説明

低酸素誘導因子(HIF)安定化ガラス

本発明は、細胞低酸素経路を調節するために特定遷移金属イオンの制御放出を与えるように配合されたガラス組成物、並びに薬剤及び生物医学的研究(罹患組織又は損傷組織の修復、回復又は再生に関する)における、これらの低酸素経路調節ガラスの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞低酸素経路を調節するために特定遷移金属イオンの制御放出を与えるように配合されたガラス組成物、並びに薬剤及び生物医学的研究(罹患組織又は損傷組織の修復、回復又は再生に関する)における、これらの低酸素経路調節ガラスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
体の組織及び器官における酸素圧力は、成長、治癒及び細胞挙動(細胞表現型)を確認するのに重要である。体における低酸素圧力(低酸素)は、特定組織(例えば、軟骨又は骨髄)に自然に存在し、血液(従って、酸素供給)の制限によるか、又は発達組織の代謝要求増大によって、生じ得る。低酸素感受性経路を介する低酸素への細胞応答は、組織損傷後の自然治癒、及び新組織形成に極めて重要である。低酸素は、ヘテロ二量体転写因子低酸素誘導因子1(HIF−1)によって媒介される多面適応的細胞型特異的応答を誘発する。
【0003】
酸素正常状態条件下に、HIF−1アルファサブユニット(HIF−1α)は、ユビキチン化及びプロテアソーム消化によって分解される。これに対して、低酸素条件下において、HIF−1α分解が阻害され、タンパク質の蓄積、βサブユニット(HIF−1β)での二量化、標的遺伝子内での低酸素応答要素(HRE)への結合、及び転写の活性化が生じる。この低酸素経路は、組織修復及び再生に必要な多くの遺伝子及び細胞機構(血管新生、リンパ管新生、細胞分化、前駆細胞漸増、並びに細胞保護及び殺細菌特性の強化を含む)を活性化する。これらの過程は、多くの再生医療戦略(創傷治癒及び組織工学を含む)の極めて重要な標的であり、低酸素経路の誘導は、これらの過程を促進する魅力的経路である。
【0004】
低酸素経路によって誘導される組織再生過程の1つは、血管新生(虚血組織への酸素輸送の回復を生じる新しい血管の形成)である。血管新生の誘導は、特定の組織工学戦略に極めて重要である。血管は、細胞生存、細胞外基質(ECM)リモデリング及び組織再生に極めて重要な、栄養、酸素、増殖因子及び細胞を供給する。従って、組織工学構成物の長時間の機能、統合及び生存は、適切な血管化に依存する。
【0005】
新しい組織及び組織工学構成物の成長は、新血管成長だけでなく、適切な種類の血管にも依存する。浮腫又は慢性炎症を生じ得る「漏出性」未熟脈管に対するものとして、安定な、成熟した、充分に分化した脈管構造を発生させる必要がある。単一前駆血管形成増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)の投与は、漏出性未熟血管の形成を助長することが示されている。従って、多くの前駆血管形成因子の細胞産生を生じて、安定成熟血管の形成に導く、低酸素応答を標的とする有効手段が必要とされている。
【0006】
低酸素経路によって誘導される他の過程は、新リンパ脈管成長(リンパ管新生)である。障害リンパ機能は、浮腫及び遅延創傷治癒を含む多くの病理学的状態に関連付けられている。低酸素は、リンパ球増殖因子VEGF−Cの産生を誘導することが公知であり、組換えVEGF−Cでの治療が、創傷治癒、糖尿病性創傷の治癒を促進し、浮腫を減少させることが示されている。従って、リンパ球増殖を促進する低酸素経路の調節が、再建手術後の浮腫を減少させる望ましい方法である。
【0007】
低酸素の他の作用は、抗微生物特性の強化である。低酸素勾配は、虚血組織(例えば、創傷)への免疫細胞の漸増を生じ、低酸素は、マクロファージの貪食活性を増大させ、それによって、自然防御機構を活性化し、潜在感染を制限する。感染と戦うことは、生体材料移植後を含む創傷治癒の成功に極めて重要である。
【0008】
さらに、低酸素は、多くの細胞型(軟骨細胞、神経細胞、成体幹細胞、前駆細胞及び胚性幹細胞)の分化に影響を与える。従って、低酸素経路の標的化を使用して、インビトロ又はインビボで、特定の細胞系列の分化を指向するか、又は他の細胞型の表現型を維持することができる。
【0009】
低酸素に対する細胞応答を標的とする1つの治療法は、組換え及び遺伝子療法である。潜在的に有効な、組換え及び遺伝子療法は、一般に、長期の費用のかかる分離、製造、精製及び特性決定工程を含むが、得られる治療生成物は、一般に、比較的短い保存期間を有する。
【0010】
他の方法は、特定の遷移金属イオンの正確な濃度での制御放出によって、組織における低酸素を模倣することである。これらの遷移金属イオン(1つ又はそれ以上のCo、Cu、Fe及びNiを含む)は、細胞低酸素経路を調節することが公知である(Maxwell, P.ら、Cancer Biol. Ther. 3(1):29-35(2004))。遷移金属イオンは、正常酸素状態条件下において転写因子HIF−1αの分解を阻止し、その結果として、VEGFを含むHRE関連遺伝子の産生を生じることによって、低酸素を模倣する(米国特許第5480975号)。
【0011】
細胞低酸素経路を調節するための遷移金属イオンの使用は、組織修復を刺激し、組織構成物を形成し、創傷治癒を促進する方法として、再生医療において大きな可能性を有する。従って、低酸素経路を誘導するのに充分な濃度及び時間において、遷移金属イオンへの組織の制御可能暴露を可能にするのに有効なビヒクルが必要とされている。
【0012】
生物活性ガラスは、細胞挙動に影響を及ぼし、それによって組織成長に影響を及ぼすことが示されているシリカ又はホスフェート網状構造に基づく再吸収可能な材料群である。シリケートガラスの生物活性は、1969年にソーダ−カルシア−ホスホ−シリカガラスにおいて最初に観察された。これらのガラスは、SiO(40〜52%)、CaO(10〜50%)、NaO(10〜35%)、P(2〜8%)、CaF(0〜25%)及びB(0〜10%)を含んでいた。SiO−P−CaO−NaO生物活性ガラスの特定の例は、Bioglass(登録商標)として製造されている。
【0013】
生物活性ガラスの生物活性は、表面特性、及び生理学的環境における溶解イオンの局所放出の結果である。生物活性ガラス(例えば、Bioglass(登録商標))溶解のイオン生成物は、硬質組織及び軟質組織形成の両方に重要な遺伝子の発現を調節することが示されている。
【0014】
多くの生物活性シリカガラスは、「45S5 Bioglass(登録商標)」と称される配合に基づき、それは、45wt%シリコンジオキシド(SiO)及びモル比5:1のカルシウム(Ca):リン(P)を表す。しかし、これらの成分の比率の変化、並びに、他の成分、例えば、ボロンオキシド(B)、マグネシウムオキシド(MgO)、カリウムオキシド(KO)、ストロンチウムオキシド(SrO)及びカルシウムフルオライド(CaF)の含有は、生物活性ガラスの特性(溶解速度及びアパタイト形成を含む)の改質を可能にしている。
【0015】
SiO、NaO、CaO及びPを含む商業的に入手可能な45S5 Bioglass(登録商標)組成物は、VEGFアップレギュレーションの誘導において作用を有することがインビトロで示されている(国際公開第2004/071542号)。しかし、観察されたVEGF産生の増加は最低限であり、ガラスは、低酸素経路を調節せず、VEGF産生を誘導し及び/又は血管新生応答を生じるために改質された組成を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5480975号
【特許文献2】国際公開第2004/071542号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Maxwell, P.ら、Cancer Biol. Ther. 3(1):29-35(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
