説明

低総飽和脂肪酸含有率を有するオイルを産するアブラナ属植物

低い総飽和脂肪酸含有率を有するオイルを生産するアブラナ属植物ならびにかかる植物を作製する方法を記載する。該オイルは低、中または高いオレイン酸含有率と組合せて低い総飽和脂肪酸を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月18日に出願した米国仮出願第61/287,985号、2010年1月14日に出願した米国仮出願第61/295,049号の利益を主張するものである。上の出願の内容は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アブラナ属植物に関し、もっと具体的には、脂肪アシル−アシル輸送タンパク質チオエステラーゼA2(FATA2)遺伝子座および/または脂肪アシル−アシル輸送タンパク質チオエステラーゼB(FATB)遺伝子座に改変した対立遺伝子をもち、総飽和脂肪酸含有量が低く、かつオレイン酸含有量が典型的であるか、中程度であるか、または高いオイルを産するアブラナ属植物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、飽和油脂を多く含む食品は、コレステロール値の上昇や、冠動脈性心疾患のリスク上昇と関連づけられている。このため、現在の食生活指針は、飽和油脂摂取量が総カロリーの10%を超えないようにすべきことを示している。1日2000カロリーの食事を基準にすると、飽和油脂は1日に約20グラムである。キャノーラ油は、典型的には、飽和脂肪酸を約7%〜8%しか含まないが、飽和脂肪酸の含有量が減ると、オイルの栄養学的プロフィールが向上すると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は、変異FATA2対立遺伝子および変異FATB対立遺伝子の発見と、この対立遺伝子をアブラナ属植物に使用し、総飽和脂肪酸含有量を制御することに基づく。本明細書に記載するように、このような対立遺伝子を含むアブラナ属植物は、総飽和脂肪酸含有量が低い(すなわち、総飽和物の6%以下の)オイル、または、飽和物がきわめて少ない(すなわち、総飽和物の3.6%以下の)オイルを産生することができる。また、このようなアブラナ属植物は、オイルの望ましい最終用途に合うようにオレイン酸およびα−リノレン酸の含有量を調整するために、変異脂肪酸デサチュラーゼ対立遺伝子を含んでいてもよい。本明細書に記載のアブラナ属植物は、植物が遺伝子改変されていない特定の食物用途のためのキャノーラ油を産生するのに特に有用である。
【0005】
本明細書は、2以上の異なる脂肪アシル−アシル輸送タンパク質チオエステラーゼB(FATB)遺伝子座(例えば、3または4の異なる遺伝子座)に改変した対立遺伝子を含むアブラナ属植物(例えば、Brassica napus、Brassica junceaまたはBrassica rapaのような植物)およびこれらの子孫(例えば、種子)を特徴とし、それぞれの改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造される。この植物は、F1雑種であってもよい。改変した対立遺伝子は、欠失FATBポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。改変した対立遺伝子は、ヘリックス/4−本鎖シート(4HBT)ドメインまたはその一部が欠失したFATBポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。改変した対立遺伝子は、基質特異性に影響を与える残基の非同類置換部分を有するFATBポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。改変した対立遺伝子は、触媒活性に影響を与える残基の非同類置換部分を有するFATBポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。改変した対立遺伝子のいずれかは、突然変異対立遺伝子であってもよい。
【0006】
ある実施形態では、欠失FATBポリペプチドをコードする核酸としては、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4からなる群から選択されるヌクレオチド配列が挙げられる。ある実施形態では、この植物は、配列番号:1および配列番号:2;配列番号:1および配列番号:3;配列番号:1および配列番号:4;配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3;配列番号:1、配列番号:2および配列番号:4;配列番号:1、配列番号:3および配列番号:4;または配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4に記載されるヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいる。
【0007】
ある植物は、飽和物の総含有量が約2.5〜5.5%のオイルを生成する種子を産生することができる。このオイルのパルミチン酸含有量は、約1.5〜3.5%であってもよい。このオイルのステアリン酸含有量は、約0.5〜約2.5%であってもよい。このオイルは、オレイン酸含有量が約78〜80%、リノール酸含有量が約8〜10%、α−リノレン酸含有量が約4%以下(例えば、約2〜4%)であってもよい。
【0008】
また、本明細書は、脂肪アシル−ACPチオエステラーゼA2(FATA2)遺伝子座に改変した対立遺伝子を含むアブラナ属植物(例えば、Brassica napus、Brassica junceaまたはBrassica rapaのような植物)およびこれらの子孫(例えば、種子)を特徴とし、改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATA2ポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATA2ポリペプチド(例えば、FATA2bポリペプチド)が製造される。改変した対立遺伝子は、Arabidopsis FATA2ポリペプチドのアミノ酸242〜277に対応する領域(配列番号:29)に変異があるFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。FATA2ポリペプチドは、ポジション255のプロリンのロイシン残基への置換を含んでいてもよい。この植物は、F1雑種であってもよい。改変した対立遺伝子のいずれかは、突然変異対立遺伝子であってもよい。
【0009】
本明細書に記載するいずれかの植物は、そのほかに、FAD2遺伝子座に1以上の改変した(例えば、変異)対立遺伝子を含んでいてもよい。例えば、FAD2遺伝子座の突然変異対立遺伝子は、HECGHモチーフ内のグルタミン酸がリシンに置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。FAD2遺伝子座の突然変異対立遺伝子は、DRDYGILNKVモチーフ内のグリシンがグルタミン酸で置換されているか、またはKYLNNPモチーフ内のロイシンがヒスチジンで置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。ある実施形態では、この植物は、2の異なるFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含んでおり、この突然変異対立遺伝子は、HECGHモチーフ内のグルタミン酸がリシンで置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む突然変異対立遺伝子と、DRDYGILNKVモチーフ内のグリシンがグルタミン酸で置換されているか、またはKYLNNPモチーフ内のロイシンがヒスチジンで置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む突然変異対立遺伝子である。
【0010】
本明細書に記載するいずれかの植物は、そのほかに、2の異なるFAD3遺伝子座に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含んでいてもよく、改変した対立遺伝子の1つは、ポジション275のアルギニンがシステインで置換されたFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、改変した対立遺伝子の1つは、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有するfad3B核酸配列を含む。
【0011】
別の局面では、本書面は、2以上の異なるFATB遺伝子座(例えば、3または4の異なるFATB遺伝子座)に改変した対立遺伝子を含み、それぞれの改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造され、さらに、FAD2遺伝子座に改変した対立遺伝子を含み、改変した対立遺伝子が、HECGHモチーフ内のグルタミン酸がリシンで置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む、アブラナ属植物(例えば、Brassica napus、Brassica junceaまたはBrassica rapa植物)およびこれらの子孫(例えば、種子)を特徴とする。この植物は、そのほかに、異なるFAD2遺伝子座に改変した対立遺伝子を含んでいてもよく、この改変した対立遺伝子は、DRDYGILNKVモチーフ内のグリシンがグルタミン酸で置換されているか、またはKYLNNPモチーフ内のロイシンがヒスチジンで置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む。FATB改変した対立遺伝子は、欠失FATBポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよい。欠失FATBポリペプチドをコードする核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。例えば、この植物は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4に記載されるヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいてもよい。この植物は、F1雑種であってもよい。改変した対立遺伝子のいずれかは、突然変異対立遺伝子であってもよい。
【0012】
別の局面では、本願明細書は、オイルを製造する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載する少なくとも1つのアブラナ属植物から作られた種子を砕くことと;砕いた種子からオイルを抽出することとを含み、このオイルは、精製し、漂白し、脱臭した後に、飽和物の総含有量が約2.5〜5.5%である。このオイルは、そのほかに、エイコセン酸を含有量約1.6〜2.3%で含んでいてもよい。このオイルは、そのほかに、オレイン酸を含有量約78〜80%、リノール酸を含有量約8〜10%、α−リノレン酸を含有量約2〜4%で含んでいてもよい。
【0013】
また、本書面は、アブラナ属植物を作製する方法を特徴とする。この方法は、FATB遺伝子座に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む1種類以上の第1のアブラナ属親植物と、異なるFATB遺伝子座に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む1種類以上の第2のアブラナ属親植物とをかけ合わせ、それぞれの改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造されることと;1〜5世代について、2以上の異なるFATB遺伝子座に改変した対立遺伝子を有する子孫植物を選択することによってアブラナ属植物を得ることを含む。
【0014】
別の局面では、本書面は、アブラナ属植物を作製する方法を特徴とする。この方法は、2以上の異なるFATB遺伝子座(例えば、3または4の異なるFATB遺伝子座)に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む1種類以上の第1のアブラナ属親植物を得て、それぞれの改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造されることと;FAD2遺伝子座に改変した対立遺伝子を含む1種類以上の第2のアブラナ属親植物を得て、この改変した対立遺伝子が、HECGHモチーフ内のグリシンがリシンに置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含むことと;1種類以上の第1のアブラナ属親植物と1種類以上の第2のアブラナ属親植物とをかけ合わせることと;1〜5世代について、2以上の異なるFATB遺伝子座に改変した対立遺伝子と、FAD2遺伝子座に改変した対立遺伝子とを有する子孫植物を選択することによってアブラナ属植物を得ることとを含む。改変した対立遺伝子のいずれかは、突然変異対立遺伝子であってもよい。
【0015】
また、本書面は、アブラナ属植物を作製する方法を特徴とする。この方法は、2種類以上の異なるFATB遺伝子座(例えば、3種類または4種類の異なるFATB遺伝子座)に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む1種類以上の第1のアブラナ属親植物を得て、それぞれの改変した対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造されることと;FATA2遺伝子座(例えば、FATA2b遺伝子座)に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む1種類以上の第2のアブラナ属親植物を得て、この改変した対立遺伝子が、Arabidopsis FATA2ポリペプチドのアミノ酸242〜277に対応する領域(配列番号:29)に変異を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含むことと;対応する前記1種類以上の第1のアブラナ属親植物と前記1種類以上の第2のアブラナ属親植物とをかけ合わせることと;1〜5世代について、2以上の異なるFATB遺伝子座に改変した(例えば、変異)対立遺伝子と、FADA2遺伝子座に改変した(例えば、変異)対立遺伝子とを有する子孫植物を選択することによってアブラナ属植物を得ることとを含む。第1のアブラナ属親植物は、そのほかに、FAD2遺伝子座での突然変異対立遺伝子、2以上の異なるFAD3遺伝子座での突然変異対立遺伝子、HECGHモチーフ内のグルタミン酸がリシンに置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含むFAD2突然変異対立遺伝子を含んでいてもよく、FAD3突然変異対立遺伝子の1つは、ポジション275のアルギニンがシステインで置換されたFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、FAD3突然変異対立遺伝子の1つは、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有するfad3B核酸配列を含む。
【0016】
さらに別の局面では、本書面は、オレイン酸含有量が約78〜80%、リノール酸含有量が約8〜10%、α−リノレン酸含有量が約4%以下、エイコセン酸含有量が約1.6〜2.3%のキャノーラ油を特徴とする。パルミチン酸含有量は、約1.5〜3.5%であってもよい。ステアリン酸含有量は、約0.5%〜2.5%であってもよい。エイコセン酸含有量は、約1.9〜約2.2%であってもよい。α−リノレン酸含有量は、約2〜約4%であってもよい。
【0017】
また、本書面は、FATA2遺伝子座に改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)を含む アブラナ属植物の種子を特徴とし、この改変した対立遺伝子(例えば、突然変異対立遺伝子)は、FATA2ポリペプチドのアミノ酸242〜277に対応する領域(配列番号:29)に変異を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含み、この種子は、オレイン酸含有量がが78〜80%、リノール酸含有量が約8〜10%、α−リノレン酸含有量が約4%以下、エイコセン酸含有量が1.6〜2.3%のオイルを生成する。この種子は、F2種子であってもよい。アブラナ属植物は、そのほかに、4種類の異なるFATB遺伝子座にある改変された(例えば、変異)対立遺伝子および/またはFAD2遺伝子座にある改変された(例えば、変異)対立遺伝子、2種類の異なるFAD3遺伝子座にある改変された(例えば、変異)対立遺伝子を含んでいてもよく、このFAD2改変された(例えば、変異)対立遺伝子は、HECGHモチーフ内のグルタミン酸がリシンに置換されたFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよく、FAD3の改変された(例えば、変異)対立遺伝子の1つは、ポジション275のアルギニンがシステインで置換されたFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含んでいてもよく、FAD3の改変された(例えば、変異)対立遺伝子の1つは、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有するfad3B核酸配列を含んでいてもよい。
【0018】
また、本書面は、総飽和脂肪酸含有量が約3.7%以下、オレイン酸含有量が約72〜75%のキャノーラ油を特徴とする。このオイルは、パルミチン酸含有量が約2.2〜2.4%であってもよい。このオイルは、ステアリン酸含有量が約0.5〜0.8%であってもよい。このオイルは、エイコセン酸含有量が約1.6〜1.9%であってもよい。総飽和脂肪酸含有量は、約3.4〜3.7%であってもよい。
【0019】
さらに別の局面では、本書面は、本明細書に記載する植物の植物細胞を特徴とし、この植物細胞は、1種類以上の改変された(例えば、変異)対立遺伝子を含む。
【0020】
他に特定されない限り、本明細書で使用するあらゆる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載したのと類似しているか、または等価な方法および材料を使用して本発明を実施してもよいが、適切な方法および材料を以下に記載している。本明細書で述べたあらゆる刊行物、特許出願、特許、他の引用文献は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書の記載が優先する。それに加え、材料、方法および実施例は、単に例示であり、限定することを意図したものではない。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載と、特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、Brassica rapa FatA1(Genbank寄託番号U17098)、Arapidopsis thaliana FatA1(At3g25110;Genbank寄託番号NM_113415)、15.24由来のB.napus FatA1、15.24由来のB.napus FatA2、A.thaliana FatA2(At4g13050;Genbank寄託番号NM_117374)およびB.napus pNL2(Genbank寄託番号X73849)のヌクレオチド配列のアラインメントである。黒い四角は、アラインメントから明らかになったコンセンサス配列との配列の違いを示しており、「1」と記されたポジションは、B.napus FatA2bアイソフォーム内の15.24に固有のSNPを反転表示しており、15.24のCからTへの変異(ProからLeu)を示している。「2」と記されたポジションは、B.napus FatA2aアイソフォームとB.napus FatA2bアイソフォームを互いに区別するSNPを反転表示している(図4を参照)。
【図2】図2は、Arabidopsis、15.24、01OB240親由来のFatA2 ヌクレオチド配列のアラインメントである。「1」と記されたポジションでは、「C」から「T」に変わったSNPは、15.24遺伝資源のBnFatA2b配列に固有である(15.24FatA2(1)と表示)。「2」と記されたポジションでは、B.napus FatA2aとB.napus FatA2bのアイソフォームの違いが明らかである(15.24FatA2(2)およびOB240FatA2(1)は、B.napus FatA2aアイソフォームであり、一方、15.24FatA2(1)およびOB240FatA2(2)は、B.napus FatA2bアイソフォームである)。配列の違いは、黒で反転表示している。
【図3】図3は、A.thaliana FatA2(Genbank寄託番号NP_193041.1)の残基242〜277のアミノ酸配列と、15.24および01OB240由来のB.napus FatA2のアミノ酸配列のアラインメントである。15.24のポジション「1」のFatA2 SNP(CからTへの変異)によって、ProがLeuに変わるが、ポジション「2」でのアイソフォームの違いは、アイソフォームBnFatA2aおよびBnFatA2bのアミノ酸を変化させない。
【図4】図4は、01OB240および15.24の遺伝資源に由来するBnFatA2配列およびBnFatA2b配列のアラインメントである。ポジション「1」は、飽和物が少ない表現型と関連するBnFatA2b配列の15.24に固有の「C」から「T」に変わったSNPを指す。図1〜3を参照。ポジション「2」は、図1、2、3のポジション「2」を指し、BnFatA2aアイソフォームとBnFatA2b アイソフォームの配列の違いを反転表示している。黒い四角は、01OB240 BnFatA2bと比較したミスマッチをあらわしている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
種々の図面の同じ参照記号は、同じ要素を示している。
【0024】
(詳細な説明)
一般的に、本書面は、総飽和脂肪酸含有量が低い(すなわち、6%以下)オイル、または飽和物がきわめて少ない(すなわち、3.6%以下)オイルを産生する種子を生成する、BrassicaのB.napus、B.junceaおよびB.rapa種を含むアブラナ属植物を提供する。本明細書に記載する場合、総飽和脂肪酸含有量とは、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)、リグノセリン酸(C24:0)の合計量を指す。例えば、本明細書に記載するアブラナ属植物は、総飽和脂肪酸含有量が約2.5〜5.5%、3〜5%、3〜4.5%、3.25〜3.75%、3.0〜3.5%、3.6〜5%、4〜5.5%、または4〜5%のオイルを産生することができる。総飽和脂肪酸含有量が低いか、またはまったくないオイルは、栄養学的な品質が向上しており、消費者が飽和脂肪酸の摂取量を減らすのに役立たせることができる。
【0025】
本明細書に記載する場合、総飽和脂肪酸含有量が低いことと、オレイン酸含有量が典型的(60%〜70%)、中程度(71%〜80%)、または高い(>80%)こととを併せもつ種子オイルが得られるアブラナ属植物が作られてもよい。このようなアブラナ属植物は、オイルの望ましい最終用途(例えば、揚げ物用途または食物用途)に合うように調整した脂肪酸含有量を有する種子オイルを産生することができる。例えば、総飽和脂肪酸含有量が低く、オレイン酸含有量が60%〜70%、α−リノレン酸含有量が2%〜5%の種子が得られるアブラナ属植物を製造することができる。この種子の総多価不飽和物(すなわち、リノール酸とα−リノレン酸の合計)は、典型的には35%未満である。このような脂肪酸含有量を有するキャノーラ油は、その多価不飽和物含有量が、揚げ物のために改良された酸化安定性を有するほど十分に低く、揚げられる食物に望ましい揚げ物の香りを付与するのには十分なほど高いため、特に揚げ物用途に有用であり、汎用品のキャノーラ油よりも優れている。汎用品のキャノーラ油の脂肪酸含有量は、典型的には、総飽和脂肪酸が約6〜8%、オレイン酸が約55〜65%、リノール酸が約22〜30%、α−リノレン酸が約7〜10%である。
【0026】
また、総飽和脂肪酸含有量が低く、オレイン酸含有量が中程度であり(例えば、オレイン酸が71%〜80%)、α−リノレン酸含有量が低い(例えば、2%〜5.0%)種子が得られるアブラナ属植物を製造することもできる。このような脂肪酸含有量を有するキャノーラ油は、オレイン酸含有量が低いオイルまたは汎用品のキャノーラ油よりも酸化安定性が高く、コーティング用途(例えば、スプレーコーティング)、配合食物製品、または貯蔵期間に安定であることが望ましい他の用途に有用である。それに加え、総飽和脂肪酸含有量が低く、オレイン酸含有量が高く(例えば、オレイン酸が81%〜90%)、α−リノレン酸含有量が2〜5%の種子を生成するアブラナ属植物を製造することができる。総飽和脂肪酸含有量が低く、オレイン酸が多く、α−リノレン酸含有量が低いキャノーラ−油は、高い酸化安定性と飽和脂肪酸含有量が低いことが必要な食物用途で特に有用である。
【0027】
(アブラナ属植物)
