説明

低透過度カーカス補強コード及び様々な厚さのゴムコンパウンドを有するタイヤ

本発明は、少なくとも1つの金属補強要素層から成る半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤが、それ自体半径方向にトレッド(6)を載せたクラウン補強材(5)を有し、トレッドが2つのサイドウォールを経て2つのビード(3)に接合されているタイヤに関する。本発明によれば、少なくとも1つのカーカス補強材(2)の層の金属補強要素は、いわゆる透過度試験において20cm/分未満の流量を示す非補強ケーブルであり、半径方向平面で見て、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、タイヤキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間の配合ゴムの厚さは、3.5mm以下であり、タイヤの2つの別々の部分に関して、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間の配合ゴムのそれぞれの厚さの比は、1.15を超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向カーカス補強材を備えたタイヤ、特に、持続速度で走行する重車両、例えばローリ、トラクタ、トレーラ又はバスに取り付けられるようになったタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、特に重車両用のタイヤの補強材は、現時点では―そして大抵の場合―従来「カーカスプライ」、「クラウンプライ」等と呼ばれている1枚又は2枚以上のプライのスタックで構成されている。補強材をこのように命名する仕方は、大抵の場合、長手方向の細線状補強材を備えたプライの形態をしている一連の半完成状態の製品を作り、次に、これらを組み立て又は積み重ねてタイヤブランクを作るという製造方法に由来している。プライを寸法が相当大きな状態で平らに作り、次に、所与の製品の寸法に合わせて裁断する。また、プライの組み立てを、当初、ほぼ平らに実施する。次に、このようにして作られたブランクタイヤに成形作業を行ってタイの典型的なドーナツ形状を形成する。次に、半完成状態又は「完成途上」製品をブランクに張り付けていつでも硬化させることができる状態の製品を得る。
【0003】
かかる「従来」方法では、特にタイヤブランクを製造する段階に関し、カーカス補強材をタイヤのビードゾーン内に繋留し又は保持するための繋留要素(一般にビードワイヤ)が用いられる。かくして、このような形式の方法では、カーカス補強材を構成するプライの全ての一部(又はその一部のみ)をタイヤのビード内に納められたビードワイヤ周りに巻き上げる又は上方に折り返す。これにより、カーカス補強材がビード中に繋留される。
【0004】
この種の従来方法の業界における一般化又は普及の結果として、プライ及び組立体を製造する仕方に多くの別法が存在しているにもかかわらず、当業者は、この方法に基づく語彙を用いており、それ故、一般に用いられている用語として、特に「プライ」、「カーカス」、「ビードワイヤ」、平べったいプロフィールからドーナツ形プロフィール等への移行を意味する「シェーピング」という用語等が挙げられる。
【0005】
今日、厳密に言えば、上述の定義から理解されるような「プライ」又は「ビードワイヤ」を備えていないタイヤが存在する。例えば、欧州特許第0582196号明細書は、プライの形態の半完成状態の製品を用いないで製造されたタイヤを記載している。例えば、種々の補強構造体の補強要素を隣接のゴムコンパウンド層に直接張り付け、次に、これら全てを連続した層の状態でドーナツ形コアに張り付け、このドーナツ形コアの形状が、製造中のタイヤの最終プロフィールとほぼ同じプロフィールを直接生じさせる。かくして、この場合、「半完成状態」の製品又は「プライ」若しくは「ビードワイヤ」は存在しない。基本的製品、例えばゴムコンパウンド及び細線又はフィラメントの形態をした補強要素は、コアに直接張り付けられる。このコアの形状は、ドーナツ形のものなので、平らなプロフィールからトーラス形状のプロフィールにするためにブランクを形成することはもはや不要である。
【0006】
さらに、この特許文献に記載されたタイヤは、ビードワイヤ周りのカーカスプライの「伝統的な」巻き上げを用いていない。この種の繋留方式に代えて、円周方向細線がサイドウォール補強構造体に隣接して位置決めされる構造が用いられ、全てのものは、繋留又は結合ゴムコンパウンド中に埋め込まれる。
【0007】
また、中央コア上への迅速且つ効率的で、しかも簡単な積層向けに特に設計された半完成状態の製品を採用するドーナツ形コアへの組み付け方法が存在する。最後に、或る特定のアーキテクチャ上の観点を達成する或る幾つかの完成状態の製品(例えばプライ、ビードワイヤ等)を組み合わせたハイブリッド又は混成体を用いる一方で他のものをコンパウンド及び/又は補強要素の直接的張り付けによって製作することも又、可能である。
【0008】
上記特許文献では、製品製造分野と製品設計分野の両方における最近の技術進歩を考慮に入れるためには、従来の用語、例えば「プライ」、「ビードワイヤ」等に代えて、中立的な用語又は用いられる方法の形式とは無関係の用語を用いると好都合である。それ故、「カーカス型補強材」又は「サイドウォール補強材」という用語は、従来方法におけるカーカスプライの補強要素及び半完成状態の製品が用いられない方法に従って製作されたタイヤの対応の補強要素(これら補強要素は、一般的にサイドウォールに張り付けられる)を表すのに有効に用いられる。「繋留ゾーン」という用語は、その一部について、従来方法におけるビードワイヤ周りへのカーカスプライの「伝統的」巻き上げ部をまさしく容易に表すことができる。というのは、これは、円周方向補強要素、ゴムコンパウンド及びドーナツ形コアへの張り付けを含む方法を用いて形成された底部領域の隣接のサイドウォール補強部分により形成された組立体だからである。
【0009】
一般に、重車両用タイヤでは、カーカス補強材は、ビードの領域で各側が繋留され、半径方向上側には、互いに重ね合わされた少なくとも2つの層により構成されるクラウン補強材が設けられ、これら層は、各層内で互いに平行であり、1つの層から次の層にクロス掛けされ、円周方向と10°〜45°の角度をなす細線又はコードで形成されている。実働補強材を形成する実働層も又、補強要素で作られた少なくとも1つのいわゆる保護層で覆われるのが良く、これら補強要素は、有利には、金属であり且つ伸張性であり、弾性補強要素と呼ばれている。保護層は、円周方向と45°〜90°の角度をなす伸張性の低い金属コード又は細線の層を更に含み、補強プライと呼ばれるこのプライは、カーカス補強材と絶対値で言ってせいぜい45°の角度をなして互いに平行なコード又は細線で作られた第1のいわゆる実働クラウンプライとの間に半径方向に位置する。補強プライは、少なくとも実働プライと一緒になって三角形構造補強材を形成し、この三角形構造補強材は、これが受ける種々の応力下において、生じる変形量が非常に僅かであり、補強プライの本質的の役割は、補強要素の全てがタイヤのクラウンの領域で受ける横方向圧縮力に反作用することにある。
【0010】
重車両用のタイヤの場合、単一の保護層が設けられるのが通例であり、その保護要素は、大抵の場合、同一方向に且つ半径方向最も外側の、それ故に半径方向に隣接した実働層の補強要素の角度と絶対値で言って同一の角度で差し向けられている。幾分凸凹の路面上を走行するようになった土木作業車両用のタイヤの場合、2枚の保護プライが存在することは、有利であり、補強要素は、或る1つの層から次の層にクロス掛けされ、半径方向内側の保護層の補強要素は、半径方向外部に位置すると共にこの半径方向内側保護層に隣接して位置する実働層の非伸張性補強要素とクロス掛け関係をなしている。
【0011】
タイヤの円周方向又は長手方向は、タイヤの周囲に対応すると共にタイヤの走行方向によって定められる方向である。
【0012】
タイヤの横方向又は軸方向は、タイヤの回転軸線に平行である。
【0013】
半径方向は、タイヤの回転軸線と交差し且つこれに垂直な方向である。
【0014】
タイヤの回転軸線は、タイヤが通常の使用中に回転する中心となる軸線である。
【0015】
半径方向面又は子午面は、タイヤの回転軸線を含む平面である。
【0016】
円周方向中間平面又は赤道面は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つタイヤを2つの半部に区分する平面である。
【0017】
