説明

低複屈折の混合セルロースエステルおよびそれから形成されるフィルム

本発明は、低いヒドロキシル含有量を有する、光学用途(例えば液晶ディスプレイ(LCD)フィルム)のためのセルロースエステルに関する。低ヒドロキシルレベルおよび非アセチルエステルのヒドロキシルのレベルに対する所定の比で形成されたフィルムは、低い固有複屈折を有することを見出した。従って、これらのフィルムは、キャスト、モールド成形、または他に配向が、相当程度の複屈折または光学収差(すなわちレタデーション)を伴うことなく可能である。このような特徴により、これらのフィルムは、偏光子膜、保護膜および補償膜、更にはモールド成形された光学部品(例えばレンズ)において有用となる。更に、本発明のレジンはまた、セルロースエステルの典型的な特徴ではない「+Cプレート」挙動を有するように溶融系または溶媒系の加工のいずれかによって形成できることも見出した。このような+C挙動は、特異な補償挙動を有するフィルムの製造を可能にする。本発明の他の態様は、複屈折の形成を最小化しつつフィルムを溶融キャストする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
セルロースエステル,例えばセルローストリアセテート(CTA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、およびセルロースアセテートブチレート(CAB)は、液晶ディスプレイ(LCD)工業における多様なフィルムにおいて使用されている。例えば、これらは、保護膜および補償膜として、偏光子シートと併用できる。これらのシートは、典型的には、溶媒キャストによって形成し、そして次いで、配向させたヨウ化ポリビニルアルコール(PVOH)偏光フィルムのどの側でもラミネートして、PVOH層をスクラッチおよび湿気の侵入から保護する一方で、構造的な剛直性も増大させる。これに代わり、補償膜の場合には、これらを偏光子積層物とラミネートするか、またはそうでなければ偏光子と液晶層との間に含ませることができる。セルロースは多くの性能上の利点を、他の物質(例えばシクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド等(これらもディスプレイフィルムにおいて使用する))に対して有する。しかし、光学複屈折の要求は、現在しばしば、むしろ後者の使用を決定付けている。
【0002】
保護の役割を果たすにも関わらず、これらのフィルムはまた、LCDのコントラスト比、広い視野角、および色シフト性能を改善できる。LCDにおいて用いる交差偏光子の典型的な組については、顕著な光漏失が、斜め方向に沿って、特に視野角が増大するに従って、存在する(乏しいコントラスト比を招来する)。光学フィルムの種々の組合せを使用してこの光漏失を補正または「補償」できることが公知である。これらのフィルムは、所定の明瞭な複屈折(またはレタデーション)値を有することになり、これは使用する液晶セルの種類に応じて変わる。液晶セル自体もまた所定程度の不所望の光学レタデーション(これは補正しなければならない)を与えるからである。これらの補償フィルムの幾つかは他よりも形成が容易であり、製造上の節減を与えるため、しばしば性能とコストとの間で妥協がなされる。また、殆どの補償フィルムおよび保護フィルムは、溶媒キャストによって形成する一方、環境に優しくない溶媒を扱う必要性を排除するために溶融押出しによってより多くのフィルムを形成する後押しがある。より制御可能な光学レタデーションを有する物質(溶媒キャストおよび溶融キャストの両者によって形成できるもの(例えば本発明における物質))は、これらのフィルムの形成においてより大きい可撓性を可能にする。
【0003】
補償フィルムおよび光学フィルムは、一般的に複屈折の観点で定量され、これはすなわち屈折率nに関係する。屈折率は、典型的には、ポリマーでは一般的に1.4〜1.8であり、そしてセルロースエステルでは約1.46〜1.50である。屈折率が高くなるに従い、その与えられる物質を通る光波の伝播は遅くなる。
【0004】
非配向の等方性物質について、屈折率は、入射光波の偏光状態に関わらず同じになる。物質が配向するかまたは他に異方性であるに従い、屈折率は物質の方向に左右されるようになる。本発明の目的のために、重要な3つの屈折率、nx、ny、およびnz(これらは機械方向(MD)、横方向(TD)、および厚み方向にそれぞれ対応する)が存在する。物質がより異方性になる(例えば延伸によって)に従い、任意の2つの屈折率の間の差は増大することになる。屈折率のこの差が、屈折率の特定の組合せについて物質の複屈折とされる。物質の方向(これから選択する)の多くの組合せが存在するため、対応して異なる複屈折の値が存在する。2つの最も一般的な複屈折パラメータは平面複屈折(Δe)および厚み複屈折(Δth)であり:
(1a) Δe=nx−ny
(1b) Δth=nz−(nx+ny)/2
と定義される。
【0005】
複屈折Δeは、MDとTDとの間の相対的な面内配向の指標であり、無次元である。これに対し、Δthは、厚み方向の配向の指標を、平均平面配向に対して相対的に与える。
【0006】
光学フィルムを特性化するためにしばしば用いる別のパラメータは、光学レタデーションRである。Rは、単純に、関係するフィルムの複屈折に厚み(d)を乗じたものである。よって、
(2a) Re=Δed=(nx−ny)d
(2b) Rth=Δthd=[nz−(nx+ny)/2]d
【0007】
レタデーションは、2つの直交する光波の相対的な位相シフトの直接の指標であり、そして典型的にはナノメートル(nm)単位で記録する。Rthの定義は、何人かの著者によって、特に符号(+/−)に関して異なることに留意されたい。
【0008】
物質はまた、その複屈折/レタデーション挙動に関して異なることが公知である。例えば、殆どの物質は、延伸される場合、より高い屈折率を延伸方向に沿って示し、そしてより低い屈折率を延伸と直角に示すようになる。これは分子レベルに従うからであり、屈折率は、典型的には、ポリマー鎖の軸に沿って、より高く、そして該鎖と直角に、より低い。これらの物質は一般的に「正に複屈折」と称し、そして最も標準的なポリマー(例えば市販のセルロースエステル)を代表する。これに対し、横方向(延伸方向に対して)においてより大きい屈折率を有するポリマーを「負に複屈折」と称する。用語「正」および「負」の複屈折の使用においては、ポリマー科学分野と光物理学分野との間で幾らか混乱が存在することに留意することが重要である。ポリマー科学の視点からは、正および負の複屈折は、具体的に、上記の鎖に沿った屈折率を意味する(すなわち、本質的に物質の特性)。これに対し、光物理学および多くのLCD関連の議論においては、正および複屈折の複屈折は、具体的に、フィルムまたは板の全体の複屈折挙動を意味する。後に議論するように、正に複屈折のポリマーを用いて、正または負に複屈折のフィルムまたは「板」のいずれも、単にフィルム配向を変えることによって、形成できる。よって、「正」または「負」の意味を評価する際には、「複屈折」の文脈、およびこれが物質挙動または全体構造のいずれに関するのかを理解することが重要である。特記がない限り、用語Δe、Δth、ReおよびRthは、本件(特許請求の範囲を含む)において、上記等式(1a)、(1b)、(2a)および(2b)のそれぞれにおいて示すように算出する。
【0009】
別の有用なパラメータは「固有複屈折」であり、これは物質の特性であり、そして、物質が全ての鎖で一方向に完全に配列して完全に延伸された場合に生じることになる複屈折の指標である。本発明の目的のために、固有複屈折は、与えられるポリマーの与えられる量の鎖配向に対する感度の指標を与える。例えば、高い固有複屈折を有するサンプルは、フィルム形成の間に、低い固有複屈折のサンプルよりも大きい複屈折を示す傾向がある(フィルム内の相対応力レベルが同じであっても)。本件全体を通じ、特記がない限り、正および負の固有複屈折は(フィルムまたは板の全体の複屈折への対語として)物質挙動を明確に示すことを我々は意味する。
【0010】
フィルムの全体の光学特性の評価において有用な1つの更なるパラメータは、応力光学係数(SOC)である。SOCは、フィルムに適用される既知量の応力について形成する複屈折の量を与える。これは、鎖を配向させ、よって複屈折をもたらす応力である。SOCの2つの区別できる値が、物質がガラス転移温度Tgよりも上か下かによって存在することに留意されたい。Tgより下であれば、これが形成する複屈折はファンデルワールス結合変形に起因し、そして「ガラス状」SOCといわれる。溶融押出しの場合、より有用なパラメータは、Tgより上で適用される応力によって形成される複屈折(すなわち「ゴム状」SOC))である。これは鎖配列をもたらし、そして複屈折はより一般的に流動に関連する。特記がない限り、本件における「SOC」はゴム状SOC値を意味する。SOCは、典型的には、既知応力をフィルムに温度Tg超で適用し、次いで、得られる複屈折を測定することによって測定する。これは物質の鎖化学に対して敏感なパラメータである。
【0011】
複屈折およびSOCを理解するためには、分子レベルで起こることを可視化することが助けになる。伝播光波は常に「スローダウン」(すなわち屈折率が増大)し、物質中の電子と相互作用する。既知原子結合(例えば、炭素−炭素、または炭素−酸素の結合)について、この相互作用は、光波が結合方向に沿って偏光する場合、より大きくなり、そしてこれに直角に配列する場合、より弱くなる。よって、原子レベルの屈折率または「結合偏光率」は、結合方向に沿ってより高く、結合と垂直では逆である。巨視的な屈折率を得るために、物質中の全体の結合および結合角を平均化しなければならない。平均化で、結合が一方向で他よりも優先的に配列する傾向がある場合には、物質は複屈折である。これに対し、結合角が全ての方向でランダムに分布している(例えば非配向物質でのように)場合には、屈折率は全方向において一定となり、複屈折はゼロとなる。
【0012】
ポリマーが(例えばx方向で)延伸されるに従い、ポリマー鎖は延伸方向において配列することになる。殆ど(全てではないが)の物質について、これは、より多くの原子結合がまた、延伸方向において優先的に配列されることになることを意味する。続いて、屈折率nxはnyおよびnzよりも大きくなり、そしてこれらは「正に複屈折」という。言い換えると、正の複屈折の物質についての屈折率は配向方向において最高である。これらの物質について、SOCは正である。
【0013】
これに対し、負に複屈折で負のSOCを有する幾つかの物質が存在する。これらの物質について、鎖軸と直角に配列した原子結合が平行に配列した原子結合よりも多く存在する。よって、物質がx方向に延伸される場合、原子結合の優先的な配列がy方向およびz方向において存在する。結果として、屈折率nxは、延伸後にnyおよびnzよりも小さくなる。この種類の負に複屈折の物質の例としては、PMMAおよびポリスチレンが挙げられる。
【0014】
負に複屈折のポリマーは、延伸方向と垂直で(平行の方向に対して)より高い屈折率を示し、ひいては負の固有複屈折も有する。特定のスチレンおよびアクリルは、負の複屈折の挙動を有する(これらのよりバルキーな側基に起因する)ことが公知である。ゼロ複屈折は、これに対し、特別な場合であり、そして、延伸で複屈折を示さず、よって固有複屈折ゼロを有する物質を表す。このような物質は光学用途には理想的である。これらは加工中に、モールド成形、延伸、または他に応力をかけることが、光学的なレタデーションまたは収差を示さずに可能であるからである。このような物質は特に稀である。
【0015】
LCDにおいて使用する実際の補償フィルムは種々の形状を呈することができる。これらとしては、二軸フィルム(全ての3つの屈折率が異なり、そして2つの光学軸が存在する)、および一軸フィルム(3つの屈折率のうち2つが同じであり、そして1つのみの光学軸を有する)が挙げられる。他の分類の補償フィルム(光学軸が、フィルムの厚みを通じてねじれ、または傾斜している)(例えばディスコチックフィルム)も存在する。一般的に、与えられる物質から形成できる補償フィルムの種類には、ポリマー(正または負)の固有複屈折特性が作用する。
【0016】
一軸フィルムの場合において、
(3a) nx>ny;nx>nz;およびny〜nz
【0017】
このような屈折率を有するフィルムは、「+A」板フィルムを意味する。これらのフィルムにおいて、フィルムのx方向は高い屈折率を有し、一方yおよび厚みの方向は、ほぼ等しい大きさであり、そして各々nxよりも小さい。この種類のフィルムはまた、x方向に沿った光学軸を有する正の一軸結晶構造という。このようなフィルムは、正に複屈折の物質を(例えばフィルムドラフターを用いて)一軸延伸することによって形成するのが容易である。
【0018】
これに対し、「−A」一軸フィルムは、
(3b) nx<ny;nx<nz;およびny〜nz
【0019】
と定義され、x軸の屈折率は他の方向の各々(これらは互いにほぼ等しい)よりも低い。−A板フィルムを形成するための最も一般的な方法は、負の複屈折のポリマーを延伸すること、または代替として、負に複屈折の液晶ポリマーを、分子が好ましい方向で並ぶように(例えば、下地のエッチングされた配向層を用いて)表面上にコートすることである。
【0020】
別の分類の一軸光学フィルムはC板(これはまた「+C」または「−C」であることができる)である。C板とA板との間の違いは、C板では、特異な屈折率(または光学軸)が、フィルムの平面内ではなく厚み方向にあることである。よって
(4a)nz>ny=nx“+C”板
(4b)nz<ny=nx“−C”板
【0021】
C板は、二軸延伸し、x方向およびy方向における相対的な延伸を一定に保持することによって形成できる。代替として、これらは圧縮形成によって形成できる。初期には等方性である正の固有複屈折の物質を圧縮または等二軸延伸することにより、−C板がもたらされる。有効な配向方向がフィルムの面内にあるからである。逆に、+C板は、負の固有複屈折の物質で形成された初期には等方性のフィルムを圧縮または等二軸延伸することにより形成する。二軸延伸の場合、配向レベルを機械方向または横方向において同じに保たない場合には、物質はもはや真のC板ではないが、代わりに2つの光学軸を有する二軸フィルムである。
【0022】
C板を製造するための第3の、そしてより一般的な選択肢は、フィルムの溶媒キャストの間に形成する応力の利点を呈する。引張応力がフィルムの平面内で生じ、これはキャスティングベルトによって与えられる拘束に起因する(等二軸で本来的でもある)。これらの応力は、鎖をフィルムの平面内に配列させ、−Cまたは+Cのフィルムを、正および負の固有複屈折の物質のそれぞれについてもたらす傾向がある。ディスプレイにおいて使用する殆どのセルロースエステルフィルムは溶媒キャストされるため、全てが本質的に正の複屈折であり、そして溶媒キャストセルロースエステルは通常−C板を形成することが明らかである。これらのフィルムはまた、一軸延伸されて+A板を形成できる(初期のキャストしたままでのレタデーションは極めて低いと推測される)が、+C板または−A板をセルロースエステルで形成する能力は極めて制限されている。
【0023】
一軸板に加えて、二軸配向したフィルムを用いてC板を製造することも可能である。二軸フィルムは、種々の手法,例えば単純に主たる方向における3つの屈折率を(これらの主たる軸の方向に沿って)挙げることで、定量化する。代替として、二軸フィルムは、しばしば、パラメータNzの観点で定量化し、ここでNzは、
(5) Nz=(nx−nz)/(nx−ny
と定義される。
【0024】
Nzは、有効な面外複屈折の面内複屈折に対しての指標であり、そして典型的には、フィルムを補償フィルムとして使用する場合に、交差した偏光子の対について約0.5となるように選択する。
【0025】
補償フィルムが光漏失を適切に排除するように、これらは、特定の手法で、使用における液晶セルの種類に応じて組合せるのがよい。例えば、Fundamentals of Liquid Crystal Displays(D.K.YangおよびS.T.Wu,Wiley,New Jersey,2006,pp208−237)は、IPS(面内スイッチング)、ねじれネマチック(TN)およびVA(垂直配列)型のセルのために一軸板の組合せ(二軸板もまた有効であるが数学的により複雑である)を用いて補償する種々の手法を記載する。IPSセルの場合において、+C板、続いて+A板が記載されている(+A、続いて+Cも記載されている)。サンドイッチされる場合、交差した極の間で、これらのフィルムは光漏失を有効に補正する。別の種類の構造は、+A板を−A板とともに使用するものであり、これは+A/+Cの組合せよりも対称な視野角性能を与える。
【0026】
VA補償フィルムは同様であるが、液晶相自体が+C構造(計算に入れなければならないもの)として作用する(セルが典型的により「中性」であるIPS系とは異なる)。最終結果は、+Aフィルムを−Cフィルムと併用することが必要であることである。この構造は、正の複屈折の物質のみで得られる。しかし、3層補償物が+A、−Aおよび−Cのフィルムからなる場合に改善された性能が示される。これは繰り返すが負の複屈折を−A層について必要とする。上記の構造は、可能な多くの組合せの僅かなものに過ぎず、そして正および負の複屈折の重要性を示す意味のみであることに留意されたい。他の補償物(例えば二軸フィルムおよびねじれフィルム)もまた、負の固有複屈折を有することによる利益を得ることができる可能性がある。
【0027】
上記議論は負の固有複屈折の利益を特定するが、極めて低いかまたはゼロである固有複屈折の物質を有することの利益もまた存在する。これらのゼロまたはゼロ近傍のレタデーションのフィルムは、特別な重要性をIPS型構造(保護層として)において(例えば上記例のIPS補償物(+Aおよび−Aのフィルムを有し、C型構造を含まないもの))有する。残念ながら、溶媒キャスト、および偏光子へのラミネートによって形成される典型的な保護セルローストリアセテート(TAC)フィルムは、名目Rth−20nm〜約−70nmを、633nm波長にて有する。このフィルムはまた、偏光子間の「光学列」内にあるため、そのレタデーションが光漏失に寄与する。よって、これらの保護フィルムは、全体構造に有効に加えられる2つの−C板(すなわち、第1には上部偏光子、そして第2には下部偏光子/アナライザー)を有し、これは+A/−A補償策の利益を打ち消す。従って、これを軽減するために、ゼロRthを有する保護TACフィルム(すなわち「ゼロ−TAC」フィルム)が望ましい。ゼロ−TACフィルムはまた、種々のコーティング用(例えば、負の複屈折のコーティング用、および液晶コーティング用)の基材として有用である。これらの用途において、コーティングは、補償物として働くことを意味し、そしてTAC基材は中性であるのがよい。このようなゼロ−TACフィルムは、しばしば、セルローストリアセテートおよび導入添加剤(レタデーションを低減するもの)を用いることによって形成するが、このような添加剤は高価であり、そしてフィルムの他の性能特性を変える。極めて低い、またはゼロの固有複屈折を有するセルロースエステルは、ゼロ−TACフィルムを、顕著量のレタデーション阻害剤/添加剤を使用せずに製造することを可能にし、そして本発明の一態様である。
【0028】
上記のように、溶媒キャストセルローストリアセテートについてのRth値は、約−20〜−70nmの範囲であるが、混合エステル系では、約−20〜−300nmの範囲(含まれるセルロースエステルの種類(これはその固有複屈折を決定する)、キャスティングベルト上に残す時間(これはフィルム内の残留応力を制御する)ならびに使用する偏光子および添加剤の種類に応じ)であることを我々は観測した。「混合エステル」により、我々は、1つより多いエステル型を有するセルロースエステル,例えばセルロースアセテートプロピオネート(CAP)またはセルロースアセテートブチレート(CAB)等を意味することを留意されたい。既に記載したように、レタデーション添加剤または阻害剤を溶媒ドープに添加して、キャストしたままでのレタデーションの上昇または低下を助けることはかなり一般的である。−C板におけるレタデーションの量はまた、二軸延伸もしくは圧縮によって向上でき、または他のフィルム(例えば+A板)を、後続の一軸延伸によって形成できる(−Cフィルムのレタデーションは初期には低いと推測される)。しかし注目すべきは、−Aおよび+Cの補償板が、セルロースエステルでは、これらの正の複屈折の性質で容易に形成できないことである。よって、他のより低コスト(または性能がより乏しい)の物質が代わりに使用されてきた。
【0029】
溶融押出しされたフィルムもまた、所定範囲のレタデーションを有するが、応力プロファイルは溶媒キャストとは異なる。溶融押出しで、MD方向における引張応力(ロールとダイとの間のドローダウン(ほぼ一定の幅のキャスティングプロセスに起因しての横応力を伴い)に起因する)は、二軸複屈折プロファイルのフィルムをもたらす。それにも関わらず、これらのフィルムのRth値は、正の複屈折の物質をキャストする場合には常に負である。負の固有複屈折を有する溶融加工可能なセルロースエステルでは、正のRth値(すなわち+C板挙動)を有する溶融押出しされたフィルムを形成するための手法を与える。更に、ゼロまたは負の固有複屈折のレジン(溶融キャストおよび溶媒キャストの両者が可能なもの)では、極めて多用途の物質(より幅広い範囲のフィルム加工設備で使用できるもの)を与える。
【0030】
要約において、セルロースエステルの分野において、極めて低いかまたは負の固有複屈折を有すること(好ましくは溶媒キャストおよび溶融キャストの両者が可能)、および製造の容易性のために良好な溶解性を維持することに対する要求が存在する。これは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)フィルム(例えば補償構造)の作製においてより大きい多用性および性能を可能にする。このようなレジンは本発明の根拠である。本明細書で用いるLCDのフィルムまたはシートは、LCD組立品における光学フィルムまたは光学シートであって、例えば光の方向付け、拡散または偏光が可能なものを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明の要約
本発明は、混合セルロースエステルおよび混合セルロースエステル組成物[1つまたは複数の偏光子を含むもの]に関する。本発明は更にこれから形成される物品に関する。加えて、本発明はこれから形成されるフィルムに関する。更に、本発明はこれから形成されるLCDフィルムに関する。
【0032】
一態様において、少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、混合セルロースエステルを提供する。
【0033】
一態様において、少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、混合セルロースエステルを提供する。他の態様において、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比はまた、以下:10〜100;10〜80;15以上;15〜200;および15〜100、のうち少なくとも1つであることができる。
【0034】
一態様において、少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である、混合セルロースエステルを提供する。
【0035】
一態様において、本発明の混合セルロースエステルの非アセチル基は、プロピオニル基および/またはブチリル基を含むことができ、そして、プロピオニル基とブチリル基との和の置換度が約1.1〜1.6であることができる。
【0036】
一態様において、本発明の混合セルロースエステルの非アセチル基は、プロピオニルを含むことができ、ここでプロピオニルの置換度が1.2〜1.6である。
【0037】
一態様において、本発明の混合セルロースエステルは、少なくとも1つのアセチル基を含むことができ、ここで混合セルロースエステルのガラス転移温度が100℃〜200℃であり;そして非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である。
【0038】
本発明の全ての態様において、本発明の混合セルロースエステルは、インヘレント粘度0.8〜1.9dL/gを有することができる。
【0039】
本発明の全ての態様において、本発明の混合セルロースエステルは、Tg100℃〜200℃を有することができる。
【0040】
本発明の一態様において、混合セルロースエステル組成物は、本発明の混合セルロースエステルの少なくとも1種および少なくとも1種の可塑剤が提供する。
【0041】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、以下:ホスフェート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコール酸エステル、クエン酸エステル可塑剤、およびヒドロキシル官能性可塑剤のうち少なくとも1つから選択できる。
【0042】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、以下:トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリブチルホスフェート;ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、およびジベンジルフタレート;ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、またはメチルフタリルエチルグリコレート;ならびにトリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、およびアセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート、のうち少なくとも1つから選択できる。
【0043】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、以下:(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、またはリン酸のうち1種以上の残基を含む酸残基;および(ii)約20個以下の炭素原子を含有する、脂肪族、脂環式または芳香族のアルコールのうち1種以上の残基を含むアルコール残基、を含むエステルのうち少なくとも1つから選択できる。
【0044】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、アルコール残基を含む1種以上の可塑剤を含むことができ、該アルコール残基は、以下:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびジエチレングリコール、のうち少なくとも1つから選択できる。
【0045】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、以下:ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン−ビス(ジアリールホスフェート)、およびイソフタレートのうち少なくとも1つから選択できる。別の例において、可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾエート(本明細書で「DEGDB」と略す)を含む。
【0046】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、以下:C2-10二塩基酸残基およびC2-10ジオール残基(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸)を含む脂肪族ポリエステルのうち少なくとも1つから選択できる。
【0047】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、ジオール残基を含む1種以上の可塑剤を含むことができ、該残基は、以下のC2-10ジオール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコール、のうち1つの残基であることができる。
【0048】
一態様において、混合セルロースエステル組成物において、可塑剤は、以下:Resoflex R296、Resoflex 804、SHP(ソルビトールヘキサプロピオネート)、XPP(キシリトールペンタプロピオネート)、XPA(キシリトールペンタアセテート)、GPP(グルコースペンタアセテート)、GPA(グルコースペンタプロピオネート)およびAPP(アラビトールペンタプロピオネート)(本明細書で言及するもの)のうち少なくとも1つを含む。
【0049】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、アジピン酸残基およびジエチレングリコール残基を含む脂肪族ポリエステルであることができる。
【0050】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が、コハク酸残基およびジエチレングリコール残基を含む脂肪族ポリエステルであることができる。
【0051】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含むことができ、該可塑剤が:A)約5〜約95質量%のC2−C12炭水化物有機エステル(該炭水化物は約1〜約3モノサッカライド単位を含む);およびB)約5〜約95質量%のC2−C12ポリオールエステル(該ポリオールは、C5またはC6の炭水化物に由来する);およびb)約5〜約95質量%のセルロースのC2−C10エステル(DS約0.7〜約3.0を有するもの);のうち1種以上を含み;該パーセントは成分(A)と成分(B)との和の総質量基準である。一態様において、ポリオールエステルは1種または複数種のポリオールアセテートを含まない(または含有しない)。
【0052】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は可塑剤を含み、該可塑剤が、少なくとも1種の炭水化物エステルを含み、そして該炭水化物エステルの炭水化物部分が、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、およびラフィノースのうち1種以上に由来する。
【0053】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は可塑剤を含み、該可塑剤が、少なくとも1種の炭水化物エステルを含み、そして該炭水化物エステルの炭水化物部分が、α−グルコースペンタアセテート、β−グルコースペンタアセテート、α−グルコースペンタプロピオネート、β−グルコースペンタプロピオネート、α−グルコースペンタブチレート、およびβ−グルコースペンタブチレートのうち1種以上を含む。
【0054】
一態様において、混合セルロースエステル組成物は可塑剤を含み、該可塑剤が、少なくとも1種の炭水化物エステルを含み、該炭水化物エステルの炭水化物部分が、α−アノマー、β−アノマーまたはこれらの混合物を含む。
【0055】
