説明

低結晶度サセプタフィルム

マイクロ波エネルギー相互作用構造は、複屈折(n−n)が約0.15未満のポリマーフィルムと、該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層とを有している。マイクロ波エネルギー相互作用材料層は、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱エネルギーへ変換する働きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2009年2月23日付けで出願された米国仮出願第61/208,379号、2009年7月30日付けで出願された米国仮出願第61/273,090号、及び2009年8月26日付けで出願された米国仮出願第61/236,925号の利益を主張する、2010年2月22日付けで出願された米国特許出願第12/709,628号の一部継続出願である。上で参照した出願は各々、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
隣接する食品のブラウニング(browning:焼き色付け)及び/又はクリスピング(crisping:サクサク感、カリカリ感)を高めるためにマイクロ波加熱パッケージにサセプタを使用することが知られている。一実施形態では、サセプタは、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を吸収し、マイクロ波エネルギー相互作用材料層における抵抗の喪失によりマイクロ波エネルギーを熱エネルギー(すなわち熱)へと変換する性質がある(tends to)マイクロ波エネルギー相互作用材料の薄層である。残りのマイクロ波エネルギーはサセプタにより反射されるか、又はサセプタを透過する。従来型サセプタは、一般的に約500オングストローム未満の厚さ、例えば約60オングストローム〜約100オングストロームの厚さのアルミニウムを含み、光学密度は約0.15〜約0.35、例えば約0.17〜約0.28である。
【0003】
マイクロ波エネルギー相互作用材料層(すなわちサセプタ)は通常、サセプタフィルムを規定するためにポリマーフィルム上に支持される。サセプタフィルムは通常、接着剤を用いて又は別の方法で支持層、例えば紙又は板紙に接合(例えば積層)されており、それによりサセプタフィルムに寸法安定性を与えると共に、金属層を損傷から守る。得られた構造を「サセプタ構造」と称することもある。
【0004】
初めに市販されたマイクロ波サセプタフィルム、及びその後導入されたサセプタパッケージは、ポリエチレンテレフタレートポリマー、すなわちPETから製造される高延伸性、高結晶化性、二軸延伸性及び熱硬化性のフィルムの使用に頼ってきた。通常、かかるフィルムは高延伸性である、すなわち延伸プロセス中の伸張度は縦方向(MD)に約3.5:1〜約4:1、及び横方向(CD)に約3.5:1〜約4:1である。このポリマーから作製された二軸延伸PETフィルムは一般的に、透明性、光沢性、平滑性、水蒸気と酸素障壁との良好な組合せ、良好な機械強度、及び適度な寸法熱安定性のうちの幾つか又は全ての組合せが有用である広範な包装用途及び非包装用途に使用される。標準的なサセプタ構造に使用される市販のフィルムは通常、この概要にあるフィルムを含み、ほとんどの場合その特性はマイクロ波サセプタでの使用以外の大量適用に最適化されている。
【0005】
これらのフィルム、したがってマイクロ波サセプタパッケージ、パッケージング成分、又は複合サセプタ、及び電磁場(field)変更若しくは遮断のパッケージ若しくは成分の加熱性能を限定することができるこの標準的な構成の重要な要素が幾つか存在する。自己制限的な加熱現象(一般的にクレージングと称される)のマイクロ波サセプタパッケージングを作製する分野の当業者には広い理解がある。サセプタ材料と電磁マイクロ波エネルギーの電気成分又は磁性成分のいずれか又は両方との相互作用により生じるサセプタ層自体において誘導された加熱中に、サセプタ基板フィルムの温度が上昇する。理論に拘束されることを意図しないが、この考察のために、例として二軸延伸フィルム上に堆積した真空金属加工した(metallized)金属を用い、主にマイクロ波エネルギーの電気成分と相互作用させると、サセプタ基板フィルムにおける残存収縮力が、サセプタ基板フィルムをその元の所望の構造に保持する接着/支持基板の能力を超える場合、サセプタ基板フィルムにおいて亀裂が現れ、マイクロ波相互作用サセプタ材料に断絶が生じ、金属層において電流の流れが遮断されると考えられる。クレージングが進行し亀裂が互いに交差するにつれて、交差線のネットワークがサセプタ平面を徐々に小さくなる伝導性の島へと細分化する。結果として、サセプタの全体としての反射率が低減し、サセプタの全体としての透過率が増大すると共に、サセプタにより顕熱へと変換されるエネルギー量が低減する。
【0006】
この自己制限的な挙動が時期尚早に(すなわち加熱サイクルにおいてあまりにも初期に)起こる場合、サセプタが特定の食品加熱用途に必要な量の熱を発生することができないことがある。これとは対照的に幾つかの場合で、この自己制限的な挙動は、かかる挙動が起こらない場合に(otherwise)サセプタの急騰(runaway)(すなわち非制御)加熱が隣接する食品、及び/又は任意の支持構造若しくは支持基板、例えば紙若しくは板紙の過度のチャーリング(charring:黒焼き)又はスコーチング(scorching:焦げ付き)を引き起こす可能性がある場合には有利であり得る。このためそれぞれの用途で、十分な加熱の必要性と不要な過熱を防ぐ要求とのバランスをとる必要がある。残念ながら、従来型の高延伸PETサセプタでは、クレージングが起こる温度は、例えば金属層の厚さ、接着剤の種類及び量、並びに接着剤塗布の均一性を変更することにより僅かに制御することができるにすぎない。
【0007】
サセプタ構造のクレージングの開始を遅らせることが重要な努力の主題であったが、伝統的思考を用いても意義のある改善はほとんど又は全く達成されていない。しかしながら、使用されるベースポリマー材料及び/又はベースポリマー材料をフィルム状に加工処理する方法に対する重要かつこれまでに予測されていない変更が本発明で示されており、これにより温度の上昇又はクレージングの開始の遅延、及び制御可能なマイクロ波加熱能の増大が起こる。
【0008】
本開示で採用されたアプローチの独自性を理解するために、まずこれらのフィルムを製造する方法に対する変更により改善された加熱サセプタフィルムを作製するというこれまでの試みを再検討することが有益である。フィルムの特性化の考察によっても、本発明の態様の独自性を支持する新たな理解が明らかになる。
【0009】
標準的なPETサセプタ基板フィルムを作製するのに使用される二軸延伸ハードウェアが状態を加熱するか、又は制御温度で高延伸フィルムを熱硬化させる能力を与えるため、一部の研究者らの目的は、高温でより大きい寸法安定性を有するフィルムを得るために、熱硬化温度及び滞留時間を増大させることであった。例えば、本発明の譲受人に譲渡された(commonly-assigned)特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4、及び特許文献5が「熱安定化PET」フィルムの使用を開示しており、熱安定化PETフィルムは、特許文献6に「30分間、150℃まで加熱した場合、約2%未満収縮するように処理されたPET。好ましくは、該PETはこのように加熱した場合に約1.5%又は1%未満、最も好ましくは約0.6%以下収縮する」と規定されている。特許文献7によると、「熱安定化PETは、一連の熱処理工程及び緩和工程を伴う安定化プロセスにより通常のグレードのPETフィルムから作製され、当業者にとって既知である」。PETのための熱安定化プロセスは、E. I. Du Pont de Nemours and CompanyからのE−50542社報、「Mylar(登録商標)の熱安定化」で更に十分に説明されている。この社報は審査に公式には利用可能ではないが、その記載内容(具体的には特許文献4)から、熱安定化プロセスが、通常「普通のPETフィルム」の製造において与えられるものの他に補助的な熱処理を含むこと、及び全ての場合において、PET又はPETフィルムは二軸延伸されたフィルムを表すことは明らかである。
【0010】
他の研究者らは、より高い加熱性能を得るためにより高い融点(すなわち、融解温度)のポリマーを利用しようとした(例えば、特許文献8(およそ260℃〜300℃の範囲で溶融が開始する二軸延伸サセプタ基板フィルムの使用を教示している)、又は特許文献9(融点が500℃を超えるPCTAコポリエステルから作製されるフィルムの使用を教示している)を参照されたい)。ポリエチレンナフタレート及びポリシクロヘキシレン−ジメチレンテレフタレート(PCDMT)(本質的により高い融点を有する)等の或る特定のコポリエステルも開示されている(例えば特許文献10及び特許文献8を参照されたい)。加熱性能の改善が特許請求されているにもかかわらず、これらのフィルムを使用したサセプタは商業用途に好適であることは証明されていないと考えられる。直面する難点には、過剰な付加コスト、作製上の問題、及び食品、パッケージ若しくはパッケージ成分又はその両方の許容できないスコーチング又は焦げにつながる制御されない加熱が含まれている。例えば、特許文献10は、PCDMTが非常に熱くなり、サセプタ構造中で紙が焦げる若しくは炭化する、又はサセプタと接触している食品が焦げる可能性があることを開示している。したがって、より高い融点のコポリエステルの使用が、商業的に有用なサセプタフィルムを作製するのに十分であるとは証明されていないと考えられる。
【0011】
このため、従来型のサセプタ構造よりも大きい熱流束及び/又は高い温度を制御可能に達成することができ、それにより過度のチャーリングの危険を伴うことなく食品のより良好なブラウニング及び/又はクリスピングを可能にするサセプタ構造に対する必要性が存在する。
【0012】
関連の特許文献11において、非延伸フィルム、例えば非晶質ポリエチレンテレフタレート(APET)フィルムを、従来の二軸延伸PETフィルムサセプタの加熱特性よりも優れた加熱特性を有するサセプタフィルムに使用することができることが認識された。しかしながら、APETフィルムは加工処理に十分な強度を欠くことがあることも認識された。したがって、本発明者らはAPETフィルムの強度を増大させる様々な手段を提案した。しかし依然として、代替となるサセプタベースフィルム及びそれから形成されるサセプタ構造に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,851,632号
【特許文献2】米国特許第4,993,526号
【特許文献3】米国特許第5,003,142号
【特許文献4】米国特許第5,177,332号
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0084860号
【特許文献6】米国特許第5,177,632号
【特許文献7】米国特許第5,177,132号
【特許文献8】米国特許第5,571,627号
【特許文献9】米国特許第5,126,519号
【特許文献10】米国特許第5,527,413号
【特許文献11】米国特許出願第12/709,628号
【発明の概要】
【0014】
本開示は概して、サセプタフィルムにおいてベースフィルム又は基板として使用されるポリマーフィルム(又はフィルム)と、かかるポリマーフィルムを作製する方法と、ポリマーフィルムを含むサセプタフィルムとに関する。サセプタフィルムは支持層と接合し、サセプタ構造を形成することができる。サセプタフィルム及び/又はサセプタ構造を用いて、数多くのマイクロ波エネルギー相互作用構造、マイクロ波加熱パッケージ、又は他のマイクロ波エネルギー相互作用構築物を形成することができる。
【0015】
サセプタ構造は概して、従来の二軸延伸PETフィルムから作製されるサセプタ構造のブラウニング反応速度を超えるブラウニング反応速度を有し得る。したがって、本発明のサセプタ構造は、サセプタ構造を用いて加熱した食品のブラウニング及び/又はクリスピングにおける顕著な改善をもたらすことができる。
【0016】
ポリマーフィルムは非延伸であっても、又は様々な程度まで延伸されてもよい。フィルムが延伸する場合、延伸条件は、所望の結晶度レベル、残存延伸、及びそのため特定のサセプタフィルム用途に望ましい加熱性能をもたらすようにカスタマイズする(customized)ことができる。フィルムを以下のうちの1つ又は複数を有するものと特徴付けることができる:約1.64未満の屈折率(n)、約0.15未満の複屈折(n−n)、及び約50%未満の結晶度。しかしながら、他の結晶度、屈折率、複屈折、及びそれぞれの範囲が場合によっては好適であることもある。比較として、サセプタに通常使用される市販の二軸延伸ホモポリマーフィルムは、約1.6447〜約1.6639の屈折率(n)、及び約0.1500〜約0.1700の複屈折(n−n)を有し得る。
【0017】
相対的に低い結晶度、延伸、及び/又は残存収縮力を有するポリマーフィルムをサセプタフィルム及びサセプタ構造に使用して、従来のサセプタ構造よりも大きい熱流束及び/又は高い温度を達成することができることが発見された。さらに、本発明者らは、様々なベース材料と、プロセス条件と、得られるフィルムの結晶度との間の関係性に対する理解を得た。結果として、ベースフィルム及び得られるサセプタ構造を設計する際の自由度は劇的に増大した。
【0018】
幾つかの例示的な実施の形態では、ポリマーフィルムは非晶質ポリエチレンテレフタレート(APET)、非晶質ナイロン、様々なコポリエステル、又はそれらの任意の組合せを含み得る。コポリエステルは概して、標準的なPETポリマーの融解温度と同様であるか又はそれより低い、例えば約250℃〜260℃未満の融解温度を有し得る。しかしながら、多くの他のポリマーが考慮される。
【0019】
必要に応じて、ポリマーフィルムの強度及び/又は加工性を高めるために、1つ又は複数の添加剤(すなわちポリマー)をポリマーフィルムに組み込むことができる。付加的には又は代替的には、多層ポリマーフィルムを用いることによりポリマーフィルムの強度及び/又は加工性を高めることができ、かかる層の1つ又は複数がポリマーフィルムに所望のレベルの構造安定性(robustness)をもたらす。したがって、多層フィルムは、フィルムを加工(例えば金属加工、化学的エッチング、積層加工及び/又はプリント加工)し、高速変換操作を用いて様々なサセプタ構造及び/又はパッケージに変換することができるような、引裂強度の増大、強靭性、及び寸法許容性の向上を特徴づけ得る。