或る特定の現行の「ロード」タイヤは、世界中で道路ネットワークが向上していると共に自動車専用道路ネットワークが広がっているので、高速で且つますます長く遠出して走行するようになっている。タイヤが問題なく走行するための必要条件の全てにより、タイヤは、タイヤの摩耗が少ないので長い距離(キロメートル)にわたって走行できる。しかしながら、このタイヤの耐久性は、損なわれる。かかるタイヤの寿命を延ばすためにはかかる寿命に対して1回又はそれどころか2回の更生(山掛け)作業を行なうことができるようにするためには、かかる更生作業に耐えるのに十分な耐久性を持つ構造体、特にカーカス補強材を維持することが必要である。
【0018】
このようにして更生されたタイヤの特に過酷な条件下における長距離にわたる走行は、これらタイヤの耐久性の面において明らかに効果的に限度をもたらす。
【0019】
カーカス補強材の構成要素は、特に、走行中、曲げ応力及び圧縮応力を受け、これら応力は、これら構成要素の耐久性に悪影響を及ぼす。カーカス補強材層の補強要素を構成するコードは、事実、タイヤが走行しているとき、大きな応力、特に繰り返し曲げ応力又は曲率の変化を受け、それにより細線相互間に摩擦が生じ、したがって摩耗及び疲労が生じ、この現象は、「疲労フレッチング」と呼ばれている。
【0020】
タイヤのカーカス補強材を強化するこれら機能を実現させるため、コードは、第1に、曲げの際に良好な可撓性及び高い耐久性を持たなければならず、このことは、特に、これらの細線が比較的小さな直径、好ましくは、0.28mm未満、より好ましくは0.25mm未満の直径を備えなければならず、一般に、タイヤのクラウン補強材のための従来型コードで用いられている細線の直径よりも小さい直径を持たなければならないということを意味している。
【0021】
カーカス補強材のコードも又、コードのその正に性状に起因して「疲労‐腐食」という現象を受け、かかる疲労腐食は、例えば酸素や水分のような腐食性作用物質の通過を促進し或いは、それどころか、これら作用物質を排出させる。具体的に説明すると、例えば切れ目に続く劣化の結果として又は単に、タイヤの内面の透過度(これは、小さいけれども)のためにタイヤに入り込んだ空気又は水は、コードの構造そのもののためにコード内に形成されているチャネルによって運ばれる場合がある。
【0022】
一般に、「疲労‐フレッチング‐腐食」という総称的な用語でひとくくりされるこれら疲労現象の全ては、コードの機械的性質の徐々に進行する劣化の原因であり、最も過酷な走行条件下において、コードの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【0023】
カーカス補強材のこれらコードの耐久性を向上させるため、特に、タイヤのキャビティの内壁を形成するゴム層の厚さを増大させることが知られており、その目的は、かかるゴム層の透過度を最小限に抑えることにある。この層は、通常、タイヤを良好に密封するよう一部がブチルゴムで構成されている。この種の材料は、タイヤのコストを増大させるという欠点を持つ。
また、特にゴムによる透過度を増大させ、かくして酸化剤の通過サイズを制限するようコードの構成を設計変更することが知られている。
【0024】
さらに、特に駆動アクスル又はトレーラに関する二重形態が用いられる場合、路上運搬用の重車両へのタイヤの使用の結果として、これらタイヤは、不用意にも、デフレートモードで用いられることになる。実施した分析結果の示すところによれば、運転手がこのことを知らない状態でタイヤがインフレーション不足モードで用いられる場合が多いからである。かくして、インフレーション不足状態のタイヤは、相当な走行距離にわたりしょっちゅう用いられている。このように用いられるタイヤは、通常の使用条件下の場合よりも大きな変形を生じ、それにより、「座屈」型のカーカス補強材のコードの変形が生じる場合があり、かかる変形は、特にインフレーション圧力に起因した応力に耐える上で極めて不利である。
【0025】
カーカス補強材要素の座屈の恐れに起因したこの問題を抑えるため、コードを包囲すると共にコード又はコードの構成細線が座屈する恐れをなくす追加の細線が巻き付けられたケーブルを用いることが知られている。このように製造されたタイヤは、タイヤが低いインフレーション圧力で走行することによる損傷を受ける恐れが少ないが、特にタイヤが走行しているときにタイヤの変形中におけるたが掛け細線とコードの外側細線との間の摩擦に起因して、曲げ耐久性の面における性能の低下を示す。
【0026】
また、タイヤのキャビティの内壁を形成しているゴム層の厚さを座屈しやすいカーカス補強材の領域に向いた領域において少なくとも局所的に増大させることによりインフレーション不足のタイヤが走行しているときのこのコードの座屈の問題を軽減することが知られている。上述したように、カーカス補強材をタイヤのキャビティから隔てるゴム層の厚さの増大、実際には局所増大の結果として、タイヤのコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】欧州特許第0582196号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
かくして、本発明者は、特にインフレーションの面での走行条件とは無関係に且つタイヤの製造費が許容可能なままの状態で、耐摩耗性が路上使用向きに維持され、特に、耐久性が特に「疲労‐腐食」又は「疲労‐フレッチング‐腐食」現象に関して向上したタイヤを備えた重車両を提供するという仕事に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この目的は、本発明によれば、少なくとも1つの金属補強要素層から成る半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤが、それ自体トレッドで半径方向に被覆されたクラウン補強材を有し、トレッドが2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合されている、タイヤにおいて、少なくとも1つのカーカス補強材層の金属補強要素は、透過度試験において20cm3/分未満の流量を示す非たが掛けコードであり、半径方向平面で見て、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、半径方向平面で見て、タイヤの2つの別々の部分のそれぞれのタイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さの比は、1.15を超え、好ましくは1.35を超えることを特徴とするタイヤによって達成された。
【0030】
透過度又は通気度試験は、所与の時間にわたり一定の圧力下で試験体を通過した空気の量を測定することによって試験対象のコードの長手方向における空気の透過度又は通気度を求めるために用いられる。当業者には周知であるかかる試験の原理は、コードが空気に対して不透過性であるようにするためにコードの処理の有効性を実証することにある。この試験は、例えば、規格ASTM・D2692−98に記載されている。
【0031】
この試験は、コードが補強している加硫ゴムプライから引き剥がしにより直接取り出されたコード及びかくして硬化ゴムが浸透したコードに対して行われる。
【0032】
試験をこの場合以下の仕方で包囲ゴムコンパウンド(又は被覆ゴム)で被覆された長さ2cmのコード片について実施し、1バールの圧力下で空気をコードの入口に注入し、流量計を用いてこれから出る空気の量を測定する(例えば、0〜500cm3/分まで較正する)。測定中、コード試験体をコードの長手方向軸線に沿って一端から他端までコードを通過した空気の量だけが測定されるよう圧縮シール(例えば、高密度フォーム又はゴムシール)中に不動化する。中実ゴム試験体を用いて、即ち、コードなしのゴム試験体を用いて、シール自体により提供される密封度を、事前チェックする。
【0033】
測定された平均空気流量(10個の試験体に関する平均値)は、コードの長手方向不透過性が高ければ高いほど、それだけ一層低い。測定値は±0.2cm3/分という精度で行われるので、0.2cm3/分以下の測定値は、ゼロと見なされ、これら測定値は、コードの軸線に沿って(即ち、コードの長手方向に沿って)完全に気密であるといえるコードに対応している。
【0034】
この浸透度試験は、ゴム配合物によるコードの浸透の度合いを間接的に測定する簡単な手段にもなる。測定流量は、ゴムによるコードの浸透度が高ければ高いほど、それだけ一層低くなる。
【0035】
浸透度試験において20cm3/分未満の流量を示すコードは、66%を超える浸透度を有する。