本明細書に記載のアブラナ属植物は、脂肪アシル−ACP チオエステラーゼA2(FATA2)の活性低下および/または脂肪アシル−ACPチオエステラーゼB(FATB)の活性低下の結果として、種子オイルの総飽和脂肪酸量が少ない。本開示全体で、「植物」または「複数の植物」という場合、子孫(すなわち、特定の植物または植物株の子孫)および植物に由来する細胞または組織を含むことを理解されたい。その植物の子孫としては、F1、F2、F3、F4およびその後の世代の植物から作られる種子、またはBC1、BC2、BC3およびその後の世代の植物から得られる種子が挙げられる。植物から作られる種子を成長させ、次いで、自家受精させ(または、異系交配し、自家受精させるか、または二ゲノム性半数体によって重複受精させ)、突然変異対立遺伝子がホモ接合性の種子を得てもよい。用語「対立遺伝子」または「複数の対立遺伝子」とは、特定の遺伝子座にある遺伝子の1つ以上の代替形態を指す。本明細書で使用する場合、「株」は、少なくとも1つの形質に対し、個体間の遺伝的変動がほとんどないか、またはまったくない植物群である。このような株は、自家受粉および選別を何世代か繰り返すこと、または、1種類の親から組織または細胞を培養する技術を用いて栄養繁殖させることによって作られてもよい。本明細書で使用する場合、用語「品種」は、市販製品で用いられている株を指し、雑種品種および放任受粉品種を含む。
【0028】
脂肪アシル−ACPチオエステラーゼは、葉緑体中のアシル−ACPを加水分解し、ACPから新しく合成された脂肪酸を放出し、色素体でのさらなる鎖伸長からこの脂肪酸を有効に除去する。次いで、この遊離脂肪酸が色素体から出て、補酵素A(CoA)に結合し、トリアシルグリセロール(TAG)生合成のための小胞体(ER)中のKennedy経路に入る。FATAファミリーのメンバーは、オレイル(C18:1)ACP基質を好み、18:0−ACPおよび16:0−ACPへの活性は最低限であり、一方、FATBファミリーのメンバーは、主に、8〜18炭素長の飽和アシル−ACPを加水分解する。Jonesら、Plant Cell 7:359−371(1995);GinalskiおよびRhchlewski, Nucleic Aicds Res 31:3291−3292(2003);およびVoelker T、Genetic Engineering(Setlow,JK編)Vol 18,111−133,Plenum Publishing Corp.,New York(2003)を参照。
【0029】
FATA2またはFATBの検出可能な活性が存在しないことを含め、活性を低下させることは、内因性fatA2対立遺伝子またはfatB対立遺伝子を改変することによって達成することができる。内因性fatA2対立遺伝子またはfat3B対立遺伝子は、例えば、突然変異誘発によって、または内因性植物遺伝子を、1以上の変異を含む改変体(例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて作成する)と置き換える相同的組み換えを用いることによって改変することができる。例えば、Townsendら、Nature 459:442−445(2009);Tovkachら、Plant J.,57:747−757(2009);およびLloydら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 102:2232−2237(2005)を参照。同様に、本明細書に記載する他の遺伝子について、内因性対立遺伝子は、突然変異誘発によって、または内因性遺伝子を改変体と置き換える相同的組み換えを用いることによって改変することができる。突然変異誘発によって得られた改変した対立遺伝子は、本明細書で突然変異対立遺伝子という。
【0030】
検出可能な活性が存在しないことを含め、活性を低下させることは、上の種子オイルが、対応するコントロール植物から得た種子オイルと比較して飽和脂肪酸の量が少ないことから推察することができる。また、活性の低下は、脂肪アシル−ACP加水分解のアッセイを用いて植物抽出物を用いて評価することもできる。例えば、Bonaventureら、Plant Cell 15:1020−1033(2003);およびEcclestonおよびOhlrogge, Plant Cell 10:613−622(1998)を参照。
【0031】
遺伝子変異は、1以上の突然変異誘発剤を用い、種子の集合または再生可能な植物組織に導入することができる。適切な突然変異誘発剤としては、例えば、エチルメタンスルホネート(EMS)、メチルN−ニトロソグアニジン(MNNG)、臭化エチジウム、ジエポキシブタン、電離放射線、x線、UV線および当該技術分野で既知の他の突然変異原が挙げられる。ある実施形態では、突然変異原の組み合わせ(例えば、EMSおよびMNNG)を用い、突然変異誘発を誘発することができる。処理した集合、またはその後に生成した集合について、変異の結果生じるチオエステラーゼ活性の低下を、例えば、集合の脂肪酸プロフィールを決定し、対応する突然変異していない集合と比較することによってスクリーニングすることができる。変異は、コード配列、イントロン配列および制御エレメントを含め、遺伝子の任意の部分にあってもよく、これにより、得られた遺伝子産物を機能しない状態にするか、または活性を低下させる。適切な種類の変異としては、例えば、野生型コード配列のヌクレオチドの挿入または欠失、転移または転換が挙げられる。このような変異によって、対応する遺伝子産物において、アミノ酸の欠失または挿入、保存的または非保存的なアミノ酸置換を生じさせることができる。ある実施形態では、変異は、ナンセンス変異であり、停止コドン(TGA、TAAまたはTAG)の導入と欠失ポリペプチドの産生を生じる。ある実施形態では、変異は、プレmRNA配列の正しいスプライシングを変えるか、または起こらなくするようなスプライス部位の変異であり、その結果、野生型とは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質が得られる。例えば、RNAスプライシングの間の1以上のエキソンが飛ばされてもよく、それにより、飛ばされたエキソンによってコードされるアミノ酸が欠失したタンパク質が得られる。または、リーディングフレームは、間違ったスプライシングによって変更されることがあり、1以上のイントロンが保持されていてもよく、代わりとなるスプライスドナーまたはスプライスアクセプターが作られてもよく、または、代わりのポジションでスプライシングが開始されてもよく、または代わりのポリアデニル化シグナルが生成してもよい。ある実施形態では、2以上の変異または2種類以上の変異が導入される。
【0032】
コード配列へのアミノ酸の挿入、欠失または置換は、例えば、得られる遺伝子産物に必須のα螺旋またはβプリーツシート領域の構造を破壊することがある。また、アミノ酸の挿入、欠失または置換は、遺伝子産物の活性に重要な結合を破壊し、基質特異性を変え、または、触媒部位を破壊してしまうことがある。大量の連続アミノ酸の挿入または欠失は、少量の挿入または欠失したアミノ酸と比較して、遺伝子産物の機能をなくしてしまう可能性が高いことが当該技術分野で知られている。非保存的なアミノ酸置換によって、1種類のアミノ酸を異なる種類のアミノ酸と置き換えてもよい。非同類置換は、遺伝子産物の電荷または疎水性を実質的に変えてしまうことがある。非保存的なアミノ酸置換によって、例えば、イソロイシン残基をアラニン残基で置換することによって、残基の側鎖の大部分を実質的に変えてしまうことがある。
【0033】
非の例としては、非極性アミノ酸を塩基性アミノ酸で置換すること、または酸性アミノ酸を極性アミノ酸で置換することが挙げられる。遺伝子内でコードされるアミノ酸が20個しかないため、活性を下げる置換は、変異の標的となる遺伝子産物の領域に異なる種類のアミノ酸を組み込む通常の実験によって決定されてもよい。
【0034】
ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含んでおり、この突然変異対立遺伝子から、対応する野生型FATA2ポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造される。例えば、この突然変異対立遺伝子は、ヘリックス/4−本鎖シート(4HBT)ドメイン(ホットドッグドメイン(hot-dog domain)とも呼ばれる)の中に非同類置換または触媒活性もしくは基質特異性に影響を与える残基の非同類置換を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含む。例えば、アブラナ属植物は、FATA2ポリペプチドの残基242〜277に対応するポリペプチドの領域(配列番号:29)に置換を有するFATA2bポリペプチドをコードする核酸を含む突然変異対立遺伝子を含んでいてもよい(Genbank寄託番号NP_193041.1のタンパク質(配列番号:30);Genbank寄託番号NM_117374のmRNAに記載されているArabidopsis thaliana FATA2ポリペプチドに対するアラインメントに基づいて数字が付けられている)。FATA2のこの領域は、ArabidopsisおよびBrassicaで高度に保存されている。それに加え、この領域の多くの残基は、ポジション259のアスパラギン酸、ポジション263のアスパラギン、ポジション265のヒスチジン、ポジション266のバリン、ポジション268のアスパラギン、ポジション271のチロシンを含め、FATAとFATBの間で保存されている(配列番号:30に対するアラインメントに基づいて数字が付けられている)。ここでも、図3を参照。ポジション263のアスパラギン、ポジション265のヒスチジンは、触媒三残基の一部であり、ポジション256のアルギニンは、基質特異性の決定に関与している。MayerおよびShanklin,BMC Plant Biology 7:1−11(2007)も参照。配列番号:31は、エキソン2〜6によってコードされるBrassica FATA2bポリペプチドの予想アミノ酸配列を記載しており、配列番号:30に記載するA.thaliana配列の残基121〜343に対応している。例えば、FATA2ポリペプチドは、Arabidopsis FATA2ポリペプチドのポジション255に対応するポジションで、プロリンがロイシン残基に置換していてもよい(すなわち、配列番号:29のポジション14または配列番号:31のポジション135)。Arabidopsisのポジション255に対応するB.napus配列のプロリンは、B.napus、B.rapa、B.juncea、Zea mays、Sorghum bicolor、Oryza sativa Indica(米)、Triticum aestivum、Glycine max、Jatropha(樹種)、Carthamus tinctorius、Cuphea hookeriana、Iris tectorum、Perilla frutescens、Helianthus annuus、Garcinia mangostana、Picea sitchensis、Physcomitrella patens subsp.Patens、Elaeis guineensis、Vitis vinifera、Elaeis oleifera、Camellia oleifera、Arachis hypogaea、Capsicum annuum、Cuphea hookeriana、Populus trichocarpaおよびDiploknema butyraceaで保存されている。実施例2に記載されているように、ポジション255での変異は、総飽和脂肪酸量が少ない表現型、ステアリン酸が少ない表現型、アラキジン酸が少ない表現型、エイコセン酸が多い表現型と関係がある。ステアリン酸含有量の表現型は、エイコセン酸の表現型とは負の相関がある。
【0035】
ある実施形態では、FATA2遺伝子座での突然変異対立遺伝子は、配列番号:28または配列番号:32に記載するヌクレオチド配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98または99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。配列番号:28および32に記載するヌクレオチド配列は、B.napus株15.24に由来するfatA2b遺伝子から得た代表的なヌクレオチド配列である。本明細書に記載する場合、用語「配列同一性」は、任意の所与の核酸配列と標的核酸配列との類似度を指す。類似度は、配列同一性の割合としてあらわされる。配列同一性の割合は、アラインメントした核酸配列のマッチしたポジションの数を決定し、マッチしたポジションの数をアラインメントしたヌクレオチドの合計数で割り、100を掛けることによって計算される。マッチしたポジションとは、アラインメントした核酸配列と同じポジションに同じヌクレオチドが存在するポジションを指す。配列同一性の割合は、任意のアミノ酸配列についても決定することができる。配列同一性の割合を決定するために、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むスタンドアロン型のBLASTZから得たBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを用い、標的核酸または標的アミノ酸配列を、特定する核酸またはアミノ酸の配列と比較する。このスタンドアロン型のBLASTZは、Fish & Richardsonのウェブサイト(World Wide Webが「fr」ドット「com」スラッシュ「blast」)または全米バイオテクノロジー情報センターのウェブサイト(World Wide Webが「ncbi」ドット「nlm」ドット「nih」ドット「gov」)から得ることができる。Bl2seqプログラムの使用法を説明する指示は、BLASTZに添付したreadmeファイルの中に見つけることができる。
【0036】
Bl2seqは、BLASTNアルゴリズムまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを用いて2つの配列を比較する。BLASTNは、核酸配列を比較するために用いられ、一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために用いられる。2つの核酸配列を比較するために、選択肢を以下のとおり設定する。−iは、比較対象の第1の核酸配列を含むファイルに設定し(例えば、C:\seq1.txt);−jは、比較対象の第2の核酸配列を含むファイルに設定し(例えば、C:\seq2.txt);−pは、blastnに設定し;−oは、任意の所望のファイル名に設定し(例えば、C:\output.txt);−qは−1に設定し;−rは2に設定し;その他全ての選択肢はデフォルト設定のままにしておく。以下のコマンドによって、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを作成する。C:\Bl2seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastn -o c:\output.txt -q -1 -r 2。標的配列が、特定する配列の任意の部分と共通したホモロジーを有する場合、指定した出力ファイルには、アラインメントした配列としてホモロジーを有するこれらの領域が存在するだろう。標的配列が、特定する配列の任意の部分と共通したホモロジーをもたない場合、指定した出力ファイルには、アラインメントした配列が存在しないだろう。
【0037】
一旦アラインメントしたら、任意のマッチしたポジションから始まり、任意の他のマッチしたポジションで終わる特定する配列からの配列とのアラインメント中に存在する標的配列からの保存的なヌクレオチドの数を計測することによって長さが決定される。マッチしたポジションは、同一のヌクレオチドが標的配列と特定する配列の両方に存在する任意のポジションである。標的配列中に存在するギャップは、ヌクレオチドではないため、数えない。同様に、特定する配列中に存在するギャップは、標的配列のヌクレオチドを数え、特定する配列のヌクレオチドは数えないため、数えない。
【0038】
特定の長さにわたる同一性の割合は、その長さ全体でマッチしたポジションの数を数え、その数を長さで割り、得られた値に100を掛けることによって決定される。例えば、(i)500塩基の核酸標的配列を、対象の核酸配列と比較し、(ii)Bl2seqプログラムは、対象の配列の領域とアラインメントした標的配列からの200塩基を示し、200塩基領域の最初の塩基と最後の塩基がマッチしており、(iii)このアラインメントした200塩基のうち、マッチした数は180であり、500塩基の核酸標的配列は、200の長さを含み、配列同一性が長さの90%を超える(すなわち、180/200×100=90)。
【0039】
特定する配列とアラインメントする1個の核酸標的配列の中の異なる領域は、それぞれの独自の同一性の割合を有していてもよいことが理解されるだろう。同一性の割合値は、最も近い10分の1の位までまとめて処理されることを注記しておく。例えば、78.11、78.12、78.13、78.14は78.1にまとめられ、一方、78.15、78.16、78.17、78.18、78.19は78.2にまとめられる。また、長さの値は、常に整数であることも注記しておく。
【0040】
ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、この突然変異対立遺伝子から、対応する野生型FATBポリペプチドに対し、チオエステラーゼ活性が低いFATBポリペプチドが製造される。ある実施形態では、アブラナ属植物は、2以上の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む。ある実施形態では、アブラナ属植物は、3の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むか、または4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む。Brassica napusは、6種類の異なるFATBアイソフォーム(すなわち、異なる遺伝子座にFATBポリペプチドの異なる形態)を含み、これらを本明細書でアイソフォーム1〜6と呼ぶ。配列番号:18〜21および26〜27は、それぞれ、Brassica napusのFATBアイソフォーム1〜6をコードするヌクレオチド配列を記載している。配列番号:18〜21および26〜27に記載のヌクレオチド配列は、ClustalWアルゴリズムによって測定すると、82%〜95%の配列同一性を有する。
【0041】
例えば、アブラナ属植物は、FATBのアイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、アイソフォーム4、アイソフォーム5またはアイソフォーム6をコードするヌクレオチド配列の中に変異を有していてもよい。ある実施形態では、植物は、アイソフォーム1および2;1および3;1および4;1および5;1および6;2および3;2および4;2および5;2および6;3および4;3および5;3および6;4および5;4および6;5および6;1、2および3;1、2および4;1、2および5;1、2および6;2、3および4;2、3および5;2、3および6;3、4および5;3、5および6;4、5および6;1、2、3および4;1、2、3および5;1、2、3および6;1、2、4および6;1、3、4および5;1、3、4および6;1、4、5および6;2、3、4および5;2、3、4および6;または3、4、5および6をコードするヌクレオチド配列の中に変異を有していてもよい。ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATBのアイソフォーム1、2および3;1、2および4;2、3および4;または1、2、3および4をコードするヌクレオチド配列の中に変異を有していてもよい。ある実施形態では、変異によって、FATBポリペプチドの4HBTドメインまたはその一部が欠失する。FATBポリペプチドは、典型的には、4HBTドメインの縦列反復を含み、N末端4HBTドメインは、基質特異性に影響を及ぼす残基(例えば、2個の保存されたメチオニン、1個の保存されたリシン、1個の保存されたバリン、1個の保存されたセリン)を含み、C末端4HBTドメインは、触媒活性に影響を及ぼす残基(例えば、1個の保存されたアスパラギン、1個の保存されたヒスチジン、1個の保存されたシステインを含む触媒三残基)と、基質特異性に影響を及ぼす残基(例えば、1個の保存されたトリプトファン)とを含む。MayerおよびShanklin,J.Biol.Chem.280:3621−3627(2005)を参照。ある実施形態では、変異によって、4HBTドメインの残基または基質特異性に影響を及ぼす残基が非保存的に置換される。ある実施形態では、変異は、スプライス部位の変異である。ある実施形態では、変異は、中途停止コドン(TGA、TAAまたはTAG)が導入されたナンセンス変異であり、欠失ポリペプチドが生成する。
【0042】
配列番号:1〜4は、それぞれアイソフォーム1〜4をコードし、欠失FATBポリペプチドを生じる例示的なナンセンス変異を含むヌクレオチド配列を記載している。配列番号:1は、ポジション154に変異を有するアイソフォーム1のヌクレオチド配列であり、コドンがCAGがTAGに変わっている。配列番号:2は、ポジション695に変異を有するアイソフォーム2のヌクレオチド配列であり、コドンがCAGがTAGに変わっている。配列番号:3は、ポジション276に変異を有するアイソフォーム3のヌクレオチド配列であり、コドンがTGGからTGAに変わっている。配列番号:4は、ポジション336に変異を有するアイソフォーム4のヌクレオチド配列であり、コドンがTGGからTGAに変わっている。
【0043】
変異株同士を遺伝子的にかけ合わせることによって、植物中で2種類以上の異なる変異FATB対立遺伝子を組み合わせてもよい。例えば、FATB遺伝子座にアイソフォーム1をコードする突然変異対立遺伝子を有する植物を、FATB遺伝子座にアイソフォーム2をコードする突然変異対立遺伝子を有する第2の植物とかけ合わせるか、または結合させてもよい。このかけ合わせによって作られた種子を植え、子孫種子を得るために、得られた植物を自家受精させる。両突然変異対立遺伝子を有する種子を特定するために、これらの子孫種子をスクリーニングすることができる。ある実施形態では、子孫を複数世代にわたって(例えば、第2世代〜第5世代)選択し、2の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する植物を得る。同様に、2以上の異なるFATBアイソフォームに突然変異対立遺伝子を有する植物を、2種類以上の異なるFATB対立遺伝子に突然変異対立遺伝子を有する第2の植物とかけ合わせることができ、子孫種子をスクリーニングし、4種類以上の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する種子を特定することができる。ここでもまた、複数世代にわたって子孫を選択し、望ましい植物を得ることができる。
【0044】
ある実施形態では、FATA2遺伝子座にある突然変異対立遺伝子と、2以上の(例えば、3または4の)異なるFATB遺伝子座にある突然変異対立遺伝子とを植物中で組み合わせてもよい。例えば、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する植物を、2以上の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する第2の植物とかけ合わせるか、または結合させてもよい。子孫種子を得るために、このかけ合わせによって作られた種子を植え、得られた植物を自家受精させる。変異FATA2対立遺伝子および変異FATB対立遺伝子を有する種子を特定するために、これらの子孫種子をスクリーニングすることができる。子孫を複数世代にわたって(例えば、第2世代〜第5世代)選択し、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子をもち、2以上の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する植物を得ることができる。本明細書に記載する場合、FATA2b遺伝子座に突然変異対立遺伝子をもち、3または4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する植物は、異なる成長条件で安定であり(すなわち、成長期に気温が高いか、または低いことによって変動を受けにくく)、総飽和脂肪酸含有量が少ない。それぞれ、16:0および18:0に対し、FatB酵素およびFatA酵素の基質プロフィールが異なることに起因して、FatA2遺伝子座およびFatB遺伝子座に変異を有する植物は、種子オイル中の16:0および18:0の量がかなり減っていることを示している。
【0045】
