説明

低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液

【課題】誘電率が3以下と小さく、しかもマイクロフォトリソグラフィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れるとともに機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性に優れた絶縁膜を形成できるような低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液、およびこのような低誘電率シリカ系被膜が形成された基材を提供する。
【解決手段】(i)アルコキシシランの1種または2種以上を加水分解、または加水分解後、熟成して得られたシリカ微粒子の少なくとも一部の表面に、フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの加水分解物を結合させて得られたフェニル基を有するシリカ系微粒子と、(ii)アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランの加水分解物と、ポリシラザンとの反応物であるポリシロキサザンとの反応物を含有することを特徴とする低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比誘電率が3以下と小さく、しかもマイクロフォトリソグラフィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れるとともに、機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性などに優れた絶縁膜を形成できるような低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液、および該低誘電率シリカ系被膜が形成された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化に伴い、多層配線を有する0.3μルール以下の半導体装置におい
ては、金属配線間隔が狭くなるため、静電誘導による金属配線のインピーダンスが増大し、応答速度の遅れ、消費電力の増大が懸念されている。このため、半導体基板とアルミニウム配線層などの金属配線層との間、あるいは金属配線層間に設けられる層間絶縁膜の比誘電率をできるだけ小さくすることが必要とされている。
【0003】
上記のような目的で用いられている層間絶縁膜は、一般にCVD法などの気相成長法または被膜形成用塗布液を用いて絶縁膜を形成する塗布法によって基板上に形成されている。
【0004】
しかしながら、CVD法などの気相成長法では、シリカ系被膜の場合、比誘電率で3.5
のフッ素ドープシリカ膜が限界と言われており、3以下のシリカ系被膜を形成することは難しいという問題がある。
【0005】
また、ポリアリール樹脂、フッ素添加ポリイミド樹脂やフッ素系樹脂などのCVD被膜やこれらを含む塗布液を用いて形成される被膜は、比誘電率が2前後となるが、基材と被膜との密着性が悪く、また、微細加工に用いるレジスト材料との密着性も悪く、耐薬品性、酸素プラズマ耐性に劣るなどの欠点もある。
【0006】
さらにまた、従来から用いられているアルコキシシランの部分加水分解物を含むシリカ系被膜形成用塗布液では、比誘電率2.5の被膜が得られるが、被塗布面との密着性が悪い
という欠点がある。
【0007】
本発明者らはシリカ微粒子とハロゲン化シランまたはその加水分解物との反応物を含有する低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜は比誘電率が3以下と小
さく、しかも被塗布面との密着性、機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性に優れ、同時に耐クラック性に優れていることを見出し、これを出願している(特願平8-299684号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに本発明者らは研究を重ねた結果、上記のような従来の被膜では、マイクロフォトリソグラフィ加工時のプラズマエッチングやレジスト剥離時の酸素プラズマによって膜質の劣化が被膜への水分再吸着を引き起こし、被膜の誘電率を増大させたり、密着性や耐薬品性、耐クラック性を劣化させ、導電歩留りが低下するおそれがあることが判明した。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決しようとするものであって、比誘電率が3以下と小さく、しかもマイクロフォトリソグラフィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れるとともに機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性に優れた絶縁膜を形成できるような低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液、およびこのような低誘電率シ
リカ系被膜が形成された基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、(i)フェニル基を有するシリカ系
微粒子と、(ii)下記一般式(I)で示されるアルコキシシランおよび/または下記一般式(II)で示されるハロゲン化シランの加水分解物と、下記一般式(III)で示されるポリシラザンとの反応物であるポリシロキサザンとを含有することを特徴としている。