【0020】
必要に応じて、所望の特質を有するポリマーを選択することにより更なる機能特性を多層フィルムに与えることができる。例えば、多層フィルムは、ポリマーフィルムを多くの用途に、例えば長期の賞味期間を必要とする冷蔵した電子レンジ処理可能な食品用のパッケージに好適にさせ得る障壁特性を有し得る。
【0021】
本発明の他の特徴、態様及び実施形態は、以下の記載より明らかであろう。
【0022】
以下の説明は添付の図面に言及するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】様々な例示的なサセプタベースフィルム及びサセプタ構造に関する屈折率(n)及び温度の上昇(ΔT)(℃)を示す図である。
【図2】様々な例示的なサセプタ構造に関する相対的なブラウニング反応速度及びピザのブラウニングしたピクセル数を示す図である。
【図3】様々な例示的なサセプタベースフィルム及びサセプタ構造に関する屈折率(n)及び温度の上昇(ΔT)(℃)を示す図である。
【図4】様々な例示的なサセプタ構造に関する相対的なブラウニング反応速度及びピザのブラウニングしたピクセル数を示す図である。
【図5】サセプタベースフィルム6−2に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【図6】サセプタベースフィルム1−6に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【図7】サセプタベースフィルム7−1に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【図8】サセプタベースフィルム6−9に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【図9】サセプタベースフィルム6−11に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【図10】サセプタベースフィルム7−8に関する動的な寸法温度応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は概して、サセプタフィルムにおいてベースフィルム又は基板として使用されるポリマーフィルム(又はフィルム)と、かかるポリマーフィルムを作製する方法と、ポリマーフィルムを含むサセプタフィルム及びサセプタ構造とに関する。
【0025】
一つの観点では、ベースフィルムは概して、電子レンジで加熱する前に約50%未満の結晶度を有し得る。様々な独立した例のそれぞれでは、ポリマーフィルムは、約40%未満、約37%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約7%未満、又は約5%の結晶度を有し得る。
【0026】
本発明者らは、多様な方法で作製した低結晶度フィルムは、結晶度の高い対応するフィルム(counterparts)と比較して優れたベースフィルムであり得ると判断している。特に、より低い結晶度及びより低い残存延伸レベルは概して、ベースフィルムが従来のベースフィルムと同程度の高い絶対的な延伸レベルを有する場合であっても、得られるサセプタフィルム及び/又はサセプタ構造でのより高い加熱能に対応することが発見された。このことは、高延伸で結晶度が高いサセプタフィルムの従来的使用からのかなりの逸脱を示している。サセプタの自己制限挙動を理解するために幾つかの試みがなされているが、マイクロ波サセプタフィルムに使用される延伸フィルムの結晶度及び動的な寸法温度応答の特徴と、得られるサセプタ性能との間の関係は、概して誰も研究又は評価していないと考えられる。
【0027】
別の観点では、多くの場合、ポリマーフィルムの屈折率及び/又は複屈折が従来技術に記載の基準よりも良好な性能の指標となり得ることも発見された。材料の屈折率は真空中での光の速度とこの材料中での光の速度との比である。材料の特定方向に光を偏光させることにより、この方向での屈折率を測定することができる。分子秩序のない非晶質材料では、この材料を光学的に規定するのに単一の値を使用することができる。分子配向可能な材料、例えば半結晶性ポリマーでは、結晶度及び配向が増大するにつれて屈折率の絶対値が増大し、異なる方向で測定される様々な値の屈折率を、フィルム等の構造の異方性を特徴付けるのに使用することができる。ポリマーフィルムの2つの方向での屈折率間の差異は、これら2つの方向間の複屈折と定義され、これらの方向間の配向の差異を理解するのに使用することができる。複屈折は、2つの方向間の屈折率の値の間の差異として定義されるため、複屈折は特定のサンプル形態及び屈折率に関して選択される方向に応じて、正の数又は負の数となり得る。より大きな複屈折の絶対値はこれら2つの方向でのより大きな配向の差異に関連することが広く認識されている。
【0028】
本開示によるサセプタ構造を形成するのに有用な一部のポリマーフィルムの屈折率(n)(ここでnはフィルムの縦方向での屈折率を表す)は概して、約1.64未満、例えば約1.57〜約1.62であり得る。様々な独立した例のそれぞれでは、ポリマーフィルムの屈折率(n)は、約1.63未満、約1.62未満、約1.61未満、約1.60未満、約1.59未満、又は約1.58であり得る。付加的には又は代替的には、ポリマーフィルムの複屈折(n−n)(ここでnはフィルムの厚さにおける屈折率を表す)は概して、約0.15未満(負の複屈折値を包含する)であり得る。様々な独立した例のそれぞれでは、複屈折(n−n)は、約0.14未満、約0.13未満、約0.12未満、約0.11未満、約0.10未満、約0.090未満、約0.080未満、約0.070未満、約0.060未満、約0.050未満、約0.040未満、約0.030未満、約0.020未満、約0.015未満、約0.010未満、又は約0.0050未満であり得る。しかしながら、他の好適な屈折率、複屈折値、及びその範囲が考慮される。
【0029】
上述のように、従来技術のフィルムは通常、静的な収縮特性(例えば、「150℃、30分間で1%の収縮」)に基づき特徴付けられている。しかしながら、本発明者らは、この伝統的な性能の定義は不十分かつ誤解を招くおそれがあり、材料及びプロセスを選択する第一の基準としてこの定義を用いたサセプタ基板フィルムの特定化及び製造が、優れた性能のマイクロ波サセプタ基板フィルム、サセプタ成分、サセプタパッケージ及びサセプタパッケージ/電磁場変更若しくは遮断のパッケージ及び成分の開発を制限する可能性があると判断している。
【0030】
本発明者らは、サセプタ構造のマイクロ波加熱挙動を現実的に特徴付けるために、サセプタ構造を用いてマイクロ波加熱中に受けた実際の条件のより典型的なものである動的な温度曝露に対するサセプタ基板フィルムの寸法応答を理解しなければいけないことを発見した。この理解が、優れたサセプタ基板フィルム、及び食品用途又は他の工業的使用に有用なマイクロ波加熱構造を設計するのに特に有用であることが発見された。
【0031】
食品の加熱のためには、このことは非常に重要であり得る。それはこれらのサセプタパッケージ中でマイクロ波加熱される食品において、消費者が強く所望する品質パラメータであるブラウニング及びクリスピングの変化は、自然でかつ魅力的な表面の色の変化、並びに芳香及び風味の発生を達成するためのメイラードブラウニング反応、並びにカリカリ感及び口当たりを得るための表面の水分含有量の変化に強く依存することが多いためである。メイラード反応の進行は、加熱調理の開始時に通常存在するものよりも食品中の水分活性が低いことにも関連する。メイラード反応の動態(kinetics)は、155℃超でサセプタパッケージにおける対象期間内にブラウニングを達成するのに有用な反応速度に達し始め、温度の上昇と共にべき関数として増大するため、電子レンジ内での所望の短い加熱調理時間のために、温度の上昇はメイラード反応、水分活性の低下及び動態の増大の全ての側面に対して大いに有益である。
【0032】
とりわけ更に実施例に関連して述べられるように、優れたものとして(例えば特許文献7における「熱安定化PET」の定義を満たすものとして)従来技術に記載されているフィルムの多くは標準的な二軸延伸PETフィルムを用いた標準的なサセプタ構造を上回る改善がたとえあったとしてもほとんど示されておらず、本開示のベースフィルムから作製されるサセプタ構造の性能の方が上回っている(eclipsed)。例えば、150℃、30分間で1%程度の収縮を示すフィルムは、本発明のフィルムが克服する典型的な制限及びクレージング挙動を示すサセプタフィルムをもたらす。本発明者らは、サセプタ性能の改善をもたらすとして特許請求される「熱安定化PET」から製造される例示的なサセプタ構造の動的な寸法温度応答を測定し、例示的なサセプタ構造が本開示のサセプタ構造と比較して有用なマイクロ波加熱条件での安定性が劣っていることを示す。このため、最良の状態でもマイクロ波サセプタ加熱の対象となる温度の下端である温度への長期間の曝露により加熱能を特徴付ける典型的な方法は、対象となる実際の事象、すなわち電子レンジ中でのマイクロ波用食品の加熱(サセプタパッケージ成分が典型的な150℃の静的試験条件を大きく上回る温度に達することが望まれることが非常に多い、動的なプロセスである)中に達成される実際の加熱性能の理解の展開とは矛盾している。
【0033】
上記の発見に鑑みて、本発明者らは、無数の材料及びプロセスを、マイクロ波加熱条件下で優れた加熱性能をもたらす特性を有するサセプタベースフィルムを形成するのに使用することができると判断している。例えば、ベースフィルムから形成されるサセプタ構造は概して、例えば食品のブラウニング及び/又はクリスピングの認識できる差異を観察することができるように、従来の二軸延伸PETフィルムから作製されるサセプタ構造のブラウニング反応速度を超えるブラウニング反応速度を有し得る。
【0034】
一観点では、サセプタフィルムは最小限延伸したフィルムを含み得る。最小限延伸したフィルムは非延伸(すなわち、延伸されていない)であっても、又は僅かに延伸されていてもよい(すなわち、以下で述べられるように0%超〜約20%の延伸)。非延伸ポリマーフィルムは、ポリマーの融点未満の温度で縦方向(MD)及び横方向(CD)のいずれか又は両方で伸張を受けていないフィルムである。非延伸ポリマーフィルムは迅速に急冷することができ、これにより低い(例えば約25%未満の)結晶度がもたらされ、これは概して、所望の最終フィルム厚への溶融物の縮小に関連する溶融物の延伸に起因し得る。これに対して、従来のサセプタフィルム及び構造で用いられるタイプの高延伸フィルムは、高レベルの延伸及び/又は伸長誘導性の結晶度を有し、高レベルの残存収縮力を有する。
【0035】
様々な実施例のそれぞれでは、本開示による最小限延伸したフィルムは以下のうちの1つ又は複数を有するものと特徴付けることができる:
約1.59未満、例えば約1.57〜約1.58、又は約1.5727〜約1.58、例えば約1.575(例えばPolymer Handbook, J. Brandrup, E. H. Immergut, and E. A. Grulke, 4th ed., John Wiley & Sons, Inc., 1999, ISBN 0-471-16628-6を参照されたい)、又は約1.5723〜約1.5727、例えば約1.5725の屈折率(n);
約0.005未満、約0.004未満、約0.0035未満、又は約0.0028未満、例えば約X〜約X、例えば約0.0012〜約0.0022、例えば約0.0016の複屈折(n−n)、及び
約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約7%未満の結晶度。1つの特定の実施形態では、フィルムの結晶度は約5%であり得る。しかしながら、他の結晶度、屈折率、複屈折、及びそれぞれの範囲が好適であり得る。
【0036】
任意の好適なポリマーを、サセプタベースフィルム又は基板を形成するのに使用することができる。一例として、フィルムは非晶質PET(APET)、例えばPure-Stat Technologies, Inc.(Lewiston, Maine)から市販されているAPETフィルムを含み得る。しかしながら、他の好適なAPETフィルム及び/又は他のポリマーフィルムを使用してもよい。
【0037】
本発明者らは、より低い延伸レベルを含むサセプタフィルムが、従来の高度に延伸した結晶度の高い二軸延伸PETフィルムよりも強くクレージングに耐性を有する傾向があり得ることを発見している。理論に拘束されることを意図しないが、高い残存収縮力がサセプタ構造のクレージングの開始及び進行に重要な役割を果たし得ると考えられる。あまり延伸していないフィルムが高延伸フィルムよりも非常に低い熱誘導性の寸法収縮力を示すため、最小限延伸したフィルムは高延伸ポリマーフィルムよりも強くクレージングに耐性を有する傾向があり得る。このため、収縮力が本質的に低い、非常に低い、又は更には収縮力を有しない最小限延伸したフィルム、例えばAPETは、収縮力が本質的に高い従来の高延伸フィルム、例えば高延伸PETよりも強くクレージングに耐性を有する傾向があり得る。これは、当該技術分野で教示されるようなサセプタフィルムの設計に対する従来のアプローチからの明らかな逸脱であると考えられる。
【0038】
代替的には又は付加的には、理論に拘束されることを意図しないが、最小限延伸したポリマーフィルムの結晶度が加熱サイクル中に増大し、それによりポリマーを熱に対してより耐性にし、その結果、熱安定性をより高める可能性があるとも考えられる。結果として、サセプタフィルムの安定性が加熱サイクル中に増大し得る。
【0039】
別の観点では、サセプタフィルムは、適度に延伸したポリマーフィルム、すなわちフィルムの少なくとも1つの寸法が20%〜約200%、例えば約20%〜約150%、例えば約30%〜約70%、例えば約50%増大する延伸プロセスに供したポリマーフィルムを含み得る。これは、約1.2:1〜約3:1、例えば約1.2:1〜約2.5:1、例えば約1.3:1〜約1.7:1、例えば約1.5:1の各延伸比に対応する(延伸比は伸張率(%)を100で除算し、1を加算したものに等しい)。かかる延伸プロセスは、非延伸フィルムが特定の用途に対して十分な強度を欠いている場合に有用であり得る。
