説明

低誘電材料用熱硬化性樹脂

【課題】得られる硬化物が低誘電率および低誘電損失の特性を有する熱硬化性樹脂を提供する。
【解決手段】ジヒドロキシジフェニル類、ジアミン類、アルデヒド類を反応させて得られ、分子構造中に該ジヒドロキシジフェニル類由来のビフェニル骨格を34質量%以上、51質量%以下有することを特徴とする、ジヒドロベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有する熱硬化性樹脂。また本発明では、前記ジヒドロキシジフェニル類がビフェノール、前記アルデヒド類がホルムアルデヒドであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率および低誘電損失の硬化物が得られる熱硬化性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の様々な熱硬化性樹脂が使用されており、それぞれの特性に合った分野へ適用されている。近年、情報機器の小型化、高性能化、高機能化が急速に進んでいる。特に実装技術の高度化、半導体の高集積化等が拍車をかけ、パーソナルコンピュータおよびその周辺機器、デジタル通信機器等のクロック周波数は高速化の一途をたどり、民生品において既に3GHzを超えている。また普及率がめざましい携帯電話、移動体通信においても、高機能化により、使用する周波数は高周波領域帯に移行している。そのため、高速信号伝達性、高周波対応などが以前にも増して求められている。よってそれらに使用される熱硬化性樹脂においても、今までよりも種々の特性や安定性、信頼性など要求が高いものとなっている。その中でも特に低誘電率、低誘電損失が要求されている。
【0003】
半導体、プリント配線基板材料、他の用途に、現在までに広く用いられてきたエポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂の組み合わせでは、上述した要望に応えることが困難となっている。そのため、低誘電率および低誘電損失の硬化物が得られる特定のエポキシ樹脂と特定のフェノール樹脂の組み合わせが報告がされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1の組み合わせでも、得られる硬化物の誘電率および誘電損失には一定の限界がある。
また、市販されているビフェニル型エポキシ樹脂は、溶剤溶解性が極めて悪い、熱溶融性(樹脂フロー)が悪い等の特性により、積層板を作成するのが極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−272728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低誘電率および低誘電損失の特性を有する硬化物が得られる熱硬化性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ジヒドロキシベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有する熱硬化性樹脂に、ビフェニル骨格を導入する手法を適用することにより、得られる硬化物が低誘電率および低誘電損失を有することを見出し、さらにビフェニル骨格含有量を制御することで本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
[1]ジヒドロキシジフェニル類、ジアミン類、アルデヒド類を反応させて得られ、分子構造中に該ジヒドロキシジフェニル類由来のビフェニル骨格を34質量%以上、51質量%以下有することを特徴とする、下記式(1)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有する熱硬化性樹脂。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)において、Arはジヒドロキシジフェニル残基からなる4価の芳香族基を示し、Rはジアミン残基からなる2価の有機基を示し、Rは水素または炭素数1〜6の有機基を示し、nは繰り返し数で1〜30の整数を示す。)
【0010】
[2]前記ジヒドロキシジフェニル類がビフェノール、アルデヒド類がホルムアルデヒドである[1]に記載の熱硬化性樹脂。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂を用いることで、低誘電率および低誘電損失の特性を有する硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
上記式(1)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有する本発明の熱硬化性樹脂は、ジヒドロキシジフェニル類とジアミン類とアルデヒド類とを有機溶剤中において反応させることにより得られるものである。
【0014】
(ジヒドロキシジフェニル類)
ジヒドロキシジフェニル類とは、ヒドロキシフェニル基を二つ有するフェノール類であり、ヒドロキシフェニル基の水酸基と結合する炭素に対して、少なくとも一方のオルソ位に置換可能な水素を有するものであり、かつ構造中にビフェニル骨格を含むものを少なくとも1種は含有するものである。
構造中にビフェニル骨格を含むジヒドロキシジフェニル類としては、例えば、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール等が挙げられる。これらは1種類を使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ジヒドロキシジフェニル類は、構造中にビフェニル骨格を含むジヒドロキシジフェニル類の他に、熱硬化性樹脂の分子構造中のビフェニル骨格が34〜51質量%の範囲であれば、構造中にビフェニル骨格を含まないジヒドロキシジフェニル類を使用してもよい。構造中にビフェニル骨格を含まないジヒドロキシジフェニル類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−[1,3―フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学ファイン製「ビスフェノールM」)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチルデン)]ビスフェノール(三井化学ファイン製「ビスフェノールP」)等が挙げられる。上記ビフェニル骨格を含まないジヒドロキシジフェニル類は1種類で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
(ジアミン類)
上記ジアミン類は、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等、両末端にアミノ基を有する有機基であれば、特に限定されない。
芳香族ジアミン類としては、例えば、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3−(アミノメチル)ベンジルアミン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン等が挙げられる。