【0011】
nSi(OR1)4-n (I)
nSiX'4-n (II)
【0012】
【化2】

(Xは、水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基またはビニル基を表し、R1、R2、R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、X'はハロゲン原子を表す
。また、mは整数、nは0〜3の整数である。)
【0013】
前記フェニル基を有するシリカ系微粒子(i)は、前記一般式(I)で示されるアルコキシシランの1種または2種以上を加水分解、または加水分解した後、熟成して得られたシリカ微粒子の少なくとも一部の表面に、フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの加水分解物を結合させて得られたものであることが好ましい。
【0014】
前記一般式(I)で示されるアルコキシシランの1種または2種以上からシリカ微粒子を
調製する際の加水分解温度または熟成温度は、180℃以上であることが好ましい。
本発明に係る低誘電率被膜付基材は、前記低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液を用いて形成された低誘電率シリカ系被膜を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液によれば、比誘電率が3以下と小さく、しかもマイクロフォトリソグラフィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れるとともに、機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性に優れた絶縁膜を形成できる。
【0016】
このような本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、(i)フェニル基を有す
るシリカ系微粒子と(ii)ポリシロキサザンとの反応物を含んでいる。塗布液中のシリカ系微粒子は、粒子間の空孔により被膜を多孔質化させる。また、シリカ系微粒子表面のフェニル基は被膜中のこの空孔への水の再吸着を防ぐ効果を有するとともに、酸素プラズマ耐性も高いという特性を有している。このため、本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液を用いて低誘電率シリカ系被膜を形成すると、マイクロフォトリソグラフィ加工時のプラズマエッチングやレジスト剥離時の酸素プラズマによる膜質の劣化を防止することが可能となり、さらに被膜への水分再吸着も防止されるため、誘電率が低く、密着性、耐薬品性、耐クラック性などに優れ、導電歩留りが向上し、しかも平坦化特性の良い、安定した低誘電率シリカ系被膜を形成することができる。また、シリカ系微粒子のアンカー効果により被塗布面との密着性にも優れている。
【0017】
また、本発明によれば、比誘電率が3以下と小さく、しかもマイクロフォトリソグラフ
ィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れ、同時に機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性に優れたシリカ系被膜を有する各種基材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液について具体的に説明する。
[低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液]
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、(i)フェニル基を有するシリカ系
微粒子と、(ii)下記一般式(I)で示されるアルコキシシランおよび/または下記一般式(II)で示されるハロゲン化シランの加水分解物と、下記一般式(III)で示されるポリシラザンとの反応物であるポリシロキサザンとを含有することを特徴としている。
【0019】
nSi(OR1)4-n (I)
nSiX'4-n (II)
【0020】
【化3】

(Xは、水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基またはビニル基を表し、R1、R2、R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、X'はハロゲン原子を表す
。また、mは整数、nは0〜3の整数である。)
【0021】
(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子
まず、(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子について説明する。
フェニル基を有するシリカ系微粒子は、上記式(I)で示されるアルコキシシランの1種
または2種以上と水、有機溶媒およびアンモニアの存在下に加水分解・重縮合させることによりシリカ微粒子を調製し、得られたシリカ微粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとを反応させることにより得られる。
【0022】
上記式(I)で示されるアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