【0040】
様々な例のそれぞれでは、本開示による適度に延伸したフィルムは以下のうちの1つ又は複数を有すると特徴付けることができる:
約1.62未満、約1.61未満、約1.60未満、又は約1.59未満、例えば約1.57〜約1.59、例えば約1.5733〜約1.5848、例えば約1.5791の屈折率(n)、
約0.05未満、約0.035未満、約0.01未満、又は約0.0024未満、例えば約−0.013〜約0.0024、例えば約−0.0029の複屈折(n−n)、及び
約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、又は約7%未満の結晶度。1つの具体例では、フィルムの結晶度は約5%であり得る。しかしながら、他の結晶度、屈折率、複屈折、及びそれぞれの範囲が好適であり得る。
【0041】
延伸は、二軸性若しくは二方向性(すなわち、縦方向(MD)及び横方向(CD)の両方)であってもよく、又は一軸性若しくは一方向性(すなわち、MD又はCDのいずれか)であってもよい。驚くべきことに、本発明者らは、或る特定のプロセス条件下で、結晶度のレベルを従来の二軸延伸PETで観察されるレベルまで誘導することなく、フィルムに強度を与えることができると判断している。具体的には該条件は、一般的に通常の延伸プロセスに関連する、伸長誘導性の結晶化及び熱誘導性の結晶化を最小限に抑えるように選択することができる。したがって延伸プロセス条件を、望ましいレベルの結晶度、及びひいては特定のサセプタフィルム用途に望ましい加熱性能を与えるようにカスタマイズすることができる。
【0042】
延伸プロセスに精通した者により理解されるように、他のものは全て等しいが、Tg(ポリエチレンテレフタレートではおよそ80℃)前後での伸張には、所与の伸張率を達成するために、より多くの力を働かせる必要があり、より大きい圧力がポリマーに加えられる。これは、標準的な高度に二軸延伸したPETポリマーフィルムで、高結晶度、高い残存延伸及び高い機械強度特性を発現するために追及される典型的な経路である。多くの場合、得られるフィルムの結晶度は50%を超える。しかしながら、本発明者らは、高レベルの結晶度及び残存延伸を求める従来の実務から逸脱することが有用であり得ることを見出した。それどころか、本開示のフィルムは概して、伸長誘導性の結晶化を最小限に抑えるようにTgを十分に上回る温度で伸張させることができる。例として実験室の試験において、少なくとも約105℃の温度で伸張させ、少なくとも約170℃の温度でアニーリングしたフィルムは、実施例に関連して更に以下で述べられるように、非延伸フィルムの加熱性能を犠牲にすることなく、顕著な強度の改善を達成した。これらの温度は例示にすぎず、実験室規模の設備で得たものであり(実施例を参照されたい)、かかる温度を所与のポリマー系に対して商業規模の設備で適用しても又は適用しなくてもよいことに留意する。
【0043】
別の観点では、本発明者らは、ポリマーを適切に選択すれば、より高レベルの延伸により、依然として相対的に低い結晶度が得られ、そのため従来のフィルムよりも高い加熱能を有するサセプタフィルムを製造することができることも発見した。例として、標準的なPETホモポリマーの融点以下の融点を有するコポリエステルにより、優れた加熱特徴を有するサセプタフィルムを製造することができることが発見されている。理論に拘束されることを意図しないが、本開示で対象となるコポリエステルの立体障害を考慮すると、結晶度の進行が遅延し、これらの材料から作製される高延伸フィルムであっても通常、PETホモポリマーを用いて一般的に達成される絶対的な結晶度レベルに達することは不可能であると考えられる。たとえこれらのフィルムが加工処理中に潜在的な最大延伸結晶度近くまで達成することができるとしても、コポリマーはホモポリマーでは可能な絶対的な結晶度レベルに達することはできない。したがって本明細書で開示されるタイプのコポリエステルから製造されるフィルムは、非延伸であるか、僅かに延伸したか、適度に延伸したか又は高度に延伸したかにかかわらず、二軸延伸した標準的なPETフィルム及び熱安定化した標準的なPETフィルムにおいて典型的なものよりも低い屈折率及び複屈折値を有する。
【0044】
より具体的には、様々な例のそれぞれでは、本開示による高延伸フィルムは以下のうちの1つ又は複数を有すると特徴付けることができる:
約1.64未満、例えば1.56〜約1.63、例えば約1.58〜約1.61、例えば約1.5769〜約1.6124、例えば約1.5920の屈折率(n)、
約0.15未満、約0.14未満、約0.125未満、又は約0.11未満、例えば約0.0030〜約0.10、例えば約0.0029〜約0.1022、例えば約0.0437の複屈折(n−n)、及び
約50%未満、約40%未満、約30%未満、約26%未満、約20%未満、又は約15%未満の結晶度。1つの特定の例では、結晶度は約7%であり得る。しかしながら、他の結晶度、屈折率、複屈折、及びそれぞれの範囲が好適であり得る。これらの値は、延伸プロセス中のフィルムにおけるかなりの量の伸長誘導性又は熱誘導性の結晶度の回避を反映する。したがって高延伸サセプタフィルム及び構造(コポリエステルを含むベースフィルムを含む)は、上記に記載の非延伸の、僅かに延伸した、及び/又は適度に延伸したベースフィルムと同程度の優れた加熱特性を有することが示されている。
【0045】
これらの結果は予期せぬものであり、ホモポリマーPETよりも高い融点を有するコポリエステルを、より大きい温度耐性を得るために使用した従来技術とは大きく異なる。より長期間、より高い温度で二軸延伸フィルムを熱硬化することにより、加熱能がより高いサセプタベースフィルムを得ようとしている者もいる。これらは様々な結果を生じた。本発明者らは、高延伸ホモポリマーPETフィルムに存在するかなりの量の収縮力の放出の開始温度を僅かに上昇させても、クレージング及び加熱の結果として起こる劣化及び熱発生能の制限に対する耐性の増大への影響はほとんどないことを発見した。しかしながら、本発明者らは、結晶度及び残存延伸を最小限に抑えることにより、高延伸フィルムであっても従来的に使用されるサセプタフィルムよりも優れた加熱性能を有する機械強度のある薄いフィルムを作製することが可能であることを学習した。
【0046】
任意の好適なコポリエステルを使用することができる。コポリエステルの融点は概して、約260℃未満、例えば約200℃〜約260℃、例えば約220℃〜約260℃であり得る。幾つかの例では、コポリエステルの融点は、約250℃未満、例えば約200℃〜約250℃、例えば約220℃〜約250℃であり得る。この融点は、第2のDSC加熱により求める場合、250℃〜260℃の範囲に結晶の融点のピークを有する標準的なPETポリマーの融点と同程度又はそれより低いものでであり得るが、幾つかの参考文献ではPETホモポリマーの融点が265℃と高いことが報告されている(Oxford University Pressから1999年に発行されたMalcolm Stevensによる"Polymer Chemistry, An Introduction 3rd Edition"(344頁)を参照されたい)。
【0047】
コポリエステルは概して、標準的な二軸延伸PETフィルム又は熱安定化PETフィルムと一般的に関連する非常に高い(>50%)レベルの結晶度の発生に対しても耐性を有し得る。幾つかの例では、ベースフィルムは、高度な二軸延伸(二軸延伸した標準的なPETポリマーフィルム又は熱安定化したPETポリマーフィルムで一般的な伸張率と同程度の)を受けているにもかかわらず約37%未満の結晶度を有し得る。同様に低い又は更に低い結晶度値が、コポリエステルから製造される非延伸の、僅かに延伸したか、又は適度に延伸したフィルムで見られると予測される。
【0048】
サセプタベースフィルムでの使用に好適であり得るコポリマーの具体例の1つはSKYPET−BR(SK Chemicals(Seoul, Korea))であり、これはCAS登録番号25640−14−6として、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,2−エタンジオールを有する1,4−ベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルポリマー(1,4-benzenedicarboxylic, dimethyl ester, polymer with 1,4-cyclohexanedimethanol and 1,2-ethanediol)というCA索引名で記載された物質の広範な分類内のものである。SKYPET−BRは標準的なPETポリマーの通常の融点を大きく下回る236+/−2℃の融点を有する。同様の特性を有する代替的なポリマーは、Eastman Chemical Company, Kingsport, TNにより製造されているEastman PET 9921である。これらの材料は、1,4−シクロヘキサンジメタノール(一般的にCHDMと略される)をベースとするコポリエステル材料の広範な群の一部であり、1,4−シクロヘキサンジメタノールによるポリ(エチレンテレフタレート)の修飾、又はエチレングリコール若しくはイソフタル酸によるポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の修飾により形成することができる。
【0049】
他の潜在的に好適な材料としては、ジメチルテレフタレート又はテレフタル酸及びエチレングリコールと、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸及びジエチレングリコールのうちの1つ又は複数との縮合により調製されるポリエチレンテレフタレートコポリエステル(ジエチレングリコール−イソフタレート修飾)が挙げられる。得られるポリマーは修飾又は共重合のレベルに関して様々であってもよく、それにより様々な特性が得られ、その特性をこれらのポリマーから製造される基板サセプタフィルムの性能を変更するのに活用することができる。
【0050】
幾つかの例が本明細書で与えられているが、本開示日より後に開発されるコポリエステルを含む、数多くのそれらの他の可能性及び組合せが考慮されることを理解されたい。
【0051】
更に別の加点では、本発明者らは、より高い延伸温度(それ以外は全て等しい)がより高い加熱能をもたらし得ることを認めている。理論に拘束されることを意図しないが、これはより高い温度でのより高いポリマー鎖の移動性の結果であり、それにより延伸中に鎖同士が互いに通過しやすくなると考えられる。これにより、所与の程度の伸張を達成するのに必要とされる圧力が低減し、最小限に抑えることが有益であると考えられている伸長誘導性の結晶度を低減するように作用させることができる。ポリエステルの2つの回転異性体(ゴーシュ型及びトランス型)が存在する。ゴーシュ型異性体は一般的に弛緩状態にsより特徴付けることができ、トランス型異性体は拡張したより高いエネルギー状態にある。重要なことに、ゴーシュ型異性体はその構造の非晶質ドメイン又は領域でしか見出されておらず、トランス型異性体は結晶性及び非晶質の領域両方に存在し得る。トランス型異性体のみが結晶性の領域に存在する。
【0052】
伸長誘導性の結晶化中に、ゴーシュ型異性体の含有量の一部が、非晶質領域でトランス型に変換され、総結晶度及び残存延伸度(orientation)が更に増大すると理解される。幾つかのプロセス状況、例えば更なる結晶化を誘導しない熱硬化では、潜在的に有用な方法の結果として変換の幾つかを逆転させ、結晶度を低下させることも可能であり得る。理論に拘束されることを意図しないが、ゴーシュ−トランス変換を最小限に抑えること(又はその変換の更に幾つかの適度な逆転)は本開示のサセプタフィルム及び構造の性能に寄与し、本開示のフィルムの非晶質ドメイン及び結晶性ドメインのゴーシュ型及びトランス型の含有量は直接測定されていないが、ゴーシュ型及びトランス型の含有量は、本明細書で開示される選択される材料及びプロセスの、これまでの実務を表す標準的な及び熱安定化したフィルムを特徴付ける通常50%を超える結晶度レベルと比較して、得られるサセプタ基板フィルムの結晶度レベル全体を最小限に抑える能力により推測することができると考えられる。また本開示のフィルムにおけるより高いゴーシュ型異性体含有量は、本明細書で報告されたより低い屈折率及び複屈折値と一致する。
【0053】
更に別の態様では、フィルムに応じて、実施例に関連して述べられるように、より高い温度でアニーリングすることにより更なる加熱能を幾らか与えることも、ホモポリマーフィルムで達成することができるものを超える利点であり得る。
【0054】
上記のコポリエステルは、非延伸フィルム、僅かに延伸したフィルム及び適度に延伸したフィルムを製造するのに同じように使用することができることを理解されたい。かかる場合はいずれも、高延伸フィルムでは、コポリエステルをコポリマー単独で構成される均一構造のフィルム、又はコポリマー及びホモポリマーの別々の層を組み合せた共押出体(coextrusions)のいずれかで使用することができる。コポリマー及びホモポリマーポリエステルのブレンドも、100%ホモポリマー構造と比較して有利に使用することができる。コポリエステルを、更に存在するホモポリマーと組み合わせることは、100%ホモポリマーから構成されるベースフィルムより優れたサセプタベースフィルムとしての特性を有するフィルムを得るのに役立つ。コポリエステルを単独で又は1つ若しくは複数の他のポリマーと組み合せて適度に延伸したフィルムに使用する場合、PETホモポリマーのみを含むサセプタベースフィルムと比較して50%を超える結晶度レベルを誘導せずに、より大きい程度の延伸を使用することができることに留意する。様々な実施例のそれぞれでは、コポリエステル及びPETホモポリマーを含むフィルムは以下のうちの1つ又は複数を有すると特徴付けることができる:
約1.64未満、例えば約1.60〜約1.63、又は約1.5975〜約1.6280、例えば約1.6123の屈折率(n)、
約0.15未満、約0.14未満、約0.125未満、又は約0.11未満、例えば約0.065〜約0.14、例えば約0.0654〜約0.1355、例えば約0.1031の複屈折(n−n)、及び
