説明

低粘性の接着性ポリマー水性分散体

本発明は、ポリクロロプレンに基づく低モノマー含有量での低粘性のポリマー水性分散体、その製造方法および接触接着剤としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンに基づく低粘性で低モノマー含有量のポリマー水性分散体、並びにその製造方法および接触接着剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーまたはポリウレタンをベースとする通常の先行技術による接触接着剤は主に、両方の被接着基材に適用し、乾燥させる溶媒性接着剤である。蒸発および引き続く圧力下での2つの基材の接合の後、接合操作直後に高い初期強度を有する接着構造が得られる。必要に応じて、次いで、さらなる物理および/または化学架橋反応は結合強度を増加させる。このようにして用いる通常の市販接着剤処方物は、ポリマー、樹脂、可塑剤、老化防止剤および他の通常の処方助剤からなる10〜25重量%の有機成分固体濃度、0〜25重量%の塩および充填剤のような無機成分固体濃度、および65〜90重量%の溶媒成分固体濃度を有する。
【0003】
環境、経済ならびに労働安全性および衛生学上の理由から、相当する溶媒非含有接着剤処方物に加工することができる適当な水性分散体の必要性が増加しつつある。
【0004】
先行技術は、ポリクロロプレンラテックスおよびある程度天然ゴムラテックスに基づく溶媒非含有接触接着剤処方物である。いずれも、溶媒性接触接着剤と同じ方法により、基材の両側に通常適用されることを特徴とする。処方物によって特有の、過剰の水が蒸発/揮発する最小限の乾燥時間または蒸発時間の後、基材は接合されるかまたは圧力もしくはせん断下で結晶化する接着フィルムと一緒にプレスされ、このようにして高い初期強度が生じる。次いで、溶媒性接触接着剤のために、他の化学および/または物理的方法を接着強度を向上させるために用い得る。通常の変法は、例えば、ブロックトイソシアネートまたは潜在的反応性イソシアネートによる後架橋、および処方成分としての適切な樹脂の使用である。
【0005】
溶媒性接触接着剤と比較して溶媒非含有水性接触接着剤処方物についてしばしば記載される欠点は、水の蒸発/揮発により、フィルム処方物に十分な被接着面上の固体部の濃度を得るために必要とされる比較的長い時間である。高い初期固体濃度は、被着体上で接着性分散体のフィルムが形成される時間、接着面の接触により首尾よく結合する前の待ち時間を低減する。
【0006】
記載される他の欠点は、接着剤のフィルムに含まれる水に起因する、溶媒性と比べるとより低い接合操作直後の初期強度である。これらの問題を解決するために、先行技術は、非常に高い固形分での水性接着剤処方物を推奨する。従って、接触接着剤としての使用のために、極めて高い固形濃度が、用いるポリクロロプレンラテックス中に望まれる。このため、接着剤用途を対象としたポリクロロプレンラテックスは、40重量%を越える固体濃度でのみ市販されている。可能な固体濃度は、ラテックスの最も高い密度の粒子充填によって単に物理的に制限される。通常のポリクロロプレンラテックスは、50重量%〜60重量%の範囲で固体(ポリクロロプレン)部を有する。
【0007】
水性接着剤処方物の適用の後の直接接合および接着結合として定義される、所望のウェット−オン−ウェット結合は、1成分法または2成分法に従って接着剤を適用することによって達成することができる。極めて高い濃度のラテックス(固形分>50重量%)は、このような操作に首尾よく用いられる。
【0008】
1成分法の場合には、接着剤処方物は、基材への適用直後に、処方物が破壊(break)し(フィルムを形成し)およびプレスまたは結合することができるような方法で、電解液および/またはpHの低下によるラテックスのさらなる不安定化により調節される。
【0009】
この目的のために、先行技術では、樹脂酸または不均一化された樹脂酸により安定化された、好適にはアニオン性のポリクロロプレンラテックスが、一価および/または二価の無機塩、例えばKCl、NaCl、ZnCl、ZnO、MgO等を用いて、および/または有機酸および/または無機酸、例えばHCl、ホウ酸、リン酸、炭酸水素または酢酸、グリシン、他のアミノ酸、酒石酸、クエン酸またはそのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩等により、せん断または圧力下で、これらが直接崩壊し、フィルムを形成し、圧力下で結合することができる点まで不安定化される。
【0010】
US−A2003/221778に記載されているように、 向上した初期強度は、急速な結晶性ラテックスの選択によりおよび/またはポリクロロプレンラテックスと組み合わせて30部までのコロイド溶解シリカの使用により得られる。さらに、種々の他の処方成分、例えば樹脂、ポリウレタンラテックス、アクリレートラテックスおよびSBRラテックス、有機溶媒、有機溶媒ならびに付加的な酸化安定剤、防カビ剤、殺菌剤、イオン性および非イオン性界面活性剤、さらなる充填剤、および水性分散体のための通常の処方成分等は処方成分であり得る。
【0011】
45重量%を越える接着剤処方物の固体濃度では、該処方物は反応性かつ高粘性である。従って、ウェット−オン−ウェット結合を、処方物側のより低い貯蔵/HClおよびせん断安定性の欠点を伴うが、より素早く実施する。
【0012】
WO01/34718は、35重量%未満の固体濃度を開示する。しかしながら、これらのポリクロロプレンラテックスは、ホウ酸またはアミノ酸または有機酸と組み合わせて、アクリル酸エステルもしくは酢酸エチルビニル、またはロジン分散体を含んでなる。
【0013】
さらに、先行技術は、2成分法によって適用することができる接着剤の処方物である。これらの接着剤は通常、アニオン安定化ポリクロロプレンラテックスおよび活性成分から構成される。活性成分の別の貯蔵は、第1に処方されたポリクロロプレンラテックス成分部での高い貯蔵安定性および第2に高反応性(基材への適用に続く接着剤処方物の急速な遮断)、およびその結果として、成分が組み合わされた後の顕著なウェット−オン−ウェット接着剤特性の目的を達成させる。この方法の種々の態様として、「スプレーミックス」法によって被着体へ接着剤を塗布する可能性が存在する。この方法の場合では、接着剤と凝固剤はスプレーガン内へ別々に送給され、噴霧ジェット内で混合され、空中でもおよび/または被着体上で凝固する。この場合には、ラテックス成分の粘度は、スプレー法による接触接着剤の塗布について通常であるように、200〜3000mPasの粘度に設定される。用いることができる活性成分として、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属イオンおよび/または、例えば三価アルミニウムイオンおよび/または有機/無機酸の濃縮水溶液が挙げられる。
【0014】
この方法の欠点は、高いコストおよび装置の複雑さ、悪影響を受けやすい混合操作、および平衡水膨潤を増加させるかまたは酸を用いる場合には、低pH水準を設定する場合金属基材との接合において腐食を生じさせることができる得られる接着剤中での通常高いイオン濃度である。該方法は、比較的時間を消費しおよびコストが大きいため、経済的観点から不十分である。
【0015】
特定の貯蔵時間の間、全ての市販されている、樹脂酸により安定化されたアニオン性ポリクロロプレン分散体は、著しい量のHClを放出する。予備処方された反応性1成分接着剤処方物の場合には、このさらなる負担は、pH低下が処方物をさらに不安定化するので、保存寿命のさらなる制限を生じさせる。
【0016】
上記の問題、ならびにエージングした接着剤処方物のおよび/または適用された接着剤の可能性のある得られる変色ならびに任意のpH感受性基材への遊離HClによる可能性のある酸攻撃は通常、場合によってはナノ粒子および/またはアミン性酸捕集剤、例えばヒドロキシルアミン、エタノールアミンまたは濃縮生成物およびその誘導体の形態で存在する、予備分散された二価金属酸化物(ZnO、MgO、CaO)の添加によって解決される(WO2004/106422A1)。さらに、酸化老化に対抗する老化防止剤が添加される。
【0017】
樹脂酸により安定化されたアニオン性ポリクロロプレン分散体中では、多価金属酸化物、例えばMgOおよびCaOなどの使用は、ラテックスが不安定化されるので望ましくない。種々の国では、0.24%ZnOを越える濃度は、標識化する必要があり、その両性特性により10未満のpHを有する安定性接着剤処方物を調製することをさらに困難にする。
【0018】
そのような処方物の保存寿命は、特に低粘性処方物の場合には通常短く、その結果凝固が生じる。これに対し、高粘性の処方物、例えばペースト状の処方物は、貯蔵安定性系の処方物を容易にする効果および依然として典型的である貯蔵時間を超える粘度での比較的大きい変化を有する(係数>2での増加)。変形、イオンによる安定化および上記のアミン性安定剤による安定化はいずれも水膨潤性または環境的バランスについて有利ではない。従って、例えば、0.24重量%を越える濃度でのZnOは、環境に対し有害として分類され、全ての揮発性有機成分は、処方物のTVOC(全揮発性有機濃度)値を増加させるため、厳格な環境的または曇りの制限を有する用途における使用が制限する。