有機溶媒としは、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などが挙げられ、より具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどの
グリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類が用いられる。
【0024】
触媒としては、アンモニアの他に、アミン、アルカリ金属水素化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤などの塩基性化合物などを用いることもできる。
このようなシリカ微粒子の調製法をさらに詳細に説明すると、例えば、水-アルコール
混合溶媒を撹拌しながら、この混合溶媒にアルコキシシランおよびアンモニア水を添加し、アルコキシシランの加水分解・重縮合反応を行う。
【0025】
このとき、水はアルコキシシランを構成するSi-OR基1モル当たり0.5〜50モル、好
ましくは1〜25モルとなるような量で用いられることが望ましい。また、アンモニアは、アルコキシシラン1モル当たり、0.01〜1モル、好ましくは0.05〜0.8モルとなるような量で配合されることが望ましい。
【0026】
アルコキシシランの加水分解・重縮合反応は、通常180℃以上、好ましくは200℃以上で、かつオートクレーブなどの耐熱耐圧容器を用いて行うことが望ましい。
さらに、この後、加水分解と同一温度またはより高い温度で熟成してもよい。上記の加水分解反応温度、熟成温度は、高い方がアルコキシシランの重縮合がより促進され、シリカ微粒子内部が緻密化されるので望ましい。また、このようにシリカ微粒子が緻密化されると、粒子自体の吸湿性が低下するとともに、粒子表面の残留官能基を少なくすることもできる。
【0027】
また、例えば撹拌下の水-アルコール混合溶媒にエチレングリコールなどの高沸点の溶
媒を添加して、アルコキシシランの加水分解を行い、シリカ微粒子を生成、成長させてもよい。このような高沸点の溶媒をアルコキシシランの加水分解時に添加しておくと、アルコキシ基のエステル交換反応が起こり、高沸点溶媒がシリカ微粒子内部に取り込まれ、密度の低い多孔質のシリカ微粒子が得られる。
【0028】
また、本発明では、上記以外にシリカ微粒子としては、アルカリ金属珪酸塩等をイオン交換したり、加水分解したりすることによって得られたシリカゾルなども用いることができる。さらには、アルミノケイ酸塩からなるゼオライトからアルミニウムを除去したような多孔質ゼオライトからなる微粒子も用いることもできる。
【0029】
以上のようなシリカ微粒子は、平均粒径が30〜1000Å、好ましくは50〜500Åの範囲内
にあることが望ましい。このような範囲の平均粒径のシリカ微粒子であれば、均一な粒径のものでも粒径の異なる微粒子の2種類以上の混合物でもよく、すなわち粒度分布がシャープなものであっても、ブロードなものであっても、バイモダルなものであってもよい。
【0030】
平均粒径が30Å未満のものでは、形成した被膜が低誘電率化しないことがあり、一方、平均粒径が1000Åを越えるものでは、形成した被膜がフォトリソグラフィ工程での微細加工時に欠陥を生じやすい。
【0031】
本発明で使用される(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子は、上記のようなシリカ微
粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとを、縮合反応によって結合させることによって得られる。
【0032】
フェニル基含有アルコキシシランとしては、下記一般式(IV)で表されるものが挙げられる。
pPhqSi(OR1)4-(p+q) (IV)
XおよびR1は、前記一般式(I)におけるXおよびR1と同じものを示す。また、Phはフ
ェニル基を示す。なお、このフェニル基には、アルキル基が置換されていてもよい。
【0033】
また、pは0〜3の整数、qは1〜4の整数であり、p+qは4以下の整数である。このようなフェニル基含有アルコキシシランとして具体的には、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジメチルアセトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
フェニル基を有するクロロシランとしては、下記一般式(V)で表されるものが挙げられ
る。
pPhqSiCl4-(p+q) (V)
Xは、前記一般式(I)におけるXと同じものを示す。
【0035】
また、pは0〜3の整数、qは1〜4の整数であり、p+qは4以下の整数である。このようなフェニル基含有クロロシシランとして具体的には、フェニルトリクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランなどが挙げられる。
【0036】
本発明では、これらフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの加水分解物を用いることもできる。また、フェニル基含有アルコキシシランとフェニル基含有クロロシランとを混合して使用することもできる。
【0037】
なお、シリカ微粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとの反応では、シリカ微粒子の成長、あるいは新たなシリカ微粒子の生成は起こらず、シリカ微粒子の表面で、このシリカ微粒子表面のOH基とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとの縮合反応が起こり、これによりシリカ微粒子表面にフェニル基が導入される。