また、FATA2遺伝子座および/またはFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有するアブラナ属植物は、脂肪酸デサチュラーゼ活性を制御する遺伝子座に、オイルの最終用途に合うようにオレイン酸およびリノレン酸の含有量を調整することができるような突然変異対立遺伝子を含んでいてもよい。例えば、このようなアブラナ属植物は、リノール酸からα−リノレン酸への酵素による変換に関与するδ−15デサチュラーゼ(FAD3としても知られている)の活性低下を示すことができる。δ−15脂肪酸デサチュラーゼをコードする遺伝子は、BrassicaおよびArabidopsisでfad3と呼ばれる。より高度な植物のfad3遺伝子の配列は、Yadavら、Plant Physiol.,103:467−476(1993)、WO 93/11245およびArondelら、Science,258:1353−1355(1992)に開示されている。δ−15デサチュラーゼの検出可能な活性が存在しないことを含め、活性を低下させることは、突然変異誘発によって達成することができる。検出可能な活性が存在しないことを含め、活性を低下させることは、対応するコントロール植物と比較して、ある植物でリノレン酸(生成物)の量が少なく、ある場合には、リノール酸(基質)の量が多いことから推察することができる。例えば、親植物は、低いリノレン酸量を与えるAPOLLOまたはSTELLAR B.napus品種に由来する変異を含んでいてもよい。STELLARおよびAPOLLO品種は、マニトバ大学(マニトバ、カナダ)で開発された。ある実施形態では、親は、低リノレン酸表現型を与える、IMC02に由来するfad3A変異および/またはfad3B変異を含む。IMC02は、fad3A遺伝子およびfad3B遺伝子の両方に変異を含む。fad3A遺伝子は、ゲノムDNAのATGから数えてポジション2565にCからTへの変異を含み、これにより、コードされるFAD3Aポリペプチドのポジション275のアルギニンがシステインに置換されている。fad3B遺伝子は、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に配置されているゲノムDNAのATGからポジション3053にGからAへの変異を含む。IMC02は、IMC01とWestarをかけ合わせて得られた。米国特許第5,750,827号の実施例3を参照。IMC01は、寄託番号40579でAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託された。IMC02は、寄託番号PTA−6221でATCCに寄託された。
【0046】
ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、FAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含む。例えば、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、ポジション275のアルギニンがシステインに置換されたFAD3ポリペプチドをコードする核酸および/またはエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有する核酸を含むFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含んでいてもよい。また、アブラナ属植物は、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、ポジション275のアルギニンがシステインに置換されたFAD3ポリペプチドをコードする核酸および/またはエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有する核酸を含むFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含んでいてもよい。また、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、ポジション275のアルギニンがシステインに置換されたFAD3ポリペプチドをコードする核酸および/またはエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に変異を有する核酸を含むFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含んでいてもよい。
【0047】
また、アブラナ属植物は、オレイン酸からリノール酸への酵素による変換に関与するδ−12デサチュラーゼの活性を低下させ、種子オイルのオレイン酸含有量を中程度または多くしてもよい。アブラナ属植物は、FATA2および/またはFATBの活性を下げることと組み合わせ、δ−12デサチュラーゼ(FAD2としても知られる)の活性低下を示すことができる。B.napusに由来する野生型fad2遺伝子の配列(D型およびF型と呼ばれる)がWO 98/56239に開示されている。δ−12デサチュラーゼの検出可能な活性が存在しないことを含め、活性を低下させることは、突然変異誘発によって達成することができる。δ−12デサチュラーゼの活性を低下させることは、対応するコントロール植物と比較して、ある植物でリノール酸(生成物)の量が少なく、ある場合には、オレイン酸(基質)の量が多いことから推察することができる。適切なfad2変異の非限定的な例としては、fad2−D遺伝子の中のヌクレオチド316でのGからAへの変異が挙げられ、これによって、HECGH(配列番号:5)モチーフ内のグルタミン酸がリシン残基に置換される。このような変異は、品種IMC129中に発見され、ATCCに寄託番号40811で寄託されている。別の適切なfad2変異は、fad2−F遺伝子のヌクレオチド515でのTからAへの変異であってもよく、これによって、KYLNNP(配列番号:6)モチーフ内のロイシンがヒスチジン残基に置換される(Fad2 Fポリペプチドのアミノ酸172)。このような変異は、品種Q508中に発見される。米国特許第6,342,658号を参照。fad2変異の別の例は、fad2−F遺伝子のヌクレオチド908でのGからAへの変異であり、これによって、DRDYGILNKV(配列番号:7)モチーフ内のグリシンがグルタミン酸に置換される(Fad2 Fポリペプチドのアミノ酸303)。このような変異は、品種Q4275中に発見され、ATCCに寄託番号97569で寄託されている。米国特許第6,342,658号を参照。適切なfad2変異の別の例は、fad2−F遺伝子のヌクレオチド1001(ATGから数えた場合)でのCからTへの変異であってもよく、これにより、スレオニンがイソロイシンに置換される(Fad2 Fポリペプチドのアミノ酸334)。このような変異は、高オレイン酸品種Q7415中に発見される。
【0048】
典型的には、fad2−D変異またはfad2−F変異のうち1つが存在すると、中程度のオレイン酸表現型(例えば、オレイン酸70〜80%)を種子オイルに与え、一方、fad2−D変異とfad2−F変異が両方とも存在すると、高オレイン酸表現型(例えば、オレイン酸>80%)を与える。例えば、Q4275は、IMC129に由来するfad2−D変異と、アミノ酸303にfad2−F変異とを含む。Q508は、IMC129に由来するfad2−D変異と、アミノ酸172にfad2−F変異とを含む。Q7415は、IMC129に由来するfad2−D変異と、アミノ酸334にfad2−F変異とを含む。Q4275、Q508、Q7415に両fad2変異が存在すると、オレイン酸が80%より多い高オレイン酸表現型を与える。
【0049】
したがって、ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座(例えば、FATA2b遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含む。例えば、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含んでいてもよい。また、アブラナ属植物は、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含んでいてもよい。また、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含んでいてもよい。ある実施形態では、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含む。また、アブラナ属植物は、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含んでいてもよい。また、アブラナ属植物は、FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、2以上の異なるFATB遺伝子座(3または4の異なる遺伝子座)に突然変異対立遺伝子と、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子と、上述のFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子とを含む。
【0050】
(雑種アブラナ属品種の作出)
雑種アブラナ属品種は、雌性親植物(すなわち、種子の親)の自家受粉を防ぎ、雄性親植物から得た花粉によって雌性親植物を受粉させ、この雌性植物でF1雑種の種子を作ることによって作ることができる。雌性植物の自家受粉は、花の生長の初期段階で花の雄しべを取り去ることによって防ぐことができる。または、雄性不稔の形態を用い、雌性親植物での花粉の生成を防ぐことができる。例えば、雄性不稔は、細胞質雄性不稔(CMS)、核雄性不稔、分子雄性不稔であってもよく、導入遺伝子が小胞子生成および/または花粉生成を阻害するか、または自家不和合性によって作り出すことができる。CMSを含む雌性親植物は、特に有用である。CMSは、例えば、ogu(Ogura)型、nap型、pol型、tour型、またはmur型であってもよい。例えば、Ogura型のCMSの記載について、Pellan−DelourmeおよびRenard,1987,Proc.7th Int.Rapeseed Conf.,Poznan,Poland,p.199−203、およびPellan−DelourmeおよびRenard,1988,Genome 30:234−238を参照。nap型、pol型、tour型、mur型のCMSの記載について、Riungu and McVetty,2003,Can.J.Plant Sci.,83:261−269を参照。
【0051】
雌性親植物がCMSである実施形態では、雄性親植物は、典型的には、F1雑種の繁殖力を確保するために稔性回復遺伝子を含む。例えば、雌の親がOgura型のCMSを含む場合、Ogura型のCMSに打ち勝つことができる稔性回復遺伝子を含む雄の親を使用する。このような稔性回復遺伝子の非限定的な例としては、Kosena型の稔性回復遺伝子(米国特許第5,644,066号)およびOgura型の稔性回復遺伝子(米国特許第6,229,072号および第6,392,127号)が挙げられる。雌の親がCMSであるその他の実施形態では、稔性回復因子を含まない雄の親を使用してもよい。このような親から作られるF1雑種は、雄性不稔である。雄性不稔の雑種種子は、雄の繁殖力のある種子と一緒に植えられ、得られる雄性不稔植物を生じる種子のための花粉を与えることができる。
【0052】
本明細書に記載する方法を用い、単交配Brassica F1雑種を作ることができる。このような実施形態では、雄の親植物から雌の親植物への天然の異花受粉を促進するために、実質的に均一に隣接する集合体として親植物を成長させることができる。雌の親植物から作られるF1種子を、従来の手段によって選択的に収穫する。また、上の2つの親植物を大量に成長させ、雌の親から作られるF1雑種の種子と、自家受粉の結果として雄の親から作られる種子とのブレンドを収穫してもよい。または、単交配F1雑種を雌性植物として使用し、最初のかけ合わせの雌性植物の脂肪酸パラメーターを満足する異なる雄の親とかけあわせる三系交配を行ってもよい。ここで、大量植え付けを仮定すると、この植物オイルの最終的なオレイン酸含有量を、単交配雑種と比べて減らすことができるが、2回目の交配をする場合、種子の収率は、両方の親の良好な農業生産力の観点でさらに高められるだろう。別の代替例として、2種類の異なる単交配のF1子孫自体をかけ合わせ、複交配の雑種を作ることができる。複交配の雑種を作るとき、雌の親の自家受粉を防ぐための特定の利点のため、自家不和合性を用いることができる。
【0053】
本明細書に記載する雑種は、良好な農業生産力をもち、雑種強勢を示し、これによって、F1雑種の生成にいずれかの親の収率よりも多い種子収率が得られる。例えば、収率は、片方または両方の親よりも少なくとも10%(例えば、10%〜20%、10%〜15%、15%〜20%、または25%〜35%)多くてもよい。ある実施形態では、収率は、同様の成長条件で成長させた場合、46A65(Pioneer)またはQ2(アルバータ大学)のような放任受粉した春型のキャノーラ品種の収率よりも多い。例えば、収率は、放任受粉させた品種の収率よりも少なくとも10%(例えば、10%〜15%、または15%〜20%)多くてもよい。
【0054】
本明細書に記載する雑種は、典型的には、グルコシノレートの量が非常に少ない種子を作る(水分含有量が8.5%で、脂肪を取り除いた食事が30μmol/グラム未満)。特に、雑種は、脂肪を取り除いた食事のグルコシノレート/グラムが20μmol未満の種子を作ることができる。この場合、雑種は、グルコシノレート量を低下させる変異が組み込まれていてもよい。例えば、米国特許第5,866,762号を参照。グルコシノレート量は、変化していないグルコシノレートの合計量を定量するには、ISO 9167−1:1992(E)に記載されるように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、抽出し、精製したデスルホグルコシノレートのトリメチルシリル(TMS)誘導体を定量するには、気−液クロマトグラフィーのような既知の技術にしたがって決定することができる。グルコシノレート量を決定するHPLC法およびTMS法によって、脂肪を取り除いたか、またはオイルを含まない食事を分析する。
【0055】
(キャノーラ油)
本明細書に開示されているアブラナ属植物は、総飽和脂肪酸が少ないか、まったくないキャノーラ油を産生するのに有用である。例えば、本明細書に記載のアブラナ属植物の種子から得られたオイルは、総飽和脂肪酸含有量が約2.5〜5.5%、3〜5%、3〜4.5%、3.25〜3.75%、3.0〜3.5%、3.4〜3.7%、3.6〜5%、4〜5.5%、4〜5%、または4.25〜5.25%であってもよい。ある実施形態では、オイルは、総飽和脂肪酸含有量が約4〜約5.5%、オレイン酸含有量が約60〜70%(例えば、62〜68%、63〜67%、または65〜66%)、α−リノレン酸含有量が約2.5〜5%である。ある実施形態では、オイルは、総飽和脂肪酸含有量が約2.5〜5.5%(例えば、4〜5%)、オレイン酸含有量が約71〜80%(例えば、72〜78%、73〜75%、74〜78%、または75〜80%)、α−リノレン酸含有量が約2〜5.0%(例えば、2.0〜2.8%、2.25〜3%、2.5〜3%、3〜3.5%、3.25%〜3.75%、3.5〜4%、3.75〜4.25%、4〜4.5%、4.25〜4.75%、4.5〜5%)である。ある実施形態では、キャノーラ油は、総飽和脂肪酸含有量が2.5〜5.5%、オレイン酸含有量が78〜80%、α−リノレン酸含有量が4%以下(例えば、2〜4%)であってもよい。ある実施形態では、オイルは、総飽和脂肪酸含有量が約3.5〜5.5%(例えば、4〜5%)、オレイン酸含有量が約81〜90%(例えば、オレイン酸が82〜88%、または83〜87%)、α−リノレン酸含有量が2〜5%(例えば、2〜3%、または3〜5%)である。ある実施形態では、オイルは、総飽和脂肪酸含有量が3.7%以下(例えば、約3.4〜3.7%、または3.4〜3.6%)、オレイン酸含有量が約72〜75%である。
【0056】
本明細書に記載の飽和物が少ないオイルは、パルミチン酸含有量が約1.5〜3.5%(例えば、2〜3%、または2.2〜2.4%)であってもよい。このようなオイルのステアリン酸含有量は、約0.5〜2.5%(例えば、0.5〜0.8%、1〜2%、または1.5〜2.5%)であってもよい。
【0057】
本明細書に記載のオイルは、飽和物の総含有量が少ないことに加え、エイコセン酸含有量が1.6%より大きくてもよく、例えば、1.6〜1.9%、1.7〜2.3%、1.8〜2.3%、または1.9〜2.3%であってもよい。
【0058】
本明細書に記載のオイルは、飽和物の総含有量が少ないことに加え、リノール酸含有量が約3〜20%、例えば、3.4〜5%、3.75〜5%、8〜10%、10〜12%、11〜13%、13〜16%、または14〜18%であってもよい。
【0059】
本明細書に記載のオイルは、飽和物の総含有量が少ないことに加え、エルカ酸含有量が2%未満(例えば、1%未満、0.5%未満、0.2%未満または0.1%未満)である。
【0060】
種子の脂肪酸組成は、まず種子サンプル(例えば、10以上の種子の大量の種子サンプル)を砕き、種子サンプルからオイルを抽出することによって決定することができる。種子中のTAGを加水分解して遊離脂肪酸を得て、次いで、これを脂肪酸メチルエステルに変換し、当業者に既知の技術、例えば、AOCS Procedure Ce 1e−91にしたがう気−液クロマトグラフィー(GLC)を用いて分析することができる。近赤外(NIR)分析は、AOCS Procedure Am−192(1999年に改定)にしたがって、種子全体に対して実施することができる。
【0061】
本明細書に記載する植物から収穫した種子を用い、未精製キャノーラ油、または総飽和脂肪酸含有量が少ないか、またはまったくない、精製し、漂白し、脱臭した(RBD)キャノーラ油を産生することができる。収穫したキャノーラ種子を当該技術分野で既知の技術によって砕くことができる。種子に水を噴霧し、水分量を例えば8.5%まで上げることによって種子を柔らかくしてもよい。柔らかくなった種子を、例えば、ギャップを0.23〜0.27mmに設定したスムースローラーを用いてフレーク状にしてもよい。抽出プロセスを容易にするために、このフレークに熱を加えて酵素を不活化し、さらなる細胞破壊を促進し、油滴を合着させるか、または、タンパク質粒子を凝集させてもよい。典型的には、スクリュープレスによって加熱したキャノーラフレークからオイルを除去し、フレークから大部分のオイルを搾り取る。得られた加圧ケーキは、残留油をいくらか含んでいる。
【0062】
加圧操作から作られた未精製油を、穴のついたワイヤドレナージ上部を備えた沈降槽に通し、スクリュー加圧操作でオイルとともに絞り出された固体を除去する。浄化したオイルをプレートフレームフィルタに通し、残留する微細固体粒子を除去することができる。スクリュー加圧操作から作られたキャノーラ加圧ケーキを、市販のn−ヘキサンを用いて抽出することができる。抽出プロセスから回収したキャノーラ油を、スクリュー加圧操作から得た浄化オイルと合わせ、ブレンドした未精製オイルを得る。
【0063】
典型的に、この未精製オイルから、食品グレードのリン酸を加えたバッチ精製槽内で加熱することによって、遊離脂肪酸およびガム状物が除去される。この酸は、水和しないホスファチドを水和可能な形態に変換し、未精製オイル中に存在する少量の金属をキレート化するのに役立つ。ホスファチドおよび金属の塩が、ソープストックとともにオイルから除去される。オイル−酸の混合物を水酸化ナトリウム溶液で処理し、酸−オイル混合物中の遊離脂肪酸およびリン酸を中和する。中和された遊離脂肪酸、ホスファチドなど(ソープストック)を、中和したオイルから抜き取る。水による洗浄を行い、オイルのソープ含有量をさらに減らしてもよい。必要な場合、当該技術分野で既知の技術によって、このオイルを使用前に漂白し、脱臭してもよい。
【0064】
本明細書に記載する植物から得られるオイルは、酸化安定性を高めることができ、酸化安定性は、例えば、Oxidative Stability Index Instrument(例えば、Omnion,Inc.、ロックランド、MAから)を用い、AOCS Official Method Cd 12b−92(1993年に改定)にしたがって測定することができる。酸化安定性は、「AOM」時間の観点であらわされることが多い。
【0065】
(食品組成物)
本書面は、上述のオイルを含む食品組成物も特徴とする。例えば、食品製品中の飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の量が少なくなるように、総飽和脂肪酸含有量が少ない(6%以下)またはまったくない(3.5%以下)であり、それに加え、オレイン酸含有量が典型的(60〜70%)、中程度(71〜80%)、または多い(>80%)オイルを用い、種々の食品製品中の飽和脂肪酸および水素化油(例えば、部分的に水素化した油)を置き換えるか、または量を減らすことができる。特に、総飽和脂肪酸含有量が少なく、オレイン酸含有量が中程度または高いことに加え、リノレン酸含有量が少ないキャノーラ油を使用し、処理した食品製品または包装した食品製品(クッキー、マフィン、ドーナツ、ペストリー(例えば、トースターペストリー)、パイ用フィリング、パイ用クラスト、ピザ用クラスト、フロスティング、パン、ビスケット、ケーキ、朝食用シリアル、朝食用バー、プディング、クラッカーのようなパン製品を含む)の飽和油脂および部分的に水素化した油を置き換えるか、または量を減らすことができる。
【0066】
例えば、本明細書に記載するオイルを用い、クッキーおよび/またはクリームフィリング中の飽和脂肪酸の量が少なく、部分的に水素化した油がまったくないか、量が少ないサンド型クッキーを作ることができる。このようなクッキー組成物は、例えば、キャノーラ油に加え、小麦粉、甘味料(例えば、糖、糖液、蜂蜜、ブドウ糖果糖液糖、人工甘味料(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、またはアセスルファムカリウム、およびこれらの組み合わせ)、卵、塩、香味料(例えば、チョコレート、バニラまたはレモン)、膨張剤(例えば、炭酸水素ナトリウム、または他のベーキング用の酸(例えば、リン酸一カルシウム一水和物、硫酸ナトリウムアルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムアルミニウム、リン酸二カルシウム、グルカノ−デルタラクトン、または酒石酸水素カリウム、またはこれらの組み合わせ)と、場合により、乳化剤(例えば、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルおよびジエステル、脂肪酸のグリセロール−ラクトースエステル、エトキシル化またはコハク酸化されたモノグリセリドおよびジグリセリド、レシチン、ジアセチル酒石酸エステルまたはモノグリセリドおよびジグリセリド、グリセロールのショ糖エステル、およびこれらの組み合わせ)とを含んでいてもよい。クリームフィリング組成物は、キャノーラ油に加え、甘味料(例えば、粉末糖、顆粒糖、蜂蜜、ブドウ糖果糖液糖、人工甘味料またはこれらの組み合わせ)、香味料(例えば、バニラ、チョコレートまたはレモン)、塩と、場合により、乳化剤とを含んでいてもよい。
【0067】
キャノーラ油(例えば、総飽和脂肪酸含有量が少なく、オレイン酸が少なく、リノレン酸含有量が少ない)は、その多価不飽和物含有量が、揚げ物のために改良された酸化安定性を有するほど十分に低く、揚げられる食物に望ましい揚げ物の香りを付与するのには十分なほど高いため、特に揚げ物用途に有用である。例えば、キャノーラ油を使用し、スナックチップス(例えば、トウモロコシまたはジャガイモのチップス)、フレンチフライ、または他の素速く出される食品のような揚げた食品を製造することができる。
【0068】
また、本明細書に記載するオイルを使用し、食品製品(例えば、シリアル類またはクラッカーのようなスナック類)のスプレーコーティングを配合することができる。ある実施形態では、スプレーコーティングは、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油または大豆油を含め、他の植物オイルを含んでいてもよい。また、スプレーコーティングは、酸化防止剤および/または調味料を含んでいてもよい。
【0069】
また、本明細書に記載するオイルを、ドレッシング、マヨネーズおよびソースの製造に用い、製品の総飽和油脂含有量を減らすことができる。飽和物の少ないオイルを、マイクロ波用ポップコーン固体油脂またはキャノーラバター配合物のような構造化油脂溶液を作るためのベース油として使用することができる。
【0070】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0071】
本明細書に記載する表では、脂肪酸は、炭素鎖の長さと、鎖内の二重結合の数によって示される。例えば、C140は、C14:0酸またはミリスチン酸を指し;C160は、C16:0酸またはパルミチン酸を指し;C180は、C18:0酸またはステアリン酸を指し;C181は、C18:1酸またはオレイン酸を指し;C182は、C18:2酸またはリノール酸を指し;C183は、C18:3酸またはα−リノレン酸を指し;C200は、C20:0酸またはアラキジン酸を指し;C201は、C20:1酸またはエイコセン酸を指し、C220は、C22:0酸またはベヘン酸を指し、C221は、C22:1酸またはエルカ酸を指し、C240は、C24:0酸またはリグノセリン酸を指し、C241は、C24:1酸またはネルボン酸を指す。「塩合計量」は、C140、C160、C180、C200、C220およびC240の合計を指す。それぞれの明記されているサンプルについて、代表的な脂肪酸プロフィールが与えられている。
【0072】
他の意味であると示されていない限り、全てのパーセントは、オイルの中の脂肪酸の合計重量%を基準とした重量%を指す。
【0073】
実施例1
アブラナ属植物株15.24
オレイン酸が多く、総飽和脂肪酸含有量が少ないオイルを生成する植物を、90A24と命名された植物と、90I22と命名された植物とをかけ合わせて得た。90A24植物を、IMC 129系統から選んだ高オレイン酸のHIO 11−5(ATCC寄託番号40811;米国特許第5,863,589号)とIMC 144系統から選んだ低飽和脂肪酸のLS 6−5(ATCC寄託番号40813;米国特許第5,668,299号)とをかけ合わせて得た。90I22植物を、IMC 144系統から選んだ低飽和脂肪酸のLS 4−3(ATCC寄託番号40813)と、IMC 01系統から選んだ低α−リノレン酸であるD336(ATCC寄託番号40579;米国特許第5,750,827号)とをかけ合わせて得た。表1には、LS6−5、LS4−3、HIO 11−5の親株と、IMC 01の脂肪酸プロフィールが含まれている。
【0074】
【表1】