生物学的適合性及び/又は生物活性ガラスの化学組成、濃度、気孔寸法及び製造法の操作によって、低酸素刺激イオン(Cu、Ni、Fe及び/又はCo)の生理活性レベルでの制御放出を与えるガラスを製造することができ、このガラスを使用して、低酸素を有利に模倣し、HIF−1αの転写を安定化し、低酸素応答(例えば、低酸素遺伝子発現)を酸素正常状態条件下に誘導し得ることが、現在、確認された。低酸素模倣イオンの制御放出によって低酸素応答を標的にするガラスは、好都合にも、VEGF発現だけでなく、血管新生及び低酸素経路によって誘導される他の応答に重要な、かつ組織再生に重要な、多くの他の因子も刺激する。低酸素経路を調節するのに加えて、ガラス化学組成物は、組織再生及びインプラント統合に重要な他の生物学的過程を活性化する(例えば、骨組織再生におけるアパタイト形成)ために、最適化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、第一の態様において、本発明は、下記から形成されるガラスを提供する:
30〜62%SiO(例えば、45〜62%、47〜53%、又は47〜50%SiO);
0.1〜15%P
合計含有率12〜45%のCaO及びSrO;
合計含有率6〜30%のNaO及びKO;及び
0.1〜10%低酸素模倣イオン源;
前記低酸素模倣イオンは、Co、Cu、Mn、Ni及びFeイオンから選択される1つ又はそれ以上のものである。
【0020】
特定の実施形態において、SiO含有率は、45〜62%、好ましくは47〜53%、より好ましくは47〜50%であり、及び/又はP含有率は0.5〜1.5%であり、及び/又はNaO及びKOの合計含有率は6〜28%である。
【0021】
特定の実施形態において、本発明のガラスは、Mg源(例えば、MgO)0〜12%、Zn源(例えば、ZnO)0〜10%、ホウ素源(例えば、B)0〜15%、及びフッ素源(例えば、CaF)0〜10%の1つ又はそれ以上をさらに含む。
【0022】
ガラスは、好ましくは、非晶質ガラス網状構造を含み、低酸素模倣イオンは非晶質ガラス網状構造に組み込まれる。好ましくは、結晶性構造が存在しない。
【0023】
ガラスの組成は、低酸素模倣イオンがガラスの非晶質網状構造に組み込まれるために、かつ、ガラスが生理学的環境での使用においてイオンの制御放出を与えるために、重要である。低酸素イオンの制御送達と組み合わせて、ガラスの化学組成は、ガラスの物理的及び化学的特性に影響を与える。従って、本発明のガラスの化学組成は、所望される適用及び組織型のために変更できる。好ましい組成を以下に詳述する。
【0024】
全体的に言及されるガラス組成物のパーセント含有量は、モルパーセントである。ガラス組成物の形成に使用される金属酸化物、例えばCaOは、各金属イオンの源を与える。ガラスが特定パーセントの酸化物から形成されるか又は含むと記載されている場合、ガラスの形成の間に、酸化物自体を与えてもよく、又は分解して酸化物を形成する化合物を与えてもよい。従って、低酸素模倣イオンの源は、CoO、CuO、MnO、NiO、酸化鉄又はそれらの混合物であってもよい。
【0025】
好都合には、ガラスの組成は、低酸素経路を誘導するのに適切なレベルでの低酸素模倣イオンのインビボ放出を与えるのが好適である。好ましい実施形態において、低酸素刺激イオンはCo又はCuである。より好ましくは、低酸素刺激イオンはCoイオンである。
【0026】
好ましい実施形態において、低酸素刺激イオンの源は、0.2〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%、より好ましくは0.5〜4モル%、さらに好ましくは1〜3モル%又は2〜4モル%で存在する。
【0027】
高度に崩壊したガラス網状構造(例えば、生物活性ガラス)において、遷移金属イオンは、成核剤としての使用が公知であり、結晶化を生じる。これは、均質性の固有損失を生じて、予測性の欠如を生じる。好都合には、本発明の組成物は、この作用を回避し、それに代わって、遷移金属イオンの制御放出を与えるように調整される。
【0028】
好都合には、本発明のガラスは、低酸素刺激遷移金属イオンの制御放出を与える。制御可能低酸放出速度は、低酸素経路を調節するのに極めて重要である。多くの遷移金属は栄養要求物であるが、高濃度及び/又は長期間の遷移金属イオンへの暴露において、局所組織において又は全身的に、毒性を生じ得る。例えば、コバルトはビタミンB12の重要成分であるが、高コバルトレベルは、インビトロ及びインビボにおける細胞死に関連付けられている。低酸素経路模倣物への持続的長期局所組織暴露は、慢性炎症及び関連する病変も生じ得る。
【0029】
低酸素模倣イオンの局所生理的濃度は、ガラス組成、遷移金属型、適用及び標的組織に依存する。ガラスの組成は、制御放出に極めて重要である。特定の組成範囲でのみ、生理的活性であって病理学的範囲でない制御放出が生じ得る。例えば、高架橋ガラスは、低酸素イオン放出を阻止し、一方、高破壊ガラス(highly disrupted glass)は、多すぎる低酸素イオンをあまりにも速く放出し得る。好ましい実施形態において、本発明のガラスは、0.1μM〜500μMの遷移金属イオンの局所濃度を、0〜31日間にわたって与えるように配合される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ガラスは下記から形成される:47〜50%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);0〜2%B;合計モルパーセント18〜25%のCaO及びSrO;合計モルパーセント24〜27%のNaO及びKO;0〜2%ZnO;0〜2%MgO;及び0.1〜10%(好ましくは0.5〜10%、より好ましくは0.5〜5%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、骨/硬質−組織用途、例えば、骨再生材料に使用し得る。
【0031】
他の実施形態において、ガラスは下記から形成される:49〜50%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);合計モルパーセント16〜18%のCaO及びSrO;合計モルパーセント18〜20%のNaO及びKO;1〜10%フッ素源(例えば、CaF);1〜3%ZnO;1〜3%MgO;及び0.1〜5%(好ましくは1〜3%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、歯周用途に使用し得る。
【0032】
さらに他の実施形態において、ガラスは下記を含む:46〜50%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);0〜2%B;8〜40%CaO(好ましくは8〜27%);0〜15%SrO;5〜7%NaO;4〜7%KO;0〜4%ZnO(好ましくは2〜4%);0〜4%MgO(好ましくは2〜4%);0〜9%CaF;及び5%以下の低酸素模倣イオン源。好ましくは、ガラスは下記を含む:47〜50%SiO;0.5〜1.5%P(好ましくは約1%);8〜27%CaO;3〜15%SrO;約3%ZnO;約3%MgO;及び約2%CoO、CuO又はNiO。ガラス内のZnO、MgO、CoO、SrO及びPの合計モルパーセントは、1〜12%であってもよい。ガラスは下記から形成してもよい:46〜50%SiO(好ましくは47〜50%);0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);0〜2%B;合計モルパーセント20〜29%のCaO及びSrO;合計モルパーセント12〜14%のNaO及びKO;2〜4%ZnO;2〜4%MgO;0〜9%CaF;及び0.1〜5%(好ましくは1〜3%)低酸素刺激イオン。特定の実施形態において、ガラスは下記を含んでもよい:46〜50%SiO;0.5〜1.5%P;合計モルパーセント35〜40%のCaO、ZnO、MgO及びSrO;5〜7%NaO;及び5〜7%KO。前記ガラス組成物は、好ましくは、骨の多孔質焼結足場を形成するのに使用されるガラスである。従って、好ましい実施形態において、ガラスは、低酸素を模倣するイオンを含む多孔質焼結足場として提供される。そのような足場は、骨の再生及び修復に有用である。
【0033】
さらに他の好ましい実施形態において、ガラスは下記から形成される:48〜50%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);合計モルパーセント30〜41%のCaO及びSrO;合計モルパーセント6〜8%のNaO及びKO;及び0.1〜10%(好ましくは1〜3%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、複合材料用の充填剤として使用し得る。ガラスは、4〜6%ZnO及び4〜6%MgOをさらに含んでもよく、これらの成分が存在する場合、ガラスは非骨複合材料用の充填剤として使用するのに特に適し得る。