【0038】
シリカ微粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとを反応させる際には、両者の混合割合は、SiO2に換算して、シリカ微粒子1重量部あたり、フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの量が0.01重量部〜0.3重量部、好ましくは0.05重量部〜0.2重量部の範囲にあることが望ましい。
【0039】
フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの量が0.01重量部より少ないと、調製されるシリカ系微粒子表面のフェニル基の量が少なくなり、得られるシリカ被膜の酸素プラズマ耐性や耐薬品性が劣る傾向がある。また、フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの量が、0.3重量部より多いと、シリカ
系微粒子との反応に関与しない余剰のフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランが残存し、これにより製造される塗布液を塗布して得られるシリカ系被膜は、被塗布面との密着性、機械的強度、塗布性などが悪くなることがある。
【0040】
このようなシリカ微粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとの反応は、通常、水、有機溶媒、触媒の存在下で行われる。使用される水は、フェニル基含有アルコキシシランを構成するSi-OR基またはフェニル基含有クロロシラン
を構成するSi-Cl基1モルに対し、0.1モル以上の量であればよい。
【0041】
有機溶媒としては、前記シリカ微粒子調製時に使用したものと同様のものが挙げられる。また、触媒としては、前記シリカ微粒子調製時に使用したものと同様のものに加え、酸触媒を使用することもできる。酸触媒として具体的には、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸などの有機酸または金属セッケンなど水溶液中で
酸性を示す化合物が挙げられる。しかしながら、触媒としては、塩基性の触媒が好ましい。
【0042】
上記のようなシリカ微粒子とフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランとの反応は、通常、約100℃以下、好ましくは80℃以下の温度で、また温度条
件などにより変動するが、通常、0.5〜50時間、好ましくは0.5〜15時間加熱することが望ましい。
【0043】
このような加熱処理によって、シリカ系微粒子の少なくとも一部の表面にフェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの加水分解物が結合し、フェニル基を有するシリカ系微粒子が得られる。
【0044】
なお、以上の方法で得られた未精製のフェニル基を有するシリカ系微粒子は、そのまま使用してもよいが、後述するポリシロキサザンとの反応に先立ち、あらかじめ限外濾過あるいは蒸留などの手段により分散媒の水-有機溶媒系を有機溶媒系に溶媒置換させておく
ことが望ましい。
【0045】
(ii)ポリシロキサザン
次に、(ii)ポリシロキサザンについて説明する。本発明で用いられる(ii)ポリシロキサザンは、アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランの加水分解物と、ポリシラザンとの反応物である。[アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランの加水分解物]本発明では、ポリシロキサザンを形成する成分として、下記一般式(I)で表されるアル
コキシシランまたは下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランの加水分解物が使用される。
【0046】
nSi(OR1)4-n …(I)
nSiX'4-n …(II)
式中、Xは、水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基またはビニル基を表し、R1は、水素原子または炭素数1〜8のア
ルキル基、アリール基またはビニル基を表し、X'はハロゲン原子を表す。また、nは0〜3の整数である。
【0047】
一般式(I)で表されるアルコキシシランとして、前記シリカ微粒子で例示したものと同
様のものが挙げられる。一般式(II)で表されるハロゲン化シランとしては、トリクロロシラン、トリブロモシラン、ジクロロシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリブロモシランなどが挙げられる。
【0048】
本発明で使用する加水分解物は、上記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよび/
または上記一般式(II)で表されるハロゲン化シランを、水、有機溶媒および触媒の存在下に加水分解・重縮合させることにより得られる。このような加水分解・重縮合方法としては、従来公知の方法が挙げられる。
【0049】
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類が使用される。
【0050】