【0075】
90A24と90I22とをかけ合わせたFl世代の子孫は、91ASと命名された。F1 91AS植物を自家受粉させ、F2種子を作り、これを収穫し、ガスクロマトグラフィー(GC)によって脂肪酸組成を分析した。リノレン酸含有量が少なく、オレイン酸含有量が多いF2種子を植え、自家受粉させてF3種子を作った。F3種子の脂肪酸組成を分析した。オレイン酸が多く、リノレン酸含有量が少ないF3種子を植えてF3植物を作り、これを自家受精させてF4種子を作った。F4種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。オレイン酸が多く、リノレン酸含有量が少ないF4種子を植えてF4植物を作り、そのうち8種類の植物を自家受粉させてF5種子を作った。F5種子の脂肪酸組成をGCによって分析した(表2)。
【0076】
91AS51057と命名された株のひとつから得たF5種子を、総飽和脂肪酸量が4.99%であり、パルミチン酸が2.64%、ステアリン酸が1.33%と低いことに基づいて選択した(表2)。また、この株は、エイコセン酸(C20:1)含有量が1.73%と高かった。この選択した種子(F5 91AS51057)を植えてF5植物を作り、これを自家受精させてF6種子を作った。この5種類の自家受精させた植物のうち、3種類からF6種子を収穫した。3種類の植物それぞれから収穫したF6種子の脂肪酸組成を表3に示す。91AS51057株の中で、さらなる5世代にわたって自家受精させ、選択を続けた。表4には、自家受粉させた91AS51057植物の22株から得たF10種子を収穫した圃場の脂肪酸組成が与えられている。総飽和脂肪酸含有量は4.38〜6.28%の範囲であり、オレイン酸含有量は74.9〜82.5%の範囲であり、α−リノレン酸含有量は2.1〜4.8%の範囲であった。エイコセン酸含有量は1.28%〜2.30%の範囲であり、ほとんどの91AS51057 F9植物は、エイコセン酸含有量が1.90%〜2.25%のF10種子を作った。表4を参照。4種類の個々のF10 91AS51057株の種子(X723868、X723977、X724734、X724738)を選択し、これらの種子をそれぞれの隔離したテントにある圃場に植えた。総飽和物量が少ないX724734株を、15行24列のポジションにある保育圃場に基づいて15.24と命名し、その後のかけ合わせに用い、パルミチン酸およびステアリン酸を減らしつつ、飽和物が少ないという形質を導入した。また、15.24株は、飽和物を減らすことに関連して、エイコサン酸の量が2.06%と多い状態に保持されていた。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
実施例2
15.24植物のFatA2変異の特定
ゲノムマッピング、マップベース遺伝子クローニング、直接配列決定の方策を用い、実施例1に記載した15.24株中の総飽和脂肪酸が低い表現型に関連する遺伝子座を特定した。15.24と01OB240(雑種産生のための細胞質雄性不稔(CMS)A株の維持に使用されるB株)とのかけ合わせからDH(倍加半数体)集合を成長させた。MassARRAYプラットフォーム(Sequenom Inc.、サンディエゴ、CA)を用いた1066 SNP(一塩基多型)マーカーを用い、この2種類の親株をスクリーニングし、この2種類の親の多型SNPマーカーを特定し、179の多型SNPマーカーを特定した。
【0081】
脂肪酸成分とSNPマーカーとのシングルマーカー相関をSASプログラム(SAS Institute 1988)を用いて実施した。JoinMap 3.0(Kyazma)のKosambi関数を用い、Brassica napus遺伝子連鎖地図を構築した。量的形質遺伝子座(QTL)のインターバルマッピングをMapQTL 4.0(Kyazma)を用いて行った。LODスコアが3.0より大きいことは、相関インターバルを示すための閾値であると考えられた。精密QTLマッピングの場合、15.24と01PR06RR.001BのキャノーラR(稔性回復因子)株とをかけ合わせ、BC3S(自己の戻し交配)集合を成長させた。特定されたQTLインターバルの中のSNPハプロタイプブロックおよび組み換え/かけ合わせ事象を、MS Excel(登録商標)プログラムを用いて特定した。
【0082】
比較ゲノムマッピングを行ない、Brassica napus染色体中で特定されたQTLのポジションを決定し、さらに、特定されたQTLインターバルの中に特定されたSNPマーカーおよび候補遺伝子を包含するBrassica rapa BAC(細菌人工染色体)クローンを、公的に入手可能なBrassicaおよびArabidosisのゲノム配列、遺伝子、遺伝子連鎖地図、brassica.bbsrc.ac.uk/およびncbi.nlm.nih.gov/のWWWから得た他の情報を用い、総飽和脂肪酸が少ないことについて特定した。
【0083】
計148のDH株を、179多型のSNPマーカーを用いて遺伝子型決定した。QTLマッピングから、飽和脂肪酸含有量(C18:0およびC20:0)について、7つのSNPマーカーを包含する主要なQTLインターバル(5 cM)を特定した。15.24と01PR06RR.001Bのキャノーラ稔性回復因子株とをかけ合わせて得た610 BC3S1株を用いた精密マッピングから、総飽和脂肪酸が少ない表現型に関連する1 cM QTLインターバルに隣接する2個のSNPマーカーを特定した。比較ゲノムマッピングによって、N3染色体内のこのQTLのポジションを決定し、さらに、このQTLインターバル内のFatA2候補物質を特定した。
【0084】
15.24株と01OB240株から得たDNAをテンプレートとして使用し、FatA配列を増幅させた。得られた配列を、DNASTAR/Lasergene 8.0(DNASTAR, Inc)から得たBLAST(Basic Local Alighnment Search Tool)、MegAlign、EditSeqのプログラムを用いて分析した。FatA1およびFatA2のアイソフォームを増幅させ、代表的なサンプリングを図1に示している。15.24から得たBnFatA1配列は、B.rapa FatA1およびA.thaliana FatA1の配列と同種であり、一方、15.24から得たBnFatA2配列は、AtFatA2およびB.napus pNL2の配列と同種である。FatA2の2種類のアイソフォーム(または対立遺伝子)は、配列決定の結果から明らかであり、FatA2aおよびFatA2bと名付けられた。これら2種類のアイソフォームの配列間の違いを図4に示している。図1および図2は、代表的なヌクレオチドを示しており(「2」と記されたポジション、FatA2bアイソフォームのみを図1に示している)、このポジションで、FatA2aは「C」であり、FatA2bは「T」である(図4にまとめられている)。FatA2の配列決定の結果から、FatA2bアイソフォーム配列内に、15.24は、図1、図2、図4で「1」と記されたポジションによってあらわされる1個のヌクレオチド多型を含んでいた。15.24において、FatA2b配列は、01OB240配列には存在しない「C」から「T」への変異を含んでいる(図1、2、4の「1」)。図1および図2のポジション「1」でのヌクレオチド置換は、FatA2コード配列のポジション942に対応しており(Genbank寄託番号NM_117374.3に記載しているArabidopsis thaliana配列に基づいて番号を付けている)、その結果、コードされたタンパク質のポジション255のプロリンがロイシン残基で置換されている。15.24由来のBrassica napus FatA2b遺伝子の代表的なヌクレオチド配列を与える配列番号:28および配列番号:32を参照。図4では、15.24株の飽和物の含有量が低いことと相関関係にある「C」から「T」へのSNPがあるポジション798に印が付けられている。配列番号:29は、野生型B.napus FatA2ポリペプチドの残基242〜277のアミノ酸配列を含む。配列番号:29のポジション14(全長アミノ酸配列のポジション255)は、15.24由来のFatA2ポリペプチド内のロイシンである。配列番号:30は、野生型Arabidopsis FatA2ポリペプチドを含む。配列番号:31は、エキソン2〜6に由来するB.napus FATA2bポリペプチドの予想アミノ酸配列を含む。
【0085】
図3は、Arabidopsis FatA2タンパク質、15.24および01OB240由来のBrassica FatA2タンパク質のポジション255付近の保存された領域のアラインメントを含んでいる。ポジション255のプロリンは、Brassica、Arabidopsis、B.napus、B.rapa、B.juncea、Zea mays、Sorghum bicolor、Oryza sativa Indica(米)、Triticum aestivum、Glycine max、Jatropha(樹種)、Carthamus tinctorius、Cuphea hookeriana、Iris tectorum、Perilla frutescens、Helianthus annuus、Garcinia mangostana、Picea sitchensis、Physcomitrella patens subsp.Patens、Elaeis guineensis、Vitis vinifera、Elaeis oleifera、Camellia oleifera、Arachis hypogaea、Capsicum annuum、Cuphea hookeriana、Populus trichocarpaおよびDiploknema butyraceaで保存されている。さらに、アミノ酸242〜277に広がる領域の多くのアミノ酸が、ArabidopsisおよびBrassicaのFatAおよびFatBの両方で同種である(Fett/Lipid 100(1998)167−172を参照)。
【0086】
図4は、01OB240および15.24の遺伝資源に由来する代表的なBnFatA2a配列およびBnFatA2b配列の一部を示す。「1」および「2」と記されたポジションは、図1、2、3のポジション「1」および「2」に対応している。
【0087】
親株(15.24および0101OB240)および他の遺伝資源の集合(IMC144、IMC129、Q508、Q7415を含む)の大スケールスクリーニングから、FatA2 SNPが15.24特異的であり、総飽和脂肪酸が少ない表現型と統計的に有意に関連しており(飽和物の総含有量についてR2乗=0.28、C18:0についてR2乗=0.489、C20:0についてR2乗=0.385)、エイコセン酸含有量が多いことと統計的に有意に関連していた(R2乗=0.389)。FatA2 SNP1変異は、15.24植物に由来するオイルのC14:0およびC16:0の含有率に有意な相関はなかった。しかし、15.24植物に由来するオイルのC18:0含有量は、C20:1含有量と負の相関があることがわかった(R値=−0.61)。
【0088】
実施例3
Brassica株15.36
オレイン酸が多く、総飽和脂肪酸含有量が少ないオイルを生成する植物を、A12.20010株およびQ508株に由来する植物をかけ合わせて得た。A12.20010株を、IMC144系統からの選択肢と、IMC129系統からの選択肢とをかけ合わせて得た。Q508株は、fad2 D遺伝子およびF遺伝子それぞれに変異を含む高オレイン酸株である。米国特許第6,342,658号の実施例5および7を参照。
【0089】
92EP.1039と命名された植物を、A12.20010とQ508をかけ合わせた子孫の脂肪酸組成に基づいて選択した。92EP.1039植物を、市販のCanadian春型のキャノーラ品種であるTrojan植物とかけ合わせた。92EP.1039およびTrojanのF1世代の子孫を93PIと命名した。F1 93PI植物を自家受粉させてF2種子を作り、これを収穫し、GCによって脂肪酸組成を分析した。
【0090】
オレイン酸含有量が多いF2種子を選択し、植えてF2植物を得た。F2植物を自家受粉させてF3種子を作った。F3種子の脂肪酸組成を分析した。表5には、13種類の異なるF2植物から得た93PI21 F3種子の脂肪酸プロフィールが含まれている。飽和脂肪酸含有量が少ないF3 93PI21種子を植えてF3植物を作り、これを自家受精してF4種子を作った。F4 93PI21種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。表6には、13種類の異なる自家受粉させたF3植物から得たF4 93PI21種子の脂肪酸プロフィールが含まれている。総飽和脂肪酸含有量が最も低い3種類の93PI21植物(T7440796、T740797、T740799)を、5世代にわたってさらに自家受精させ、総飽和脂肪酸含有量が低いことについて選択した。93PI2I株のT740799をF4世代で93PI41003と命名し、成長を促した。表7は、24種類の自家受粉させたF7世代の93PI41003植物から収穫したF8種子の脂肪酸組成を与えている。この結果は、総飽和脂肪酸含有量が4.51%〜6.29%の範囲であり、オレイン酸含有量が64〜71%の範囲であり、α−リノレン酸含有量が4.8〜7.5%であることを示している。エイコセン酸含有量は、1.51%〜1.99%の範囲であった。93PI41003 F8植物のX727712株を、15行36列のポジションにある保育圃場に基づいて15.36と再び命名し、総飽和脂肪酸組成は4.51%であり、パルミチン酸が2.65%、ステアリン酸が0.94%と少なかった。15.36株をかけ合わせに使用し、他の遺伝子バックグラウンドに飽和物が少ない形質を導入した。
【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】

