説明

低酸素状態の検出方法

手術又は移植前の、例えば、肝臓、大動脈、消化管中、又は分娩の間にサンプリングされた胎児頭皮血液中の組織の低酸素状態の検出方法、試料から得られた血漿中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の総量を測定することを含む。この方法は、血漿及び/又は血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸の追加測定を含み得る。LDH、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸の1種以上の値の上昇は、胎児における低酸素状態の指標である。方法における、血漿分離装置の使用も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月13日に出願されたスウェーデン出願番号0602158−8に対する優先権を主張する、2007年10月12日に出願された、出願番号PCT/SE2007/050738の一部継続出願であり、それらはいずれも全体として本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は低酸素状態の検出方法に関する。本発明の一態様は、胎児器官の障害のリスクを示す分娩の間の胎児の頭皮の血中の低酸素状態を検出する方法に関する。他の態様においては、本発明は、低酸素状態の検出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
分娩の間又は分娩の終わりにおける急性周産期仮死、すなわち、低酸素状態(胎児血液の不十分な酸素飽和)は、新生児の低酸素性虚血性脳症(HIE)の形態における神経損傷の重要な原因を残している。それは2〜9/1000の満期産児において見られ、厳しいケースにおいては、その後、脳性麻痺(CP)及び死が続く。グローバルな視点においては、毎年約4百万の新生児が死亡し、約23%が急性周産期仮死に起因する。資金の欠如のため、発展途上国は困窮しており、西欧諸国においても大勢の人に理解されるようにこれは深刻な問題である。スウェーデンは、西欧諸国の代表的な国として見られ、仮死は約7/1000の満期産において生じ、2/1000の子供がHIEとなって生まれるであろう。周産期仮死により引き起こされる持続的障害を防止するため、その発症に関してできるだけ速く胎児における低酸素状態を検出することが重要である。早期検出は、持続的障害が生じない段階で介入するかどうかを決定することを可能にする。介入は、実質的に、有益な分娩、特に帝王切開によりできるだけ迅速に幼児を外に出すことからなる。
【0004】
急性周産期仮死の検出は、現在、悪い前兆となる胎児の心拍パターンが見られる場合、胎児の心臓の速度を監視し、次いでpHの測定、膣からサンプリングした胎児の頭皮の血液中の乳酸の測定により実施される。
【0005】
pH及び乳酸は、不十分な酸素供給の状況における嫌気性代謝に切り替えることにより起こる代謝性アシドーシスの指標である。酸素が不足した胎児においては、ピルビン酸は乳酸及びエネルギーに代謝される。現在のところ、pHの測定は素晴らしい標準である。しかし、pHの迅速な測定は35μLの頭皮の血液を必要とし、これは容易に得られない。いくつかの研究が示すように、最初の測定の失敗はとてもありふれたことである(20%)。たったの5μLの血液が必要であり、ベッドサイドで分析を実施することができるので、乳酸は測定することが容易である。乳酸の分析は1分以内に実施することができ、その結果十分に速い。
【0006】
乳酸及びpHは急性仮死の指標でもある。そのようなものとして、分娩の間に低酸素虚血の突然の急な発症にさらされた、全体として健康な胎児の表示を提供する。低酸素性虚血性脳症を発症した全ての幼児のかなりの割合に、送達相に入る前に低酸素虚血の症状の発現がある。彼らは、分娩の間、低酸素虚血に対して脆弱であり、健康な胎児と同じ方法で反応せず、その結果、現在使用されている方法はこのグループの患者には十分でない。
【0007】
膣液のような液体中の乳酸の測定を含む、分娩を監視する方法は、WO2005/034762A1に開示されている。分娩時の胎児血液のpH及び乳酸を任意抽出した、スウェーデンの最近の研究からの予備的結果は、アシドーシスの指標としての乳酸はpHと同じくらい良好である。乳酸もpHも、中程度/重度のHIEの理想的な予測因子ではなく;感度は乳酸についてはたった67%であり、pHについて50%であるが、特異性はほぼ同じであり、乳酸について76%、pHについて73%である。また、新生児におけるアシドーシスの予測についての感度及び特異性は、乳酸及びpHについて70%未満である。最近のスウェーデンの報告は、心拍動記録法(CTG)及びSTAN(心拍動記録法STセグメントの分析)の組み合わせにより監視する胎児においても、脳障害をもたらし得る、ある種の周産期仮死を検出できないというリスクがあることを報告している(SBU Alert−rapport nr 2006−04)。
【0008】
分娩の間に仮死にさらされた新生児内で上昇することが知られている酵素は、肝臓酵素としても知られているLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びAST(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ)である。LDHは、身体内のほとんどの細胞中に見られ、非特異的酵素と考えられる。従って、それは臨床業務においてまれに用いられる。LDHは、以前は心筋障害のマーカーとして用いられたが、今は、より特異的な試験に取って代わられた。特に、AST及びALTは肝臓障害により特異的である。低リスク群の中国人女性の新生児における、血漿、肝臓の酵素における作業及び送達の効果についての研究においては、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)、ALT(アラニントランスアミナーゼ)、AST(アスパルテートトランスアミナーゼ)、GGT(γ−グルタミルトランスアミナーゼ)を測定し、母体及び新生児の相互関係を示した(Mongrelli M et al.,J Obstet Gynaecol Res,26(1):61−63,2000)。
【0009】
分娩の間又は終わりに、胎児が低酸素状態にさらされると、その体内の血流が、脳、心臓及び副腎を支持して「それほど重要でない器官」(腎臓、肝臓、脂肪及び腸)から再分配されるであろう。これは、最下層の器官における細胞を損傷させる傾向にある。細胞の損傷は、血液循環に入る酵素の漏出をもたらす。低酸素状態が厳しいと細胞は死に、血中の酵素濃度さえも上昇するであろう。LDH、AST及びATLの減少速度(12〜36時間)は、送達の前に開始する以前の低酸素状態のための送達の間の低酸素虚血に対して、より脆弱であるケースを検出することを可能にする。低酸素状態は、胎児体内の電解質のバランスにも影響する。一例は、低酸素状態の間の細胞内の血液からのカルシウムの流入である。新生児動物モデルにおける低酸素状態の間に血清イオン化カルシウム濃度が上昇することが示されている。カルシウムは、ヒトの幼児において結果をも予測する(脳の障害があるかに関係なく)。新生児哺乳動物における低酸素状態の間に変化する、興味のある他の酵素及び電解質は、カリウム(K)、マグネシウム(Mg2+)、ナトリウム(Na)、グルコース、クレアチニンキナーゼ(CK)及びGGTである。
【0010】
グローバルな視点においては、毎年約4百万人の子供が死亡し、これらの死亡の約23%が急性周産期仮死によりもたらされる。脳内のニューロンの損傷を誘発する低酸素虚血の病理学的メカニズムは、出生直後の主要相から開始する、二相性のものである。幼児が首尾良く蘇生した場合、この主要な相には、数時間継続するフリーの間隔が続くであろう。窒息している7人の幼児のうちの2人において、このフリーの間隔には、子供の脳内の遅発性細胞死をもたらす二次エネルギー枯渇、及びてんかん発作(HIEとしても知られている)を伴う臨床像が続くであろう。フリーの間隔は、低体温処理(子供の脳を34.5℃まで冷却)による遅発性細胞死を最小にする可能性を提供する。しかし、現在では、子供がHIEを発症し得ることを予測し、その結果、低体温処理の利益を享受するための確実な手段がない。
【0011】
