低誘電率材料形成用原料
【課題】 耐水性に優れた低誘電率材料を得る。
【解決手段】 化学式(1―1)
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させたものを低誘電率材料形成用原料とする。式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成する。ただし式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。
【解決手段】 化学式(1―1)
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させたものを低誘電率材料形成用原料とする。式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成する。ただし式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率材料を形成する低誘電率材料形成用原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化および高速化に対する要求は、ますます高くなりつつあり、このような高集積化および高速化に対応するために、従来のアルミニウム合金に替えてより低抵抗な導電層の材料、すなわち配線材料の検討や、従来の酸化シリコンに替えてより低い誘電率をもつ絶縁層の材料の検討がなされている。
【0003】
特に、半導体装置の構造的な最小寸法が0.18μm程度より小さくなると、上記材料が半導体装置の配線に必要になることが、例えば、刊行物1{Cu配線技術の最新の展開:新宮原正三、粟谷信義、上野和良、三沢信祐編集(リアライズ社、1998年発行)}に記載されている。
図5は、上記刊行物に記載された半導体装置における2層の銅配線構造を示す断面図である。図において、1はシリコン基板、2は第1の配線形状に相当する凹部3を有する第1の絶縁層であり、第1の絶縁層2としては誘電率4.2のシリコン酸化膜や誘電率3.2〜3.5のフッ素含有シリコン酸化膜が用いられており、さらに、誘電率2.8以下の、より低誘電率のシリコン系無機高分子材料、有機系高分子材料、フッ素含有アモルファス炭素膜または多孔質酸化シリコン膜等が検討されている。
4は凹部3の底面および側面の内壁を被覆する拡散防止機能を有する第1の導電性被膜であり、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等や、これらの窒化物にシリコンを含有する3元系のバリアメタル等が用いられる。
【0004】
5は第1の導電性被膜4で被覆された凹部3を充填するように形成された第1の銅の導電層、6は銅の拡散防止機能を有する第1の絶縁膜であり、この第1の絶縁膜6としては窒化シリコンが用いられている。
7は第2の絶縁層であり、第1の絶縁層2と同様の材料が用いられている。第1の絶縁膜6および第2の絶縁層7を通して孔8が形成され、孔8の底面および側面は拡散防止機能を有する第2の導電性被膜9で被覆され、第1の銅の導電層5に接している。第2の導電性被膜9で被覆された孔8は第2の銅の導電層10が充填されている。
11は第2の絶縁層7に形成され、第2の配線形状に相当する凹部12の内壁を被覆する拡散防止機能を有する第3の導電性被膜である。第3の導電性被膜11で被覆された凹部12には第3の銅の導電層13が充填されている。第2の導電性被膜9および第3の導電性被膜11は第1の導電性被膜4と同様の材料で形成される。第3の銅の導電層13上面は銅の拡散防止機能を有する窒化シリコンからなる第2の絶縁膜14で被覆されている。
すなわち、第1の銅の導電層5と第3の銅の導電層13は下層および上層の配線であり、第2の銅の導電層10は上下の配線を電気的に接続している。図5は2層配線を示したが、多層配線の場合この構造を繰り返し積層することとなる。
【0005】
図5の配線構造形成法はいわゆるダマシンプロセスとよばれ、以下のような形成法である。
第1の絶縁層2に配線形状に相当する凹部3を形成し、その表面にバリアメタルである第1の導電性被膜4を成膜する。
つぎに銅を成膜して凹部3に埋め込む第1の銅の導電層5を形成する。凹部3以外にも銅が成膜されるが、CMP(ケミカルメカニカルポリッシュ)により余分な銅およびバリアメタルを研磨することにより除去し、凹部3のみに銅を残すことにより第1の銅の導電層5を形成する。これにより底部および側壁を第1の導電性被膜層4で被覆した下層の銅配線が形成される。
次に、窒化シリコン膜(図示していない)を成膜し、第1の絶縁膜6をさらに成膜して積層する。
【0006】
窒化シリコン膜および第1の絶縁膜6に、第2の配線形状に相当する凹部12と第1の銅の導電層5に達する孔8を形成する。
さらに凹部12および孔8の表面にバリアメタルとして各々第2および第3の導電性被膜9、11を成膜し、さらに上記のように銅を成膜して凹部12および孔8に埋め込み、CMP研磨により余分な銅およびバリアメタルを除去して上層の配線形状を形成する。この後、第2の絶縁膜14を成膜する。
【0007】
上記配線構造を有する半導体装置において、第1、第2の絶縁層、第1、第2の絶縁膜として、酸化シリコンやフッ素含有酸化シリコンより低誘電率である高分子や多孔質酸化シリコンを用いる場合、これらの材料は従来の酸化シリコンに比べ熱伝導性が悪く、配線における発熱により半導体装置の温度上昇を招くため、配線および装置の信頼性劣化が懸念されている。
【0008】
図6は、刊行物2{Symposiumon VLSI Technology Digest 83〜84頁(1997):W.Y.Shih、 M.C. Chang、 R.H.Havemann J.Levine}に記載された半導体装置における配線構造の断面図であり、熱伝導の問題を改善するために、上記第1、第2の絶縁層に各々2種類の絶縁材料を用いる配線構造を示す。
すなわち、配線を形成する階層の絶縁層15および16に、高分子材料等の低誘電率材料を用い、孔8を形成する階層の絶縁層および第1の銅の配線5と基板1との間の階層を構成する絶縁層17、18には、熱伝導の良好な従来の配線形状の階層の絶縁層に用いた酸化シリコンを用いて熱伝導を改良している。
【0009】
しかしながら、半導体装置における集積回路の高集積化にともなう配線形状の微細化、チップ面積増大による配線長の増大により、配線における伝達信号の遅延が装置の高速化を決定する主因になりつつあることが上記刊行物1に記載されている。
これを改善するためには、配線抵抗の低減、および配線間の静電容量、すなわち配線容量低減のために絶縁膜の低誘電率化が必要である。配線材料ではアルミニウム合金にかえて銅が適用され始めている。また層間絶縁膜では誘電率4.2のシリコン酸化膜にかえて誘電率3.2から3.5のフッ素含有シリコン酸化膜いわゆるSiOFが使用され始めている。
【0010】
しかし、SiOFで層間絶縁膜を形成する場合は、従来のものに比べて層間絶縁膜の誘電率が低くなるものの、誘電率が3.2〜3.5程度であり、したがって配線間の容量低減や配線の信号伝播遅延の防止等が十分に図られていない。
また、有機化合物材料で層間絶縁膜を形成する場合は、ポリイミドにフッ素原子を導入した膜やアリールエーテル系高分子で誘電率2.7が達成されているがまだまだ不十分である。
そしてパリレンの蒸着膜では誘電率2.4を達成できるが耐熱性が200〜300℃程度しか得られないため、半導体素子の製造プロセスに制限を加えてしまう。
また、多孔質のSiO2膜において誘電率2.0〜2.5の値が報告されているが、気孔率が高いため機械的強度(CMP研磨プロセス耐性)が弱く、また、気孔径がばらつくという問題がある。
【0011】
さらに、これら高分子材料および多孔質SiO2膜は、従来のSiO2層間絶縁膜よりも熱伝導性が劣るため、配線温度上昇による配線寿命劣化(エレクトロマイグレーション)が懸念されている。
【0012】
また、銅は電界によりこれらの絶縁膜中を拡散するため、銅配線を適用する場合、銅の表面を拡散防止膜で被覆する必要がある。
銅配線の上面および側壁は導電性のバリアメタルを被覆し、上面は絶縁性の窒化シリコンで被覆しているが、この窒化シリコン膜の誘電率は7程度であり、バリアメタルの抵抗は銅よりもはるかに高く、その結果配線全体の抵抗値は増加するため、半導体装置の高速化が制限されるという問題点があった。
また、低誘電率絶縁膜を用いる場合には信頼性劣化をさけるため熱伝導の良好な従来の酸化シリコン膜を、上下配線を接続する接続孔の階層に用いるため、さらに配線容量が増加することとなる。これらの配線容量増加は信号遅延を引き起こし半導体装置の高速化が制限されるという問題点があった。
【0013】
上記のような問題点を解決するものとして、低誘電率と耐熱性を有する材料として、無機または有機材料の分子中に、ボラジン骨格系分子を有する低誘電率材料がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−340689号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2001−15496号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の低誘電率材料は、加水分解性を有していることから、耐水性という観点に課題があった。
【0016】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、耐水性に優れ、信頼性に優れた低誘電率材料を形成することを目的とし、低誘電率材料形成用原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る第1の低誘電率材料形成用原料は、化学式(1―1)
【0018】
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではない。)
【0019】
本発明に係る第2の低誘電率材料形成用原料は、化学式(1―2)
【0020】
【化2】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐水性に優れる低誘電率材料を形成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図5】従来の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図6】従来の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図8】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図9】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図10】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図11】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図12】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図13】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図14】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図15】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図16】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図17】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図18】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図19】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図20】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図21】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図22】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図23】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図24】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図25】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図26】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図27】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図28】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図29】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図30】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図31】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図32】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図33】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図34】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図35】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図36】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図37】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図38】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図39】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図40】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図41】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図42】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図43】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図44】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図45】本発明の実施例の低誘電率材料の化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1.