本発明の全態様において、少なくとも1つのフィルムを提供し、該フィルムは、本発明の任意の混合セルロースエステルまたは混合セルロースエステル組成物(可塑剤添加)を含む。本発明の一態様において、少なくとも1つのLCDフィルムを提供し、該LCDフィルムは、本発明の任意の混合セルロースエステルまたは混合セルロースエステル組成物を含む。本発明の全態様において、本発明の1種または複数種のフィルムは、溶液キャストまたは溶融押出しのいずれかがされることができる。
【0056】
発明の簡単な説明
本発明は、セルロース混合エステル組成物に関し、該セルロース混合エステル組成物は、低いヒドロキシル含有量を有し、溶媒キャストおよび溶融押出しの両者が可能である。セルロースエステルは少なくとも2つのエステル型,例えば、アセチル、プロピオニル、およびブチリル、を含有し、そして非アセチル置換度(例えばプロピオニルおよび/またはブチリル)の比のヒドロキシル置換度に対する比が10以上であり、そして非アセチルエステル置換度(例えばプロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超である。このようなフィルムは、液晶ディスプレイ用途において、補償フィルム、更に偏光子保護フィルムとして有用である。更に、このようなレジンは、例えば、モールド成形光学部品、レンズ、光学コネクター等において使用でき、残留応力中でのモールド成形は最小限に保つことが必要である。本件全体を通じ、非アセチル置換度は(DSNAC)といい、そしてヒドロキシル置換度を(DSOH)ということがある。
【0057】
操作例において以外で、または特記がない限り、含有成分の量、反応条件等を表現する、明細書および特許請求の範囲において用いる全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されることを理解すべきである。よって、逆の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変動できる近似である。最低でも、そして特許請求の範囲の範囲への均等の原則の適用を制限することを意図せず、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を踏まえて、そして通常の四捨五入法を適用して解釈すべきである。
【0058】
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメータが近似であることに関わらず、具体例において説明される数値は可能な限り厳密に記載される。しかしいずれの数値も、これらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差に起因して本質的にある程度の誤差を必然的に含有する。
【0059】
略号
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1.溶融押出しキャスト法の概略図。
【図2】図2.例において製造される、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)およびセルロースアセテートブチレート(CAB)の混合エステルについての、ヒドロキシル置換度(DS)の規格化Rthに対する効果。
【図3】図3.例において製造されるセルロース誘導体についての、非アセチルエステル(例えばプロピルまたはブチル)含有量の規格化Rthに対する効果。
【図4】図4.「ヒドロキシル比」の関数としての規格化Rth
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
本発明のレジンは、低いヒドロキシル含有量、および、非アセチルエステルDSのヒドロキシルDSに対する規定の比を有するセルロースエステルを含む。これらのレジンは、溶媒キャストおよび溶融押出しの両者が可能である。このようなレジンが、従来のセルロースエステルと比べて極めて低い固有複屈折を示し、そしてより幅広い設備で製造できることを見出した。更に、ヒドロキシルレベルが十分低く形成され、非アセチルエステルDSが適切に制御される場合には、固有複屈折は正からゼロを越え、そして場合により負の大きさになり、よって+C型および−A型のレタデーション板を形成する能力が与えられる。
【0063】
上記のように、フィルムの複屈折の相対的な大きさは、フィルムを作製するために使用するモノマー単位の立体化学に左右される。より多くの側基がモノマーに付くに従い、典型的にはより多くの結合(鎖軸と横に並び、SOCの低下をもたらすもの)が存在する。より大きい、および/またはより多くの側基が付くに従い、SOCは0に向かって減少し続けることになり、最終的にはこれを越えて負になる(例えばポリスチレン中のベンゼン側基はこれに負のSOCを与える)。SOC=0の場合について、これは「ゼロ複屈折」または「ゼロ固有複屈折」という。このような物質は、実際には、多くの光学用途について理想的である。これを任意の程度に、何らの複屈折の形成なく延伸できるからである。残念ながら、ゼロ複屈折の物質は稀である。
【0064】
これらの側基の種類および量を調整することによってSOCを既定物質について変動させることが可能である。セルロースエステルおよびセルロースエーテルの場合、無水グルコース単位当たり3つの反応性ヒドロキシル位置が存在し、ここに種々の側基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)が付くことができる。これらの基の数および種類を変えることによってSOCを既定の要求に合致するように変えることが可能になる。例として、純粋セルロース(無水グルコース当たり3つのヒドロキシル)は、比較的大きい正のSOCを有するが、これらのヒドロキシルがアセチル基で置き換わるに従い、SOCは顕著に減少する。純粋セルローストリアセテート(DS=3)の場合、SOCは極めて0に近い(そして若干負である)。
【0065】
しかし、これらの側基を変えることはその欠点を有する。分子の化学的性質が変化するに従い、熱的性能、溶解性能および機械的性能も変化する。例えば、多すぎる大きい側基をセルロース分子に加えることは、ガラス転移温度Tg、更にフィルムのモジュラスを低下させる。両者は重要なディスプレイ関連性能基準である。これらは長期寸法安定性に影響するからである。同様に、ゼロ複屈折のセルロースアセテートは、置換度(DS)が2.95に近い場合に形成できるが、このような物質は、従来のセルローストリアセテート(DS=2.8〜2.9)と比べて不溶性であり、よって、製造の観点から実際的ではない。よって、光学的な向上およびSOC低減のための任意の化学変化を、他の特性において生じる場合がある代償と適切にバランスさせるのがよい。結果として、溶融加工の間に実際に導入される配向を制御することが、物質に対して顕著な変化を試みるよりも望ましくなる。これに関わらず、SOCを所定範囲内に維持することは、高品質ディスプレイフィルムを実現するための鍵となる側面である。
【0066】
溶融配向源
SOC値は、応力と複屈折との間の相関を与えるが、どの程度大きな応力が存在するかの決定はされていない。溶融押出しの場合、応力源は主に2つある:ダイ中の流れからの剪断応力およびダイとキャスティングロールとの間の伸張応力である。これらは図1に表される。ポリマーは、押出機(1)からダイ(2)内に流れ、ここでダイリップ(3)を通って出る。ダイリップ間のギャップは、典型的には極めて小さい(すなわち、2〜50mil(0.08〜2mm)の間)。十分な背圧を与えてダイの全幅を均一に埋めるためである。このような流れの分布は、通常、コートハンガーまたはT型チャネル、続いて薄いダイリップ領域によって対処する。ダイの中で剪断応力が最も生じやすいのはこの狭いダイリップ領域であり、そしてこれはより詳細にまもなく扱う。伸張応力は、ポリマーがダイ(4)から出る場所と、これがキャスティングロール(5)に点(6)で最初に接触する場所との間で生じる。ダイとロールとの間のギャップ間隔は、通常極めて小さい(数センチメートル)が、生じる顕著な伸長応力が存在する。ダイから出るポリマーは、ダイギャップよりも若干大きいのみの厚み(ダイ膨潤に起因する)を有し、そしてこれは典型的には、最終所望厚みよりもかなり厚い。よって、フィルムをその最終厚みまでダイとロールとの間の小さいギャップで「引き下げ」る。この引きにより、第2の応力源が生じる。本発明の一態様において、ダイギャップLは0.1〜5cmであり、ウエブの不安定性およびドローダウンを最小化する。
【0067】
多くのダイ/ロール配置が存在するが、一般的な流動力学は殆ど全てについて同じである。しばしば、キャスティングは、静電ピニングワイヤ、減圧ボックスまたは「エアナイフ」によって補助し、これらの全ては、フィルムを強制的にロールに対抗させて、空気の閉じ込めなしでの良好な接触を確保するのを助ける。これらの実際のドローダウン速度に対する効果は小さく、そして無視できる。対照的に、押出され、そして1組のニップロール間で艶出し(ポリッシュ)されるフィルムは、挙げられるいずれの従来の方法よりも大幅に高い応力および複屈折を有することになる。艶出しまたはカレンダリングは、フィルムをキャスティングロールと第2のニップロールとの間で圧迫してフィルムをキャスティングロールに対抗して平坦にし、極めて厳密な厚み制御を確保するのを助けることを含む。ニップ力を極めて低く保つことなく、この艶出しプロセスは追加の第3の組の応力(これは、既述の伸長およびダイ流の応力よりも大幅に高い)を導入する。よって、艶出しは、別個に考慮しなければならない、溶融押出しの特別な場合である。
【0068】
剪断応力
一般的に、より低粘度の流体はより低い残留配向およびより低い複屈折を有する。剪断応力がダイ内でより低いからである。これは一般的な意味では真実であるが、まだ全ての配向源を完全に扱うわけではない。更に、物質の粘度を単純に下げること(例えば、可塑剤レベルを増大させることによって)は、通常、他の特性(例えば剛性およびガラス転移温度)に不利に影響し、従って、フィルムを許容できなくする。同様の様式で、溶融温度を上昇させることによって粘度を低減させることは、典型的には、過度の熱分解を招来し、これは黄変を生じさせ、これも許容できない。問題を更に複雑にすることに、セルロース誘導体は、高度にシアシニング流体(ダイから現れる流動力学および配向分布を極めて複雑にする)である傾向がある。流体の粘度の大きさは、ダイ中心ではダイ壁近傍と比べて何桁か大きい可能性がある。これは剪断速度の差に起因する。可塑剤の使用もまた、流動挙動を複雑にする傾向がある。これらはダイ表面での「潤滑」効果(これは経時的に変化する可能性がある)の原因となる可能性があり、よって光学性能のために最大粘度を評価することがせいぜい推測になるからである。幸運にも、形成するこれらの応力は、急速に消え去り(分子レベルの緩和によって)、そして、最終フィルム複屈折においてより大きい役割を果たすのは、この緩和、更には伸張応力(ダイ外部で形成するもの)である。
【0069】
ダイ内で誘導される応力は、例えばDynamics of Polymeric Liquids,Vo1 1,(Bird,Armstrong and Hassager John Wiley and Sons,1987)に記載される標準剪断流に関連する。速度プロファイルは、ほぼ放物線の形であり、ポリマー流体の非ニュートンシアシニング流挙動に起因する偏差を伴う。剪断応力は、中心線ではゼロであり、そして壁近傍で最大である。この壁の剪断応力は、剪断速度(壁での)に流体の粘度(壁剪断速度での)を乗じたものと等しい。壁剪断速度は、典型的には、約1000s-1であるが、流速、ダイギャップ、シアシニングおよびダイ幅に応じて変動できる。重要な殆どのポリマーについて、壁での剪断応力は、約1〜100MPa(粘度、流速等に応じ)である。これは、かなりの大きさであり、そして殆どのポリマーについて顕著な複屈折の原因となる(この応力が熱緩和によって急速に減衰するという事実がなければ)。
【0070】
ダイから出る際、流体はもはや剪断下にはなく、そして高い鎖運動性により、分子が急速に解かれ、よって応力が低減されることができる。どの程度速くこの緩和が生じるかは、緩和時間λ(これは、すなわち、ポリマーと加工温度との関数である)に左右される。
【0071】
伸張応力
前記の剪断応力は、複屈折に寄与する一方、これらの効果は、伸張応力の効果よりも小さい。剪断応力の大きさは伸張応力よりも大幅に高い傾向がある一方、これらはまた、緩和のための大幅により大きい時間を有する。これに対し、伸張応力は、これらが生じた後殆ど直ちに止まる。これらの応力は、ダイとキャストロールとの間で生じるドローダウンを原因とする。フィルムは、ダイから、ダイギャップh0とほぼ等しい厚みで出て、次いで最終所望厚みhfまで延伸して下げられなければならない。値hfは、典型的には、殆どの市販のディスプレイフィルムについて、40〜200ミクロン(0.004〜0.02cm)であるが、我々はこのようなものに限定しない。質量保存により、フィルムが薄く下がると、同時にスピードを上げなければならない。この速度の加速は、フィルム内の引張歪み度(これは伸張応力を生じさせる)に対応する。
【0072】
本発明のセルロースエステルの組成
本発明のセルロースエステルは、混合エステルであり、例えば、アセチル、プロピオニル、および/またはブチリルを基にするが、より長鎖の酸もまた使用できる。混合エステルは、加工のための適切な溶解性を与え、そしてゲル形成を低減させる。非アセチル置換度は、本件全体を通じてDSNACという。プロピオニル/ブチリル置換度(DS(Pr+Bu))は、DSNACの亜属であり、非アセチル置換度(ここで非アセチル基はプロピオニル基および/またはブチリル基である)を意味する。本発明の一態様において、アセチルは、第一エステル形成性基である。別の態様において、セルロースエステルは、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)エステルである。別の態様において、セルロースエステルは、セルロースアセテートブチレート(CAB)エステルである。別の態様において、セルロースエステルはセルロースアセテートプロピオネートブチレート(CAPB)エステルである。別の態様において、セルロースエステルは、2種以上のエステルのブレンド物である。別の態様において、セルロースエステルは、CAP、CAB、およびCAPBエステルから選択される2種以上のエステルのブレンド物である。別の態様において、セルロースエステルは、アセテートの混合セルロースエステルであり、そして、4個より多い炭素原子を有する酸鎖の少なくとも1種のエステル残基(例えばペントノイルまたはヘキサノイル等)を含む。このような高級酸鎖エステル残基としては、これらに限定するものではないが、例えば、5,6,7,8,9,10,11,および12個の炭素原子を有する酸鎖エステルを挙げることができる。これらとしては、12個より多い炭素原子を有する酸鎖エステルも挙げることができる。本発明の別の態様において、4個より多い炭素原子を有する酸鎖の少なくとも1種のエステル残基を有する混合セルロースアセテートエステルは、プロピオニル基および/またはブチリル基を含むこともできる。
【0073】
一態様において、本発明の混合エステル系は、総置換度2.8〜3を有する(すなわち、ヒドロキシルDSは0〜0.2の間である)。別の態様において、総置換度は2.83〜2.98であり、そして更に別の態様において、総置換度は2.85〜2.95である。本発明の別の態様において、総置換度は、総ヒドロキシルレベルが、所望のレタデーション挙動を生成するのに十分低いようなもの(例えば以下の例において開示するもの)である。
【0074】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超である。
【0075】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75である。
【0076】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6である。
【0077】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超である。
【0078】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75である。
【0079】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6である。
【0080】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超である。
【0081】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75である。
【0082】
別の態様において、本発明の混合エステル系は以下のパラメータにより定義される:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6である。
【0083】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0084】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0085】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10以上、例えば10〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0086】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0087】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0088】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が10超、例えば10超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0089】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5超、例えば1.1超であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0090】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が0.5〜1.75、または1.1〜1.75であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0091】
本発明の別の態様は、溶媒キャストまたは溶融押出しされたフィルムであって、以下のパラメータにより定義される混合エステルから形成されるフィルムを対象とする:
(a)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル基とブチリル基との和のDSであるが、より高級の炭素原子の基,例えばペンタノイル、ヘキサノイル等も包含できる)の、ヒドロキシル置換度に対する比(「ヒドロキシル比」という)が15以上、例えば15〜200、例えば15超、または例えば15超〜200であり;そして
(b)非アセチルエステル置換度(例えば、プロピオニル(Pr)基とブチリル(Bu)基との和)が1.0〜1.6、または1.1〜1.6であり;
該フィルムが可塑剤を用いて作製され、そして任意に、可塑剤が、C2〜C10の二塩基酸残基およびC2〜C10のジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。
【0092】
一態様において、本発明の混合エステル系の総置換度は、以下の範囲のうちの1つから選択される:2.75〜3.00,2.76〜3.00,2.77〜3.00,2.78〜3.00,2.79〜3.00,2.80〜3.00,2.81〜3.00,2.82〜3.00,2.83〜3.00,2.84〜3.00,2.85〜3.00,2.86〜3.00,2.87〜3.00,2.88〜3.00,2.89〜3.00,2.90〜3.00,2.91〜3.00,2.92〜3.00,2.93〜3.00,2.94〜3.00,2.95〜3.00,2.96〜3.00,2.97〜3.00,2.98〜3.00,2.99〜3.00,2.75〜2.99,2.76〜2.99,2.77〜2.99,2.78〜2.99,2.79〜2.99,2.80〜2.99,2.81〜2.99,2.82〜2.99,2.83〜2.99,2.84〜2.99,2.85〜2.99,2.86〜2.99,2.87〜2.99,2.88〜2.99,2.89〜2.99,2.90〜2.99,2.91〜2.99,2.92〜2.99,2.93〜2.99,2.94〜2.99,2.95〜2.99,2.96〜2.99,2.97〜2.99,2.98〜2.99,2.75〜2.98,2.76〜2.98,2.77〜2.98,2.78〜2.98,2.79〜2.98,2.80〜2.98,2.81〜2.98,2.82〜2.98,2.83〜2.98,2.84〜2.98,2.85〜2.98,2.86〜2.98,2.87〜2.98,2.88〜2.98,2.89〜2.98,2.90〜2.98,2.91〜2.98,2.92〜2.98,2.93〜2.98,2.94〜2.98,2.95〜2.98,2.96〜2.98,2.97〜および2.98。
【0093】
別の態様において、本発明の混合エステル系の総置換度は、以下の範囲のうちの1つから選択される:2.75〜2.97,2.76〜2.97,2.77〜2.97,2.78〜2.97,2.79〜2.97,2.80〜2.97,2.81〜2.97,2.82〜2.97,2.83〜2.97,2.84〜2.97,2.85〜2.97,2.86〜2.97,2.87〜2.97,2.88〜2.97,2.89〜2.97,2.90〜2.97,2.91〜2.97,2.92〜2.97,2.93〜2.97,2.94〜2.97,2.95〜2.97,2.96〜2.97,2.75〜2.96,2.76〜2.96,2.77〜2.96,2.78〜2.96,2.79〜2.96,2.80〜2.96,2.81〜2.96,2.82〜2.96,2.83〜2.96,2.84〜2.96,2.85〜2.96,2.86〜2.96,2.87〜2.96,2.88〜2.96,2.89〜2.96,2.90〜2.96,2.91〜2.96,2.92〜2.96,2.93〜2.96,2.94〜2.96,2.95〜2.96,2.75〜2.95,2.76〜2.95,2.77〜2.95,2.78〜2.95,2.79〜2.95,2.80〜2.95,2.81〜2.95,2.82〜2.95,2.83〜2.95,2.84〜2.95,2.85〜2.95,2.86〜2.95,2.87〜2.95,2.88〜2.95,2.89〜2.95,2.90〜2.95,2.91〜2.95,2.92〜2.95,2.93〜2.95,2.94〜2.95,2.75〜2.94,2.76〜2.94,2.77〜2.94,2.78〜2.94,2.79〜2.94,2.80〜2.94,2.81〜2.94,2.82〜2.94,2.83〜2.94,2.84〜2.94,2.85〜2.94,2.86〜2.94,2.87〜2.94,2.88〜2.94,2.89〜2.94,2.90〜2.94,2.91〜2.94,2.92〜2.94,2.93〜2.94,2.75〜2.93,2.76〜2.93,2.77〜2.93,2.78〜2.93,2.79〜2.93,2.80〜2.93,2.81〜2.93,2.82〜2.93,2.83〜2.93,2.84〜2.93,2.85〜2.93,2.86〜2.93,2.87〜2.93,2.88〜2.93,2.89〜2.93,2.90〜2.93,2.91〜2.93,および2.92〜2.93。
【0094】
別の態様において、本発明の混合エステル系の総置換度は、以下の範囲のうちの1つから選択される:2.75〜2.92,2.76〜2.92,2.77〜2.92,2.78〜2.92,2.79〜2.92,2.80〜2.92,2.81〜2.92,2.82〜2.92,2.83〜2.92,2.84〜2.92,2.85〜2.92,2.86〜2.92,2.87〜2.92,2.88〜2.92,2.89〜2.92,2.90〜2.92,2.91〜2.92,2.75〜2.91,2.76〜2.91,2.77〜2.91,2.78〜2.91,2.79〜2.91,2.80〜2.91,2.81〜2.91,2.82〜2.91,2.83〜2.91,2.84〜2.91,2.85〜2.91,2.86〜2.91,2.87〜2.91,2.88〜2.91,2.89〜2.91,2.90〜2.91,2.75〜2.90,2.76〜2.90,2.77〜2.90,2.78〜2.90,2.79〜2.90,2.80〜2.90,2.81〜2.90,2.82〜2.90,2.83〜2.90,2.84〜2.90,2.85〜2.90,2.86〜2.90,2.87〜2.90,2.88〜2.90,2.89〜2.90,2.75〜2.89,2.76〜2.89,2.77〜2.89,2.78〜2.89,2.79〜2.89,2.80〜2.89,2.81〜2.89,2.82〜2.89,2.83〜2.89,2.84〜2.89,2.85〜2.89,2.86〜2.89,2.87〜2.89,2.88〜2.89,2.75〜2.88,2.76〜2.88,2.77〜2.88,2.78〜2.88,2.79〜2.88,2.80〜2.88,2.81〜2.88,2.82〜2.88,2.83〜2.88,2.84〜2.88,2.85〜2.88,2.86〜2.88,2.87〜2.88,2.75〜2.87,2.76〜2.87,2.77〜2.87,2.78〜2.87,2.79〜2.87,2.80〜2.87,2.81〜2.87,2.82〜2.87,2.83〜2.87,2.84〜2.87,2.85〜2.87,2.86〜2.87,2.75〜2.86,2.76〜2.86,2.77〜2.86,2.78〜2.86,2.79〜2.86,2.80〜2.86,2.81〜2.86,2.82〜2.86,2.83〜2.86,2.84〜2.86,2.85〜2.86,2.75〜2.85,2.76〜2.85,2.77〜2.85,2.78〜2.85,2.79〜2.85,2.80〜2.85,2.81〜2.85,2.82〜2.85,2.83〜2.85,および2.84〜2.85。
【0095】
一態様において、本発明の混合エステル系の総置換度は、以下の範囲のうちの1つから選択される:2.75〜2.84,2.76〜2.84,2.77〜2.84,2.78〜2.84,2.79〜2.84,2.80〜2.84,2.81〜2.84,2.82〜2.84,2.83〜2.84,2.75〜2.83,2.76〜2.83,2.77〜2.83,2.78〜2.83,2.79〜2.83,2.80〜2.83,2.81〜2.83,2.82〜2.83,2.75〜2.82,2.76〜2.82,2.77〜2.82,2.78〜2.82,2.79〜2.82,2.80〜2.82,2.81〜2.82,2.75〜2.81,2.76〜2.81,2.77〜2.81,2.78〜2.81,2.79〜2.81,2.80〜2.81,2.75〜2.80,2.76〜2.80,2.77〜2.80,2.78〜2.80,2.79〜2.80,2.75〜2.79,2.76〜2.79,2.77〜2.79,2.78〜2.79,2.75〜2.78,2.76〜2.78,2.77〜2.78,2.75〜2.77,2.76〜2.77,および2.75〜2.76。
【0096】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜200,10超,10超〜200,15〜200,20〜200,25〜200,30〜200,35〜200,40〜200,45〜200,50〜200,55〜200,60〜200,65〜200,70〜200,75〜200,80〜200,85〜200,90〜200,95〜200,100〜200,105〜200,110〜200,115〜200,120〜200,125〜200,130〜200,135〜200,140〜200,145〜200,150〜200,155〜200,160〜200,165〜200,170〜200,175〜200,180〜200,185〜200,190〜200,195〜200,15超,15超〜200,15超〜195,15超〜190,15超〜185,15超〜180,15超〜175,15超〜170,15超〜165,15超〜160,15超〜155,15超〜150,15超〜145,15超〜140,15超〜135,15超〜130,15超〜125,15超〜120,15超〜115,15超〜110,15超〜105,15超〜100,15超〜95,15超〜90,15超〜85,15超〜80,15超〜75,15超〜70,15超〜65,15超〜60,15超〜55,15超〜50,15超〜45,15超〜40,15超〜35,15超〜30,15超〜25,15超〜20。
【0097】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜195,10超〜195,15〜195,20〜195,25〜195,30〜195,35〜195,40〜195,45〜195,50〜195,55〜195,60〜195,65〜195,70〜195,75〜195,80〜195,85〜195,90〜195,95〜195,100〜195,105〜195,110〜195,115〜195,120〜195,125〜195,130〜195,135〜195,140〜195,145〜195,150〜195,155〜195,160〜195,165〜195,170〜195,175〜195,180〜195,185〜195,190〜195,10〜190,10超〜190,15〜190,20〜190,25〜190,30〜190,35〜190,40〜190,45〜190,50〜190,55〜190,60〜190,65〜190,70〜190,75〜190,80〜190,85〜190,90〜190,95〜190,100〜190,105〜190,110〜190,115〜190,120〜190,125〜190,130〜190,135〜190,140〜190,145〜190,150〜190,155〜190,160〜190,165〜190,170〜190,175〜190,180〜190,185〜190,10〜185,10超〜185,15〜185,20〜185,25〜185,30〜185,35〜185,40〜185,45〜185,50〜185,55〜185,60〜185,65〜185,70〜185,75〜185,80〜185,85〜185,90〜185,95〜185,100〜185,105〜185,110〜185,115〜185,120〜185,125〜185,130〜185,135〜185,140〜185,145〜185,150〜185,155〜185,160〜185,165〜185,170〜185,175〜185,および180〜185。