約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、又は約10%未満の結晶度。しかしながら、他の結晶度、屈折率、複屈折、及びそれぞれの範囲が好適であり得る。他のポリマーを単独で又は任意の組合せで使用し、本発明のベースフィルムと合わせて本明細書中に記載の特性を有する様々なサセプタベースフィルムを形成することができることも考慮する。
【0055】
本明細書に記載の又はそこで考慮されるサセプタベースフィルムのいずれかにおいて、ポリマーフィルムの結晶化の動態を、加熱サイクルの様々な時点での所望のレベルの結晶度を達成するように操作することができ、時間、温度及び核形成剤の使用は所望のサセプタフィルム性能を実現するために必要に応じて調整することができる変数である。さらに、様々な食品が最適な調製のために種々の加熱サイクルを必要とするため、初期結晶度レベルの制御に関連する更なる自由度、及び加熱時の結晶度の更なる増大の動態が、カスタマイズ能の拡張を可能にし、これにより本明細書に記載のサセプタフィルムの有用性及び独自性を更に高めることができることが予測される。
【0056】
幾つかの場合、サセプタフィルムは2回以上使用することが意図され得ることも考慮する。かかる場合、ポリマーフィルムの結晶度は2回目の使用及び任意のその後の使用の際により高くなり得る。
【0057】
ポリマーフィルムを任意の好適な方法で形成することができる。一例では、ポリマーフィルム基板は水急冷フィルム、キャストフィルム、又は迅速な急冷プロセスを用いて形成される任意の他の種類のポリマーフィルムであり得る。しかしながら、多数の他のプロセス及びシステムを使用することができる。かかるフィルムが従来型の押出後の延伸プロセスを受けない場合、幾つかの場合で、該フィルムは取り扱うのが、及び/又はサセプタ構造へと変換するのが困難であり得ることが理解される。このため、フィルムはフィルムの加工性を改善するために、僅かに(例えば最大20%、例えば約5%〜20%)フィルムを延伸する(すなわち伸張する)最小限の延伸プロセスに供され得ることが考慮される。かかる延伸はそれぞれの方向に約350%〜450%伸張する標準的な高延伸フィルムと比較して相対的に小さいため、かかる僅かに延伸したフィルムは本明細書では実質的に非延伸であるとみなすことができる。
【0058】
必要に応じて、最小限延伸したフィルムの結晶度を、押出後の熱処理又はコンディショニングを通して制御して増大させることができる。上に記載のような結晶化動態を変更する添加剤も使用することができる。
【0059】
付加的には又は代替的には、その特性を変更して加工を容易にするために、又はより堅固なマイクロ波加熱性能を与えるために、添加剤をフィルムに組み込むことができる。一例として、強度を高める添加剤(例えばポリマー)を使用して、添加剤を使用しないと幾らか脆弱な低ゲージのキャストAPETフィルムをより堅固にすることができる。好適であり得る添加剤の例としては、エチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、又はポリマーフィルムの強度及び/若しくは加工性を改善する任意の他の好適なポリマー若しくは材料が挙げられる。様々な機能又は利点を与える他の添加剤を使用してもよい。かかる添加剤のいずれかを任意の好適な量、例えば最大でポリマーフィルムの約15重量%、最大でポリマーフィルムの約10重量%、最大でポリマーフィルムの約5重量%、又は任意の他の好適な量添加してもよい。他の例では、添加剤をポリマーフィルムの約1重量%〜約10重量%、約2重量%〜約8重量%、3重量%〜約5重量%の量で、又は任意の好適な量若しくは任意の好適な範囲の量で使用してもよい。
【0060】
サセプタベースフィルムのいずれかが、少なくとも2つの異なる層(その各々が1つ又は複数のポリマーと、任意で1つ又は複数の添加剤とを含み得る)を含む多層フィルムを含み得る。該層は共押出ししてもよく、又は別々に形成し、接着剤、タイ層(tie layer:結着層)、熱結合を用いて、若しくは任意の他の好適な技法を用いて互いに接合してもよい。他の好適な技法は押出コーティング及び共押出コーティングを含み得る。
【0061】
必要に応じて、多層フィルムのそれぞれの層は、迅速に急冷するフィルム、すなわち押出金型の隙間から出た後、ポリマー溶融物の非常に迅速な凍結をもたらす条件下で形成されるフィルムであり得る。この迅速な凍結、及び固化ポリマーフィルムの温度の更なる低下により、結晶性のミクロ構造又はマクロ構造の発達が最小限に抑えられる。上述のように、低結晶度を有するフィルムを使用してサセプタフィルムを形成する場合、サセプタフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートから作製される従来型のサセプタと比較して、マイクロ波加熱中により高い温度及び熱流束を達成することが可能であると考えられる。
【0062】
必要に応じて、所望の特質を有するポリマーを選択することにより更なる機能特性を多層フィルムに与えることができる。例えば、エチレンビニルアルコール(EVOH)を使用して、酸素障壁特性を与えることができる。ポリプロピレン(PP)を使用して、水蒸気障壁特性を与えることができる。特にチルド食品又は常温保存可能食品(通常、冷凍食品よりも高度な酸素障壁及び水分障壁が必要である)に関して、かかる特性により、該フィルムが制御又は変更雰囲気のパッケージングに有用になり得る。多くの他の可能性が考慮される。
【0063】
多くの多層フィルムが本開示により考慮される。例示であり、これらに限定されないが、幾つかの例示的な構造としては、(a)APET/オレフィン;(b)APET/タイ層/オレフィン;(c)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/APET;(d)APET/タイ層/PP/タイ層/APET;(e)APET/タイ層/PP/タイ層/非晶質ナイロン6又はナイロン6,6;(f)APET/タイ層/APET;(g)APET/タイ層/EVOH/タイ層/APET;(h)APET/タイ層;(i)APET/タイ層/全層のリグラインド(regrind)/タイ層/EVOH/タイ層/APET;(j)APET/タイ層/EVOH/タイ層/非晶質ナイロン6又はナイロン6,6;(k)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/EVOH/タイ層/APET;(l)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/EVOH/タイ層/ナイロン6,6;(m)PETホモポリマー/コポリエステル/PETホモポリマー;及び(n)コポリエステル/PETホモポリマー/コポリエステルが挙げられる。
【0064】
例a〜例c及び例k〜例lでは、並びに本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、オレフィン層は、任意の好適なポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、かかるポリマーのいずれかのコポリマー、及び/又はメタロセン触媒型のこれらのポリマー若しくはコポリマーを含み得る。
【0065】
例iでは、及び本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、リグラインド層は従来の実務に従って、フィルム縁片及び任意の他の再生利用可能な材料を含み得る。様々な他の例(例a〜例h又は例j〜例l)又は本開示で考慮される他のフィルムのいずれもが、かかるリグラインド層を含有し得る。幾つかの場合では、リグラインド層は隣接するフィルム層と十分に結合させるために、タイ層を必要とすることがある。
【0066】
例b〜例jでは、及び本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、タイ層は隣接した層間での所望のレベルの接着を与える任意の好適な材料を含み得る。幾つかの例示的な実施形態では、タイ層はDuPontのBynel(登録商標)、Equistar, a LyondellBasell companyのPlexar(登録商標)、又はExxonのExxlor(商標)を含み得る。タイ層の正確な選択は、接合を目的とする隣接したポリマー、及び共押出プロセスにおける層の均一な分布を確実にするレオロジー特性に応じて変わる。例えば、DuPontのBynel 21E781はPET、ナイロン、EVOH、ポリエチレン(PE)、PP、及びエチレンコポリマーとの接着に使用されることが最も多いBynel 2100シリーズの無水修飾エチレンアクリレート樹脂の1つ(part)である。Plexar(登録商標)PX1007は、これまでに言及されたBynel樹脂と同様の範囲の材料を結合するのに使用することができるエチレン−酢酸ビニルコポリマー群の1つである。Exxlor(登録商標)グレードを使用して、様々なナイロンポリマーの衝撃性能を高めることができる。さらに、タイ層及び他の樹脂を、食品中への最小限の樹脂抽出物が許容されるレトルトパウチ等の用途に関して高温フィルムでこれまでに認められた使用に対して選択することができる。
【0067】
非晶質ナイロン6又はナイロン6,6のいずれかを、本開示の範囲内で上記の多層フィルム構造又は任意の他の構造のいずれかでAPETの代わりに用いることができることが考慮される。数多くの他の構造が考慮される。
【0068】
ポリマーフィルムの基礎重量及び/又はキャリパー(caliper:厚さ)は、単層又は多層にかかわらず、それぞれの用途で異なり得る。幾つかの実施形態では、フィルムは約12ミクロン厚〜約50ミクロン厚、例えば約12ミクロン厚〜約35ミクロン厚、例えば約12ミクロン厚〜20ミクロン厚であり得る。しかしながら、他のキャリパーが考慮される。
【0069】
マイクロ波エネルギー相互作用材料層(すなわちサセプタ又はマイクロ波感受性コーティング)をポリマーフィルムの片側又は両側に被着させ、サセプタフィルムを形成することができる。マイクロ波エネルギー相互作用材料は、導電性若しくは半導性材料、例えば真空蒸着金属若しくは合金、又は金属インク、有機インク、無機インク、金属ペースト、有機ペースト、無機ペースト、又はそれらの任意の組合せを含み得る。好適であり得る金属及び合金の例としては、アルミニウム、クロム、銅、インコネル合金(ニオブを含むニッケル−クロム−モリブデン合金)、鉄、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン及びそれらの任意の組合せ又は合金が挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
代替的には、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、任意に導電性材料と併せて使用される金属酸化物、例えばアルミニウム、鉄及びスズの酸化物を含み得る。好適であり得る別の金属酸化物はインジウムスズ酸化物(ITO)である。ITOは、より均一な結晶構造を有するため、ほとんどのコーティング厚において透明である。
【0071】
更に代替的には、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、好適な導電性、半導性又は非導電性の人工誘電体又は強誘電体を含み得る。人工誘電体は、重合体又は他の好適なマトリクス又は結合剤中に導電性の細分化された材料を含み、導電性金属、例えばアルミニウムのフレークを含み得る。
【0072】
他の実施形態では、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、例えば米国特許第4,943,456号、同第5,002,826号、同第5,118,747号及び同第5,410,135号に開示のようなカーボンベースであり得る。
【0073】
更に他の実施形態では、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、電子レンジにおける電磁エネルギーの磁性部分と相互作用し得る。正確に選択されたこの種類の材料は、材料のキュリー温度に到達すると、相互作用の喪失に基づき自己制限的であり得る。かかる相互作用コーティングの一例は、米国特許第4,283,427号に記載されている。
【0074】
それから、サセプタフィルムを別の材料に積層して又はその他の方法で接合して、サセプタ構造又はサセプタパッケージを製造することができる。一例において、サセプタフィルムを紙又は板紙に積層して又はその他の方法で接合して、従来型の紙又は板紙ベースのサセプタ構造よりも高い熱流束出力を有するサセプタ構造を作製することができる。紙は約15lb/連(lb/3000平方フィート)〜約60lb/連、例えば約20lb/連〜約40lb/連、例えば約25lb/連の基礎重量を有し得る。板紙は約60lb/連〜約330lb/連、例えば約80lb/連〜約140lb/連の基礎重量を有し得る。板紙は一般的に、約6ミル〜約30ミル、例えば約12ミル〜約28ミルの厚さを有し得る。1つの具体例では、板紙は約14ミル(0.014インチ)の厚さを有する。任意の好適な板紙、例えば固形漂白硫酸板、例えばInternational Paper Company(Memphis, TN)から市販されているFortress(登録商標)ボード、又は固形無漂白硫酸板、例えばGraphic Packaging Internationalから市販されているSUS(登録商標)ボードを使用することができる。
【0075】
代替的には、サセプタフィルムを、別のポリマーフィルムに積層するか、又はその他の方法で接合することができる。ポリマーフィルムが、そのベースフィルム対応物と同様に収縮をほとんど又は全く示さず、このためサセプタフィルムの性能特質に悪影響を与えないことが考慮される。かかるポリマーフィルムが特定の用途の必要に応じて、透明、半透明、又は不透明であり得ることも考慮される。積層(又はその他の方法での接合)構造が熱成形可能なものであり得ることも更に考慮される。浅絞り型は熱成形中、最も高い伸張領域を除いて全ての領域でサセプタの機能性を保つことができ、サセプタの機能性の程度をカスタマイズするために局所的な伸張率を調整するダイ及び/又はプラグ設計を有利に使用することができることが予測される。本開示のフィルムの本質的により低い結晶度が、結晶度の高い材料が容易に形成しないことから、特にインラインの製袋充填包装機でのフィルム自体の成形性に有利に役立つ。形成された構造の後結晶化は当業者にとって一般的な方法により誘導することができる。