本発明の第1の実施の形態の低誘電率材料の製造方法は、下記化学式(1―1)または化学式(1―2)で示される材料を出発材料として、熱処理による縮合反応によりボラジン骨格系構造を含むオリゴマーまたはポリマーを合成する方法である。
【0024】
【化3】
【0025】
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基またはSi(OR7)(OR8)(OR9)であって、少なくとも1つは水素原子ではなく、R7〜R9は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基またはアルキルホスフィノ基である。)
【0026】
【化4】
【0027】
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基またはSi(OR7)(OR8)(OR9)であって、少なくとも1つは水素原子ではなく、R7〜R9は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基またはアルキルホスフィノ基である。)
【0028】
なお、上記化学式(1−1)で示される材料は、上式中、R1〜R6の少なくとも1つが結合手となって、無機または有機材料の分子中にボラジン骨格系構造が導入されているが、上記結合手とは、上式中、R1〜R6の具体的な例として示される置換基ではなく、他の分子と結合可能な状態である場合を指す。
【0029】
本実施の形態の低誘電率材料の製造は、例えば、刊行物3{繊維と工業、第52巻、8号、341〜346頁、1996年:木村良晴}や刊行物4{Paine&Sneddon,RecentDevelopments in Borazine.BasedPolymers,"Inorganic and Organometallic Polymers”:American Chemical Society(1994)p358〜374}などに従っておこなう。
すなわち、ボラジンを出発原料として、これを加熱して縮合反応を行なわせる方法、あるいは一旦プレポリマを合成してプレポリマを重合する方法などにより得ることができる。
上記合成においては、ボラジン原料、ボラジン系プレポリマを均一に分散または溶解できる、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種アルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等有機溶媒が使用される。
【0030】
実施の形態2.
本発明の第2の実施の形態の低誘電率材料は、無機または有機材料の分子中に、上記化学式(2)ないし化学式(4)で示されるボラジン骨格系構造を有するオリゴマーまたはポリマー材料で、酸化シリコンやフッ素含有シリコンより誘電率が低く、耐水性に優れ、銅の拡散防止機能を有する窒化ホウ素を主成分とするもので、銅の拡散を防止できる。
【0031】
本実施の形態の低誘電率材料の分子中に含まれる、ボラジン骨格を有する化学構造の具体例を、図7〜44の、化学式(5)〜(116)に示す。
なお、図7〜44は、本実施の形態の低誘電率材料に係わる、分子中にボラジン骨格系分子を有する材料のボラジン骨格を示す化学式である。
【0032】
本発明の第2の実施の形態の別の低誘電率材料は、無機または有機材料の分子中に、第1のボラジン骨格系構造の水素と、第2のボラジン骨格系構造の水素原子を脱離して結合することにより得られる第3のボラジン骨格系構造を有する材料で、例えば上記化学式(25)〜化学式(28)で示されるボラジン骨格系構造を有する材料である。
【0033】
本実施の形態の低誘電率材料において、低誘電率化が達成できるのは、ボラジン骨格のイオン性電子構造により電子分極が低減されることによる。
また、上記低誘電率材料の、耐熱化が達成できるのは、述べるまでもなく有機系高分子材料と比較して耐熱性に優れた無機高分子系材料を用いているためである。
【0034】
また、上記低誘電率材料の、耐水性が達成できるのは、R1〜R4が水素以外の置換基であると、ボラジン骨格におけるホウ素原子または窒素原子と強固に結合するので、水との反応を疎外するからである。
つまり、ホウ素原子または窒素原子と結合した水素原子が容易に加水分解されるため、本実施の形態の低誘電率材料においては、少なくとも1つが水素以外の基である必要がある。
特に、窒素原子に比べて、ホウ素原子に結合した水素原子の加水分解反応が容易であるため、ホウ素に結合した置換基が水素以外であるのが望ましい。
また、本実施の形態の低誘電率材料において、分子中に含有されるボラジン骨格の置換基が、どの程度水素以外の置換基であるのが耐水性の観点から望ましいかであるが、上記置換基の全てが水素原子以外の基である場合を非水素置換100%とすると、上記全置換基の30〜40%が水素原子以外の基で置換された場合(非水素置換30〜40%の場合)に、非水素置換100%の場合と同等の耐水性が得られる。
また、窒化ホウ素にフッ素(F)を含有させることによって、さらに低誘電率とすることができ、低誘電率の絶縁層を得ることができる。
【0035】
実施の形態3.
