説明

低酸素イメジング剤HL91構成派生物

【課題】薬品の特性が向上され、薬品の極性を低減でき、そのため、細胞内に入る薬品の量が増加され、薬品の感度が向上される低酸素イメジング剤HL91構成派生物を提供する。
【解決手段】有機合成方式により、量種類のHL91(4、9−diaza−3、3、10、10−tetramethyldodecan−2、11−dione dioxine)構成派生物を用意し、HL91構成派生物は、HL91−NIで、2−ニトロ−イミダゾール(2−nitroimidazole)官能基とHL91とが結合することにより形成され、もう1種類のHL91構成派生物は、HL91−ETで、カーボン側鎖を延長するように該HL91構成派生物を修正することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低酸素イメジング剤HL91構成派生物に関し、特に、薬品の特性が向上され、薬品の極性を低減することにより、細胞に入る薬品の量が増加されて、薬品の感度が向上されるHL91構成派生物に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床上、選択的に低酸素細胞に集中できる核医学薬品は、主として、2−ニトロ−イミダゾール(2−nitro−imidazole)類であり、反応機構は、主として、そのニトロ(nitro)官能基が、低酸素細胞に入った後、体内のキサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase、 XO)によって、ステップバイステップに、アミン(amine)に還元され、還元されたアミンは、分子の極性が増大され、細胞膜を通すことができなく細胞内に滞在し、また、正常な酸素含量を有する細胞において、酸素により、薬品を再びニトロに酸化され、細胞から離れることができ、この特性を利用して、低酸素細胞の核医学イメジング診断を行う。
【0003】
テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩(99mTc−pertechnetate)で2−nitroimidazoleを標識化する化合物は、主として、BATO (boronic acid adduct of technetium dioxine)とPnAO (propylene amine oxine)、Schiff−base及びBnAO(butylenes amine oxine)等の4種類がある。HL91は、1995年に、Nicoliniらが、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で標識化した核医学薬品であり、その構成は、BnAO類に属され、この薬品は、水溶性が極めて高く(partition coefficient=0.1)、血液クリアランス率が比較的に速くて、背景活性が低く、細胞に入る薬量が、相対的に低いため、感度がやや悪い。そのため、上記の従来のものは、実用ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、薬品の特性が向上され、薬品の極性が低減されることにより、細胞内に入る薬品の量が増加され、そして、薬品の感度が向上されるHL91構成派生物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するため、HL91−NIで、2−nitroimidazole官能基とHL91とが結合することにより形成され、もう一つの種類のHL91構成派生物は、HL91−ETで、カーボン側鎖を延長するように、該HL91−NIを修正することからなる低酸素イメジング剤HL91構成派生物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1と2及び3は、それぞれ、本発明の第1のHL91構成派生物構成の概念図と本発明の第2のHL91構成派生物構成の概念図及び本発明のHL91−NIを有機合成する化学合成工程の概念図である。図のように、本発明は、低酸素イメジング剤HL91構成派生物であり、2−メチル−2−ブテン(2−methyl−2−butene)を初期原料とし、有機合成方式により(図3を参照しながら)、第1のHL91構成派生物1を生成し、該第1のHL91構成派生物1は、HL91−NIで、その化学構成は、図1のようであり、上記の第1のHL91構成派生物1は、2−nitroimidazole(NO → NH)とHL91(+4 → +2)の2重還元特性を利用して、薬品の特性を向上し、また、2−nitroimidazoleを添加することにより、薬品の極性を低減することにより、細胞内に入る薬品の量が増加されて、薬品の感度が向上される。
【0007】
該HL91構成派生物は、カーボン側鎖を延長するように修正されると、第2のHL91構成派生物2が生成され、該第2のHL91構成派生物2は、HL91−ETで、その化学構成は、図2のようであり、上記の第2のHL91構成派生物2の側鏈の長さが長ければ、極性が相対的に低くなり、そのため、第2のHL91構成派生物2の脂溶性が増加されて、薬品の感度が向上されるが、背景値が高すぎることがない。
【0008】
図4は、本発明のHL91構成派生物を標識化する時の流れの概念図である。図のように、上記の本発明によれば、第1のHL91構成派生物が、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で、低酸素イメジング剤の標識化を行時、次のような工程が含有される。
【0009】
HL91構成派生物試剤31を用意する工程(a)において、HL91構成派生物試剤を用意し、該HL91構成派生物試剤は、塩化第1のスズとHL91−NI配位子、メチレンジホスホン酸(MDP)及び重曹からなり、第2のHL91構成派生物について分析する場合、その試剤のHL91−NI配位子の代わりに、HL91−ET配位子を利用する。