【0098】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜180,10超〜180,15〜180,20〜180,25〜180,30〜180,35〜180,40〜180,45〜180,50〜180,55〜180,60〜180,65〜180,70〜180,75〜180,80〜180,85〜180,90〜180,95〜180,100〜180,105〜180,110〜180,115〜180,120〜180,125〜180,130〜180,135〜180,140〜180,145〜180,150〜180,155〜180,160〜180,165〜180,170〜180,175〜180,10〜175,10超〜175,15〜175,20〜175,25〜175,30〜175,35〜175,40〜175,45〜175,50〜175,55〜175,60〜175,65〜175,70〜175,75〜175,80〜175,85〜175,90〜175,95〜175,100〜175,105〜175,110〜175,115〜175,120〜175,125〜175,130〜175,135〜175,140〜175,145〜175,150〜175,155〜175,160〜175,165〜175,170〜175,10〜170,10超〜170,15〜170,20〜170,25〜170,30〜170,35〜170,40〜170,45〜170,50〜170,55〜170,60〜170,65〜170,70〜170,75〜170,80〜170,85〜170,90〜170,95〜170,100〜170,105〜170,110〜170,115〜170,120〜170,125〜170,130〜170,135〜170,140〜170,145〜170,150〜170,155〜170,160〜170,165〜170,10〜165,10超〜165,15〜165,20〜165,25〜165,30〜165,35〜165,40〜165,45〜165,50〜165,55〜165,60〜165,65〜165,70〜165,75〜165,80〜165,85〜165,90〜165,95〜165,100〜165,105〜165,110〜165,115〜165,120〜165,125〜165,130〜165,135〜165,140〜165,145〜165,150〜165,155〜165,および160〜165。
【0099】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜160,10超〜160,15〜160,20〜160,25〜160,30〜160,35〜160,40〜160,45〜160,50〜160,55〜160,60〜160,65〜160,70〜160,75〜160,80〜160,85〜160,90〜160,95〜160,100〜160,105〜160,110〜160,115〜160,120〜160,125〜160,130〜160,135〜160,140〜160,145〜160,150〜160,155〜160,10〜155,10超〜155,15〜155,20〜155,25〜155,30〜155,35〜155,40〜155,45〜155,50〜155,55〜155,60〜155,65〜155,70〜155,75〜155,80〜155,85〜155,90〜155,95〜155,100〜155,105〜155,110〜155,115〜155,120〜155,125〜155,130〜155,135〜155,140〜155,145〜155,150〜155,10〜150,10超〜150,15〜150,20〜150,25〜150,30〜150,35〜150,40〜150,45〜150,50〜150,55〜150,60〜150,65〜150,70〜150,75〜150,80〜150,85〜150,90〜150,95〜150,100〜150,105〜150,110〜150,115〜150,120〜150,125〜150,130〜150,135〜150,140〜150,145〜150,10〜145,10超〜145,15〜145,20〜145,25〜145,30〜145,35〜145,40〜145,45〜145,50〜145,55〜145,60〜145,65〜145,70〜145,75〜145,80〜145,85〜145,90〜145,95〜145,100〜145,105〜145,110〜145,115〜145,120〜145,125〜145,130〜145,135〜145,140〜145,10〜140,10超〜140,15〜140,20〜140,25〜140,30〜140,35〜140,40〜140,45〜140,50〜140,55〜140,60〜140,65〜140,70〜140,75〜140,80〜140,85〜140,90〜140,95〜140,100〜140,105〜140,110〜140,115〜140,120〜140,125〜140,130〜140,135〜140,10〜135,10超〜135,15〜135,20〜135,25〜135,30〜135,35〜135,40〜135,45〜135,50〜135,55〜135,60〜135,65〜135,70〜135,75〜135,80〜135,85〜135,90〜135,95〜135,100〜135,105〜135,110〜135,115〜135,120〜135,125〜135,130〜135,10〜130,10超〜130,15〜130,20〜130,25〜130,30〜130,35〜130,40〜130,45〜130,50〜130,55〜130,60〜130,65〜130,70〜130,75〜130,80〜130,85〜130,90〜130,95〜130,100〜130,105〜130,110〜130,115〜130,120〜130,および125〜130。
【0100】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜125,10超〜125,15〜125,20〜125,25〜125,30〜125,35〜125,40〜125,45〜125,50〜125,55〜125,60〜125,65〜125,70〜125,75〜125,80〜125,85〜125,90〜125,95〜125,100〜125,105〜125,110〜125,115〜125,120〜125,10〜120,10超〜120,15〜120,20〜120,25〜120,30〜120,35〜120,40〜120,45〜120,50〜120,55〜120,60〜120,65〜120,70〜120,75〜120,80〜120,85〜120,90〜120,95〜120,100〜120,105〜120,110〜120,115〜120,10〜115,10超〜115,15〜115,20〜115,25〜115,30〜115,35〜115,40〜115,45〜115,50〜115,55〜115,60〜115,65〜115,70〜115,75〜115,80〜115,85〜115,90〜115,95〜115,100〜115,105〜115,110〜115,10〜110,10超〜110,15〜110,20〜110,25〜110,30〜110,35〜110,40〜110,45〜110,50〜110,55〜110,60〜110,65〜110,70〜110,75〜110,80〜110,85〜110,90〜110,95〜110,100〜110,105〜110,10〜105,10超〜105,15〜105,20〜105,25〜105,30〜105,35〜105,40〜105,45〜105,50〜105,55〜105,60〜105,65〜105,70〜105,75〜105,80〜105,85〜105,90〜105,95〜105,100〜105,10〜100,10超〜100,15〜100,20〜100,25〜100,30〜100,35〜100,40〜100,45〜100,50〜100,55〜100,60〜100,65〜100,70〜100,75〜100,80〜100,85〜100,90〜100,95〜100,10〜95,10超〜95,15〜95,20〜95,25〜95,30〜95,35〜95,40〜95,45〜95,50〜95,55〜95,60〜95,65〜95,70〜95,75〜95,80〜95,85〜95,90〜95,10〜90,10超〜90,15〜90,20〜90,25〜90,30〜90,35〜90,40〜90,45〜90,50〜90,55〜90,60〜90,65〜90,70〜90,75〜90,80〜90,および85〜90。
【0101】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:10〜85,10超〜85,15〜85,20〜85,25〜85,30〜85,35〜85,40〜85,45〜85,50〜85,55〜85,60〜85,65〜85,70〜85,75〜85,80〜85,10〜80,10超〜80,15〜80,20〜80,25〜80,30〜80,35〜80,40〜80,45〜80,50〜80,55〜80,60〜80,65〜80,70〜80,75〜80,10〜75,10超〜75,15〜75,20〜75,25〜75,30〜75,35〜75,40〜75,45〜75,50〜75,55〜75,60〜75,65〜75,70〜75,10〜70,10超〜70,15〜70,20〜70,25〜70,30〜70,35〜70,40〜70,45〜70,50〜70,55〜70,60〜70,65〜70,10〜65,10超〜65,15〜65,20〜65,25〜65,30〜65,35〜65,40〜65,45〜65,50〜65,55〜65,60〜65,10〜60,10超〜60,15〜60,20〜60,25〜60,30〜60,35〜60,40〜60,45〜60,50〜60,55〜60,10〜55,10超〜55,15〜55,20〜55,25〜55,30〜55,35〜55,40〜55,45〜55,50〜55,10〜50,10超〜50,15〜50,20〜50,25〜50,30〜50,35〜50,40〜50,45〜50,10〜45,10超〜45,15〜45,20〜45,25〜45,30〜45,35〜45,40〜45,10〜40,10超〜40,15〜40,20〜40,25〜40,30〜40,35〜40,10〜35,10超〜35,15〜35,20〜35,25〜35,30〜35,10〜30,10超〜30,15〜30,20〜30,25〜30,10〜25,10超〜25,15〜25,20〜25,10〜20,10超〜20,15〜20,10〜15,および10超〜15。
【0102】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける非アセチル置換度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.5超〜0.55,0.5超〜0.6,0.5超〜0.65,0.5超〜0.7,0.5超〜0.75,0.5超〜0.8,0.5超〜0.85,0.5超〜0.9,0.5超〜0.95,0.5超〜1.0,0.5超〜1.05,0.5超〜1.1,0.5超〜1.15,0.5超〜1.2,0.5超〜1.25,0.5超〜1.3,0.5超〜1.35,0.5超〜1.4,0.5超〜1.45,0.5超〜1.5,0.5超〜1.55,0.5超〜1.6,0.5超〜1.65,0.5超〜1.7,0.5超〜1.75,0.5超〜1.8,0.5超〜1.85,0.35〜1.85,0.4〜1.85,0.45〜1.85,0.5〜1.85,0.55〜1.85,0.6〜1.85,0.65〜1.85,0.7〜1.85,0.75〜1.85,0.8〜1.85,0.85〜1.85,0.9〜1.85,0.95〜1.85,1.0〜1.85,1.05〜1.85,1.1〜1.85,1.15〜1.85,1.2〜1.85,1.25〜1.85,1.3〜1.85,1.35〜1.85,1.4〜1.85,1.45〜1.85,1.5〜1.85,1.55〜1.85,1.6〜1.85,1.65〜1.85,1.7〜1.85,1.75〜1.85,1.8〜1.85,0.35〜1.8,0.4〜1.8,0.45〜1.8,0.5〜1.8,0.55〜1.8,0.6〜1.8,0.65〜1.8,0.7〜1.8,0.75〜1.8,0.8〜1.8,0.85〜1.8,0.9〜1.8,0.95〜1.8,1.0〜1.8,1.05〜1.8,1.1〜1.8,1.15〜1.8,1.2〜1.8,1.25〜1.8,1.3〜1.8,1.35〜1.8,1.4〜1.8,1.45〜1.8,1.5〜1.8,1.55〜1.8,1.6〜1.8,1.65〜1.8,1.7〜1.8,1.75〜1.8,0.35〜1.75,0.4〜1.75,0.45〜1.75,0.5〜1.75,0.55〜1.75,0.6〜1.75,0.65〜1.75,0.7〜1.75,0.75〜1.75,0.8〜1.75,0.85〜1.75,0.9〜1.75,0.95〜1.75,1.0〜1.75,1.05〜1.75,1.1〜1.75,1.15〜1.75,1.2〜1.75,1.25〜1.75,1.3〜1.75,1.35〜1.75,1.4〜1.75,1.45〜1.75,1.5〜1.75,1.55〜1.75,1.6〜1.75,1.65〜1.75,1.7〜1.75,0.35〜1.7,0.4〜1.7,0.45〜1.7,0.5〜1.7,0.55〜1.7,0.6〜1.7,0.65〜1.7,0.7〜1.7,0.75〜1.7,0.8〜1.7,0.85〜1.7,0.9〜1.7,0.95〜1.7,1.0〜1.7,1.05〜1.7,1.1〜1.7,1.15〜1.7,1.2〜1.7,1.25〜1.7,1.3〜1.7,1.35〜1.7,1.4〜1.7,1.45〜1.7,1.5〜1.7,1.55〜1.7,1.6〜1.7,1.65〜1.7,0.35〜1.65,0.4〜1.65,0.45〜1.65,0.5〜1.65,0.55〜1.65,0.6〜1.65,0.65〜1.65,0.7〜1.65,0.75〜1.65,0.8〜1.65,0.85〜1.65,0.9〜1.65,0.95〜1.65,1.0〜1.65,1.05〜1.65,1.1〜1.65,1.15〜1.65,1.2〜1.65,1.25〜1.65,1.3〜1.65,1.35〜1.65,1.4〜1.65,1.45〜1.65,1.5〜1.65,1.55〜1.65,1.6〜1.65,0.35〜1.6,0.4〜1.6,0.45〜1.6,0.5〜1.6,0.55〜1.6,0.6〜1.6,0.65〜1.6,0.7〜1.6,0.75〜1.6,0.8〜1.6,0.85〜1.6,0.9〜1.6,0.95〜1.6,1.0〜1.6,1.05〜1.6,1.1〜1.6,1.15〜1.6,1.2〜1.6,1.25〜1.6,1.3〜1.6,1.35〜1.6,1.4〜1.6,1.45〜1.6,1.5〜1.6,1.55〜1.6,0.35〜1.55,0.4〜1.55,0.45〜1.55,0.5〜1.55,0.55〜1.55,0.6〜1.55,0.65〜1.55,0.7〜1.55,0.75〜1.55,0.8〜1.55,0.85〜1.55,0.9〜1.55,0.95〜1.55,1.0〜1.55,1.05〜1.55,1.1〜1.55,1.15〜1.55,1.2〜1.55,1.25〜1.55,1.3〜1.55,1.35〜1.55,1.4〜1.55,1.45〜1.55,および1.5〜1.55。
【0103】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける非アセチル置換度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.35〜1.5,0.4〜1.5,0.45〜1.5,0.5〜1.5,0.55〜1.5,0.6〜1.5,0.65〜1.5,0.7〜1.5,0.75〜1.5,0.8〜1.5,0.85〜1.5,0.9〜1.5,0.95〜1.5,1.0〜1.5,1.05〜1.5,1.1〜1.5,1.15〜1.5,1.2〜1.5,1.25〜1.5,1.3〜1.5,1.35〜1.5,1.4〜1.5,1.45〜1.5,0.35〜1.45,0.4〜1.45,0.45〜1.45,0.5〜1.45,0.55〜1.45,0.6〜1.45,0.65〜1.45,0.7〜1.45,0.75〜1.45,0.8〜1.45,0.85〜1.45,0.9〜1.45,0.95〜1.45,1.0〜1.45,1.05〜1.45,1.1〜1.45,1.15〜1.45,1.2〜1.45,1.25〜1.45,1.3〜1.45,1.35〜1.45,1.4〜1.45,0.35〜1.4,0.4〜1.4,0.45〜1.4,0.5〜1.4,0.55〜1.4,0.6〜1.4,0.65〜1.4,0.7〜1.4,0.75〜1.4,0.8〜1.4,0.85〜1.4,0.9〜1.4,0.95〜1.4,1.0〜1.4,1.05〜1.4,1.1〜1.4,1.15〜1.4,1.2〜1.4,1.25〜1.4,1.3〜1.4,1.35〜1.4,0.35〜1.35,0.4〜1.35,0.45〜1.35,0.5〜1.35,0.55〜1.35,0.6〜1.35,0.65〜1.35,0.7〜1.35,0.75〜1.35,0.8〜1.35,0.85〜1.35,0.9〜1.35,0.95〜1.35,1.0〜1.35,1.05〜1.35,1.1〜1.35,1.15〜1.35,1.2〜1.35,1.25〜1.35,1.3〜1.35,0.35〜1.3,0.4〜1.3,0.45〜1.3,0.5〜1.3,0.55〜1.3,0.6〜1.3,0.65〜1.3,0.7〜1.3,0.75〜1.3,0.8〜1.3,0.85〜1.3,0.9〜1.3,0.95〜1.3,1.0〜1.3,1.05〜1.3,1.1〜1.3,1.15〜1.3,1.2〜1.3,1.25〜1.3,0.35〜1.25,0.4〜1.25,0.45〜1.25,0.5〜1.25,0.55〜1.25,0.6〜1.25,0.65〜1.25,0.7〜1.25,0.75〜1.25,0.8〜1.25,0.85〜1.25,0.9〜1.25,0.95〜1.25,1.0〜1.25,1.05〜1.25,1.1〜1.25,1.15〜1.25,1.2〜1.25,0.35〜1.2,0.4〜1.2,0.45〜1.2,0.5〜1.2,0.55〜1.2,0.6〜1.2,0.65〜1.2,0.7〜1.2,0.75〜1.2,0.8〜1.2,0.85〜1.2,0.9〜1.2,0.95〜1.2,1.0〜1.2,1.05〜1.2,1.1〜1.2,1.15〜1.2,0.35〜1.15,0.4〜1.15,0.45〜1.15,0.5〜1.15,0.55〜1.15,0.6〜1.15,0.65〜1.15,0.7〜1.15,0.75〜1.15,0.8〜1.15,0.85〜1.15,0.9〜1.15,0.95〜1.15,1.0〜1.15,1.05〜1.15,1.1〜1.15,0.35〜1.1,0.4〜1.1,0.45〜1.1,0.5〜1.1,0.55〜1.1,0.6〜1.1,0.65〜1.1,0.7〜1.1,0.75〜1.1,0.8〜1.1,0.85〜1.1,0.9〜1.1,0.95〜1.1,1.0〜1.1,1.05〜1.1,0.35〜1.05,0.4〜1.05,0.45〜1.05,0.5〜1.05,0.55〜1.05,0.6〜1.05,0.65〜1.05,0.7〜1.05,0.75〜1.05,0.8〜1.05,0.85〜1.05,0.9〜1.05,0.95〜1.05,1.0〜1.05,0.35〜1.0,0.4〜1.0,0.45〜1.0,0.5〜1.0,0.55〜1.0,0.6〜1.0,0.65〜1.0,0.7〜1.0,0.75〜1.0,0.8〜1.0,0.85〜1.0,0.9〜1.0,および0.95〜1.0。
【0104】
別の態様において、本発明の混合エステルにおける非アセチル置換度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.35〜0.95,0.4〜0.95,0.45〜0.95,0.5〜0.95,0.55〜0.95,0.6〜0.95,0.65〜0.95,0.7〜0.95,0.75〜0.95,0.8〜0.95,0.85〜0.95,0.9〜0.95,0.35〜0.9,0.4〜0.9,0.45〜0.9,0.5〜0.9,0.55〜0.9,0.6〜0.9,0.65〜0.9,0.7〜0.9,0.75〜0.9,0.8〜0.9,0.85〜0.9,0.35〜0.85,0.4〜0.85,0.45〜0.85,0.5〜0.85,0.55〜0.85,0.6〜0.85,0.65〜0.85,0.7〜0.85,0.75〜0.85,0.8〜0.85,0.35〜0.8,0.4〜0.8,0.45〜0.8,0.5〜0.8,0.55〜0.8,0.6〜0.8,0.65〜0.8,0.7〜0.8,0.75〜0.8,0.35〜0.75,0.4〜0.75,0.45〜0.75,0.5〜0.75,0.55〜0.75,0.6〜0.75,0.65〜0.75,0.7〜0.75,0.35〜0.7,0.4〜0.7,0.45〜0.7,0.5〜0.7,0.55〜0.7,0.6〜0.7,0.65〜0.7,0.35〜0.65,0.4〜0.65,0.45〜0.65,0.5〜0.65,0.55〜0.65,0.6〜0.65,0.35〜0.6,0.4〜0.6,0.45〜0.6,0.5〜0.6,0.55〜0.6,0.35〜0.55,0.4〜0.55,0.45〜0.55,0.5〜0.55,0.35〜0.5,0.4〜0.5,0.45〜0.5,0.35〜0.45,0.4〜0.45,および0.35〜0.4。別の態様において、混合エステルにおける、非アセチルエステル置換度は、プロピオニル基とブチリル基との合計のものである。
【0105】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルのインヘレント粘度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.8〜1.9dL/g,0.85〜1.9dL/g,0.9〜1.9dL/g,0.95〜1.9dL/g,1.0〜1.9dL/g,1.05〜1.9dL/g,1.1〜1.9dL/g,1.15〜1.9dL/g,1.2〜1.9dL/g,1.25〜1.9dL/g,1.3〜1.9dL/g,1.35〜1.9dL/g,1.4〜1.9dL/g,1.45〜1.9dL/g,1.5〜1.9dL/g,1.55〜1.9dL/g,1.6〜1.9dL/g,1.65〜1.9dL/g,1.7〜1.9dL/g,1.75〜1.9dL/g,1.8〜1.9dL/g,0.8〜1.85dL/g,0.85〜1.85dL/g,0.9〜1.85dL/g,0.95〜1.85dL/g,1.0〜1.85dL/g,1.05〜1.85dL/g,1.1〜1.85dL/g,1.15〜1.85dL/g,1.2〜1.85dL/g,1.25〜1.85dL/g,1.3〜1.85dL/g,1.35〜1.85dL/g,1.4〜1.85dL/g,1.45〜1.85dL/g,1.5〜1.85dL/g,1.55〜1.85dL/g,1.6〜1.85dL/g,1.65〜1.85dL/g,1.7〜1.85dL/g,1.75〜1.85dL/g,1.8〜1.85dL/g,0.8〜1.8dL/g,0.85〜1.8dL/g,0.9〜1.8dL/g,0.95〜1.8dL/g,1.0〜1.8dL/g,1.05〜1.8dL/g,1.1〜1.8dL/g,1.15〜1.8dL/g,1.2〜1.8dL/g,1.25〜1.8dL/g,1.3〜1.8dL/g,1.35〜1.8dL/g,1.4〜1.8dL/g,1.45〜1.8dL/g,1.5〜1.8dL/g,1.55〜1.8dL/g,1.6〜1.8dL/g,1.65〜1.8dL/g,1.7〜1.8dL/g,1.75〜1.8dL/g,0.8〜1.75dL/g,0.85〜1.75dL/g,0.9〜1.75dL/g,0.95〜1.75dL/g,1.0〜1.75dL/g,1.05〜1.75dL/g,1.1〜1.75dL/g,1.15〜1.75dL/g,1.2〜1.75dL/g,1.25〜1.75dL/g,1.3〜1.75dL/g,1.35〜1.75dL/g,1.4〜1.75dL/g,1.45〜1.75dL/g,1.5〜1.75dL/g,1.55〜1.75dL/g,1.6〜1.75dL/g,1.65〜1.75dL/g,1.7〜1.75dL/g,0.8〜1.7dL/g,0.85〜1.7dL/g,0.9〜1.7dL/g,0.95〜1.7dL/g,1.0〜1.7dL/g,1.05〜1.7dL/g,1.1〜1.7dL/g,1.15〜1.7dL/g,1.2〜1.7dL/g,1.25〜1.7dL/g,1.3〜1.7dL/g,1.35〜1.7dL/g,1.4〜1.7dL/g,1.45〜1.7dL/g,1.5〜1.7dL/g,1.55〜1.7dL/g,1.6〜1.7dL/g,および1.65〜1.7dL/g。
【0106】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルのインヘレント粘度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.8〜1.65dL/g,0.85〜1.65dL/g,0.9〜1.65dL/g,0.95〜1.65dL/g,1.0〜1.65dL/g,1.05〜1.65dL/g,1.1〜1.65dL/g,1.15〜1.65dL/g,1.2〜1.65dL/g,1.25〜1.65dL/g,1.3〜1.65dL/g,1.35〜1.65dL/g,1.4〜1.65dL/g,1.45〜1.65dL/g,1.5〜1.65dL/g,1.55〜1.65dL/g,1.6〜1.65dL/g,0.8〜1.6dL/g,0.85〜1.6dL/g,0.9〜1.6dL/g,0.95〜1.6dL/g,1.0〜1.6dL/g,1.05〜1.6dL/g;1.1〜1.6dL/g,1.15〜1.6dL/g,1.2〜1.6dL/g,1.25〜1.6dL/g,1.3〜1.6dL/g,1.35〜1.6dL/g,1.4〜1.6dL/g,1.45〜1.6dL/g,1.5〜1.6dL/g,1.55〜1.6dL/g,0.8〜1.55dL/g,0.85〜1.55dL/g,0.9〜1.55dL/g,0.95〜1.55dL/g,1.0〜1.55dL/g,1.05〜1.55dL/g,1.1〜1.55dL/g,1.15〜1.55dL/g,1.2〜1.55dL/g,1.25〜1.55dL/g,1.3〜1.55dL/g,1.35〜1.55dL/g,1.4〜1.55dL/g,1.45〜1.55dL/g,1.5〜1.55dL/g,0.8〜1.5dL/g,0.85〜1.5dL/g,0.9〜1.5dL/g,0.95〜1.5dL/g,1.0〜1.5dL/g,1.05〜1.5dL/g,1.1〜1.5dL/g,1.15〜1.5dL/g,1.2〜1.5dL/g,1.25〜1.5dL/g,1.3〜1.5dL/g,1.35〜1.5dL/g,1.4〜1.5dL/g,1.45〜1.5dL/g,0.8〜1.45dL/g,0.85〜1.45dL/g,0.9〜1.45dL/g,0.95〜1.45dL/g,1.0〜1.45dL/g,1.05〜1.45dL/g,1.1〜1.45dL/g,1.15〜1.45dL/g,1.2〜1.45dL/g,1.25〜1.45dL/g,1.3〜1.45dL/g,1.35〜1.45dL/g,1.4〜1.45dL/g,0.8〜1.4dL/g,0.85〜1.4dL/g,0.9〜1.4dL/g,0.95〜1.4dL/g,1.0〜1.4dL/g,1.05〜1.4dL/g,1.1〜1.4dL/g,1.15〜1.4dL/g,1.2〜1.4dL/g,1.25〜1.4dL/g,1.3〜1.4dL/g,および1.35〜1.4dL/g。
【0107】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルのインヘレント粘度は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:0.8〜1.35dL/g,0.85〜1.35dL/g,0.9〜1.35dL/g,0.95〜1.35dL/g,1.0〜1.35dL/g,1.05〜1.35dL/g,1.1〜1.35dL/g,1.15〜1.35dL/g,1.2〜1.35dL/g,1.25〜1.35dL/g,1.3〜1.35dL/g,0.8〜1.3dL/g,0.85〜1.3dL/g,0.9〜1.3dL/g,0.95〜1.3dL/g,1.0〜1.3dL/g,1.05〜1.3dL/g,1.1〜1.3dL/g,1.15〜1.3dL/g,1.2〜1.3dL/g,1.25〜1.3dL/g,0.8〜1.25dL/g,0.85〜1.25dL/g,0.9〜1.25dL/g,0.95〜1.25dL/g,1.0〜1.25dL/g,1.05〜1.25dL/g,1.1〜1.25dL/g,1.15〜1.25dL/g,1.2〜1.25dL/g,0.8〜1.2dL/g,0.85〜1.2dL/g,0.9〜1.2dL/g,0.95〜1.2dL/g,1.0〜1.2dL/g,1.05〜1.2dL/g,1.1〜1.2dL/g,1.15〜1.2dL/g,0.8〜1.15dL/g,0.85〜1.15dL/g,0.9〜1.15dL/g,0.95〜1.15dL/g,1.0〜1.15dL/g,1.05〜1.15dL/g,1.1〜1.15dL/g,0.8〜1.1dL/g,0.85〜1.1dL/g,0.9〜1.1dL/g,0.95〜1.1dL/g,1.0〜1.1dL/g,1.05〜1.1dL/g,0.8〜1.05dL/g,0.85〜1.05dL/g,0.9〜1.05dL/g,0.95〜1.05dL/g,1.0〜1.05dL/g,0.8〜1.0dL/g,0.85〜1.0dL/g,0.9〜1.0dL/g,0.95〜1.0dL/g,0.8〜0.95dL/g,0.85〜0.95dL/g,0.9〜0.95dL/g,0.8〜0.9dL/g,0.85〜0.9dL/g,および0.8〜0.85dL/g。
【0108】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルのTgは、以下の範囲のうち少なくとも1つを有する:90℃〜210℃,90℃〜205℃,90℃〜200℃,90℃〜195℃,90℃〜190℃,90℃〜185℃,90℃〜180℃,90℃〜175℃,90℃〜170℃,90℃〜165℃,90℃〜160℃,90℃〜155℃,90℃〜150℃,90℃〜145℃,90℃〜140℃,90℃〜135℃,90℃〜130℃,90℃〜125℃,90℃〜120℃,190℃〜115℃,90℃〜110℃,90℃〜105℃,90℃〜100℃,90℃〜95℃,95℃〜210℃,95℃〜205℃,95℃〜200℃,95℃〜195℃,95℃〜195℃,95℃〜185℃,95℃〜180℃,95℃〜175℃,95℃〜170℃,95℃〜165℃,95℃〜160℃,95℃〜155℃,95℃〜150℃,95℃〜145℃,95℃〜140℃,95℃〜135℃,95℃〜130℃,95℃〜125℃,95℃〜120℃,95℃〜115℃,95℃〜110℃,95℃〜105℃,95℃〜100℃,100℃〜210℃,100℃〜205℃,100℃〜200℃,100℃〜195℃,100℃〜190℃,100℃〜185℃,100℃〜180℃,100℃〜175℃,100℃〜170℃,100℃〜165℃,100℃〜160℃,100℃〜155℃,100℃〜150℃,100℃〜145℃,100℃〜140℃,100℃〜135℃,100℃〜130℃,100℃〜125℃,100℃〜120℃,100℃〜115℃,100℃〜110℃,100℃〜105℃,105℃〜210℃,105℃〜205℃,105℃〜200℃,105℃〜195℃,105℃〜195℃,105℃〜185℃,105℃〜180℃,105℃〜175℃,105℃〜170℃,105℃〜165℃,105℃〜160℃,105℃〜155℃,105℃〜150℃,105℃〜145℃,105℃〜140℃,105℃〜135℃,105℃〜130℃,105℃〜125℃,105℃〜120℃,105℃〜115℃,105℃〜110℃,110℃〜210℃,110℃〜205℃,110℃〜200℃,110℃〜195℃,110℃〜190℃,110℃〜185℃,110℃〜180℃,110℃〜175℃,110℃〜170℃,110℃〜165℃,110℃〜160℃,110℃〜155℃,110℃〜150℃,110℃〜145℃,110℃〜140℃,110℃〜135℃,110℃〜130℃,110℃〜125℃,110℃〜120℃,および110℃〜115℃。