本発明の第3の実施の形態の絶縁膜は、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を薄膜に成膜することによって得られ、半導体層間絶縁膜に適用することができ、この半導体層間絶縁膜を適用することによって優れた半導体デバイスを製造することができる。
上記第2の実施の形態の低誘電率材料を半導体装置用層間絶縁膜等、膜として用いる場合、基板への塗布は、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等で行われる。この時、作成するワニスは、本発明の低誘電率材料と他材料との混合系でも良い。
【0036】
また、半導体装置用の層間絶縁膜など膜として用いる場合、その絶縁膜である薄膜の作製は、例えば、刊行物5{S.V.Nguyen,T.Nguyen,H.Treichel,O.Spindler;J.Electrochem.Soc.,Vol.141,No.6,p1633〜1638(1994)}、刊行物6{W.F.Kane,S.A.Cohen,J.P.Hummel,B.Luther;J.Electrochem.Soc.,Vol.144,No.2,p658〜663(1997)}、刊行物7{M.Maeda,T.Makino;Japanese Journal of Applied Physics,Vol.26,No.5,p660〜665(1987)}などに従って行える。
すなわち、ジボラン(B2H6)とアンモニア(NH3)とメタン、またはボラジン(B3N3H6)とチッ素(N2)とメタンとを原料として、これを化学的気相成長法(CVD法)に適用して縮合反応を行なわせる方法などにより得ることができる。
低誘電率基板としてバルク体で用いる場合は、鋳型に流し込んで成形し、熱処理する。この時、作成するバルク体は、本発明の第2の実施の形態の低誘電率材料と他材料との混合系でも良い。
本実施の形態の絶縁膜は、半導体装置用の層間絶縁膜、バリアメタル層もしくはエッチストッパー層、またはIC基板など各種電子部品に応用することができる。
【0037】
実施の形態4.
本発明の第4の実施の形態の半導体装置は、上記実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層(膜)を用いたものである。
例えば、配線となる第1の銅の導電層を有する第1の絶縁層と、配線となる第3の銅の導電層を有する第3の絶縁層とが、第1の銅の導電層と第3の銅の導電層を連通する第2の銅の導電層を有する第2の絶縁層を介して半導体基板表面上に積層されたもので、上記第1の銅の導電層は下層、第3の銅の導電層は上層の配線で、上記第2の銅の導電層は上下配線を電気的に接続したもので、本実施の形態においては、特に上記第1の絶縁層、第2の絶縁層および第3の絶縁層の少なくともいずれかが、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層を用いたものである。
【0038】
本実施の形態の別の半導体装置は、配線となる第1の銅の導電層を有する第1の絶縁層と、配線となる第3の銅の導電層と上記第1の銅の導電層と第3の銅の導電層を連通する第2の銅の導電層とを有する第2の絶縁層とが、絶縁膜を介して半導体基板表面上に積層され、上記絶縁膜にも上記第2の銅の導電層が貫通しているもので、上記第1の銅の導電層は下層、第3の銅の導電層は上層の配線で、上記第2の銅の導電層は上下配線を電気的に接続したもので、本実施の形態においては、特に上記絶縁膜が、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるものである。
【0039】
本実施の形態に示すように、上記半導体装置においては、絶縁層(絶縁膜)が、酸化シリコンと窒化シリコンの積層膜に替えて、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるために、配線容量を低減することが可能である。
また、絶縁層(絶縁膜)が、銅の拡散防止機能を有する、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるため、接続孔部分にバリアメタル層を使用する必要がなく、低抵抗な配線を得ることができ、半導体装置を高速動作させることができる。
なお、本実施の形態において、第1〜第3の導電層を銅で形成しているので、アルミニウムを用いた場合に比べて、配線遅延を低減できるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1.
可溶性のポリ(B−トリメチルボラジレン)の合成を、Fazen等の方法(Fazen等,Chem.Mater.Vol.7,p1942,1995)を参考にして行った。
すなわち、溶媒としてテトラグライムを用い、B−トリメチルボラジンをArガス中で、撹拌脱ガスしながら220℃で2週間加熱し、高粘性液体を得た。これをエバポレーションして、白色粉末の本発明の実施例の低誘電率材料を得た。この材料は、図45における化学式(117)で表される化学構造を持ち、平均分子量(Mn)は約7500程度であった。図45は本発明の実施例の低誘電率材料の化学式である。
【0041】
上記材料をアセトンに溶解・分散し、金を対向電極として蒸着した石英板上にスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥および400℃で10分間加熱して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、その上に金を主電極として蒸着した。400℃で10分間加熱された塗膜は、ポリ(B−メチルボラジレン)の部分橋架けした構造体である。
【0042】
実施例2.
可溶性のポリ(B−トリエチルボラジレン)の合成を、実施例1と同様にして行った。
すなわち、溶媒としてテトラグライムを用い、B−トリエチルボラジンをArガス中で、撹拌脱ガスしながら220℃で2週間加熱し、高粘性液体を得た。これをエバポレーションして、白色粉末の本発明の実施例の低誘電率材料を得た。
この材料は、図45における、化学式(118)で表される化学構造を持ち、平均分子量(Mn)は約5500程度であった。
実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥)して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0043】
実施例3.
Narulaらの方法(C.K.Narula,R.Schaeffer,R.T.Paine,A.K.Datye,W.F.Hammetter;J.Am.Chem.Soc.,Vol.109,p5556,1987)で合成されたポリ(メチルボラジニルアミン)の本発明の実施例の低誘電率材料の白色粉末を用い、これをアセトンに分散し、実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥)して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0044】
実施例4.
木村の方法(Y.Kimura等;Composites Science and Technology,Vol.51,p173,1994)で、本発明の実施例の低誘電率材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の白色粉末を合成し、これをアセトンに分散して、実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0045】
上記実施例1〜4で得た絶縁膜について、25℃でインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製:4191A)を用いて1MHzで比誘電率を測定した。また、耐水性を確かめるために、上記誘電率の経時変化を評価し、測定結果を表1にまとめて示す。
【0046】
比較例
また、実施例1〜4の比較例として、ポリボラジレンを用いて実施例1と同様に絶縁膜を得、上記と同様の測定を行った。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜4で得た絶縁膜は、何れも比誘電率2.4以下であり、これらの結果から低誘電率の基板を得ることのできることがわかった。
また、これら高分子ボラジン系化合物は何れも、1000℃〜1200℃に加熱して、グラファイト化でき(梶原鳴雪監修、「無機高分子の応用展望」、p70、1990年)、450℃の耐熱性は充分に保有している。
また、実施例1〜4で得た塗膜は、比誘電率の経時変化がなく、耐水性に優れていることがわかった。
【0049】
実施例5.
図1は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図において、1はシリコンからなる半導体基板、19は酸化シリコンよりなる絶縁層、20は絶縁層19上に形成された、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる厚さ0.3μmの絶縁層で、絶縁層19と絶縁層20とによって第1の絶縁層が構成されている。
絶縁層20には幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。5は凹部3に充填された第1の銅の導電層、21は絶縁層20および第1の銅の導電層5上に形成され、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる厚さ0.5μmの第2の絶縁層で、第2の絶縁層21には第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成されており、第2の銅の導電層10として銅が、第1の銅の導電層5に接するように充填されている。
22は絶縁層21の上に形成された第3の絶縁層で、絶縁層20と同じ組成であり、また、厚さ0.2μmである。第3の絶縁層22には深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21に達し、凹部12には、銅が充填され第3の銅の導電層13が形成されている。
23は絶縁層22および第3の銅の導電層13上に形成され、絶縁層21と同じ組成を有する絶縁膜である。
【0050】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層13すべてが上記実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層20、21、22または23に接している。このような構造をとるため、上記導電層からの銅の拡散を防止できる。
絶縁層20、21、22および23の誘電率は2.2であり、またバリアメタル層を必要としないために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【0051】
実施例6.