低酸素状態は、分娩の間又は分娩の終わりに加え、多くの他の病状における重大な関心事である。例えば、結腸直腸癌は、男女のいずれにおいて最も一般的な腫瘍であり、その発生は年々増加している。最新の治療は外科手術であり、それによって腸の根本部分(radical part)を除去してしまう。このケースの大部分においては、その後、腸の遠心端及び近位端は、再度構成される。これは吻合と呼ばれる。この進行の間、動脈血管が切断される時に、腫瘍が位置する腸の部分に供給される動脈血は遮断される。全ての手術の7〜10%において、吻合の漏出のための手術後の合併症が予測され得る。このようなケースにおいては、腸の内容物が腹部に漏出し、炎症、腹膜炎、敗血症及び潜在的な死を引き起こす。この合併症の主な理由は、血管の摘出の結果としての、吻合のための領域への血液の不十分な供給である。最新の解決法は簡単に再手術をすることである。望ましくなくは、現在、それは、吻合が漏出するかしないかを予測するためには、手術の際には可能ではない。
【0012】
低酸素状態が主な関心事である他の分野には、血管手術及び肝臓移植手術が含まれる。例えば、肝臓移植療法後の患者における罹患率及び死亡率を決定する主な因子は、肝臓移植片の損傷の保存である(Leemaster 1997)。灌流液へのLDH、AST及びALTの漏出は、肝臓細胞の膜の完全性の損失の程度である(Kebis 2007)。
【0013】
低酸素状態を検出するための以前の装置及び方法の一つの主要な欠点は、LDHのみが血漿又は血清内で分析され得ることである。更に、それらは、このような測定のためには最低限150μLの全血を必要とする。このような容量の血液を小動物、特定の組織又は分娩の間の生まれる前の子供から得ることは困難である。他の問題は、LDHが赤血球にも存在し、溶血(赤血球の破裂)が正しくない高価値をもたらすであろうことである(検出限界を超えて)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、LDHを、単独で、又は電解質及び肝臓酵素と一緒に分析し、低酸素虚血を検出するための少量の血液のみを必要とする方法が必要である。更に、分娩時の胎児の酸素供給の検出における改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、10マイクロリットルの全血で、数分(又は数秒)以内に、LDHを、場合によってAST、ALT、Mg及び乳酸も分析することができる装置及び方法を提供することにより、少なくともいくつかの要求を満足させる。これらの分析は、結果として正しくないLDHの増大値を有する、溶血が存在しないことを確認するためにフリーのヘモグロビンを一緒に測定することができる。
【0016】
本発明の実施態様は、低酸素状態、特に、分娩の間にサンプリングされた胎児頭皮の血液中の低酸素状態を検出する方法を含む。このような実施態様においては、方法は、血漿中のLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の測定を含み得る。LDHに加え、胎児頭皮の血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される1種又は数種のマーカーを測定することが好ましい。特に好ましくは、K、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸のいずれかと、LDHとの組み合わせである。また、好ましくは、LDH、乳酸、Mg及びAST及び/又はALTとの組み合わせである。
【0017】
本明細書を通して用いられる場合、「LDH」及び「乳酸デヒドロゲナーゼ」は、全てのデヒドロゲナーゼを意味し、すなわち、そのアイソザイムを意味しないことを理解すべきである。
【0018】
本発明の方法においては、患者の近くの環境において、分娩の間に膣を通して胎児から一定限度量(好ましくは約5〜25μL)の頭皮の血液がサンプリングされる。試料は、血球、特に血球からの血漿(血清)の分離に供され、血漿は、症状を見つけるため、数分以内に、LDH、場合によってK、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸について分析される。結果として、医療チームは、子供が急性仮死に苦しんでいるか、すなわち、帝王切開が必要であるか否かを示すことを直接的に結論することができる。本発明のおかけで、低酸素状態に関連する多くの苦しみを排除でき、多くの救済をも達成することができる。
【0019】
発明者らにより実施された研究において、子供に由来する血液試料中のLDH、AST及びALTは最初の24時間以内に分析された。それは、193人の試験を行った子供たちによって見い出された。これらの子供のうちの19人が、5分齢において、<7のアプガースコアの形態の仮死の兆候を示した。ROC曲線により、1000U/Lのカットオフ値においてLDHについて96%の感度及び特異性が観察された(図1を参照)。HIEについては、同じカットオフ値において感度は100%であり、特異性は96%である。言い換えれば、これは、本発明の方法による主要なマーカーが、本当の低酸素状態を伴う全ての子供の95%(又はそれ以上)が、健康である正しい全ての健康な子供の95%を同時に決定することを意味する。AST及びALTは、それぞれ55U/L及び18U/Lのカットオフ値において、86%の感度及び90%の特異性を表す。この研究が予備的であるという事実にもかかわらず、今日存在する方法と比べ、意外な向上を示している。
【0020】
費用の視点から、結果は驚くほどである。今日の方法を用いる場合、HIEを伴う1人の子供を見つけるために約10回の不必要な帝王切開が実施され、すなわち、HIEを伴う1人の子供を見つけるために合計11回の帝王切開が実施され、そのうちの10回が不必要である。本発明の感度及び特異性は、結果が反対であり、すなわち単に10回の帝王切開のうちの1回が不必要であったことを示す。従って、社会は、何百万人をも救い、少なくとも、より多くの子供に自然分娩を利用することをもたらし得る。
以下に述べる。公知の方法と比較し、本発明の方法により大幅な改善を示す表を下記に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
健康な人間においては、赤血球は、血清よりも約150倍のLDHを含むことが知られている。従って、血漿に通過させることから、LDH含有量が血漿内に通過することを防止するために赤血球を損傷させないような方法でサンプリング及び分離を実施することが重要である。分析に使用可能である少量の頭皮の血液試料も考慮することが重要である。本発明の方法においては、血漿を、本出願においては、血球を保持し得る固相上の「膜」と命名される多孔質マトリクスに通過させることにより、血漿及び血球に分離する。血漿を、従来の方法でLDHについて分析する。血漿又は血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT及び/又は乳酸を分析する;血液中において分析する場合は、頭皮血液試料を、LDHの測定のために得られる血漿に由来する部分と、他の低酸素状態のマーカーの分析についての1以上の部分とに分離する。本発明の頭皮の血液試料中の血球から血漿を分離するために、微量遠心分離、マイクロ流体コンパクトディスク技術及びマグネトフォレシスのような、当該技術分野で用いられる他の方法を用いることは本発明の範囲内である。
【0023】
血漿のような液体中のLDHの分析方法は当該技術分野において公知であり、胎児の血液から得られた血清中のLDHを測定するために適用することができる;例えば、Pinto PV C et al.,Clin Chem 15:339−349,1969を参照されたい。最後に言及された方法において用いられる市販の装置は市販されている(Vitros(登録商標)DT60 II Chemistry System;Ortho−Clinical Diagnostics,Inc.,U.S.A.)。血中のK、Mg、Ca、ALT、AST及び乳酸の分析方法は臨床化学において通常に用いられており、従って、当業者のすぐ手の届く範囲内である。
【0024】
本発明によれば、胎児が低酸素状態にある場合に、分娩の間に膣を通して胎児からサンプリングした頭皮血液中のLDH、K、Mg、Ca、ALT、AST及び乳酸のレベルを評価し、標準(ベースライン)は、問題のない出生との関連で、分娩の間及び/又は分娩の直後の胎児中の対応するレベルである。特に、重度の低酸素状態、すなわち、胎児をHIEを得る高いリスクに置く低酸素状態に苦しむ分娩における胎児においては、LDH、ALT及びASTのレベルは2倍、特に3倍以上増加する。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、数分以内に、急性低酸素状態にあるかどうかを決定するための、少なくとも1種、好ましくは多数のマーカーを用いる、特徴となるケア機器を提供することを含む、分娩の間の頭皮血液試料中の低酸素状態を検出する方法が開示される。
【0026】