その他のジアミン類として、脂環式ジアミン、不飽和や分岐した炭化水素基を持つジアミン等も使用することができる。脂環式ジアミンとしては、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、ノルボルナンジアミン等が挙げられる。
これらジアミン類は1種類で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、分子量が小さいジアミン類が、熱硬化性樹脂中のビフェニル骨格の含有率を高くすることができるため好ましい。分子量が小さいジアミン類としてはエチレンジアミンが挙げられる。ジアミン類としてエチレンジアミンを使用した際、熱硬化性樹脂中のビフェニル骨格の含有率を最も高くすることができ、51質量%となる。
【0016】
(アルデヒド類)
アルデヒド類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、ベンズアルデヒドが挙げられる。これらアルデヒド類は1種類で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でもホルムアルデヒドが、熱硬化性樹脂中のビフェニル骨格の含有率を高くすることができるため、好ましい。
【0017】
反応工程における、反応温度、反応時間については特に限定されないが、通常、有機溶剤中、室温〜120℃の範囲で数十分〜数時間反応させることにより、本発明の熱硬化性樹脂を得ることができる。
【0018】
使用する有機溶剤についても特に限定されるものではないが、原料のジヒドロキシジフェニル類やジアミン類および反応生成物である熱硬化性樹脂に対して溶解性の良好なものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
【0019】
反応終了後、溶剤を留去したあと、必要に応じて、樹脂分が溶出しない溶剤、またはアルカリ、もしくはそれらを組み合わせた溶媒中にて洗浄操作を行い、未反応のジヒドロキシジフェニル類、ジアミン類、アルデヒド類を除去することにより、本発明の熱硬化性樹脂が得られる。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、特に限定しないが、500〜2000程度であることが好ましい。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂をガラスクロスに含浸させ、熱硬化させた積層板の比誘電率は3.5〜4.3、誘電損失は0.004〜0.008であり、共に優れた値を示す。一般に、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を組み合わせた熱硬化性樹脂を用いて、同様に製造した積層板の比誘電率は4.4〜5程度、誘電損失は0.01〜0.02程度といずれも大きいため、低誘電特性が要求される電子材料には適用できない。
本発明においては、熱硬化性樹脂の構造中に34〜51質量%のビフェニル骨格を導入することにより、低誘電率および低誘電損失の特性を有する硬化物を得ることができるため、高性能、高機能を必要とする電子材料への適用が可能になった。
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂は、以下の点においてエポキシ樹脂との優位性がある。
第一に、原料に用いる材料が基本的にハロゲンフリーであるため、熱硬化性樹脂もハロゲンを含まない。これは合成段階でエピクロロヒドリンを用いているエポキシ樹脂と大きく異なる点である。
第二に、硬化時に熱収縮が少ないという特徴が挙げられる。熱硬化性樹脂のベンゾオキサジン環が開環した後のフェノール性水酸基と、開環後に生じる三級アミンは分子内水素結合を生じ、擬似的な六員環を形成する。そのため、熱硬化性樹脂の分子の構造は硬化前後でほとんど変化がない。
最後に、硬化剤および硬化促進剤を必要とせず加熱により硬化するため、エポキシ樹脂やノボラック型フェノール樹脂のように、硬化剤や硬化促進剤を必要とするタイプに比べ、硬化時の発生ガスが極めて少ないことも特徴である。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂を半導体封止材料や回路基板等に使用する場合には、必要に応じて、無機フィラー、有機フィラー、色素、離型剤など、当業者に公知の各種充填剤や添加剤を使用してもよい。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂は、低誘電率および低誘電損失の特性を有する硬化物を得ることができ、高性能、高機能を必要とする電子材料用の樹脂として有用である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
以下の実施例および比較例で得られた熱硬化性樹脂について、不揮発分、重量平均分子量、ビフェニル骨格含有量を以下の方法で調べた。また実施例および比較例で得られた積層板の比誘電率、誘電損失を以下の方法で調べた。
【0027】
(不揮発分測定方法)
アルミシャーレにワニス状の熱硬化性樹脂を1.5g精秤し、該アルミシャーレを温度150℃の恒温器に入れ、1時間保持し、溶剤を乾燥させた。乾燥前後の質量変化から不揮発分(質量%)を求めた。
不揮発分(質量%)=[(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)]×100
【0028】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した。
【0029】
(ビフェニル骨格含有量)
4価のビフェニル残基の分子量(150)を式(1)で示される繰り返し単位の分子量で割った理論値で算出した。
【0030】
[実施例1]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、1,4−ジオキサン:120.9gを入れた反応装置に、4,4’−ビフェノール:18.6g(0.1モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン:19.8g(0.1モル)を投入し、60℃に昇温して溶解させた後、92質量%ホルムアルデヒド:13.0g(0.4モル)を投入し、90℃、10分間攪拌した。その後、更に昇温して還流下で8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターにて不揮発分55質量%になるまで溶剤を揮発させ、重量平均分子量(Mw)1357のワニス状の熱硬化性樹脂(R−1)を得た。このワニスを0.2mmのガラス布に含浸、乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを5枚重ね、180℃、圧力20MPa、120分加熱、加圧して樹脂分46質量%、厚さ1.0mmの積層板(A−1)を作製した。