【0036】
コードの浸透度は又、以下に説明する方法を用いて推定できる。層状コードの場合、この方法では、先ず最初に、2〜4cmの長さを持つ試料の外側層を除去し、次に、長手方向に沿い且つ所与の軸線に沿って、ゴムコンパウンドの長さの和を試料の長さで除算して得られる値を求める。これらゴムコンパウンド長さ測定では、この長手方向軸線に沿って浸透しなかった空間が除かれる。かかる測定は、試料の周囲に沿って分布して位置する3本の長手方向軸線に沿って繰り返すと共に5つのコードを試料に対して繰り返す。
【0037】
コードが数個の層を有する場合、最初の除去ステップを新たに外側に位置する層について繰り返し、ゴムコンパウンドの長さを長手方向軸線に沿って測定する。
【0038】
次に、このようにして求められたゴムコンパウンド長さと試料長さの比の全てを平均してコードの浸透度を求める。
【0039】
タイヤのキャビティの内面とこの表面の最も近くに位置する補強要素の箇所との間のゴムコンパウンド厚さは、タイヤのキャビティの内面上へのかかる内面の最も近くに位置する補強要素の箇所の端の投影像の長さに等しい。
【0040】
ゴムコンパウンドの厚さの測定をタイヤの断面に関して実施し、したがって、タイヤは、非インフレート状態にある。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、カーカス補強材のコードは、透過度試験において、10cm3/分未満、好ましくは2cm3/分未満の流量を示す。
【0042】
本発明の有利な実施形態によれば、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも2/3にわたり3.5mm以下である。
【0043】
本発明者の実証したところによれば、本発明に従ってこのように製造されたタイヤにより、耐久性と製造費との間に見出される妥協点の観点において非常に有利な向上が得られる。確かに、かかるタイヤの耐久性は、通常の走行条件下にあるにせよインフレーション不足モードで走行している場合であるにせよいずれにせよ、少なくとも上述した最善の解決策の場合と同じほど良好である。さらに、カーカス補強材とタイヤのキャビティとの間のゴムコンパウンド層の厚さは、標準型タイヤの厚さよりも小さいので(この厚さは、タイヤの最も高価のコンポーネントのうちの1つを構成する)、タイヤの製造費は、標準型タイヤの製造費よりも低い。浸透度試験において20cm3/分未満の流量を示すカーカス補強材のコードは、一方において、腐食に起因した危険性を制限することができると共に他方において座屈防止効果を提供するように思われ、かくして、タイヤのキャビティの内面とカーカス補強材との間のゴムコンパウンドの厚さを最小限に抑えることができる。タイヤの子午線輪郭形状の或る特定の領域にわたり、タイヤのカーカス補強材とキャビティとの間のゴムコンパウンドの層の厚さは、本発明によれば、例えば通常の作動条件下において曲げ応力の面で最も高い応力を受ける領域においてコードが腐食する恐れをできるだけ制限するよう大きいように設計される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、半径方向平面で見て、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mmを超え、好ましくは4mmを超える。
【0045】
より好ましくは、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超えるタイヤの輪郭形状の一部分の子午線長さは、5〜20mmである。
【0046】
有利には、本発明によれば、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、変形領域のカーカス補強材の子午線輪郭形状の問題の部分相互間の曲率の差が接触領域及びこの接触領域と反対側の領域の押し潰しに鑑みて、通常の作動条件下において0.008mm−1未満である場合、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも2/3にわたり3.5mm以下である。
【0047】
カーカス補強材の子午線輪郭形状の問題の部分は、厚さの測定が行われる金属補強要素の上述の箇所を包囲した部分である。
【0048】
同様に、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、変形領域のカーカス補強材の子午線輪郭形状の問題の部分相互間の曲率の差が接触領域及びこの接触領域と反対側の領域の押し潰しに鑑みて、通常の作動条件下において0.008mm−1未満である場合、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも2/3にわたり3.5mm以下である。子午線輪郭形状のこれら部分は、変形により最も大きな応力を受けると共に例えばタイヤに取り付けられたホイールのリムフランジに向いたタイヤサイドウォールの領域又はホイールのショルダに対応したタイヤの領域であるタイヤの部分に相当している。
【0049】
本発明の好ましい変形例によれば、タイヤの輪郭形状の子午線長さは、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超えるせいぜい4つの部分から成る。
【0050】
本発明の好ましい変形例によれば、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超えるタイヤの輪郭形状の少なくとも2つの部分は、タイヤの内面上へのタイヤのショルダ端の正投影像上に、タイヤのキャビティの内面の曲線横座表上で測定して20mmの範囲内で心出しされる。
【0051】
本発明との関連において、ショルダ端は、タイヤのショルダの付近において、一方の側のトレッドの軸方向外端(トレッドパターンの頂部)及び他方の側のサイドウォールの半径方向外端の表面の接線の交点のタイヤの外面上への正投影像によって定められる。
【0052】
本発明のこの変形例によれば、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超えるタイヤの輪郭形状の少なくとも2つの部分は、リムフランジの半径方向最も外側の箇所に接触するようになったタイヤの外面上の箇所のタイヤの内面上への正投影像上に、タイヤのキャビティの内面の曲線横座表上で測定して20mmの範囲内で心出しされる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、タイヤのキャビティと半径方向最も内側のカーカス補強材層の補強要素との間のゴムコンパウンドが少なくとも2つのゴムコンパウンド層を構成し、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mm以下のタイヤの子午線輪郭形状の部分について、半径方向最も内側のゴムコンパウンド層の厚さは、2mm未満、好ましくは1.8mm未満である。上述したように、通常、この層は、タイヤの不透過性を増大させるよう一部がブチルゴムで構成されている。というのは、この種の材料は、費用をそれほど考慮しなくても済み、この層の減少が望ましいからである。
【0054】
また、好ましくは、本発明によれば、半径方向平面で見て、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、タイヤのキャビティの内面を形成するゴムコンパウンドの厚さは、1.7mm未満である。
【0055】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、タイヤのカーカス補強材とキャビティとの間のゴムコンパウンドの層の小さな厚さの付近において、タイヤのキャビティの内面を形成するゴムコンパウンドの厚さは、1.7mm未満である。通常ブチルゴムから成るタイヤのキャビティの内面を形成するこのゴムコンパウンドは、タイヤの製造において、無視できないほどの費用の材料である。タイヤの子午線輪郭形状の一部にわたり1.7mm未満の値へのこのゴムコンパウンドの厚さの減少の結果として、有利には、タイヤの費用が減少する。
【0056】
また、有利には、半径方向平面で見て、タイヤの2つの別々の部分のそれぞれのタイヤのキャビティの内面を形成するゴムコンパウンドの厚さの比は、1.15を超える。
【0057】