【0034】
さらに他の実施形態において、ガラスは下記から形成される:47〜62%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);0〜2%B;合計モルパーセント12〜17%のCaO及びSrO;合計モルパーセント12〜27%のNaO及びKO;0.8%ZnO(好ましくは0〜6%、より好ましくは3〜6%);0.8%MgO(好ましくは0〜3%);及び0.1〜10%(好ましくは0.5〜5%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、軟質組織用途に使用し得る。
【0035】
軟質組織用途のために、ガラスは、生物学的に適合性であるが、好ましくは生物活性でない。生物活性を防止する1つの方法は、SiO含有量を、例えば62%まで(例えば55〜62%)に増加することである。アパタイト形成を防止する他の方法は、MgO又はZnO濃度を増加することである。従って、特定の実施形態において、ガラスは4〜8%ZnO又はMgOを含む。
【0036】
さらに他の実施形態において、ガラスは下記から形成し得る:47〜62%SiO(好ましくは47〜50%);0.5〜15%P(好ましくは0.5〜1.5%);0〜2%B;合計モルパーセント18〜21%のCaO及びSrO;合計モルパーセント24〜27%のNaO及びKO;0〜6%ZnO(好ましくは3〜6%);及び0.1〜5%(好ましくは2〜5%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、脱毛症の治療用のシャンプーに使用し得る。ガラスは、好ましくは、生物活性ガラスである。
【0037】
さらに他の実施形態において、ガラスは下記から形成し得る:30〜50%SiO;0.5〜15%P(好ましくは0.5〜11%);合計モルパーセント22〜28%のCaO及びSrO(これは、CaOのみ、SrOのみ、又はそれらの組合せであってもよい);22〜28%NaO;及び0.1〜5%(好ましくは1〜3%)低酸素刺激イオン。この組成のガラスは、pH安定性であり、従って、pH変化を最小限にすることが重要な用途、例えば、細胞培養系又はシャンプー、又は局所投与に、特に有用である。局所投与する場合、そのようなガラスは、HIF−1経路を介して作用して、向上した創傷修復(真皮〜皮下)を与え得るか、又はシャンプーにおける使用の場合、小胞VEGF発現を増加させることによって脱毛を抑制し得る。
【0038】
低酸素経路の刺激は、血管新生を刺激するために当分野で一般に使用されている他の方法、即ち、血管形成因子の組換え放出と比較して、多くの利点を有する。本発明のガラスは、組換えタンパク質を組み込んだ材料、ゲル及び足場の使用、又は血管新生を刺激する遺伝子導入法と比較して、有効性及び経済性の両方において、利点を有する。
【0039】
組換えタンパク質又は遺伝子導入と比較して、本発明のガラスは、比較的「低度技術」の製造法を必要とし、安価な原材料を必要とし、極めて長い貯蔵寿命を有する。さらに、前記ガラスは、遺伝子導入用のベクターの使用に関する安全懸念がない。
【0040】
好ましい実施形態において、ガラスは、生組織(又は、インビトロにおける細胞/小器官)と接触した場合に、有利な生物学的応答を誘発する。有利な生物学的応答、即ち、低酸素経路の誘導は、低酸素経路調節イオンの放出によって生じる。
【0041】
本発明のガラスは、生物学的に適合性である。特定の好ましい実施形態において、ガラスは、生物活性ガラスである。他の好ましい実施形態において、ガラス組成物は、生物活性でない(しかし、生体適合性である)。軟質組織において石灰化作用を刺激することは望ましくなく、これは軟質組織用途の既存組成物の主要な欠点である。
【0042】
シリカ基材ガラスにおいて、SiOは、生物活性ガラスの非晶質網状構造を形成し、ガラスにおけるSiOのモルパーセントは、その網状構造結合性(NC)に影響を与える。NCは、ガラス構造物における網状構造形成要素当たりの平均架橋結合数である。NCは、ガラス特性、例えば、粘性、結晶速度及び分解性を決定する。NC2.0において、無限モル質量の線状シリケート鎖(linear silicate chains)が存在すると考えられる。NCが2.0未満に低下すると共に、シリケート鎖のモル質量及び長さが急激に減少する。2.0より高いNCにおいて、ガラスは3次元網状構造になる。ガラスが分解性及びアパタイト形成可能であるために、NCは2.6未満、より好ましくは2.4未満でなければならない。従って、アパタイト形成が重要な骨への適用のために、生物活性ガラスは、2.6又はそれ以下、好ましくは2.4又はそれ以下の網状構造結合性を有する。SiO含有量を増加して、網状構造結合性を2.6又はそれ以上に増加することは、アパタイト形成能力を減少させるか又は除去し得る。
【0043】
本発明に関する網状構造結合性は、Hill R. J. Mat. Sci. Letts. 1996 Jul 1;15(13):1122-5に記載されている方法によって計算されるが、リンが分離オルトホスフェート相として存在すると考えられ、ガラス網状構造の一部でないことを前提とする。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明のガラスは、生理的条件下に再吸収性である。従って、本発明は、再吸収性ガラスを含む。本発明の1つの態様は、低酸素模倣溶解性ガラスについて詳述し、それは、輸送中、手術中及び埋め込み後の両方において、組織工学構成物の生存力を維持するのに重要な特定の細胞型において、保護作用を生じる。
【0045】
好ましい実施形態において、ガラス組成物は、Li、Mg、Zn、B又はFの1つ又はそれ以上の供給源を含む。
【0046】
本発明のガラスは、下記から選択される1つ又はそれ以上の成分を含んでもよい:カルシウム、ホスフェート、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、ホウ素、フッ素、又はアルカリ金属、例えばナトリウム又はカリウムの源。好ましくは、これらの成分は、下記を含むがそれらに限定されない化合物として与えられる:NaO、NaCO、NaNO、NaSO、ケイ酸ナトリウム、KO、KCO、KNO、KSO、ケイ酸カリウム、CaO、CaCO、Ca(NO、CaSO、ケイ酸カルシウム、MgO、MgCO、Mg(NO、MgSO、ケイ酸マグネシウム、ZnO、ZnCO、Zn(NO、ZnSO、及びケイ酸亜鉛、CoO、CO、CoCO、Co(NO、CoCl、CoF、CoSO、ケイ酸コバルト、NiO、Ni、NiCO、Ni(NO、NiSO、NiCl、NiF、ケイ酸ニッケル、CuO、CuCO、Cu(NO、CuCl、CuF、CuSO、ケイ酸銅、及び分解して酸化物を形成する任意のそのような化合物。
【0047】
本発明のガラスが特定の成分から形成されるか又はそれらを含むと先に記載されている場合、ガラスは、これらの成分から形成されているが、付加的成分もガラス網状構造内に存在し得ることが認識される。しかし、本発明は、付加的成分がガラス網状構造に存在しない、本明細書に記載されているガラス組成を有するガラス、即ち、記載されている成分「から本質的になる」ガラスも含む。例えば、本発明のガラスは、アルミニウム不含であってもよい。ガラスは、銀等のような成分を含有しなくてもよい。
【0048】
ガラスの成分の正確なモルパーセントは、ガラスの物理的及び生物学的特性に影響を与えることが認識される。ガラスの種々の使用は、種々の特性を必要とし、従って、各成分のモルパーセントを調節することによって、ガラスの特性を特定の意図する使用に合わせて調整し得る。例えば、ガラスの化学組成を、特定用途に合わせて調整することができ、例えば、Si、Zn及び/又はMg濃度を増加することによって、非骨用途のためにアパタイト形成能力を減少又は除去することができる。さらに、低酸素応答は全ての細胞に遍在するが、応答の型は細胞特異的であり、標的組織の構造的及び機械的特性に合わせて調整されたガラスの形成を可能にする。
【0049】