【0109】
別の態様において、本発明の混合エステルのTgは、以下の範囲のうち少なくとも1つを有する:115℃〜210℃,115℃〜205℃,115℃〜200℃,115℃〜195℃,115℃〜190℃,115℃〜185℃,115℃〜180℃,115℃〜175℃,115℃〜170℃,115℃〜165℃,115℃〜160℃,115℃〜155℃,115℃〜150℃,115℃〜145℃,115℃〜140℃,115℃〜135℃,115℃〜130℃,115℃〜125℃,115℃〜120℃,120℃〜210℃,120℃〜205℃,120℃〜200℃,120℃〜195℃,120℃〜190℃,120℃〜185℃,120℃〜180℃,120℃〜175℃,120℃〜170℃,120℃〜165℃,120℃〜160℃,120℃〜155℃,120℃〜150℃,120℃〜145℃,120℃〜140℃,120℃〜135℃,120℃〜130℃,120℃〜125℃,125℃〜210℃,125℃〜205℃,125℃〜200℃,125℃〜195℃,125℃〜190℃,125℃〜185℃,125℃〜180℃,125℃〜175℃,125℃〜170℃,125℃〜165℃,125℃〜160℃,125℃〜155℃,125℃〜150℃,125℃〜145℃,125℃〜140℃,125℃〜135℃,125℃〜130℃,130℃〜210℃,130℃〜205℃,130℃〜200℃,130℃〜195℃,130℃〜190℃,130℃〜185℃,130℃〜180℃,130℃〜175℃,130℃〜170℃,130℃〜165℃,130℃〜160℃,130℃〜155℃,130℃〜150℃,130℃〜145℃,130℃〜140℃,130℃〜135℃,135℃〜210℃,135℃〜205℃,135℃〜200℃,135℃〜195℃,135℃〜190℃,135℃〜185℃,135℃〜180℃,135℃〜175℃,135℃〜170℃,135℃〜165℃,135℃〜160℃,135℃〜155℃,135℃〜150℃,135℃〜145℃,および135℃〜140℃。
【0110】
別の態様において、本発明の混合エステルのTgは、以下の範囲のうち少なくとも1つを有する:140℃〜210℃,140℃〜205℃,140℃〜200℃,140℃〜195℃,140℃〜190℃,140℃〜185℃,140℃〜180℃,140℃〜175℃,140℃〜170℃,140℃〜165℃,140℃〜160℃,140℃〜155℃,140℃〜150℃,140℃〜145℃,145℃〜210℃,145℃〜205℃,145℃〜200℃,145℃〜195℃,145℃〜190℃,145℃〜185℃,145℃〜180℃,145℃〜175℃,145℃〜170℃,145℃〜165℃,145℃〜160℃,145℃〜155℃,145℃〜150℃,150℃〜210℃,150℃〜205℃,150℃〜200℃,150℃〜195℃,150℃〜190℃,150℃〜185℃,150℃〜180℃,150℃〜175℃,150℃〜170℃,150℃〜165℃,150℃〜160℃,150℃〜155℃,155℃〜210℃,155℃〜205℃,155℃〜200℃,155℃〜195℃,155℃〜190℃,155℃〜185℃,155℃〜180℃,155℃〜175℃,155℃〜170℃,155℃〜165℃,155℃〜160℃,160℃〜210℃,160℃〜205℃,160℃〜200℃,160℃〜195℃,160℃〜190℃,160℃〜185℃,160℃〜180℃,160℃〜175℃,160℃〜170℃,160℃〜165℃,165℃〜210℃,165℃〜205℃,165℃〜200℃,165℃〜195℃,165℃〜190℃,165℃〜185℃,165℃〜180℃,165℃〜175℃,165℃〜170℃,170℃〜210℃,170℃〜205℃,170℃〜200℃,170℃〜195℃,170℃〜190℃,170℃〜185℃,170℃〜180℃,170℃〜175℃,175℃〜210℃,175℃〜205℃,175℃〜200℃,175℃〜195℃,175℃〜190℃,175℃〜185℃,および175℃〜180℃。
【0111】
別の態様において、本発明の混合エステルのTgは、以下の範囲のうち少なくとも1つを有する:180℃〜210℃,180℃〜205℃,180℃〜200℃,180℃〜195℃,180℃〜190℃,180℃〜185℃,185℃〜210℃,185℃〜205℃,185℃〜200℃,185℃〜195℃,185℃〜190℃,190℃〜210℃,190℃〜205℃,190℃〜200℃,190℃〜195℃,195℃〜210℃,195℃〜205℃,195℃〜200℃,200℃〜210℃,200℃〜205℃,および205℃〜210℃。
【0112】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルの融点は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:180℃〜285℃,180℃〜280℃,180℃〜275℃,180℃〜270℃,180℃〜265℃,180℃〜260℃,180℃〜255℃,180℃〜250℃,180℃〜245℃,180℃〜240℃,180℃〜235℃,180℃〜230℃,180℃〜225℃,180℃〜220℃,180℃〜215℃,180℃〜210℃,180℃〜205℃,180℃〜200℃,180℃〜195℃,180℃〜190℃,180℃〜185℃,185℃〜285℃,185℃〜280℃,185℃〜275℃,185℃〜270℃,185℃〜265℃,185℃〜260℃,185℃〜255℃,185℃〜250℃,185℃〜245℃,185℃〜240℃,185℃〜235℃,185℃〜230℃,185℃〜225℃,185℃〜220℃,185℃〜215℃,185℃〜210℃,185℃〜205℃,185℃〜200℃,185℃〜195℃,185℃〜190℃,190℃〜285℃,190℃〜280℃,190℃〜275℃,190℃〜270℃,190℃〜265℃,190℃〜260℃,190℃〜255℃,190℃〜250℃,190℃〜245℃,190℃〜240℃,190℃〜235℃,190℃〜230℃,190℃〜225℃,190℃〜220℃,190℃〜215℃,190℃〜210℃,190℃〜205℃,190℃〜200℃,190℃〜195℃,195℃〜285℃,195℃〜280℃,195℃〜275℃,195℃〜270℃,195℃〜265℃,195℃〜260℃,195℃〜255℃,195℃〜250℃,195℃〜245℃,195℃〜240℃,195℃〜235℃,195℃〜230℃,195℃〜225℃,195℃〜220℃,195℃〜215℃,195℃〜210℃,195℃〜205℃,195℃〜200℃,200℃〜285℃,200℃〜280℃,200℃〜275℃,200℃〜270℃,200℃〜265℃,200℃〜260℃,200℃〜255℃,200℃〜250℃,200℃〜245℃,200℃〜240℃,200℃〜235℃,200℃〜230℃,200℃〜225℃,200℃〜220℃,200℃〜215℃,200℃〜210℃,200℃〜205℃,205℃〜285℃,205℃〜280℃,205℃〜275℃,205℃〜270℃,205℃〜265℃,205℃〜260℃,205℃〜255℃,205℃〜250℃,205℃〜245℃,205℃〜240℃,205℃〜235℃,205℃〜230℃,205℃〜225℃,205℃〜220℃,205℃〜215℃,205℃〜210℃,210℃〜285℃,210℃〜280℃,210℃〜275℃,210℃〜270℃,210℃〜265℃,210℃〜260℃,210℃〜255℃,210℃〜250℃,210℃〜245℃,210℃〜240℃,210℃〜235℃,210℃〜230℃,210℃〜225℃,210℃〜220℃,および210℃〜215℃。
【0113】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルの融点は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:215℃〜285℃,215℃〜280℃,215℃〜275℃,215℃〜270℃,215℃〜265℃,215℃〜260℃,215℃〜255℃,215℃〜250℃,215℃〜245℃,215℃〜240℃,215℃〜235℃,215℃〜230℃,215℃〜225℃,215℃〜220℃,220℃〜285℃,220℃〜280℃,220℃〜275℃,220℃〜270℃,220℃〜265℃,220℃〜260℃,220℃〜255℃,220℃〜250℃,220℃〜245℃,220℃〜240℃,220℃〜235℃,220℃〜230℃,220℃〜225℃.225℃〜285℃,225℃〜280℃,225℃〜275℃,225℃〜270℃,225℃〜265℃,225℃〜260℃,225℃〜255℃,225℃〜250℃,225℃〜245℃,225℃〜240℃,225℃〜235℃,225℃〜230℃,230℃〜285℃,230℃〜280℃,230℃〜275℃,230℃〜270℃,230℃〜265℃,230℃〜260℃,230℃〜255℃,230℃〜250℃,230℃〜245℃,230℃〜240℃,230℃〜235℃,235℃〜285℃,235℃〜280℃,235℃〜275℃,235℃〜270℃,235℃〜265℃,235℃〜260℃,235℃〜255℃,235℃〜250℃,235℃〜245℃,235℃〜240℃,240℃〜285℃,240℃〜280℃,240℃〜275℃,240℃〜270℃,240℃〜265℃,240℃〜260℃,240℃〜255℃,240℃〜250℃,240℃〜245℃,245℃〜285℃,245℃〜280℃,245℃〜275℃,245℃〜270℃,245℃〜265℃,245℃〜260℃,245℃〜255℃,245℃〜250℃,250℃〜285℃,250℃〜280℃,250℃〜275℃,250℃〜270℃,250℃〜265℃,250℃〜260℃,250℃〜255℃,255℃〜285℃,255℃〜280℃,255℃〜275℃,255℃〜270℃,255℃〜265℃,255℃〜260℃,260℃〜285℃,260℃〜280℃,260℃〜275℃,260℃〜270℃,260℃〜265℃,265℃〜285℃,265℃〜280℃,265℃〜275℃,265℃〜270℃,270℃〜285℃,270℃〜280℃,270℃〜275℃,275℃〜285℃,275℃〜280℃,および285℃〜285℃。
【0114】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRe光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:+5nm以下,−100nm〜+5nm,−100nm〜0nm,−100nm〜−5nm,−100nm〜−10nm,−100nm〜−15nm,−100nm〜−20nm,−100nm〜−25nm,−100nm〜−30nm,−100nm〜−35nm,−100nm〜−40nm,−100nm〜−45nm,−100nm〜−50nm,−100nm〜−55nm,−100nm〜−60nm,−100nm〜−65nm,−100nm〜−70nm,−100nm〜−75nm,−100nm〜−80nm,−100nm〜−85nm,−100nm〜−90nm,−100nm〜−95nm,−95nm〜+5nm,−95nm〜0nm,−95nm〜−5nm,−95nm〜−10nm,−95nm〜−15nm,−95nm〜−20nm,−95nm〜−25nm,−95nm〜−30nm,−95nm〜−35nm,−95nm〜−40nm,−95nm〜−45nm,−95nm〜−50nm,−95nm〜−55nm,−95nm〜−60nm,−95nm〜−65nm,−95nm〜−70nm,−95nm〜−75nm,−95nm〜−80nm,−95nm〜−85nm,−95nm〜−90nm,−90nm〜+5nm,−90nm〜0nm,−90nm〜−5nm,−90nm〜−10nm,−90nm〜−15nm,−90nm〜−20nm,−90nm〜−25nm,−90nm〜−30nm,−90nm〜−35nm,−90nm〜−40nm,−90nm〜−45nm,−90nm〜−50nm,−90nm〜−55nm,−90nm〜−60nm,−90nm〜−65nm,−90nm〜−70nm,−90nm〜−75nm,−90nm〜−80nm,−90nm〜−85nm,−85nm〜+5nm,−85nm〜0nm,−85nm〜−5nm,−85nm〜−10nm,−85nm〜−15nm,−85nm〜−20nm,−85nm〜−25nm,−85nm〜−30nm,−85nm〜−35nm,−85nm〜−40nm,−85nm〜−45nm,−85nm〜−50nm,−85nm〜−55nm,−85nm〜−60nm,−85nm〜−65nm,−85nm〜−70nm,−85nm〜−75nm,−85nm〜−80nm,−80nm〜+5nm,−80nm〜0nm,−80nm〜−5nm,−80nm〜−10nm,−80nm〜−15nm,−80nm〜−20nm,−80nm〜−25nm,−80nm〜−30nm,−80nm〜−35nm,−80nm〜−40nm,−80nm〜−45nm,−80nm〜−50nm,−80nm〜−55nm,−80nm〜−60nm,−80nm〜−65nm,−80nm〜−70nm,および−80nm〜−75nm。
【0115】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRe光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:−75nm〜+5nm,−75nm〜0nm,−75nm〜−5nm,−75nm〜−10nm,−75nm〜−15nm,−75nm〜−20nm,−75nm〜−25nm,−75nm〜−30nm,−75nm〜−35nm,−75nm〜−40nm,−75nm〜−45nm,−75nm〜−50nm,−75nm〜−55nm,−75nm〜−60nm,−75nm〜−65nm,−75nm〜−70nm,−70nm〜+5nm,−70nm〜0nm,−70nm〜−5nm,−70nm〜−10nm,−70nm〜−15nm,−70nm〜−20nm,−70nm〜−25nm,−70nm〜−30nm,−70nm〜−35nm,−70nm〜−40nm,−70nm〜−45nm,−70nm〜−50nm,−70nm〜−55nm,−70nm〜−60nm,−70nm〜−65nm,−65nm〜+5nm,−65nm〜0nm,−65nm〜−5nm,−65nm〜−10nm,−65nm〜−15nm,−65nm〜−20nm,−65nm〜−25nm,−65nm〜−30nm,−65nm〜−35nm,−65nm〜−40nm,−65nm〜−45nm,−65nm〜−50nm,−65nm〜−55nm,−65nm〜−60nm,−60nm〜+5nm,−60nm〜0nm,−60nm〜−5nm,−60nm〜−10nm,−60nm〜−15nm,−60nm〜−20nm,−60nm〜−25nm,−60nm〜−30nm,−60nm〜−35nm,−60nm〜−40nm,−60nm〜−45nm,−60nm〜−50nm,−60nm〜−55nm,−55nm〜+5nm,−55nm〜0nm,−55nm〜−5nm,−55nm〜−10nm,−55nm〜−15nm,−55nm〜−20nm,−55nm〜−25nm,−55nm〜−30nm,−55nm〜−35nm,−55nm〜−40nm,−55nm〜−45nm,−55nm〜−50nm,−50nm〜+5nm,−50nm〜0nm,−50nm〜−5nm,−50nm〜−10nm,−50nm〜−15nm,−50nm〜−20nm,−50nm〜−25nm,−50nm〜−30nm,−50nm〜−35nm,−50nm〜−40nm,および−50nm〜−45nm。
【0116】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRe光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:−45nm〜+5nm,−45nm〜0nm,−45nm〜−5nm,−45nm〜−10nm,−45nm〜−15nm,−45nm〜−20nm,−45nm〜−25nm,−45nm〜−30nm,−45nm〜−35nm,−45nm〜−40nm,−40nm〜+5nm,−40nm〜0nm,−40nm〜−5nm,−40nm〜−10nm,−40nm〜−15nm,−40nm〜−20nm,−40nm〜−25nm,−40nm〜−30nm,−40nm〜−35nm,−35nm〜+5nm,−35nm〜0nm,−35nm〜−5nm,−35nm〜−10nm,−35nm〜−15nm,−35nm〜−20nm,−35nm〜−25nm,−35nm〜−30nm,−30nm〜+5nm,−30nm〜0nm,−30nm〜−5nm,−30nm〜−10nm,−30nm〜−15nm,−30nm〜−20nm,−30nm〜−25nm,−25nm〜+5nm,−25nm〜0nm,−25nm〜−5nm,−25nm〜−10nm,−25nm〜−15nm,−25nm〜−20nm,−20nm〜+5nm,−20nm〜0nm,−20nm〜−5nm,−20nm〜−10nm,−20nm〜−15nm,−15nm〜+5nm,−15nm〜0nm,−15nm〜−5nm,−15nm〜−10nm,−10nm〜+5nm,−10nm〜0nm,−10nm〜−5nm,−5nm〜+5nm,−5nm〜0nm,および0nm〜+5nm。
【0117】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRe光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:−5nm〜+5nm,−5nm〜+4nm,−5nm〜+3nm,−5nm〜+2nm,−5nm〜+1nm,−5nm〜0nm,−5nm〜−1nm,−5nm〜−2nm,−5nm〜−3nm,−5nm〜−4nm,−4nm〜+5nm,−4nm〜+4nm,−4nm〜+3nm,−4nm〜+2nm,−4nm〜+1nm,−4nm〜0nm,−4nm〜−1nm,−4nm〜−2nm,−4nm〜−3nm,−3nm〜+5nm,−3nm〜+4nm,−3nm〜+3nm,−3nm〜+2nm,−3nm〜+1nm,−3nm〜0nm,−3nm〜−1nm,−3nm〜−2nm,−2nm〜+5nm,−2nm〜+4nm,−2nm〜+3nm,−2nm〜+2nm,−2nm〜+1nm,−2nm〜0nm,−2nm〜−1nm,−1nm〜+5nm,−1nm〜+4nm,−1nm〜+3nm,−1nm〜+2nm,−1nm〜+1nm,−1nm〜0nm,0nm〜+5nm,0nm〜+4nm,0nm〜+3nm,0nm〜+2nm,0nm〜+1nm,+1nm〜+5nm,+1nm〜+4nm,+1nm〜+3nm,+1nm〜+2nm,+2nm〜+5nm,+2nm〜+4nm,+2nm〜+3nm,+3nm〜+5nm,+3nm〜+4nm,および+4nm〜+5nm。
【0118】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRth光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:−10nm以上,−10nm〜+100nm,−10nm〜+95nm,−10nm〜+90nm,−10nm〜+85nm,−10nm〜+80nm,−10nm〜+75nm,−10nm〜+70nm,−10nm〜+65nm,−10nm〜+60nm,−10nm〜+55nm,−10nm〜+50nm,−10nm〜+45nm,−10nm〜+40nm,−10nm〜+35nm,−10nm〜+30nm,−10nm〜+25nm,−10nm〜+20nm,−10nm〜+15nm,−10nm〜+10nm,−10nm〜+5nm,−10nm〜0nm,−10nm〜−5nm,−5nm〜+100nm,−5nm〜+95nm,−5nm〜+90nm,−5nm〜+85nm,−5nm〜+80nm,−5nm〜+75nm,−5nm〜+70nm,−5nm〜+65nm,−5nm〜+60nm,−5nm〜+55nm,−5nm〜+50nm,−5nm〜+45nm,−5nm〜+40nm,−5nm〜+35nm,−5nm〜+30nm,−5nm〜+25nm,−5nm〜+20nm,−5nm〜+15nm,−5nm〜+10nm,−5nm〜+5nm,−5nm〜0nm,0nm〜+100nm,0nm〜+95nm,0nm〜+90nm,0nm〜+85nm,0nm〜+80nm,0nm〜+75nm,0nm〜+70nm,0nm〜+65nm,0nm〜+60nm,0nm〜+55nm,0nm〜+50nm,0nm〜+45nm,0nm〜+40nm,0nm〜+35nm,0nm〜+30nm,0nm〜+25nm,0nm〜+20nm,0nm〜+15nm,0nm〜+10nm,0nm〜+5nm,+5nm〜+100nm,+5nm〜+95nm,+5nm〜+90nm,+5nm〜+85nm,+5nm〜+80nm,+5nm〜+75nm,+5nm〜+70nm,+5nm〜+65nm,+5nm〜+60nm,+5nm〜+55nm,+5nm〜+50nm,+5nm〜+45nm,+5nm〜+40nm,+5nm〜+35nm,+5nm〜+30nm,+5nm〜+25nm,+5nm〜+20nm,+5nm〜+15nm,および+5nm〜+10nm。
【0119】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRth光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:+10nm〜+100nm,+10nm〜+95nm,+10nm〜+90nm,+10nm〜+85nm,+10nm〜+80nm,+10nm〜+75nm,+10nm〜+70nm,+10nm〜+65nm,+10nm〜+60nm,+10nm〜+55nm,+10nm〜+50nm,+10nm〜+45nm,+10nm〜+40nm,+10nm〜+35nm,+10nm〜+30nm,+10nm〜+25nm,+10nm〜+20nm,+10nm〜+15nm,+15nm〜+100nm,+15nm〜+95nm,+15nm〜+90nm,+15nm〜+85nm,+15nm〜+80nm,+15nm〜+75nm,+15nm〜+70nm,+15nm〜+65nm,+15nm〜+60nm,+15nm〜+55nm,+15nm〜+50nm,+15nm〜+45nm,+15nm〜+40nm,+15nm〜+35nm,+15nm〜+30nm,+15nm〜+25nm,+15nm〜+20nm,+20nm〜+100nm,+20nm〜+95nm,+20nm〜+90nm,+20nm〜+85nm,+20nm〜+80nm,+20nm〜+75nm,+20nm〜+70nm,+20nm〜+65nm,+20nm〜+60nm,+20nm〜+55nm,+20nm〜+50nm,+20nm〜+45nm,+20nm〜+40nm,+20nm〜+35nm,+20nm〜+30nm,+20nm〜+25nm,+25nm〜+100nm,+25nm〜+95nm,+25nm〜+90nm,+25nm〜+85nm,+25nm〜+80nm,+25nm〜+75nm,+25nm〜+70nm,+25nm〜+65nm,+25nm〜+60nm,+25nm〜+55nm,+25nm〜+50nm,+25nm〜+45nm,+25nm〜+40nm,+25nm〜+35nm,+25nm〜+30nm,+30nm〜+100nm,+30nm〜+95nm,+30nm〜+90nm,+30nm〜+85nm,+30nm〜+80nm,+30nm〜+75nm,+30nm〜+70nm,+30nm〜+65nm,+30nm〜+60nm,+30nm〜+55nm,+30nm〜+50nm,+30nm〜+45nm,+30nm〜+40nm,+30nm〜+35nm,+35nm〜+100nm,+35nm〜+95nm,+35nm〜+90nm,+35nm〜+85nm,+35nm〜+80nm,+35nm〜+75nm,+35nm〜+70nm,+35nm〜+65nm,+35nm〜+60nm,+35nm〜+55nm,+35nm〜+50nm,+35nm〜+45nm,および+35nm〜+40nm。
【0120】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRth光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:+40nm〜+100nm,+40nm〜+95nm,+40nm〜+90nm,+40nm〜+85nm,+40nm〜+80nm,+40nm〜+75nm,+40nm〜+70nm,+40nm〜+65nm,+40nm〜+60nm,+40nm〜+55nm,+40nm〜+50nm,+40nm〜+45nm,+45nm〜+100nm,+45nm〜+95nm,+45nm〜+90nm,+45nm〜+85nm,+45nm〜+80nm,+45nm〜+75nm,+45nm〜+70nm,+45nm〜+65nm,+45nm〜+60nm,+45nm〜+55nm,+45nm〜+50nm,+50nm〜+100nm,+50nm〜+95nm,+50nm〜+90nm,+50nm〜+85nm,+50nm〜+80nm,+50nm〜+75nm,+50nm〜+70nm,+50nm〜+65nm,+50nm〜+60nm,+50nm〜+55nm,+55nm〜+100nm,+55nm〜+95nm,+55nm〜+90nm,+55nm〜+85nm,+55nm〜+80nm,+55nm〜+75nm,+55nm〜+70nm,+55nm〜+65nm,+55nm〜+60nm,+60nm〜+100nm,+60nm〜+95nm,+60nm〜+90nm,+60nm〜+85nm,+60nm〜+80nm,+60nm〜+75nm,+60nm〜+70nm,+60nm〜+65nm,+65nm〜+100nm,+65nm〜+95nm,+65nm〜+90nm,+65nm〜+85nm,+65nm〜+80nm,+65nm〜+75nm,+65nm〜+70nm,+70nm〜+100nm,+70nm〜+95nm,+70nm〜+90nm,+70nm〜+85nm,+70nm〜+80nm,+70nm〜+75nm,+75nm〜+100nm,+75nm〜+95nm,+75nm〜+90nm,+75nm〜+85nm,+75nm〜+80nm,+80nm〜+100nm,+80nm〜+95nm,+80nm〜+90nm,+80nm〜+85nm,+85nm〜+100nm,+85nm〜+95nm,+85nm〜+90nm,+90nm〜+100nm,+90nm〜+95nm,および+95nm〜+100nm。
【0121】
別の態様において、本発明の混合セルロースエステルから作製されたフィルムのRth光学レタデーション値(厚み80μmのフィルムに関して規格化したもの)は、以下の範囲のうちの1つの中から選択される:−5nm〜+5nm,−5nm〜+4nm,−5nm〜+3nm,−5nm〜+2nm,−5nm〜+1nm,−5nm〜0nm,−5nm〜−1nm,−5nm〜−2nm,−5nm〜−3nm,−5nm〜−4nm,−4nm〜+5nm,−4nm〜+4nm,−4nm〜+3nm,−4nm〜+2nm,−4nm〜+1nm,−4nm〜0nm,−4nm〜−1nm,−4nm〜−2nm,−4nm〜−3nm,−3nm〜+5nm,−3nm〜+4nm,−3nm〜+3nm,−3nm〜+2nm,−3nm〜+1nm,−3nm〜0nm,−3nm〜−1nm,−3nm〜−2nm,−2nm〜+5nm,−2nm〜+4nm,−2nm〜+3nm,−2nm〜+2nm,−2nm〜+1nm,−2nm〜0nm,−2nm〜−1nm,−1nm〜+5nm,−1nm〜+4nm,−1nm〜+3nm,−1nm〜+2nm,−1nm〜+1nm,−1nm〜0nm,0nm〜+5nm,0nm〜+4nm,0nm〜+3nm,0nm〜+2nm,0nm〜+1nm,+1nm〜+5nm,+1nm〜+4nm,+1nm〜+3nm,+1nm〜+2nm,+2nm〜+5nm,+2nm〜+4nm,+2nm〜+3nm,+3nm〜+5nm,+3nm〜+4nm,および+4nm〜+5nm。
【0122】
本発明の混合エステルは、本明細書で記載する非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する少なくとも1つの比、および、本明細書で記載する少なくとも1つの非アセチルエステル置換度を有することができることが(特記がない限り)意図される。本発明の混合エステルは、本明細書で記載する非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する少なくとも1つの比、および、本明細書で記載する少なくとも1つのTg範囲を有することができることも(特記がない限り)意図される。本発明の混合エステルは、本明細書で記載する非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する少なくとも1つの比、および、本明細書で記載する少なくとも1つの融点範囲を有することができることも(特記がない限り)意図される。本発明の混合エステルは、本明細書で記載する少なくとも1つのTg範囲および本明細書で記載する少なくとも1つの非アセチルエステル置換度(DSNAC)を有することができることも(特記がない限り)意図される。本発明の混合エステルは、以下の可変範囲のうち少なくとも2つの任意の組合せを有することができることも(特記がない限り)意図される:a)本明細書で記載する非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比;b)本明細書で記載する非アセチルエステル置換;c)本明細書で記載するTg範囲;d)本明細書で記載する融点範囲。
【0123】
本発明の混合エステルから作製されるフィルムは、本明細書で記載する少なくとも1つのRe光学レタデーション値、および本明細書で記載する少なくとも1つのRth光学レタデーション値を有することができることが意図される。
【0124】
本発明の一態様は、溶媒キャストフィルムであり、80ミクロンフィルム溶媒キャスト(または、Re値が厚み80μmに規格化されている種々の厚みのフィルム)は、|Re|<5およびRth−10nm超(この態様で用いるReは「絶対値」括弧を有することに留意されたい)を有する。別の態様において、Rthは0nmまたはこれより大きい。
【0125】
別の態様は、溶媒キャストフィルムであり、厚みが約30〜約130ミクロンの間であり、そしてフィルム複屈折が、|Δe|<0.0000625およびΔth>−0.000125のようなものである。別の態様において、Δth>0である。
【0126】
本発明の別の態様は、溶融押出しフィルムであり、80ミクロンフィルム(または、Re値が厚み80μmに規格化されている種々の厚みのフィルム)が、|Re|<10nmおよびRth>−10である。別の態様において、Rthは0nmまたはこれより大きい。
【0127】
