】

【0119】
実施例の全てにおいて、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートをある割合で用いて製造された本発明のバインダーの粘度は、2−ヒドロキシプロピルアクリレートしか用いずに製造された比較例の粘度より、有意に低い。
【0120】
本発明を説明の目的で上に詳細に記載したが、このような詳細は、その目的のためだけのものであり、特許請求の範囲によって限定され得る以外は、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、当業者によってそれが変更され得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、
1)A)1種以上のイソシアネート基含有化合物、
B)ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含む混合物(その中に10〜45mol%のヒドロキシエチルアクリレートが含まれる)、
C)任意に更なる、NCO反応性基を含有する非放射線硬化性化合物を、
D)任意に触媒の存在下、
反応させることによって、放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを調製し、
2)E)アロファネート化触媒、および
F)任意に第三級アミンの存在下、
イソシアネート基含有化合物の更なる添加なしに、同時にまたは続いて、NCO基含有ウレタンを反応させる
ことを含み、A)からの化合物のNCO基と、B)および使用する場合はC)からの化合物のOH基との比が、1.45:1.0〜1.1:1.0である、方法。
【請求項2】
成分B)が、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートを少なくとも90mol%含む混合物であり、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートの混合物中のヒドロキシエチルアクリレートの量が、20〜40mol%である、請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項3】
成分B)が、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートの混合物100mol%である、請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項4】
成分A)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項5】
A)からの化合物のNCO基と、B)および使用する場合はC)からの化合物のOH基との比が、1.35:1.0〜1.3:1.0である、請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項6】
反応生成物が0.2重量%未満のNCO含有量を有するようになるまでアロファネート化反応を実施する、請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって得られた放射線硬化性アロファネート。
【請求項8】
被覆剤、塗料材料、接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用配合物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂およびシーラントからなる群から選択される、請求項7に記載の放射線硬化性アロファネートを含んでなる組成物。
【請求項9】
a)1種以上の請求項7に記載の放射線硬化性アロファネート、
b)任意に、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含有せず、遊離またはブロックトイソシアネート基を含有する、1種以上のポリイソシアネート、
c)任意に、化学線への暴露時にエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含有し、場合により遊離またはブロックトNCO基を含有してよい、a)の化合物とは異なる他の化合物、
d)任意に、1種以上の活性水素含有イソシアネート反応性化合物、
e)1種以上の開始剤、
f)任意に溶媒、および
g)任意に助剤および添加剤
を含んでなる被覆組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の放射線硬化性アロファネートを用いて得られた被覆剤で被覆された基材。

【公開番号】特開2009−62533(P2009−62533A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−215334(P2008−215334)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】