更に好ましい変形によれば、前記機器は、更に、K、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸の1種又は数種の分析手段と連結されている。
【0027】
更に好ましい態様によれば、本発明の機器/方法において簡単かつ直接的に用いられる血漿分離機器に関する。
【0028】
他の態様においては、本発明は、哺乳動物の組織部位における低酸素状態の評価方法を含む。このような実施態様においては、本発明の方法は、組織部位から血液試料を集めることを含み、前記血液試料が血漿及び血球を含み、血球に由来する血漿を分離することを含む。血漿中のLDH量を測定し、血漿中のLDH量から組織部位における低酸素状態の存在を評価する。組織部位における低酸素状態の評価方法は、哺乳動物の消化管(例えば、哺乳動物の腸)に由来する血液試料の分析、特定の器官(例えば、哺乳動物の大動脈)若しくはマイクロカテーテルにより集めた脳脊髄液に由来する試料の分析、尿若しくは腹腔液の分析、並びに移植を必要とする哺乳動物に移植された器官に由来する試料の分析を含む。本発明の実施態様による低酸素状態の評価方法は、出産前低酸素状態後の脳損傷の可能性を予測すること、並びに医療処置又は外科手術の前、最中及び後の哺乳動物の手足への血流の評価を可能にする。
【0029】
以下、多かれ少なかれ、略図に示した、好ましいが限定的でない本発明の実施態様の説明により、本発明を詳細に説明するであろう。
【0030】
従って、一般用語において本発明を説明するが、記号は、必ずしもスケールに記載されていない添付の図面に伴って実施される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、感度及び特異性についてのROC曲線を示す。
【図2】図2は、本発明の方法の実施態様を概略的に示すブロック図を示す。
【図3】図3は、本発明の方法において用いられる逐次段階における分離機器の第一の実施態様の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の方法において用いられる逐次段階における分離機器の第一の実施態様の断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の方法において用いられる逐次段階における分離機器の第一の実施態様の断面図を示す。
【図6】図6は、試験頭皮血液を集めるために用いられることを意図する、本発明の毛細管装置の実施態様を示す。
【図7】図7は、本発明の他の実施態様による、迅速な試験分析システムを示す。
【図8】図8は、本発明の迅速な試験のための使い捨てカード装置の実施態様を示す。
【図9】図8は、本発明と正常に連結する作用の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を、本発明の全ての実施態様を示してない、いくつかの添付図面を参照しつつ、以下に更に詳細に説明するであろう。実際、本発明は多くの異なる形態で具体化され、本明細書に示される実施態様に限定されると解釈すべきでない;むしろ、これらの実施態様は、本明細書の開示が適用可能な法的必要条件を満足させるように提供される。
【0033】
本発明は、10マイクロリットルの全血で数分(又は数秒)以内に、LDH、場合によってAST、ALT、Mg及び乳酸を分析することのできる機器及び方法を提供する。分析は、これらの分析は、結果として正しくないLDHの増大値を有する、溶血が存在しないことを確認するためにフリーのヘモグロビンを一緒に測定することができる。
【0034】
位置態様においては、本発明は低酸素状態の検出方法を含む。特定の実施態様によれば、方法は、血液試料を集め;血中のLDHの総量を測定することを含み得る。血液試料は、任意の哺乳動物、又は移植を必要とする哺乳動物に移植される任意の器官に由来する代替え物から集めることができる。
【0035】
他の実施態様においては、低酸素状態の検出方法は、血液試料を集めることを含み、血液試料は血漿及び血球を含む。好ましくは、血球の非存在下で血漿を分析することができるように、血漿を血球から分離する。分離された血漿は、血漿中のLDHの総量について分析され得る。LDHの検出自体を達成することができる。LDH量、又は他の予後マーカーと組み合わせたものをベースとし、低酸素状態の検出を容易に実現することができる。
【0036】
好ましい実施態様においては、低酸素状態の検出は、複数の予後マーカーの含量又は量を測定するために血液試料を分析することを含む。このような一つの実施態様においては、方法は、血液試料、又は好ましくは血漿中のLDHの量を測定し、基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを含む。
【0037】
好ましくは、分析のための血液試料は、血漿を血球から分離するように操作する。一実施態様においては、この分離は、半透性膜又は遠心分離を用いることにより達成することができる。半透性膜を利用する場合、血漿は好ましくは膜を通過し、血球は膜に保持される。従って、血漿は、全ての実用的な目的のために血球のバルクから分離される。次いで血漿はサンプリングされ、血球の非存在下に試験される。
【0038】
種々の実施態様によれば、分析のための試料容量は以前の方法よりも非常に減少している。一実施態様においては、低酸素状態の検出のための血液の容量は5μL〜60μL、又は5μL〜25μL、又は好ましくは約5〜15μL、特に10μLである。特定の実施態様においては、低酸素状態の検出のための血液の容量は、約5μL〜150μL、又は10μL〜120μL、又は10μL〜100μL、又は10μL〜80μLを含む。
【0039】
有利には、本発明の実施態様は、種々の環境において低酸素状態の検出を可能にする。例えば、本発明の実施態様は、胎児の頭皮、消化管(例えば、結腸吻合)、特定の器官(例えば、肝臓及び大動脈)、腰部ドレインからの脳脊髄液、及び移植される器官に由来する血液中の低酸素状態の検出を含むが、これらに限定されない。更に、本発明の実施態様は、
肝臓(例えば、潜在的に多臓器機能不全に苦しむ哺乳動物の)、末梢組織(例えば、外傷、敗血症、出血又は広範囲の手術)、出生前仮死後の脳損傷の予測の評価及び/又は監視、並びに哺乳動物の末梢血流の監視を可能にする。
【0040】
本発明における使用の連続的な工程における、本発明の血漿分離機器1を図3〜5に示す。機器1は通常、ポリ(テトラフルオロエチレン)のような疎水性ポリマー材料中に環状の筐体を含む。筐体内の血漿の収集区画2は、筐体のもののように、同一又は類似の材料のグリッド12により支持される血漿分離膜11により閉鎖された上部開口を有する。区画底部13は、広角錐体の形態で、その中心に向かって傾斜している。区画14の側壁から、弁16を備えた管状導管15に伸長している。導管15は、真空ポンプ(図示せず)のような陰圧源に伸長している。図3においては、40μLの頭皮血液試料7が膜11の外面に配置され、弁は閉鎖状態にある。弁16を開放することにより、区画14は陰圧下に置かれ(図4);それによって、血漿7’が区画14中に吸引され、その傾斜底13に蓄積し、血球7’’は膜11に保持される。弁6を閉鎖した後、図5に示す状態に到達し、区画内の圧力は、膜11に吸引された空気により大気圧と等しくなる。区画14中の他の圧力均一化は、陰圧の形成を停止した後、又は他の適切な手段により導管15を通して達成することができる。図5は、吸引シリンジによる区画14からの血漿試料7の除去し示し、吸引シリンジのカニューレ10は膜11を通して挿入される。膜上の血球による血漿試料7の汚染を回避するため、分離挿入ポート(図示せず)、例えば、機器1の上部又は側壁内の分離開口内に配置されるゴム隔壁が供給される。図2のブロック図は、本発明の方法の原理を示す。
【0041】
区画は、更にその底部と連結するように配置された第二の導管を備え、区画の底部に蓄積する液体(血漿)の排出を制御する第二の弁手段を備えている。また、区画は、蓄積されたLDH及び他のマーカーを検出する手段を含む。膜は、5mm〜1000m、特に20mm〜300mmの面積を有することが好ましい。
【0042】
頭皮血液の分析
分析は、pH又は乳酸の測定について臨床ルーチンで用いられている標準的装置を用いて、健康な成人男性に由来する頭皮血液試料を用いて首尾よく繰り返された。試料は、膣チューブを用い、かつ用いない(実在の生活状況における羊水の汚染を回避するため)。結果を示すための血漿分離カードへの血液試料の適用の時間は平均7分であった。本発明の方法に適用される機器を用いることにより、特に、膜の真空側に適用される陰圧が、電気的手段を用いることにより、十分に制御され、時間を計測することにより、分析のための時間は、例えば3〜4分、又はそれ以下と相当に短くなった。従って、緊急事態におけるベッドサイドにおける胎児の頭皮血液の検出における本発明の方法の使用は、完全に実現可能である。