触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸どの有機酸、または金属セッケンなどの水溶液中で酸性を示す化合物、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤などの塩基性化合物が挙げられる。
【0051】
加水分解反応に必要な水は、アルコキシシランを構成するSi-OR基、またはハロゲン化シランを構成するSi-X'基1モル当たり、通常、0.1〜5モル、好ましくは0.1〜
2モルの量で用いられることが望ましい。また、触媒は、アルコキシシランまたはハロゲン化シラン1モル当たり0.001〜1モルの量で添加されることが望ましい。
【0052】
加水分解の反応条件は特に制限されるものではないが、アルコキシシランを加水分解する場合、反応温度は、0〜80℃、好ましくは5〜60℃であり、反応時間は0.1〜1
0時間、好ましくは1〜5時間であることが望ましく、また、ハロゲン化シランを加水分解する場合、反応温度は、0〜50℃、好ましくは5〜20℃であり、反応時間は0.1
〜20時間、好ましくは1〜10時間であることが望ましい。
【0053】
このようにして得られた加水分解物の数平均分子量は、100〜50000、好ましくは500〜10000(ポリスチレン換算分子量)であることが望ましい。
なお、アルコキシシランを使用する場合、アルコキシシランは前記シリカ系微粒子の調製に用いられたものと同一のものでもよく、また異なるものであってもよい。
【0054】
[ポリシラザン]
本発明では、ポリシラザンとして、下記一般式(III)で表されるものが使用される。
【0055】
【化4】

2、R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基または
ビニル基を示し、mは整数である。上記式(III)でR2、R3およびR4がすべて水素原子で
あり、1分子中にケイ素原子が55〜65重量%、窒素原子が20〜30重量%、水素原子が10〜15重量%であるような量で存在している無機ポリシラザンが特に好ましい。
【0056】
また、ポリシラザン中のSi原子とN原子との比(Si/N比)は、1.0〜1.3であることが好ましい。このような無機ポリシラザンは、たとえば、ジハロシランと塩基とを反応させてジハロシランのアダクツを形成させたのち、アンモニアと反応させる方法(特公昭63−16325号公報)、メチルフェニルジクロロシランやジメチルジクロロシランなどとアンモニアを反応させる方法(特開昭62−88327号公報)などの公知の方法に従って製造することができる。
【0057】
上記式(III)で表される繰り返し単位を有するポリシラザンは、直鎖状であっても、環
状であってもよく、直鎖状のポリシラザンと環状のポリシラザンとの混合物でもよい。
これらのポリシラザンの数平均分子量(ポリスチレン換算)は、100〜10000、好ましくは500〜2000の範囲にあることが望ましい。
【0058】
[(ii)ポリシロキサザンの調製]
本発明で用いられる(ii)ポリシロキサザンは、上記のようにして得られたアルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランの加水分解物と、ポリシラザンを有機溶媒中で混合
し、反応させることにより得られる。
【0059】
有機溶媒としては、アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物とポリシラザンを溶解するものであればよく、たとえば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素を用いることができる。
【0060】
アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物とポリシラザンとの混合量は、アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物91〜99重量%、ポリシラザン9〜1重量%の範囲にあることが望ましい。ポリシラザンが9重量%より多くなると、これより製造される塗布液を塗布して得られるシリカ系被膜中にSi-N結合が残存しやすく、誘電率が高くなることがある。また、ポリシラザンが1重量%未満では、被塗布面との密着性、機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性に劣ることがある。
【0061】
上記のアルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランの加水分解物とポリシラザンとの反応条件は特に制限されるものではないが、通常、アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物とポリシラザンとの混合物を、約100℃以下、好ましくは80℃以下
の反応温度で、通常0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間加熱することが望ましい。
【0062】
上記反応によって、アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物の一部の末端にポリシラザンが結合した(ii)ポリシロキサザンが得られる。得られる(ii)ポリシロキサザンの数平均分子量(ポリスチレン換算)は100〜50000、好ましくは500〜10000の範囲にあることが望ましい。
【0063】
低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液の調製