【0076】
必要に応じて、サセプタベースフィルムを、ポリマーフィルム上にマイクロ波エネルギー相互作用材料を被着させす前に表面を修飾するために1つ又は複数の処理に供することができる。例示的であり、これらに限定されないが、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムの表面の粗度を変更するためにプラズマ処理に供することができる。理論に拘束されることを意図しないが、かかる表面処理により、マイクロ波エネルギー相互作用材料を受容するためのより均一な表面をもたらすことができ、これにより、得られるサセプタ構造の熱流束及び最大温度を増大させることができると考えられる。かかる処理は2010年2月22日付けで出願された米国特許出願第12/709,578号(その全体が参照により本明細書に援用される)で検討されている。
【0077】
また必要に応じて、サセプタフィルムを他のマイクロ波エネルギー相互作用要素及び/又は構造と併せて使用することができる。複数のサセプタ層を含む構造も検討される。かかる要素及び/又は構造と共に本発明のサセプタフィルム及び/又はサセプタ構造を使用することにより、従来型のサセプタに比べて結果の改善がもたらされ得ることが理解される。
【0078】
例えば、サセプタフィルムを、衝突するマイクロ波エネルギーのかなりの部分を反射するのに十分な厚さを有するホイル又は高光学密度の蒸着材料(evaporated material)と共に使用することができる。かかる要素は通常、約0.000285インチ〜約0.005インチ、例えば約0.0003インチ〜約0.003インチの厚さを概ね有する中実のパッチの形態の、導電性の反射金属又は合金、例えばアルミニウム、銅又はステンレス鋼から形成される。他のかかる要素は、約0.00035インチ〜約0.002インチ、例えば0.0016インチの厚さを有し得る。
【0079】
幾つかの場合で、マイクロ波エネルギー反射(又は反射性)要素は、食品が加熱中にスコーチング又は乾燥する傾向がある場合、遮蔽要素として使用することができる。他の場合では、より小さいマイクロ波エネルギー反射要素を使用して、マイクロ波エネルギー強度を拡散又は減少させることができる。かかるマイクロ波エネルギー反射要素を利用する材料の一例は、MicroRite(登録商標)パッケージング材料という商品名でGraphic Packaging International, Inc.(Marietta, GA)から市販されている。他の例では、複数のマイクロ波エネルギー反射要素を配置し、マイクロ波エネルギーを食品の特定の領域に方向付けるマイクロ波エネルギー分配要素を形成することができる。必要に応じて、ループはマイクロ波エネルギーを共振させ、それにより分配効果を高める長さを有し得る。マイクロ波エネルギー分配要素の例は、米国特許第6,204,492号、同第6,433,322号、同第6,552,315号及び同第6,677,563号(それらの全体がそれぞれ、参照により援用される)に記載されている。
【0080】
更に別の例では、サセプタフィルム及び/若しくはサセプタ構造をマイクロ波エネルギー相互作用絶縁材料と共に使用することができるか、又はサセプタフィルム及び/若しくはサセプタ構造を使用して、マイクロ波エネルギー相互作用絶縁材料を形成することができる。かかる材料の例は、米国特許第7,019,271号、米国特許第7,351,942号、及び2008年4月3日付けで公開された米国特許出願公開第2008/0078759号(それらの全体がそれぞれ、参照により本明細書中に援用される)で与えられている。
【0081】
必要に応じて、本明細書に記載されるか又は本明細書によって考慮される多くのマイクロ波エネルギー相互作用要素のいずれかは、実質的に連続的な、すなわち実質的な破断部若しくは中断部を有しないものであってもよく、又は例えばマイクロ波エネルギーを透過させる1つ又は複数の破断部若しくは開口部を含むことにより不連続なものであってもよい。破断部又は開口部は、構造全体を貫通するか、又は1つ又は複数の層のみを貫通してもよい。かかる破断部又は開口部の数、形状、サイズ及び位置は、形成される構築物の種類、構築物内又は構築物上で加熱される食品、加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングの所望の程度、食品の均一な加熱を達成するためにマイクロ波エネルギーへの直接暴露が必要又は望ましいか否か、直接加熱による食品の温度変化の調節の必要性、並びに通気する必要があるのか否か、またどの程度までその必要があるのかに応じて、特定の用途に関して変わり得る。
【0082】
例として、マイクロ波エネルギー相互作用要素は、食品の誘電加熱をもたらす1つ又は複数の透過性領域を含み得る。しかしながら、マイクロ波エネルギー相互作用要素がサセプタを含む場合、かかる開口部が総マイクロ波エネルギー相互作用領域を減少させ、それにより食品の表面の加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングに利用可能なマイクロ波エネルギー相互作用材料の量を減少させる。このため、マイクロ波エネルギー相互作用領域とマイクロ波エネルギー透過性領域との相対量は、特定の食品に対して所望の全体としての加熱特性を達成するためにバランスをとる必要がある。
【0083】
別の例として、サセプタの1つ又は複数の部分を、マイクロ波エネルギーをブラウニング及び/若しくはクリスピングさせる対象でない食品の部分に又は環境を加熱するのに失わせるのではなく、加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングの対象となる領域に確実に効率的に集中させるために、マイクロ波エネルギーに不活性となるように設計することができる。付加的には又は代替的には、食品及び/又はサセプタを含む構築物の過熱又はチャーリングを防ぐために、1つ又は複数の不連続又は不活性領域を作製することが有益であり得る。
【0084】
更に別の例として、サセプタは、食品への熱移動が低くサセプタが熱くなり過ぎる傾向があり得るサセプタの領域でサセプタにおける亀裂の伝播を制限し、それにより過熱を制御する1つ又は複数の「ヒューズ」要素を組み込むことができる。ヒューズのサイズ及び形状を必要に応じて変えることができる。かかるヒューズを含むサセプタの例は、例えば米国特許第5,412,187号、米国特許第5,530,231号、2008年2月14日付けで公開された米国特許出願公開第2008/0035634号、及び2007年11月8日付けで公開されたPCT出願の国際公開第2007/127371号(それらの全体がそれぞれ、参照により本明細書中に援用される)で与えられる。
【0085】
サセプタにおけるかかる不連続又は開口部のいずれかは、構造若しくは構築物を形成するのに使用される1つ又は複数の層若しくは材料における物理的な開口部若しくは空隙を含み得るか、又は非物理的な「開口部」であり得ることに留意する。非物理的な開口部は、構造を切り抜く実際の空隙又は孔が存在せずともマイクロ波エネルギーが構造を通過することを可能にするマイクロ波エネルギー透過性領域である。かかる領域は、単にマイクロ波エネルギー相互作用材料を特定の領域に適用しないことによって、特定の領域からマイクロ波エネルギー相互作用材料を取り除くことによって、又は特定の領域を機械的に不活性化する(この領域を電気的に不連続にする)ことによって形成することができる。代替的には、これらの領域は、特定の領域のマイクロ波エネルギー相互作用材料を化学的に不活性化し、それによりその領域のマイクロ波エネルギー相互作用材料をマイクロ波エネルギーに対して透過性の(すなわちマイクロ波エネルギーに不活性の)物質に変換することによって形成することができる。物理的な開口部及び非物理的な開口部の両方が食品をマイクロ波エネルギーによって直接加熱することを可能にするが、物理的な開口部は、食品から放出される水蒸気又は他の蒸気又は液体を食品から逃がすことを可能にする通気機能も提供する。
【0086】
本発明は、限定することは決して意図しない以下の実施例を考慮して更に理解することができる。提示される情報は全て他に特に規定されない限り、およその値を表す。
【実施例】
【0087】
実施例1
熱量測定試験を、様々なサセプタ構造により生じる熱流束、及び様々なサセプタ構造が到達する最大温度を決定するために行った。表1に記載のように、様々なポリマーフィルムを使用して、サセプタ構造を形成した。ポリマーフィルムには、DuPontのMylar(登録商標)800C 二軸延伸PET(DuPont Teijin Films(商標), Hopewell, VA)、Pure-StatのAPET(Pure-Stat Technologies, Inc., Lewiston, Maine)、DuPontのHS2 二軸延伸PET(DuPont Teijin Films(商標), Hopewell, VA)、及びTorayのLumirror(登録商標)F65 二軸延伸PET(Toray Films Europe)が含まれていた。約1.5lb/連〜約2.0lb/連の以下の接着剤のうちの1つを使用してサセプタフィルムを板紙支持層に接合することによりそれぞれのサセプタ構造を作製した:Royalの20469(Royal Adhesives & Sealants, South Bend, IN)、Royalの20123(Royal Adhesives & Sealants, South Bend, IN)又はHenkelの5T−5380M5(Henkel Adhesives, Elgin, IL)。しかしながら他の好適な接着剤を使用してもよい。
【0088】
屈折率の測定値はMetriconの2010 Prism Coupler(Metricon Corporation, Pennington, NJ)を用いて633nmで採取した。フィルムに関する結果を(n)(縦方向、MD)、(n)(横方向又は横断方向、CD)、及び(n)(厚さ)方向として列挙している。複屈折(n−n)は屈折率から算出し、本明細書を通して、フィルムのMDにおける屈折率と厚さにおける屈折率との差を表す。これらのフィルムは全て、着色剤を添加せず又は色素形成が起こらなかったため、透明であった。
【0089】
それぞれ市販の標準的なPETホモポリマーフィルム及び熱安定化PETホモポリマーフィルムを用いて作製したサンプル1−1及びサンプル1−6は、MD及びCDの両方で高い屈折率(それぞれn及びn)を示したが、これは従来技術の高度に延伸した結晶度の高いフィルムの特徴である。優れた性能のキャストフィルムをベースとする構造であるサンプル1−3及びサンプル1−4は、非晶質ホモポリマーPETポリマーで報告された値に実際にかなり近い非常に低い(n)値及び(n)値を示す。このデータをサンプル1−1及びサンプル1−6で50%を超え、サンプル1−3及びサンプル1−4で僅か約5%であった結晶度と組み合せると、これらのサンプルは残存延伸がたとえあったとしてもほとんどない大部分が非晶質のフィルムを表すことが確認される。サンプル1−1及びサンプル1−6における(n)値と(n)値との差は、MDとCDとの延伸又は熱硬化の差が小さいことを表しているが、これらは合理的に均衡を保ったMD/CD延伸を有するフィルムで起こることが期待されることの範囲内である。
【0090】
熱量測定データを、パナソニック株式会社の1300ワットの家庭用(consumer)電子レンジモデルNN−S760WA上に取り付けられた、8つのチャネルを有するFISOのMWS Microwave Work Station光ファイバー温度検出装置(FISO, Quebec, Canada)を用いて収集した。約5インチの直径を有するサンプルを、各々が約0.25インチの厚さと約5インチの直径とを有する2つの円形のPyrex(登録商標)プレートの間に配置した。約1インチの厚さの拡張(expanded)ポリスチレン絶縁シートの上に乗せた約250gの水が入ったプラスチック製のボールをプレートの上に置いた(そのため水からの放射熱はプレートに影響を与えなかった)。底のプレートを3つの実質的に三角形のセラミックスタンドを用いて、ガラス製のターンテーブルの約1インチ上に持ち上げた。熱光学プローブを上部のプレートの上部表面に取り付け、プレートの表面温度を測定した。約1300Wの電子レンジにおいて約5分間最大出力でサンプルを加熱した後、上部プレート表面の初期周囲温度からの平均最大温度上昇(℃)を記録した(熱量測定試験法の有限要素解析モデリングは、平均最大温度上昇がサセプタ構造により生じる熱流束に比例することを示している)。それぞれのサンプルの導電率σ(mmho/sq)を熱量測定試験を行う前にDelcomの717コンダクタンスモニター(Delcom Instruments, Inc., Prescott, WI)を用いて測定し、5つのデータ点を収集し、平均を求めた。この結果は表1に示す。ここでΔTはサンプルの温度の上昇であり、ΔΔTはサンプルの温度の上昇と対照サンプル(構造1−1、標準的な二軸延伸した熱硬化PETフィルム)の温度の上昇との間の差異である。全てのサンプルの初期温度が約22℃(周囲温度)であったため、それぞれのサンプルで達する絶対温度は報告されたΔTよりも約22℃高かったことに留意する。
【0091】
概して、サセプタ構造1−3及びサセプタ構造1−4が最大の加熱出力及び最小量のクレージングを示したが、構造1−1は構造1−3及び構造1−4よりも低い加熱出力及び最大量のクレージングを示した。構造1−6は構造1−1よりも少ないクレージングを有し、中程度の加熱出力を示した。
【0092】
特に、既に1回加熱している構造1−5は、構造1−1よりも大きい出力を示した。視認できるクレージングは観察されなかったが、(ΔTmaxにより明らかなように)サンプルは依然として或る程度の自己制限的な挙動を示した。理論に拘束されることは意図しないが、この自己制限的な挙動は少なくとも部分的にはマイクロ波加熱サイクルの間のポリマーフィルム密度の変化の結果であると考えられる。具体的には、ポリマーフィルム密度はポリマーフィルムが加熱するにつれて低減し得ることが知られている。しかしながら、ポリマーフィルムが加熱するにつれて、結晶度も増大し、それに伴い密度も増大する。この密度の増大の程度が初期の密度の減少の程度を超えており、そのため加熱サイクルの間は全体として密度が増大していると考えられる。この密度の増大が原子スケールでの電気断絶を生じるサセプタ構造の破壊又はミクロクレージングを引き起こす可能性があると更に考えられる。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例2