別の態様において、本発明の混合アセテートエステルから形成されたフィルムは、上記のRe値をフィルム厚み80μmで除したものに対応するΔeを有する。別の態様において、本発明の混合アセテートエステルから形成されたフィルムは、上記のRth値をフィルム厚み80μmで除したものに対応するΔthを有する。
【0128】
本発明の一態様において、アセチル置換度1.9およびプロピオニル置換度1.0を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、アセチル置換度1.85〜1.95およびプロピオニル置換度0.95〜1.05を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、アセチル置換度1.8〜2.0およびプロピオニル置換度0.9〜1.1を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、アセチル置換度1.8〜2.0およびプロピオニル置換度0.9〜1.1を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。
【0129】
別の態様において、Rth値 10およびRe +1を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルから作製されたフィルムは、本発明から除外される。別の態様において、Rth値 8〜12およびRe 0〜+2を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、Rth値 5〜15およびRe −5〜+5を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。
【0130】
別の態様において、先の段落で記載する溶媒キャストフィルムのみが本発明から除外されるが、溶媒キャストと異なる任意の他の方法によって作製されたフィルムは本発明の一部に残る。
【0131】
本発明の別の態様において、アセチル置換度1.9およびプロピオニル置換度1.08を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。本発明の別の態様において、アセチル置換度1.85〜1.95およびプロピオニル置換度1.0〜1.15を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、アセチル置換度1.8〜2.0およびプロピオニル置換度0.95〜1.2を同時に有する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。
【0132】
別の態様において、Rth値 7およびRe +1を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルから作製されたフィルムは、本発明から除外される。別の態様において、Rth値 5〜9およびRe 0〜+2を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。別の態様において、Rth値 0〜15およびRe −5〜+5を同時に有する先の段落で記載する混合セルロースエステルは、本発明から除外される。
【0133】
別の態様において、先の段落で記載する溶媒キャストフィルムのみが、本発明から除外されるが、溶媒キャストと異なる任意の他の方法によって作製されたフィルムは本発明の一部に残る。
【0134】
本発明の一態様は、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステル(ここで、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である)を含むフィルムまたはシートを対象とする。
【0135】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステル(ここで、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である)を含む液晶ディスプレイフィルムを対象とする。別の態様において、液晶ディスプレイフィルムは、少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステル(ここで、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である)を含む。別の態様において、液晶ディスプレイフィルムは、少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルを含み、該混合セルロースエステルのガラス転移温度が100℃〜200℃であり;そして非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である。
【0136】
本発明の別の態様は、Re光学レタデーション値−100〜+5nmを有する少なくとも1つのフィルムを含む液晶ディスプレイフィルムを対象とし;これは、少なくとも1つのアセチル基を含み、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、混合セルロースエステルを含む。
【0137】
本発明の別の態様は、Rth光学レタデーション値−10〜+100nmを有する少なくとも1つのフィルムを含む3つの前述の段落のいずれかに記載の液晶ディスプレイフィルムを対象とする。
【0138】
本発明の別の態様は、4つの前述の段落のいずれかに記載の液晶ディスプレイフィルムを対象とし、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200である。
【0139】
本発明の別の態様は、5つの前述の段落のいずれかに記載の液晶ディスプレイフィルムを対象とし、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜100である。
【0140】
本発明の別の態様は、Re光学レタデーション値−100〜+5nmおよびRth光学レタデーション値0〜+100nmを有する、6つの前述の段落のいずれかに記載の液晶ディスプレイフィルムを対象とする。
【0141】
本発明の別の態様は、7つの前述の段落のいずれかに記載の液晶ディスプレイフィルムを対象とし、該フィルムが偏光子フィルム、保護フィルム、および/または補償フィルムである。本発明の別の態様は、モールド成形された光学部品,例えばレンズ、を対象とする。
【0142】
非アセチルエステル含有量はまた、セルロースエステルの固有複屈折の低減における役割を果たすと初期には予測されていなかった。混合エステルでの我々自身の実験は、ヒドロキシルレベルが関係変数のみでないことを(これがデータを完全には説明しなかったことで)示した。例えば、本発明の過程において形成(および80ミクロン厚に規格化)されたフィルムのRth値を図2中に示す。グラフ上に引いた線は、単純に一般的な傾向を示す。観察されるように、Rthの強い低減が、DS(OH)増大とともに存在する。しかし、データにはなお無視できない散乱が存在する。この散乱の幾らかかは、標準試験誤差に起因するが、その一部は別の従来の特定されていない変数(これはまたRthに影響する)を表している。Rthが非アセチルエステルのDS(例えば、DS(Pr+Bu))に対してプロットされてはじめて、我々は驚くべきことにレタデーションもまたこの非アセチルエステル含有量の強い関数であることを観測した(図3を参照のこと)。更なる分析は、「ヒドロキシル比」といいDSNAC/DSOHと定義される新たなパラメータが、複屈折挙動のより良好な予測を与えたことを示した(図4に示す通り)。データは、無次元のヒドロキシル比に対してプロットする場合、DS(OH)またはDS(Pr+Bu)の単独のいずれと比べても大幅により良好に規定されるパターンに従う(すなわち、データ散乱がより少ない)ことに留意されたい。
【0143】
本発明の一態様において、80ミクロンのフィルムは、約10%のトリフェニルホスフェートを可塑剤として伴って溶媒キャストされる。
【0144】
一態様において、本発明のレジンが80ミクロンのフィルムに8wt%のトリフェニルホスフェート(TPP)可塑剤で90/10塩化メチレン/メタノール溶液(少量のブタノールを任意に添加してブラッシング(blushing)を低減できる)を用いて溶媒キャストされる場合、フィルムのRth値は、633nmにて−25nm〜+100nmの間である。溶媒キャストフィルムの他の態様は、Rth −5nm〜+5nmの間を、ゼロ−TAC用途のために有し、そして更に他の態様において、フィルムは、Rth 0〜+100nmの間を、負の複屈折の用途のために有する。一態様において、Re値は−5nm〜+5nmの間(キャストしたままでのフィルムについて)であることができるが、この値は、後から、具体的な用途のために例えばフィルムの延伸によって変更できる。
【0145】
溶融押出し用途のために、本発明で形成されたフィルムは、極めて低いかまたは正のRth値を、ゼロ−TACおよび負の複屈折の用途のそれぞれのための溶媒キャストと同様に有することになる。従来の正の複屈折のセルロース誘導体の押出し加工では、目標は通常、配向を可能な限り低減させてレタデーションを「耐えうる」レベル内に保つことである。これはしばしば、ダイとキャスティングロールとの間の極めて大きいギャップ間隔(低いプロセス安定性および/または低いライン速度を招来する可能性がある)を意味する。ゼロ複屈折 ゼロ−TAC用途を目的とする低ヒドロキシルレジンから形成されたフィルムでは、より高いライン速度で、任意の「特別な予防措置」なしでフィルムを形成することが可能である。フィルムがフィルム応力における任意の変動に対して光学的により敏感でなくなるからである。これらの低ヒドロキシルレジンは、より低い応力光学係数(これらを加工に対してより堅牢にする)を有する。
【0146】
別の態様において、低ヒドロキシルセルロースアセテート,例えばセルローストリアセテートであって、置換度(DS)が約2.9超で、好適な溶解性、製造可能性および溶融加工可能性を有さないものは、本発明から除外される。
【0147】
本発明の一態様において、最終物質中の総硫黄レベルは75ppm未満である。別の態様において、最終物質中の総硫黄レベルは50ppm未満であり、そして別の態様において、30ppm未満である。一態様において、物質は金属塩で安定化される。一態様において、物質は、炭酸マグネシウムで(例えば、1.5〜2.25Mg/S(モル)で)安定化される。別の態様において、物質はまた、カルシウムプロピオネートで(例えば、比1.25〜2.00で)安定化される。適切に安定化されない場合は、ポリマーは過剰な着色および/または分子量低下を示し、これをディスプレイフィルム用途に対して不適切にする可能性がある。
【0148】
「インヘレント粘度」または「IV」は、60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン中、濃度0.5g/100mlで25℃にて評価される。本発明の混合セルロースエステルのインヘレント粘度は、典型的には、約0.8〜1.9dL/gの間である。本発明の一態様において、混合セルロースエステルのIVは、1.1〜1.9dL/gの間である。
【0149】
融点に限定はないが、典型的な範囲は約180〜275℃である。従って、本発明の一態様において、本発明の混合エステルは融点180〜275℃を有する。別の態様において、範囲は200〜260℃である。更に、ポリマーは、可塑剤レベル10wt%以下で溶融加工可能である−言い換えると、有用なフィルムに溶融押出しできるか、または部品に射出成形できる−のがよい。より高レベルの可塑剤を使用して任意のセルロース誘導体、更にはセルローストリアセテート、を溶融加工可能にできるが、これらのレベルは、他の特性(例えばモジュラス)の許容できない悪化を招来する可能性がある。一態様において、最小限の10wt%のプロピオネートエステルまたはブチレートエステルを使用する。この態様は、溶融加工可能な名目上高DSのセルロース誘導体を製造する。このレベル未満であると、必要な加工温度が高すぎる可能性があり、そしてポリマーが過度に分解する可能性がある。DS(Pr+Bu)0.5超、または1.1超を有する上記のレジンは容易に溶融加工される。
【0150】
同様に、ガラス転移温度Tgは必ずしも限定されない。本発明の一態様において、可塑化されていない値は100℃超であり、そして別では、Tg値は約130℃超である。別の態様において、混合エステルのTgは100℃〜200℃であり、別のものでは130℃〜185℃である。別の態様において、Tgは150℃〜175℃である。別の態様において、Tgは150℃〜160℃である。殆どの可塑剤はポリマーのTgを1〜2度(摂氏)(質量パーセント当たり)低下させる。
【0151】
本発明の特定の態様において、本発明のポリマーの「DSスプレッド」の限定はない。本発明の混合エステルは、可溶性および加工可能になるためにいずれの特別な予防措置および/または狭いスプレッドも必要としないことを見出した。更に、本発明の混合エステルでは、広範囲のDS分布が、アセチルおよび非アセチル単位の両者について存在することになる。例えば、CAPの場合、プロピオニルおよびアセチルのDSは、繰返し単位から繰返し単位に幅広く変動することになる(例えば、幾つかの繰返し単位は、アセチルが2である有効なDSおよびDSプロピオニルの1を有する場合がある一方、隣接の単位は正反対であることができる)。これは、有効に、より広範囲の溶解性挙動を、各繰返し単位について生じさせるため、DSスプレッドの概念を幾らか無意味にする。DSスプレッドは、高DSセルロースアセテートについて重要となり、ここで、極めて高いDSでの溶解性が論点である。
【0152】
物質は粉末、フレーク、ペレット、液体等の形状であることができ、そして任意に適切にコンパウンド前に予乾燥できる。可塑剤、安定剤、UV吸収剤は、混合物においてより一般的であるが、他の添加剤,例えば耐ブロッキング剤、スリップ剤、潤滑剤、ピニング剤、色素、顔料、レタデーション調整剤、艶消し剤、等もまた、所望であれば添加できる。
【0153】
本発明のポリマーは、典型的には可塑剤を含有するが、これは必要ではない。可塑剤の存在は、フィルム、シートまたはモールド成形部品の可撓性および機械的強靭性を向上させるのに有用である。可塑剤はまた、加工温度および粘度を低下させるのを助け、これにより、溶融押出しフィルムにおける複屈折の形成の傾向を低減させる。可塑剤の実際の選択は限定されない。溶融押出しのためにより良好である可塑剤がある一方、溶媒キャストのためにより望ましいものもある場合があるからである。本発明で使用する可塑剤としては、これらに限定するものではないが、ホスフェート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコール酸エステル、クエン酸エステル可塑剤、またはヒドロキシル官能性可塑剤が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。可塑剤の例としては、ホスフェート可塑剤,例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、またはトリブチルホスフェート;フタレート可塑剤,例えばジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレートまたはジベンジルフタレート;グリコール酸エステル,例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレートまたはメチルフタリルエチルグリコレート;およびクエン酸エステル可塑剤,例えばトリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル−トリ−n−ブチルシトレート、またはアセチル−トリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレートが挙げられる。本発明に従って使用できる可塑剤の更なる例は:(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸またはリン酸のうち1種以上の残基を含む酸残基;および(ii)約20個以下の炭素原子を含有する脂肪族、脂環式、または芳香族のアルコールのうち1種以上の残基を含むアルコール残基を含むエステルである。更に、可塑剤のアルコール残基の限定しない例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびジエチレングリコールが挙げられる。可塑剤はまた、1種以上の、ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン−ビス(ジアリールホスフェート)またはイソフタレートを含むことができる。別の例において、可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾエート(本明細書で「DEGDB」と略す)を含む。
【0154】
一態様において、可塑剤は、C2−C10二塩基酸残基およびC2−C10ジオール残基を含む脂肪族ポリエステルを含む。C2−C10二塩基酸残基を与える二塩基酸の例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。C2−C10ジオール残基を与えるジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。別の態様において、可塑剤は、本明細書に記載する脂肪族ポリエステルのうち少なくとも2種のブレンド物である。別の態様において、可塑剤はResoflex R296(Broadview Technologies Inc.)である。別の態様において、可塑剤は、アジピン酸残基およびジエチレングリコール残基を含む脂肪族ポリエステルである。別の態様において、可塑剤はResoflex R804(Broadview Technologies Inc.)である。別の態様において、可塑剤は、コハク酸残基およびジエチレングリコール残基を含む脂肪族ポリエステルである。
【0155】
本発明の別の態様において、本発明の混合セルロースエステル組成物は、A)約5〜約95質量%のC2−C12炭水化物有機エステル(該炭水化物は約1〜約3のモノサッカライド単位を含む);およびB)約5〜約95質量%のC2−C12ポリオールエステル(ポリオールは、C5またはC6の炭水化物に由来する);およびb)約5〜約95質量%の、DS約0.7〜約3.0のセルロースのC2−C10エステル(パーセントは、成分(A)と成分(B)との和の総質量基準である)のうち1種以上を含む1種以上の可塑剤を含むことができる。
【0156】
しかし一態様において、B)の場合、ポリオールエステルは1種または複数種のポリオールアセテートを含まないか含有する。
【0157】
本発明の別の態様において、可塑剤は、炭水化物エステルを含み、そして炭水化物エステルの炭水化物部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオースおよびラフィノースのうちの1種以上に由来する。本発明の別の態様において、可塑剤は、炭水化物エステルを含み、そして炭水化物エステルは、α−グルコースペンタアセテート、β−グルコースペンタアセテート、α−グルコースペンタプロピオネート、β−グルコースペンタプロピオネート、α−グルコースペンタブチレート、およびβ−グルコースペンタブチレートのうち1種以上を含む。
【0158】
本発明の別の態様において、本発明の混合セルロースエステル組成物は、1種以上の可塑剤を含み、該可塑剤が炭水化物エステルを含み、該炭水化物エステルがα−アノマー、β−アノマーまたはこれらの混合物を含むことができる。本発明の別の態様において、可塑剤は炭水化物エステルを含み、そして該炭水化物エステルは、少なくとも約60%のβ−アノマーを含む。
【0159】
本発明において有用な任意の可塑剤は、本発明の混合セルロースエステル組成物中に、以下の質量パーセント(混合セルロースエステル組成物の総質量パーセント基準)のうちの1つで存在できる:5〜95;5〜90;5〜85;5〜80;5〜75;5〜70;5〜65;5〜60;5〜55;5〜50;5〜45;5〜40;5〜35;5〜30;5〜25;5〜20;5〜15;5〜10;10〜95;10〜90;10〜85;10〜80;10〜75;10〜70;10〜65;10〜60;10〜55;10〜50;10〜45;10〜40;10〜35;10〜30;10〜25;10〜20;10〜15;15〜95;15〜90;15〜85;15〜80;15〜75;15〜70;15〜65;15〜60;15〜55;15〜50;15〜45;15〜40;15〜35;15〜30;15〜25;15〜20;20〜95;20〜90;20〜85;20〜80;20〜75;20〜70;20〜65;20〜60;20〜55;20〜50;20〜45;20〜40;20〜35;20〜30;20〜25;25〜95;25〜90;25〜85;25〜80;25〜75;25〜70;25〜65;25〜60;25〜55;25〜50;25〜45;25〜40;25〜35;25〜95;30〜90;30〜85;30〜80;30〜75;30〜70;30〜65;30〜60;30〜55;30〜50;30〜45;30〜40;30〜35;35〜95;35〜90;35〜85;35〜80;35〜75;35〜70;35〜65;35〜60;35〜55;35〜50;35〜45;35〜40;40〜95;40〜90;40〜85;40〜80;40〜75;40〜70;40〜65;40〜60;40〜55;40〜50;40〜45;45〜95;45〜90;45〜85;45〜80;45〜75;45〜70;45〜65;45〜60;45〜55;45〜50;50〜95;50〜90;50〜85;50〜80;50〜75;50〜70;50〜65;50〜60;50〜55;55〜95;55〜90;55〜85;55〜80;55〜55〜95;55〜90;55〜85;55〜80;55〜75;55〜70;55〜65;55〜60;60〜95;60〜90;60〜85;60〜80;60〜75;60〜70;60〜65;65〜95;65〜90;65〜85;65〜80;65〜75;65〜70;70〜95;70〜90;70〜85;70〜80;70〜75;75〜95;75〜90;75〜85;75〜80;80〜95;80〜90;80〜85;80〜95;80〜90;80〜85;85〜95;85〜90;90〜95。
【0160】
本発明の一態様は、先の段落で記載した少なくとも1種の可塑剤を含み、非アセチルエステル置換度のヒドロキシル置換度に対する比が10以上、および非アセチルエステル置換度が0.5超,例えば1.1超、例えば1.1〜1.75の混合セルロースエステル組成物を用いて作製された液晶ディスプレイフィルムを対象とする。別の態様は、上記のReおよびRthの値の任意の組合せを有するこのような液晶ディスプレイフィルムを対象とする。本発明の別の態様において、このような液晶ディスプレイフィルムは、溶融押出しによって作製される。本発明の別の態様において、このような液晶ディスプレイフィルムは溶媒キャストによって作製される。
【0161】
可塑剤、安定剤、UV吸収剤は、混合物においてより一般的であるが、他の添加剤,例えば耐ブロッキング剤、スリップ剤、潤滑剤、ピニング剤、色素、顔料、レタデーション調整剤、艶消し剤、型離型剤等もまた、所望であれば添加できる。
【0162】
溶融加工可能な用途について、物質は単軸押出機、二軸押出機、ロールミル、または任意の他の溶融可塑化設備を用いて押出すことができる。更に、より一般的であるように、物質は、1つの系,例えば二軸またはロールミルで一緒に予めコンパウンドし、ペレット化し、そして次いでフィルムラインと組合せて第2の押出機上で加工できる。単軸および二軸のフィルム押出しのために、ギアポンプを、押出機とダイとの間に使用して均一な流速を確保できる。どのように成分を組合せて混合できるかの限定はない。重要な性能特性は、下流の押出しおよびキャスティングのプロセスに、より関係しているからである。
【0163】
押出機は、任意の種々の軸(スクリュー)または混合区画を収容できる。一般的に、圧縮比5〜15の範囲は、大きいと考えられる(ここで、圧縮比は、供給ゾーンのチャンネル深さを計量ゾーンのチャンネル深さで除したものと定義される)。一態様において、本発明の文脈での圧縮比は、2〜5、または2〜4の範囲であることができる。高い圧縮比は、一般的に、供給の制限および分解点への剪断加熱の増大ができる。本発明の一態様において、我々は、分散混合区画を、従来の単羽またはバリアスクリュー(単軸用途用の)と組合せて用いた。
【0164】
光学フィルムの純度、外観、色および性能への厳しい要求は、典型的には、製造ラインにおけるろ過によって享受する。よって、一態様において、本発明のフィルムは、精密ろ過を用いて形成する。典型的には、光学フィルム用のフィルムの精密ろ過は、キャンドルフィルターまたはリーフディスクを用いて進める。正しく設計されたフィルター系は、製造利益,例えばゲル数の低減ならびにライン中断およびプロセス障害の最少化を与えることができる。
【0165】
殆どの製造元は、これらのフィルター媒体の効率を、「絶対」ミクロン評定の単位で特定する。この評定は、粒子サイズ(これよりも上では、全粒子の最小98%がフィルターによって除去されることになるもの)を特定する。極めて精密な用途(5μmおよびそれ未満)のためには、繊維金属フェルト媒体の使用が推奨される。フィルター媒体は、典型的には押出機より下流であるが押出しダイより前に組み込む。このろ過は、任意の種類の押出し設計(すなわち、単軸、二軸等)と組合せて行なうことができ、そして典型的には、ろ過の後直ちにギアポンプシステムを続けて流れを最大化し、そして生産ばらつきに起因する圧力変動を最小化する。フィルター媒体は、任意の典型的なスクリーンホルダーを用いて組み込めるが、自動フィルター洗浄/交換能力を有するシステムがより一般的である。
【0166】
押出しは、従来の平坦フィルムダイ(例えば、コートハンガーまたはT型の設計のもの)を用いて実施できる。輪状ダイ等の他のものを、例えば、ブローフィルム型のプロセスにおいて使用できるが、ゲージ制御は通常このような手法を受ける。ダイギャップは、手動ダイボルトを用いて調整でき、そして一態様において、「自動調整(autotune)」型のダイリップ(ダイギャップを自動的に、厚み測定設備に繋がれたフィードバックコントローラーによって調整する)を用いて調整できる。このような制御はフィルムに均一なゲージを与えることができる。
【0167】
キャスト設備(溶媒または溶融)は、キャスティングロールまたはドラム、ロールスタック配列、または更にキャスティングベルト、からなることができる。ロールおよびドラムがより一般的である。ロールスタック配列において、フィルムはしばしば艶出しし、まはより小さいニップロールに続けて、ゲージ制御を改善するが、フィルム内に過剰な応力を引き起こさないように注意を払わなければならない。ロールは、典型的にはクロームめきされたロールであり、鏡様仕上げを有するが、種々の表面仕上げ/粗さを有するマットな1つまたは複数のロールもまた、所望であれば使用できる。ロールキャスティング(これによりロールは部分的に冷却浴中に浸漬される)はまた、冷却速度を増大させること、およびスループット(処理量)を加速することが可能である。フィルムとキャスティング設備との間の良好な接触を確保するために、エアナイフ、減圧ボックスまたは静電ピニングワイヤを使用できる。
【0168】
本発明のフィルムは、単層または複層(共押出し、コーティングまたはラミネーションのいずれで製造されるものも)のフィルムであることができる。共押出しの場合、複数の層を一緒に従来の供給ブロック、マルチ−マニホールドダイまたはこれらの複数の組合せに供することができる。マイクロ層共押出しは、マルチプライヤーを含み、そして10以上の層も使用できる。共押出しは、大幅に短い緩和時間(またはより低い粘度)を有する複数の層をフィルムの表面上に配置し、これにより疑似潤滑層として作用させることができるという追加的な利益を有する。このキャップ層の粘度が内側層に対してより低いと、内側層が「栓流」配置により多く動くようになる。栓流は、存在する剪断変形を殆どまたは全く有さないことを特徴とするため、栓流コアは極めて低い複屈折を有することになる。よって他の極めて粘性で長い緩和時間のポリマーは、ディスプレイにおいて、これをより低粘度の流体のキャップ層の間に配置してこれが栓流式で動くようにすることによって、なお使用できる。外側のより低粘度の層は、大幅により多くの剪断を受けるが、これらはまた、大幅により短い緩和時間を有することになり、従ってより容易に任意の配向から緩和できる。同様の挙動は、潤滑剤,例えばフッ素ポリマーを溶融物に添加することによっても得ることができるが、これらはフィルムのより多くの濁りの原因となる傾向がある。
【0169】
別の態様において、本発明のフィルムは、艶出しロールスタックプロセスを用いて、またはカレンダリングによっても製造できる。物質の低い複屈折は、ニップ接触によってフィルム内に引き起こされる高い応力が、過度に高いレタデーション値に形を変えないことを確保する。殆どの従来のセルロース誘導体は、艶出しまたはカレンダーが光学用途用にはできない。レタデーションが高すぎ、および/または、これらが低い十分な温度では溶融加工できないからである。艶出しおよびカレンダーは、従来の溶融キャストよりも良好な厚み制御という追加的な利益を与える。
【0170】
所望であれば、フィルムを、続いて、MD方向に、例えば従来のドラフトまたは組合せの圧縮/ドローイング型のドラフターによって延伸できる。TDの延伸は、典型的にはテンタリングによって実施する。同様に、MDおよびTDの延伸の組合せを、所望であれば用いることができる。延伸は、通常、特定の複屈折を、使用するフィルム(例えば補償フィルムにおいて)に与えるように適用する。実際の延伸条件および構成は、当該分野で周知である。例えば、複数方向でのフィルム延伸は、可能な設備に応じて同時または逐次であることができる。フィルムをダブルバブル型のブローフィルムプロセスによって延伸することもまた可能である。殆どの延伸操作は、延伸比1.1〜5X(1つ以上の方向で)を含む(しかしこれは物質によって変えることができる)。更に、殆どの延伸はまた、後アニーリングまたは「熱セット」ステップを物質の更なる状態調整のために含む。
【0171】
フィルムは、当該分野で周知の方法で後処理(例えばコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等)できる。フィルムはまた、一般的には鹸化して、後続のPVOH偏光層との良好な接着を確保する。
【0172】
物質は、他のモールド成形操作(例えば射出成形および共射出成形、異形押出し、繊維紡糸、押出しブロー成形、熱形成等)においても使用できる。低い複屈折は、応力中でモールド成形されたもの(これらのプロセスでは一般的である)が過度の光学収差を招来しないことを確保する。
【0173】
ディスプレイ用途のために、フィルムは、最終的に他のフィルムおよび構造と組合せて液晶デバイス全体を形成する。用いるプロセスの例としては、ラミネーションおよび/またはコーティングが挙げられる。これらの構造は、当業者に一般的に公知であり、そして本発明のフィルムおよびレジンを種々の形状(特定の製造元の仕様および液晶セルの種類に応じて)で使用できることが理解される。
【0174】

