説明

低脂肪ケーキ類及びその製造方法

【課題】油脂類の添加量を低減させても、油脂類に由来する風味やボディー感(こく味)、ソフト感、膨化性、焼き色が一切損なわれることのない、改良された品質をもつ低脂肪ケーキ類及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】原材料として小麦粉及び油脂類を使用するケーキ類の製造方法であって、小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部使用し、前記油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないように、水溶性食物繊維40〜10質量部を添加することを特徴とする、ケーキ類の製造方法により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂類を比較的多く使用するバターケーキやマフィンなどのケーキ類の低カロリー化を目的として、油脂類を低減した際に生じる食味の悪化を回避する方法およびその方法により得られるケーキ類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりによって、例えば、「減塩」、「糖質ゼロ」、「低脂肪」、「低カロリー」などと表示するために食品原料の使用量そのものを減らす、あるいは、何らかの機能性を有する食品素材を添加するといった、健康を意識した多種多様な食品が数多く市場に出回っている。
そのなかでも、食品の「低脂肪」化あるいは「低カロリー」化は、油脂類や砂糖などの使用量を低減すれば即座に達成できる課題ではあるが、油脂類や砂糖に由来する風味やボディー感が失われ、その損なわれた味質バランスを回復するにはかなり困難を極めるという、容易には解決し難い問題が存在している。
さらに、ケーキ類においては、油脂類の添加効果は、風味やボディー感の付与だけに止まらず、その形状、外観、および食感に及ぼす影響が多大であることから、特に必要不可欠とされている。
【0003】
このような油脂類を減らしたケーキ類に起こりうる、風味、ボディー感(こく味)、ソフト感、膨らみ、焼き色などが悪化するという、種々の問題を解決する方法は、これまで幾らか検討されている。しかしながら、例えば、油脂類を減らすことで失われる重量感をオリゴ糖で代替するバースデーケーキの製造方法(特許文献1)が提案されているが、油脂類をオリゴ糖で代替するだけではケーキ類が本来備えるべきソフト感を得ることはできず、スコーンもしくはクッキー様のゴツゴツとした、あるいはパサパサとした状態のままである。また、クッキー様焼き菓子の油脂添加量を減らして水溶性食物繊維を添加する方法が報告されているが(特許文献2)、前記方法では、クッキー様焼き菓子の油脂類添加量を減らした際に損なわれるサクサク感を改善することを課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−115184号公報
【特許文献2】特開2006−325471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、油脂類の添加量を低減させても、油脂類に由来する風味やボディー感(こく味)、ソフト感、膨化性、焼き色が一切損なわれることのない、改良された品質をもつ低脂肪ケーキ類及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の問題点に鑑み、鋭意研究を行ったところ、ケーキ類に使用すべき油脂類の一部を水溶性食物繊維に代替することで、上記の問題がすべて解決されることを見出し、改良された品質をもつ低脂肪ケーキ類を提供できることを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
<1>
原材料として小麦粉及び油脂類を使用するケーキ類の製造方法であって、小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部使用し、前記油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないように、水溶性食物繊維40〜10質量部を添加することを特徴とする、ケーキ類の製造方法。
<2>
原材料として小麦粉及び油脂類を使用するケーキ類の製造方法であって、油脂類の少なくとも一部を水溶性食物繊維に代替することにより油脂類使用量を低下させたケーキ類を製造することを特徴とし、代替後の油脂類と水溶性食物繊維の各量が、小麦粉100質量部に対して油脂類が15〜90質量部、水溶性食物繊維が40〜10質量部であり、更に油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないことを特徴とする、ケーキ類の製造方法。
<3>
水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、及びイヌリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記<1>または<2>に記載のケーキ類の製造方法。
<4>
ケーキ類が、スポンジケーキ、バターケーキ、マフィン、カップケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、パウンドケーキ、ワッフルからなる群より選択される、上記<1>〜<3>のいずれか一に記載のケーキ類の製造方法。