【0043】
測定において、頭皮血液中のLDHが指の毛細血管よりも想到に高いことがわかった;指の血液中で400U/Lであったのに対し、羊水チューブを使用した場合と使用しない場合とで、1044U/L及び1127U/Lであった。LDHについて見られるのと同様の頭皮と臍帯血との間の相違は、胎児におけるグルコール及びヘモグロビンについて得られた。胎児の頭皮血液中のLDHの測定は、当該技術分野において未知である。
【0044】
図6に、使い捨てカード2、ケア試験のポイントを実施するための分析手段3を含む、すなわち、患者の近くの環境で、7分以内、好ましくは2分以内、更に好ましくは数秒で試験結果を示すことを可能にする、本発明のシステムを示す。使い捨てカード2は、好ましくは多くの異なる検出セル20A〜20Eを有して配置され、これは図7に詳細に説明され、実際にはLDHのみ(又は、例えば、LDH+ASTについての2個のセル)を試験するだけのカードは、いくつかの適用において十分であるかもしれない。
【0045】
図6においては、本発明の方法による2種の連続工程を示す。上部左側に、ガラス毛細管装置4を用いて試験血液7が供給されるように新規なカード2が供給され、例えば約10μLの量で血液が満たされる第一工程を示す。連続工程において、ガラス毛細管装置4は、カード2を有する血液試料7と、機器3内に配置される使い捨てカード2とを接続するためにカード2の区画21内に挿入され、血液試料7の直接的分析が行われ、図7と関連して詳細に説明する。カードは、血液試料7に由来する血漿7’が少なくとも1個の検出セル20A〜Eに、好ましく血球が少なくとも1個の他のセルに、更に好ましくは全血が少なくとも1個の他のセルに入ることを可能にする装置(例えば、本質的に、血漿/血清の分布のための微小流体チャンバーとして知られているような)を備えている。検出セルに入る前に、血漿/血清/全血が、試薬(好ましくは、乾燥した)が沈着する反応チャンバー(26A〜26E)に入る。従って、検出の前に反応が起こるであろう。光学的測定(例えば、それ自体公知であり、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4803159号に記載される、分光光度法)が、機器3のプロセッサ31により直接処理され、ディスプレイ32に示され、及び/又は例えば印刷された紙の上のデータ出力33として提供される。更に、分析機器3は、好ましくは、各使い捨てカード2についての固有のコードを備えたバーコード22を読み取り処理することのできるバーコード読み取りアレンジメントを備えている。好ましくは、分析機器3は持ち運び可能にするための筐体35で囲まれている。必要な供給品、例えば電力(なければ電池式)を供給するための接続を備えている。他の実施態様においては、外部のプロセッサ、例えば、USBケーブルによりラップトップと接続可能な機器を製造するラップトップを用いることにより、より小さく製造されている。
【0046】
図7においては、本発明の具体的な使い捨てカード2の態様を示す。カード2は、5つの検出セル20A〜20Eを配置しており、それらの全ては光学的検出セルである。第一の検出セル20AはALTのためである。第二の検出セル20BはASTのためである。第三の検出セル20Cは総LDHのためである。第四及び第五の検出セル20D、20Eは、それぞれ乳酸及びMg2+のためである。実施態様に示すカードは、処理を容易にする直径、例えば20〜120mm、好ましくは40〜100mmの範囲の直径を有する、円形の平面な形状の本体23を有する。本体23の材料は広い範囲、例えば、ポリ(テトラフルオロ)エチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及び類似物から選択することができる。図7に概略的に示すように、カード2は、血液試料7を供給する、ガラス毛細管装置4を取り付けるように適合するチャンバー21を備えている。チャンバー21に関連し、その底部に、血液試料の更なる輸送を保護する、それ自体公知の方法でインターフェース23(膜及び血漿収集区画を含む、図3〜5に示す膜11と比較されたい)がある。血漿分離膜25及びインターフェース23の間に、場合により、例えば、それぞれALT及びASTを検出するための印刷試薬26A、Bにより、全血のいくつかの検出セルへの供給を可能にする試料スプリッター24(点線で示す)をそなえている次いで、大量の全血試料は、例えば、それぞれ、血漿7’中の総LDH及び乳酸を検出する、印刷試薬により血漿分離装置25に供給される。分離後に得られる血球7’’はMg2+を検出するために光学セル20Eに印刷試薬26Dと混合を混合した後に実施される。
【0047】
本発明の具体的な使い捨てカードにおいて種々のマーカーの組み合わせを用いた試験結果を以下に示すであろう。
【0048】
乳酸デヒドロゲナーゼは低酸素状態の間に増加し、全ての身体の細胞内に存在する。血流内に存在するLDHは、末梢器官に対する血流を減少するのに十分に重症の低酸素状態を示す。これは、これらの細胞に由来するLDHの漏出の発症である。LDHを検出することにより、どの器官が低酸素状態を患っているかを検出することは可能ではない。溶血が起こっている場合(低酸素状態でない場合でも、赤血球の破裂はLDHの増大をも引き起こす)、溶血は2つのグループに分類される:(1)インビトロにおいて、試験管内で試料を取得するか保存する場合に起こる溶血を意味し、(2)インビボにおいて、疾患のために患者内で破裂する赤血球を意味する。次いで、進行中の溶血は、低酸素状態のためだけではない、不当な高レベルのLDHを与えるであろう。LDHの半減期(T1/2)は、LDHの5種の異性体のうちのいずれが血中に放出されるかに依存する。心臓、脳及び血球内に主に存在するLDH1は、120時間のT1/2を有するが、肝臓及び筋肉に主に見られるLDH5は10時間のT1/2を有する。
【0049】
【表2】

【0050】
新生児における我々の研究において、HIEを患っている患者は、184人の健康な患者のうちの178人と同様にマーカーとしてLDHを用いることによって見つけられるであろう。これは、低酸素状態に関するケースがなく、6人の乳児が帝王切開によるか又は器具分娩(instrumental delivery)により不必要に分娩されていることを意味する。
【0051】
高いLDHは、身体のどこかにおける低酸素状態又は溶血の発症又は最新の発現を示す。
【0052】
ASTは身体中の多くの器官内に存在するが、LDHより器官特異的である酵素である。ASTは、肝臓、筋肉及び赤血球内に存在する。AST並びにLDHは溶血に対して感受性であるが同程度ではない。
【0053】
ASTについてのT1/2は新生児について12〜15時間である。
【0054】
【表3】

【0055】
我々の研究において、HIEを患っている患者は、236人の健康な患者のうちの210人と同様にマーカーとしてASTを用いることによって見つけられるであろう。これは、低酸素状態に関するケースがなく、26人の乳児が帝王切開によるか又は器具分娩により不必要に分娩されていることを意味する。
【0056】
高いレベルのASTは、肝臓、筋肉における低酸素状態又は溶血の発症又は最新の発現を示す。
【0057】
ALTは肝臓に特異的な酵素であり、溶血により非常に少し影響を受ける。
【0058】
ALTについてのT1/2は36時間である。
【0059】
【表4】

【0060】
我々の研究において、脳損傷を患っている患者は、240人の健康な患者のうちの28人と同様にマーカーとしてASTを用いることによって見つけられるであろう。これは、帝王切開によるか又は器具分娩により不必要に分娩されている。
【0061】
上昇したレベルのALTは、肝臓における低酸素状態の発症又は発現を示す。
【0062】
身体内のマグネシウムは骨格内に50%が位置し、細胞内に50%が位置する。例えば低酸素状態の間にアシドーシスが発生する場合(pHの低下)、水素イオンが細胞内に移動するであろう。同時にMgはから細胞内に移動し、血中のMgレベルを上昇させる。HIEを患っている新生児について、Mgレベルは健康な新生児より引き。Mgは、細胞障害よりもアシドーシスについてよりよいマーカーである。
【0063】
上昇したMgレベルは、低酸素状態の症状であるアシドーシスの指標である。低いMgレベルは、脳損傷を誘発する低酸素状態の発症の指標である。
【0064】
現段階において、我々は分娩の間のMgについてのデータを有していない。しかし、我々は、新しく生まれた子ブタにおける動物研究においてMgレベルが上昇することを信頼する。
【0065】
【表5】

【0066】