【0019】
接着特性およびブラシ、ローラーによるまたは噴霧法による適用特性(フィルム形成)におけるさらなる改良を達成するために、噴霧適用のために200〜3000mPasの粘度に、延展またはローラー塗布のために1000〜10000mPasにしばしば調節される。この調節は、通常の増粘剤、例えば水溶性ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリオール、セルロース/デンプン/糖誘導体またはポリアクリルアミド等を用いて通常行われる。コロイド溶解または懸濁シリカの場合には、これは、主にZnOに基づくモノイオン/二価イオンによって、並びに水性シリカ溶液/懸濁液のコロイド安定性の転移領域における水準への処方物のpH調節によって実施される(US−A2003/221778)。このようにして増粘された接着剤処方物の粘度は、極めてpHに依存するので、実質的にはポリクロロプレンへのHClの増加する排除により粘度の長期安定性を達成することができない。
【0020】
このようにして調節された不安定化または活性化された粘性処方物の重大な欠点は同様に、接着剤の表面上で容易にスキンニングならびに調製された接着剤処方物における滲出、おり(bittiness)および凝集の通常の事例を生じさせる、高い頻度での不十分な保存寿命、粘度の安定性およびせん断安定性であり、その結果、輸送および適用におけるせん断性が生じる。さらに、例えば、EP−A0624634および2005年11月16日のドイツ連邦学会の危険性アセスメント(BfR)健康アセスメント005/2006に記載の、比較的高い濃度(5重量%まで)のZnOまたはホウ酸の使用の場合における環境的な問題を考慮する必要がある。
【0021】
さらに、約15重量%の固体部を有する希釈溶媒系接触接着剤と比較して、水性接着剤処方物の場合に約50重量%の高固体部は、接着剤の適用層は 不必要に厚いことを意味する。特定の環境では、該環境は、方法の接着剤の特性だけでなく、接着結合の経済的要素(材料の消費)にも悪影響を与える。
【0022】
噴霧法による接着剤処方物の適用は、例えば家具およびマットレス工業におけるフォーム/フォーム結合の目的のために、並びに自動車工業における積層における表面の均一な工業的湿潤並びに編織布接合および皮革接合のために、基材表面への接触接着剤の目標とされる薄い適用のための好適な技術である。この場合、「オーバースプレー」と呼ばれる問題が常に存在する。これは、目標領域の外側が接着剤処方物により湿潤され、基材試料から過剰な噴霧組成物が滲むことを意味する。
【0023】
オーバースプレーは、例えばノズル形状および圧力条件を含む、適用条件と関連して処方物の低すぎる粘度によって部分的に生じる複雑な減少である。
【0024】
低粘度は、12または30または60回転/分で室温にてブルックフィールドレオメーターを用いて測定される調製粘度と、通常の噴霧組立に生じるような極度のせん断荷重下での粘度との間での相違によって部分的に生じる。せん断依存粘性、並びにこのように特にラテックス安定性のための複雑な測定法を用いない、構造的な粘性またはチキソ性液体のための適当な噴霧条件の選択は、構造的な粘性のための適当な噴霧条件の選択はせいぜい経験的である。従って、噴霧結果の品質は高い頻度で不十分であり、オーバースプレー量は通常は多量である。しばしば、市販の通常の処方物の不十分なせん断安定性に起因してスプレーヘッドの目詰まり/粘着により、度重なる崩壊が存在する(Technology for Waterborne Coatings ACS Symposium Series、第663頁、1997年、第15章)。
【0025】
先行技術は、種々の用途のためのシリカ生成物の使用を開示している。固体SiO生成物はレオロジー特性を制御するために、充填剤または吸着剤としてしばしば用いられるのに対し、シリカゾルは主に、種々の無機物質のバインダーとして、半導体用の研磨剤としてまたはコロイド化学反応における凝集パートナーとして用いられる。例えば、EP−A0332928には、防災部品の製造において含浸層としてシリカゾルの存在下でポリクロロプレンラテックスの使用を開示する。
【0026】
US−A2003/221778はさらに、湿潤粘着性を向上させるためのシリカ/水ガラスの使用および初期強度ならびにポリクロロプレン接触接着剤処方物の最終強度の使用を開示する。さらに、粘度はpHおよびモノイオンおよび/または二価イオンを用いてシリカ懸濁液により具体的に設定される。US−A2003/221778に開示されているシリカは、低pH(<9)および高濃度の二価イオン/金属酸化物(ZnO、MgO)のいずれに対しても敏感である。粘度を設定するための通常のZnO濃度およびHCl安定性またはpH安定性と組み合わせてpK<9.5でのコロイド溶解シリカを含むポリシクロプレンラテックスに基づいて粘度および/またはラテックス安定性についての安定性処方物は、さらなる助剤乳化剤および/または安定性アクリレート分散体と組み合わせてのみ知られている(企業出版物:Dispercoll(登録商標)Cに基づくSales Aid−1Component Spray Adhesives、Bayer Material Science、2007年6月)。
【0027】
先行技術によれば、これらの無機充填剤の使用は、ポリクロロプレンラテックスの固形分を基準として約30重量部まで有利である。より高い濃度では、ZnOと組み合わせておよびpH<10での180°剥離試験における出発強度および最終強度だけでなく、処方物の長期安定性においても低下が存在する。さらに、シリカゾルのより高い濃度では、通常のZnOの増粘剤または添加剤による安定性粘度調節の可能性はもはや存在しない。それゆえ、約20重量%を越える濃度では、優位性、通常の強化充填剤並びにレオロジカル助剤としての使用のための、記載の優位性が既に失われている。
【0028】
高い初期強度の概念は、接触接着剤の定義と密接に関係している。接触接着剤は原則として、周囲温度で、周囲温度を有する基材へ適用することができる。十分に高い初期強度とは、引き続きの処理操作における接合部の滑りを防止することを確実とする、および/または接着強度および接着層の結合力未満の強度を有する結合基材の場合、概して被着体が、接合された物品に荷重がかかる場合に接着層より前に破壊されるという結果を伴う、接着剤のさらなる処理性に対して十分に高い強度を意味する。
【0029】
しばしば接触接着剤とも不正確に称されるものは、粘着剤である。しかしながら、後者は、接合操作において接着層中の即時の結晶化が存在しない点で物理的に異なるため、そのような結合が根本的に荷重下でクリープする。通常のその例は、非晶質ポリアクリレート分散体およびポリウレタン分散体、適用温度未満での非晶質ポリマーマトリックスのガラス転移点を有する処方物である。欠点は、上記のクリープであり、これはそのような生成物を用いて荷重下での永久的な接合を可能とせず、しばしば要求される初期強度を達成しない。
【0030】
不正確な記載の接触接着剤の他の例は、熱活性系、例えばいわゆるホットメルトであり、これは熱を適用するとすぐに接合しなければならず、結晶化またはガラス転移点未満での冷却の結果として冷たい接着面上で固化する。欠点は、十分な温度耐性を保証するために、場合によっては、80℃を越えるTg/Tmを有する高融点系を使用する必要があることである。感受性基材の場合には高温の使用はしばしば問題となる。さらに、消費者は、高い使用温度に対して保護されなければならない。さらに、消費者は、高い使用温度に対して保護されなければならない。噴霧系による接着剤の広範囲の適用は、接着層の急速な固化により問題となる。ホットメルト系接着剤処方物はさらに、通常硬質であり、硬化後壊れやすい。これは、快適な系、例えば家具およびマットレス等におけるその使用において欠陥となる。異なった時間がかかる複雑な操作の場合でさえ柔軟な結合操作を可能とし、並びに結合した部品の可能な再配置を可能とする十分に長い開放時間は、同様に存在しないかまたは不十分な量にのみ存在する。
【0031】
先行技術はまた、基材表面上でまず乾燥し、これらを熱活性後に組み立てることができる前にフィルムを形成しなければならないポリウレタン系接着剤分散体である。熱活性化された基材上に置かれ、次いでプレスによって適用することができる潜在性反応性フィルム/ホイルの機能性も同様である。ポリウレタン系生成物に影響を与える欠点は不十分なウェット−オン−ウェット結合強度並びに垂直面上での除外適用であるが、強度がフィルム形成および活性後にのみ得られるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/221778号明細書
【特許文献2】国際公開第01/34718号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/106422A1号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/221778号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0624634号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0332928号明細書