<5>
上記<1>〜<4>の何れか一に記載の方法により製造されたケーキ類。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油脂肪分に起因するカロリーを低減できるばかりでなく、ケーキ類本来の風味、ボディー感(こく味)、およびソフト感を損なうことなく、焼き色の良いケーキ類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における「ケーキ類」とは、主に小麦粉、油脂類、砂糖、卵液などを混ぜ合わせてバッター生地とし、これを型等に流しいれて焼成したものを指す。具体例として、マフィン、カップケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、ケーキドーナツ、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジケーキ、ブッセ、ワッフル、ホットケーキ、カステラ、どら焼きの皮などが挙げられる。本発明の製造方法は、油脂類を水溶性食物繊維に代替することを1つの特徴としていることから、油脂類を多量に使用するバターケーキ、マフィン、カップケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、パウンドケーキ、ワッフルの製造に特に適している。
作業性、保存性、あるいは消費者の嗜好性の観点から、これら主原料の他に、必要に応じて種々の副原料、例えば、牛乳、生クリーム、乳化剤、膨張剤、香料、色素、澱粉(加工澱粉含む)、水あめ、オリゴ糖、デキストリン、人工甘味料、リキュール、各種トッピング剤を用いることができ、バッター粘度の調節やレーズンなどの具材分散目的で、α化澱粉や天然ガムなどを用いることもできる。
【0010】
本発明における「水溶性食物繊維」とは、AOAC2001.03による測定値で50質量%以上の食物繊維を含有し、20℃の水100mlに20g以上溶解し、20℃において5質量%水溶液の粘度が20mPa・s未満の粘度を示す難消化性糖類を指す。
水溶性食物繊維の具体例として、難消化性デキストリン(例えば、松谷化学工業株式会社製の商品名「パインファイバー(登録商標)」または「ファイバーソル2」、テイト・アンド・ライル社製の商品名「プロミターTM水溶性コーンファイバー」)、ポリデキストロース(例えば、ダニスコ・カルター社製の商品名「ライテス」)、分岐マルトデキストリン(例えばロケット社製の商品名「ニュートリオース」)、イヌリンなどが挙げられる。これらの他にも、上記低粘性かつ水溶性の条件を満たす水溶性食物繊維(難消化性糖類)であればどのようなものでもよく、その形態は、粉末あるいは液体の何れであってもよい。
【0011】
本発明において、好ましい水溶性食物繊維の平均分子量は500〜5,000、より好ましくは800〜2,500であり、本発明で使用する水溶性食物繊維として最も効果的で好ましいものは、難消化性デキストリンである。
【0012】
難消化性デキストリンは、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱、酵素処理したもので、好ましくは85〜95質量%の難消化性成分を含むデキストリンのことをいい、水素添加により製造されるその還元物も包含する。食新発0217001号及び0217002号に記載の食物繊維のエネルギー換算係数によれば、難消化性デキストリンのエネルギー値は1kcal/gである。また、難消化性デキストリンの平均分子量は通常1,000〜2,500の範囲である。
難消化性デキストリンは、前述の通り、塩酸を加えて加熱、酵素処理して製造するのが一般的ではあるが、本発明においては、どのような方法で調製して得た難消化性デキストリンであっても良い。
【0013】
本発明において使用する油脂類は、食用の油脂類であれば特に限定されないが、例えば、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、植物油、さらには「コンパウンド」と通称される複合油脂などが挙げられ、それらの形態は、液状、粉状、あるいは固形状のいずれであってもよい。
【0014】
本発明において、小麦粉は、必ずしも単一の小麦粉を意味するものではない。すなわち、一般的に菓子類に使用されうる穀粉であれば特に限定されず、米粉、ライ麦粉、大麦粉、タピオカ粉、トウモロコシ粉、馬鈴薯粉、きな粉などの広義の穀粉を多少なりとも含む小麦粉をも包含する。
一般に、パン類においては、小麦粉に水分を加えて捏ねる工程でのグルテン形成が重要であるところ、ケーキ類においては、グルテン形成による粘りはケーキらしいソフト感を損なわせるので好ましくなく、それゆえ、タンパク質含量の低い薄力粉などが選ばれることが多いが、上述の水溶性食物繊維、特に難消化性デキストリンは、グルテン形成に不可欠な水分を奪ってその形成を妨げることから、強力粉や中力粉のような比較的タンパク質含量の高い小麦粉を使用しても全く差し支えない。
【0015】
本発明において、原材料中の小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部使用するケーキ類において、油脂類と食物繊維の合計量が37を下回らず100質量部を超えないよう、水溶性食物繊維40〜10質量部を適宜添加することで、食感および味質が良好に保たれたケーキ類を得ることができる。