この発見は、全ての健康な乳児は低レベルのAST及び/又はLDHを有することを示す。HIEを患っている10人の乳児のうちの全ての乳児が高レベルのAST及び/又はLDHを有及びLDHを有している。ASTは、乳児が健康であるかどうかを決定するのにLDHを用いるという効果を加える。
【0067】
高レベルのLDH及びASTは、低酸素状態及び溶血を示す。
【0068】
下記表は、マーカーとしてLDH+ALTの使用をベースとする結果を示す。
【0069】
【表6】

【0070】
上記表は、LDH及びALTを同時に分析する場合に、健康な乳児が低レベルのALT及び/又はLDHを有することを示す。HIEを患っている10人の幼児のうち、全ての幼児がALT及びLDHのいずれもが上昇していた。AST及びLDHのレベルが上昇している1人の乳児はHIEを患っていなかった。ALTは、乳児が健康であるかどうかを決定するのにLDHを用いるという効果を加える。
【0071】
ALTは、また、ALTが長時間血中に残存する(T1/2は36時間である)ので、子宮内で乳児が早期に低酸素状態に苦しんでいるかどうかを理論的に伝えることができるので、興味がある。
【0072】
LDH及びALTの上昇したレベルは、肝臓(他の臓器の間で)に影響を及ぼす低酸素状態を示す。
【0073】
以下の表は、マーカーとしてLDH+ALT+ASTの使用をベースとする結果を示す。
【0074】
【表7】

【0075】
LDHを、AST及びALTと一緒に分析した場合、全ての酵素レベルは低く、HIEを患っている乳児を見つけることはできない。3種全てのマーカーの上昇において、HIEを患っている全ての乳児が見つけられ、たった1人の乳児はHIEなしで不必要に分娩される。
【0076】
高レベルのLDH+ALT+ASTは、以前の時間における低酸素状態の発症又は低酸素状態を示す。ALTの半減期が、AST及びLDHよりも24時間長いという事実は、この組み合わせが低酸素状態の時間局面をも与えることを可能にする。LDH+ALT+ASTの例は全て高く、乳児の出生の24時間後にも増大したままであり、これは、低酸素状態が分娩の終わり近くに発現することを示す。
【0077】
これらの計算に用いられる材料において、実際に23回の帝王切開及び22回の器具分娩が、低酸素状態(HIE、アシドーシス又は低アプガースコア)における指標を示さない群において実施された。ここには、疑わしい害のために実施された乳児が含まれる帝王切開しかない。
【0078】
上記例において、ALTと組み合わせてLDHを用いることにより、45人に代え、1人の乳児が不必要に分娩されたことが示された。これは、吸引分娩を含まず、帝王切開のための費用においてのみ880000SEKの節約を与える。吸引分娩は、患者の苦しみの増加と組み合わせ、ヘルスケアのための費用を発生させ、母親及び乳児の両方の傷害のリスクを増加させる。
【0079】
上述したように、ASTは、乳児が低酸素状態に苦しんでいるか否かを決定する場合に、方法に多くを与えてはいない。ASTは、12時間の半減期のために情報を与えたままである。ALTと一緒に、また出生後に試料を繰り返し取り、これら2種の酵素は、低酸素状態が起こっているかについての情報を与えることができる。今日の産科医は、女性が分娩のために病院に到着した時に低酸素状態の症状であるか、又は乳児が既に低酸素状態に苦しんでいるかを立証するための問題を有しているので、これは大いに法律上の有用性がある。
【0080】
科学文献からの情報に基づいた結論は、マグネシウムが、低酸素状態が存在するか、又は以前の発現であるかについての知識をもたらすことを示す。
【0081】
高レベルのLDH+ALT+AST+Mgは、末梢器官に影響を及ぼし、アシドーシスを示すのに十分に重症の低酸素状態の発症を示す。高レベルのLDH+ALT+ASTであり、低レベルのMgは、器官損傷をもたらし、おそらく脳に影響を及ぼす低酸素状態の最近の発症を示す。Mgは、溶血に対して感受性でなく、ALTと一緒に、LDHのレベルの上昇が器官損傷のためであり、溶血のためでないことを強調する。
【0082】
以下において、実施例は、本発明の方法及び装置の実際の使用を記載し、Annaと名付けられた患者が分娩をするために分娩室に到着したと仮定する。職員は、女性の胃に備えた小片を用いて心拍数を調べることにより、乳児の状態の制御を開始する(胎児の心拍数パターン、CTG)。間隔をあけ、可能な変化を観察するためCTGによる制御を実施する。分娩の8時間後、Annaを8cm開腹する。新規なCTGコントロールにおいて、子供の心拍数が上昇するのがわかる。助産婦が、病気の他の兆候がある場合に乳児の頭皮から試料をとることを継続することを望む産科医に呼びかける。
【0083】
彼女の側に横たわっているAnnaは、産科医の位置に移動することを求め、産科医は金属チューブを膣に通し、それを乳児の頭皮に押し込む。彼女は羊液を洗浄し、乳児の頭皮を小さく切断した(頭皮試料)。彼女が1滴の血液7を見た時、彼女は毛細管チューブを取り、約10μLの血液を採取する。(清潔にし、迅速に作業することを必要とする場合に、同時に小さいチューブから血液を採取するのは容易でない。30〜40μLはこの設定において想到に大容量であり、pHを測定する頭皮試料に必要である。)
【0084】
次いで、助産婦は、医師が毛細管チューブ4に挿入した使い捨てカード2を産科医に提供する。次いで、血液を含むカード2をすぐ近くの検出機器3に挿入し、分光光度計により、LDH、AST、ALT及びマグネシウムのレベルを分析する。赤血球7’’の分離後にカード2の上で分析を行い、残りの血漿7’をカードの上で試薬20A〜Dと反応させる。数分以内(例えば、2分)に結果が機器のディスプレイ上に示される。「正常−正常−正常−正常」と示され、これは、LDH、AST、ALT及びマグネシウムのいずれのマーカーのレベルが上昇していないことを産科医に告げている。Annaは自然の方法で分娩を続け、後に健康な乳児を出産する。
【0085】
その夜遅く、産科医は、Helenaが最初の子供を出産する部屋3を訪問する。ここで、同様にCTGは良好でなく、頭皮試料を採取する。この時、ディスプレイは「高−高−高−高」を示し、これは、全てのマーカーのレベルが上昇していることを産科医に告げている。これは、ただ、乳児が低酸素状態に苦しんでいること、及び緊急の帝王切開をすることを決定することを意味する。手術のためのアラームが鳴り、Helenaは大急ぎで彼女のベッドの部屋に行く。急速麻酔が実施され、産科医は彼女の手を洗浄し、手術衣に着替える。次いで、彼女は皮膚及び子宮を切断し、アラームのたった数分後に乳児を出産する。
【0086】
上述したように、いくつかのマーカーは溶血に対して感受性である。この方法における溶血の影響は現段階では完全に調査されていないが、少なくともいくつかの局面においては結果を劇的に変化させないであろう。しかし、サンプリングの間に溶血が頻繁に出現する場合、それは、カード中の溶血についてのマーカーを統合するためのフォーサム(foresome)である。最もありそうなシナリオは、我々が、マーカーの選択としてフリーのヘモグロビン(HB)を用いるであろうことである。血漿中のHbを測定することにより、溶血に関する情報が得られ、どれほど重症であるかを示すことも可能である。また、それを考慮し、溶血の程度に依存する酵素レベルを再検討することも可能である。
【0087】
ある状況においては、このような分析が比色(試薬の色の変化)であり得る場合、LDH単独、又は例えば乳酸、ALT、AST又はマグネシウムと組み合わせたLDHは乳児がどうすべきかを判断するのに十分である。
【0088】
図8においては、分析を実施するために乾燥化合物を用いる、他の試験配置の実施態様を示す。図8に示すような試験装置5を用いる利点は、全ての創傷において電源が必要でないことである。試験装置5は、本体/ケース50を形成する細長いチューブと一緒に配置されている。細長い本体50内に、筐体50の前部末端に隣接した位置の前部チャンバー52内に広がったチャンネル51がある。筐体の背部末端近くのチャンネル51の他の末端に、ポンプ装置53が供給されている。ポンプ装置53は、その出口末端に、逆止め弁54と一緒に配置された、弾力性のある中空体の形態である。出口(逆止め弁54を通して)は、処理装置55内に広がっている。筐体50の前部末端に、血球をろ過して除去する、フィルター58をによる前部チャンバー52と連結した、中心に位置する孔57を有するカラー装置56がある。チャンネル51の一部を形成する前部末端からの距離において、乾燥科学手段8を配置する追加チャンバー59がある。また、ポンプ装置53に隣接するチャンネル51の一部として、バッファーを形成し、チャンネル51内の血液7の容量に関する指標も提供する追加のチャンバー501が配置されている。
【0089】