様々な加熱時間による実施例1に記載の熱量測定試験を用いて、従来型のサセプタ構造(構造1−1)のマイクロ波の反射、吸収及び透過(RAT)の性質を実験サセプタ構造(構造1−3)と比較した。さらに、加熱後のそれぞれのサンプルを検査するために画像解析を用いて、新たなパラメーターとして、視野面積で除算したクレージング周囲長(P/A、mm/mm)を構造1−1の幾つかの加熱時間に関して求めた。またメリット係数をそれぞれの加熱時間で算出した。ここで、
メリット係数=吸収率(A)/(1−反射率(R))。
結果を表2及び表3に示す。構造1−3ではほとんど又は全くクレージングが観察されなかったため、P/Aデータは表3には示していない。
【0095】
特に、加熱時間が長くなると、構造1−3は構造1−1よりも大きい加熱を示した。より大きいメリット係数を有するサセプタ構造は概して、サセプタ吸収を最大限にしながらも食品の直接的なマイクロ波加熱の量を制限するため、食品表面のより大きいブラウニング及びクリスピングを示す。そのため実際問題として、低結晶度ポリマーフィルムを使用した構造は、食品の誘電加熱を最小限にしながらより大きいレベルの表面のブラウニング及び/又はクリスピングを有利に与えることができる可能性がある。
【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
実施例3
画像解析を用いて、様々なサセプタ構造を使用した食品のブラウニングの程度を決定した。それぞれの例では、スタウファーの電子レンジ処理可能なフラットブレッド溶解物を1000Wの電子レンジにおいて約2.5分間サセプタ構造で加熱した。加熱サイクルが完了したら、食品を裏返し、サセプタに隣接して加熱された食品の側面を撮影した。Adobeのフォトショップを用いて、画像を評価した。そのために、様々なRGB(赤色/緑色/青色)設定値を、褐色の様々な色合いに対応させるように選択した(より高い設定値はより明るい色合いに対応する)。それぞれのRGB設定値で、この色合いを有するピクセル数を数えた。公差は20を用いた。結果を表4に示す。全ての構造が或る程度のブラウニング及び/又はクリスピングを示したが、構造1−3は食品又はサセプタ構造を焦がすことなく最大のブラウニング及びクリスピングを示した。構造1−3の試験の繰り返しにより、この構造の優れたブラウニング性能が確認された。
【0099】
【表4】

【0100】
実施例4
様々なフィルム及びサセプタ構造を評価のために調製した。2つのフィルム製造業者を利用して、APETフィルムを調製した:SML Maschinengesellschaft mbH(Lenzing, Austria)(「SML」)(サンプル5−3)及びPure-Stat Technologies, Inc.(Lewiston, ME)(「Pure−Stat」)(サンプル5−4〜サンプル5−15)。さらに、Dartek(登録商標)N201ナイロン6,6(Liqui-box Canada, Whitby, Ontario, Canada)を評価した(サンプル5−2)。Mylar(登録商標)800二軸延伸PET(「BOPET」)(DuPont Teijin(商標) Films, Hopewell, VA)(サンプル5−1)を対照材料として評価した。それからフィルムをアルミニウムで金属加工し、約1lb/連〜約2lb/連(必要に応じて)のRoyalのHydra Fast−en(登録商標)20123接着剤(Royal Adhesives, South Bend, IN)の実質的に連続した層を使用して、14pt(0.014インチ厚)のFortress(登録商標)ボード(International Paper Company, Memphis, TN)に接合して、様々なサセプタ構造を形成した。
【0101】
Optema(商標)TC 120及びOptema(商標)TC 220 ExCo(エチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂、ExxonMobil Chemical)、Sukanoのim F535(エチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂、Sukano Polymers Corporation, Duncan, SC)、Engage(商標)8401(エチレン−オクテンコポリマー、Dow Plastics)及びAmerichemの60461−CD1(組成不明)(Americhem Cuyahoga Falls, OH)を含む様々な強度を高めるための添加剤も評価した。
【0102】
Pure-Stat Technologies, Inc.により使用されたAPETフィルムを形成するプロセスは以下の通りであった。Traytuf(登録商標)9506 PET樹脂ペレット(M&G Polymers USA, LLC, Houston, TX)を乾燥剤により乾燥し、キャストフィルムライン押出機ホッパーに運んだ。更なるペレットを押出機のど口(extruder throat)で秤量し、乾燥PETペレットと組み合わせ、溶融し、混合して、スロットダイを通して押し出し、平らな溶融フィルムを形成した。溶融フィルムを冷却ドラムに流し込み、大部分が非晶質の固体状態になるまで急速に急冷し、ローラー上で巻き取り機(windup)へと運び、そこでフィルムを更なる加工のためにロールへと巻き付けた。フィルムは、約0.0008インチ又は約80ゲージの厚さであった。押出機の出力及び冷却ドラム表面の速度を変えることにより、より厚い又はより薄いフィルムを製造することができることに留意する。SML Maschinengesellschaft mbHにより使用されるプロセスは同じようなものであった。
【0103】
DSCデータを、分解を防ぐために窒素パージを用いて、10℃/分でのPerkin-Elmerの示差走査熱量測定器(DSC−7)(Perkin-Elmer, Inc., Waltham, MA)においてサンプルを加熱することによりそれぞれのフィルムサンプルで取得した。300℃まで加熱し、40℃まで冷却したサンプルで値を測定した。結果を表5に示す。DSCデータを試験試料(test specimen)の初期加熱から取得したことに留意することが重要である。そのため値は、任意の押出後延伸の影響、及び試料の結晶度に関して加工によりそれぞれの試料が受けた特定の熱履歴を反映した。結晶化に関連する負のエンタルピー変化は試料に存在する非結晶ポリマーの量に比例する。溶融に関連する正のエンタルピー変化は、DSC測定の間に試料により達成される結晶度の程度の評価基準である。これらのエンタルピー値の絶対値がより等しければ、試料はより非晶質である。そのため、該値により、高延伸フィルム(サンプル5−1)が非常に高レベルの延伸及び結晶度を有しており、キャストAPETフィルム(サンプル5−3〜サンプル5−15)が低レベルの結晶度を有していたことが確認される。サンプル5−6〜サンプル5−15で注記されるエンタルピーの幾らか大きい差異は存在する非PET強化添加剤の影響を反映しているが、依然としてこれらのフィルムでの低レベルの結晶度を示す。
【0104】
それぞれのフィルムの表面の見かけの粗度(PEL)を処理の前後で評価した。フィルム表面の画像を0nm〜100nmのフルスケールで原子間力顕微鏡(AFM)を用いて得た。Integrated Paper Services(IPS)(Appleton, WI)で開発された画像解析システムを用いて、0単位〜256単位のフルスケールの明暗グレースケールを用いて、グレーレベルのヒストグラムを作成した。二値画像を120のグレースケールで作成し、これは120/256×100nm=46.9nm、すなわち469オングストロームの高さでAFM画像のZ方向と交差する平面と同等である。検出領域の周囲長を測定し、画像の線形サイズにより正規化して、無次元比、縁の長さで除算した周囲長、すなわちPELを形成した。PEL値がより大きければ表面がより粗いことを示す。概して、PELデータは、より低いPELレベル(より平滑なフィルム表面)がより高い熱量及びブラウニング結果に関連することを示している。
【0105】
破断前のピーク負荷をTAPPI T−494 om−01に従って測定した。該値はサンプル5−6〜サンプル5−15の強化添加剤がフィルムの構造安定性を増大させるのに成功したことを示している。このことは市販の製造装置での検査において実証され、ここで強化添加剤は無理なく加工されたフィルムを改質し、サンプル5−3〜サンプル5−5により表された種類の非改質フィルムは変換操作においてより脆弱であり、通常の加工パラメータ(例えば張力)への調整を必要とし、あまり効率的に変換されなかった。
【0106】
それぞれのポリマーフィルムの濁度(haze)をBYK GardenerのHaze−Gard plus 4725濁度計(BYK-Gardner, USA, Columbia, MD)を使用してASTM D1003に従って測定した。全ての場合で、強化添加剤の組込みにより、フィルムの濁度が増大した。幾つかの場合、最も好ましい添加剤は、加工のために望まれる強度の増大を与えながらもより低いレベルの濁度を示すものである場合があり、サセプタフィルム及びサセプタ構造に添加した場合、有利に増大した加熱性能をもたらす。
【0107】
それからそれぞれのサセプタ構造を、実施例1に記載の熱量測定試験を用いて評価した。結果を表5に示す。ここでΔTはサンプルの温度の上昇であり、ΔΔTはサンプルの温度の上昇と対照サンプル(構造5−1、標準的な二軸延伸熱硬化PETフィルム)の温度の上昇との間の差異である。
【0108】
さらに、それぞれの構造を、104のRGB(赤色/緑色/青色)設定値のみを使用した(RGB=104は概して、ブラウニング、クリスピングした食品に一般的に関連した茶色の色合いに対応する)以外は実施例1に記載のピザのブラウニング試験を用いて評価した。公差は100を用いた。さらに、Kraft DiGiornoの電子レンジ処理可能なピザを使用した。この色合いを有するピクセル数を記録し、より多くのピクセル数はより大きいブラウニングが存在することを示すものとした。
【0109】
構造5−1(対照)を評価する前に、加熱していないピザ生地を検査し、RGB値104に関連する色を有する24313ピクセルのベースラインピクセル数を求めたことに留意する。このベースライン値を用いて、表1に示された結果を算出した。ここで、
ΔUBは、ブラウニングしていない生地に関するベースライン値(24313)を減算した所定のサンプルに関するピクセル数であり、
Δ%Impは対照サンプル(構造5−1)で得られた結果に対する改善(%)である。
【0110】
熱量測定結果及びピザのブラウニング結果の両方が、添加剤を組み込むか又は組み込まないかにかかわらず、全ての非延伸低結晶度フィルムで対照に対する顕著な増大を示す。調理したピザ生地の目視観察により、高二軸延伸高結晶度フィルムから作製された標準対照サンプルで達成されたものよりもずっと望ましいレベルのブラウニングが確認された。このため、強化添加剤は、マイクロ波サセプタフィルム及びマイクロ波サセプタ構造に組み込む場合、性能に悪影響を及ぼすことなくフィルム構造安定性を改善することができる。
【0111】
それから相対的なブラウニング反応速度(RBRR)を、以下のように温度を10℃上昇させる毎にブラウニング反応速度がおよそ2倍になるというブラウニング動態に関する単純化したアレニウスの式の関係を用いて算出した:
相対的なブラウニング反応速度=2(ΔT/10)
【0112】
【表5】

【0113】
実施例5
様々なPure-StatのAPETベースフィルムを一軸延伸し、評価用のサセプタ構造を調製するために使用した。Mylar(登録商標)800二軸延伸PET(DuPont Teijin(商標) Films, Hopewell, VA)も対照材料として評価した。
【0114】
構造6−1は、実施例4に記載のように、板紙に積層した市販の金属加工した48ゲージの標準的な二軸延伸PETを含む、市販用に製造されたサセプタ構造であった。構造6−2は構造6−2を手動で積層させた以外は構造6−1と同じであった。
【0115】
サンプル6−3〜サンプル6−17を、表6に記載の延伸温度及び熱硬化温度、並びに約1.5:1の延伸比を用いて、BrucknerのKaro IV Laboratory Stretching Machine(実験用ストレッチャー)(Bruckner Maschinenbau GmbH & Co. KG, Siegsdorf, Germany)で縦方向に一軸延伸した。それから延伸したフィルムを表6に記載のように様々な特性に関して評価した。
【0116】
図1に示されるように、適度な一軸延伸が対照サセプタフィルムと比較してサセプタの加熱性能が改善したフィルムを作製することができた。これらのサンプルに関する屈折率の値(n)は、適度な延伸の後でもこれらのサンプルがその性質としてほとんどが非晶質であり、サンプルの幾つかでは結晶度が幾らか適度に増大したことを示している。対照での(n)に関する非常に高い値は、高い残存延伸を有する結晶度の高いフィルムと一致している。
【0117】
それから、実施例4との関連で記載されたようにフィルムを金属加工し、14ptの板紙に手動で積層し、様々なサセプタ構造を形成した。次いでそれぞれのサセプタ構造を、実施例1に記載の熱量測定試験を用いて評価した。結果を表6に示す。ここでΔTはサンプルの温度の上昇であり、ΔΔTはサンプルの温度の上昇と対照サンプル(構造6−2、標準的な二軸延伸した熱硬化PETフィルム)の温度の上昇との間の差異である。
【0118】