好ましい実施形態において、ガラスは、カルシウム源を含む。本発明の目的のために、カルシウム源は、カルシウムオキシド、又は分解してカルシウムオキシドを形成する任意の化合物を含む。ガラスにおけるカルシウム源の存在は、ガラス表面からのCa2+イオンの放出を生じ、これは、ガラス表面におけるカルシウムホスフェート豊富層の形成を助け、形成速度を増加させる。この層の形成は骨組織の生成における重要段階であり、従って、カルシウムを含む生物活性ガラスは、骨組織修復及び再生の促進に使用するのに特に好適である。体液自体がカルシウムイオンを含有しているので、カルシウムホスフェート豊富層は、生物活性ガラスによるカルシウムイオンの供給なしに形成できることを認識すべきである。従って、本発明の目的のために、カルシウムを含有しない生物活性ガラスを使用することができる。好ましくは、Ca源(例えばCaO)のモルパーセントは、0%〜45%、より好ましくは10%〜40%である。
【0050】
本発明のガラスは、Pを含む。体液自体がホスフェートイオンを含有しているので、ヒドロキシカーボネート化アパタイトは、活性ガラスによるホスフェートイオンの供給なしに形成できるが、生物活性ガラスによるホスフェートイオンの供給は、ヒドロキシカーボネート化アパタイトの形成速度を増加させる。さらに、Pの供給は、ガラスの粘度−温度依存性に有利な作用を有し、ガラスの製造及び形成に有利な使用温度範囲を増加させる。
【0051】
本発明のガラスは、好ましくは、下記を含むがそれらに限定されないマグネシウム源を含む:MgO、MgCO、Mg(NO、MgSO、ケイ酸マグネシウム、及び分解してマグネシウムオキシドを形成する任意のそのような化合物。マグネシウムイオンは、形成されるヒドロキシカーボネート化アパタイト結晶の大きさを減少させ、熱膨張率を減少させる。それにより、減少したアパタイト結晶の大きさは脆性骨の形成を減少させる。好ましくは、MgOのモルパーセントは、0%〜12%、より好ましくは0%〜10%である。マグネシウムの一部又は全部を、マグネシウムオキシドとして与えることができる。
【0052】
亜鉛イオンの含有(ZnOのモルパーセントは0%〜5%である)も、形成されるヒドロキシカーボネート化アパタイト結晶の大きさを減少させ、熱膨張率を減少させる。熱膨膨張率を減少させることは、ガラスをコーティングとして使用する場合に、有利である。ガラスは、骨折部、又は骨の損傷領域に導入することができる。従って、本発明のガラスは、下記を含むがそれらに限定されない亜鉛源から形成し得る:ZnO、ZnCO、Zn(NO、ZnSO、及びケイ酸亜鉛、並びに分解して酸化亜鉛を形成する任意のそのような化合物。好ましくは、亜鉛源のモルパーセント(ZnOとして測定)は、0〜10%である。亜鉛源を含むガラスは、創傷治癒、幹細胞分化の指向、及び軟骨組織修復のような用途において、軟質組織の修復及び再生を促進するのに特に有用である。本発明のガラスへの亜鉛の組込みは、創傷治癒を促進し、罹患又は損傷組織の再生を助ける。理論に縛られるわけではないが、研究により、特定組成物における亜鉛イオン源(ZnO)の4%〜5%モルパーセントより高い含有は、アパタイト形成を阻害することが示されており、これは非骨用途に好ましい。研究により、ZnO含有量が4%〜5%ZnOモルパーセントより高く増加すると共に、ガラスにおけるその役割が、網状構造調節剤から中間体酸化物に変化し、それによってより安定なガラス構造を形成し、アパタイト形成に必要なイオン交換を防止することが示されている。従って、好ましい実施形態において、本発明は、亜鉛イオン源を5%より高いモルパーセントで含むガラスを提供する。このガラスは、特に軟質組織用途に使用される。
【0053】
同様に、高MgO含有量を使用して、生物活性をノックアウトし、軟質組織用途に好適なガラスを提供することができる。例えば、CaO及びSrOを、MgO及び/又はZnOで置き換えて、生物活性をノックアウトすることができる。Zn2+及びMg2+はガラスのNCを増加させ、ガラス分解/溶解を減少させることによって作用する。Zn2+及びMg2+は、さらに、アパタイト結晶格子における面をブロックし、アパタイトの結晶成長を阻害し得る。
【0054】
他の好ましい実施形態において、本発明のガラスは、ホウ素源を、好ましくはBとして含む。Pの場合と同様に、Bは、ガラスの粘度−温度依存性に有利な作用を有し、ガラスの製造及び形成に有利な使用温度範囲を増加させると考えられる。Bは、さらに、生物活性ガラスのガラス転移温度と結晶化開始温度との間の作業ウインドの大きさを増加して、結晶化を伴わないガラス粉末の焼結を可能にすると考えられる。生物活性ガラスにおける結晶の形成はその生物活性を一般に減少させるので、これは有利である。好ましくは、Bのモルパーセントは0%〜15%である。より好ましくは、Bのモルパーセントは0%〜12%である。
【0055】
本発明のガラスは、好ましくは、フッ素源(好ましくは1つ又はそれ以上のCaF、SrF、MgF、NaF又はKFの形態)を含む。フルオリドは、骨芽細胞を刺激し、ヒドロキシカーボネート化アパタイト付着の速度を増加させる。フルオリド及びストロンチウムは、これに関して相乗的に作用する。フルオリドは、さらに、アパタイト格子におけるヒドロキシルイオンと容易に置き換わることによって、自然生物形態により高い類似性を有するより混合型のアパタイト構造の形成を促進する。混合アパタイトは、より熱力学的安定性であり、従って、より低い溶解性及びより低い再吸収性である。フルオリドは、生物活性ガラスの融解温度を低下させるために使用することもできる。好ましくは、フッ素は、0%〜50%、より好ましくは0%〜25%のモルパーセントで与えられる。好ましくは、フッ素源(好ましくはCaF)は、0%〜10%、又は1%〜7%のモルパーセントで与えられる。好ましくは、少なくとも1%で存在する。
【0056】
本明細書に記載されているガラスのいくつかの好ましい実施形態において、SiO、P及びBの合計モルパーセントは、80%を超えない。
【0057】
さらに、本発明のガラスにおけるSrO、CaO、MgO、NaO及びKOの合計モルパーセントは、40〜60%であってもよい。
【0058】
ガラスは、その意図する使用に依存して、粒子形態において、3D構造として、又は固形物、例えばディスク又はモノリスとして提供し得る。特に、ガラスは、任意の必要とされる形又は形態において、例えば、ペレット、シート、ディスク、フォーム等として、提供できる。粒子形態において、好ましい粒度は、前記生物活性ガラスの用途に依存するが、好ましい粒度範囲は、1200ミクロン未満、好ましくは1〜1000ミクロン、より好ましくは50〜800ミクロン、より好ましくは100〜700ミクロンである。必要とされる粒度の範囲は、ガラスの用途及び生物活性に依存する。例えば、複合材料又は焼結ガラス用の充填剤は、45ミクロン又はそれ以下の粒度で提供される。粒子形態、例えば粉末において、ガラスを、セメント、ペースト又は複合材料に含有し得る。アクリル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリレート(Bis GMA)及びポリアクチドを含むがそれらに限定されない物質に、ガラスを含有し得る(例えば充填剤として)。被覆剤を形成するか、又は足場として使用される多孔質固形物を形成するために、ガラス粉末を焼結してもよい。さらに、ガラスを、分解性ポリマー足場に組み込んでもよい。ガラスは、グラニュールの形態であってもよい。
【0059】
本発明のガラスは、ゲルキャストフォーミング法を使用して、多孔質低酸素経路調節足場を形成するためにも使用し得る。このゲルキャスト法は、低酸素刺激生体適合性多孔質足場の製造を可能にする。この足場は独特の性質を有し、それにより、前記足場は、3次元での骨成長用のテンプレートとして機能し、支持部位における骨再生に適した機械的特性を有し、制御速度で分解でき、生物活性を与えるためにカルシウムイオン源を含有し、血管成長を刺激することができ、骨成長を刺激することができ、工業生産及び臨床用に滅菌することができる。ゲルキャストフォーミング法は、界面活性剤を使用するガラス粒子スラリーの発泡、及びゲル化剤のインサイチュ重合を含む。次に、ゲル化フォームを、ゲル化の直前に鋳型に注ぎ、熱処理して、ポリマーを除去し、ガラス粒子を焼結する。従って、本発明のガラスは、低酸素を模倣するイオンを含む多孔質焼結足場として提供でき、従って、本発明は、本発明の第一態様のガラスを含む多孔質焼結足場を含む。好ましい実施形態において、本発明は、濃度勾配の低酸素模倣イオンを含有する多孔質生物活性足場を提供する。そのような足場は、溶融誘導多孔質足場の直接レーザー焼結及び多層焼結によって形成できる。これらのイオン放出勾配は、天然インビボ低酸素勾配を模倣し、それによって、細胞移動及び漸増のための細胞シグナル伝達濃度勾配を模倣する。