【0010】
HL91構成派生物試剤32を標識化する工程(b)において、上記HL91構成派生物試剤に対して、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩(99mTc−pertechnetate)で標識化する。
【0011】
図5と6は、本発明の第1のクロマトグラフィの概念図と本発明の第2のクロマトグラフィの概念図である。図のように、本発明によれば、用意したHL91構成派生物で標識化した後、クロマトグラフィ法により、放射化学純度分析を行い、2種類の異なる極性の溶剤を選別して、それぞれ、展開剤として、上記の標識化済みのHL91構成派生物試剤に添加し、また、それぞれ、SG−ITLCクロマトグラフィ紙とWhatman#1クロマトグラフィ紙を固定相として、クロマトグラフィ分離を行い、また、上記の2種類の異なる極性の溶剤は、それぞれ、生理食塩水(normal saline)と50%のアセトニトリル(acetonitrile)である。
【0012】
図5のように、標識化済みの第1のHL91構成派生物試剤に、生理食塩水を展開剤として添加し、SG−ITLCクロマトグラフィ紙を固定相として、クロマトグラフィ分離を行った後、得られたクロマトグラフィ図(第1のクロマトグラフィ曲線4が含まれる)である。図から分かるように、該展開剤の先端に、ピークが現さず、即ち、free−Tcが現しないことを示す。
【0013】
図6のように、標識化済みの第1のHL91構成派生物試剤に、50%のアセトニトリルを展開剤として、添加し、Whatman#1クロマトグラフィ紙を固定相としてクロマトグラフィ分離を行った後、得られたクロマトグラフィ図(第2のクロマトグラフィ曲線5が含まれる)である。図から分かるように、該サンプル原点(original)に僅かのピークが現し、僅かの量(4.32%)のreduced−Tcが現すことを示す。
【0014】
上記の二つの図から分かるように、第1のHL91構成派生物の放射化学純度は、>95%で、効果が相当に良い。
【0015】
図7は、本発明の高圧液体クロマトグラフィの概念図である。図のように、本発明に従って用意した第1のHL91構成派生物で標識化した後、高圧液体クロマトグラフィ法で放射化学純度分析を行い、逆相であるPRP−1カラムで勾配(gradient)式液体クロマトグラフィを行い、また、放射能検出器で測定し、流動相(mobile phase)溶剤は、選択的に強極性の注射用水(50mM酢酸ナトリウム(sodium acetate)を含む)と弱極性のテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、 THF)である。該図から分かるように(液体クロマトグラフィ曲線6を含む)、11.51分の位置に、主なピーク61が存在し、3.02分の位置に小さいピーク62が存在し、第1のHL91構成派生物の標識化効率が>98%であることを示し、その結果、上記放射化学純度分析結果の正確性が証明される。
【0016】
図8は、各薬品の細胞吸収比較の概念図である。図のように、テクネチウム−99m−HL91−NI71は、低酸素の雰囲気において、細胞の吸収効果が、従来のテクネチウム−99m−HL9172より大きいことを示し、即ち、本発明に係わるHL91構成派生物は、確実に、細胞に入る薬品の量が増加され、薬品の極性を低減でき、そのため、薬品の感度(sensitivity)が向上される。
【0017】
以上のように、本発明に係わる低酸素イメジング剤HL91構成派生物は、有効に従来の諸欠点を改善でき、HL91構成派生物と必要とする成分とを混合して、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で標識化し、クロマトグラフィ法や高圧液体クロマトグラフィ法で放射化学純度分析を行って、テクネチウム−99mで標識化されたHL91構成派生物の放射化学純度が極めて高いことを証明し、その標識化効率が非常に良い。そのため、薬品の特性が向上され、薬品の極性を低減でき、これにより、細胞内に入る薬品の量が増加され、そして、薬品の感度が向上され、そのため、本発明は、より進歩的かつより実用的で、法に従って特許請求を出願する。
【0018】
以上は、ただ、本発明のより良い実施例であり、本発明は、それによって制限されることが無く、本発明に係わる特許請求の範囲や明細書の内容に基づいて行った等価の変更や修正は、全てが、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1のHL91構成派生物の構成の概念図
【図2】本発明の第2のHL91構成派生物の構成の概念図
【図3】本発明の有機合成HL91−NIの化学合成工程の概念図
【図4】本発明のHL91構成派生物を標識化する時の流れの概念図
【図5】本発明の第1のクロマトグラフィの概念図
【図6】本発明の第2のクロマトグラフィの概念図
【図7】本発明の高圧液体クロマトグラフィの概念図
【図8】各薬品の細胞吸収比較の概念図
【符号の説明】
【0020】
1 第1のHL91構成派生物
2 第2のHL91構成派生物
31〜32 工程(a)〜(b)
4 第1のクロマトグラフィ曲線
5 第2のクロマトグラフィ曲線
6 液体クロマトグラフィ曲線
61 主なピーク
62 小さいピーク
71 テクネチウム−99m−HL91−NI
72 テクネチウム−99m−HL91

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HL91−NIであり、2−ニトロ−イミダゾール(2−nitro−imidazole)官能基とHL91とが結合することにより形成されることを特徴とする低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項2】
