説明

低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置

【課題】本発明は、低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置を提供するためのものである。
【解決手段】本発明に従う低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置は、上部が開放されており、チタニウムより酸化度が高く、溶融温度の低い脱酸剤を貯蔵する下部容器と、上記下部容器の上に結合され、チタニウム母粉末を貯蔵する上部容器と、を含み、上記上部容器は下部面がシーブ(Sieve)になって、加熱により蒸発される脱酸剤が上記チタニウム母粉末に接触しながら上記チタニウム母粉末の脱酸がなされるようにすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタニウム粉末製造技術に関し、より詳しくは、酸素含有量が略2,200ppm位の商用のチタニウム粉末から酸素含有量が1,000ppm以下の低酸素チタニウム粉末を製造できる脱酸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チタニウム(Ti)は、軽量性、耐久性、耐蝕性に非常に優れる物質である。このような理由により、チタニウムは宇宙航空分野、海洋機器分野、化学工業分野、原子力発電分野、生体医療分野、自動車分野など、多様な分野で活用されている。
【0003】
商用のチタニウムは、略2,000ppmから10,000ppm位の酸素を含有している。したがって、より高純度のチタニウムを製造するための多くの研究がなされている。
【0004】
チタニウムの高純度化研究は主にガス不純物の制御であって、その中でも脱酸工程の開発に合わせてきた。
【0005】
このような脱酸工程を通じたチタニウム内の酸素低減方法として、塩化カルシウム(CaCl)などのハライド(Halide)系フラックス(Flux)を使用してカルシウム(Ca)を溶解し、脱酸生成物である酸化カルシウム(CaO)をフラックス内に溶解させる方法が提案された。しかしながら、上記のハライド系フラックスを使用した方法は、脱酸後、破砕などの複雑な機械的工程を経なければならないという問題点があり、原材料が粉末の場合、上記工程を適用して健全な粉末の回収が困難である。
【0006】
本発明と関連した背景技術には、公開特許公報第10−1987−0011265号(1987年12月22日公開)に開示された高純度チタニウム材及びその製造方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公告特許第90007453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、チタニウム粉末の脱酸効率を向上させて、商用のチタニウム粉末内に含まれている酸素を低減させることができる低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の実施形態に従う低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置は、上部が開放されており、チタニウムより酸化度が高く、溶融温度の低い脱酸剤を貯蔵する下部容器、及び上記下部容器の上に結合され、チタニウム母粉末を貯蔵する上部容器を含み、上記上部容器は下部面がシーブ(Sieve)になって、加熱により蒸発される脱酸剤が上記チタニウム母粉末に接触しながら上記チタニウム母粉末の脱酸がなされるようにすることを特徴とする。
【0010】
この際、上記脱酸装置は上記下部容器内に取り付けられて、上記脱酸剤を直接貯蔵する脱酸剤貯蔵カップをさらに含むことができる。
【0011】
また、上記シーブの縁を固定するガスケットをさらに含むことができる。
【0012】
また、上記下部容器及び上部容器を収容する外部容器をさらに含むことができる。この際、上記上部容器を密閉する上部容器蓋及び上記外部容器を密閉する外部容器蓋のうちの1つ以上をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従う脱酸装置を用いると、カルシウムのようにチタニウムより熔融点が低く、酸化度の高い脱酸剤を用いてチタニウム母粉末を脱酸し、かつ脱酸を脱酸剤の熔融点以上の温度で実施することができる。
【0014】
その結果、本発明に従う装置を用いて製造されたチタニウム粉末は、酸素含有量が1000ppm以下を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従う低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明に従う脱酸装置を用いて低酸素チタニウム粉末を製造する方法の例を概略的に示す図である。
【図3】実施形態1〜2及び比較例1〜2によって製造されたチタニウム粉末に含まれた酸素含有量を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば明確になる。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態で具現され、単に本実施形態は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるだけである。明細書の全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を指し示す。
【0017】
以下、添付した図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態に従う低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置及びこれを用いたチタニウム粉末製造方法に関して詳細に説明すれば、次の通りである。
【0018】
図1は、本発明に従う低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置を概略的に示す図である。