構造6−2は市販の対照である構造6−1の温度上昇と酷似した温度上昇を示した。したがって、構造6−2は市販のサセプタ構造の合理的な代表例とみなすことができる。幾つかの一軸延伸した積層サセプタサンプル(6−13及び6−15)は対照サンプルと比較して加熱性能の低下を示した。表6で述べられるように、これらのサンプルを最も低い温度で延伸し、それにより最も高い伸張圧を生じさせ、最も低いアニーリング温度に曝し、この伸長の緩和を最小限に抑える。対応するサンプル6−14及びサンプル6−16は、サンプル6−13及びサンプル6−15とそれぞれ同じ温度で延伸しながら、より高いアニーリング温度に曝し、これにより対照サンプルと比較した加熱能の顕著な増大を示した。これらの比較により、本開示はあらゆる材料及び加工処理レジュメから優れたサセプタ構造を作製する可能性を明示しているが、全ての組合せで性能の等しい構造が得られるわけではなく、依然として特定のプロセス条件を選択するのには注意を払わなければならないことは明らかである。この実施形態の利点は、一軸延伸に対する延伸条件の比較的単純な修正により、得られるサセプタ構造の加熱能を調整することができることである。
【0119】
上述のように(実施例1)、全てのサンプルの初期温度が約22℃であったため、それぞれのサンプルで達する絶対温度は報告されたΔTよりも約22℃高かった。とりわけ、それぞれのサンプル(性能が比較的低いものであっても)が、フィルムで一般的に使用される収縮性能仕様による150℃を超える絶対温度までの温度の上昇を示した。さらに、150℃は、電子レンジ処理可能な食品を加熱するための対象速度でメイラードブラウニング反応が起こることが合理的に期待される温度より低いことに留意する。これにより、サセプタベースフィルムとして使用するためのフィルムを特徴付ける従来の手段では不十分であることが更に裏付けられる。
【0120】
それから相対的なブラウニング反応速度(RBRR)を実施例4に記載のように算出した。さらに、それぞれの構造を、実施例4に記載のピザのブラウニング試験を用いて評価した。ブラウニング試験結果を図2に示す。ピザの配合の違い及び得られる様々な温度が動態を増大させることを考慮して、対照材料のΔTに対して正規化したΔΔT熱量に基づく相対的なブラウニング速度は、ブラウニングピクセル数の合理的な予測を与え、ピザの目視検査により確認された。
【0121】
【表6】

【0122】
実施例6
様々なフィルムを二軸延伸し、評価用のサセプタ構造を調製するのに使用した。ホモポリマー(HP)フィルム、コポリマー(CP)フィルム、及び共押出(CX)フィルムを評価した。延伸するフィルムは、標準的なシート押出機器によりPacur(PACUR, Oshkosh, WI)で製造された。ホモポリマーフィルムは、Polyquest(Polyquest, Inc., Wilmington, NC)により供給されたPQB15−093ホモポリマーPET樹脂から製造され、コポリマーフィルムはSKYPET−BR 8040コポリエステル(SKC Chemicals, Seoul, South Korea)から製造され、共押出フィルムは、上記の樹脂を用いた、70%のホモポリマーコア(B)層を封入した2%〜15%のコポリエステルスキン(A)層を含むA/B/A三層共押出構造であった。
【0123】
表7に記載の条件でKaroシリーズの実験用伸張機を用いて、フィルムを延伸した。それから、48ゲージの標準的な二軸延伸PETのフルサイズのロールに実験用伸張機で延伸したサンプルのシートを貼り付け、商用(commercial)条件で(通常範囲のパラメータ内で)メタライザー(metallizer:金属蒸着装置)にロールを走らせることにより、フィルムを金属加工した。金属加工シートサンプルを取り出した後、手動で積層してサセプタ構造を形成した。手動で積層したフィルムサンプルを、RoyalのHydra Fast−en Bond−Plus 20123接着剤(Royal Adhesives and Sealants, South Bend, IN)を塗工するのにNo.10のMayerロッドを用いて、0.012インチのコーティングされていないSBS板紙(International Paper, Memphis, TN)に積層し、ニップ充填圧を50psi及び速度を4に設定したCheminstrumentsのLaboratory Laminator(Cheminstruments, Inc., Fairfield, OH)を用いて積層した。
【0124】
屈折率及び複屈折を様々なサンプルで得た。図3に示されるように、より低い残存延伸及び結晶度により市販の標準的な高延伸ホモポリマーPETフィルムと比較して新たな優れたサセプタ加熱レジームに入る能力が与えられる。
【0125】
それぞれのサセプタ構造を、実施例1に記載の熱量測定試験及び実施例4に記載のピザのブラウニング試験を用いて評価し、相対的なブラウニング反応速度(RBRR)を実施例5に記載のように算出した。結果を表7及び図4に示す。ここではサンプル/サセプタ構造6−1及びサセプタ構造6−2(実施例6)は比較のために含まれている。
【0126】
構造6−2(実施例6の手動で積層した市販対照)は146.7℃の温度上昇を示した。これは145.5℃の温度上昇を示した構造7−1(実験室規模の伸張機により延伸した)に密接に対応している。したがってこの考察のために、構造7−1は市販のサセプタフィルム材料の合理的なシミュレーションを表す。構造7−1と類似する(延伸レベルが3.8×3.8であったことを除いて)構造7−2は、僅か134.7℃の温度上昇しか示さなかった。このため、この実験室で伸張させたホモポリマーPETフィルムベースのサセプタではより低い延伸レベルにより性能が低下した。
【0127】
より低い融点のコポリエステルを含む構造7−17(他の条件は全て構造7−2と同じである)は、154.9℃の温度上昇を示し、これは市販の対照(構造6−2)を含むホモポリマーベースフィルムから作製された構造のいずれよりも大きかった。延伸度が増大した構造7−18は、158.8℃の温度上昇を示した。これとは対照的に、より低い延伸温度及びより低い延伸度を有する構造7−21は、僅か125.4℃の温度上昇しか示さなかった。この性能はほとんどのマイクロ波加熱用途に許容可能でない可能性があるが、より低い加熱能が望まれ得る他の用途があることに留意する。最後に、構造7−21より大きいアニーリング(すなわち熱硬化)温度で作製された構造7−19では、温度上昇が144.2℃であった。同じ条件下で作製されたホモポリマーサセプタベースフィルムに対応する値は138.2℃であったことに留意する(構造7−6)。
【0128】
さらに、120℃から125℃への延伸温度の上昇により、コポリマー(同様に3.8×3.8から4×4となった)でΔTは4℃近く増大したが(構造7−17及び構造7−18を参照されたい)、同じ延伸温度の上昇により、ホモポリマーではΔTは約2.3℃しか上昇しない(ホモポリマーによる構造7−1及び構造7−3(両方の温度で4×4)を参照されたい)ことに留意する。
【0129】
共押出構造はプロセス条件に対して幾らか感受性が高いと思われるが、依然としてより高い伸張温度及びより高いアニーリング温度を用いる場合、優れた熱量測定及びピザのブラウニングの結果を得ることができる。実際、このサンプル群の最良のピザのブラウニングは共押出サンプル7−26で達成された。理論に拘束されることを意図しないが、この構造のホモポリマーPET層及びコポリエステル層の両方の存在により、延伸、結晶化及び緩和に関して「複合型(mixed mode)」のものになり、プロセス操作条件の選択肢(window)が幾らか狭くなり得ると考えられる。しかしながら、このフィルムを用いて優れた加熱サセプタを作製することが可能であることが分かっているため、このサセプタは、100%コポリエステルフィルムと比較して潜在的にコストを削減するものとして商業的に有用であり、コポリエステル表面層をヒートシール材料として使用する場合等に、他の有用な機能性を与えることができる。
【0130】
図4は熱量測定に基づく相対的なブラウニング速度対実際のピザの加熱調理試験によるピクセル数をプロットしている。これらのデータにより、ピザの変動性及び加熱調理動態の限度内で、熱量測定結果と実際の食品ブラウニング結果との間に明らかな正の相関が存在することが確認される。
【0131】
【表7】

【0132】
実施例7
従来技術の標準的なサセプタフィルムと比較して顕著に異なる本開示のフィルムの動的な寸法温度応答を明らかにするために、サンプル長の変化を、Perkin-Elmer(Perkin-Elmer Inc., Waltham, MA)のDMA 7eを用いて温度に応じてモニタリングした。該機器を一定の力の熱機械分析モードで使用した。サンプルを、10mNの一定の静的力を用いて、ヘリウムをパージしながら2.5℃/分で40℃から220℃まで加熱した。幅3.2mmに切断したサンプルで、測定されるフィルムに応じた厚さで、及び約10mmのゲージ長で延伸分析測定系を使用した。氷/水浴は炉内の温度制御を補助するのに使用した。測定は縦方向(MD)又は横断/横方向(CD)で切断したフィルムのストライプで行った。フィルムサンプルを加熱しながら記録した寸法変化の例を図5〜図10に示す。加熱前の元のサンプル長と比較した変化率(パーセント)に関して値を以下のように算出した:
サンプル長の変化率(%)=(加熱中の瞬間的な長さ/元の長さ)×(100)。
【0133】
表示される結果に影響を与えるこの試験方法の特徴は、適切なデータ解釈に関する明確化のために重要である。非常に僅かの張力をサンプルの末端に加え、サンプル長の変化率(%)を算出するのに使用される瞬間的な長さの測定結果の正確性を確保する。サンプルはこの僅かな張力を克服することにより100未満の変化値(%)(収縮)を示し、残存する収縮エネルギーが放出される温度に達すると短くなる(収縮する)。この試験で作成される曲線において拡張(100%より大きい値)を示すサンプルは、増大する温度で特徴的な固有の成長又は拡張を有するとは考えないものとする。Tg超では、特定の温度での寸法変化に対する傾向がほとんど又は全くないフィルムは、この温度で張力を保持するサンプルによる僅かな伸張の影響を受けやすい傾向にあり、この曲線により、張力が負荷されていない条件下で成長又は拡張が起こることが誤って示唆されるであろう。より高度に延伸しかつ/又は結晶度が高いフィルムは、ゴム状態でより少ない残存伸長能しか有しておらず、より低いレベルの延伸及び結晶度を有するフィルムよりもこの伸張に対する耐性が高く、誤った拡張の指標となることが予測されるであろう。
【0134】
表8は動的な寸法温度応答曲線が示されるフィルムを特定している。従来の高度に延伸した、結晶度の高い、高い屈折率及び複屈折の標準的なPETホモポリマーフィルムを示す3つのフィルムを、本開示の幾つかの実施形態を示す3つのフィルム(それらの全てが優れたサセプタ性能を示す)と比較する。
【0135】
【表8】

【0136】
サンプル6−2、サンプル1−6及びサンプル7−1は全てホモポリマーPETの高延伸フィルムであり、一般的な市販のサセプタベースフィルム(サンプル6−2)、従来技術の熱安定化フィルム(1−6)、及びサンプル6−2と同様のフィルムの特性及び性能をシミュレートするための標的となる実験室で伸張させたフィルム(サンプル7−1)を表す。サンプル6−9、サンプル6−11及びサンプル7−8は全て、実験用伸張機により延伸された本開示のサンプルである。サンプル6−9及びサンプル6−11はホモポリマーPETから作製された本開示の適度に一軸延伸されたフィルムであり、サンプル6−11はサンプル6−9よりも高い熱硬化温度に曝し、サンプル7−8は通常のホモポリマーPETの融点よりも低い融点を有するコポリエステルから作製された本開示の高延伸フィルムである。
【0137】
図5〜図10はこれらのフィルムの動的な寸法温度応答を追跡している。MD及びCDにおけるそれぞれのフィルムでの二回の測定結果(runs)をそれぞれの図に示す。6つのサンプル全てがPETのおおよそのTgである約80℃で温度上昇に対する応答が一部始まることに特に留意する。これはガラス状態からゴム状態へのポリマー遷移として予測される。とりわけ、サンプル6−2、サンプル1−6及びサンプル7−1は温度が上昇し続けるにつれて、全てのサンプルのMDで、またサンプル1−6以外の全てのCDで顕著な収縮が起こり、温度の上昇と共に、特に150℃を超える温度で増大し続ける。収縮測定のための静的な曝露温度は通常、サセプタ性能の良好な予測因子を示すものとして言及される。
【0138】
これらのフィルムの動的な寸法温度応答は積層サセプタ構造における典型的なクレージング及び加熱能の制限を引き起こす収縮挙動を示す。これら3つのサンプルに関する熱量測定データはこの加熱制限を示す。サンプル1−6はCDにおいて僅かに成長するようであり、これはMDと比較してこの方向における或る程度の熱安定性の改善及び上述の誤った拡張の指標の結果である可能性があるが、サセプタ加熱で一般的に起こり(encountered)かつ望ましい温度でMDで顕著に収縮する。サンプル1−6はサンプル6−2及びサンプル7−1と比較して加熱能の或る程度の増大を示すが、これは依然として本開示に従って作製されたサセプタよりも劣っている。サンプル6−2と比較したサンプル7−1で見られるより大きい規模の収縮は市販の機械と実験用伸張機器との間の差異によるものであると予測されるが、重要なことに2つのフィルムから作製されたサセプタは加熱試験及び加熱調理試験において非常に類似した性能を発揮する。これにより、クレージング開始の閾値を超えると、サセプタ性能は本質的に不可逆的に(irretrievable)失われることが確認される。
【0139】
サンプル6−9、サンプル6−11及びサンプル7−8(それらは全て、3つの標準タイプのフィルムよりも優れた加熱を与える本開示の実験用フィルムである)は温度の増大に対して全く異なる反応をし、標準的なフィルムが収縮するのと同じ温度範囲を超えてもMD又はCDのいずれにおいても収縮しないことの証拠となった。同様に、本方法に従って試験した本開示のより性能の優れたサセプタ(例えばサンプル5−6、サンプル5−7、サンプル5−8、サンプル5−10、サンプル5−12、及びサンプル5−14を含む)は全て、同様の挙動を示した。試験方法の誤った拡張の指標を考慮すると、サセプタ使用に関して、これらのフィルムは寸法安定性を有すると考えることができ、クレージング開始に対して優れた耐性を有するものとする。熱量測定試験及びブラウニング試験によりこの優れた性能が確認される。
【0140】
動的な寸法温度応答における劇的な差異は、サセプタベースフィルムにおける屈折率及び複屈折のレベルの低減、並びに結晶度の低減からも明らかなように、低い残存延伸の維持と一致しており、本発明の様々な態様の新規性及び非常に有用に実施するためのその低減の強力な証拠を提示する。
【0141】