図8に示す試験装置は、分娩と関連して用いることを意図する。図8に図示するように、子供の頭部6の頭皮を貫通し、少量の血液7が得られる。その後、試験装置5を膣を通して挿入し、少量の血液の周囲にカラー56を位置させることにより、血液試料7と接触させる。次の工程において、逆止め弁54が、弾力性のあるポンプ装置53の中空内部から逃げた空気に広がるであろう、ポンプメカニズム53が活性化される。ポンプ装置53が解放されると、真空が形成され(弾力性のために)、チャンネル51を通して少量の血液7と連結し、それによって血液がフィルター58を通してチャンネル51に吸引される。従って、血漿7’は分析チャンバー59内に入る。ポンプメカニズムは、試験のための十分な血液を保護するための多くの時間を適用するかもしれず、それは、血液がバッファーチャンバー501内でいったん観察されると測定され得る。その後、試験装置5が除去され、分析チャンバー59内の化学的手段のカラーを観察することにより、子供が低酸素状態に苦しんでいるかどうかを決定することができる。それ自体公知であるように、乾燥化学的手段8は、どの色が示されるかに依存する種々の手段を示すために用いることができる。例えば、どの手段をとるかを示すために以下の色が用いられる。緑色が示される場合、手段を実施すべきでない。赤色が示される場合、子供は可能な限り迅速に取り出すべきである。黄色が示される場合、20分以内に新しい試料を採取すべきである。
【0090】
臨床的に、試験装置5は上述したように同じ種類の指標を与えるであろう。乳児の頭皮から血液を集めるための毛細管チューブの使用は、わずかに修飾された試験装置5と組み合わせることもできるが、好ましくは、血液を集める場合に、装置5内に閉鎖系が形成されるように設計することもできる。これは、多くの方法、例えば、乳児の頭皮に対してシリコンカラー(図示せず)により上部を押すことにより、又は装置5を取り除き、上部に堅く密封したキャップを取り付けることにより達成し得る。
【0091】
我々は、また、今日用いられている乳酸試験を、本発明の本発明と組み合わせて分析すし得ると予見する。
【0092】
図9において、それぞれ、好ましくは本発明の方法及び装置を用いる場合のフローチャートが示される。フローチャートに示すように、CTGは、好ましくは最初の指標として用いるべきである。CTGが正常であれば、通常は、どのような手段も着手する必要はない。しかし、CTGが異常である場合は、子供の頭皮に由来する血液試料を本発明に従い、直接分析するか、又は場合により胎児の心臓のST−分析を開始してもよい。
【0093】
本発明は、前述したことにより限定されないが、添付した請求項の範囲内で変化し得る。例えば、「頭皮試料」の定義について、また身体の他の部分から集めた血液試料は、本発明の利点を得るために、いろいろな機会において機能することが当業者には明らかである。本発明において用いられる試料には、全血、血漿及び血清が含まれる。
【0094】
他の態様において、本発明の実施態様は、は、他の医療状況において有利に用いることができる。医療処置の前に興味のある位置から血液試料を集め、予後マーカーについて分析する。
【0095】
種々の実施態様においては、複数の予後マーカーを分析する。このような実施態様は、LDHと、両方の血液試料の血漿中の、基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の追加の予後マーカーの総量の測定を含む。従って、第一及び第二の試料中の各予後マーカーのそれぞれの量を、吻合の正確な位置を確認するために比較することができる。一実施態様においては、医療処置は、消化管の吻合を含む。
【0096】
例えば、結腸直腸癌は、男女のいずれにおいても最も一般的な腫瘍の1種である。最新の治療法は、腸の根本部分と一緒に腫瘍を除去する外科手術を含む。これらの大部分のケースにおいて、その後、腸の遠位端及び近位端は再度構成される。これは吻合と呼ばれる。
【0097】
それ自体は、特定の実施態様は、哺乳動物の消化管(例えば、腸)から集めた血液試料に由来する低酸素状態の検出方法を含む。それ自体は、特定の実施態様は、少量の血液からの低酸素虚血の迅速な(例えば、上記で議論したように数分又は数秒以内)検出のためのポイントオブケア(POC)法を含む。従って、これらの実施態様は、腸の選択部位が吻合に適切か否かを決定することを可能にする。
【0098】
LDH、AST、マグネシウム及び乳酸は、低酸素虚血の間に、細胞障害及び嫌気的代謝のために血液中で増加するマーカーである。血管を切除する前に、外科用メス(又は同様のもの)及び無菌毛細管を用いて腸からの血液を集めることができる。毛細管を前述した分析カードに挿入し、分析することができる。結果は、固有の患者の基準値(例えば、ベースライン)として用いることができる。腫瘍(及び周囲の腸)を除去した後、マーカーが上昇したかどうかを調べるために新しい試験を実施することができる。そうであれば、吻合の不足及び漏出を誘発する低酸素虚血のリスクを最小限にするために、いまだに存在する血液供給の近くに吻合の領域を移動することができる。
【0099】
消化管に由来する血液のサンプリングに加え、本発明の実施態様は、有利には、外科手術の間に哺乳動物の興味のある器官又は脳脊髄液から血液試料を集めることを含む
【0100】
例えば、胸腹部大動脈中における手術の主な原因は動脈瘤及び解離である。必要とされる広範囲の手術は、著しい罹患率及び死亡率と関連している。最も一般的な合併症のいくつかは神経損傷である。これらの大部分の合併症の原因は、虚血による酸素及びエネルギー供給の不足である。具体例として、このような処理は、大動脈の手術の部位に依存して患者の1〜10%で術後合併症として永久麻痺を起こす。
【0101】
しかし、本発明の実施態様は、手術の間の、腰部ドレインを通した、特定の器官又は脳脊髄液(CSF)に由来する血液中の低酸素虚血のためのPOC法であり得る方法を含む。それ自体は、興味のある特定の器官に由来する試料を得、前記に詳述したようにLDHについて分析する。好ましい実施態様においては、低酸素状態を検出する方法は、試料中の、LDHと、基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の追加の予後マーカーとを検出することを含む。好ましくは、検出される追加の予後マーカーの1種には乳酸が含まれる。具体例として、興味のある特定の器官には哺乳動物の大動脈が含まれる。
【0102】
他の態様においては、本発明の実施態様は、移植療法後に患者の罹患率及び死亡率を改善することができる。特に移植後の罹患率及び死亡率に影響を及ぼす鍵となる因子の1つは、肝臓移植における肝臓移植片のような移植片の保存損傷に関連する。例えば、潅流液へのLDH、AST及びALTの漏出は、肝臓細胞膜の完全性損失の指標である。
【0103】
このような一実施態様においては、検出を必要とする哺乳動物に移植された器官内の低酸素状態の存在を検出する方法は、移植手術前の予後マーカーについて、前述したように、血液試料を集め、試料を分析することを含み得る。一実施態様においては、試料を分析し、試料中のLDH及び基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の追加の予後マーカーの総量を測定する。好ましい一実施態様においては、移植のための器官には肝臓が含まれる。
【0104】
本発明の特定の実施態様は、多臓器機能不全の危機的状態の発症のリスクを伴う患者の特定のための病院における要求を満足し得る。現在、ある国は、多臓器機能不全のリスクのある患者の評価のための病室(集中治療室でない)に現れることのできる移動チームを提供することを目的とし、集中治療室(ICU)からの医師及び看護師からなる個人のチームを展開している。リスクにあると確認された場合、患者は治療を受け、ICUに移動することができる。オーストラリアにおいて、これらの移動チームの導入は、心停止、心停止による突然死、手術後合併症の発生及びICUにおける日数を50%減少している。
【0105】
これら移動チームは、多臓器機能不全のリスクを評価するため、肺、腎臓及び血液循環の臨床検査を実施する。しかし、肝臓又は代謝の評価のための迅速な信頼できる方法はない。肝臓は、しばしば重症疾患により影響を受け、肝臓酵素及び代謝性アシドーシスは死亡率の予測因子である。
【0106】
従って、本発明の実施態様の装置は、このようなチームによる使用に十分に適している。このような装置は、通常は小さく、病室において調べる場合に、移動チームが持って行く(例えばバッグ内に)のに十分に迅速である。LDH、AST及びALTは肝臓細胞内に存在し、代謝性アシドーシスの際に乳酸が増加するので、これらのチームは、現在、本発明の装置を利用することによって調べる他のパラメータに対する肝臓の評価を加えることができる。従って、本発明の装置及び方法は、重症疾患のリスクのある患者でさえ潜在的に特定し、その結果、人道主義(humanitarian)及び経済的費用の両方を節約する。