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】ドイツ連邦学会の危険性アセスメント(BfR)健康アセスメント005/2006、2005年11月16日
【非特許文献2】Technology for Waterborne Coatings ACS Symposium Series、第663頁、1997年、第15章
【非特許文献3】Sales Aid−1Component Spray Adhesives、Bayer Material Science、2007年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
従って、本発明の目的は、接着すべき基材への適用後、短時間(待ち時間<5分)後に、特にまだ湿潤した状態で、予備フィルム形成もなく、十分に高い初期強度(湿潤強度)でウェット−オン−ウェット接合を可能とする、環境的および経済的に有利な、老化、貯蔵およびせん断に安定性の水性接着剤組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0035】
驚くべきことに、特定のポリクロロプレン濃度および50ppm未満の残留モノマー含有量を有するポリマー分散体が上記の欠点を克服することを見出した。極めて低粘性にも拘わらず、本発明のポリマー分散体は、噴霧塗布についてオーバースプレーの傾向を示さない。本発明のポリマー分散体は、極めてかすかな特有の臭気しか示さず、得られる接着剤組成物は、顕著な温度、pH、貯蔵およびせん断安定性を有す。さらに、本発明のポリマー分散体は、その低い濃度、粘度および極度のせん断耐性により、相対的に非常に低い噴霧塗布器の汚れおよび目詰まりに対する傾向を示す。
【0036】
さらに、本発明のポリマー分散体/接着剤処方物は、潜在的な環境危険性酸捕集剤、例えばZnO等を有さないにも拘わらず、HClに対して顕著なpH安定性並びに優れたエージング安定性が注目すべき点である。
【0037】
本発明のポリマー分散体へのシリカ懸濁液の添加について、処方物の粘度がシリカ懸濁液の添加により減少することは同様に意外であった。他方、これらの生成物について既に記載のある重要な特性は、通常の接着剤処方物における増粘剤としての効果である(US−A2003/221778)。
【0038】
得られる接着剤組成物は、基材へ同等の低い層厚みで適用することができ、そのことは、経済的優位性だけではなく、健康危険性、可燃性および職業衛生学についての優位性ももたらす。低い接着剤層厚み、および典型的には非被覆性、場合によっては液滴状だけの、接着剤の適用の観点からは、衛生学上の理由により家具および室内装飾品分野において至急に要求される種類の顕著な空気および水蒸気透過性が存在する(真菌および細菌の侵入/成長の防止)。
【0039】
本発明は、50mPas未満の粘度および2時間を越えるpH安定性を有し、せん断応力が主としてせん断速度に比例することを特徴とする、40重量%以下のポリクロロプレン濃度および50ppm未満の残留モノマー含有量を含む水性ポリマー分散体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
用語「分散」および「ラテックス」は、本発明の目的のために同意的に使用する。両方の場合においては、ポリクロロプレンと組み合わせて、同意のもとでおよび同意的に、水およびポリクロロプレンが主要な成分であり、分離相に存在する、クロロプレンのフリーラジカルエマルション重合からの生成物に関する。
【0041】
ポリクロロプレンラテックスまたはそれに基づく接着剤処方物の定義は、ポリクロロプレン濃度(および100重量部に相当するポリクロロプレン濃度)を基準として50重量部までの画分で、ポリクロロプレンに加えて、例えばポリアクリレート、塩化ポリビニリデン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニルまたはスチレン−ブタジエン分散体に基づく他のポリマー成分を含む生成物に当てはめてもよい。
【0042】
全てのパーセンテージは、ポリマー分散体または接着剤処方物、すなわち、ポリマー成分を基準とし、および水性成分は重量%として理解されるべきである。
【0043】
本発明のポリマー分散体は、40%以下、好適には30%以下、より好適には25%以下のポリクロロプレン濃度、および50ppm未満、好適には30ppm未満、より好適には20ppm未満の残留モノマー含有量を有する。
【0044】
さらに、本発明のポリマー分散体は、ブルックフィールドレオメーターを、60回転/秒にて、スピンドル2で用いて測定した、50mPas未満、好適には40mPas未満、より好適には30mPas未満、極めて好適には20mPas未満の粘度を有する。
【0045】
本発明のポリマー分散体は、特別なレオロジカル特性によってニュートン液体と類似し、せん断応力は、せん断速度に大きく比例し、3以下の係数による、好適には2.5以下の係数による、より好適には2以下の係数による粘度変化は10〜1000/秒の範囲を超える
【0046】
さらに、本発明のポリマー分散体は、DIN53381、方法Bによる、2時間を越える、好適には3時間を越える、より好適には4時間を越えるpH安定性を有する。
【0047】
本発明のポリマー分散体は、さらに、1.5未満の、好適には1%未満、より好適には0.5%未満、極めて好適には0.3重量%および1重量%の間での全乳化剤濃度が注目すべきである。適当な乳化剤としては、原則的には、エマルションを十分に安定化させる全ての化合物およびこれらの混合物を使用することができ、例えば長鎖脂肪酸の水溶性塩類(特に、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩)、ロジンおよびロジン誘導体、高分子量アルコールスルフェート、アリールスルホン酸、アリールスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとに基づく非イオン性乳化剤および乳化作用を有するポリマー、例えばポリビニルアルコール等、好ましくは不均化樹脂酸のNa塩およびK塩、および以下の先行技術文献に規定の全ての不均化樹脂酸のNa塩およびK塩:DE−A2307811、DE−A2426012、DE−A2514666、DE−A2527320、DE−A2755074、DE−A3246748,DE−A1271405、DE−A1301502、US−A2234215、JP−A60/31510。
【0048】
さらに、本発明のポリマー分散体は、0.24重量%未満、好適には0重量%の亜鉛濃度が注目すべき点である。
【0049】
本発明のポリマー分散体は、10〜8、好適には9.8〜8.2、より好適には9.5〜8.5のpH、極めて好適にはpH9を有する。
【0050】
pHは、必要に応じて、通常の有機酸および/または無機酸および/またはアミノ酸および/またはNa塩およびK塩の形態でのこれらの緩衝系によって、特に好適にはグリシンによって調節し得る。
【0051】
本発明のポリマー分散体は、同様に、好適にはオリゴ官能性第二級芳香族アミンまたはオリゴ官能性置換フェノール、例えば型6−PPD(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン;Vulkanox(登録商標)、Lanxess Deutschland GmbH)、DTPD、DDA、BPH、BHT、Vulkanox(登録商標)、S.423の生成物等、またはHALS(ヒンダードアミン光安定剤)、ベンゾトリアゾール、オキサルアニリド、ヒドロキシベンゾフェノンまたはヒドロキシフェニル−S−トリアジンに基づく化合物、通常の老化/酸化防止剤/UV保護剤を含んでなる。これらは通常、水性分散体として乳化形態で組み込まれる。本発明における老化防止剤/酸化安定剤の添加は、ポリクロロプレン濃度=100部を基準として、0.1〜5重量部、好適には1〜3重量部、より好適には1.5〜2.5重量部の量である。
【0052】
本発明は同様に、まず、調節剤の規定量の添加するかどうかに拘わらず、連続的または不連続的なクロロプレンの(共)重合を水性エマルション中で実施し、その後、残留モノマーを<50ppmの水準まで除去し、次いで、必要に応じて水で希釈し、最後に、熱的に状態調節貯蔵および/また濃縮および/またはpH適合および/または通常の乳化剤で後安定化し、および必要に応じて、引き続いて水で希釈することを特徴とする、本発明のポリマー分散体を調製するための方法を提供する。
【0053】
クロロプレン100重量部を基準として0〜20重量部の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、100gのモノマーを基準として0〜1mmolの調節剤、好適には0.〜0.5mmolの調節剤による、温度0〜70℃、好適には5〜45℃、より好適には10〜25℃での、水性の、好適にはアルカリ性のエマルション中におけるクロロプレンの重合が好適であり、分散体は、ポリマーを基準として0.1重量%〜90重量%、好適には0.5重量%〜60重量の、有機溶媒に不溶性の画分を有する。
【0054】