下記で例において記録したセルロースエステルの置換度は、1HNMRによって、JEOL Model 600 NMR分光計(600MHzで操作)を用いて評価した。サンプル管サイズは5mm、サンプル温度は80℃、ジメチルスルホキシド−d6を溶媒としての重水素化トリフルオロ酢酸2滴とともに用いた。パルス遅延は5秒であり、64スキャンを各実験について得た。
【0175】
「インヘレント粘度」または「IV」は、60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン中、濃度0.5g/100mlで25℃にて評価した。
【0176】
特記がない限り、ガラス転移温度Tgは、TA DSC 2920機器(Thermal Analyst Instrumentsより)を用い、非可塑化サンプルで、DSCをランプ速度20℃/分で用いてASTM D3418に従って評価した。Tg値は、2回目加熱サイクル測定から抽出して、明確に示される転移および任意の残留水の除去を確保した。融点もまた、DSCを用いASTM D3418に従って測定した。落球粘度は、ASTM法D1343−91を用いてASTM A溶媒中で測定した。インヘレント粘度(IV)は、濃度0.5g/100mlのレジンを用いて60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン溶液中で25℃にて評価した。
【0177】
アセチルおよびプロピオニルの質量パーセントは、加水分解GC法によって評価した。この方法において、約1gのエステルを計量瓶中に計り入れ、そして減圧オーブン内で105℃にて少なくとも30分間乾燥させた。次いで、0.500±0.001gのサンプルを250mLのErlenmeyerフラスコ内に計り入れた。9.16gイソ吉草酸の、99%の2000mLのピリジン中の溶液50mLを、次いで、フラスコに添加した。この混合物を還流まで約10分間加熱し、その後30mLのメタン酸カリウム水酸化物溶液を混合物に添加した。混合物を、次いで、還流で約10分間加熱し、次いで撹拌しながら20分間冷やし、その後、3mLの濃塩酸を添加した。混合物を5分間撹拌し、次いで5分間沈降させた。約3mLの溶液のアリコートを、遠心分離管に移し、そして約5分間遠心分離した。溶液をGC(スプリット注入およびフレームイオン化検出器)によって、25M×0.53mm溶融シリカカラム(1ミクロンFFAP相を有する)で分析した。アシルの質量パーセントを式:
Ci=((Fi*Ai)/Fs*As))*R(100)
式中:Ci=I(アシル基)の濃度
Fi=成分Iについての相対応答因子
Fs=イソ吉草酸についての相対応答因子
Ai=成分Iの面積
As=イソ吉草酸の面積
R=(イソ吉草酸のグラム)/(サンプルのg)
に従って算出した。
【0178】
溶媒キャスト
レジンを12時間50℃にて減圧下で乾燥させて任意の過剰の水分を除去した。次に、18グラムの乾燥レジンを180グラムの90/10溶媒混合物(塩化メチレンおよびメタノール)に添加した。その後、2グラムのトリフェニルホスフェート(TPP)可塑剤を混合物に添加した。混合物をシールし、ローラ上に置き、そして24時間混合して、固形分約10wt%の均一なドープを形成した。混合後、ドープを、ガラス板上に、約80ミクロンの最終厚みを与えるように調整したドクターブレードを用いてキャストした。キャストは、相対湿度を50%(+/−10%)に制御したドラフト内で実施した。キャスト後、フィルムおよびガラスを、1時間、カバー蓋下で乾燥させて溶媒蒸発の速度を最小化した。この初期の乾燥の後、フィルムをガラスから剥がし、そして強制換気オーブン内で10分間100℃にてアニールした後140℃で20分間アニールした。アニールは、任意の更なる収縮を防止するように拘束したフィルムで実施した。混合エステルの幾つかの場合、これらが「ブラッシュ」すること(これらの種々の溶解性(セルロースアセテートに対して)に起因して)は一般的であった。これらの場合、1wt%のブタノールを溶媒混合物に添加して、乾燥を遅くし、そしてフィルムキャストの品質を制御することを助けた。
【0179】
フィルムパラメータ
フィルムの光学レタデーションReおよびRthは、Woollam偏光解析器を用いて波長633nmで測定した。80ミクロンまたはこれを超えるフィルム厚みについては、Rth値はまた、複屈折が厚みに依存しないという仮定に基づいて80μm等価厚みに規格化した。実際には、溶媒キャストにおいては、より厚いフィルムは、より薄いフィルムよりも低いレタデーションを有するという若干の厚み依存性が存在する。これはキャスト中に形成される応力の相違に起因する。この規格化されたRthは、測定されるRthと区別するために「R80」といい、
(6) R80=80*Rth/d
のように算出し、式中、dは実際のフィルム厚み(ミクロン単位)である。フィルムについての複屈折値もまた、光学異方性の別の「厚み規格化」指標として含む。
【0180】
ゴム応力−光学係数(SOC)は、Bruckner二軸フィルム延伸機で延伸したフィルムから評価した。フィルムは、約1.25×に平面内(一定幅)延伸構成で、温度をフィルムの軟化点のすぐ上として延伸した。延伸終点での真の応力(すなわち、力を実際のフィルム断面積で除したもの)を、機械方向および横方向の両者で記録し、そして平面「応力差」は、横方向の応力を機械方向の応力から差し引くことにより得た。次いで、延伸フィルムの光学レタデーションReを、Woollam偏光解析器を波長633nmで用いて測定し、そしてフィルム厚みで除することにより複屈折に変換した。次いで、SOCは、複屈折をフィルム内の真の応力差で除することにより算出した。
【0181】
例1.セルロースエステルコンパウンドの作製
セルロース(75g)を金属ラボブレンダー内で3バッチにて毛羽立てた(fluff)。この毛羽立てたセルロースを以下の3つの予処理のうち1つにて処理した。
【0182】
予処理A:毛羽立てたセルロースを、酢酸とプロピオン酸との混合物中に浸した。量は下記表1に挙げる。次いで、反応を下記に示すように実施した。
【0183】
予処理B:毛羽立てたセルロースを1リットルの水に約1時間浸した。湿潤パルプをろ過し、そして4回酢酸で洗浄して酢酸湿潤パルプを得た(質量は下記表1に示す)。そして反応を下記に示すように実施した。
【0184】
予処理C:毛羽立てたセルロースを約1リットルの水に約1時間浸した。湿潤パルプをろ過し、そして4回プロピオン酸で洗浄して、プロピオン酸湿潤パルプを得た(質量は下記表1に示す)。そして反応を下記に示すように実施した。
【0185】
予処理D:毛羽立てたセルロースを約1リットルの水に約1時間浸した。湿潤パルプをろ過し、そして3回酢酸で、および3回プロピオン酸で洗浄して、プロピオン湿潤パルプを得た(質量は下記表1に示す)。そして反応を下記に示すように実施した。
【0186】
反応:上記処理の1つによる酸湿潤パルプを、次いで、2リットルの反応ケトル内に入れ、そして酢酸またはプロピオン酸を、下記表1に示すように添加した。反応物を、無水酢酸 無水プロピオン酸(無水物の量は下記表1に示す)の15℃および10℃の溶液に冷却し、そして2.59gの硫酸を添加した。初期の発熱の後、反応混合物を約25℃で30分間保持し、次いで反応混合物を60℃に加熱した。混合物がドープ出しされ、ドープの適切な粘度が得られた時点で、296mLの酢酸および121mLの水の50〜60℃の溶液を添加した。この混合物を30分間撹拌し、次いで、4.73gの酢酸マグネシウム四水和物の、385mL酢酸および142mL水中の溶液を添加した。この反応混合物を、次いで、下記に示す方法のうち1つによって沈殿させた。
【0187】
沈殿方法A:反応混合物を、8Lの水の添加により沈殿させた。得られるスラリーをろ過し、そして水で約4時間洗浄し、次いで、60℃の強制換気オーブン内で乾燥させて、表1に示すセルロースアセテートプロピオネートの量を得た。
【0188】
沈殿方法B:反応混合物を、4Lの10%酢酸の添加により沈殿させ、次いで4Lの水の添加により硬化させた。得られるスラリーをろ過し、そして水で約4時間洗浄し、次いで、60℃の強制換気オーブン内で乾燥させて、表1に示すセルロースアセテートプロピオネートの量を得た。
【0189】
これらのセルロースアセテートプロピオネートの分析データを表2に示し、そしてこれらのエステルからキャストしたフィルムのレタデーションデータを表3に示す。これらのエステルのレタデーションは、作製方法に左右されなかったが、セルロースアセテートプロピオネートの実際の組成のみに左右された。
【0190】
【表2】