【0016】
本発明においては、小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部使用する。本発明では、水溶性食物繊維を使用することにより、ケーキ類において通常使用される油脂類の量を低減しても、通常量の油脂を使用したケーキ類が本来有する(油脂類に由来する)風味、ボディー感(こく味)、およびソフト感を損なうことなく、ケーキ類を製造することができる。従って、本発明により製造されるケーキ類は、水溶性食物繊維を使用しなければ、本来、小麦粉100質量部に対して油脂類を50〜150質量部程度添加して製造されるものである。
本発明では、小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部、好ましくは15〜80質量部、更に好ましくは15〜70質量部、最も好ましくは17〜50質量部有する。これらの油脂類の使用量において従来の量の油脂類を使用した場合と同程度のケーキ類の風味、ボディー感(こく味)、及びソフト感が損なわれることがない。
【0017】
水溶性食物繊維は、油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないように、40〜10質量部を添加する。より好ましくは、油脂類と水溶性食物繊維の合計量が46質量部を下回らず80質量部を超えないように、40〜10質量部を添加する。より好ましくは、水溶性食物繊維を前記範囲において、10〜30質量部添加する。
【0018】
さらに、油脂類を使用するケーキ類の原料小麦粉100質量部に対して、油脂類10質量部を低減する替わりに水溶性食物繊維を2.5〜23質量部、総量で40質量部を超えないように添加することで、油脂類を低減することで失われる風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてが改善された良好な低脂肪ケーキ類を得ることができる。低減する油脂類10質量部に対して水溶性食物繊維の添加量が2.5質量部未満では、油脂類を低減することにより招かれる弊害(ゴツゴツ感やパサパサ感が増強され、かつ、ボディー感や風味が損なわれる)を防ぐことができず、23質量部を超えるとネチャつき感が現れ、膨らみが悪くなるという問題が発生する。
【0019】
より好ましくは、油脂類を使用するケーキ類の原料小麦粉100質量部に対して、油脂類10質量部を低減する替わりに水溶性食物繊維を5〜18質量部、総量で40質量部を超えないように添加することにより、低減することで失われる風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてが、油脂を低減せず製造したケーキ類より、より改善された良好な低脂肪ケーキ類を得ることができる。
【0020】
本発明の好ましい態様として、以下の手順により、従来より脂肪が低減されたケーキ類を製造する方法が挙げられる。
1.水溶性食物繊維を使用せず、目的の風味、ボディー感、ソフト感、焼き色を備えたケーキ類の処方を決定する。
2.前記手順1において決定した処方から、低減したいカロリー量に応じて計算した量の油脂類を、低減した油脂類の量10質量部あたり3〜23質量部、更に好ましくは5〜18質量部の水溶性食物繊維(前記質量部は使用する小麦粉100質量部に対する量である)で代替する。ただし、水溶性食物繊維量は合計量が40質量部以下、好ましくは10〜40質量部の範囲となるように代替する。
3.前記手順2において決定した処方に従ってケーキ類を製造することにより、従来より脂肪が低減され、且つ目的の風味、ボディー感、ソフト感、焼き色等を備えた低脂肪ケーキ類を製造する。
【0021】
本発明を利用して製造された低脂肪ケーキ類は、カロリーが低減されているだけでなく、ケーキ類本来の風味、ボディー感(こく味)、ソフト感、好ましい焼き色を備えたケーキ類である。また、水溶性食物繊維が添加されていることから、血糖値上昇抑制、整腸作用、脂質代謝改善などの生理効果が付与されることも期待できる。
以下、実験例及び実施例により本発明を具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0022】
<実験例1.油脂量と水溶性食物繊維量の比率のケーキ類に及ぼす影響>
ケーキ類の生地に使用すべき油脂を、どの程度まで水溶性食物繊維に代替可能であるかを検討した実験および結果の一例を示す。本実験例においては、水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製、商品名「ファイバーソル2」)(平均分子量約2000)を使用している。
表1に示すマフィンの基本配合において、油脂類(配合表中のゼノアとパンテオンセレクトMに相当)を順次低減すると同時に、食物繊維添加量を順次添加することによって、「油脂類を低減したマフィン」を30種類作製した。作製手順は、表1の下に記載する。
得られた各マフィンについて、風味、ボディー感(こく味)、ソフト感、および焼き色の総合的な評価を行った(試験人数:10名)ところ、表2に示す結果となった。
表1の配合は、マフィンの配合としてごく一般的なものである。
【0023】
(表1)マフィンの基本配合(水溶性食物繊維の配合量は別途表2に記載)