図2は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図において、20aは絶縁層19上に形成され、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子のアモルファス状の材料からなる厚さ0.3μmの絶縁層で、絶縁層19と20aによって第1の絶縁層が構成されている。
絶縁層20aには幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。5は凹部3に充填された第1の銅の導電層、21bは絶縁層20aおよび第1の銅の導電層5上に形成され、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.5μmの第2の絶縁層で、絶縁層21bには第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成されており、第2の銅の導電層10として銅が、第1の銅の導電層5に接するように充填されている。
22aは絶縁層21bの上に形成された第3の絶縁層で、絶縁層20aと同じ材料であり、また、厚さ0.2μmである。絶縁層22aには深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21bに達し、凹部12には、銅が充填され第3の銅の導電層13が形成されている。23bは絶縁層22aおよび第3の銅の導電層13上に形成され、絶縁層21bと同じ材料からなる絶縁膜である。
【0052】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層13すべてが実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層20、21、22または23に接している。このような構造をとるため、上記導電層からの銅の拡散を防止できる。
絶縁層20aおよび22aの誘電率は2.2であり、絶縁層21bおよび23bは誘電率が2.3であり、またバリアメタル層を必要としないために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【0053】
実施例7.
図3は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図中、25は絶縁層19上に形成され、アリールエーテル系高分子材料からなる厚さ0.2μmの絶縁層で、絶縁層19と25で第1の絶縁層を構成する。絶縁層25には幅が0.2μmで、深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。
凹部3の表面を覆うように拡散防止機能をもつ第1の導電性被膜(バリアメタル層)4が形成されている。バリアメタル層4は窒化タンタルからなり、厚さは凹部3表面部分により異なるが、10nmから20nmである。バリアメタル層4で覆われた凹部3内部には銅が充填されて第1の銅の導電層5が形成されている。
絶縁層25および第1の銅の導電層5上には、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.5μmの第2の絶縁層21bが形成されている。
絶縁層21bには第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成され、銅が第1の銅の導電層5に接するように充填されて第2の銅の導電層10が形成されている。絶縁層21bの上には、絶縁層25と同じ材料からなる厚さ0.2μmの第3の絶縁層27が形成されている。絶縁層27には深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21bに達している。
凹部12には表面を覆うように拡散防止機能をもつ第2の導電層(バリアメタル層)11が形成されている。バリアメタル層11の組成および厚さはバリアメタル層4と同じである。バリアメタル層11で覆われた凹部12内部には銅が充填されて第3の銅の導電層13が形成されている。絶縁層27および第3の銅の導電層13上には、絶縁層21bと同じ材料からなる絶縁膜23bが形成されている。
【0054】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、および第3の銅の導電層13は各々バリアメタル層4および絶縁層21b、バリアメタル層11および絶縁膜23bに接している。
また、第2の銅の導電層10はバリアメタル層11および絶縁層21bに接している。このような構造をとるために上記導電層からの銅の拡散を防止できる。絶縁層25、27の誘電率は2.8であり、絶縁層21bおよび23bの誘電率は2.2であるために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
また、絶縁層25、27はアリールエーテル系高分子材料からなる絶縁層であり、絶縁層21b、23bはポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる絶縁層であるので、エッチング選択比が良く、形状の良い配線を作製することが可能になる。
【0055】
この実施の形態では、第2の銅の導電層10がある階層(絶縁層21b)をポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子で形成したが、第1の銅の導電層5、または第3の銅の導電層13がある階層(絶縁層25、27)をポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子で形成しても、同様の効果が得られる。
【0056】
実施例8.
図4は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図中、29は酸化シリコンよりなる第1の絶縁層で、絶縁層29には幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する凹部3が形成されている。
凹部3の表面を覆うように拡散防止機能をもつ第1の導電性被膜(バリアメタル層)4が形成されている。バリアメタル層4は窒化タンタルからなり、厚さは凹部3表面部分により異なるが、10nmから20nmである。バリアメタル層4で覆われた凹部3内部には銅が充填されて、第1の銅の導電層5が形成されている。
絶縁層29および第1の銅の導電層5の上には、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.05μmの絶縁膜30bが形成されている。
絶縁膜30bの上には酸化シリコンからなる第2の絶縁層31が形成され、絶縁層31には、直径0.15μmの孔8と、深さ0.2μmの第2の配線形状に相当する凹部12が形成されている。
孔8は、絶縁膜30bおよび絶縁層31に渡って、第1の銅の導電層5に達するように形成されている。また、孔8および凹部12の表面を覆うように拡散防止機能をもつ窒化タンタルからなる第2および第3の導電性被膜(バリアメタル層)9,11が形成されている。バリアメタル層9,11で覆われた孔8および凹部12内部には銅が充填されて、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層11が形成されている。
絶縁層31および第3の銅の導電層11上には、絶縁膜30bと同じ組成の絶縁膜23bが形成されている。
【0057】
このように構成された半導体装置においては、第1、第2および第3の銅の導電層5、10および13はバリアメタル層4、9および12、絶縁膜30および28に接している。
このような構造をとるためにすべての銅の導電層5、10および13からの銅の拡散を防止できる。絶縁層29および31の誘電率は2.2であり、絶縁膜30および28は4.0であるために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体基板、3 凹部、5 第1の銅の導電層、8 孔、10 第2の銅の導電層、12 凹部、13 第3の銅の導電層、19 絶縁層(酸化シリコン)、20 絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、20a 絶縁層{アモルファス状ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、21 第2の絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、21b 第2の絶縁層{微結晶とアモルファス状混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、22 第3の絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、22a 第3の絶縁層{アモルファス状ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、23 絶縁膜{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、23b 絶縁膜{微結晶とアモルファス状の混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、25 絶縁層(アリールエーテル系高分子)、27 第3の絶縁層(アリールエーテル系高分子)、29 第1の絶縁層(酸化シリコン)、30b 絶縁膜{微結晶とアモルファス状混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、31 第2の絶縁層(酸化シリコン)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率材料を形成する低誘電率材料形成用原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化および高速化に対する要求は、ますます高くなりつつあり、このような高集積化および高速化に対応するために、従来のアルミニウム合金に替えてより低抵抗な導電層の材料、すなわち配線材料の検討や、従来の酸化シリコンに替えてより低い誘電率をもつ絶縁層の材料の検討がなされている。
【0003】
特に、半導体装置の構造的な最小寸法が0.18μm程度より小さくなると、上記材料が半導体装置の配線に必要になることが、例えば、刊行物1{Cu配線技術の最新の展開:新宮原正三、粟谷信義、上野和良、三沢信祐編集(リアライズ社、1998年発行)}に記載されている。
図5は、上記刊行物に記載された半導体装置における2層の銅配線構造を示す断面図である。図において、1はシリコン基板、2は第1の配線形状に相当する凹部3を有する第1の絶縁層であり、第1の絶縁層2としては誘電率4.2のシリコン酸化膜や誘電率3.2〜3.5のフッ素含有シリコン酸化膜が用いられており、さらに、誘電率2.8以下の、より低誘電率のシリコン系無機高分子材料、有機系高分子材料、フッ素含有アモルファス炭素膜または多孔質酸化シリコン膜等が検討されている。
4は凹部3の底面および側面の内壁を被覆する拡散防止機能を有する第1の導電性被膜であり、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等や、これらの窒化物にシリコンを含有する3元系のバリアメタル等が用いられる。
【0004】
5は第1の導電性被膜4で被覆された凹部3を充填するように形成された第1の銅の導電層、6は銅の拡散防止機能を有する第1の絶縁膜であり、この第1の絶縁膜6としては窒化シリコンが用いられている。
7は第2の絶縁層であり、第1の絶縁層2と同様の材料が用いられている。第1の絶縁膜6および第2の絶縁層7を通して孔8が形成され、孔8の底面および側面は拡散防止機能を有する第2の導電性被膜9で被覆され、第1の銅の導電層5に接している。第2の導電性被膜9で被覆された孔8は第2の銅の導電層10が充填されている。