エマルションは、11〜14、好適にはpH12〜pH13のpH濃度に設定される。活性は通常の活性剤または活性剤系により実施する。
【0055】
活性剤および活性剤系の例としては、以下のものが挙げられる:ホルムアミジンフルフィン酸、カリウムペルオキソジスルフェート、カリウムペルオキソジスルフェートおよび必要に応じて、例えばレドックスパートナーとして働くホルムアミジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩、ナトリウムスルフィット及びナトリウムジチオナイトのような化合物との銀塩(アントラキノン−β−スルホン酸のナトリウム塩)に基づくレドックス系。ペルオキシドとヒドロペルオキシドに基づくレドックス系も適当である。本発明のポリクロロプレンは、連続的およびバッチ式の両方で調製することができるが、低固形分を有するエマルションポリマーの調製に包含される向上した経済的な理由から連続的重合法が好ましい。
【0056】
例えば、「Methoden der Organischen Chemie」(XIV/l、第738頁以降参照、Georg Thieme Verlag、シュツットガルト、1961年)に記載の共重合性モノマーをクロロプレン濃度=100部を基準として20重量部までの画分で存在させる。好適な化合物は、1分子あたり3〜12個の炭素原子および1または2個の共重合性のC=C二重結合を有する化合物である。好ましい共重合性モノマーの例は、2,3−ジクロロブタジエンおよび1−クロロブタジエン、アクリロニトリル、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはエチレングリコールジメタクリレートである。
【0057】
本発明のポリクロロプレンの分子量調節のために、連鎖移動剤、例えばメルカプタン等またはキサントゲンジスルフィド等を用いることも可能である。好適な連鎖移動剤は、n−ドデシルメルカプタンおよびキサントゲンジスルフィドまたはジチオカルバメートである。
【0058】
重合は通常、50〜95%、好適には60〜80%、より好適には65〜75%のモノマー変換で終了し、添加は、例えば、フェノチアジン、tert−ブチルピロカテコールまたはジエチルヒドロキシルアミンの抑制剤として可能である。
【0059】
本発明のポリマー分散体は好適には、50〜250nm、好適には60〜200nm、より好適には70〜150nmの平均粒径を有する。
【0060】
重合後、好適には残留クロロプレンモノマーは、例えば、蒸気蒸留および/またはカラム脱気により、50ppm未満の残留濃度にまで除去する。
【0061】
貯蔵は、50℃〜110℃、好適には60〜100℃、より好適には70〜90℃の温度で、有機溶媒に不溶性の画分(ゲル画分)を少なくとも10重量%、1重量%〜60重量%、好適には5重量%〜30重量%、より好適には10重量%〜20重量%まで増加させて、実施する。
【0062】
別の可能性は、調節剤の濃度を減少させることおよび/またはモノマー変換を上昇させることによってゲル画分を達成する。上記のゲル種類は、ポリマー特性が他のゲルとは著しく異なる。
【0063】
本発明の製法のさらなる工程では、分散液中の固形分をクリーミング操作によって増加させることができる。該クリーミングは、例えば「ネオプレンラティシーズ」、ジョンC.カール、E.I.デュポン、第13頁、1964年に記載のアルギネートの添加によっておこなわれる。重合後50重量%未満の固体画分を50〜65重量%、好適には52重量%〜59重量%に増加させることは、500ppm未満が特に好適である、極めて低い塩含有量、とりわけ低いイオン含有量を有する分散体を製造するクリーミング法によって可能である。
【0064】
得られる分散体は必要に応じて、エージング、酸化および/またはUV安定性を向上させる目的のために通常の安定剤と混合させることができる。
【0065】
得られる分散体は、必要に応じて水および/またはシリカ懸濁液を用いて、本発明のポリクロロプレン濃度40重量%以下、好適には30重量%以下、より好適には25重量%以下にさらに調節し得る。
【0066】
本発明のポリマー分散体は、水中での分離粒子の懸濁液として、好適には40〜100重量部、好適には50〜90重量部、より好適には60〜80重量部のシリカ/水ガラスを含み、シリカ懸濁液の固体画分は部計算に用い、ポリクロロプレンラテックスのポリクロロプレン固体画分は=100部に設定する。
【0067】
シリカは、シリカゾル、シリカゲル、ヒュームドシリカまたは沈降シリカまたは記載のシリカの混合物に基づくシリカである。
【0068】
シリカゾルは、無定形二酸化ケイ素の水中でのコロイド溶液であり、これは二酸化ケイ素ゾルとも称されるが、通常シリカゾルと略称される。この場合、二酸化ケイ素は、表面がヒドロキシル化された球状粒子形態で存在する。コロイド粒子の粒径は、通常1〜200nmであり、粒径と関連づけられる比BET表面積(G.N.シアーズ、Analytical Chemistry、第28巻、No.12、第1981頁〜第1983頁、1956年12月によって測定)は15〜2000m/gである。SiO粒子の表面は、コロイド溶液の安定化をもたらす対応する対イオンによって調整される荷電を有する。アルカリ安定化シリカゾルは7〜11.5のpHを有しており、アルカリ化剤として、例えば少量のNaO、KO、LiO、アンモニア、有機窒素塩基、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドまたはアルカリ金属またはアンモニウムアルミネートを含んでなる。シリカゾルは準安定性コロイド溶液の弱酸性状態で存在することもできる。さらなる可能性は、表面をAl(OH)Clで被覆することによってカチオン性に処方されたシリカゾルを調製することである。シリカゾルの固形分濃度は5〜60重量%SiOである。
【0069】
例えば、分離固体の形態でのSiOベース材料、例えばヒュームドシリカまたは沈降シリカ等を本発明のポリマー分散体に用いる場合、水性SiO分散体中に分散することによって変換される。
【0070】
SiO粒子が1〜400nm、好適には5〜100nm、より好適には8〜50nmの粒度を有する水性二酸化ケイ素分散体を用いることは好適である。
【0071】
本発明の好適なポリマー分散体は、二酸化ケイ素分散体のSiO粒子が分離、非架橋一次粒子の形態で存在するポリマー分散体である。SiO粒子が粒子表面にヒドロキシル気を有することが同様に好適である。
【0072】
二酸化ケイ素水性分散体として水性シリカゾルを用いることは特に好適である。
【0073】
本発明の方法のさらなる工程では、分散体は、通常の有機酸および/または無機酸および/またはアミノ酸および/またはNa塩およびK塩の形態でのこれらの緩衝系を用いて8〜10のpHに調節し得る。
【0074】
本発明の分散体を得るためのさらなる添加剤および処方成分は、連続してバッチ操作または有利には、連続操作、例えば静的または動的ミキサーを用いて混合することによって実施することができる。
【0075】
本発明は、静的および/または動的ミキサーを用い、混合時間が1時間未満、好適には30分未満、より好適には5分未満である本発明の生成物の製造方法をさらに提供する。
【0076】
本発明のポリマー分散体を含む接着剤組成物は、本明細書によって同様に提供される。
【0077】
接着剤組成物は必要に応じて、本発明のもののほかに、通常の助剤およびアジュバント、例えば、MgOおよび/またはZnOのような金属酸化物等をさらなる酸捕集剤として含んでなる。さらなる接着剤助剤およびアジュバントの例として、充填剤、例えば微細化石英、珪砂、高分散シリカ、重石晶、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイトまたはタルク等、必要に応じて湿潤剤、例えば、ナトリウムヘキサメタホスフェートのようなポリホスフェート、ナフタレンスルホン酸、ポリアクリル酸アンモニウムまたはポリアクリル酸ナトリウム等、並びにリン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が挙げられ、フィラーは一般にポリクロロプレン濃度=100部を基準として0〜60重量%の量で、湿潤剤は一般に充填剤を基準として0〜1重量%の量で添加する。
【0078】
本発明のポリマー分散体を含む接着剤組成物は必要に応じて、他の分散体、例えば、ポリアクリレート、塩化ポリビニリデン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニルまたはスチレン−ブタジエン分散体等をポリクロロプレン(コ)ポリマー濃度=100部を基準として50重量部までの画分で含んでなる。
【0079】
さらなる可能性のある助剤は、例えば、セルロース誘導体、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体またはポリアクリル酸等の有機増粘剤を、ポリクロロプレン濃度=100部を基準として0〜3重量部の量で使用すべきであり、または、ベントナイト等の無機増粘剤をポリクロロプレン濃度=100部を基準として0〜10重量部の量で使用すべきである。
【0080】