この場合も又、有利には、本発明によれば、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mm以下のタイヤの子午線輪郭形状の部分について、ゴムコンパウンドの半径方向最も内側の層に半径方向に隣接して位置するゴムコンパウンドの層の厚さは、2.5mm未満、好ましくは2mm未満である。構成成分により特に空気中の酸素を固定することができるこの層の厚さも又、タイヤのコストを一段と減少させるよう減じられるのが良い。
【0058】
これら2つの層の各々の厚さは、かかる層の一方の表面上の箇所のかかる層の他方の表面上への正投影像の長さに等しい。
【0059】
本発明の有利な一実施形態によれば、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素は、少なくとも2つの層を有するコードであり、少なくとも内側の層は、架橋可能な又は架橋済みのゴム配合物、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みのゴム配合物から成る層で外装されている。
【0060】
本発明は又、少なくとも1つの金属補強要素層から成る半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、タイヤが、それ自体トレッドで半径方向に被覆されたクラウン補強材を有し、トレッドが2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合されている、タイヤにおいて、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素は、少なくとも2つの層を有する非たが掛けコードであり、少なくとも内側の層は、架橋可能な又は架橋済みのゴム配合物、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みのゴム配合物から成る層で外装されており、半径方向平面で見て、タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、タイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、半径方向平面で見て、タイヤの2つの別々の部分のそれぞれのタイヤのキャビティの内面とキャビティの内面の最も近くに位置するカーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さの比は、1.15を超え、好ましくは1.35を超えることを特徴とするタイヤを提供する。
【0061】
「少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする配合物」という表現は、公知のように、かかる配合物が主としてこのジエンエラストマー又はこれらのジエンエラストマーを含んでいる(即ち、質量フラクション(分率)が50%を超える)ということを意味するものと理解されたい。
【0062】
本発明によるシースは、有利にはほぼ円形の断面を有する連続スリーブを形成するようシーズが覆っている層の周りに連続的に延びている(即ち、このシースは、半径方向に垂直なコード「オルトラジアル(orthoradial)」方向に連続している)ことに注目されるべきである。
【0063】
また、このシースのゴム配合物は架橋可能であり又は架橋済みであり、即ち、かかるゴム配合物は、定義上、適当な架橋系であり、かくして、これが硬化を生じている状態で(すなわち、これが硬化するが、溶融しない状態で)ゴム配合物が架橋可能であることに注目されるべきである。かくして、このゴム配合物を「非溶融性」と呼ぶことができる。というのは、このゴム配合物をどのような温度に加熱してもかかるゴム配合物を溶融することができないからである。
【0064】
「ジエン」エラストマー又はゴムという用語は、公知のように、少なくとも一部がジエンモノマー(共役であるにか否かを問わず、2つの炭素−炭素2重結合を備えたモノマー)から得られるエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味するものと理解されたい。
【0065】
ジエンエラストマーは、公知のように、2つのカテゴリ、すなわち「本質的に不飽和」ジエンエラストマー及び「本質的に飽和」ジエンエラストマーと呼ばれるカテゴリに分類可能である。一般に、「本質的に不飽和」ジエンエラストマーとは、本願では、少なくとも一部が、15%(モル%)より大きい一定含有量のジエンオリジン(共役ジエン)のメンバー又はユニットを有する共役ジエンモノマーから得られるジエンエラストマーを意味するものと理解すべきである。かくして、例えば、ブチルゴム又はジエンのコポリマー及びEPDM型のα−オレフィンのコポリマー等のジエンエラストマーは、前述の定義には含まれず、より詳しくは、「本質的に飽和」されたジエンエラストマーとして説明される(低い又は非常に低い(常に15%より低い)含有量のジエンオリジンのユニット)「本質的に不飽和」のジエンエラストマーのカテゴリ内で、「高度の不飽和」ジエンエラストマーとは、特に、50%より大きい一定含有量のジエンオリジン(共役ジエン)のユニットを有するジエンエラストマーを意味するものと理解すべきである。
【0066】
これらの定義が与えられているものとして、次のことが、本発明のコードに使用できるジエンエラストマーを特に意味するものと理解されよう。
(a)4〜12個の炭素原子をもつ共役ジエンモノマーの重合により得られるあらゆるホモポリマー
(b)1つ以上の共役ジエンと8〜20個の炭素原子をもつ1種類又は2種類以上 の芳香族ビニル化合物との共重合により得られるあらゆるコポリマー
(c)例えば、エチレン及び上記種類の非共役ジエンモノマーから得られる、より詳しくは1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジクロペンタジエン等の、エチレンと、3〜6個の炭素原子をもつα−オレフィンと、6〜12個の炭素原子をもつ非共役ジエンモノマーとの共重合により得られる三元コポリマー
(d)イソブテン及びイソプレン(ブチルゴム)のコポリマー及びこの種のコポリマーのハロゲン化、より詳しくは塩素化又は臭化バージョン
【0067】
本発明は、任意種類のジエンエラストマーに利用できるが、本発明は、主として本質的に不飽和ジエンエラストマー、特に上記種類(a)又は(b)のジエンエラストマーに使用される。
【0068】
かくして、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のブタジエンコポリマー、種々のイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの配合物からなる群から選択するのが好ましい。これらのコポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)及びイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択するのがより好ましい。
【0069】
より好ましくは、本発明によれば、選択されるジエンエラストマーは、主として(即ち、50phr超える)、イソプレンエラストマーから成る。「イソプレンエラストマー」という用語は、公知のように、イソプレンホモポリマー又はコポリマーを意味し、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの配合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0070】
本発明の有利な実施形態によれば、選択されるジエンエラストマーは、もっぱら(すなわち100phrに関し)、天然ゴム、合成ポリイソプレン又はこれらのエラストマーの配合物から成り、合成ポリイソプレンは、シス1,4結合の含有量(モル%)、好ましくは90%より大きい、より好ましくは98%より大きい含有量を有する。
【0071】
本発明の特定の一実施形態によれば、この天然ゴム及び/又はこれらの合成ポリイソプレンと、他の高度の不飽和ジエンエラストマー、特に上記のようなSBR又はBRとのブレンドを使用することもできる。
【0072】
本発明のコードのゴムシースには単一又は幾つかのジエンエラストマーを含有させることができ、かかるジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマー又はエラストマー以外のポリマー(例えば熱可塑性ポリマー。エラストマー以外のこれらのポリマーは少数ポリマーとして存在する)と組合せて使用できる。
【0073】