*1:松谷化学工業株式会社製、α化架橋澱粉(ワキシーコーン)
*2:奥野製薬工業株式会社製、ベーキングパウダー
*3:月島食品工業株式会社製、食用加工植物油脂
*4:ミヨシ油脂株式会社製、無塩コンパウンドマーガリン
【0024】
(作製手順)
(1)全卵と果糖ブドウ糖液糖を混合撹拌する。
(2)(1)の混合物に上白糖、水溶性食物繊維、食塩、バニラエッセンスを加えて混合する。
(3)よく混ぜて篩った粉類(薄力粉、マツノリンFA102、脱脂粉乳、ベーキングパウダー)を(2)の混合物に加え、混合する。
(4)(3)の混合物に植物性油脂と溶かした無塩コンパウンドマーガリンを加えて混合する。
(5)マフィンカップに生地45gを分注し、上火180℃・下火170℃で16分間焼成する。
【0025】
(表2)評価結果

◎:風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてにおいて非常に良好。
○:風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてにおいて良好。
△:嵩落ち、ネチャつき、もろさなどが若干観察されるが、ほぼ良好。
×:風味、ボディー感、ソフト感、焼き色などのほぼすべてにおいて不良。
【0026】
まず、表1の基本配合(小麦粉100質量部使用)に対して水溶性食物繊維を10〜30質量部添加したところ、大きな問題はなく、20質量部を添加した場合には特に口どけ感が良好となった。
次に、表1の基本配合から17.5〜35質量部の油脂類を減らす(小麦粉100質量部に対して52.5〜35質量部の油脂類を配合する)と、硬化して風味などが悪化したが、10〜40質量部の水溶性食物繊維を添加することで、食感や風味に改善がみられた。
また、表1の基本配合から52.5質量部の油脂類を減らす(小麦粉100質量部に対して17.5質量部の油脂類を配合する)と、さらに硬化して風味なども相当悪化するが、20〜40質量部の水溶性食物繊維を添加すると、食感や風味に改善がみられるようになった。
油脂類を全く添加しない(小麦粉100質量部に対して配合すべき70質量部の油脂類を一切添加しない)場合、風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてにおいて不良となり、水溶性食物繊維を添加しても改善は全く見られないばかりか、水溶性食物繊維の添加量を増やしていくとネチャつき感などの弊害がみられるようになった。
以上より、原材料中の小麦粉100質量部に対して油脂類添加量を17.5〜70質量部としたとき、油脂類と食物繊維の合計量が37を下回らず100質量部を超えない範囲で、水溶性食物繊維40〜10質量部を適宜添加することで、風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてにおいて良好な低脂肪ケーキ類を得ることができることがわかった。
【0027】
さらに、上記条件の範囲内において、油脂類を10質量部低減する替わりに、水溶性食物繊維を2.5〜23質量部添加することで、油脂類を低減することで失われる風味、ボディー感、ソフト感、焼き色のすべてが改善された良好な低脂肪ケーキ類を得ることができた。
なお、表1の配合中、油脂類に相当するゼノアとパンテオンセレクトMを低減する際は、常時、両者を同割合で低減させるものとした(例えば、「油脂類50%低減」とは、表1におけるゼノアを15質量部、パンテオンセレクトMを20質量部減らすことを意味する。)。
【0028】
<実験例2.デキストリンまたは水溶性食物繊維がケーキ類に及ぼす影響>
実験例1において、小麦粉100質量部に対して油脂類17.5質量部、水溶性食物繊維30質量部の配合割合のときに、水溶性食物繊維のもつ油脂代替効果がもっとも明確であったので、表1のマフィン基本配合中の油脂合計量70質量部を17.5質量部まで低減し、各種水溶性食物繊維30質量部を添加したときの油脂代替効果を確認した。
水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンA(松谷化学工業株式会社製、商品名「ファイバーソル2」、平均分子量約2000)、難消化性デキストリンB(テイト・アンド・ライル社製、商品名「プロミターTM水溶性コーンファイバー85」、平均分子量約1000)、分岐マルトデキストリン(ロケット社製商品名「ニュートリオースFB10」、平均分子量約1600)、ポリデキストロース(ダニスコ・カルター社製、商品名「ライテスII」、平均分子量約2000)、イヌリン(大日本明治製糖株式会社製、商品名ラフティリンHP、平均分子量約1500)を使用し、比較として、一般的なデキストリン(松谷化学工業株式会社製、商品名「パインデックス#2」、DE10、平均分子量約1700)を使用した。
難消化性デキストリンAの分子量は、高速液体クロマトグラフィーと分子量既知のプルラン標準物質(昭和電工株式会社製Shodex Standard P-82)、マルトトリオース、ブドウ糖を使用して測定した数平均分子量である。
【0029】
(評価方法)
上記方法で作製したマフィンの味(風味、ボディー感)、食感(ソフト感、口どけ)、
外観(焼き色、艶、形状)についての判定は、パネラー10名(男性4名、女性6名の構成)によるパネルテストでおこなった。
対照(デキストリンも水溶性食物繊維も添加していない、油脂類を低減しただけのマフィン)と比べ、味・食感・外観のそれぞれについて、「変化なし」(対照と同等)、「やや改善(油脂代替効果が少しある)」、「著しく改善(油脂代替効果が大いにある)」の3段階で評価することとし、各評価をしたパネラーの人数を下の表3〜5に示した。
【0030】
(評価結果)
(表3)