【0019】
図1を参照すると、図示された低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置は、下部容器120a及び上部容器120bを含む。
【0020】
下部容器120aは上部が開放されており、チタニウムより酸化度が高く、溶融温度の低い脱酸剤102を貯蔵する。脱酸剤はカルシウム(Ca)などが用いられる。
【0021】
上部容器120bは下部容器120aの上に結合され、チタニウム母粉末101を貯蔵する。上部容器120bと下部容器120bとは結合部120cにより締結される方式により結合できる。
【0022】
この際、本発明で上部容器120bは下部面がシーブ(Sieve)140で形成される。チタニウム母粉末が下部容器120bに落下することを防止するために、シーブ140はチタニウム母粉末のメッシュより少し大きいメッシュを持つものを利用することが好ましい。例えば、チタニウム母粉末のメッシュが80meshであればシーブは100meshのものを利用できる。
【0023】
また、シーブ140を固定するために、シーブ140の縁を固定するガスケット(図示せず)をさらに含むことができる。
【0024】
上部容器120bの下部面がシーブ140で形成されているので、加熱により蒸発される脱酸剤102が上記チタニウム母粉末101に接触しながらチタニウム母粉末101の脱酸がなされることができる。
【0025】
一方、下部容器120aの内部が脱酸剤102の溶融温度以上に加熱されれば、脱酸剤が熔融され、この場合、脱酸装置使用後に凝固されて下部容器の内部についている脱酸剤を完全に除去することは困難である。したがって、下部容器120aの再使用が困難になることがある。
【0026】
これを解決するために、下部容器120aの内に取り付けられて、脱酸剤102を直接貯蔵する1回用の脱酸剤貯蔵カップをさらに含むことができる。
【0027】
また、図1を参照すると、下部容器120a及び上部容器120bを含む内部容器120を収容する外部容器110をさらに含むことができる。外部容器110、内部容器120を構成する素材にはスチールが用いられる。
【0028】
また、上部容器120aの密閉を通じて内部容器120の全体を密閉できる内部容器蓋121をさらに含むことができる。また、外部容器110を密閉する外部容器蓋111をさらに含むことができる。外部容器110や内部容器120の密閉により蒸発される脱酸剤の漏洩を防止することができる。最も好ましくは、外部容器蓋111及び内部容器蓋121を全て含むことを提示することができる。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に従う低酸素チタニウム粉末製造方法を概略的に示す図であって、より具体的には脱酸剤としてカルシウム(Ca)を用いた例を示す図である。
【0030】
図2を参照すると、図示された低酸素チタニウム粉末製造方法は、チタニウム母粉末/脱酸剤配置ステップ(S210)、脱酸ステップ(S220)、洗浄ステップ(S230)、及び乾燥ステップ(S240)を含む。
【0031】
チタニウム母粉末/脱酸剤投入ステップ(S210)では、上部容器にチタニウム母粉末を装入し、下部容器にチタニウムより熔融点が低く、酸化度の高い脱酸剤を装入した後、下部容器の上に上部容器を結合する。
【0032】
チタニウム母粉末は商用のチタニウム粉末であって、酸素含有量が略2,200ppm位のものが用いられる。
【0033】
脱酸剤はチタニウム母粉末に含まれた酸素を除去するためのものであって、チタニウムより酸化度の高いものが用いられる。また、本発明では蒸発状態の脱酸剤がチタニウムと接触し、このためにはチタニウムより溶融温度の低いものが用いられる。このような条件を満たす脱酸剤にはカルシウム(Ca)などが挙げられる。
【0034】
脱酸剤にカルシウムを用いる場合、チタニウム母粉末100重量部と、カルシウム50〜200重量部を各々装入することができる。カルシウムの使用量がチタニウム母粉末100重量部対比50重量部未満の場合、カルシウム蒸発量が充分でないので脱酸効果が低下する。反対に、カルシウムの使用量がチタニウム母粉末100重量部対比200重量部を超過する場合、これ以上の効果向上無しでカルシウム使用量のみ増加する。
【0035】
次に、脱酸ステップ(S220)では、脱酸容器の内部を脱酸剤の溶融温度以上に略1〜3時間位加熱して、脱酸剤が蒸発されながらチタニウム母粉末と接触するようにする。蒸発された脱酸剤がチタニウム母粉末と接触しながら次のような脱酸反応がなされて、これによって、チタニウム母粉末に含まれた酸素が除去される。
M(g)+O(in Ti powder)→MO(M:脱酸剤)
【0036】
勿論、脱酸剤の溶融温度未満でも脱酸がなされる。しかしながら、同一な条件で、脱酸剤の溶融温度未満で脱酸を実施した場合と、脱酸剤の溶融温度以上で脱酸を実施した結果、脱酸剤の溶融温度以上で脱酸を実施した場合がより脱酸効果が高かった。このような理由により、本発明では脱酸剤の溶融温度以上で脱酸を実施する。
【0037】
一方、脱酸剤にカルシウムが用いられる場合、脱酸温度は850〜1050℃が好ましい。脱酸温度が850℃未満の場合、カルシウム蒸発量が少なくて脱酸が不充分である。反対に、脱酸温度が1050℃を超過する場合、チタニウム粉末の焼結及び凝集現象によって、チタニウム粉末の表面のCaOの完全な除去が困難であるので、低酸素のチタニウム粉末の収得が困難である。
【0038】
次に、洗浄ステップ(S230)では、脱酸ステップ(S220)により脱酸されたチタニウム粉末を洗浄して、脱酸されたチタニウム粉末の表面の脱酸剤酸化物を除去する。
【0039】
脱酸されたチタニウム粉末表面の異質物は脱酸により形成されるMO(s)になることができる。
【0040】
洗浄は、水洗浄(water washing)及び酸洗浄(acid washing)のうち、1種類以上の方法により実施できる。酸洗浄の場合、略10重量%のHCl溶液を利用できる。低酸素チタニウム粉末収得のために、水洗浄及び酸洗浄を数回繰り返して実施することがより好ましい。