【0060】
ガラスは、好ましくは、溶融誘導ガラスとして提供される。溶融誘導ガラスは、公知の方法でさらに焼結することができる。溶融誘導ガラスは、好ましくは、適切なカーボネート又は酸化物の粒子を混合及びブレンドし、約1250℃〜1500℃の温度で混合物を溶融し均質化することによって製造される。均質化は、好ましくは、酸素バブリングによって行なわれる。次に、混合物を、好ましくは、好適な液体、例えば脱イオン水への溶融混合物のキャスティングによって冷却して、ガラスフリットを製造する。
【0061】
ガラスの化学組成及び形態は、用途に依存する。低酸素経路調節生物活性ガラスは、粒子形態において、前記形態のモノリス、3D多孔質足場、繊維及び/又は被覆剤として、又は埋め込み材料、組織再生構造物及び創傷治癒デバイス、例えば、組織工学足場、縫合糸、プロテーゼインプラント、ポリマーマトリックス、フィブリンゲル、ヒドロゲル、プラスター、創傷被覆材、クリーム、シャンプー等の中又は上に組み込まれた低酸素模倣ガラスとして使用できる。低酸素刺激ガラス組成物は、インビトロ及びエクスビトロ細胞培養に使用されるデバイスにも使用できる。さらに、ガラスは、インビボでの細胞の治療使用の前に、インビトロで特定の細胞応答を誘発するのに使用し得る。
【0062】
本発明のガラスを、他の材料、例えば、ヒドロゲル、ゲル、クリーム、足場及び/又はポリマー複合材料に組み込むことができる。他の材料へのガラスの組込みは、多くの再生医療用途のためにガラスイオン放出特性を利用することを可能にする。
【0063】
ヒドロゲルは、水溶性ポリマーの架橋によって得られ、例えば、架橋ポリアクリルアミドゲル又はポリサッカリドゲルが特に好ましい。好ましいポリサッカリドヒドロゲルは、アルギネート、カラギーナン、アガー及びアガロ−スを含み;他のポリサッカリド、例えば、カードラン、プルラン、ゲラン等も、ヒドロゲル形成成分として有用である。
【0064】
他の好ましい実施形態において、ガラスは、局所適用用の組成物として提供され、例えば、創傷又は火傷を治療するために、皮膚移植における使用のために提供され、その場合、組成物はドナー組織の適用前に移植部位に適用されるか又はドナー組織自体に適用され、又は手術における使用のために、創傷治癒を促進する間に手術部位における術後浮腫及び感染を最小限にするために手術部位に適用される。
【0065】
本発明の組成物は、ガラス粒子の形態のガラスを含んでもよい。ガラス粒子は、単独で、又は、下記の物質を含むがそれらに限定されない他の物質と組み合わせて、提供し得る:抗生物質、例えば、エリスロマイシン及びテトラサイクリン、抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル及びガンシクロビル、治癒促進剤、抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド及びヒドロコルチゾン、免疫抑制剤、成長因子、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子、抗代謝剤、細胞接着分子、骨形成タンパク質、血管新生化剤、抗凝固剤及び局所麻酔剤、例えば、ベンゾカイン及びリドカイン。
【0066】
第二の態様において、本発明は、医療における使用、好ましくは、組織損傷の予防及び/治療における使用のための前記ガラスを提供する。本発明の目的のために、組織は、骨組織、皮膚、軟骨、軟質組織(結合組織を含む)、及び歯組織(石灰化歯組織、例えば、エナメル質及び象牙質を含む)であってもよい。組織は、動物組織、より好ましくは哺乳類又はヒト組織であってもよい。
【0067】
好ましい実施形態において、ガラスは、血管新生又はリンパ管新生の誘発、抗細菌活性の促進、又は細胞生存力の維持に使用するために提供される。
【0068】
本明細書全体を通して、予防及び/又は治療は、任意の損傷又は任意の医学的障害を任意の程度に緩和する任意の作用を意味し、損傷自体の予防及び治療、並びに損傷の制御も含む。「治療」という用語は、障害、疾患、症候群、症状、疼痛、又は1つ若しくはそれ以上のそれらの組合せの任意の改善を意味する。「制御」という用語は、必ずしも症状を改善させないが、疾患の進行を止めることによって症状が増悪又は悪化するのを防止することを意味する。「予防」という用語は、症状が起こらないようにするか、又は症状の開始を遅らせるか、又は症状の開始の重篤度を減少させることを意味する。
【0069】
特に、予防及び/又は治療という用語は、組織の修復及び/又は再構成を含む。本発明の目的のために、「修復」という用語は、例えば生物学的過程のインビボ刺激によって、組織を正常作動可能状態に回復することを意味する。「再構成」という用語は、組織の再建を意味し、外部成分、例えば、足場、模型等の組織への一時的又は永久的組込みを含む。
【0070】
本発明の目的のために、損傷は、機械的損傷であってもよく、外部物質によって生じてもよく、又は内部生物学的過程の結果であってもよい。機械的損傷の例は、外傷、手術、加齢性摩耗等によって生じた損傷である。外部物質によって生じた損傷の例は、下記の損傷である:薬剤、毒素又は治療法(例えば、化学療法又は放射線療法)、例えば透析関連アミロイドーシスによって生じた損傷;疾患、例えば、細菌、ウイルス又は真菌感染症、例えば骨髄炎、遺伝子疾患、例えば骨形成不全及び低ホスファターゼ症、不適栄養、加齢性障害、変性障害又は症状、例えば、骨粗鬆症及び骨癌(骨肉腫及びユーイング肉腫を含む)によって生じた損傷。内部生物学的過程の結果として生じた損傷の例は、自己免疫疾患である。特に、組織の損傷は、骨関節症、歯周病等によって生じたものであってよく、又はその結果であってもよい。
【0071】
生物活性ガラスを組織に組み込まずに、組織修復の開始及び/又は刺激によって損傷を予防及び/又は治療するために、ガラスを提供し得る。代替的に又は付加的に、ガラスを組織に組み込んでもよく、そのようなガラスの組込みは組織の再形成を可能にする。組織への生物活性ガラスの組込みは、永久的又は一次的であってもよい。
【0072】
好ましい実施形態において、ガラスは、軟質組織再生を促進することによる創傷修復に使用される。急性組織傷害の直後に、創傷の微環境は低酸素である。慢性創傷は、不充分な血管形成の結果である。創傷治癒における血管新生の重要性は、創傷治癒を遅らせる血管新生阻害剤(例えば、エンドスタチン)の使用において、及び局所VEGF治療がこの作用を阻止するのに有効であることにおいて、明らかに示されている。興味深いことに、高齢患者における潰瘍及び慢性創傷の数の増加は、低酸素細胞応答の減少と関連付けられている。
【0073】
従って、他の好ましい実施形態において、ガラスは、潰瘍(例えば、糖尿病性下肢潰瘍)の治療における使用のために提供される。
【0074】
さらに他の好ましい実施形態において、ガラスは、骨及び硬質組織の再生及び修復を促進するために使用される。骨形成における血管新生の重要性は、長年にわたり認識されている。血管は、栄養、成長因子、前骨芽細胞、並びにインビボでの骨形成及び骨維持に不可欠な他の因子を供給する。強力な血管新生因子VEGFの骨芽細胞遺伝子発現の増加が、骨折修復の間に生じ、インビボの骨損傷部位におけるVEGFの局所低速放出は、骨修復及び骨統合の増強を生じる。VEGFは、骨芽細胞の分化及び移動を刺激することによって、骨リモデリングに直接的役割を有することも示されている。
【0075】
骨又は硬質組織の再生及び修復を促進するのに使用するために、ガラスは、好ましくは、粉末又はモノリスの形態(多孔質足場を含む)で提供され、骨自己移植片の代わりに使用されるか、又は骨自己移植物質と混合される。骨自己移植は、患者から取った健康な骨を、破損骨の間又はまわりのスペースに配置する(骨折)か、又は骨の中に保持する(欠損)。移植に使用可能な骨ストックの限定量により、これは有利である。
【0076】
好ましい実施形態において、ガラスは、脊椎形成術に使用される。ガラスを、ポリマー又はセメントに組み込み、最小侵襲手術によって脊椎スペースに注入して、骨粗鬆症骨折、及び骨粗鬆症に関連し脊柱湾曲を生じる脊椎崩壊を予防し得る。
【0077】