【0094】
実施例4
Brassica napus FatBのクローニング
Brassica napus FatB遺伝子のクローニングは、テンプレートとしてのWestarゲノミックDNAおよびTaqポリメラーゼ(Qiagen)を用い、各々、プライマーFatB1(5'-ATGAAGGTTAAACCAAACGCTCAGGC-3';配列番号:8)およびFatB2(5'-TGTTCTTCCTCTCACCACTTCAGC-3';配列番号:9)を用いるPCRを行うことによって開始した。各々の50μL反応液には、0.5μMのプライマー、1X Qiagen Taqポリメラーゼバッファー、2.5UのTaqポリメラーゼ、および0.2mMのdNTPを含ませた。ターゲットは以下のサイクル条件を用いて増幅した:94℃にて30秒の1サイクル;94℃にて10秒、58℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;94℃にて10秒、54℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;および94℃にて10秒、51℃にて30秒、および72℃にて1分45秒の24サイクル。PCR反応物のアリコートをアガロースゲルに流し、選択したバンドを切り出し;Qiagen Qiaquickキットを用いてバンドからDNAを溶出した。DNA溶出物は‘ポリッシング’反応に付してT/Aクローニングを促進し、ついでTOPO(登録商標)T/A(登録商標)クローニングキット(Invitrogen)を用いてTOPO(登録商標)T/Aクローニングした。クローンについて配列を得、ついでそれをBLASTを用いて解析してホモロジーを検索した。クローンのうちの1はFatBのようであった。
【0095】
PCRをInvitrogen Platinum(登録商標)Pfxポリメラーゼ、最終濃度2mMのMgSO4を補充したそのバッファー、およびIMC201株ゲノミックDNAを用いて、以下のサイクル条件で繰り返した:94℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、60℃にて30秒、および72℃にて1分20秒の5サイクル;94℃にて10秒、57℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;および94℃にて10秒、54℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の24サイクル。この反応からのPCR産物も、Topo(登録商標)T/A(登録商標)クローニング・システム(Invitrogen)を用いてTopo(登録商標)T/A(登録商標)クローニングした。
【0096】
配列決定した多数のクローンが、同定した遺伝子の4の異なるアイソフォームを含み、FatB(配列番号:10,11,12,13)に対してホモロジーを示した。各遺伝子の開始および停止領域の配列を得るために、製造業者プロトコールに従って、GenomeWalker(商標)キット(Clontech)を利用する‘ウォーキング’法を用いた。ウォーキング法からの配列情報に基づいて、FatB遺伝子の5' UTRおよび3' UTRまたは停止コドン領域付近に対応するプライマーを設計した。PCRは、1X Platinum(登録商標)Taq High Fidelityバッファー;2.5UのPlatinum(登録商標)Taq High Fidelityポリメラーゼ;0.2mMのdNTP;0.5μMのプライマー;および2mMのMgSO4を含む50μLの反応液中、テンプレートとしてのIMC201ゲノミックDNAおよび2セットのプライマーを用いて行った。第1反応用のプライマーは5'-CTTTGAACGCTCAGCTCCTCAGCC-3'(配列番号:14)および5'-‘AAACGAACCAAAGAACCCATGTTTGC-3'(配列番号:15)とした。第2反応用のプライマーは5'-CTTTGAAAGCTCATCTTCCTCGTC-3'(配列番号:16)および5'-GGTTGCAAGGTAGCAGCAGGTACAG-3'(配列番号:17)とした。第1反応は、以下のサイクル条件下で行った:94℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、56℃にて40秒、および68℃にて1分30秒の5サイクル;94℃にて10秒、53℃にて30秒、および68℃にて2分の30サイクル。第2反応は以下のサイクル条件下で行った:95℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、58℃にて40秒、および68℃にて2分の5サイクル;ならびに、94℃にて10秒、55℃にて30秒、および68℃にて2分の30サイクル。両方の反応セットは、〜1.6Kbの予想したサイズのバンドを生成した。
【0097】
DNAをクローニングするために、94℃にて2分の1サイクル、ならびに94℃にて10秒、58℃にて40秒、および68℃にて2分の35サイクルを用いてPCR反応を行った。得られたバンドをゲル精製し、Qiagen Qiex IIカラムに流してアガロースゲルからDNAを精製した。DNAは、Invitrogen T/A(登録商標)クローニングシステムを用いてTopo(登録商標)T/A(登録商標)クローニングした。配列番号:18−21に記載するヌクレオチド配列は、各々、完全長(または、ほぼ完全長の)FatBアイソフォーム1、2,3、および4を表す。
【0098】
FatBアイソフォーム5および6は以下のようにして同定した。プライマー5'-ACAGTGGATGATGCTTGACTC-3'(配列番号:22)および5'-TAGTAATATACCTGTAAGTGG-3'(配列番号:23)をB.napus 01OB240からのFatB配列に基づいて設計し、それを用いてIMC201からB.napusゲノミックDNAを増幅した。得られた産物をクローニングし、配列決定し、ついで新たなFatB部分長のアイソフォームを同定した。GenomeWalker(商標)キット(Clontech)を用いて配列ウォーキングを行った。プライマー5'-TACGATGTAGTGTCCCAAGTTGTTG-3'(配列番号:24)および5'-TTTCTGTGGTGTCAGTGTGTCT-3'(配列番号:25)はゲノム・ウォーキングを通して得た配列に基づいて設計し、それを用いて新たなFatBアイソフォームの連続するORF領域を増幅した。PCR産物をクローニングし、配列決定してFatBアイソフォーム5および6(配列番号:26および配列番号:27)を同定した。6のアイソフォームは、ClustalWアルゴリズムを用いて評価して、82ないし95%の配列同一性を有する。
【0099】
実施例5
突然変異FATB遺伝子
B.napus IMC201種子の集団を化学突然変異誘発に付した。圃場生育IMC201の典型的な脂肪酸組成は、6.4%の総飽和を有して、3.6%のC16:0、1.8%のC18:0、76%のC18:1、12.5%のC18:2、3%のC18:3、0.7%のC20:0、1.5%のC20:1、0.3%のC22:0、0%のC22:1であった。突然変異誘発の前に、15分間浸漬し、ついで室温にて5分間排水することによってIMC201種子を700gmの種子ロットに前−吸収させた。これを4回繰り返して、種皮を軟化した。ついで、前−吸収した種子を4mMのメチルN−ニトロソグアニジン(MNNG)で3時間処理した。MNNGでの処理に続いて、種子から突然変異源を排出し、1時間水で濯いだ。水を除去した後に、種子を52.5mMのメタンスルホン酸エチル(EMS)で16時間処理した。EMSでの処理後、種子から突然変異源を排出し、水で1時間半濯いだ。この二重の突然変異源処理は、種子集団にLD50を生じた。
【0100】
ほぼ200,000の処理した種子を標準的な温室ポット土壌に植栽し、環境制御した温室に設置した。植物は16時間の日照下で生育した。成熟時に、M2種子を植物から収穫し、一緒にまとめた。M2世代を植栽し、8の植物からの初期のポスト子葉ステージの発達からの葉試料を保存し、これらの植物の葉からDNAを抽出した。葉の収穫、保存およびDNA抽出をほぼ32,000の植物について繰り返し、突然変異B.napus IMC201 DNAを含むほぼ40の96ウェルブロックを得た。突然変異DNAのこのグループ分けは、以後、DNA突然変異誘発ライブラリーという。
【0101】
DNA突然変異誘発ライブラリーをスクリーニングして、停止コドンを含むFatB突然変異体を同定した。一般的に、PCRプライマーを設計して、各FatBアイソフォームの領域を増幅した。反応産物をREVEAL(商標)機器(Transgenomics Inc.)上の温度勾配キャピラリー電気泳動を用いて解析し、これは、化学突然変異およびその後のPCR増幅からのゲノミックDNAに存在する単一ヌクレオチド多型(SNP)のように、異種PCR産物を含むPCR反応物が同種産物のみを含む反応物から区別されることを許容する。
【0102】
この一次突然変異誘発スクリーニング用のソースゲノミックDNA混合物である各M2植物の一次ヒットを表す個々の種子をサンプリングし、アイソフォームPCRを行うためにゲノミックDNAを単離した。PCR反応は、1X Platinum(登録商標)Taq High Fidelityバッファー;2.0UのPlatinum(商標)Taq High Fidelityポリメラーゼ;0.2mMのdNTP;0.5μMのプライマー;および2mMのMgSO4を含む30μL反応物中、B.napus IMC201ゲノミックDNAを用いて行った。サイクル条件は以下のとおりとした:95℃にて2分の1サイクルにつづく94℃にて6秒、64℃にて40秒および68℃にて40秒の34サイクル。PCR産物を配列決定し、配列を各アイソフォームについて野生型配列と比較した。
【0103】
配列比較は、突然変異が発生し、各アイソフォーム1、2、3および4について突然変異植物を得たことを示した。突然変異体の配列を配列番号:1-4に示す。配列番号:1は、CAGからTAGにコドンが変化したポジション154に突然変異を有するアイソフォーム1のヌクレオチド配列を含む。配列番号:2は、CAGからTAGにコドンが変化したポジション695に突然変異を有するアイソフォーム2のヌクレオチド配列を含む。配列番号:3は、TGGからTGAにコドンが変化したポジション276に突然変異を有するアイソフォーム3のヌクレオチド配列を含む。配列番号:4は、TGGからTGAにコドンが変化したポジション336に突然変異を有するアイソフォーム4のヌクレオチド配列を含む。
【0104】
実施例6
突然変異アブラナ属FatB遺伝子の組合せを運搬するBrassica napus植物
Brassica napus種子オイルの脂肪酸組成に対する実施例5に記載した種々の突然変異Brassica FatB対立遺伝子の効果を決定するために、異なるFatBアイソフォームで異なる組合せの突然変異を運搬しているBrassica napus植物を作製した。各々が異なるアイソフォームに1またはそれを超える突然変異を運搬する親植物を種々の方法で交配し、DNA配列解析によって子孫をスクリーニングして、存在する突然変異(またはその複数)を同定し、その後に自家受粉し、DNA配列解析を行って突然変異が同型または異型接合の状態で存在するかを決定した。
【0105】
この方法を用いて、4のFatBアイソフォームの突然変異対立遺伝子を運搬する3のアブラナ属植物を作製した。これらの植物の各々を自家受粉し、収穫し、温室に再植栽して1,140の植物の集団を作成した。すべての1,140の植物をDNA配列解析を通してスクリーニングして、各々のFatBアイソフォーム遺伝子座に突然変異対立遺伝子が同型または異型接合状態のいずれで存在するかを判定した。以下の突然変異FatBアイソフォームの組合せについて同型接合体であった子孫を同定した:FatBアイソフォーム1、2および3;FatBアイソフォーム1、2および4;FatBアイソフォーム2、3および4;FatBアイソフォーム1、3および4;ならびに、FatBアイソフォーム1、2、3および4。
【0106】
突然変異FatBアイソフォームの組合せを運搬する植物を自家受粉し、種子を収穫した。得られた種子は、脂肪酸組成に対する突然変異対立遺伝子の異なる組合せの影響を評価するために、2の異なる温度様式下の生育チャンバーに植栽した。IMC201親は、両方の温度様式において対照として用いた。
【0107】
種子を4インチのプラスチック製ポット中のPremier Pro-Mix BX ポット土壌(Premier Horticulture,Quebec,Canada)に植栽した。植栽した種子に灌水し、5℃にて5日間階層化し、Conviron ATC60制御-環境下生育チャンバー(Controlled Environments,Winnipeg,MB)中、昼間温度20℃および夜間温度17℃(20/17)で発芽させた。各遺伝子の組合せをランダム化し、2の別々の生育チャンバー中で10回繰り返した。開花時に、もう1のチャンバーはそのまま(20/17)にしつつ、1のチャンバーを14℃の昼間温度および11℃の夜間温度(14/11)の日中温度サイクルに低下した。温度処理は、脂肪酸組成に対する温度の影響を同定するために課した。植物は1週間当たり5回灌水し、150ppmの割合で20:20:20(NPK)液体肥料を用いることにより隔週で施肥した。植物は個々に袋がけして自家受粉および種子の遺伝子純度を確保した。各植物からの種子を生理学上の種子成熟で個々に収穫した。すべての植物はPCRベースアッセイを用いて解析し、予想された遺伝子座にFatB突然変異対立遺伝子が存在すること、ならびに、IMC201家系からの脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子(mFad3a、mFad3bおよびmFad2d)の突然変異対立遺伝子が存在することを確認した。
【0108】
91AE.318 x IMC02の交配からIMC201を選択した。91AE.318は、米国特許第5,668,299号に記載されているIMC129の姉妹または子孫である。IMC02は、IMC01 x Westarの交配から得た。米国特許第5,750,827のExample 3を参照されたい。IMC02は、fad3Aおよびfad3B遺伝子の両方に突然変異を含む。fad3A遺伝子は、ゲノミックDNA中のATGからポジション2565にCからTの突然変異を含み、Fad3Aタンパク質のポジション275にシステインからアルギニンの置換を生じる。fad3B遺伝子は、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に位置する、ゲノミックDNAのATGからポジション3053にGからAの突然変異を含む。
【0109】
米国オイル化学者協会のプロトコール(AOCS,2009)による脂肪酸プロフィールのガスクロマトグラフィー測定用の改変法を試料の評価に用いた。バイアルを、液相分離用のポリエチレングリコール系DB-Wax(登録商標)(J&W Scientific,Folsom,CA)に充填した融解シリカ キャピラリーカラム(5m x 0.180mmおよび0.20μmフィルム厚)を備えたHewlett-Packard 5890シリーズIIガスクロマトグラフィー(Hewlett-Packard,Palo Alto,CA)に入れた。水素(H2)を2.5mL/minの流速のキャリアーガスとして用い、カラム・クロマトグラフィー温度を200℃の等温とした。各植物からの種子を、この方法を通して3回の反復で試験した。
【0110】
異なる温度様式下で生育した植物からの脂肪酸データは2の方法で分析した。最初に、データを異なる環境として別々に解析し、ついでそれを保存し、環境間で解析した。データはproc glmを用いるSAS(SAS Institute,2003)で解析して、平均脂肪酸値の差を見積もった。表8は、前記に論じたように異なる日内温度様式(昼間20℃/夜間17℃;昼間14℃/夜間11℃)に設定した2の環境生育チャンバー中で生育した種々の組合せの突然変異FatB対立遺伝子を運搬する植物によって産生された種子の遺伝子型、集団サイズ、パルミチン酸、ステアリン酸および総飽和脂肪酸の平均値および標準偏差を含む。Isoの前にある遺伝子型は突然変異対立遺伝子の組合せであり、その後の数字は特定の遺伝子座を示す。異なる文字を有する平均は、Student−Newman−Keuls平均分離テストによって決定して有意に異なる。
【0111】
【表8】