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、上記(i)フェニル基を有するシリ
カ系微粒子を含む分散液と(ii)ポリシロキサザンとを、必要に応じて溶媒を添加して混合し、加熱処理によって(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子と(ii)ポリシロキサザンと
を反応させることによって調製される。
【0064】
(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子と(ii)ポリシロキサザンとの混合割合は、(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子の少なくとも一部の表面が上記ポリシロキサザンと結合するのに十分な量のポリシロキサザンがあればよいが、好ましくはフェニル基を有するシリカ系微粒子と、ポリシロキサザンとの重量比(フェニル基を有するシリカ系微粒子の重量/ポリシロキサザンの重量)が、0.1〜20、好ましくは0.5〜10となるような重量比で混合・反応させることが望ましい。
【0065】
前記重量比が20よりも多くなると、得られるシリカ系被膜はフェニル基を有するシリカ系微粒子の粒子間空孔を多く含む多孔質となり、低誘電率化は期待できるものの、被塗布面との密着性、機械的強度、被塗布面の平坦化性能などが悪くなる傾向がある。一方、前記重量比が0.1よりも小さくなると、同様にして得られるシリカ系被膜はフェニル基を有
するシリカ系微粒子の間がポリシロキサザンにより埋められ誘電率が低くならないことがある。
【0066】
加熱処理は、通常約100℃以下、好ましくは80℃以下の反応温度で、0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間程度行うことが望ましい。この加熱処理によって、(i)フェニル基を有するシリカ系微粒子の表面と(ii)ポリシロキサザンとが反応する。なお、この反応においてもシリカ系微粒子の成長あるいは新たなシリカ系微粒子の生成は起こらず、シリカ系微粒子の表面とポリシロキサザンとが結合する。
【0067】
なお、このように製造された本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、固形分(シリカ系微粒子とポリシロキサザンとの合計)を、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の量で含んでいることが望ましい。
【0068】
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、被膜形成成分として、シリカ系微粒子を含んでいるので、シリカ系粒子間の空孔によって、被膜を多孔質とすることができる。またシリカ系微粒子表面のフェニル基は、被膜中のこの空孔への水の再吸着を防ぐ効果を有するとともに、酸素プラズマ耐性も高いという特性を有している。このため、このようなフェニル基を有するシリカ系微粒子とポリシロキサザンとの反応物を含む被膜形成用塗布液を用いて低誘電率シリカ系被膜を形成すると、マイクロフォトリソグラフィ加工時のプラズマエッチングやレジスト剥離時の酸素プラズマによる膜質の劣化を防止することが可能となり、さらに被膜への水分再吸着も防止されるため、誘電率が低く、密着性、耐薬品性、耐クラック性などに優れ、導電歩留りが向上し、しかも平坦化特性の良い、安定した低誘電率シリカ系被膜を形成することができる。
【0069】
また、上記方法で得られた低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液は、ロータリーエバポレータなどを用いて、メチルイソブチルケトンなどの溶媒に置換して、前記反応で生成したアルコールや水分を完全に除去したのち、上記の固形分濃度となるように濃度調整をしてもよい。
【0070】
さらにまた、本発明に係る低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液には、充填剤が含まれていてもよく、充填剤としては、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ルテニウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、タルクなどが挙げられる。
【0071】
[低誘電率シリカ系被膜付基材]
本発明に係る被膜付基材は、上記のようにして得られた低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液を各種の基材の表面に塗布し、次いで加熱することによって得られる。
【0072】
このような塗布液の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、転写印刷法など通常の方法を採用することができる。塗布後の加熱温度は、通常、300〜450℃、好ましくは350〜400℃の範囲である。この加熱は窒素などの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましく、この結果比誘電率のより低い被膜が得られる。
【0073】
上記のようにして基材上に塗布液を塗布、乾燥した後加熱すると、塗布液中の被膜形成成分の重合が進み硬化するが、加熱の過程で重合体の溶融粘度が低下すると、被膜のリフロー性が増し、得られる被膜の平坦性が向上する。本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液を用いて被膜を形成する場合、加熱によって重合体の溶融粘度の低下が起こり、350℃