【0107】
他の態様においては、特定の実施態様の装置及び方法は、集中治療室(ICU)内のスタッフによる使用に十分に適している。ICUは、ヘルスケアシステムにおける大部分の重病患者に対して責任がある。 独立して、外傷、心臓診断、敗血症、出血又は広範囲の手術のために患者がICUに搬送される場合、血液循環及び飽和状態が不十分であると、低酸素状態の相当なリスクにある。典型的なパラメータを慎重に監視し、異常な状態を流体及び薬剤で処理したとしても、末梢組織における治療効果に関する情報をICUのスタッフに提供することのできるベッドサイドでの方法はないままである。
【0108】
激しいショックを受けた患者における、血清LDH、AST、ALT及び乳酸の相当な増加が、悪い結果(例えば、死亡)の指標であることが知られている(Hardaway 1981)。AST、ALT(以前はLDHでもある)は、肝障害のマーカーとして、多くのICUにおける臨床ルーチンとして測定され、乳酸は、嫌気的代謝及び腸虚血のマーカーとして用いられる(Juel 2007)。しかし、ベッドのそばで操作することができ、又は数分程度で結果を与えることのできる装置は、未だにない。
【0109】
本発明の実施態様は、結果を最大限でも数分以内の程度で利用できる、ベッドサイドでの低酸素状態の検出のための装置及び方法を含む。このような実施態様は、LDHの分析及び検出のための試料を得ることを含む。好ましい実施態様においては、方法は、血漿中の、基本的にAST、ALT及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを含む。
【0110】
前記で議論したように、分娩の間又は終わりにおける急性周産期仮死、すなわち、低酸素状態(胎児血液の不十分な酸素飽和)は、新生児乳児における低酸素性虚血性脳症(HIE)の形態における神経損傷の重要な原因を残している。脳内のニューロンの損傷を誘発する低酸素虚血の病理学的メカニズムは、出生直後の主要相から開始する、二相性のものである。幼児が首尾良く蘇生した場合、この主要な相には、数時間継続するフリーの間隔が続くであろう。窒息している7人の幼児のうちの2人において、このフリーの間隔には、子供の脳内の遅発性細胞死をもたらす二次エネルギー枯渇、及びてんかん発作(HIEとしても知られている)を伴う臨床像が続くであろう。フリーの間隔は、低体温処理(子供の脳を34.5℃まで冷却)による遅発性細胞死を最小にする可能性を提供する。。しかし、現在では、子供がHIEを発症し得ることを予測し、その結果、低体温処理の利益を享受するための確実な手段がない。
【0111】
出生後可能な限り早く低酸素状態の処理を開始することが重要なので(神経保護効果は、呼吸停止5.5時間後に最も減少する)、予後マーカーの検出のためのケアシステムの迅速なポイントに臨床的価値がある。データは、ALTと共にLDHの量を測定することにより、それが>96%の特異性を有するHIEの予測について100%の感度を提供することを示す新生児から集められた。
【0112】
本発明の特定の実施態様は、臨床の現場、及び周産期仮死にかかっている新生児における低酸素状態の治療に関する研究における医師のための診断手段を提供する。更に、本発明の実施態様は、個体が、周産期仮死後の脳損傷を予測し得る、低酸素状態の検出方法を含む。このような方法は前記に詳細に議論したような、LDHの解析のための試料を得ることを含む。好ましい実施態様においては、複数の予後マーカーの相対量を測定することができる。好ましくは、血液試料を、血漿が血球から分離され、種々の予後マーカーのレベルの測定が、血漿のみの分析に基づくように処理される。好ましい実施態様においては、方法は、血漿中の、LDHと、基本的にAST、ALT及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを含む。最も好ましくは、ALTの量は、測定される予後マーカーの1種である。
【0113】
本発明の実施態様の一つの方法においては、方法は、血漿中のLDH(単独又は他の予後マーカーと共に)の測定が哺乳動物の脳内の細胞死の遅延を示す、必要とする哺乳動物に対する低酸素状態の治療を提供することを含む。
【0114】
他の態様においては、本発明の実施態様は、医療処置又は手術処置の前、最中及び後の哺乳動物の手足の状態を評価するために用いることができる。例えば、外傷、骨折及び血管閉塞は、末梢の手足及び筋肉の循環に影響を及ぼし得る(例えば、筋区画症候群)。虚血性筋肉内の酸素と乳酸のレベルとの間に有意な相関があり、LDHが観察され(Yamamoto 1988)、末梢性動脈閉塞性疾患を患っている患者の大腿骨の血液中で、コントロールの値と比較して乳酸が上昇している(Rexroth 1988)。本発明の実施態様の装置は、特定の手足の虚血を診断し、ほとんどの治療の効果を評価するために酵素及び乳酸レベルを用いることを可能にする。
【0115】
更に、本発明の実施態様は、興味のある手足に由来する試料を分析し、血漿中のLDHの総量を測定することにより、低酸素虚血を検出する方法を含む。追加の診断マーカーは、LDHの測定と同時に定量することができる。これは、医療処置又は手術処置の前、最終及び後で哺乳動物の手足に対する血液循環を評価することを可能にする。
【0116】
当業者は、発明性のあるスキルなしで、例えば、プラスチックに代えてガラス又はある種の適切な他の材料を用いるなどにより、前記記載を逸脱することなく多種多様の修飾を実施することができる。
【0117】
本明細書に開示した本発明の多くの修飾及び他の実施態様は、これらの発明が前記記載及び関連図面に示される教示の利益を有するように、当業者には思い浮かぶであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施態様に限定されず、他の実施態様は添付された請求項の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で特定の用語が用いられるが、それらは限定の目的に用いられるのではなく、一般的かつ記述的に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の組織部位における低酸素状態の評価方法であって、下記:
a.組織部位から血液試料を集める工程(前記血液試料は血漿及び血球を含む);
b.血球から血漿を分離する工程;
c.血漿中のLDHの量を測定する工程;及び
d.血漿中のLDH量から、組織部位における低酸素状態を評価する工程
を含む方法。
【請求項2】
基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
血液試料の容量が、5μL〜150μLである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
血液試料の容量が、5μL〜25μLである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
血液試料の容量が、5μL〜15μLである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
血漿が膜を通過し、血球が膜に保持されるように、血漿が、半透性膜を用いて血球から分離される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
血液試料が、哺乳動物の腸から集められる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
血液試料が医療処置の前に集められ、更に下記工程:
a.医療処置の後に第二の血液試料を集める工程(前記血液試料は血漿及び血球を含む);
b.第二の血液試料の血球から血漿を分離する工程;及び
c.第二の血液試料の血漿中のLDHの総量を測定する工程
を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、両方の血液試料の血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
血液試料中の予後マーカーの量を比較することを更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
医療処置が消化管の吻合を含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
血液試料が、外科手術の間に哺乳動物の特定の器官、髄液、尿、又は腹腔内液の1種以上から集められる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