さらに他の好ましい実施形態において、ガラスは、感染症の治療に使用される。好都合にも、特定の抗微生物剤に見られる細胞毒性作用が、本発明のガラスの使用によって避けられる。例えば、銀イオンは抗微生物剤として作用し得るが、特定の濃度は、細胞毒性作用を有し、創傷治癒を遅らせる。低酸素経路による「自己回復」過程の活性化(例えば、免疫細胞漸増の促進、及びマクロファージ貪食活性の増強)は、抗微生物特性を増強する代替的方法である。
【0078】
他の好ましい実施形態において、ガラスは、細胞保護特性の増強に使用され、細胞損傷を制限し、修復細胞(成体幹細胞)を漸増させる。これは、虚血傷害(例えば、心筋梗塞)後のインビボでの重要な生存機構となり得る。特定細胞型における保護作用は、輸送中、手術中及び埋め込み後の両方において、組織工学構成物の生存力を維持するのにも有用である。
【0079】
好ましい実施形態において、ガラスは、軟骨修復、再構成及び再生に使用される。軟骨は、限られた自己修復能力を有し、従って、組織工学は、軟骨再生において極めて有望である。しかし、軟骨細胞表現型(即ち、それらの軟骨生成能力)の維持は、インビトロにおいて、困難であることが示されている。従って、軟骨ECMを模倣し、軟骨細胞表現型を維持する環境キューを含有する組織足場を開発する必要がある。3D環境を提供するのに加えて、低酸素を模倣する足場の開発は、天然軟骨に存在する低酸素レベルに類似した環境キューを与え、それによって軟骨細胞表現型を維持し、軟骨TEを促進し得る。実際に、低酸素環境において3D足場に増殖する一次軟骨細胞が、それらの表現型を維持することが示されている。さらに、HIF−1α、マスター低酸素感受転写因子は、骨端軟骨細胞形成、軟骨細胞生存、軟骨細胞の再分化、及び軟骨細胞前駆体の分化に極めて重要である。
【0080】
好ましい実施形態において、ガラスは、指向幹細胞分化を誘導するために使用される。低酸素は、幹細胞の可塑性、増殖及び/又はより特殊化した細胞への分化を維持することにおいて、重要なレギュレータであることが示されている。低酸素応答を調節する3D足場の開発は、「幹細胞性」及び指向分化の維持についての基礎的研究を可能にし、知識を深める。低酸素は、デノボ血液形成のための血管芽細胞(循環内皮細胞前駆体)、MSC及び神経細胞の分化を刺激することが公知である。例えば、虚血傷害への応答において、先に移植され、統合された、静止クローン神経幹細胞が、細胞周期に再び入り、低酸素部位に優先的に移動し、神経細胞及び乏突起膠細胞(虚血性脳傷害後に一般に破壊する細胞型)に分化する。インビボでのTE構成物への成体幹細胞の漸増及び増殖は、組織修復、発達及び統合を大いに増強させる。好ましくは、ガラスは足場として提供される。
【0081】
他の実施形態において、ガラスは、発毛の促進、及び/又は髪の太さの増加、例えば、脱毛症、加齢によるか又は化学療法の結果としての髪減少の治療のために使用される。本発明のガラスによって放出される遷移金属イオンの低酸素模擬作用によって刺激される細胞機構の1つである血管新生は、発毛及び小胞の大きさを調節し得る。従って、ガラスは、シャンプーの形態で提供し得る。
【0082】
他の実施形態において、本発明のガラスは、分解性ポリマー、例えばポリエステルにおいて、充填剤として提供できる。特に、ガラスは、ポリラクチドにおける充填剤として提供できる。それにより、生物活性ガラスは、骨スクリュー、骨折固定板、多孔質足場等に、生物活性成分を与えることができる。本発明のガラスの使用は、生物活性ガラスが当分野で現在公知のポリエステルの特徴である自己触媒的分解を防止するので、分解性ポリエステルにおける充填剤として使用するのに特に好都合である。エステルの加水分解がアルコール及び酸の形成を生じるので、自己触媒的分解が起こる。エステルの加水分解は酸触媒されるので、酸の生成は、正のフィードバック状況を生じる。
【0083】
本発明のガラスは、任意の従来法によって投与し得る。ガラスは局所的に投与し得る。局所適用の例は、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、散剤、ゲル剤又はペースト剤の体、例えば、歯又は皮膚への投与である。特に、虫歯、歯周病、歯の知覚過敏症等の患者の歯に投与するためのガラスを含む練り歯磨きとして、ガラスを提供できる。
【0084】
ガラスは、外科的又は非経口的に投与し得る。外科的また非経口的投与の例は、注射によるデバイスの挿入によるか、又は外科的方法、例えば、埋め込み、組織置換、組織再構成等による、組織へのガラスの投与である。
【0085】
ガラスは、経口的に投与することもできる。経口投与のために、組成物を、液体又は固体、例えば、液剤、シロップ剤、懸濁剤又は乳濁剤、錠剤、カプセル剤及びロゼンジ剤として、配合することができる。経口又は非経口投与によるガラスの投与は、ガラスを、その作用を必要とする部位に直接的に与え得る。あるいは、例えば全身循環を使用して、ガラスをその作用部位に送達することもできる。ガラスを、例えば、消化管損傷の予防及び/又は治療を必要とする患者に、経口的に投与することができる。
【0086】
組成物は、粒子、三次元足場、モノリス、被覆物及び/又は繊維等の形態で使用することができ、例えば、下記のために使用できる:血管新生(新しい血管の形成)の刺激;リンパ管新生(新しいリンパ管の形成)の刺激;抗微生物目的;並びに、細胞の増殖及び前駆/幹細胞の分化の指向。これらの特性を、例えば、下記のために使用できる:創傷治癒の増強;感染の阻止;骨成長の刺激;毛包成長の刺激;軟骨組織の再生;及び、他の治療又は美容目的。低酸素経路調節ガラスを、下記の中又は上に組み込むことができる;埋め込み物質、組織再生構成物及び創傷治癒デバイス、例えば、組織足場、縫合糸、プロテーゼインプラント、ポリマーマトリックス、フィブリンゲル、ヒドロゲル、プラスター、創傷被覆材、クリーム剤、シャンプー、エーロゾル剤等。低酸素刺激ガラス組成物は、インビトロ及びエクスビトロ細胞培養に使用されるデバイスにも使用できる。
【0087】
本発明の各態様の全ての好ましい特徴は、必要な変更を加えて、全ての他の態様に適用される。本発明の種々の実施形態が、組み合わせて存在し得ることも認識される。
【0088】
本発明は種々の方法で実施でき、多くの特定の実施形態が、添付の図面を参考にして、本発明を説明するために例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】一系列のコバルト含有ガラスからのイオン放出の誘導結合プラズマ(ICP)分析の結果を示す:a)(上部トレース)ガラス実施例1〜4;b)(下部トレース)ガラス実施例5〜7。
【図2】誘導結合プラズマ(ICP)分析による、時間の経過に伴う、トリス緩衝液中の一系列のコバルト含有ガラス(実施例1〜4)からの制御化学組成依存性コバルトイオン放出を示す。
【図3】トリス緩衝液中で30分間インキュベーション後に、一系列の銅含有ガラス(実施例1〜4、CoをCuに置き換えた)から放出されたCu、Na及びCaのICP分析の結果を示す。
【図4】トリス緩衝液中で30分間インキュベーション後に、一系列のコバルト含有ガラス(実施例1〜4)から放出されたCo、Na及びCaのICP分析の結果を示す。
【図5】トリス緩衝液中で30分間インキュベーション後に、Pの増加モル%濃度を有する一系列のコバルト含有ガラス(実施例13〜16)から放出されたP、Co、Si及びCaのICP分析の結果を示す。
【図6】蒸留水中、種々の低酸素模倣ガラス(実施例3及び13〜15)によって生じたpH変化を示す。
【図7】特定のコバルト含有ガラス組成物(実施例1〜4)の示差走査熱量測定(DSC)トレースを示す。
【図8】低酸素模倣ガラスの実施例(組成実施例1〜4、34、44及び45)のXRDトレースを示す。
【図9】コバルト含有ガラス(実施例1〜4及び5〜7)の29Si MAS−NMR(マジック角度回転−核磁気共鳴)を示す。
【図10】ゲルキャストフォーミング法を使用して製造した多孔質低酸素生物活性ガラス足場(実施例24)のSEM画像を示す。
【図11】模擬体液(SBF)中で3週間インキュベートした種々の組成の低酸素模倣生物活性ガラスのラマンスペクトルを示す。アパタイト(PO3− 960cm−1)形成が、これらの全ての特定低酸素模倣生物活性ガラス組成物(実施例1〜4、34、44及び45)に存在したことを示す。
【図12】図12aは、転写因子HIF−1α発現を示し(縦軸は、[HIF−1α]/[Cyt.C]である)、図12bは、転写因子HIF−1α安定化を示し、両方とも、種々の濃度のコバルトイオンを含有するガラス(BG)(0〜4モル%、実施例1〜4)で48時間条件付けした培地での細胞培養実験において観測した。