【0191】
【表3】

【0192】
例8〜21−セルロースアセテートプロピオネートの溶媒キャスト
追加のCAPは、種々のDS範囲のアセチル、プロピオニルおよびヒドロキシルを生成した以外は例1と同様に以下の手順に従って形成した。種々の範囲のアセチルおよびプロピオニルは、反応混合物中のアセチル種およびプロピオニル種の比を変えることによって生成した。ヒドロキシルのDS範囲は、酢酸水混合物の添加と酢酸マグネシウム溶液の添加との間の時間を変動させることによって変えた。全てのサンプルについてのレジンIV値は、約0.8〜約1.2の間の範囲であった。フィルムをこれらの物質からキャストし、そしてレタデーション値を表3に示す。プロピオニルDSのヒドロキシルDSに対する比(すなわち、「ヒドロキシル比」)が5未満の場合、Rth値が負になることが観察された(レジンが高い正の複屈折を有するため)。同様に、ヒドロキシル比の値が約10〜20の間では、フィルムはゼロにより近いレタデーション性能を示した。約20超の比では、物質は、顕著な負の複屈折および大きい正のRthの値を示し始めた。
【0193】
【表4】

【0194】
【表5】

【0195】
この傾向は図4にも示す。ここで、R80値は、CAP種およびCAB種の両者のヒドロキシル比の関数としてプロットする(例えば次の例を参照のこと)。レタデーションはヒドロキシル比を密接にたどり、ヒドロキシル比約5で始まる低い固有複屈折と交差することを観察した。
【0196】
ガラス転移温度Tgの値もまた表4に纏める。ヒドロキシルDS値を上げることによりTgが増大するが、これはまたレタデーション値をより負にすることが分かる。これに関わらず、プロピオニルレベルとヒドロキシルレベルとの間のバランス(ゼロのレタデーションをもたらす一方、より高いTg値をなお維持するようなもの)を選ぶことが可能であった。例えば、レジン11および12は、高いTg(155〜157℃)を有し、更に、負の複屈折(すなわち正のRth値)をなお示す。
【0197】
例22〜34−セルロースアセテートブチレート(CAB)の溶媒キャスト
一連のCABは、例1に記載する合成に従って生成したが、プロピオン酸または無水プロピオン酸に代えて酪酸または無水酪酸を用いた。種々のDS範囲を、アセチル、ブチリルおよびヒドロキシルのために形成した。そしてレタデーションおよびDSのデータを表1に挙げる。レタデーションの傾向はCABでCAPとほぼ同じであり、TgはCABでより低い傾向である。CAPサンプルと同様、ブチリルDSのヒドロキシルDSに対する比(すなわち「ヒドロキシル比」)が約5未満の場合、Rth値が極めて大きく、そして負になることを観察した。同様に、ヒドロキシル比が10超である例34について、レタデーション値は、複屈折が低下するに従ってゼロに近づき始める。
【0198】
比較例35−セルローストリアセテートの溶媒キャスト
比較の目的で、市販のセルローストリアセテート(Eastman Cellulose Triacetate CA−436−80S)を、例1〜7と同様の手法で試験した(プロピオン酸を引いた)。トリアセテートのDSは2.84でDS(OH)は0.16であり、そして、TACフィルムベースとして用いる典型的な市販のトリアセテートを代表する。フィルムのヒドロキシル比はゼロであり(付いている非アセチルエステルが無いことを示す)、そしてまた極めて高い負のレタデーションを有していた。この例のレジンは溶融加工可能ではない。
【0199】
溶媒キャストCAPからのA板の作製
例14において生成した溶媒キャストフィルムを1/2インチ(1.25cm)幅のストリップに切断し、そして一軸に1.75×で、引張試験機を用いて延伸した。延伸した領域のゲージ長さは約2インチ(5.5cm)であり、そしてフィルムは、そのTgよりも高温に、延伸前に高温エアガンを用いて加熱した。初期フィルム厚みは100ミクロンであり、そして延伸後の厚みは75ミクロンであった。延伸後のフィルムのレタデーションReは−80nmであり(すなわち、より高い屈折率が延伸方向と直角に並んだ)、物質がA型補償フィルムの形成において使用するために好適であることを確認した。
【0200】
CAPサンプルについてのアセチルスプレッドの評価
有効なアセチルスプレッドを、サンプル13および14で、比較例29における市販セルローストリアセテートとともに評価した。分析は、Hamilton PRP−1カラム(75×4.6,10μm,P/N 070−500)(Sedex蒸発光散乱検出器を備える)を用いて実施した。カラムの流速は0.8mL/分であり、そして試験は30℃で、10μlの注入体積を用いて実施した。サンプルの準備は、0.1gのセルロース誘導体を35mLのn−メチルピロリドン中で希釈することからなっていた。時間ゼロでの移動相は、12.5%メタノール、50%のアセトンおよび37.5%の水の溶液であった;そしてこれは、純粋アセトン溶液まで、15分の時間間隔をかけて線形的に変化させた。サンプルの分布の半幅を分単位で記録した。これはアセチル分布における「有効」スプレッドの指標である。サンプル中に存在するプロピオニル基もまた、溶出時間に影響するからである。
【0201】
試験の結果は、CE35のセルローストリアセテートが0.47分の有効なアセチルスプレッドを有していた一方、CAPサンプル13および14が0.42分および0.43分のアセチルスプレッドをそれぞれ有していたことを示した。これらの結果は、有効なアセチルスプレッドの、CAPサンプルと市販CTAサンプルとの間に存在する差は極めて少ないことを示す。
【0202】
レジンのコンパウンドおよび押出し加工
溶融押出し前に、セルロース粉末を、30mm Werner Pfleider共回転二軸押出機でコンパウンドし、可塑剤および0.5wt%のEastman 15304安定剤を添加できるようにした。可塑剤レベルは、名目5または10%であり、そして、ジエチルフタレート(DEP)またはResoflex R296可塑剤(Broadview Technologies Inc.から得た)からなっていた。「中剪断」スクリュー構成を、バレルゾーン温度230〜240℃の間およびスクリュー速度250〜300rpmの間とともに用いた。押出し速度は、名目30〜40lbs毎時(14〜19kg/時)であった。可塑剤は、バレルの供給口から約1/3下に取付けた液体フィーダーを用いて供給した。二軸による押出物は、ペレット化棒型に通し、そして後続の単軸押出しの間に使用するのに好適なペレットに切った。押出し例で使用したベースレジンを表4に纏める。
【0203】
【表6】