本発明は、本明細書中において特定の態様及び実施形態に関して詳細に説明されているが、この詳細な説明は、本発明を示し例示するものに過ぎず、単に本発明の十分かつ権利が与えられる開示を提供する目的で、また本発明がなされた時点で本発明者らが知っていた本発明を実施するための最良の形態を記載するためになされていることを理解すべきである。本明細書に記載される詳細な説明は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定するか、又はそうでなくとも本発明の任意のかかる他の実施形態、適合形態、変形形態、変更形態及び均等な構成を除外する意図はなく、またそのように解釈すべきでもない。全ての方向に関する言及(例えば上側、下側、上方、下方、左、右、左側、右側、上部、底部、上、下、垂直、水平、時計回り及び反時計回り)は、本発明の種々の実施形態を読み手が理解することを助けるために特定する目的で使用されるに過ぎず、特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、特に本発明の位置、向き又は使用に関して限定するものではない。接合に関する言及(例えば接合される、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広範に解釈すべきであり、要素の接続間の中間部材、及び要素間の相対的な移動を含み得る。したがって、接合に関する言及は、2つの要素が直接的に及び互いに固定された関係で接続されることを必ずしも示唆するものではない。さらに、種々の実施形態を参照して説明された種々の要素を入れ替えて、本発明の範囲内にある全く新しい実施形態を創出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、
複屈折(n−n)が約0.15未満のポリマーフィルムと、
該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層であって、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱エネルギーへと変換する働きをするマイクロ波エネルギー相互作用材料層と
を有することを特徴とするマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.14未満である請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.10未満である請求項1に記載の構造。
【請求項4】
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.015未満である請求項1に記載の構造。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムが非晶質ポリエチレンテレフタレートを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.005未満である請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記ポリマーフィルムが一軸延伸したポリエチレンテレフタレートを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.05未満である請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記ポリマーフィルムが、融点が約260℃未満のコポリエステルを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.15未満である請求項1に記載の構造。
【請求項8】
前記ポリマーフィルムがポリエチレンテレフタレートホモポリマーと、融点が約260℃未満のコポリエステルとを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.15未満である請求項1に記載の構造。
【請求項9】
前記ポリマーフィルムが複数の層を有しており、少なくとも1つの層がポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含み、少なくとも1つの他の層がコポリエステルを含む請求項8に記載の構造。
【請求項10】
前記ポリマーフィルムが、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第1の層と、
コポリエステルを含む第2の層と、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第3の層と
を含む複数の層を有しており、前記第2の層が前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている請求項8に記載の構造。
【請求項11】
前記ポリマーフィルムが、
コポリエステルを含む第1の層と、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第2の層と、
コポリエステルを含む第3の層と
を含む複数の層を有しており、前記第2の層が前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている請求項8に記載の構造。
【請求項12】
前記ポリマーフィルムが約50%未満の結晶度を有する請求項1に記載の構造。
【請求項13】
前記ポリマーフィルムが約25%未満の結晶度を有する請求項1に記載の構造。
【請求項14】
前記ポリマーフィルムが約10%未満の結晶度を有する請求項1に記載の構造。
【請求項15】
前記ポリマーフィルムが約5%の結晶度を有する請求項1に記載の構造。
【請求項16】
前記マイクロ波エネルギー相互作用材料層に接合した支持層を、該マイクロ波エネルギー相互作用材料層が前記ポリマーフィルムと該支持層との間に配置されるように更に有する請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項17】
前記支持層が紙、板紙、ポリマーフィルム、又はそれらの任意の組合せを含む請求項16に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項18】
電子レンジ中で食品を加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングするためのマイクロ波加熱構築物の少なくとも一部を含む請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項19】
マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、
屈折率(n)が約1.64未満のポリマーフィルムと、
該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層であって、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱エネルギーへと変換する働きをするマイクロ波エネルギー相互作用材料層
を有することを特徴とするマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項20】
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.57〜約1.62である請求項19に記載の構造。
【請求項21】
前記ポリマーフィルムが非晶質ポリエチレンテレフタレートを含み、
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.59未満である請求項19に記載の構造。
【請求項22】
前記ポリマーフィルムが一軸延伸したポリエチレンテレフタレートを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.62未満である請求項19に記載の構造。
【請求項23】
前記ポリマーフィルムが、融点が約260℃未満のコポリエステルを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.64未満である請求項19に記載の構造。
【請求項24】
前記ポリマーフィルムがポリエチレンテレフタレートホモポリマーと、融点が約260℃未満のコポリエステルとを含んでおり、
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.64未満である請求項19に記載の構造。
【請求項25】
前記ポリマーフィルムが複数の層を有しており、少なくとも1つの層がポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含み、少なくとも1つの他の層がコポリエステルを含む請求項24に記載の構造。
【請求項26】
前記ポリマーフィルムが、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第1の層と、
コポリエステルを含む第2の層と、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第3の層と
を含む複数の層を有しており、前記第2の層が前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている請求項24に記載の構造。
【請求項27】
前記ポリマーフィルムが、
コポリエステルを含む第1の層と、
ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを含む第2の層と、
コポリエステルを含む第3の層と
を含む複数の層を有しており、前記第2の層が前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている請求項24に記載の構造。
【請求項28】
前記ポリマーフィルムが約50%未満の結晶度を有する請求項19に記載の構造。
【請求項29】
前記ポリマーフィルムが約25%未満の結晶度を有する請求項19に記載の構造。
【請求項30】
前記ポリマーフィルムが約10%未満の結晶度を有する請求項19に記載の構造。
【請求項31】
前記ポリマーフィルムが約5%の結晶度を有する請求項19に記載の構造。
【請求項32】
前記マイクロ波エネルギー相互作用材料層に接合した支持層を、該マイクロ波エネルギー相互作用材料層が前記ポリマーフィルムと該支持層との間に配置されるように更に有する請求項19に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項33】
前記支持層が紙、板紙、ポリマーフィルム、又はそれらの任意の組合せを含む請求項32に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項34】
電子レンジ中で食品を加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングするためのマイクロ波加熱構築物の少なくとも一部を含む請求項19に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項35】
マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、
融点が約260℃未満のコポリエステルを含むポリマーフィルムと、
該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層であって、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱エネルギーへと変換する働きをするマイクロ波エネルギー相互作用材料層と
を有することを特徴とするマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項36】
前記コポリエステルの融点が約200℃〜約250℃である請求項35に記載の構造。
【請求項37】
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.15未満である請求項35に記載の構造。
【請求項38】
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.64未満である請求項35に記載の構造。
【請求項39】
前記ポリマーフィルムが二軸延伸されたものである請求項35に記載の構造。
【請求項40】
前記ポリマーフィルムが約50%未満の結晶度を有する請求項35に記載の構造。
【請求項41】
マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、
一軸延伸したポリマーフィルムと、
該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層であって、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱エネルギーへと変換する働きをするマイクロ波エネルギー相互作用材料層と
を有することを特徴とするマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項42】
前記ポリマーが非晶質ポリエチレンテレフタレートを含んでいる請求項41に記載の構造。
【請求項43】
前記ポリマーフィルムの複屈折(n−n)が約0.15未満である請求項41に記載の構造。
【請求項44】
前記ポリマーフィルムの屈折率(n)が約1.64未満である請求項41に記載の構造。
【請求項45】
前記ポリマーフィルムが約50%未満の結晶度を有する請求項41に記載の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−500908(P2013−500908A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523031(P2012−523031)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043677
【国際公開番号】WO2011/014630
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(504075588)グラフィック パッケージング インターナショナル インコーポレイテッド (137)
【Fターム(参考)】