シースのゴム配合物には、どのようなプラストマーも含まれず、かかるシースのゴム配合物は、ポリマーベースとして1つのジエンエラストマー(又はジエンエラストマーの配合物)のみを有するのが好ましいが、かかる配合物は、1種類の又は多種類のエラストマーの質量フラクションxeより少ない質量フラクションxpの少なくとも1つのプラストマーを更に含んでも良い。かかる場合、好ましくは次の関係式、即ち0<xp<0.5xeが適用され、より好ましくは、次の関係式、即ち0<xp<0.1xeが適用される。
【0074】
好ましくは、ゴムシースの架橋系は、加硫系と呼ばれる系であり、即ち、硫黄(又は硫黄供与体)及び第一加硫促進剤である。このベース加硫系には、種々の既知の第二促進剤又は加硫活性剤を添加できる。硫黄は、好ましくは0.5〜10phrの間、より好ましくは1〜8phrの間の量で使用され、第一加硫促進剤(例えば、スルフェンアミド)が好ましくは0.5〜10phr、より好ましくは0.5〜5.0phrの間の量で使用される。
【0075】
本発明によるシースのゴム配合物は、架橋系に加え、タイヤ用ゴム組成に使用できる全ての通常成分、例えばカーボンブラックをベースとする補強フィラー及び/又は補強無機フィラーを含み、かかる補強無機フィラーには、シリカ、耐老化剤(例えば酸化防止剤)、エキステンダーオイル、可塑剤又は未硬化状態での配合物の加工を容易にする薬剤、メチレン受容体及び供与体、樹脂、ビスマレイミド(bismaleimides)、「RFS」(レゾルシノール/ホルムアルデヒド/シリカ)形式の既知の接着促進系、又は金属塩(より詳しくはコバルト塩)がある。
【0076】
好ましくは、ゴムシースの配合物は、架橋状態では、ASTM・D・412(1998)規格に従って測定した10%伸び率における割線伸びモジュラス(M10と呼ばれる)が20MPa未満、より好ましくは12MPa未満であり、特に4〜11MPaである。
【0077】
好ましくは、このシースの配合物は、本発明によるコードが補強用のものである場合のゴムマトリックスに使用される配合物と同一のものが選択される。かくして、シース及びゴムマトリックスのそれぞれの材料間に不適合性の問題は生じない。
【0078】
好ましくは、上記配合物は、天然ゴムを主成分としており、かかる配合物は、補強フィラーとしてカーボンブラック、例えばASTM300、500又は700等級(例えばN326,N330、N347、N375、N683又はN772)のカーボンブラックを含む。
【0079】
本発明の変形例によれば、カーカス補強材の少なくとも1つの層の金属補強要素は、タイヤカーカス補強材の補強要素として使用できる[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属コードであり、層状金属コードは、直径d1のL本の細線(Lは、1〜4である)を有する第1の層C1をピッチp2で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d2のM本の細線(Mは、3〜12である)を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、中間層C2は、オプションとして、ピッチp3で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d3のN本の細線(Nは、8〜20である)の外側層C3によって包囲され、少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みゴム配合物から成るシースが、[L+M]構造では、第1の層C1を覆い、[L+M+N]構造では、少なくとも中間層C2を覆う。
【0080】
好ましくは、内側層又は第1の層(C1)の細線の直径は、0.10〜0.5mmであり、層(C2,C3)の細線の直径は、0.10〜0.5mmである。
【0081】
外側層(C3)の細線の螺旋巻きピッチは、8〜25mmである。
【0082】
本発明の意味の範囲内において、ピッチは、コードの軸線に平行に測定された長さを表し、コードの端のところでは、このピッチを持つ細線は、コードの軸線回りに丸一回転し、かくして、軸線がこの軸線に垂直であり且つコードの構成層の細線のピッチに等しい長さだけ隔てられた2つの平面によって分けられた場合、これら2つの平面内に位置するこの細線の軸線は、問題の細線の層に相当する2つの円上に同一の位置を有する。
【0083】
本発明によるコードでは、下記特性の少なくとも1つ、より好ましくは全てが満たされる。
‐層C3は飽和層である。すなわち、この層には、少なくとも直径d3の第(N+1)番目の細線をこれに追加するには不十分なスペースが存在する。ここで、Nは、層C2の回りに1つの層として巻回できる細線の最大本数を表す。
‐ゴムシースは、内側層C1を覆い及び/又は中間層C2の隣接対の細線を分離する。
‐ゴムシースは、事実上、層C3の各細線の半径方向内方の半周を覆い、この層C3の隣接対をなす細線を互いに分離する。
【0084】
本発明のL+M+N構造では、中間層C2は、好ましくは6本又は7本の細線を有し、この場合、本発明によるコードは下記の好ましい特性を有している(d1、d2、d3、p2、p3の単位は、mmである)。
(i) 0.10<d1<0.28
(ii) 0.10<d2<0.25
(iii)0.10<d3<0.25
(iv) M=6又はM=7
(v) 5π(d1+d2)<p2≦p3<5π(d1+2d2+d3
(vi) 層C2,C3の細線は、同一捩り方向(S/S又はZ/Z)に巻かれている。
【0085】
好ましくは、特性(v)は、p2≦p3であるようなものであり、従って、このコードは、更に特性(vi)(層C2及びC3の細線が同一方向に巻かれている)を考慮すると、「コンパクト」であると言える。
【0086】
特性(vi)によれば、層C2及びC3の全ての細線は同じ捩り方向、すなわち、S方向(S/S構造)又はZ方向(Z/Z構造)のいずれかの方向に巻かれる。層C2及びC3を同方向に巻くと、本発明によるコードにおいて、これらの2つの層C2及びC3間の摩擦を最小にでき、従って該層を構成する細線の摩耗を最小限に抑えることができる(というのは、もはや細線間に交差接触が存在しないからである)。
【0087】
好ましくは、本発明のコードは1+M+N構造の層状コードであり、即ち、その内側層C1は、単一細線から成る。
【0088】
この場合も又、有利には、比(d1/d2)が、次式のように、層C2の細線の本数M(6又は7)に従って所与の範囲内に設定される。
M=6の場合、0.9<(d1/d2)<1.3
M=7の場合、1.3<(d1/d2)<1.6
【0089】
小さすぎる比の値は、層C2の内側層と細線との間の摩耗にとって不利な場合がある。大き過ぎる比の値は、最終的な強度レベルがほとんど変更されない場合、コードのコンパクトさ及びコードの可撓性を損なう場合がある。直径d1が過度に大きいことによる内側層C1の剛性の増大は、ケーブリング作業中のコードの実現容易性そのものにとって不利な場合がある。
【0090】
層C2及びC3の細線は、同一の直径を有しても良く、或いは層毎に異なる直径を有しても良い。特にケーブリング方法を簡単化しかつコストを低減させるためには、同じ直径(d2=d3)の細線を使用するのが好ましい。
【0091】
層C2の周囲に単一飽和層C3として巻回可能な細線の最大本数Nmaxは、当然のことながら、多くのパラメータ(内側層の直径d2、層C2の細線の本数M及び直径d2、層C3の細線の直径d3)で決まる。
【0092】
本発明は、1+6+10、1+6+11、1+6+12、1+7+11、1+7+12又は1+7+13構造のコードから選択されるコードについて実施するのが好ましい。
【0093】
一方においてはコードの強度、実現容易性及び曲げ強度と他方においてゴム浸透度との良好な妥協点を見出すためには、層C2及びC3の細線の直径が0.12〜0.22mmの間にあることが好ましい(両者の直径が同一であるか否かは問わない)。
【0094】
かかる場合、次の関係式を満たすことがより好ましい。すなわち、
0.14<d2<0.22
0.12<d2≦d3<0.20
5<p2≦p3<12(小ピッチ、単位mm)、又は
20<p2≦p3<30(大ピッチ、単位mm)
【0095】
0.19mmよりも小さい直径は、コードの曲率が大きく変化しているときに細線の受ける応力レベルを小さくするのに役立つ場合があり、他方、0.16mmよりも大きい直径を、特に細線の強度及び工業的コストの理由で選択することが好ましい。
【0096】
有利な一実施形態では、例えば、p2及びp3を8〜12mmの間に選択し、1+6+12構造のコードを使用するのが有利である。
【0097】
好ましくは、ゴムシースの平均厚さは、0.010〜0.040mmである。