保存のために、本発明の接着剤組成物を殺真菌剤および殺菌剤と混合することも可能である。殺真菌剤は概して、接着剤に基づいて0〜1重量%の量で使用する。適当な殺真菌剤としては、フェノール誘導体およびクレゾール誘導体および有機錫化合物が挙げられる。
【0081】
粘着性付与樹脂、例えば未変性もしくは変性天然樹脂、例えばロジンエステル、炭化水素樹脂等または合成樹脂、例えばフタレート樹脂等を必要に応じて、分散形態で接着剤組成物に添加し得る。110℃を越える軟化点を有するアルキルフェノール樹脂分散体が好適である。
【0082】
有機溶剤、例えばトルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサンまたはこれらの混合物等または可塑剤、例えばアジペート系、フタレート系またはホスフェート系可塑剤等を必要に応じて、ポリクロロプレン分散体に添加し得る。
【0083】
本発明のポリマー分散体/添加剤は、任意の通常の適用法、例えば、延展、ロール、射出および噴霧等によって基材に適用し得る;本発明の添加剤は、好適には噴霧適用によって適用される。
【0084】
本発明のポリマー分散体を含む接着剤組成物を、例えばスプレー適用、ローラー適用またはブラシ適用により基材に適用し、5分未満、好適には2分未満、より好適には1分以下のフラッシュ時間後、湿潤接着をフィルム形成前に生じさせることを特徴とする、フォームのウェット−オン−ウェット接着を製造する方法は、本発明により同様に提供される。
【0085】
特に本発明の分散体の特徴は、1時間、好適には3時間、より好適には8時間、90℃で、並びに3日、好適には5日、より好適には7日、70℃での貯蔵後、5%未満、好適には3%未満、より好適には1%未満の分離が存在しない、高温での老化安定性である。これらの条件下で、30mPas、好適には25mPas未満、より好適には20mPas未満の粘度変化が観察される。老化した生成物は、例えばスプレー適用、延展およびロール適用によってフォームを接着する目的のために接触時間を、5分を越えるまで延長することによって機能を損失させることなく用いることができる。
【0086】
本発明の分散体の他の特定の特徴は、低温安定性であり、<5℃、好適には3.5℃、より好適には2℃に冷却後、5%未満、好適には3%未満、より好適には1%未満の分離が観察されない。これらの条件下、30mPas未満、好適には25mPas未満、より好適には20mPas未満の粘度変化が観察される。せん断安定性は、1000/秒、好適には5000/秒、より好適には10000/秒のせん断速度で1分、好適には3分、より好適には5分間、凝集を形成することなく維持される。冷却生成物は、機能を損失させることなく、接触時間を5分を越えるまで延長させることによって、例えば噴霧適用、延展およびロール適用によってフォームを接着する目的のために使用することができる。
【0087】
本発明の分散体の他の特定の特徴は、長期貯蔵安定性であり、殺菌剤または殺真菌剤を添加せずとも、細菌および真菌に対する長期安定性であり、3ヶ月、好適には4ヶ月、より好適には5ヶ月後、RT(21℃と定義)で5%未満、好適には3%未満、より好適には1%未満の分離が観察されない。これらの条件下で、30mPas未満、好適には25mPas未満、より好適には20mPas未満の粘度変化が観察されない。本発明の生成物は、機能を損失させることなく、接触時間を5分を越えるまで延長することによって、例えば噴霧塗布、延展およびロール塗布によってフォームを接着する目的のために用いることができる。
【0088】
本発明の方法のある特定の特徴は、接着剤をポリクロロプレンに対して75g/m未満基材面積、好適には50g/m未満基材面積、より好適には40g/m未満基材面積で適用することができる。
【0089】
本発明の方法では、噴霧塗布は、0.5〜6バールの範囲の通常の中間圧噴霧塗布によって行うが、DIY家修繕分野においてよく知られている、市販の、加圧されていない、バッテリーまたは電源操作スプレーガンを用いることも可能である。
【0090】
本発明のポリマー分散体を含む接着剤組成物で被覆される基材も本発明により提供される。
【0091】
本発明のポリマー分散体を、同一または異なった種類の任意の所望の基材、例えば木材、紙、プラスチック、繊維、皮革、ゴムおよび無機物質、例えばセラミック、陶器または石綿セメント等を接着するために、好適にはフォームの接着に用いることができる。
【0092】
接着剤としての、延展、ロール、インクジェットおよび噴霧塗布における本発明のポリマー分散体の使用は、本発明によって同様に提供される。マットレスおよび家具/室内装飾品の接着におけるフォーム接着を製造するための、本発明のポリマー分散体の使用は、本発明によって同様に提供される。
【0093】
さらに、本発明のポリマー分散体を被着体の接着結合に用いることを特徴とする、複合材料を製造する方法も本発明によって提供される。
【実施例】
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
B)測定方法
1.分散体からのゲル含有量の決定
分散体をガラス板に適用し、窒素雰囲気下、室温で3日間乾燥させてフィルムを形成した。250mgの試料を、室温にて密閉容器中で24時間、膨潤させるか、または2.5mlのTHFに溶解する(THF1リットルあたり1gの重合抑制剤を添加)。該混合物を20000rpmで1時間、超遠心分離し、遠心分離によって分離した物質の重量画分を乾燥後決定する。
【0099】
2.粘度の決定
分散体の粘度をBayer法に従ってブルックフィールド粘度計を用いて測定する。
【0100】
スピンドルNo.2を、できる限り気泡を形成させずに、測定用の分散体に慎重に浸漬する。昇降ステージ上の容器に試料を入れ、最初に、スピンドル体が分散体から現れることなく駆動軸(左巻きに取り付けられた)に取り付けられるまでステージを上昇させる。
【0101】
さらに昇降ステージを上昇させ、スピンドルを、スピンドル軸上の浸漬溝に達するまで試料中に浸漬する。モーターのスイッチを入れる。
【0102】
測定機のLED表示が安定するとすぐに、測定値を読み取る。測定を標準原理により60rpmでスピンドル2を用いて行った。高粘度については、測定の安定性について回転速度を30rpmまで下げた。
【0103】
3.HCl安定性の決定
乾燥接着剤試料を、DIN 53381、方法Bに基づく手順により試験する。
測定手順:
試料(厚さ0.1〜1mm)を約2〜3mmのエッジ長さにカットし、0.2gを試験管に計量投入し、測定を180℃でキャリアガスとしての空気で実施する。形成したHClガスを再溶解させる水の電気抵抗を測定する。HCl安定性は、電気抵抗が50μS/cmの水準に達した時点として記録する。高い値ほど、測定試料がHClの排除についてより安定性である。
【0104】
4.乳化剤濃度の決定(樹脂酸誘導体)
ポリクロロプレン分散体の主乳化剤としての樹脂酸塩に対する乳化剤濃度の決定はMetrohmからのTinet2滴定システムを用いてTHF溶液から滴定によって実施する。滴定はSolvotrode(No.6.0229.100)を用いて実施し、これは水中で保存され、測定前および測定中の日の間、THF/水(80:20)混合物中で測定のための状態が保たれる。滴定媒体は過塩素酸の0.1モル溶液である。結果の評価およびシステムが要求する表への値の入力および滴定プロットの入力は自動的に行われる。既知の組成物のために、乳化剤部分を算出することも可能である。さらに、付加的な乳化剤を、分離に続く定量的IR分析により決定する。
【0105】
5.固形分からのポリクロロプレンの測定/計算
接着剤処方物からのポリクロロプレン濃度は、トルエン/酢酸またはTHFを用いてポリマー部分を再溶解させることによって重量測定法により決定し、次いで、乾燥後、メタノールからのポリマー部分を沈殿させる。異なったポリマー部分が存在する場合、該部分は、結合定量的IR分析により定量する。既知の組成物を考慮して、ポリクロロプレン部分を計算することも可能である。
【0106】
6.残留モノマー含有量の決定
残留モノマー含有量は、ポリマーの有機相への再溶解後のラテックスからBayerプラント法に従ってガスクロマトグラフ法により決定した。
【0107】
7.ポリウレタンフォーム部品への噴霧塗布によるウェット−オン−ウェット結合のための反応性の評価
接着剤処方物をWaltherPILOT型:XIII−NDスプレーガンを用いて約3バールの空気圧で試験材料に適用する。
【0108】
用いた試験材料は、以下のようなPUフォーム材料を含む:
フォームグレード:stn/schaumstoff−technik−Nuernberg GmbH
型:ST 5540、試験片寸法:101×49×30mm
材料ベース:PU、色:白、グロス重量(1m2あたりのkg):40
ネット密度(m3あたりのkg)ISO−845:38、圧縮硬度40%(kPa)DIN EN ISO 3386:5.5
引張強度(kpa)DIN EN ISO 1798:>120、破断伸び(%)ISO−1798:>110
永久圧縮歪(50%/70℃/22時間)DIN EN ISO−1856:<4
【0109】