【図13】種々の低酸素模倣生物活性ガラス(実施例1〜4、34、44及び45)で条件付けした培地中で48時間及び7日間についての骨芽細胞培養物の生存力(合計DNA)を示す(Zn又はMg含有量が示されているガラスの場合、2%CoOも存在する)。
【図14】(a)コバルト含有するガラス(実施例3)及びコバルトを含有しないガラスに、種々の濃度において、24時間暴露させた骨芽細胞(MG63)細胞培養物において観測されたVEGF発現;及び、(b)これらの培養物において観測された代謝活性。
【図15】下記において観測されたVEGF発現を示す:種々の低酸素模倣生物活性ガラス(0〜4モルCo%、実施例1〜4)で条件付けした培地中で24時間培養した、(a)内皮細胞(HMEC−1)、及び(b)骨芽細胞(SaOS−2)。
【図16】低酸素模倣ガラス(2%Co実施例3)に暴露した場合の非付着性単核細胞の付着性マクロファージ様細胞への分化を示す。
【図17】図17aは、4日間の内皮(HMEC−1)細胞培養後のゲルキャストフォーミング法を使用して製造した多孔質低酸素生物活性ガラス足場(実施例27)のEDX画像を示す。図17bは、4日間の培養後のゲルキャスト足場で培養したHMEC−1細胞の相対代謝活性を示す(低酸素イオンを含有しない対照に標準化)。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本明細書に使用されている用語の意味を下記に説明し、1つ又はそれ以上の下記の非限定的実施例に関して、本発明をさらに説明する。
【0091】
本発明に関して、ガラスは生物活性ガラスであり、生体組織に埋め込んだ場合、それはガラスと周囲組織との界面結合の形成を誘導する。生物活性のインビトロ指数は、ガラス表面における、ヒドロキシカーボネート化アパタイト(HCA)層の成長速度によって得られる。特定の好ましい実施形態において、生物活性ガラスは、刺激体液(SBF)へのガラスの暴露時に、結晶性HCA層の付着が3日以内、より好ましくは24時間以内に起こる生物活性ガラスである。SBFに暴露した際のHCA層の付着(Kokubo T., J. Biomed. Mater. Res. 1990;24;721-735に記載されている)は、生物活性の認定試験である。
【0092】
モルパーセントにおける例示ガラス組成
本発明の特定ガラス組成物を、下記の表に示す。多くのこれらのガラスについて行なった分析を、以下の実施例に記載する。
【0093】
これらのガラスは、溶融誘導ガラス製造法によって製造することができ、前記方法は下記を含む:適切な酸化物(又は酸化物源、例えばカーボネート)を混合しブレンドし、混合物を約1250〜1500℃の温度で均質化し(例えば、酸素バブリングによる)、混合物を冷却して(例えば、溶融混合物を好適な液体、例えば水に入れることによる)、ガラスフリットを得る。分子量及び下記の表に示されているモル%組成物に基づく標準計算を使用して、ガラス溶融混合物に必要とされる各成分の質量を求めることができる。従って、溶融混合物に使用される種々の酸化物(又は酸化物源)の適切量は、下記の表に示されている数値に基づいて算出できる。例えば、ガラス実施例26は、46.53%SiO、27.27%CaCO、6.47%NaCO、6.47%KCO、2.94%ZnO、2.94%MgO、1.96%CoCO、2.94%SrCO及び1.05%Pを混合することによって製造できる。
【表1】


【表2】


【表3】

【0094】
裏付け実験データ
低酸素模倣イオンは、本発明の再吸収性ガラスのシリカ網状構造に首尾よく組み込まれた。前記表に示されている本発明のガラス組成物は、ICP、pH、DSC、X線回折、NMR及びSEM分析によって特性決定された。ガラスの組成及び製造が首尾よく操作されて、生理的関連範囲における低酸素模倣物の制御放出を可能にした。さらに、低酸素模倣物の制御放出に加えて、他のイオンの放出を制御するようにガラスの化学組成を開発した(これらは、生物学的応答(例えば、アパタイト形成又は細胞挙動)を決定するのに重要である)。これらのガラスの開発、組成及び特性決定が、本明細書に詳しく記載されている。
【0095】
低酸素模倣ガラスからの溶解生成物(低酸素模倣イオン)は、転写因子低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)を、正常酸素圧力環境において(図12)、毒性を有さずに(図13及び14)安定化し、HIF−標的遺伝子、例えばVEGFの転写を誘導し(図14及び15)、細胞分化を生じた(図16)。本発明の低酸素模倣ガラスに対する、種々の細胞型の細胞応答を試験した(ヒト骨芽細胞様骨肉腫細胞(SaOS−2及びMG63)、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)及び単核細胞(U937)を含む)。例えば、ヒト骨芽細胞様骨肉腫細胞(SaOS−2)を、RPMI培地(10%(v/v)FBS、L−グルタミン(2mM)、1%(v/v)抗生物質を含有)において培養し、低酸素イオン含有ガラス条件付け培地又は対照ガラス条件培地を有する48ウェルプレートに接種した(50,000/cm)。細胞はさらに、ゲルキャストフォーミング法によって製造した本発明のガラスから形成された3D足場に直接的に首尾よく成長した(ガラス27、図17)。
【0096】
従って、実験研究は、下記の実現可能性を確認した:低酸素イオン(例えばCoイオン)を含有する生物活性ガラス網状構造の形成;低酸素イオン放出速度の制御;及び、細胞毒性を有さない所望の細胞応答の発生、即ち、HIF−1α経路の活性化(図12)及び関連再生応答、例えば、強力血管新生因子VEGFの発現増加(図14及び15)。例えば、いくつかの実験において、コバルト生物活性ガラス条件付け培地は、たった24時間後に、毒性を有さずに、VEGF産生の濃度依存性6倍増加(p<0.01)を誘導することが示された。
【0097】
図1及び2は、時間の経過に伴うイオン放出の誘導結合プラズマ分析(ICP)を示す。ガラスの組成は、(低酸素模倣)コバルトイオン放出速度を決定し、それによって、予測低酸素模倣放出プロフィールを可能にする。放出プロフィールは、本発明によって決定される製造及びガラス化学組成範囲に依存する。図1a及び2における低酸素調節生物活性ガラスの組成物系列は、ガラス実施例1〜4として列挙され、図1bにおける帯電平衡ガラス系列の組成物は、ガラス実施例5〜7として列挙される。本明細書に記載されている全ての実験における対照ガラス(0%Co)は、SiO(49.46モル%)、P(1.07モル%)、CaO(23.08モル%)及びNaO(26.38モル%)からなる。組成物が一定の網状構造結合性を維持するように構成された場合(NC=2.13(図1b))、ガラス内のコバルトのモル%と放出との間に線形相関(0.99回帰)が存在し、一方、網状構造結合性が増加する場合(図1a)、非線形多項相関が存在する。これらの低酸素調節生物活性ガラスの組成物は、公知の生理活性範囲内(48μM〜240μM)でCo2+を放出した。これらのガラスは生物活性であるので(図13)、それらは、特に、骨組織再生を必要とする用途に有用である(例えば、骨充填剤として又は骨組織工学において、アパタイト形成と共に血管形成を促進することによる)。
【0098】
図3及び4は、低酸素模倣物(それぞれCu及びCo)の放出が、ガラスの化学組成によって決定されることを示す。さらに、ガラス網状構造内の低酸素模倣物のモル%を増加させることが、ガラスの網状構造を改変し、他のガラスイオン(例えばNa)のイオン放出動態を予測的に変化させる。
【0099】
図5は、ガラス網状構造内のリンのモル%を増加させることは、低酸素模倣物(Co2+)の放出を減少し、一方、Si(ガラス網状構造形成剤)放出プロフィールを維持することを示す。従って、これらの特定の化学組成におけるガラスモル%Pは、低酸素模倣放出を制御するのに使用できる。高ホスフェートモル%を有する低酸素模倣ガラスを使用して、より低いモル%P濃度(1.04%P)生物活性ガラス(図6)及びBioglass(登録商標)によって以前に示された生物活性ガラスで観測されるpH変化を減少させることができる。Pモル%を増加させることによって利用可能Hイオンの数を減少させることを利用して、生物活性(アパタイト形成能力)を操作し、塩基性pH環境からの任意潜在的細胞毒性を最小限にすることができる。従って、これらのガラスは、pH変化を最小限にすることが重要な用途(例えば、細胞培養系、シャンプー)に使用し得る。