器官が哺乳動物の大動脈を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、血液試料の血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の予後マーカーが乳酸を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
血液試料が、前記器官を必要とする哺乳動物に移植される器官から集められる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
血液試料が、移植手術の前に集められる、請求項17記載の方法。
【請求項18】
器官が肝臓を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項21】
予後マーカーの測定が、個体に哺乳動物の肝臓の健康を評価することを可能とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
低酸素状態の検出が、出生前仮死後の脳損傷の予測を可能にする、請求項1記載の方法。
【請求項23】
基本的にAST、ALT及び乳酸からなる群から選択される、血漿中の少なくとも1種の追加の予後マーカーの量を測定することを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
血漿中のALTの量を測定することを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
血漿中のLDHの測定が哺乳動物の脳における遅発性細胞死を示す、治療を必要とする動物に対する低体温療法を供給することを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
血漿中のLDHの総量の測定が、治療又は外科治療の前、最中又は後に哺乳動物の手足への血行の評価を可能にする、請求項1記載の方法。
【請求項27】
分娩の間に血液試料を集め、低酸素状態を検出するための少なくとも1種の指標を探すために血液試料を処理することを含む、胎児頭皮の血液中の急性低酸素状態の検出法であって、前記試料から得られる血漿中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の総量を測定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
試料が5μL〜60μLである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
試料が5μL〜25μLである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
試料が5μL〜15μLである、請求項27記載の方法。
【請求項31】
半透性膜及び/又はフィルターを用いて、血球から血漿を分離することを含む、請求項27記載の方法。
【請求項32】
膜が、5mm〜1000mm、好ましくは100mm未満の面積を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
試料を含む膜の一方の表面を取り付け、膜の他の表面に陰圧を適用し、前記他の表面に面する区画中に血漿を集める工程を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記区画からの血漿を、LDHの測定のための装置及び/又は機器に移動する工程を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記区画内に配置された血漿中のLDHを測定する工程を含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記膜が多孔質マトリクス上に配置されるか又は一体化されており、血漿が、毛細管力により引き込まれて移動する、請求項31記載の方法。
【請求項37】
マトリクス中のLDHを測定する時間が付与された後、マトリクスから膜を除去する、請求項36記載の方法
【請求項38】
試料中の血球からの血漿を分離し、LDHの測定のための装置に上清の血漿を移動する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項39】
測定したLDHを、非低酸素状態における胎児からの分娩の間にサンプリングした、胎児頭皮の血液から得られた血漿中の測定されたLDHと比較することを更に含む、請求項27記載の方法。
【請求項40】
統計学的に有意に増加したLDHレベルが低酸素状態の指標である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
3種以上の因子により統計学的に有意に増加したLDHレベルが、低酸素性虚血性脳症のリスクの指標である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記頭皮血液及び/又は前記血漿中の、K、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸からなる群の1種又は数種のメンバーの測定を更に含む、請求項27記載の方法。
【請求項43】
K、Mg、Ca、AST、ALT及び乳酸のいずれかの統計学的に有意に増加したレベルと、LDHの統計学的に有意に増加したレベルとの組み合わせが低酸素状態の指標である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
血漿を分離するための手段と、LDHの測定を実施するために配置された区画とを含む、使い捨ての機器上に試料を集めることを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項45】
請求項27記載の方法における、血球からの血漿の分離のための装置の使用であって、該装置が、筐体、筐体内の区画、半透性膜に覆われた筐体内の第一の開口、導管を通って陰圧又は毛細管力により区画と連結している筐体内の第二の開口、及び陰圧の場合に前記連結を制御するための弁手段を含む装置の使用。
【請求項46】
前記弁手段が導管内に配置され、好ましくは、区画が、その底部分と連結するように配置された第二の導管を更に含み、区画の底部に蓄積した血漿を空にすることを制御するための第二の弁手段を備えている、請求項45記載の使用。
【請求項47】
区画筐体が、筐体中に蓄積した血漿中のLDHを測定するための手段と連結している、請求項45記載の使用。
【請求項48】
請求項27記載の方法を実施するための試験システムであって、前記システムが、血液試料を集める部分を有する使い捨て機器、血漿分離装置、及び血漿中の総乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を間接的又は直接的に測定するために配置された区画を含むシステム。
【請求項49】
前記使い捨て機器が、平らな形態の物体であり、前記受け取り部分が区画を形成し、毛細管試料収集装置と結合していることを特徴とする、請求項48記載の試験システム。
【請求項50】
カード上に配置された多数の測定区画が存在し、好ましくは、前記区画の各々が、試薬を有する上流の区画と接続していることを特徴とする、請求項49記載の試験システム。
【請求項51】
前記接合部分と前記血漿分離機器との間に分取器が配置されていることを特徴とする、請求項48記載の試験システム。
【請求項52】
前記区画が光学的検出セルの形態であり、本体が、光学スペクトルのための少なくとも1つの装置を配置した機器内に収まるように形成されていることを特徴とする、請求項49記載の試験システム。
【請求項53】
前記本体が、固有の符号を配置しており、好ましくは前記機器が読み取り装置を配置していることを特徴とする、請求項48記載の試験システム。
【請求項54】
前記使い捨て機器が、視覚的検出のための乾燥化学的手段を配置した区画を含むことを特徴とする、請求項48記載の試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524518(P2012−524518A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503943(P2011−503943)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050426
【国際公開番号】WO2009/126110
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510225029)カルマーク スウェーデン アクティエボラグ (1)
【Fターム(参考)】