【0031】
[実施例2]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、1,4−ジオキサン:120.9gを入れた反応装置に、4,4’−ビフェノール:18.6g(0.1モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン:11.9g(0.06モル)3−(アミノメチル)ベンジルアミン:5.4g(0.04モル)を投入し、60℃に昇温して溶解させた後、92質量%ホルムアルデヒド:13.0g(0.4モル)を投入し、90℃、10分間攪拌した。その後、更に昇温して還流下で8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターにて不揮発分55質量%になるまで溶剤を揮発させ、重量平均分子量(Mw)1213のワニス状の熱硬化性樹脂(R−2)を得た。熱硬化性樹脂(R−1)の代わりに熱硬化性樹脂(R−2)を使用した他は実施例1と同様にして、積層板(A−2)を作製した。
【0032】
[実施例3]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、1,4−ジオキサン:120.9gを入れた反応装置に、4,4’−ビフェノール:18.6g(0.1モル)、3−(アミノメチル)ベンジルアミン:13.6g(0.1モル)を投入し、60℃に昇温して溶解させた後、92質量%ホルムアルデヒド:13.0g(0.4モル)を投入し、90℃、10分間攪拌した。その後、更に昇温して還流下で8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターにて不揮発分55質量%になるまで溶剤を揮発させ、重量平均分子量(Mw)1152のワニス状の熱硬化性樹脂(R−3)を得た。熱硬化性樹脂(R−1)の代わりに熱硬化性樹脂(R−3)を使用した他は実施例1と同様にして、積層板(A−3)を作製した。
【0033】
[実施例4]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、1,4−ジオキサン:120.9gを入れた反応装置に、4,4’−ビフェノール:18.6g(0.1モル)、1,3−ジアミノベンゼン:10.8g(0.1モル)を投入し、60℃に昇温して溶解させた後、92質量%ホルムアルデヒド:13.0g(0.4モル)を投入し、90℃、10分間攪拌した。その後、更に昇温して還流下で8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターにて不揮発分55質量%になるまで溶剤を揮発させ、重量平均分子量(Mw)1497のワニス状の熱硬化性樹脂(R−4)を得た。熱硬化性樹脂(R−1)の代わりに熱硬化性樹脂(R−4)を使用した他は実施例1と同様にして、積層板(A−4)を作製した。
【0034】
[比較例1]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、メチルエチルケトン:38.5gを入れた反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:828、エポキシ当量185):30.0g、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PSM−4324、水酸基当量105):17.0g、および2−エチル−4−メチルイミダゾール:0.03gを投入し、溶融混合させ、不揮発分55質量%のワニス状の熱硬化性樹脂(R−5)を得た。熱硬化性樹脂(R−1)の代わりに熱硬化性樹脂(R−5)を使用した他は実施例1と同様にして、積層板(B−5)を作製した。
【0035】
[比較例2]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、メチルエチルケトン:45.0gを入れた反応装置に、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:YL6121H、エポキシ当量175):55gを投入し、70℃にて溶解させ、樹脂固形分55質量%のワニス状の熱硬化性樹脂(R−6)を得た。しかし、該ワニスは常温に戻ると、ビフェニル型エポキシ樹脂が再結晶したため、分散性が悪く、積層板を作製することができなかった。
【0036】
[比較例3]
温度計、攪拌装置、冷却管を備え、1,4−ジオキサン:134.6gを入れた反応装置に、4,4’−ビフェノール:9.3g(0.05モル)、ビスフェノールA:11.4g(0.05モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン:19.8g(0.1モル)を投入し、60℃に昇温して溶解させた後、92質量%ホルムアルデヒド:13.0g(0.4モル)を投入し、90℃、10分間攪拌した。その後、更に昇温して還流下で8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターにて不揮発分55質量%になるまで溶剤を揮発させ、ワニス状の熱硬化性樹脂(R−7)を得た。熱硬化性樹脂(R−1)の代わりに熱硬化性樹脂(R−7)を使用した他は実施例1と同様にして、積層板(B−6)を作製した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂を用いて製造した積層板は、比較例1に示す一般的なエポキシ−フェノール系樹脂で作製された積層板と比較し、低比誘電率、低誘電損失であることがわかる。
比較例2では、ビフェニル型エポキシ樹脂が溶剤に難溶解であるため、積層板を作製することができなかった。
また、ビフェニル骨格の含有量が34質量%未満の熱硬化性樹脂を使用した比較例3の積層板は、比誘電率および誘電損失ともに、実施例と比べて高い数値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシジフェニル類、ジアミン類、アルデヒド類を反応させて得られ、分子構造中に該ジヒドロキシジフェニル類由来のビフェニル骨格を34質量%以上、51質量%以下有することを特徴とする、下記式(1)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有する熱硬化性樹脂。
【化1】


(式(1)において、Arはジヒドロキシジフェニル残基からなる4価の芳香族基を示し、Rはジアミン残基からなる2価の有機基を示し、Rは水素または炭素数1〜6の有機基を示し、nは繰り返し数で1〜30の整数を示す。)
【請求項2】
前記ジヒドロキシジフェニル類がビフェノール、アルデヒド類がホルムアルデヒドである請求項1に記載の熱硬化性樹脂。

【公開番号】特開2013−43950(P2013−43950A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183754(P2011−183754)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】