程度まで低粘度によるリフロー性を維持している。その結果、平坦性が一層向上した被膜が得られる。
【0074】
このようにして形成される低誘電率シリカ系被膜の膜厚は、被膜を形成する基材、その目的によって異なるが、例えば、半導体装置におけるシリコン基板上では通常1000〜2500Å程度であり、多層配線の配線層間の場合は通常3000〜5000Åである。
【0075】
本発明に係る低誘電率シリカ系被膜付基材としては、具体的には半導体装置、液晶表示装置、位相シフタ付フォトマスクなどが挙げられ、特に半導体装置においては、シリコン基板上、多層配線構造の配線層間、素子表面あるいはPN接合部分などに上記低誘電率シリカ系被膜が形成されている。
【0076】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[製造例]
1.フェニル基を有するシリカ系微粒子の調製
(1)純水139.1gとメタノール169.9gの混合溶液を60℃に保持し、これにテトラエトキシ
シラン(エチルシリケート-28、多摩化学工業製)の水-メタノール溶液(重量比2/8の水/メタノール混合液2450gにテトラエトキシシランを532.5g加えたもの)2982.5gおよび0.25%のアンモニア水596.4gを同時に52時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。その後、限外濾過法で未反応のテトラエトキシシラン、メタノール、アンモニアを除去すると同時に純水を加え、精製した。シリカ濃度5重量%に調整後、オートクレーブで300℃-10時間、縮合反応を行い、その後、両性イオン交換樹脂(AG-501、Bio-Rad社製)で精製して、平均粒径300Åのシリカ微粒子分散液(A)を得た。
【0078】
(2)純水139.1gとメタノール140g、エチレングリコール29.9gの混合溶液を用いた以外はシリカ微粒子分散液(A)と同様の条件で調製を行い、平均粒径250Åの多孔質シリカ微粒子分散液(B)を得た。
【0079】
(3)上記のシリカ微粒子分散液(A)を5重量%濃度に調整し、5〜10倍量のエタノールを添加し、次いで、ロータリーエバポレーターで溶媒置換を行い、濃度5重量%、水分5重量%のエタノール分散液に調整した後、フェニルトリメトキシシランをSiO2に換算してシリカ系微粒子重量の10重量%加え、1重量%のアンモニア水でpHを10に調整した。50℃で15時間反応させた後、10倍量のMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、ロータリーエバポレーターで溶媒置換を行い、濃度5重量%、水分0.5重量%のMIBK分散液(C)を得た。
【0080】
(4)上記のシリカ微粒子分散液(B)を5重量%濃度に調整し、5〜10倍量のエタノールを添加し、次いで、ロータリーエバポレーターで溶媒置換を行い、濃度5重量%、水分5重量%のエタノール分散液に調整した後、フェニルトリメトキシシランをSiO2に換算してシリカ系微粒子重量の10重量%加え、1重量%のアンモニア水でpHを10に調整した。50℃で15時間反応させた後、10倍量のMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、ロータリーエバポレーターで溶媒置換を行い、濃度5重量%、水分0.5重量%のMIBK分散液(D)を得た。
【0081】
2.ポリシロキサザンの調製
(1)アルコキシシランおよびハロゲン化シランの加水分解物の調製
特公平6-41518号公報に開示されている方法に従って、トリクロロシランをトルエン中
でトルエンスルホン酸水和物を触媒にして加水分解を行い、数平均分子量3500のハイドロジェンシルセスキオキサンポリマーを得た。
【0082】
(2)ポリシラザンの調製
特公昭63-16325号公報に記載されている製造法に準じて、次のような製造法で製造した。
温度が0℃に保たれた恒温槽内に設置した反応器中にピリジン600mlを入れ、撹拌しながらジクロロシラン28.3gを加えて錯体(ピリジンアダクツ)を形成させた。これにNH3
がジクロロシランの15モル倍になるまでアンモニアガスを2時間で吹き込み、反応生成物
を含む溶液を得た。得られた沈殿を濾過して除去した後、濾液を減圧して溶媒をキシレンに置換することにより、数平均分子量800、5重量%のポリシラザンを得た。
【0083】
(3)ポリシロキサザンの調製
上記のようにして得られたハイドロジェンシルセスキオキサンポリマーをMIBKに溶解して5重量%溶液を調整し、ポリシラザン溶液を3時間かけて添加した。50℃で5時間反応
させた後、ロータリーエバポレーターで溶媒をMIBKに置換し、数平均分子量4000、5重量%のポリシロキサザンを得た。
【0084】
3.被膜形成用塗布液の調製
上記のようにして得られたフェニル基を有するシリカ系微粒子(C),(D)とポリシロキサ
ザンを表1の記載の所定の割合で混合し、50℃で1時間加熱処理した。その後、ロータリ
ーエバポレーターで再度メチルイソブチルケトンに溶媒置換して、加熱処理により生成するアルコールや水分を完全に除去して、シリカ濃度が20重量%である被膜形成用塗布液(1)〜(4)を調製した。
【0085】
比較のためにフェニル基を有していないシリカ微粒子(A),(B)とポリシロキサザンとを
同様に反応させて、被膜形成用塗布液(5)、(6)を調製した。調製した被膜形成用塗布液の組成を表1に示す。