11は第2の絶縁層7に形成され、第2の配線形状に相当する凹部12の内壁を被覆する拡散防止機能を有する第3の導電性被膜である。第3の導電性被膜11で被覆された凹部12には第3の銅の導電層13が充填されている。第2の導電性被膜9および第3の導電性被膜11は第1の導電性被膜4と同様の材料で形成される。第3の銅の導電層13上面は銅の拡散防止機能を有する窒化シリコンからなる第2の絶縁膜14で被覆されている。
すなわち、第1の銅の導電層5と第3の銅の導電層13は下層および上層の配線であり、第2の銅の導電層10は上下の配線を電気的に接続している。図5は2層配線を示したが、多層配線の場合この構造を繰り返し積層することとなる。
【0005】
図5の配線構造形成法はいわゆるダマシンプロセスとよばれ、以下のような形成法である。
第1の絶縁層2に配線形状に相当する凹部3を形成し、その表面にバリアメタルである第1の導電性被膜4を成膜する。
つぎに銅を成膜して凹部3に埋め込む第1の銅の導電層5を形成する。凹部3以外にも銅が成膜されるが、CMP(ケミカルメカニカルポリッシュ)により余分な銅およびバリアメタルを研磨することにより除去し、凹部3のみに銅を残すことにより第1の銅の導電層5を形成する。これにより底部および側壁を第1の導電性被膜層4で被覆した下層の銅配線が形成される。
次に、窒化シリコン膜(図示していない)を成膜し、第1の絶縁膜6をさらに成膜して積層する。
【0006】
窒化シリコン膜および第1の絶縁膜6に、第2の配線形状に相当する凹部12と第1の銅の導電層5に達する孔8を形成する。
さらに凹部12および孔8の表面にバリアメタルとして各々第2および第3の導電性被膜9、11を成膜し、さらに上記のように銅を成膜して凹部12および孔8に埋め込み、CMP研磨により余分な銅およびバリアメタルを除去して上層の配線形状を形成する。この後、第2の絶縁膜14を成膜する。
【0007】
上記配線構造を有する半導体装置において、第1、第2の絶縁層、第1、第2の絶縁膜として、酸化シリコンやフッ素含有酸化シリコンより低誘電率である高分子や多孔質酸化シリコンを用いる場合、これらの材料は従来の酸化シリコンに比べ熱伝導性が悪く、配線における発熱により半導体装置の温度上昇を招くため、配線および装置の信頼性劣化が懸念されている。
【0008】
図6は、刊行物2{Symposiumon VLSI Technology Digest 83〜84頁(1997):W.Y.Shih、 M.C. Chang、 R.H.Havemann J.Levine}に記載された半導体装置における配線構造の断面図であり、熱伝導の問題を改善するために、上記第1、第2の絶縁層に各々2種類の絶縁材料を用いる配線構造を示す。
すなわち、配線を形成する階層の絶縁層15および16に、高分子材料等の低誘電率材料を用い、孔8を形成する階層の絶縁層および第1の銅の配線5と基板1との間の階層を構成する絶縁層17、18には、熱伝導の良好な従来の配線形状の階層の絶縁層に用いた酸化シリコンを用いて熱伝導を改良している。
【0009】
しかしながら、半導体装置における集積回路の高集積化にともなう配線形状の微細化、チップ面積増大による配線長の増大により、配線における伝達信号の遅延が装置の高速化を決定する主因になりつつあることが上記刊行物1に記載されている。
これを改善するためには、配線抵抗の低減、および配線間の静電容量、すなわち配線容量低減のために絶縁膜の低誘電率化が必要である。配線材料ではアルミニウム合金にかえて銅が適用され始めている。また層間絶縁膜では誘電率4.2のシリコン酸化膜にかえて誘電率3.2から3.5のフッ素含有シリコン酸化膜いわゆるSiOFが使用され始めている。
【0010】
しかし、SiOFで層間絶縁膜を形成する場合は、従来のものに比べて層間絶縁膜の誘電率が低くなるものの、誘電率が3.2〜3.5程度であり、したがって配線間の容量低減や配線の信号伝播遅延の防止等が十分に図られていない。
また、有機化合物材料で層間絶縁膜を形成する場合は、ポリイミドにフッ素原子を導入した膜やアリールエーテル系高分子で誘電率2.7が達成されているがまだまだ不十分である。
そしてパリレンの蒸着膜では誘電率2.4を達成できるが耐熱性が200〜300℃程度しか得られないため、半導体素子の製造プロセスに制限を加えてしまう。
また、多孔質のSiO2膜において誘電率2.0〜2.5の値が報告されているが、気孔率が高いため機械的強度(CMP研磨プロセス耐性)が弱く、また、気孔径がばらつくという問題がある。
【0011】
さらに、これら高分子材料および多孔質SiO2膜は、従来のSiO2層間絶縁膜よりも熱伝導性が劣るため、配線温度上昇による配線寿命劣化(エレクトロマイグレーション)が懸念されている。
【0012】
また、銅は電界によりこれらの絶縁膜中を拡散するため、銅配線を適用する場合、銅の表面を拡散防止膜で被覆する必要がある。
銅配線の上面および側壁は導電性のバリアメタルを被覆し、上面は絶縁性の窒化シリコンで被覆しているが、この窒化シリコン膜の誘電率は7程度であり、バリアメタルの抵抗は銅よりもはるかに高く、その結果配線全体の抵抗値は増加するため、半導体装置の高速化が制限されるという問題点があった。
また、低誘電率絶縁膜を用いる場合には信頼性劣化をさけるため熱伝導の良好な従来の酸化シリコン膜を、上下配線を接続する接続孔の階層に用いるため、さらに配線容量が増加することとなる。これらの配線容量増加は信号遅延を引き起こし半導体装置の高速化が制限されるという問題点があった。
【0013】
上記のような問題点を解決するものとして、低誘電率と耐熱性を有する材料として、無機または有機材料の分子中に、ボラジン骨格系分子を有する低誘電率材料がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−340689号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2001−15496号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の低誘電率材料は、加水分解性を有していることから、耐水性という観点に課題があった。
【0016】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、耐水性に優れ、信頼性に優れた低誘電率材料を形成することを目的とし、低誘電率材料形成用原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る第1の低誘電率材料形成用原料は、化学式(1―1)
【0018】
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではない。)
【0019】
本発明に係る第2の低誘電率材料形成用原料は、化学式(1―2)
【0020】
【化2】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐水性に優れる低誘電率材料を形成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図5】従来の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図6】従来の半導体装置の配線構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図8】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図9】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図10】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図11】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図12】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図13】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図14】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図15】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図16】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図17】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図18】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図19】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図20】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図21】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図22】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図23】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図24】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図25】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図26】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図27】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図28】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図29】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図30】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図31】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図32】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図33】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図34】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図35】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図36】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図37】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図38】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図39】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図40】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図41】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図42】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図43】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図44】本発明の実施の形態の低誘電率材料の、分子中のボラジン骨格を示す化学式である。
【図45】本発明の実施例の低誘電率材料の化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1.