【0098】
一般に、本発明は、上述のカーカス補強コードを形成するために、任意の種類の金属細線、より詳しくは、例えば炭素鋼細線及び/又はステンレス鋼細線等のスチール細線を用いて実施できる。炭素鋼を使用することが好ましいが、当然のことながら、他のスチール又は他の合金を使用することが可能である。
【0099】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量を基準とした%)は、好ましくは、0.1%〜1.2%、特に0.4%〜1.0%である。これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質と細線の実現可能性との良好な妥協点となっている。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量は、最終的に、かかるスチールを安価にする。というのは、これらは、引き抜き加工が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、意図した用途に応じて、特にコストが低く且つ引き抜き加工性が良好なので、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量のスチールを用いることができる。
【0100】
本発明によるコードは、当業者に知られている種々の技術によって、例えば2つのステップで、即ち、第1に、押出ヘッドを用いてL+M中間構造又はコア(層C1+C2)を外装し、第2に、このステップの次にこのようにして外装された層C2周りにN本の残りの細線(層C3)をケーブリング又はツイスティングする最終作業によって得ることができる。実施される場合のある中間巻回作業及び巻出し作業中にゴムシースにより引き起こされる未硬化状態における結合の問題は、例えば中間プラスチックフィルムを用いることによって当業者には知られているやり方で解決可能である。
【0101】
有利には、クラウン補強材は、周方向と、10°〜45°の角度をなして一方の層から他方の層にクロス掛けされた非伸張性補強要素の少なくとも2つの実働クラウン層で形成される。
【0102】
本発明の他の実施形態によれば、クラウン補強材は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を更に含む。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、クラウン補強材には、半径方向外側に、少なくとも1つの補足保護プライが補足されており、少なくとも1つの補足保護プライは、該保護プライに半径方向に隣接して位置する実働プライの非伸張性要素のなす角度と同一の意味で周方向に対して10°〜45°の角度をなして差し向けられた弾性補強要素から成る。
【0104】
保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも小さい軸方向幅を有するのが良い。かかる保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも大きな軸方向幅を有しても良く、その結果、かかる保護層は、幅の最も狭い実働層の縁部を覆うようになり、幅の最も狭いものとしての半径方向上側層の場合、保護層は、追加の補強材の軸方向延長方向において軸方向幅にわたり幅の最も広い実働クラウン層に結合され、しかる後、軸方向外側において、厚さが少なくとも2mmの異形要素によりかかる幅の最も広い実働層から結合解除されるようになる。弾性補強要素で形成された保護層は、上述の場合、一方において、オプションとして2つの実働層の縁部を互いに離隔させる異形要素の厚さよりも実質的に小さい厚さを持つ異形要素によって幅の最も狭い実働層の縁部から結合解除され、他方において、幅の最も広いクラウン層の軸方向幅よりも小さい又は大きい軸方向幅を有することができる。
【0105】
上述の本発明の実施形態のうちのいずれにおいても、クラウン補強材には、カーカス補強材とこのカーカス補強材の最も近くに位置する半径方向内側実働層との間で半径方向内側に、周方向と60°の角度をなすと共にカーカス補強材の半径方向に最も近くの層の補強要素のなす角度と向きと同一の向きにあるスチール製の非伸長性金属補強要素の三角形構造形成層が更に補足されている。
【0106】
本発明の他の細部及び有利な特徴は、図1〜図4を参照して行なわれる本発明の例示の実施形態の説明から以下において明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1a】本発明の一実施形態としてのタイヤを示す子午線略図である。
【図1b】図1aに示された略図の一部の拡大部分図である。
【図1c】図1aに示された図の別の部分の拡大部分図である。
【図2】図1に示されたタイヤのカーカス補強コードの概略断面図である。
【図3】本発明のカーカス補強コードの第1の追加の実施例の概略断面図である。
【図4】本発明のカーカス補強コードの第2の追加の実施例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図は、理解しやすくするために縮尺通りには描かれていない。
【0109】
図1aでは、タイプ315/70R22.5のタイヤ1がビードワイヤ4周りで2つのビード3内に繋留された半径方向カーカス補強材2を有している。カーカス補強材2は、単一の金属コード層11及び2つの圧延層13で形成されている。カーカス補強材2は、それ自体トレッド2で覆われたクラウン補強材5でたが掛けされている。クラウン補給材5は、内側から外側へ半径方向に、
‐プライの幅全体にわたって連続非たが掛け非伸張性金属コード11.35で形成された第1の実働層、これらコードは、18°の角度をなして差し向けられている、
‐プライの幅全体にわたって連続非たが掛け非伸張性金属コード11.35で形成された第2の実働層、これらコードは、18°の角度をなして差し向けられると共に第1の実働層の金属コードとたが掛けされている、
‐弾性金属コード6×35で形成された保護層で形成されている。
【0110】
クラウン補強材5を構成するこれら層の全てが図に詳細に示されているわけではない。
【0111】
タイヤのキャビティを画定する内面10は、本発明に従って、タイヤの子午線輪郭形状の残部よりも大きい内面10とカーカス補強材2との間の厚さを有する部分9a,9b,9c,9dに対応した凸凹、例えばボス形状を有する。
【0112】
図1bは、図1aの領域7bの拡大部を示しており、特に、タイヤのキャビティ8の内面10と、この内面10の最も近くに位置する補強要素11の箇所12との間のゴムコンパウンドの厚さEを示している。この厚さEは、表面10上へのこの表面10の最も近くに位置する補強要素11の箇所12の正投影像の長さに等しい。この厚さEは、一方においてカーカス補強材2の半径方向内側圧延層13の厚さを含むカーカス補強材2の補強要素11中の種々のゴムコンパウンドの厚さと他方において、タイヤ1の内壁を形成するゴムコンパウンドの種々の層14,15の厚さe1,e2の合計である。また、これら厚さe1,e2は、それぞれ問題の層14,15の一方の表面上の箇所の他方の表面に対する正投影像の長さに等しい。
【0113】
これら厚さ測定は、それ故に取り付けられておらず、インフレートされてもいないタイヤの断面に関して実施される。
【0114】
Eの測定値は、3.2mmに等しい。
【0115】
1,e2の値は、それぞれ、1.4mm及び1.6mmに等しい。
【0116】
図1cは、図1aの領域7cの拡大図であり、特に、タイヤのキャビティ8の内面10と部分9bの内面10の最も近くに位置する補強要素11の箇所17との間のゴムコンパウンドの厚さDを示している。この厚さDは、部分9bの最も大きな厚さではなく、表面10上への表面10の最も近くに位置する補強要素11の箇所17の正投影像の長さに等しい。この厚さDは、カーカス補強材2の補強要素11相互間に配置された種々のゴムコンパウンドの厚さの合計である。これは、一方において、カーカス補強材の半径方向内側の圧延層13の厚さであり、他方、タイヤ1の内壁を形成しているゴムコンパウンドの種々の層14,15,16のそれぞれの厚さである。
【0117】
層15は、上述したように、タイヤの封止具合を向上させるよう一部がブチルゴムで構成されている。層14は、有利には、特に空気中の酸素を固定する構成成分を含む。これら2つの層の厚さの減少は、タイヤのコストの減少にとって望ましく、これら層の構成材料のコストは、無視できないほどである。部分9b中のタイヤの子午線輪郭形状上に局所的に設けられた層16は、有利には、変形の面で大きな応力を受けるタイヤの領域の封止機能を促進するよう組成の面で層15に類似している。問題の部分9a,9b,9c,9dは、タイヤのショルダ及びタイヤに取り付けられたホイールのリムフランジに相当するタイヤの領域に対応している。