【0041】
次に、乾燥ステップ(S240)では、脱酸剤酸化物が除去されたチタニウム粉末を乾燥する。
【0042】
乾燥は多様な方法により実施できるが、低酸素チタニウム粉末収得のために真空乾燥(vacuum drying)方式により実施されることがより好ましい。
【0043】
真空乾燥は、略60℃で2時間位実施される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の好ましい実施形態を通じて本発明に従う低酸素チタニウム粉末製造装置及びこれを用いたチタニウム粉末製造方法ついて説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであり、如何なる意味としてもこれによって本発明が制限されることと解釈されることはできない。
【0045】
ここに記載されていない内容はこの技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0046】
1.チタニウム粉末の製造
実施形態1
2,200ppmの酸素を含む商用チタニウム粉末(99.9%、高純度化学、日本)をチタニウム母粉末にして金属カルシウムを用いて脱酸を進行した。チタニウム母粉末の平均粒度は150μmして分析された。図1に図示された脱酸容器にチタニウム粉末とチタニウム重量対比100%の割合でカルシウムを投入し、脱酸は900℃温度で2時間の間実施した。実験装置は図1に図示した装置を用いた。
【0047】
以後、脱酸されたチタニウム粉末を水洗浄及び酸洗浄(10重量%のHCl溶液)を3回反復実施した後、60℃で2時間の間真空乾燥してチタニウム粉末を収得した。
【0048】
実施形態2
脱酸を1000℃で実施したことを除いては、実施形態1と同一な条件でチタニウム粉末を収得した。
【0049】
比較例1
脱酸を830℃で実施したものであって、チタニウム母粉末とカルシウムが共に配置されて脱酸する方法により実施形態1とは多少相異する条件でチタニウム粉末を収得した。
【0050】
比較例2
脱酸を1100℃で実施したことを除いては、実施形態1と同一な条件でチタニウム粉末を収得した。
【0051】
2.酸素含有量測定
以後、実施形態1〜2及び比較例1〜2によって製造されたチタニウム粉末を酸素/窒素分析器(LECO TC−436)を用いて酸素含有量を測定し、その結果を図3に示した。
【0052】
図3を参照すると、脱酸温度がカルシウムの溶融温度(848℃)以上である実施形態1〜2によって製造されたチタニウム粉末の場合、酸素含有量が1000ppm以下を示した。
【0053】
一方、脱酸温度がカルシウムの溶融温度未満である比較例1によって製造されたチタニウム粉末、そして脱酸温度が1050℃を超過する比較例2によって製造されたチタニウム粉末の場合、酸素含有量が1000ppmを超過した。
【0054】
以上、本発明の一実施形態を中心として説明したが、当業者の水準で多様な変更や変形を加えることができる。このような変更と変形が本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明に属するということができる。したがって、本発明の権利範囲は以下に記載される請求範囲により判断されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
101 チタニウム母粉末
102 脱酸剤
110 外部容器
111 外部容器蓋
120 内部容器
120a 下部容器
120b 上部容器
120c 結合部
121 内部容器蓋
130 脱酸剤貯蔵カップ
140 シーブ(sieve)
S210 チタニウム母粉末/脱酸剤投入ステップ
S220 脱酸ステップ
S230 洗浄ステップ
S240 乾燥ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開放されており、チタニウムより酸化度が高く、溶融温度の低い脱酸剤を貯蔵する下部容器と、
前記下部容器の上に結合され、チタニウム母粉末を貯蔵する上部容器と、を含み、
前記上部容器は下部面がシーブ(Sieve)になって、加熱により蒸発される脱酸剤が前記チタニウム母粉末に接触しながら前記チタニウム母粉末の脱酸がなされるようにすることを特徴とする、低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置。
【請求項2】
前記下部容器内に取り付けられて、前記脱酸剤を直接貯蔵する脱酸剤貯蔵カップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置。
【請求項3】
前記シーブの縁を固定するガスケットをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置。
【請求項4】
前記下部容器及び上部容器を収容する外部容器をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置。
【請求項5】
前記上部容器を密閉する上部容器蓋及び前記外部容器を密閉する外部容器蓋のうちの1つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の低酸素チタニウム粉末製造用脱酸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108164(P2013−108164A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49581(P2012−49581)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【特許番号】特許第5140769号(P5140769)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(506081530)コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ (21)
【Fターム(参考)】