本発明の第1の実施の形態の低誘電率材料の製造方法は、下記化学式(1―1)または化学式(1―2)で示される材料を出発材料として、熱処理による縮合反応によりボラジン骨格系構造を含むオリゴマーまたはポリマーを合成する方法である。
【0024】
【化3】
【0025】
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基またはSi(OR7)(OR8)(OR9)であって、少なくとも1つは水素原子ではなく、R7〜R9は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基またはアルキルホスフィノ基である。)
【0026】
【化4】
【0027】
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基またはSi(OR7)(OR8)(OR9)であって、少なくとも1つは水素原子ではなく、R7〜R9は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリル基、置換アリル基、アルケニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、カルボニル基、シリル基、アルキルシリル基、ホスフィノ基またはアルキルホスフィノ基である。)
【0028】
なお、上記化学式(1−1)で示される材料は、上式中、R1〜R6の少なくとも1つが結合手となって、無機または有機材料の分子中にボラジン骨格系構造が導入されているが、上記結合手とは、上式中、R1〜R6の具体的な例として示される置換基ではなく、他の分子と結合可能な状態である場合を指す。
【0029】
本実施の形態の低誘電率材料の製造は、例えば、刊行物3{繊維と工業、第52巻、8号、341〜346頁、1996年:木村良晴}や刊行物4{Paine&Sneddon,RecentDevelopments in Borazine.BasedPolymers,"Inorganic and Organometallic Polymers”:American Chemical Society(1994)p358〜374}などに従っておこなう。
すなわち、ボラジンを出発原料として、これを加熱して縮合反応を行なわせる方法、あるいは一旦プレポリマを合成してプレポリマを重合する方法などにより得ることができる。
上記合成においては、ボラジン原料、ボラジン系プレポリマを均一に分散または溶解できる、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種アルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等有機溶媒が使用される。
【0030】
実施の形態2.
本発明の第2の実施の形態の低誘電率材料は、無機または有機材料の分子中に、上記化学式(2)ないし化学式(4)で示されるボラジン骨格系構造を有するオリゴマーまたはポリマー材料で、酸化シリコンやフッ素含有シリコンより誘電率が低く、耐水性に優れ、銅の拡散防止機能を有する窒化ホウ素を主成分とするもので、銅の拡散を防止できる。
【0031】
本実施の形態の低誘電率材料の分子中に含まれる、ボラジン骨格を有する化学構造の具体例を、図7〜44の、化学式(5)〜(116)に示す。
なお、図7〜44は、本実施の形態の低誘電率材料に係わる、分子中にボラジン骨格系分子を有する材料のボラジン骨格を示す化学式である。
【0032】
本発明の第2の実施の形態の別の低誘電率材料は、無機または有機材料の分子中に、第1のボラジン骨格系構造の水素と、第2のボラジン骨格系構造の水素原子を脱離して結合することにより得られる第3のボラジン骨格系構造を有する材料で、例えば上記化学式(25)〜化学式(28)で示されるボラジン骨格系構造を有する材料である。
【0033】
本実施の形態の低誘電率材料において、低誘電率化が達成できるのは、ボラジン骨格のイオン性電子構造により電子分極が低減されることによる。
また、上記低誘電率材料の、耐熱化が達成できるのは、述べるまでもなく有機系高分子材料と比較して耐熱性に優れた無機高分子系材料を用いているためである。
【0034】
また、上記低誘電率材料の、耐水性が達成できるのは、R1〜R4が水素以外の置換基であると、ボラジン骨格におけるホウ素原子または窒素原子と強固に結合するので、水との反応を疎外するからである。
つまり、ホウ素原子または窒素原子と結合した水素原子が容易に加水分解されるため、本実施の形態の低誘電率材料においては、少なくとも1つが水素以外の基である必要がある。
特に、窒素原子に比べて、ホウ素原子に結合した水素原子の加水分解反応が容易であるため、ホウ素に結合した置換基が水素以外であるのが望ましい。
また、本実施の形態の低誘電率材料において、分子中に含有されるボラジン骨格の置換基が、どの程度水素以外の置換基であるのが耐水性の観点から望ましいかであるが、上記置換基の全てが水素原子以外の基である場合を非水素置換100%とすると、上記全置換基の30〜40%が水素原子以外の基で置換された場合(非水素置換30〜40%の場合)に、非水素置換100%の場合と同等の耐水性が得られる。
また、窒化ホウ素にフッ素(F)を含有させることによって、さらに低誘電率とすることができ、低誘電率の絶縁層を得ることができる。
【0035】
実施の形態3.
本発明の第3の実施の形態の絶縁膜は、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を薄膜に成膜することによって得られ、半導体層間絶縁膜に適用することができ、この半導体層間絶縁膜を適用することによって優れた半導体デバイスを製造することができる。
上記第2の実施の形態の低誘電率材料を半導体装置用層間絶縁膜等、膜として用いる場合、基板への塗布は、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等で行われる。この時、作成するワニスは、本発明の低誘電率材料と他材料との混合系でも良い。
【0036】
また、半導体装置用の層間絶縁膜など膜として用いる場合、その絶縁膜である薄膜の作製は、例えば、刊行物5{S.V.Nguyen,T.Nguyen,H.Treichel,O.Spindler;J.Electrochem.Soc.,Vol.141,No.6,p1633〜1638(1994)}、刊行物6{W.F.Kane,S.A.Cohen,J.P.Hummel,B.Luther;J.Electrochem.Soc.,Vol.144,No.2,p658〜663(1997)}、刊行物7{M.Maeda,T.Makino;Japanese Journal of Applied Physics,Vol.26,No.5,p660〜665(1987)}などに従って行える。
すなわち、ジボラン(B2H6)とアンモニア(NH3)とメタン、またはボラジン(B3N3H6)とチッ素(N2)とメタンとを原料として、これを化学的気相成長法(CVD法)に適用して縮合反応を行なわせる方法などにより得ることができる。
低誘電率基板としてバルク体で用いる場合は、鋳型に流し込んで成形し、熱処理する。この時、作成するバルク体は、本発明の第2の実施の形態の低誘電率材料と他材料との混合系でも良い。
本実施の形態の絶縁膜は、半導体装置用の層間絶縁膜、バリアメタル層もしくはエッチストッパー層、またはIC基板など各種電子部品に応用することができる。
【0037】
実施の形態4.