【0112】
PCRスクリーニングは、IMC129からのmFad2d突然変異対立遺伝子がFatB突然変異の組合せのすべてにおいて分離していることを示した。スクリーニングした個体の70%において存在していないかまたは異型であることが判明した。この対立遺伝子の効果は、環境間の平均を比較する解析においてパルミチン酸、ステアリン酸および総飽和脂肪酸含有率について統計学上有意義であった。したがって、この対立遺伝子のコピー数(0、1または2)をANOVA平均分離試験における共変数として含めた。環境間で保存したデータを用いた解析において、種子パルミチン酸および総飽和脂肪酸含有率の平均値に有意差を発見した。
【0113】
突然変異FatB対立遺伝子を運搬するすべての植物は、すべての4の突然変異対立遺伝子を運搬する植物において最大の低下を有するIMC201対照に対して、種子パルミチン酸における統計学上有意な減少を示した。総飽和脂肪酸における有意な減少は、突然変異対立遺伝子1、2および3を運搬する植物(すなわち、表9および10中のIso123)ならびにIso1234によって生産される種子において見出された。
【0114】
異なる温度処理下の異なるチャンバー中で生産した種子を別々に分析した場合の平均ステアリン酸含有率について統計学上の有意差が発見された(表10、異なる文字の平均はStudent−Newman−Keuls平均分離試験によって判定して有意に異なる)。20/17環境においては、Iso123、Iso124およびIso1234はすべて、ステアリン酸における有意な減少を示した。Iso1234だけは、14/11環境においてこの減少を示した。Iso123、Iso124およびIso1234の総飽和脂肪酸含有率における減少は20/17環境中で有意であり、すべての対立遺伝子遺伝子座は14/11環境において有意な減少を示した(表9および10)。再度、突然変異対立遺伝子の組合せのすべての形態を運搬する植物は、環境からのデータを別々に解析した場合にパルミチン酸における有意な減少を示した。
【0115】
【表9】