ウェットオンウェット結合性および初期強度の評価のため、試験試料を木材棒を用いて約40〜300g/mの接着剤適用後、すぐにおよび異なった時間に、中央において曲げ、3秒未満で10mmの距離で2本のスチールロールによって実施する。結合が、もはやフォームのレジリエンス力が生じギャップにより通過後開放しない十分な瞬間強度を有するまでの最小待ち時間ならびに良好に結合が可能な最長時間(開放時間)を記録する。
【0110】
別の手順では、接着剤処方物を、非常に少ない量のためのノズルを用いるWagner W550微細噴霧システムか、または同様のファン駆動「未加圧(0.5バール未満)」噴霧塗布システムにより適用する。
【0111】
8.フォーム接着についての耐熱性の決定
上記のフォーム接着は、少なくとも2時間、50℃、70℃、90℃、110℃および130℃での予備加熱された熱風オーブン中で状態調節し、接着が衰える温度を決定する(強固に結合したフォームの開放:方法7参照)
【0112】
9.処方物の粘度安定性の決定
試験は、Brookfield粘度計を用いて好適には1、3および7日後に接着剤処方物について繰り返し粘度測定によって実施する。
【0113】
10.NORA試験試料についての剥離試験の決定
試験はEN 1392に従って実施する。
分散体の湿潤フィルム100μm厚みを2つの試験試料に適用し(Noraゴム、粗面化、100×30nm)、これを室温で1時間通気する。次いで、試験試料を10秒4バールで組み立てる。引っ張り試験を標準の市販されている引っ張り試験機により室温で実施する。接着直後、1日後、9日後に強度値を決定する。
【0114】
11.熱変形耐性の決定
NORA試験試料を2cm2重ねて結合し、4kgで加重し40℃に状態調節する。加熱棚中で30分にわたり状態調節する。その後、試験試料を150℃に過熱し、0.5℃/分の線形過熱速度で加熱する。軟化温度、すなわち4kg荷重下でのせん断速度において結合が衰える、℃による温度を記録する。5つの個々の測定をいずれの場合にも実施する。
【0115】
12.せん断耐性の決定
分散体のせん断安定性をCouetteまたはSearle測定装置での回転レオメーターで決定する。固定温度(25℃)で、および非常に小さいせん断ギャップ(ギャップ幅240μm、外径13.308mmおよび内径13.0655mm)で横断する(240秒における0〜15000 1/秒)。せん断誘発凝集は、凝集がせん断ギャップを塞ぐので、粘度を突発的に増加させる。粘度の増加が見られる該せん断速度はせん断安定性の測定として考慮される。せん断速度傾斜中に試料中において凝集発生が生じない場合には、せん断は、1秒の測定サイクル(1粘度決定/秒)で600秒にわたって15000秒−1の最大せん断速度で継続する。粘度がこの時間傾斜中に突然増加する場合には、この時間を安定性の測定として分類する。
【0116】
13.レオロジカル特性の決定
レオロジカル特性は、DIN53019回転粘度計での粘度および流れ曲線の決定(またはISO 3219)に従って決定する。
【0117】
14.pHの決定
組み合わせた測定電極(例えば、Sentron pH計)を試験下での溶液または分散体中に浸漬する。この電極は、測定電極および参照電極を含んでなる。測定要素と参照要素との間の電位差を装置によりpHとして読み取る。
組み合わせた測定電極の取り扱いについて、製造業者の操作説明書をよく見るべきである。
【0118】
C)本発明の接着剤処方物の測定方法
方法:クロロプレンの重合
EP−A0032977に記載の連続操作により重合を実施する。
【0119】
実施例A1
それぞれ50リットルの容積を有する7つの同一の反応器からなる重合カスケードの第1反応器に、水性相(W)およびモノマー相(M)を、測定および制御装置により、連続一定比で投入し、活性剤相(A)を投入する。反応器あたりの平均滞留時間は25分である。該反応器はDE−A2650714に記載の反応器に相当する(用いるモノマーの100重量部あたりの重量部による量)。
【0120】
(M)=モノマー相:
クロロプレン 100重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.11重量部
フェノチアジン 0.005重量部
【0121】
(W)=水性相:
脱イオン水 115.0重量部
不均化アビエチン酸のナトリウム塩 2.6重量部
水酸化カリウム1.0重量部
【0122】
(A)=活性剤相
1%濃度水性ホルムアミジンスルフィン酸溶液 0.05重量部
過硫酸カリウム 0.05重量部
アントラキノン−2−スルホン酸Na塩 0.005重量部
【0123】
15℃の初期温度で反応を穏やかに開始する。外部冷却により、生じる重合の熱を除去し、重合温度を10℃で維持する。70%のモノマー変換で、反応をジエチルヒドロキシルアミンの添加により停止する。
【0124】
蒸気蒸留により、引き続きのカラム脱気によりポリマーから残留モノマーを残留モノマー含有量<50まで除去する。
【0125】
120時間の重合時間後、重合ラインを停止する。
【0126】
実施例B1
実施例A1の手順を繰り返すが、高いゲル含有量を有するポリマーを製造するために、調節剤部分を0.03重量部に減らし、モノマー変換を80%まで増加させ、重合温度を45℃に上昇する。
固形分は38重量%、ゲル含有量は60重量%およびpHは12.9である。
【0127】
分散体のさらなる処理
仕上げ1:希釈、安定化、pH調節
実施例A1およびB1からの得られる分散体を、脱イオン化水で約30%のポリクロロプレン含有量まで低減し、ポリクロロプレン含有量=100部を基準として2部のRhenofit DDA50EMと混合し、グリシン粉末で9.5のpHに調節する。これにより、本発明の生成物A2および生成物B2を得る。
【0128】
仕上げ2:塩化アリルの加水分解およびゲル含有量の上昇
分散体A1を、60℃および90℃の間の温度で、絶縁貯蔵容器中で6時間〜6日間状態調節し、次いで、温度を必要に応じてさらなる加熱によって調節し、ラテックスのゲル含有量における増加を試料に基づいて測定する。
次いで、該試料に、仕上げ1.希釈、安定化、pH調節を施す。これにより、本発明の生成物A3を得る。
【0129】
仕上げ3:クリーミング操作
固体アルギン酸塩(Manutex)を、脱イオン化水に溶解して2重量%濃度アルギン酸塩溶液を得る。8つの250ml容器をそれぞれ200gのポリクロロプレン分散体A1、B1およびA3で充填し、6〜20g部のアルギン酸塩溶液を、2gずつ、撹拌しながら投入する。24時間の貯蔵後、濃厚ラテックスを越える得られるセラムの量を測定する。最も多くセラムを生成する試料中のアルギン酸塩の量に5を乗じて1kgのポリクロロプレン分散体のクリーミングのためのアルギン酸塩の最適量を得る。該分散体を、ポリクロロプレン含有量を基準として50%を越える固体濃度までクリームし、得られるセラムを除去する。
次いで、該試料に、仕上げ1.希釈、安定化、pH調節を施す。これにより、本発明の生成物A4およびB3を得る。
【0130】
仕上げ4:水性シリカゾルでの希釈(Dispercoll(登録商標)S)、安定化、pH調節
仕上げ3に基づいて、直接pH調節および安定化する代わりに、希釈を35%未満のポリクロロプレン濃度にDispercoll S3030で実施し、上記の安定化および9.5のpHへの調節を行う。
これにより本発明の生成物A5およびB4を得る。
【0131】
試料C:50ppm未満のモノマー含有量を有するDispercoll(登録商標)C市販生成物から出発する本発明の接着剤処方物を製造するための一般法
本発明の処方物の製造のために、Dispercoll(登録商標)C84/74VPLS 2335/VPLS2372Hを、単一成分としてまたは市販されている型のブレンドとして、ガラスビーカー中に導入する。次いで、連続して、50%分散体としての酸化防止剤Rhenofit(登録商標)DDA−50EM、および必要に応じて、Borchers 9802分散体 の形態で酸化亜鉛、ならびに通常分散体の形態でさらなる成分、例えば樹脂、充填剤、像年剤等を撹拌しながら添加する。最後に、必要に応じて、シリカゾル(Dispercoll(登録商標)S)を撹拌しながら添加する。あるいは、シリカゾルに添加し、脱イオン化水を用いて処方物中のポリクロロプレン濃度を所望の値まで低減する。
次いで、所望の成分の全てを混合によって組み込んだ後、グリシン粉末を用いて処方物の目標pHまでpH調節を行う。
【0132】
実施例D:再度Dispercoll(登録商標)C市販生成物から出発する比較(本発明によらない)接着剤の一般製造法
表5〜11のようにが付いた接着剤処方物(比較例、本発明によらない)を成分と一緒にガラスビーカー中で撹拌し、ポリマー分散体で開始することによって調製する。次いで、連続して、さらなる成分、例えば安定剤、ZnO、樹脂、充填剤、増粘剤、シリカ懸濁液、さらなる乳化剤などを、通常分散体の形態で、撹拌しながら添加する。
【0133】
用いる処方物の部のための量は全ての場合において、100部に等しく設定されるポリクロロプレンラテックスの固体部分に対しての、処方する構成物質の固体部分または非水性部分のことである。
【0134】
該ルールは常に、同様に100部に等しく設定されるポリクロロプレンラテックスの固体部分に直接的に相対定量的になされる場合には、明確な処方する構成物質としての水の添加を除いて、変化する。
【0135】
【表5】