【0086】
【表1】

(B)および(D)は、微粒子調製時にエチレングリコールを含んでいる。
【0087】
[実施例1〜4,比較例1,2]
シリカ系被膜付半導体装置の作製
被膜形成用塗布液(1)〜(2)を、それぞれ最小0.25μルールの金属配線が施された半導体基板上にスピンコート法で塗布し、250℃で3分間乾燥した。その後、窒素中で400℃、30
分間焼成してシリカ系被膜を形成した。これらのシリカ系被膜はいずれも5000Åであった。これらの膜上にプラズマCVD法でSiO2膜を4000Å形成し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法で配線段差を平坦化した。通常のマイクロフォトリソグラフィー工程に供し
てvia holeを形成し、酸素プラズマを照射して残存するレジストを除去した後、有機アミン、水でvia holeを洗浄した。バリアーメタルとしてTiNをスパッタリング法で形成し、
さらにWプラグをCVD法およびCMP法で形成してviaを形成した。その後、上層の金属配線
を形成し、半導体装置を作成した。
【0088】
このようにして得られたそれぞれの半導体装置のシリカ系被膜の比誘電率と100個の連
続したviaの導通歩留まりを測定した。比誘電率は隣接配線間のC-V測定から算出し、100
個の連続したviaの導通歩留まりは配線抵抗の測定により評価した。
【0089】
結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

表2に示すように、実施例1〜4のフェニル基を有するシリカ系微粒子を用いたシリカ系被膜では、比誘電率は低く、viaの導通歩留まりは大きくなった。これに対し、比較例
1,2のフェニル基を有していないシリカ微粒子を用いたシリカ系被膜では、比誘電率は高くなり、viaの導通歩留まりが小さくなった。
【0091】
表2の結果から、比較例に比べ、実施例のフェニル基を有するシリカ系微粒子を用いたシリカ系被膜は、比誘電率が小さく、また、マイクロフォトリソグラフィ加工時の酸素プラズマ耐性に優れ、同時に機械的強度、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐クラック性に優れていることが認められる。このため、本発明による低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液を用いれば、優れた半導体装置が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記一般式(I)で示されるアルコキシシランの1種または2種以上を加水分解、または加水分解後、熟成して得られたシリカ微粒子の少なくとも一部の表面に、フェニル基含有アルコキシシランまたはフェニル基含有クロロシランの加水分解物を結合させて得られたフェニル基を有するシリカ系微粒子と、
(ii)下記一般式(I)で示されるアルコキシシランおよび/または下記一般式(II)で示され
るハロゲン化シランの加水分解物と、下記一般式(III)で示されるポリシラザンとの反応
物であるポリシロキサザンとの反応物を含有することを特徴とする低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液。
nSi(OR1)4-n (I)
nSiX'4-n (II)
【化1】

(Xは、水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基またはビニル基を表し、R1、R2、R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、X'はハロゲン原子を表す。
また、mは整数、nは0〜3の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(I)で示されるアルコキシシランの1種または2種以上からシリカ微粒子を
調製する際の加水分解温度または熟成温度が180℃以上であることを特徴とする請求項1
に記載の低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液。
【請求項3】
アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物とポリシラザンとの混合量が、アルコキシシランまたはハロゲン化シランの加水分解物91〜99重量%、ポリシラザン9〜1重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液。
【請求項4】
フェニル基を有するシリカ系微粒子と、ポリシロキサザンとの重量比(フェニル基を有するシリカ系微粒子の重量/ポリシロキサザンの重量)が、0.1〜20の重量比にあること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液。

【公開番号】特開2008−260939(P2008−260939A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104569(P2008−104569)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【分割の表示】特願平10−115082の分割
【原出願日】平成10年4月24日(1998.4.24)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】