本発明の第4の実施の形態の半導体装置は、上記実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層(膜)を用いたものである。
例えば、配線となる第1の銅の導電層を有する第1の絶縁層と、配線となる第3の銅の導電層を有する第3の絶縁層とが、第1の銅の導電層と第3の銅の導電層を連通する第2の銅の導電層を有する第2の絶縁層を介して半導体基板表面上に積層されたもので、上記第1の銅の導電層は下層、第3の銅の導電層は上層の配線で、上記第2の銅の導電層は上下配線を電気的に接続したもので、本実施の形態においては、特に上記第1の絶縁層、第2の絶縁層および第3の絶縁層の少なくともいずれかが、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層を用いたものである。
【0038】
本実施の形態の別の半導体装置は、配線となる第1の銅の導電層を有する第1の絶縁層と、配線となる第3の銅の導電層と上記第1の銅の導電層と第3の銅の導電層を連通する第2の銅の導電層とを有する第2の絶縁層とが、絶縁膜を介して半導体基板表面上に積層され、上記絶縁膜にも上記第2の銅の導電層が貫通しているもので、上記第1の銅の導電層は下層、第3の銅の導電層は上層の配線で、上記第2の銅の導電層は上下配線を電気的に接続したもので、本実施の形態においては、特に上記絶縁膜が、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるものである。
【0039】
本実施の形態に示すように、上記半導体装置においては、絶縁層(絶縁膜)が、酸化シリコンと窒化シリコンの積層膜に替えて、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるために、配線容量を低減することが可能である。
また、絶縁層(絶縁膜)が、銅の拡散防止機能を有する、上記第2の実施の形態の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなるため、接続孔部分にバリアメタル層を使用する必要がなく、低抵抗な配線を得ることができ、半導体装置を高速動作させることができる。
なお、本実施の形態において、第1〜第3の導電層を銅で形成しているので、アルミニウムを用いた場合に比べて、配線遅延を低減できるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1.
可溶性のポリ(B−トリメチルボラジレン)の合成を、Fazen等の方法(Fazen等,Chem.Mater.Vol.7,p1942,1995)を参考にして行った。
すなわち、溶媒としてテトラグライムを用い、B−トリメチルボラジンをArガス中で、撹拌脱ガスしながら220℃で2週間加熱し、高粘性液体を得た。これをエバポレーションして、白色粉末の本発明の実施例の低誘電率材料を得た。この材料は、図45における化学式(117)で表される化学構造を持ち、平均分子量(Mn)は約7500程度であった。図45は本発明の実施例の低誘電率材料の化学式である。
【0041】
上記材料をアセトンに溶解・分散し、金を対向電極として蒸着した石英板上にスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥および400℃で10分間加熱して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、その上に金を主電極として蒸着した。400℃で10分間加熱された塗膜は、ポリ(B−メチルボラジレン)の部分橋架けした構造体である。
【0042】
実施例2.
可溶性のポリ(B−トリエチルボラジレン)の合成を、実施例1と同様にして行った。
すなわち、溶媒としてテトラグライムを用い、B−トリエチルボラジンをArガス中で、撹拌脱ガスしながら220℃で2週間加熱し、高粘性液体を得た。これをエバポレーションして、白色粉末の本発明の実施例の低誘電率材料を得た。
この材料は、図45における、化学式(118)で表される化学構造を持ち、平均分子量(Mn)は約5500程度であった。
実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥)して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0043】
実施例3.
Narulaらの方法(C.K.Narula,R.Schaeffer,R.T.Paine,A.K.Datye,W.F.Hammetter;J.Am.Chem.Soc.,Vol.109,p5556,1987)で合成されたポリ(メチルボラジニルアミン)の本発明の実施例の低誘電率材料の白色粉末を用い、これをアセトンに分散し、実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥)して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0044】
実施例4.
木村の方法(Y.Kimura等;Composites Science and Technology,Vol.51,p173,1994)で、本発明の実施例の低誘電率材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の白色粉末を合成し、これをアセトンに分散して、実施例1と同様にしてスピンコート法で塗布し、塗膜を100℃で10分間乾燥して本発明の実施例の絶縁膜を得た後、実施例1と同様にしてその上に金を主電極として蒸着した。
【0045】
上記実施例1〜4で得た絶縁膜について、25℃でインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製:4191A)を用いて1MHzで比誘電率を測定した。また、耐水性を確かめるために、上記誘電率の経時変化を評価し、測定結果を表1にまとめて示す。
【0046】
比較例
また、実施例1〜4の比較例として、ポリボラジレンを用いて実施例1と同様に絶縁膜を得、上記と同様の測定を行った。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜4で得た絶縁膜は、何れも比誘電率2.4以下であり、これらの結果から低誘電率の基板を得ることのできることがわかった。
また、これら高分子ボラジン系化合物は何れも、1000℃〜1200℃に加熱して、グラファイト化でき(梶原鳴雪監修、「無機高分子の応用展望」、p70、1990年)、450℃の耐熱性は充分に保有している。
また、実施例1〜4で得た塗膜は、比誘電率の経時変化がなく、耐水性に優れていることがわかった。
【0049】
実施例5.
図1は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図において、1はシリコンからなる半導体基板、19は酸化シリコンよりなる絶縁層、20は絶縁層19上に形成された、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる厚さ0.3μmの絶縁層で、絶縁層19と絶縁層20とによって第1の絶縁層が構成されている。
絶縁層20には幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。5は凹部3に充填された第1の銅の導電層、21は絶縁層20および第1の銅の導電層5上に形成され、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる厚さ0.5μmの第2の絶縁層で、第2の絶縁層21には第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成されており、第2の銅の導電層10として銅が、第1の銅の導電層5に接するように充填されている。
22は絶縁層21の上に形成された第3の絶縁層で、絶縁層20と同じ組成であり、また、厚さ0.2μmである。第3の絶縁層22には深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21に達し、凹部12には、銅が充填され第3の銅の導電層13が形成されている。
23は絶縁層22および第3の銅の導電層13上に形成され、絶縁層21と同じ組成を有する絶縁膜である。
【0050】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層13すべてが上記実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層20、21、22または23に接している。このような構造をとるため、上記導電層からの銅の拡散を防止できる。
絶縁層20、21、22および23の誘電率は2.2であり、またバリアメタル層を必要としないために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【0051】
実施例6.
図2は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図において、20aは絶縁層19上に形成され、上記実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子のアモルファス状の材料からなる厚さ0.3μmの絶縁層で、絶縁層19と20aによって第1の絶縁層が構成されている。
絶縁層20aには幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。5は凹部3に充填された第1の銅の導電層、21bは絶縁層20aおよび第1の銅の導電層5上に形成され、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.5μmの第2の絶縁層で、絶縁層21bには第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成されており、第2の銅の導電層10として銅が、第1の銅の導電層5に接するように充填されている。
22aは絶縁層21bの上に形成された第3の絶縁層で、絶縁層20aと同じ材料であり、また、厚さ0.2μmである。絶縁層22aには深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21bに達し、凹部12には、銅が充填され第3の銅の導電層13が形成されている。23bは絶縁層22aおよび第3の銅の導電層13上に形成され、絶縁層21bと同じ材料からなる絶縁膜である。
【0052】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層13すべてが実施の形態2の低誘電率材料を用いた絶縁材料からなる絶縁層20、21、22または23に接している。このような構造をとるため、上記導電層からの銅の拡散を防止できる。
絶縁層20aおよび22aの誘電率は2.2であり、絶縁層21bおよび23bは誘電率が2.3であり、またバリアメタル層を必要としないために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【0053】
実施例7.