【0204】
次に、上記でコンパウンドしたペレットを70℃で12時間、乾燥剤乾燥系中で乾燥させた。乾燥後、物質を、フィルムに、1インチ(2.54cm)Killion単軸押出機(L/D24:1およびMaddock混合スクリューを有する)を用いてキャストした。押出機は、初期ゾーンプロファイル240℃で設定し、そして速度50RPMで運転したが、これは後の運転の幾つかについては約40〜80RPMの範囲の間で変えた。物質は、6”コートハンガーダイ(15.2cm)(名目10milダイギャップを有する)を通して押出した(特記がない限り)。RPMは、40〜80RPMの間で設定し、物質流速の範囲9〜15lbs/時(4〜6.8kg/時)を与えた。ダイリップとロールとの間の間隔は、約1インチ(2.54cm)に維持して、ウエブのネックインを最小化した(ダイとロールとの間をより大きい間隔で運転してみると、動揺し厚み変動の原因となる傾向がある不安定なウエブを招いた)。特記した場合を除き、フィルムは名目厚み80ミクロンにキャストし、厚みはキャスティングロール速度によって制御した。押出し後、フィルムは、光学レタデーションおよび一般的な品質について評価した。
【0205】
比較例101および102−押出し変数のReおよびRthに対する効果
設計した実験を行なって溶融温度、ロール温度、ダイギャップ、およびRPMの、ReおよびRthに対する効果を評価した。フィルム厚みは、一定に、約80ミクロンに、巻取り速度を変動させることにより保った。種々の運転条件下でのこれらのサンプルについてのデータを表5に纏める。各運転条件は小文字の英数字で指定している。表5中の全サンプルは、5%のDEP可塑剤を含有していた。
【0206】
【表7】

【0207】
結果の分析は、ロール温度はReおよびRthへの影響が最も少ない変数であり、レタデーションは主に残りの加工変数に左右されることを示した。例えばより大きいダイギャップは、フィルムのより大きいドローダウン、よってより大きい伸張延伸の必要性をもたらした。これは、すなわち、より大きくより負である値のReおよびRthを招来した。溶融温度もまた、より低い加工温度で粘度がより高くなるに従って鍵となる役割を演じ、生じる可能性がある分子緩和のレベルを低下させ、そしてまたレタデーションを増大させた。これに関わらず、より高い溶融温度は、熱分解に起因するフィルムの許容できない黄変をもたらした。
【0208】
この例の結果は、レタデーションが用いる加工条件に対して極めて敏感であることを明確に示す。これは、一定のレタデーションプロファイルを、任意の押出しプロセスにおいて生じる通常の変動(例えば、圧力/温度の経時変動)として維持することを困難にし、レタデーションのばらつきにつながる。より着実なプロセスのために、加工条件におけるこれらの変動に対して(特に、より低い加工温度で)より敏感でない物質が必要である。以下の例に記載するように、本発明の低ヒドロキシルレジンの開発を招来したのはこの要求である。
【0209】
例103〜107
これらの例においては、フィルムをCE101およびCE102と同様の手法で、以下の変更を伴い、押出した。質量スループット速度(すなわちRPM)およびロール温度は、レタデーションに顕著に影響するとは見出されなかったため、これらを一定に53RPMおよび110℃でそれぞれ保持した。ダイギャップもまた、10mil(0.025cm)で固定した。フィルムの伸張延伸はレタデーションに影響する主要な因子であるため、巻取り機の取上げ速度は初期に18〜36フィート毎分(5.5〜11m/分)の間で変動させた。RPMを一定に保持したため、これは、フィルムの厚みの低減の原因となったが、この厚みの影響は、R80値に規格化することによって、またはこれらを直接複屈折に変換することによって、部分的に補償できる。結果を表6に、サンプル103〜107について一覧にする。
【0210】
【表8】

【0211】
これらの例で用いた可塑剤はResoflex R296(5%または10%の使用量のいずれか)であった。Resoflex R296は、DEPよりも、揮発性が少なくより少ない「ボイルアウト(boil out)」を示すことが見出されている。より高い溶融温度での許容できない黄変により、押出機は、一定の230℃バレル温度で220℃ダイ温度に設定した。名目溶融温度は210〜215℃の間であった。
【0212】
表6中のデータの検討から、最も低いレタデーション(ReおよびRth)は、サンプル103から105についてであったことが示される。これらのサンプルについてのレタデーションは、ドローダウン速度が増大した場合にも殆ど変わらなかった。より低い可塑剤レベルで粘度が増大するに従いレタデーションに若干の増大があったが、レタデーションレベルはなお、ゼロレタデーションフィルムとして有用であるのに十分に低いことに留意されたい。これに対し、CE107は、極めて大きい値のReを、低いおよび高いPZレベル、更に低いおよび高いドローダウン比について示した。CE107の場合、ヒドロキシル比は極めて低く、これにより、既知量の応力についての相当するレタデーションが大幅により高くなる。CE106は、境界線のヒドロキシル比9.1を有し、押出しキャストにより、ゼロレタデーション押出しキャストフィルムのために許容可能であるレタデーション値を有するが、このレジンは、溶媒キャストにおいてとほぼ同じようには働かなかった。
【0213】
ダイでの溶融圧力データもまた測定され、加工温度での押出し可能性および粘度の指標を与える。表6から、低ヒドロキシルサンプル(103,104および105)は、例えばCE107よりも(たとえ落球粘度数が大幅により高くても)低いダイ圧力を有することが分かる。低ヒドロキシルレジンは、従って、低レタデーションフィルムに(特に、より低温、より高分子量および高いTgで)押出すのが大幅により容易であり、これはフィルムの強靭性および寸法安定性の保持を確保する。
【0214】
応力光学係数
応力光学係数の値を、表4に、用いたレジンの各々について挙げる。フィルムSOCは、CE101およびCE102についてDOP可塑剤を基にし、残りがResoflex可塑剤であることに留意されたい。低ヒドロキシルレジンは、ゼロに極めて近い応力光学係数を有し、これに対し他のレジンは大幅により高かったことを見出した。SOCは可塑剤(および場合によりキャストモード)に応じて変わる(TPPを基にする溶媒キャストフィルムは、より負の複屈折挙動を有するものとして現れたため)ことに留意すべきである。
【0215】
フィルム延伸
例103a,CE106a,およびCE107aにおいて生成したフィルムサンプルを、Brucknerラボフィルム延伸機を用いて、延伸温度150℃で延伸した。フィルムを可塑化し、延伸前に約50%RHに平衡させ、そのTgが、表4中の可塑化していない値に対して低くなるようにした。各物質を1.5×および1.75×で面内(一定幅)モードにて延伸した。レタデーションを、各フィルムについて延伸後に測定し、そして結果は表7に纏める。フィルムの厚みが、延伸で延伸比との関係でどのように変わるかに留意されたい。
【0216】
観測されるように、低ヒドロキシル103aサンプルは、レタデーションにおいて、延伸で極めて小さい変化を有する。これはその低い応力光学係数に起因する。これに対し、CE106およびCE107は両者とも、レタデーションが延伸で大きい変化を有する。この例は、本発明の低ヒドロキシルレジンが、ゼロレタデーションフィルムの生成に関してどの程度、より着実であるかを更に示す。フィルムを、そのレタデーションを変えることなく延伸する能力はまた、分散制御のために、そしてこれを他の層との組合せ(例えばラミネーション)に対して敏感でないようにするために有用であった。
【0217】
【表9】

【0218】
例108〜120−種々の可塑剤を有するセルロースアセテートプロピオネートの溶媒キャスト
種々の可塑剤(キシリトールペンタプロピオネート(XPP)、Resoflex 296(R296),ソルビトールヘキサプロピオネート(SHP)、およびアラビトールペンタプロピオネート(APP)を含む)を、DS(Ac)1.46、DS(Pr)1.45、およびDS(OH)0.09を有するCAPに添加した。可塑剤を、5wt%、10wt%および15wt%の使用量で添加し、そしてレジンを12時間50℃で減圧下で乾燥させて任意の過剰の水分を除去した。可塑剤を5wt%で評価するために、19グラムの乾燥レジンを180グラムの90/10溶媒混合物(塩化メチレンおよびメタノール)に添加した。その後、1グラムの可塑剤を混合物に添加した。混合物をシールし、ローラ上に置き、そして24時間混合して、固形分約10wt%の均一なドープを形成した。同様の手順を、より高い可塑剤使用量について、可塑剤のレベルを然るべく調整することにより用いた。混合後、ドープを、ガラス板上に、前記した手順に従ってキャストした。結果を表8に示す。
【0219】
【表10】

【0220】
CAPサンプルについてのアセチルスプレッドの評価
有効なアセチルスプレッドを、サンプル7および8で、更に比較例29において市販セルローストリアセテートにつき、評価した。分析は、Hamilton PRP−1カラム(75×4.6,10μm,P/N 070−500)(Sedex蒸発光散乱検出器を備える)を用いて実施した。カラムの流速は0.8mL/分であり、そして試験は30℃で、10μlの注入体積を用いて実施した。サンプルの準備は、0.1gのセルロース誘導体を35mLのn−メチルピロリドン中で希釈することからなっていた。時間ゼロでの移動相は、12.5%メタノール、50%のアセトンおよび37.5%の水の溶液であった;そしてこれは、純粋アセトン溶液まで、15分の時間間隔をかけて線形的に変化させた。サンプルの分布の半幅を分単位で記録した。これはアセチル分布における「有効」スプレッドの指標である。サンプル中に存在するプロピオニル基もまた、溶出時間に影響するからである。
【0221】
試験の結果は、CE29のセルローストリアセテートが0.47分の有効なアセチルスプレッドを有していた一方、CAPサンプル7および8が0.42分および0.43分のアセチルスプレッドをそれぞれ有していたことを示した。これらの結果は、有効なアセチルスプレッドの、CAPサンプルと市販CTAサンプルとの間に存在する差は極めて少ないことを示す。
【0222】
溶融押出しフィルム
レジンのコンパウンドおよび押出し加工
溶融押出し前に、セルロース粉末を、30mm Werner Pfleider共回転二軸押出機でコンパウンドし、可塑剤および0.5wt%のEastman 15304安定剤を添加できるようにした。可塑剤レベルは、名目5または10%であり、そして、ジエチルフタレート(DEP)またはResoflex R296可塑剤(Broadview Technologies Inc.から得た)からなっていた。「中剪断」スクリュー構成を、バレルゾーン温度230〜240℃の間およびスクリュー速度250〜300rpmの間とともに用いた。押出し速度は、名目30〜40lbs毎時(14〜19kg/時)であった。可塑剤は、バレルの供給口から約1/3下に取付けた液体フィーダーを用いて供給した。二軸による押出物は、ペレット化棒型に通し、そして後続の単軸押出しの間に使用するのに好適なペレットに切った。押出し例で使用したベースレジンを表IIに纏める。
【0223】
【表11】

【0224】
次に、上記でコンパウンドしたペレットを70℃で12時間、乾燥剤乾燥系中で乾燥させた。乾燥後、物質を、フィルムに、1インチ(2.54cm)Killion単軸押出機(L/D24:1およびMaddock混合スクリューを有する)を用いてキャストした。押出機は、初期ゾーンプロファイル240℃で設定し、そして速度50RPMで運転したが、これは後の運転の幾つかについては約40〜80RPMの範囲の間で変えた。物質は、6”コートハンガーダイ(15.2cm)(名目10milダイギャップを有する)を通して押出した(特記がない限り)。RPMは、40〜80RPMの間で設定し、物質流速の範囲9〜15lbs/時(4〜6.8kg/時)を与える。ダイリップとロールとの間の間隔は、約1インチ(2.54cm)に維持して、ウエブのネックインを最小化した(ダイとロールとの間をより大きい間隔で運転してみると、動揺し厚み変動の原因となる傾向がある不安定なウエブを招いた)。特記した場合を除き、フィルムは名目厚み80ミクロンにキャストし、厚みはキャスティングロール速度によって制御した。押出し後、フィルムは、光学レタデーションおよび一般的な品質について評価した。
【0225】
比較例101および102−押出し変数のReおよびRthに対する効果
設計した実験を行なって溶融温度、ロール温度、ダイギャップ、およびRPMの、ReおよびRthに対する効果を評価した。フィルム厚みは、一定に、約80ミクロンに、巻取り速度を変動させることにより保った。種々の運転条件下でのこれらのサンプルについてのデータを表IIIに纏める。各運転条件は小文字の英数字で指定している。表III中の全サンプルは、5%のDEP可塑剤を含有していた。
【0226】
【表12】

【0227】
結果の分析は、ロール温度はReおよびRthへの影響が最も少ない変数であり、レタデーションは主に残りの加工変数に左右されることを示した。例えばより大きいダイギャップは、フィルムのより大きいドローダウン、よってより大きい伸張延伸の必要性をもたらした。これは、すなわち、より大きくより負である値のReおよびRthを招来した。溶融温度もまた、より低い加工温度で粘度がより高くなるに従って鍵となる役割を演じ、生じる可能性がある分子緩和のレベルを低下させ、そしてまたレタデーションを増大させた。これに関わらず、より高い溶融温度は、熱分解に起因するフィルムの許容できない黄変をもたらした。
【0228】
この例の結果は、レタデーションが用いる加工条件に対して極めて敏感であることを明確に示す。これは、一定のレタデーションプロファイルを、任意の押出しプロセスにおいて生じる通常の変動(例えば、圧力/温度の経時変動)として維持することを困難にし、レタデーションのばらつきにつながる。より着実なプロセスのために、加工条件におけるこれらの変動に対して(特に、より低い加工温度で)より敏感でない物質が必要である。以下の例に記載するように、本発明の低ヒドロキシルレジンの開発を招来したのはこの要求である。
【0229】
例103〜107
これらの例においては、フィルムをCE101およびCE102と同様の手法で、以下の変更を伴い、押出した。質量スループット速度(すなわちRPM)およびロール温度は、レタデーションに顕著に影響するとは見出されなかったため、これらを一定に53RPMおよび110℃でそれぞれ保持した。ダイギャップもまた、10mil(0.025cm)で固定した。フィルムの伸張延伸はレタデーションに影響する主要な因子であるため、巻取り機の取上げ速度は初期に18〜36フィート毎分(5.5〜11m/分)の間で変動させた。RPMを一定に保持したため、これは、フィルムの厚みの低減の原因となったが、この厚みの影響は、R80値に規格化することによって、またはこれらを直接複屈折に変換することによって、部分的に補償できる。結果を表IVに、サンプル103〜107について一覧にする。
【0230】
【表13】

【0231】
これらの例で用いた可塑剤はResoflex R296(5%または10%の使用量のいずれか)であった。Resoflex R296は、DEPよりも、揮発性が少なくより少ない「ボイルアウト(boil out)」を示すことが見出されている。より高い溶融温度での許容できない黄変により、押出機は、一定の230℃バレル温度で220℃ダイ温度に設定した。名目溶融温度は210〜215℃の間であった。
【0232】
表IV中のデータの検討から、最も低いレタデーション(ReおよびRth)は、サンプル103から105についてであったことが示される。これらのサンプルについてのレタデーションは、ドローダウン速度が増大した場合にも殆ど変わらなかった。より低い可塑剤レベルで粘度が増大するに従いレタデーションに若干の増大があったが、レタデーションレベルはなお、ゼロレタデーションフィルムとして有用であるのに十分に低いことに留意されたい。これに対し、CE107は、極めて大きい値のReを、低いおよび高いPZレベル、更に低いおよび高いドローダウン比について示した。CE107の場合、ヒドロキシル比は極めて低く、これにより、既知量の応力についての相当するレタデーションが大幅により高くなる。CE106は、境界線のヒドロキシル比9.1を有し、押出しキャストにより、ゼロレタデーション押出しキャストフィルムのために許容可能であるレタデーション値を有するが、このレジンは、溶媒キャストにおいてとほぼ同じようには働かなかった。
【0233】
ダイでの溶融圧力データもまた測定され、加工温度での押出し可能性および粘度の指標を与える。表IVから、低ヒドロキシルサンプル(103,104および105)は、例えばCE107よりも(たとえ落球粘度数が大幅により高くても)低いダイ圧力を有することが分かる。低ヒドロキシルレジンは、従って、低レタデーションフィルムに(特に、より低温、より高分子量および高いTgで)押出すのが大幅により容易であり、これはフィルムの強靭性および寸法安定性の保持を確保する。
【0234】
応力光学係数
応力光学係数の値を、表IIに、用いたレジンの各々について挙げる。フィルムSOCは、CE101およびCE102についてDOP可塑剤を基にし、残りがResoflex可塑剤であることに留意されたい。低ヒドロキシルレジンは、ゼロに極めて近い応力光学係数を有し、これに対し他のレジンは大幅により高かったことを見出した。SOCは可塑剤(および場合によりキャストモード)に応じて変わる(TPPを基にする溶媒キャストフィルムは、より負の複屈折挙動を有するものとして現れたため)ことに留意すべきである。
【0235】
フィルム延伸
例103a,CE106a,およびCE107aにおいて生成したフィルムサンプルを、Brucknerラボフィルム延伸機を用いて、延伸温度150℃で延伸した。フィルムを可塑化し、延伸前に約50%RHに平衡させ、そのTgが、表II中の可塑化していない値に対して低くなるようにした。各物質を1.5×および1.75×で面内(一定幅)モードにて延伸した。レタデーションを、各フィルムについて延伸後に測定し、そして結果は表Vに纏める。フィルムの厚みが、延伸で延伸比との関係でどのように変わるかに留意されたい。
【0236】
観測されるように、低ヒドロキシル103aサンプルは、レタデーションにおいて、延伸で極めて小さい変化を有する。これはその低い応力光学係数に起因する。これに対し、CE106およびCE107は両者とも、レタデーションが延伸で大きい変化を有する。この例は、本発明の低ヒドロキシルレジンが、ゼロレタデーションフィルムの生成に関してどの程度、より着実であるかを更に示す。フィルムを、そのレタデーションを変えることなく延伸する能力はまた、分散制御のために、そしてこれを他の層との組合せ(例えばラミネーション)に対して敏感でないようにするために有用であった。
【0237】
【表14】

【0238】
本発明を、本明細書で開示した態様を参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲の範囲内の変形および変更をなすことができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、混合セルロースエステル。
【請求項2】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200である、請求項1に記載の混合セルロースエステル。
【請求項3】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜100である、請求項1に記載の混合セルロースエステル。
【請求項4】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜80である、請求項1に記載の混合セルロースエステル。
【請求項5】
少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、混合セルロースエステル。
【請求項6】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15〜200である、請求項5に記載の混合セルロースエステル。
【請求項7】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15〜100である、請求項5に記載の混合セルロースエステル。
【請求項8】
インヘレント粘度が、0.8〜1.9dL/gである、、請求項1に記載の混合セルロースエステル。
【請求項9】
Tgが100℃〜200℃である、請求項1に記載の混合セルロースエステル。
【請求項10】
少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である、混合セルロースエステル。
【請求項11】
非アセチル基がプロピオニル基および/またはブチリル基を含み、そして、プロピオニル基とブチリル基との和の置換度が約1.1〜1.6である、請求項10に記載の混合セルロースエステル。
【請求項12】
プロピオニルの置換度が1.2〜1.6である、請求項11に記載の混合セルロースエステル。
【請求項13】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200である、請求項10に記載の混合セルロースエステル。
【請求項14】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜100である、請求項10に記載の混合セルロースエステル。
【請求項15】
少なくとも1つのアセチル基を含む混合セルロースエステルであって、該混合セルロースエステルのガラス転移温度が100℃〜200℃であり;そして非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である、混合セルロースエステル。
【請求項16】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステルを含んでなる、フィルム。
【請求項17】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜100である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項16に記載のフィルム。
【請求項19】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜80である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項16に記載のフィルム。
【請求項20】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.75である、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステルを含んでなる、フィルム。
【請求項21】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15〜200である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が15〜100である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項20に記載のフィルム。
【請求項23】
インヘレント粘度が0.8〜1.9dL/gである少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項16に記載のフィルム。
【請求項24】
Tgが100℃〜200℃である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項16に記載のフィルム。
【請求項25】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステルを含んでなる、フィルム。
【請求項26】
非アセチル基がプロピオニル基および/またはブチリル基を含み、そしてプロピオニル基とブチリル基との和の置換度が約1.1〜1.6である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項25に記載のフィルム。
【請求項27】
プロピオニルの置換度が1.2〜1.6である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項26に記載のフィルム。
【請求項28】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜200である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項25に記載のフィルム。
【請求項29】
非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10〜100である少なくとも1種の混合セルロースエステルを含む、請求項25に記載のフィルム。
【請求項30】
混合セルロースエステルのガラス転移温度が100℃〜200℃であり;そして非アセチル基の置換度(DSNAC)のヒドロキシル基の置換度(DSOH)に対する比が10以上であり、そして非アセチル置換度が1.1〜1.6である、少なくとも1つのアセチル基を含む少なくとも1種の混合セルロースエステルを含んでなる、フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−536995(P2010−536995A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521890(P2010−521890)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/009999
【国際公開番号】WO2009/029220
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】