【0031】
(表4)

【0032】
(表5)

【0033】
上記実験結果から明らかなように、一般的なデキストリンであるパインデックス#2の、脂肪低減により失われたボディー感、ソフト感、焼き色などを改善する効果は全体として小さい一方、水溶性食物繊維であるファイバーソル2、ニュートリオースFB、ライテスII、ラフティリンHPは、その効果に若干の強弱はあるものの、明らかに改善効果を有していた。そのなかでも、特に、難消化性デキストリンであるファイバーソル2とプロミターTM水溶性コーンファイバー85のもつ脂肪代替効果は大きかった。
【実施例1】
【0034】
<バターケーキ>
下記の配合および手順により、バターケーキを作製したところ、油脂を低減しても品質(味質、食感、形状、焼き色など)の低下は特にみられず、低カロリーにもかかわらず、対照品に比して遜色ないものに仕上がっていた。
すなわち、小麦粉100質量部に対して油脂類を90質量部使用するバターケーキにおいても、上記実験例のマフィンと同様、水溶性食物繊維を当該条件範囲内において添加することで、油脂添加量を減らすことにより失われる風味、ボディー感、ソフト感、焼き色などは改善されることがわかった。
【0035】
(表6)バターケーキ配合

*1:ミヨシ油脂株式会社製、無塩コンパウンドマーガリン
*2:奥野製薬工業株式会社製、ベーキングパウダー
【0036】
(作製手順)
(1)油脂類(無塩コンパウンドマーガリン、ショートニング)と、篩った粉類(薄力粉、ベーキングパウダー、食塩)を混合撹拌する。
(2)工程(1)の混合物に上白糖、ファイバーソル2を加えて撹拌する。
(3)工程(2)の混合物に全卵、牛乳を加えて混合する。
(4)工程(3)の混合物にブランデーとラム酒を加えて混合する。
(5)パウンド型に生地300gを分注し、上下火170℃で35分間焼成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料として小麦粉及び油脂類を使用するケーキ類の製造方法であって、小麦粉100質量部に対して油脂類を15〜90質量部使用し、前記油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないように、水溶性食物繊維40〜10質量部を添加することを特徴とする、ケーキ類の製造方法。
【請求項2】
原材料として小麦粉及び油脂類を使用するケーキ類の製造方法であって、油脂類の少なくとも一部を水溶性食物繊維に代替することにより油脂類使用量を低下させたケーキ類を製造することを特徴とし、代替後の油脂類と水溶性食物繊維の各量が、小麦粉100質量部に対して油脂類が15〜90質量部、水溶性食物繊維が40〜10質量部であり、更に油脂類と水溶性食物繊維の合計量が37質量部を下回らず100質量部を超えないことを特徴とする、ケーキ類の製造方法。
【請求項3】
水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、及びイヌリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のケーキ類の製造方法。
【請求項4】
ケーキ類が、スポンジケーキ、バターケーキ、マフィン、カップケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、パウンドケーキ、ワッフルからなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーキ類の製造方法。
【請求項5】
上記1〜4の何れか一項に記載の方法により製造されたケーキ類。

【公開番号】特開2013−34437(P2013−34437A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174111(P2011−174111)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】