【0136】
本発明によらない試料は*が付される。1−k噴霧接触[分]ラインにおける括弧中の数字は、結合は良好であるがわずかに端部の分離が目視可能である。
【0137】
本発明によらないpH水準を用いる場合、5分未満のウェットオンウェット結合が良好ではないことが明らかである。場合によっては、十分なHCl安定性および貯蔵安定性が得られないことも見られる。
【0138】
【表6】

【0139】
前記のクリーミングおよび/または市販ラテックスの希釈は、悪化させず、場合によっては、本発明によるpHおよび粘度のような量との組み合わせにおける接着剤特性を向上させる。
【0140】
【表7】

【0141】
本発明による処方物が著しく低い固形分とポリクロロプレン含有量との組み合わせにおいて同等の結合性を有することが明確である。優位性は、HCl安定性および残留モノマー含有量においても証明されている。
【0142】
【表8】

【0143】
表8は、シリカ懸濁液を有する本発明の処方物の高い充填性または希釈性を示す。接着剤特性は明らかに100部を超えるシリカ懸濁液でのみ悪化し始める。同時に、ポリマー含有量はこのようにして20%未満に低下させることができるが、これは多大な経済的および環境的な優位性を示す。
【0144】
【表9】

【0145】
同様にして、30%固形分および10nm未満の粒径を有するシリカについて、50%固形分および50nm未満の粒径を有するシリカを本発明に従って良好に用いることもできる。この場合、必要に応じて、処方物の固形分を変化させず、ポリマー成分の固形分を、約100%の高い希釈値により、接着特性をあまり悪化させることなく変化させる。130℃を超える際立った耐熱性を得る。
【0146】
【表10】

【0147】
Dispercoll(登録商標)C2325の使用と同様に、著しい接着特性を、Dispercoll(登録商標)C84を、シリカ懸濁液での本発明による希釈と併用する場合得られる。
【0148】
【表11】

【0149】
本発明の処方物は、高い希釈にもかかわらず、本発明の特性について、市販されている通常の処方物の結合性と同等の結合性を生じさせる。本発明の処方物は、顕著な貯蔵安定性およびHCl耐性および際立った低粘性がさらに注目すべき点である。
【0150】
本発明によらない比較例は、本発明による実施例30と比べて場合によっては極めて低い熱変形耐性を示す。
【0151】
レオロジー特性の決定
試料をAntonPaar製のMCR101レオメーターを用いて調査した。
C−PTD200 Peltier 加熱部品を有するDG26.7カップ/ローター系を用いた。
測定プロファイル:部分1:ランプログ、T=23℃でD=0.1〜1000[1/秒]
部分1:ランプログ、T=23℃でD=1000〜0.1[1/秒]
【0152】
【表12】

【0153】
本発明による処方物は、3を超えない10/秒〜1000/秒のせん断速度での粘度の変化として本明細書で定義されるほぼニュートンせん断挙動で存在する。
【0154】
せん断安定性の調査
実験は、25℃でZ3.1測定系(ギャップ:240μm)を有するPHYSICA MC 200 レオメーターで実施した。0〜15000秒−1からの対数せん断速度ランプを240秒で横断する。
【0155】
特定のせん断速度で凝集の形成の瞬時の即時確認のために、極めて短い0.1秒の測定間隔を設定し、2つの測定点の間でデルタ1000Paの増加で、測定を自動的に停止する。凝集の形成が未だ試料について確認されない場合、最大せん断速度15000秒−1で600秒間1秒の測定サイクルで継続した。
【0156】
【表13】