該HL91構成派生物は、低酸素イメジング剤とされ、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩(99mTc−pertechnetate)で標識化することを特徴とする請求項1に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項3】
該低酸素イメジング剤の標識化過程は、
(a)HL91構成派生物試剤を用意する工程と、
(b)該テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で該HL91構成派生物試剤を標識化する工程を備えることを特徴とする請求項2に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項4】
該工程(a)のHL91構成派生物試剤は、塩化第1のスズとHL91−NI配位子、メチレンジホスホン酸(MDP)及び重曹からなることを特徴とする請求項3に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項5】
該標識化済みのHL91構成派生物は、クロマトグラフィ法により、2種類の異なる極性の溶剤を選別し、展開剤として、それぞれ、標識化済みのHL91構成派生物試剤に添加し、また、それぞれ、SG−ITLCクロマトグラフィ紙とWhatman#1クロマトグラフィ紙を固定相として、クロマトグラフィ分離を行うことを特徴とする請求項3に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項6】
該2種類の異なる極性の溶剤は、それぞれ、生理食塩水(normal saline)と50%のアセトニトリル(acetonitrile)であることを特徴とする請求項5に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項7】
該標識化済みのHL91構成派生物に対して、高圧液体クロマトグラフィ法を行い、2種類の異なる極性の溶剤で、PRP−1カラムにより、勾配(gradient)式液体クロマトグラフィを行い、また、放射能検出器で測定することを特徴とする請求項3に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項8】
該2種類の異なる極性の溶剤は、それぞれ、強極性の注射用水(50mM酢酸ナトリウム(sodium acetate)を含む)と弱極性のテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、 THF)であることを特徴とする請求項7に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項9】
該HL91構成派生物は、HL91−ETであり、カーボン側鎖を延長するように、該HL91−NIを修正することからなることを特徴とする請求項1に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項10】
該HL91構成派生物は、低酸素イメジング剤とされ、テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で標識化することを特徴とする請求項9に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項11】
該低酸素イメジング剤の標識化過程は、
(a)HL91構成派生物試剤を用意する工程と、
(b)該テクネチウム−99m過テクネチウム酸塩で該HL91構成派生物試剤を標識化することを備えることを特徴とする請求項10に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項12】
該工程(a)のHL91構成派生物試剤は、塩化第1のスズとHL91−ET配位子、メチレンジホスホン酸及び重曹からなることを特徴とする請求項11に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項13】
該標識化済みのHL91構成派生物は、クロマトグラフィ法により、2種類の異なる極性の溶剤を選別し、展開剤として、それぞれ、標識化済みのHL91構成派生物試剤に添加し、また、それぞれ、SG−ITLCとクロマトグラフィ紙を固定相として、クロマトグラフィ分離を行うことを特徴とする請求項11に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項14】
該2種類の異なる極性の溶剤は、それぞれ、生理食塩水と50%のアセトニトリルであることを特徴とする請求項13に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項15】
該標識化済みのHL91構成派生物に対して、高圧液体クロマトグラフィ法を行い、2種類の異なる極性の溶剤で、PRP−1カラムにより、勾配式液体クロマトグラフィを行い、また、放射能検出器で測定することを特徴とする請求項11に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。
【請求項16】
該2種類の異なる極性の溶剤は、それぞれ、強極性の注射用水と弱極性のテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項15に記載の低酸素イメジング剤HL91構成派生物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−222582(P2008−222582A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59731(P2007−59731)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(595165656)行政院原子能委員会核能研究所 (51)
【Fターム(参考)】