【0118】
部分9bの厚さDは、4.7mmに等しく、従って、4mmよりも大きい。
【0119】
厚さDと厚さEの比は、1.47に等しく、従って、1.15よりも大きい。
【0120】
部分9bの過剰厚さの子午線長さに対応した長さLは、15mmに等しく、従って5〜20mmである。4つの部分9a,9b,9c,9dの過剰厚さの長さの合計は、60mmに等しく、タイヤ1の壁10の子午線輪郭形状の長さの8.6%に相当する。
【0121】
図1cの記載は、タイヤのキャビティのところに局所的に追加されたブチルゴムで構成されている部分のための追加の層16を示している。層16の性状は、本発明の他の実施形態によれば、異なっていても良い。さらに、局所過剰厚さは又、例えば層14,15のうちの一方又は両方のそれぞれの厚さを局所的に変えることにより又は1つ又は2つ以上の層を層14,15相互間に又はカーカス補強材2と層14との間に局所的に挿入することにより得られても良い。
【0122】
内面10とカーカス補強材2との間の厚さの局所的増大は、タイヤのコストの減少に反するが、かかる局所的増大の結果として、満足の行く耐久性とコストとの妥協点が見出される。
【0123】
図2は、図1に示されたタイヤ1のカーカス補強コード21の概略断面図である。このコード21は、1+6+12構造の非たが掛け層状コードであり、このコードは、細線22により形成された中央コアと、6本の細線23で形成された中間層と、12本の細線25で形成された外側層とから成っている。
【0124】
コードは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐1+6+12構造、
‐d1=0.20
‐d2=0.18
‐p2=10
‐d3=0.18
‐p2=10
‐(d2/d3=1
上記において、d2及びp2は、それぞれ、中間層の細線の直径及び螺旋ピッチであり、d3及びp3は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0125】
細線22で形成された中央コアと、6本の細線23で形成された中間層とから成るコードのコアは、未加硫ジエンエラストマー(未硬化状態にある)を主成分とするゴム配合物24で外装されている。押出ヘッドを用いて実施された細線22を6本の細線23で包囲して形成されたコアの外装に続き、このようにして外装されたコアの周りに12本の細線25をツイスティング又はケーブリングする最終作業を実施する。
【0126】
上述の方法に従って測定されたコード31の浸透度は、95%に等しい。
【0127】
ゴムシース24を構成するエラストマー配合物は、上述の配合物から作られ、この場合、コードが補強するようになったカーカス補強材の圧延層13と同一の天然ゴム及びカーボンブラックを主成分とする処方を有している。
【0128】
図3は、本発明のタイヤに使用することができる別のカーカス補強コード31の概略断面図である。このコード31は、3+9構造の非たが掛け層状コードであり、このコードは、撚り合わされた3本の細線32から成るコードで形成された中央コアと、9本の細線33で形成された外側層とから成っている。
【0129】
コードは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐3+9構造、
‐d1=0.18
‐p1=5
‐(d1/d2=1
‐d2=0.18
‐p2=10
上記において、d1及びp1は、それぞれ、中央コアの細線の直径及び螺旋ピッチであり、d2及びp2は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0130】
3本の細線32で形成されたコードから成る中央コアを未加硫ジエンエラストマー(未硬化状態にある)を主成分とするゴム配合物34で外装した。押出ヘッドにより実施されたコード32の外装に続き、このようにして外装されたコアの周りに9本の細線33をケーブリングする最終作業を行なった。
【0131】
上述の方法に従って測定したコード31の浸透度は、95%に等しい。
【0132】
図4は、本発明のタイヤに用いることができる別のカーカス補強コード41の概略断面図である。このコード41は、1+6構造の非たが掛け層状コードであり、このコードは、細線42で形成された中央コアと、6本の細線43で形成された外側層とから成っている。
【0133】
コードは、次の特徴を有する(d及びpの単位は、mmである)。
‐1+6構造、
‐d1=0.200
‐(d1/d2=1.14
‐d2=0.175
‐p2=10
上記において、d1は、コアの直径であり、d2及びp2は、それぞれ、外側層の細線の直径及び螺旋ピッチである。
【0134】
細線42から成る中央コアを未加硫ジエンエラストマー(未硬化状態にある)を主成分とするゴム配合物44で外装した。押出ヘッドにより実施された細線42の外装に続き、このようにして外装されたコアの周りに6本の細線43をケーブリングする最終作業を行なった。
【0135】
上述の方法に従って測定したコード41の浸透度は、95%に等しい。
【0136】
図1及び図2に示されているような本発明に従って製造されたタイヤについて試験を実施し、他の試験をコントロールタイヤについて実施した。
【0137】
これらコントロールタイヤは、カーカス補強材のコードが外装層24を有しておらず、タイヤのキャビティの内面とこの表面の最も近くに位置する補強要素上の箇所との間のゴム配合物の厚さEが5mmに等しく、厚さe1,e2の各々が2.5mmに等しいという点において本発明のタイヤとは異なっている。
【0138】
転動ドラム上における耐久性試験をタイヤに4415daNの荷重を加える試験機械で実施し、タイヤをタイヤの酸素添加インフレーション状態で40km/時の速度で走行させた。コントロールタイヤに適用された条件と同一の条件下で本発明のタイヤに対して試験を行なった。走行試験をタイヤのカーカス補強材が劣化を示すやいなや停止させた。
【0139】
このようにして実施した試験の示すところによれば、これら試験の各々の間に走行した距離は、本発明のタイヤにとって好ましく、これらタイヤは、350000km走行し、これに対し、コントロールタイヤの走行距離は、250000kmに過ぎなかった。
【0140】
車両駆動アクスルに対する他の転動耐久性試験をタイヤに3680daNの荷重を加えることによって実施し、タイヤは、0.2バールのタイヤ圧力状態で40km/時の速度で走行させた。コントロールタイヤに適用された条件と同一の条件下で本発明のタイヤに対して試験を行なった。走行試験を12000kmの距離にわたり実施し又はタイヤのカーカス補強材が劣化を示すやいなや走行試験を停止させた。
【0141】
このようにして実施した試験結果の示すところによれば、これら試験の各々の間に本発明のタイヤの走行距離は、12000kmの距離を依然として達成することができ、これに対し、コントロールタイヤの走行距離は、せいぜい10000kmに過ぎなかった。
【0142】
さらに、本発明のタイヤの製造費は、低く、本発明のタイヤの場合、材料費が10%節約されている。
【0143】
さらに、本発明のタイヤは、コントロールタイヤよりも6%軽量であるという利点を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属補強要素層から成る半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤが、それ自体トレッドで半径方向に被覆されたクラウン補強材を有し、前記トレッドが2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合されている、タイヤにおいて、少なくとも1つのカーカス補強材層の前記金属補強要素は、透過度試験において20cm3/分未満の流量を示す非たが掛けコードであり、半径方向平面で見て、前記タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、半径方向平面で見て、前記タイヤの2つの別々の部分のそれぞれの前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さの比は、1.15を超える、タイヤ。
【請求項2】