【0157】
市販されている通常の生成物の4つの比較例のうち3つは、せん断速度約260 1/秒または11400 1/秒に達する際に粘度(凝集)が増加するか、最大せん断速度での測定時間の終わる前に早期の凝集が増加することから読み取ることができるように、はっきりと異なるせん断不安定性を示す。本発明の実施例7および比較例46のみが、凝集を示さず、比較例46は、測定中に著しく粘度を低下させるため、そのレオロジー特性における鋭い変化を示す。
【0158】
<<0.5バールのWagner スプレーガンでの噴霧試験(Wagner W550操作説明書を参照)
Wagner から市販されている塗布システムを用いて市販の1−K(1成分)噴霧接着剤処方物および本発明の処方物を試験することが目的である。
調査は、比較例44、45、46および47および本発明による実施例15について行った。
【0159】
本発明による実施例15は、問題なく噴霧することができ、PUフォームへの塗布後の標準中間圧系(表7参照)と同様の接着特性を有するが、比較例44、46および47は高い粘度により噴霧することができず、比較例45は、短時間後に噴霧塗布器のノズルが詰まる。
【0160】
再結合
本発明の生成物は、薄い塗布層により、最初の乾燥後接着剤として再び塗布する際、際立った再結合性を示す。この試験のために、本発明による実施例15をPUフォームに噴霧塗布することによって塗布し、2時間にわたって乾燥させ、次いで同じ試験成分を再塗布する。良好な接着を1分未満後に得た。
【0161】
耐低温性
氷槽による0℃に冷却後、本発明による実施例42を該して7の下に記載のPUフォームに噴霧塗布した。接触を2分未満の待ち時間後に得た。粘度は2mPas上昇するが、本発明によらない比較例についての粘度の上昇は、44について910mPas、45について176mPas、46について310mPasおよび47について1730mPasであった。かなりの粘度上昇により、固定操作設定下での噴霧塗布における使用の可能性はもはや確実ではない。
【0162】
さらに、0℃であるがせん断安定性における顕著な低下を記録する、表13の試験の系列と同様の本発明によらない比較例44、46、47と比較すると、本発明による実施例7について、0℃でのせん断についてせん断安定性の完全な保持を確実とすることが可能であった。せん断安定性の保持は、低温度で噴霧塗布について、さらなる清掃サイクルおよび生産性のかなりの低下を示すスプレーヘッドにおける早期の凝集がない。
【0163】
【表14】

【0164】
貯蔵安定性
本発明による実施例は、顕著な貯蔵安定性が注目すべき点である。70℃10日
までの貯蔵後でさえ、1単位未満のpHのわずかな変化のみ、20mPas未満の粘度変化が、フォームの噴霧結合において機能を維持しつつ、標準ラテックスおよび市販の接着剤処方物と比較して観測された。
【0165】
貯蔵安定性を試験するために、10×100mlガラス容器を、本発明による処方物7、比較としてのDispercoll C84(55%)ラテックスおよび28%まで希釈したDispercoll C84ラテックスで可能な限り縁の近くまで充填した。縁近くまで充填することは、容器中での最小限の任意のスキン形成のためである。次いで、試料を70℃にて乾燥棚中で保存し、試料を毎日取り出し、分離、pH、粘度および試験法7に記載のフォームの結合のための噴霧塗布のための特性の保持について調査する。
【0166】
【表15】

【0167】
【表16】

【0168】
実施例D:他の製造法
実施例Cに記載のバッチ法からの偏差において、本発明による実施例は、静的ミキサーまたは動的ミキサーにより成分の同時の組み合わせによって別の方法で調製することができる。必要に応じて、静的ミキサー/または動的ミキサー内で同時に組み合わせることからの偏差において、個々の成分を流入装置によりわずかな時間のオフセットで混合することができる。静的ミキサー/動的ミキサーの終わりに、完全な生成物を放出する。混合時間はこの場合、1時間未満である。得られた生成物は、バッチ式によって調製された本発明による生成物と差がない。
【0169】
記載の混合方法は、実施例が際立ったせん断安定性および貯蔵安定性が注目すべき点であるので本発明の実施例に有利に用いられる。また、このように、バッチ混合装置を利用可能な状態に維持する必要がない。その代わり、製造は計量ポンプによって供給容器から直接行うことができる。本発明によらない実施例については、場合によっては著しく低いせん断安定性および高い粘度に起因して必ずしも行うことが可能ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mPas未満の粘度および2時間を越えるpH安定性を有し、せん断応力がせん断速度に大きく比例することを特徴とする、40重量%以下のポリクロロプレン濃度および50ppm未満の残留モノマー含有量を有するポリマー水性分散体。
【請求項2】
せん断応力はせん断速度に大きく比例し、および粘度は3以下の係数によって10〜1000/秒の範囲を超えて変化することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項3】
1.5重量%未満の全乳化剤濃度を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項4】
100重量部に設定されると理解されるポリクロロプレンの固体濃度を基準として、0.1〜5重量部の老化/酸化安定剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項5】
0.24重量%未満のZn濃度を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項6】
10〜8のpHを有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項7】
水中での分離粒子の懸濁液として4〜100重量部のシリカ/水ガラスを含み、該シリカ懸濁液の固体部分が部の計算に用いられ、ポリクロロプレンラテックスのポリクロロプレン固体部分が100部に設定されることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体。
【請求項8】
前記シリカは、SiO粒子が1〜400nm、好適には5〜100nm、より好適には8〜50nmの一次粒子径を有する二酸化ケイ素水性分散体を含むことを特徴とする、請求項7に記載のポリマー水性分散体。
【請求項9】
まず、規定量の調節剤を添加するかどうかに拘わらず、連続的または不連続的なクロロプレンの(共)重合を水性エマルション中で実施し、その後、残留モノマーを50ppm未満の水準まで除去し、次いで、必要に応じて水で希釈し、最後に、必要に応じて、熱的状態調節貯蔵し、および/または濃縮し、次いで、必要に応じて水で希釈することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項10】
クロロプレンの重合を、クロロプレン100重量部を基準として0〜20重量部の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーで、モノマー100gを基準として0〜1mmolの調節剤の存在下、0〜70℃の温度で、水性エマルション中において実施し、該分散体は、ポリマーを基準として0.1重量%〜90重量%の有機溶媒に不溶性の部分を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
製造はバッチ法においておよび連続法において可能であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項12】
成分を、バッチ法または逐次的に連続法により、および/または静的ミキサー/動的ミキサーを用いて添加することが可能であり、同時に、前記方法の任意の所望の組み合わせが可能であり、混合時間が1時間未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー水性分散体の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のポリマー水性分散体を含んでなる接着剤組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のポリマー水性分散体を含む接着剤組成物を、噴霧塗布、はけ塗りまたはローラー塗布によって基材に塗布し、5分未満のフラッシュ時間の後、ウェット結合をフィルム形成前に生じさせることを特徴とする、フォーム材料のウェット−オン−ウェット接着結合の製造方法。
【請求項15】
接着剤の塗布を、ポリクロロプレンについて基材面積1mあたり75g未満で、5分を超える接触時間の延長により機能を低下させずに実施し得ることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
噴霧塗布を、0.5〜6バールの範囲の通常の中間圧噴霧塗布により、またはDIY家修繕分野において広く知られている、市販の「未加圧」のバッテリーまたは電気幹線で操作されるスプレーガンにより行うことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載のポリマー水性分散体を被着体の接着結合に用いることを特徴とする、複合材料の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載のポリマー水性分散体を含む接着剤組成物で被覆された基材。
【請求項19】
延展、ロール、射出および噴霧塗布における接着剤処方物としての、請求項1に記載のポリマー水性分散体の使用。
【請求項20】
マットレスおよび家具/室内装飾品の結合におけるフォーム材料接着結合を製造するための、請求項1に記載のポリマー水性分散体の使用。
【請求項21】
木材、熱可塑性プラスチック、エラストマー、熱可塑性エラストマーおよび加硫物、織物、ニットおよび網状繊維、金属、陶器またはコンクリートを、互いにおよび/または1kg/リットル未満の密度を有する多孔質基材に接着結合するための、請求項1に記載のポリマー水性分散体の使用。

【公表番号】特表2010−537011(P2010−537011A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522213(P2010−522213)
【出願日】平成20年8月9日(2008.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006594
【国際公開番号】WO2009/027013
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】