【0116】
ここに報告する3の脂肪酸の平均含有率は、環境の間で有意に異なる(C16:0 F=59.59、p<.0001;C18:0 F=83.42,p<.0001;総飽和 F=122.02,p<.0001)。データは、低温環境が、種子オイル中のこれらの飽和脂肪酸の量を減少することを示している。
【0117】
【表10−1】

【0118】
【表10−2】

【0119】
【表10−3】

【0120】
実施例7
アブラナ属植物系統1764、1975、および2650
以下のようにして、実施例5の系統1764、1975および2650を実施例5のIMC201種子の突然変異誘発集団から選択した。3,000の大きさのM2世代種子を植栽した。成熟時に、M3種子(2500個体)を2500のM2植物から収穫し、GCを通して分析した。表11は、種子オイル中に低い総飽和含有率を有すると同定された3の系統からの種子の脂肪酸プロフィールを提供する:1764、1975、および2650。1764、1975、および2650のM3種子を植栽(系統当たり100)し、得られた植物を自家受粉させた。M4種子を植物から収穫し、GCを通して分析した(表12を参照されたい)。
【0121】
【表11】

【0122】
【表12−1】

【0123】
【表12−2】

【0124】
【表12−3】

【0125】
【表12−4】

【0126】
実施例8
DH系統Salomon
15.24(実施例1)と1764-92-05(実施例7)との間で交配した。DH集団は、交配からF1花粒粉を収集し、花粒粉をコルヒチンで処理し、ついでそれをイン・ビトロ(in vitro)で繁殖させることによって生成した。花粒粉からイン・ビトロ(in vitro)で形成した幼植物体を温室に移動し、形成した花序を自家受粉させた。成熟時にDH1植物から種子を収穫し、脂肪酸プロフィールについて分析した。低い飽和脂肪酸含有率を示す植物からの種子を、温室および圃場において生育した。表13は、Salomonと命名したDH1集団の温室生育植物によって生成された種子の脂肪酸プロフィールを含む。表14は圃場で生育したDH系統Salomon-05の3の植物からの種子の脂肪酸プロフィールを含み、Salomon-005と同時コード化した。IMC111RR、登録カナダB.napus品種を表14に対照として含ませた。Salomon 005の個々の植物の圃場生育種子は、2.92%ないし3.35%のパルミチン酸および0.29%ないし0.47%のステアリン酸を含んで3.83%ないし4.44%の総飽和を有していた。系統Salomon-005は温室および圃場におけるDH系統の最低の総飽和脂肪酸プロフィールを示した。
【0127】
表15は、実施例6に記載した条件下の生育チャンバー中で生育した個々のSalomon-005植物、DH系統Salomonの子孫からの種子の脂肪酸プロフィールを含む。高温環境(20/17)下では、Salomon 005の自家受粉した植物は、2.55%ないし2.70%のパルミチン酸および1.05ないし0.78%のステアリン酸を含む4.13%ないし4.67%の範囲の総飽和脂肪酸を有していた。低温環境(14/11)で生育した場合の同じSalomon 005 DH1ソースからの種子は、2.25%ないし2.39%のパルミチン酸および0.57%ないし0.85%のステアリン酸を含んで3.45%ないし3.93%の総飽和を有していた。1764、1975、および2650のような他の低飽和突然変異体と合した場合の15.24からのFATA2突然変異は、パルミチン酸およびステアリン酸の付加的低下を通して総飽和をさらに低下し得る。
【0128】
低14/11環境において、Salomon-005-09は最低のパルミチン酸含有率を示し、Salomon-005-05は最低のステアリン酸含有率を示し、およびSalomon-005-07は最低の総飽和脂肪酸含有率を示した。表15は、15.24、IMC201および1764-43-06 x 1975-90-14のF6子孫の個々の植物のプロフィールも含む(実施例10を参照されたい)。データは低温環境が種子オイル中の飽和脂肪酸の量を減少することを示している。
系統1764,1975および2650を15.36(実施例3)と交配して、低い飽和脂肪酸含有率を有する子孫を発生させた。
【0129】
【表13】

【0130】
【表14】

【0131】
【表15−1】

【0132】
【表15−2】

【0133】
【表15−3】

【0134】
【表15−4】

【0135】
実施例9
DH集団Skechers
Skechersと命名したDH集団は、15.24と06SE-04GX-33との交配から得た。06SE-04GX-33親系統は04GX-33と01NM.304との交配の子孫から選抜した。約80%のオレイン酸含有率および低飽和脂肪酸含有率を有する系統04GX-33は、01NM.304と欧州春期生育習性系統‘Lila’とを交配し、F1交配からのDH集団を発育させることよって生成した。系統01NM.304は、IMC302とSurpass 400とのF1交配のDH集団から発育させた。06SE-04GX-33種子は、0.091%の平均C14:0含有率、4.47%のC16:0含有率、0.68%のC16:1含有率、1.69%のC18:0含有率、79.52%のC18:1含有率、6.62%のC18:2含有率、4.12%のC18:3含有率、0.63%のC20:0含有率、1.22%のC20:1含有率、0.49%のC22:0含有率、0.0%のC22:1含有率、0.21%のC24:0含有率、および0.24%のC24:1含有率を有する。
【0136】
このDH集団は、花粒粉を収集し、花粒粉をコルヒチンで処理し、ついでそれをイン・ビトロ(in vitro)で繁殖させることによって、15.24と06SE-04GX-33の交配から生成した。花粒粉からイン・ビトロ(in vitro)で形成した幼植物を温室に移し、形成した花序を自家受粉させた。種子を成熟時のDH1植物から収穫し、GCを通して脂肪酸プロフィールについて分析した。表16は、Skechers集団から選抜したDH系統の温室および圃場において生育した植物によって生成した種子の脂肪酸プロフィールを含む。IMC111RRの脂肪酸プロフィールを対照として表16に含める。Skechers-159およびSkechers-339は、温室および圃場において低総飽和脂肪酸プロフィールを示した(表16)。
【0137】
【表16】

【0138】
実施例10
系統1764-43-06 x 1975-90-14
種子における低い総飽和脂肪酸含有率について温室中の単一植物選抜の複数のサイクルにわたって、1764-43-06 x 1975-90-14の交配の子孫を用いて家系選抜プログラムを行った。表17は、F1交配を作成するために用いた各親の種子脂肪酸プロフィールを含む。表18は、F6世代を通して進めた選抜の種子脂肪酸プロフィールを含む。同系繁殖体01PR06RR.001Bおよび品種IMC201の平均種子脂肪酸プロフィールを比較のために示す。低総飽和脂肪酸についてのさらなるラウンドの自家受粉および選抜を行い得る。
【0139】
【表17】

【0140】
【表18−1】

【0141】
【表18−2】

【0142】
【表18−3】

【0143】
実施例11
圃場生育植物についての種子脂肪酸プロフィール
実施例10に記載した15.24、Salomon-03、Salomon-05、Salomon-07、F6選抜系統、Skechers-159およびSkecher-339の植物を、カナダ、SK、Aberdeenにおいて、圃場ポット中で生育した。成熟時に、各系統からの種子を収穫し、GC分析によって脂肪酸含有率を測定した。パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸含有率の範囲、および総飽和脂肪酸の範囲を表19に示す。系統Q2およびPioneer(登録商標)品種46A65の種子の範囲を比較のために示す。
【0144】
【表19】

【0145】
実施例12
15.24生殖質の放射線突然変異誘発(RMU)
低総飽和に基づく15.24 x 01OB240のDH集団から選抜した個体からの約30グラム(〜8,000の種子)のM0種子(実施例2を参照されたい)を、45kradのセシウム照射を用いて突然変異誘発した。照射後ただちに、約1500の突然変異誘発した種子を温室に植栽し、そのうちの約500が植物に発育してM1種子を生成した。約840のM1種子を植栽し、M2種子を収穫した。M2種子は、15.24 x 01OB240(対照1と命名;M0種子)の交配のF1子孫植物と一緒に植栽した。個々のM2植物および対照植物によって生成したM3種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。結果をM2見出しで表20に示す。最低の総飽和を有するM3種子を生成する個々のM2植物は08AP-RMU-tray 3-18とし、これは対照−1についての6.48%と比較して5.28%の総飽和を有していた。最低の16:0を有するM3種子を生成する個々のM2植物は08AP-RMU-tray 13-25とし、これは対照−1についての3.19%と比較しての2.55%の16:0を有していた。最低18:0を有するM3種子を生成する個々のM2植物は08AP-RMU-tray 10-34とし、これは対照−1についての1.7%と比較して0.93%の18:0含有率を有していた。表20に示す脂肪酸プロフィールを作成するために用いたM3種子は、温室中でこれらの3の系統から植栽した
【0146】
各3のグループからの、最低の総飽和、16:0、および18:0を各々有するM3種子に由来するM4植物を交配に用いるために選抜した。系統M4-L1601-12は、M3世代において5.28%の総飽和含有率を有し、08AP-RMU-tray 3-18系から選抜した。系統M4-L1601-12の植物とFatBのアイソフォーム1、2、3、4の同型接合突然変異対立遺伝子を含む系統との交配を行った(実施例6に記載)。2のF1個体についてのF2種子からの種子脂肪酸プロフィールを表20に示す。系統M4-Lsat1-23およびM4-L1601-22の植物を交配し、ついで09AP-RMU-003-06と命名したF1個体に生成した種子についての脂肪酸プロフィールを表20に示す。M4-Lsat1-23およびM4-L1601-22は、5.02%の総飽和および2.43%の16:0を有するM3世代から選抜した。系統M4-L1601-12 X M4-D60-2-01の植物を交配し、ついで09AP-RMU-012-2と命名したF1個体に生成した種子についての脂肪酸プロフィールを表20に示す。M4-L1601-12 x M4-D60-2-01は、各々、5.28%の総飽和および0.88%の18:0を有するM3世代から選抜した。低総飽和脂肪酸含有率、低16:0および低18:0を有するF1植物からの種子を、さらなる系統選抜育種のために生育した。幾つかの植物を自家受粉させ、さらなる選抜のためのDH集団を生成するために用いた。F2植物およびDH集団の子孫に生成した種子中の総飽和脂肪酸含有率は、低総飽和表現型を付与する遺伝子座の突然変異対立遺伝子遺伝的分離に起因して、F1植物で生成する種子におけるよりも低くなることが予想される。
【0147】
【表20】

【0148】
実施例13
低飽和脂肪種子オイルを生成する雑種キャノーラの発育
総6%未満の飽和脂肪酸含有率を有する種子を産する雑種キャノーラ品種は、低飽和系統15.24からの遺伝子を商業的に生育させた雑種、Victory(登録商標)v1035に導入することによって生成した。雑種v1035は、65%の平均オレイン酸含有率を有する。系統15.24、ならびに同系繁殖体01PR06RR.001Bおよび95CB504の植物を温室に植栽した。同系繁殖体01PR06RR.001Bはv1035の雄性親である。同系繁殖体95CB504は、v1035のB系統雌性親である。010PR06RR.001Bおよび15.24の植物を、表21に示すように、95CB504および15.24のように異花受粉させた。
【0149】
【表21】