図3は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図中、25は絶縁層19上に形成され、アリールエーテル系高分子材料からなる厚さ0.2μmの絶縁層で、絶縁層19と25で第1の絶縁層を構成する。絶縁層25には幅が0.2μmで、深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する第1の凹部3が形成されている。
凹部3の表面を覆うように拡散防止機能をもつ第1の導電性被膜(バリアメタル層)4が形成されている。バリアメタル層4は窒化タンタルからなり、厚さは凹部3表面部分により異なるが、10nmから20nmである。バリアメタル層4で覆われた凹部3内部には銅が充填されて第1の銅の導電層5が形成されている。
絶縁層25および第1の銅の導電層5上には、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.5μmの第2の絶縁層21bが形成されている。
絶縁層21bには第1の銅の導電層5に達する直径0.15μmの孔8が形成され、銅が第1の銅の導電層5に接するように充填されて第2の銅の導電層10が形成されている。絶縁層21bの上には、絶縁層25と同じ材料からなる厚さ0.2μmの第3の絶縁層27が形成されている。絶縁層27には深さが0.2μmである第2の配線形状に相当する第2の凹部12が形成され、底面は絶縁層21bに達している。
凹部12には表面を覆うように拡散防止機能をもつ第2の導電層(バリアメタル層)11が形成されている。バリアメタル層11の組成および厚さはバリアメタル層4と同じである。バリアメタル層11で覆われた凹部12内部には銅が充填されて第3の銅の導電層13が形成されている。絶縁層27および第3の銅の導電層13上には、絶縁層21bと同じ材料からなる絶縁膜23bが形成されている。
【0054】
このように構成された半導体装置においては、第1の銅の導電層5、および第3の銅の導電層13は各々バリアメタル層4および絶縁層21b、バリアメタル層11および絶縁膜23bに接している。
また、第2の銅の導電層10はバリアメタル層11および絶縁層21bに接している。このような構造をとるために上記導電層からの銅の拡散を防止できる。絶縁層25、27の誘電率は2.8であり、絶縁層21bおよび23bの誘電率は2.2であるために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
また、絶縁層25、27はアリールエーテル系高分子材料からなる絶縁層であり、絶縁層21b、23bはポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子からなる絶縁層であるので、エッチング選択比が良く、形状の良い配線を作製することが可能になる。
【0055】
この実施の形態では、第2の銅の導電層10がある階層(絶縁層21b)をポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子で形成したが、第1の銅の導電層5、または第3の銅の導電層13がある階層(絶縁層25、27)をポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子で形成しても、同様の効果が得られる。
【0056】
実施例8.
図4は、本発明の実施例の半導体装置の配線構造を示す断面図である。図中、29は酸化シリコンよりなる第1の絶縁層で、絶縁層29には幅が0.2μmで深さが0.2μmである第1の配線形状に相当する凹部3が形成されている。
凹部3の表面を覆うように拡散防止機能をもつ第1の導電性被膜(バリアメタル層)4が形成されている。バリアメタル層4は窒化タンタルからなり、厚さは凹部3表面部分により異なるが、10nmから20nmである。バリアメタル層4で覆われた凹部3内部には銅が充填されて、第1の銅の導電層5が形成されている。
絶縁層29および第1の銅の導電層5の上には、実施の形態2の低誘電材料である、ポリ(B−メチルアミノボラジン)の架橋高分子の微結晶とアモルファス構造の混在する材料からなる、厚さ0.05μmの絶縁膜30bが形成されている。
絶縁膜30bの上には酸化シリコンからなる第2の絶縁層31が形成され、絶縁層31には、直径0.15μmの孔8と、深さ0.2μmの第2の配線形状に相当する凹部12が形成されている。
孔8は、絶縁膜30bおよび絶縁層31に渡って、第1の銅の導電層5に達するように形成されている。また、孔8および凹部12の表面を覆うように拡散防止機能をもつ窒化タンタルからなる第2および第3の導電性被膜(バリアメタル層)9,11が形成されている。バリアメタル層9,11で覆われた孔8および凹部12内部には銅が充填されて、第2の銅の導電層10および第3の銅の導電層11が形成されている。
絶縁層31および第3の銅の導電層11上には、絶縁膜30bと同じ組成の絶縁膜23bが形成されている。
【0057】
このように構成された半導体装置においては、第1、第2および第3の銅の導電層5、10および13はバリアメタル層4、9および12、絶縁膜30および28に接している。
このような構造をとるためにすべての銅の導電層5、10および13からの銅の拡散を防止できる。絶縁層29および31の誘電率は2.2であり、絶縁膜30および28は4.0であるために、図6に示した従来の配線構造よりも配線容量を低減することが可能であり、半導体装置の高速動作が可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体基板、3 凹部、5 第1の銅の導電層、8 孔、10 第2の銅の導電層、12 凹部、13 第3の銅の導電層、19 絶縁層(酸化シリコン)、20 絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、20a 絶縁層{アモルファス状ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、21 第2の絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、21b 第2の絶縁層{微結晶とアモルファス状混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、22 第3の絶縁層{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、22a 第3の絶縁層{アモルファス状ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、23 絶縁膜{ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、23b 絶縁膜{微結晶とアモルファス状の混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、25 絶縁層(アリールエーテル系高分子)、27 第3の絶縁層(アリールエーテル系高分子)、29 第1の絶縁層(酸化シリコン)、30b 絶縁膜{微結晶とアモルファス状混在ポリ(B−メチルアミノボラジン)}、31 第2の絶縁層(酸化シリコン)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1―1)
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではない。)
【請求項2】
化学式(1―2)
【化2】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。)
【請求項3】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラグライムから選ばれる一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電率材料形成用原料。
【請求項4】
CVDの原料に適用する請求項1または2に記載の低誘電率材料形成用原料。
【請求項1】
化学式(1―1)
【化1】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではない。)
【請求項2】
化学式(1―2)
【化2】
で示されるボラジン系原料を有機溶媒に分散または溶解させた低誘電率材料形成用原料であって、式中のホウ素原子もしくは窒素原子が備える手が結合手となってボラジン環が結ばれたボラジン骨格系構造を形成し、上記ボラジン骨格系構造が繰り返されたオリゴマーまたはポリマーとして低誘電率材料を生成することを特徴とする低誘電率材料形成用原料。
(上式中、上記結合手以外のR1〜R6は、水素原子、炭素原子数1〜2のアルキル基の少なくともいずれかであって、少なくとも1つは水素原子ではなく、少なくとも1つは水素原子である。)
【請求項3】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラグライムから選ばれる一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電率材料形成用原料。
【請求項4】
CVDの原料に適用する請求項1または2に記載の低誘電率材料形成用原料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図22】
【図23】
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【図27】
【図28】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2012−12607(P2012−12607A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155916(P2011−155916)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2007−173966(P2007−173966)の分割
【原出願日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2007−173966(P2007−173966)の分割
【原出願日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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