前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素は、少なくとも2つの層を有するコードであり、少なくとも内側の層は、架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンド、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層で外装されている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記コードは、透過度試験において、10cm3/分未満、好ましくは2cm3/分未満の流量を示す、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
少なくとも1つの金属補強要素層から成る半径方向カーカス補強材を有するタイヤであって、前記タイヤが、それ自体トレッドで半径方向に被覆されたクラウン補強材を有し、前記トレッドが2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合されている、タイヤにおいて、前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素は、少なくとも2つの層を有する非たが掛けコードであり、少なくとも内側の層は、架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンド、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みのゴムコンパウンドから成る層で外装されており、半径方向平面で見て、前記タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、半径方向平面で見て、前記タイヤの2つの別々の部分に関して、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドのそれぞれの厚さの比は、1.15を超える、タイヤ。
【請求項5】
半径方向平面で見て、前記タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mm以下であり、前記タイヤの前記キャビティの前記内面を形成するゴムコンパウンドの厚さは、1.7mm未満である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項6】
半径方向平面で見て、前記タイヤの2つの別々の部分のそれぞれの前記タイヤの前記キャビティの前記内面を形成するゴムコンパウンドの厚さの比は、1.15を超える、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、前記タイヤの前記子午線輪郭形状の少なくとも2/3にわたり3.5mm以下である、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項8】
半径方向平面で見て、前記タイヤの子午線輪郭形状の少なくとも一部にわたり、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さは、3.5mmを超え、好ましくは4mmを超える、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超える前記タイヤの前記輪郭形状の一部分の子午線長さは、5〜20mmである、請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
前記タイヤの前記輪郭形状の前記子午線長さは、前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超えるせいぜい4つの部分から成る、請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超える前記タイヤの前記輪郭形状の少なくとも2つの部分は、前記タイヤの前記内面上への前記タイヤの前記ショルダ端の正投影像上に20mmの範囲内で心出しされている、請求項9又は10記載のタイヤ。
【請求項12】
前記タイヤのキャビティの内面と前記キャビティの前記内面の最も近くに位置する前記カーカス補強材の金属補強要素の箇所との間のゴムコンパウンドの厚さが3.5mmを超える前記タイヤの前記輪郭形状の少なくとも2つの部分は、リムフランジの半径方向最も外側の箇所に接触するようになった前記タイヤの前記外面上の箇所の前記タイヤの前記内面上への正投影像上に20mmの範囲内で心出しされている、請求項9〜11のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記カーカス補強材の少なくとも1つの層の前記金属補強要素は、タイヤカーカス補強材の補強要素として使用できる[L+M]又は[L+M+N]構造の層状金属コードであり、前記層状金属コードは、直径d1のL本の細線(Lは、1〜4である)を有する第1の層C1をピッチp2で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d2のM本の細線(Mは、3〜12である)を有する少なくとも1つの中間層C2で包囲したものであり、前記層C2は、オプションとして、ピッチp3で螺旋の状態に互いに巻かれた直径d3のN本の細線(Nは、8〜20である)の外側層C3によって包囲され、少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする架橋可能な又は架橋済みゴムコンパウンドから成るシースが、[L+M]構造では、前記第1の層C1を覆い、[L+M+N]構造では、少なくとも前記中間層C2を覆う、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第1の層(C1)の前記細線の直径は、0.10〜0.5mmであり、前記層(C2,C3)の前記細線の直径は、0.10〜0.5mmである、請求項13記載のタイヤ。
【請求項15】
前記外側層(C3)の前記細線の螺旋巻きピッチは、8〜25mmである、請求項13又は14記載のタイヤ。
【請求項16】
前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択される、請求項2〜15のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項17】
少なくとも1種類のジエンエラストマーを主成分とする前記架橋可能又は架橋済みゴムコンパウンドは、架橋状態において、割線伸びモジュラスは、20MPa未満、好ましくは12MPa未満である、請求項2〜16のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記クラウン補強材は、周方向と10°〜45°の角度をなして一方の層と他方の層に関してクロス掛けされた非伸張性補強要素の少なくとも2つの実働クラウン層で形成されている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記クラウン補強材は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を更に含む、請求項1〜18のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記クラウン補強材には、半径方向外側に、少なくとも1つの補足保護プライが補足されており、前記少なくとも1つの補足保護プライは、該保護プライに半径方向に隣接して位置する実働プライの前記非伸張性要素のなす角度と同一の意味で周方向に対して10°〜45°の角度をなして差し向けられた弾性補強要素から成る、請求項1〜19のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記クラウン補強材は、周方向と60°を超える角度をなす金属補強要素で作られた三角形構造形成層を更に含む、請求項1〜20のうちいずれか一に記載のタイヤ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507288(P2013−507288A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532571(P2012−532571)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064827
【国際公開番号】WO2011/042435
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】