【0150】
95CB504および15.24の交配からのF1子孫を95CB04に戻し交配してBC1-B子孫を生成し、それを自家受粉させた(BC1S)。低総飽和を有する植物をBC1-B自家受粉子孫から選抜し、ついで95CB504に戻し交配してBC2-B子孫を生成した。01PR06RR.001Bおよび15.24の交配からのF1子孫を01PR06RR.001Bに戻し交配してBC1-R子孫を生成し、それを自家受粉させた。低総飽和を有する植物をBC1-R自家受粉子孫から選抜し、ついで01PR06RR.001Bに戻し交配してBC2-R子孫を生成した。BC-BおよびBC-R子孫の戻し交配、選抜および自家受粉は複数の世代の間続けた。95CB504雄性不妊A系統、00OA05を95CB504B系統の変換と平行して低飽和表現型に変換した。雑種種子は、雌性親としての95CB504B系統および雄性親としての01PR06RR.001B R系統のBC1S3世代植物を用いて、手製で生成した。
【0151】
雑種種子は西カナダにおいて5の場所 x 4の繰り返しで生育した。試行プロット場所においては、幾つかの個体l植物を自家受粉用に袋づめし(5の場所 x 2の繰り返し)、成熟時に収穫した。残りの植物は袋がけせず(5の場所 x 4の繰り返し)、種子はバルクで収穫した。
【0152】
そなわる本質に関して、バルク試料は近接したプロットにおける非−低飽和脂肪酸系統との交配を外れるレベルを有していた。個々のおよびバルクの試料からの種子を、脂肪酸含有率について分析した。系統Q2、雑種v1035および商業的品種46A65の対照植物からの種子も個々におよびバルクで収穫した。
【0153】
表22は、雑種1524および対照についての個々の袋がけした試料およびバルク化した試料の脂肪酸プロフィールを示す。結果は、雑種1524によって生成した種子が対照に対して16:0含有率および18:0含有率の統計学上有意な低下、および対照に対して20:1含有率の統計学上有意な増大を有することを示している。また、雑種1524によって生成した種子は、対照に対して総飽和脂肪酸含有率における統計学上有意な低下を有する。個々に袋がけした植物についての総飽和脂肪酸含有率は約5.7%であり、あるいは系統15.24によって与えられるFatA2突然変異を欠く親雑種よりも約0.8%少ない。バルク種子についての総飽和脂肪酸含有率は約5.9%であり、あるいは系統15.24によって与えられるFatA2突然変異を欠く親雑種よりも0.9%を超えて少ない。
【0154】
【表22】

【0155】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、v1035について前記した戻し交配および選抜プログラムを用いて、低飽和系統Skechers-339からの遺伝子を商業的に生育した雑種に導入することによって作製した。
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、低総飽和について選抜した1764-43-06 x 1975-90-14の交配のF6子孫と商業的に生育した雑種の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記したように戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。
【0156】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、Salomon-05と商業的に生育した雑種の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。
【0157】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、Iso1234と雑種1524の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。雑種A2-1234と命名した得られた雑種は、アイソフォーム1、2、3、および4に突然変異FATA2対立遺伝子および突然変異FatB対立遺伝子を運搬している。
【0158】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、突然変異Fad2対立遺伝子および突然変異Fad3対立遺伝子について同型接合の品種と雑種A2-1234の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。得られた雑種は、突然変異FATA2対立遺伝子、アイソフォーム1、2、3、および4の突然変異FatB対立遺伝子、突然変異Fad2対立遺伝子、および突然変異Fad3対立遺伝子を運搬している。
【0159】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低飽和系統15.36からの遺伝子を商業的に生育した雑種に導入することによって作製した。
【0160】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と結合した記載したが、先の記載は本発明を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。本発明の範囲は添付する特許請求の範囲の範囲によって決まる。他の態様、有利な効果および修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪(fatty)アシル-アシル-ACPチオエステラーゼA2(FATA2)遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むアブラナ属植物であって、ここに該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATA2ポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATA2ポリペプチドの産生を生じる該植物。
【請求項2】
該突然変異対立遺伝子が、FATA2ポリペプチドのアミノ酸242ないし277に対応する領域(配列番号:29)に突然変異を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項1記載の植物。
【請求項3】
該FATA2ポリペプチドが、ポジション255のプロリンの代わりにロイシン残基を含む請求項2記載の植物。
【請求項4】
該植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がHECGHモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項1記載の植物。
【請求項5】
該植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項1記載の植物。
【請求項6】
該植物が、さらに、異なるFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項4記載の植物。
【請求項7】
該植物が、さらに、2の異なるFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、ここに該突然変異対立遺伝子のうちの1がポジション275のアルギニンの代わりにシステインを有するFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、かつ、該突然変異対立遺伝子のうちの1がエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列中に突然変異を有するfad3B核酸配列を含む請求項1または6記載の植物。
【請求項8】
該植物が、さらに、4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項9】
該FATB突然変異対立遺伝子のうちの少なくとも1が、切頭FATBポリペプチドをコードする核酸を含む請求項8記載の植物。
【請求項10】
該切頭FATBポリペプチドをコードする核酸が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む請求項9記載の植物。
【請求項11】
該植物が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項10記載の植物。
【請求項12】
該植物が、Brassica napus、Brassica junceaまたはBrassica rapa植物である請求項1記載の植物。
【請求項13】
該植物がF1雑種である請求項1記載の植物。
【請求項14】
該子孫が該突然変異対立遺伝子を含む該請求項1記載の植物の子孫。
【請求項15】
請求項1記載の植物の種子。
【請求項16】
2またはそれを超える異なる脂肪アシル-アシル運搬タンパク質チオエステラーゼB(FATB)遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むアブラナ属植物であって、ここに該植物が約2.5%ないし5.5%の総飽和含有率を有するオイルを産する種子を産生する該植物。
【請求項17】
該オイルが約1.5%ないし3.5%のパルミチン酸含有率を有する請求項16記載の植物。
【請求項18】
該オイルが約0.5%ないし2.5%のステアリン酸含有率を有する請求項16記載の植物。
【請求項19】
2またはそれを超える異なる脂肪アシル−アシル輸送タンパク質チオエステラーゼB(FATB)遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むアブラナ属植物であって、ここに各々の該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATBポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATBポリペプチドの産生を生じる該植物。
【請求項20】
該突然変異対立遺伝子のうちの少なくとも1が、切頭FATBポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項21】
該突然変異対立遺伝子のうちの少なくとも1が、ヘリックス/4-本鎖シート(4HBT)ドメインまたはその一部分の欠失を有するFATBポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項22】
該突然変異対立遺伝子のうちの少なくとも1が、基質特異性に影響する残基の非−を有するFATBポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項23】
該突然変異対立遺伝子のうちの少なくとも1が、触媒活性に影響する残基の非−を有するFATBポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項24】
該切頭FATBポリペプチドをコードする該核酸が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む請求項20記載の植物。
【請求項25】
3の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項19記載の植物。
【請求項26】
4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項19記載の植物。
【請求項27】
配列番号:1および配列番号:2に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項28】
配列番号:1および配列番号:3に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項29】
配列番号:1および配列番号:4に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項30】
配列番号:1、配列番号:2、および配列番号:3に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項31】
配列番号:1、配列番号:2、および配列番号:4に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項32】
配列番号:1、配列番号:3、および配列番号:4に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項24記載の植物。
【請求項33】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4に記載のヌクレオチド配列を有する核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項34】
約2.5%ないし5.5%の総飽和含有率を有するオイルを産する種子を産生する請求項19記載の植物。
【請求項35】
約1.5%ないし3.5%のパルミチン酸含有率を有するオイルを産する種子を産生する請求項19記載の植物。
【請求項36】
約0.5%ないし2.5%のステアリン酸含有率を有するオイルを産する種子を産生する請求項19記載の植物。
【請求項37】
さらに、該オイルが約78%ないし80%のオレイン酸含有率、約8%ないし10%のリノール酸含有率、および約2%ないし4%のα-リノレン酸含有率を有する請求項34記載の植物。
【請求項38】
該植物が、さらに、デルタ-12脂肪酸デサチュラーゼ(FAD2)遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項39】
該植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項19記載の植物。
【請求項40】
該植物が、さらに、異なるFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項38記載の植物。
【請求項41】
該植物が、さらに、2の異なるFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、ここに該突然変異対立遺伝子のうちの1がポジション275のアルギニンの代わりにシステインを有するFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、かつ、該突然変異対立遺伝子のうちの1がエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列中に突然変異を有するfad3B核酸配列を含む請求項19記載の植物。
【請求項42】
該植物が、さらに、脂肪アシル-アシル-ACPチオエステラーゼA2(FATA2)遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、ここに該突然変異対立遺伝子が対応する野生型FATA2ポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATA2ポリペプチドの産生を生じる請求項19記載の植物。
【請求項43】
該植物がBrassica napus、Brassica junceaまたはBrassica rapa植物である請求項19記載の植物。
【請求項44】
該植物がF1雑種である請求項19記載の植物。
【請求項45】
該子孫が該突然変異対立遺伝子を含む請求項19記載の植物の子孫。
【請求項46】
請求項19記載の植物の種子。
【請求項47】
2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むアブラナ属植物であって、ここに各々の該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATBポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATBポリペプチドの産生を生じ、かつ、さらにFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む該植物。
【請求項48】
さらに、異なるFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項47記載のアブラナ属植物。
【請求項49】
オイルを製造する方法であって、
a) 請求項1、請求項16または請求項19の少なくとも1のアブラナ属植物から産生された種子を砕き;ついで
b) 該砕いた種子からオイルを抽出することを含み、ここに該オイルが、精製、漂白および脱臭した後に、約2.5%ないし5.5%の総飽和含有率を有する該方法。
【請求項50】
該オイルが、さらに、約1.6%ないし2.3%のエイコセン酸含有率を含む請求項49記載の方法。
【請求項51】
該オイルが、さらに、約78%ないし80%のオレイン酸含有率、約8%ないし10%のリノール酸含有率、および約2%ないし4%のα-リノレン酸含有率を含む請求項49または50記載の方法。
【請求項52】
該植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項49ないし51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
該植物が、さらに、異なるFAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該突然変異対立遺伝子がDRDYGILNKVモチーフ中のグリシンの代わりにグルタミン酸またはKYLNNPモチーフ中のロイシンの代わりにヒスチジンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む請求項52記載の方法。
【請求項54】
該植物が、さらに、2の異なるFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、ここに該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がポジション275のアルギニンの代わりにシステインを有するFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、かつ、該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列中に突然変異を有するfad3B核酸配列を含む請求項53記載の方法。
【請求項55】
アブラナ属植物を作出する方法であって、
a)FATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む1またはそれを超える第1のアブラナ属親植物と、異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む1またはそれを超える第2のアブラナ属親植物とを交配し、ここに各々の該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATBポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATBポリペプチドの産生を生じ;ついで
b)1ないし5世代の間、2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する子孫植物について選抜し、それによって該アブラナ属植物を得る
ことを含む該方法。
【請求項56】
アブラナ属植物を作出する方法であって、
a)2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異を含む1またはそれを超える第1のアブラナ属親植物を得、ここに各々の該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATBポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATBポリペプチドの産生を生じ;
b)FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む1またはそれを超える第2のアブラナ属親植物を得、ここに該突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグリシンの代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含み;
c)該1またはそれを超える第1のアブラナ属親植物と該1またはそれを超える第2のアブラナ属親植物とを交配し;ついで
d)1ないし5世代の間、2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子および該FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する子孫植物について選抜し、それによって該アブラナ属植物を得る
ことを含む該方法。
【請求項57】
該第1のアブラナ属親植物が、3の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項56記載の方法。
【請求項58】
該1のアブラナ属親植物が、4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項56記載の方法。
【請求項59】
アブラナ属植物を作出する方法であって、
a)2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む1またはそれを超える第1のアブラナ属親植物を得、ここに各々の該突然変異対立遺伝子が、対応する野生型FATBポリペプチドに対して低いチオエステラーゼ活性を有するFATBポリペプチドの産生を生じ;
b)FADA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む1またはそれを超える第2のアブラナ属親植物を得、ここに該突然変異対立遺伝子が、ポリペプチドのアミノ酸242ないし277に対応する領域(配列番号:29)に突然変異を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含み;
c)該1またはそれを超える第1のアブラナ属親植物と該1またはそれを超える第2のアブラナ属親植物とを交配し;ついで
d)1ないし5世代の間、2またはそれを超える異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子および該FATA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を有する子孫植物について選抜し、それによって該アブラナ属植物を得る
ことを含む該方法。
【請求項60】
該第1のアブラナ属親植物が、4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項59記載の方法。
【請求項61】
該第1のアブラナ属親植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子および2の異なるFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該FAD2突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここに該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がポジション275のアルギニンの代わりにシステインを有するFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、かつ、ここに該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列中に突然変異を有するfad3B核酸配列を含む請求項60記載の方法。
【請求項62】
約78%ないし80%のオレイン酸含有率、約8%ないし10%のリノール酸含有率、約4%以下のα-リノレン酸含有率、および約1.6ないし2.3%のエイコセン酸含有率を有するキャノーラ油。
【請求項63】
該オイルが、さらに、約1.5%ないし3.5%のパルミチン酸含有率を有する請求項62記載のオイル。
【請求項64】
該オイルが、さらに、0.5%ないし2.5%のステアリン酸含有率を有する請求項62または63記載のオイル。
【請求項65】
該エイコセン酸含有率が約1.9ないし2.2%である請求項62ないし64のいずれか1項に記載のオイル。
【請求項66】
該α-リノレン酸含有率が約2%ないし約4%である請求項62ないし65のいずれか1項に記載のオイル。
【請求項67】
FADA2遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含むアブラナ属植物の種子であって、該突然変異対立遺伝子がポリペプチドのアミノ酸242ないし277に対応する領域(配列番号:29)に突然変異を有するFATA2ポリペプチドをコードする核酸を含み、該種子が78%ないし80%のオレイン酸含有率、約8%ないし10%のリノール酸含有率、約4%以下のα-リノレン酸含有率、および1.6ないし2.3%のエイコセン酸含有率を有するオイルを産する該種子。
【請求項68】
該種子がF2種子である請求項67記載の種子。
【請求項69】
該アブラナ属植物が、さらに、4の異なるFATB遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含む請求項67記載の種子。
【請求項70】
該アブラナ属植物が、さらに、FAD2遺伝子座に突然変異対立遺伝子および2の異なるFAD3遺伝子座に突然変異対立遺伝子を含み、該FAD2突然変異対立遺伝子がHis-Glu-Cys-Gly-Hisモチーフ中のグルタミン酸の代わりにリシンを有するFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここに該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がポジション275のアルギニンの代わりにシステインを有するFAD3Aポリペプチドをコードする核酸を含み、かつ、ここに該FAD3突然変異対立遺伝子のうちの1がエキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列中に突然変異を有するfad3B核酸配列を含む請求項67ないし69のいずれか1項に記載の種子。
【請求項71】
約3.7%以下の総飽和脂肪酸含有率および約72ないし75%のオレイン酸含有率を有するキャノーラ油。
【請求項72】
該オイルが約2.2ないし2.4%のパルミチン酸含有率を有する請求項71記載のオイル。
【請求項73】
該オイルが約0.5ないし0.8%のステアリン酸含有率を有する請求項71または72記載のオイル。
【請求項74】
該オイルが約1.6ないし1.9%のエイコセン酸含有率を有する請求項71ないし73のいずれか1項に記載のオイル。
【請求項75】
該総飽和脂肪酸含有率が約3.4ないし3.7%である請求項71ないし74のいずれか1項に記載のオイル。
【請求項76】
該植物細胞が1またはそれを超える該突然変異対立遺伝子を含む請求項1ないし13、16ないし44および47ないし48のいずれか1項に記載の植物の植物細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514783(P2013−514783A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544935(P2012−544935)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061226
【国際公開番号】WO2011/075716
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500159680)カーギル・インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】