【0100】
図7は、示差走査熱量測定(DSC)トレースを示す。特定ガラス組成物中の増加濃度のコバルトは、意外にも、ガラスの遷移温度を低下させる。ガラス中における網状構造形成剤又は調節剤としてのコバルトの役割は、ガラスの組成及びコバルトの濃度に依存する。ガラス遷移温度の低下は、CoOがガラス構造に入っていることを示す。
【0101】
図8は、本発明のガラスのXRDトレースを示す。非晶質ハロ及び明確なピークの欠如は、物質が焼結後もなお非晶質であったことを示す。結晶質Co相の証拠がなく、Coはガラス構造に組み込まれている。
【0102】
図9は、本発明のガラス(低酸素生物活性ガラス)の29Si MAS−NMR(マジック角度回転−核磁気共鳴)を示す。29Si MAS−NMRは、試料の線幅はコバルト濃度の増加と共に増加する(コバルトの常磁性作用)が、ガラス構造は変化せず、従って、ガラス特性を維持できることを示した。図9aは、ガラス実施例1〜4のデータを示し、図9bは、帯電平衡系列からのガラス(実施例5〜7)のデータを示す。
【0103】
図10は、ゲルキャストフォーミング法(ガラス実施例27を含有するガラス粒子スラリーの発泡、及びゲル化剤のインサイチュ重合を含む)を使用して製造した多孔質低酸素生物活性ガラス足場のSEM画像を示す。次に、ゲル化フォームを、ゲル化の直前に鋳型に注ぎ、熱処理して、ポリマーを除去し、ガラス粒子を焼結する。足場から放出される低酸素模倣イオンの制御放出は、血管新生、新機能骨成長及び生存の重要要素を促進する。
【0104】
図11は、特定低酸素模倣生物活性ガラス組成物が、SBFと共に3週間インキュベートした場合に、アパタイト(PO3− 960cm−1)を形成することを示す。形成されるアパタイトの量(960cm−1の領域)、アパタイトピーク(960cm−1)の全幅半値、及びカーボネート(CO2+)/ホスフェート(PO3−)比は、化学組成及びSBFインキュベーション期間に依存して変化した。これは、特定の用途に特異的生物活性を有する低酸素模倣ガラスの製造を可能にする。
【0105】
細胞培養実験
低酸素模倣ガラスからの溶解生成物の細胞毒性を最小限にしながらHIF−1αの発現を安定化し組織再生応答を促進する能力を、HIF−1α転写因子アッセイ(R&Dシステム及びTransAM(商標)Active Motif)免疫蛍光検査法、VEGF ELISA,LDH(CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ)、全DNA及びMTTによってそれぞれ測定した。本発明のガラスからの溶解生成物に対する、種々の細胞型の細胞応答を試験した(前記細胞型は、下記を含む:ヒト骨芽細胞様骨肉腫細胞(SaOS−2及びMG63)、ヒト微小血管内皮細胞系−1(HMEC−1)及びヒト単核細胞系(U937))。
【0106】
ヒト微小血管内皮細胞系−1(HMEC−1)は、1%ゼラチン(ウシ皮膚、Sigma)被覆75cmフラスコ中で、内皮基本培地、10%FBS(Sigma)、10ng/mL上皮増殖因子(EGF、Sigma)、1ug/mLヒドロコルチゾン(Sigma)、1%抗生物質−抗真菌剤及び5%L−グルタミン(Sigma)を補足したMCDB−131で培養した。SaOS−2及びU937細胞は、10%(v/v)FBS及びL−グルタミン(2mM)を含有するRPMI培地で培養した。ヒト骨様骨肉腫細胞系MG−63(ECCAC)は、10%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸及びL−グルタミン(2mM)を補足したDMEMで培養した。ガラス(BG)条件培地は、種々の組成のガラス粒子(<45μm直径)を、20mLの所望培地(DMEM、RPMI、MCDB−131)中で、37℃で4時間インキュベーションし、次に、遠心分離し、濾過して粒子を除去することによって形成した。
【0107】
図12aは、HIF−1α発現のCo−ガラス濃度依存性増加を示す。HIF−1α発現を、シトクロムc(Cyt.C)に標準化した。CoClを、HIF−1α発現の正の対照として使用した。図12bは、低酸素模倣ガラスが、濃度依存的に(低酸素模倣物のモル%)、HIF−1α発現を安定化し(P<0.05)、それによって、核へのそのトランスロケーション及び低酸素関連遺伝子発現を可能にすることを示している。低酸素模倣物を含有しない対照ガラス(0モル%Co)からの条件培地において、HIF−1α安定化の有意な増加が観測されなかった。
【0108】
図13は、種々の組成の低酸素模倣ガラスからの条件培地において、48時間又は7日間培養した骨芽細胞(SaOS−2)の細胞生存力(DNAの量)を示す。7日間培養した4モル%Co(実施例4)含有低酸素模倣物を除いて、種々の低酸素模倣ガラス組成物は、この培養期間にわたって、全てのガラス組成において、細胞生存力に影響を与えない。これは、コバルトの低酸素ガラスモル%濃度、及び放出プロフィールが、細胞毒性を最小限にするのに重要であることを示す。
【0109】
図14は、低酸素ガラス(実施例3)及び対照ガラス(0%Co、49.46モル%Si、1.07モル%P、23.08モル%CaO及び26.38モル%NaO)によって種々の濃度で条件付けした培地での細胞培養実験の結果を示す。たった24時間の培養後に、骨芽細胞(MG63)による、強力血管新生因子VEGFの発現の劇的なコバルト−生物活性ガラス濃度依存性増加が観測された(a)。並行実験は、低酸素生物活性ガラス特異的毒性がないことを示した(低酸素刺激Coイオンを含有しない生物活性ガラスとの比較)(b)。コバルト生物活性ガラス条件付け培地は、たった24時間後に、毒性を伴わずに、VEGF産生の濃度依存性6倍増加を誘導した(p<0.01)(図12)。
【0110】
図15は、増加するCoモル%の低酸素生物活性ガラス(ガラス実施例1〜4)で条件付けした培地において48時間培養後の単核細胞(U937)及び内皮細胞(HMEC−1)による、強力血管新生因子VEGF発現の劇的かつ濃度依存性の増加を示す。発現されたVEGFの量は、細胞型及び低酸素ガラス化学組成に特異的である。
【0111】
図16は、低酸素ガラス誘導単核細胞分化を示す。この例において、非付着性非分化U937に対するものとしての分化付着性単核細胞様細胞(U937)の数を、蛍光DAPI染色(a)及び代謝活性(b)によって測定した。対照ガラス(3g/20mLの0%Co2+対照ガラスを3時間インキュベートした)と比較して、低酸素ガラス(BG)条件培地(0.03g/20mLの組成実施例3を3時間インキュベートした)において、有意に増加したU937分化が生じた。しかし、低酸素ガラス制御単核細胞分化は、PMA(ホルボール−ミリステートアセテート)誘導分化より少なかった。単核細胞の漸増、及びそれらのマクロファージへの分化は、創傷治癒及び潜在的微生物感染との闘いの重要部分である。PMAは、細胞が分化できること示すための正の対照である。
【0112】
多孔質ガラス足場の製造
ゲルキャストフォーミング法を使用して、多孔質ガラス足場を、ガラス実施例27から製造した。次に、足場をMCDB−131に24時間浸漬し、次に、内皮細胞(20,000細胞/mL、HMEC−1細胞)を4日間接種した。足場のSEM画像は、4日間の細胞培養後に、足場に増殖している半集密内皮細胞層を示した。内皮細胞の充分に拡散した相互接続形態が観察され、これは内皮細胞が生存可能であり、足場が非細胞毒性であることを示している。エネルギー分散X線(EDX)分析は、低酸素模倣物(Co)が、4日間の細胞培養後にガラス網状構造になお存在することを示した。
【0113】
本明細書に記載した現在の好ましい実施形態に関する種々の変更及び改変が、当業者に明らかであることを認識すべきである。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく加え得るそのような変更及び改変は、本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜62%SiO
0.5〜15%P
合計含有率12〜45%のCaO及びSrO;
合計含有率6〜30%のNaO及びKO;及び
0.1〜10%低酸素模倣イオン源;
を含み、前記低酸素模倣イオンが、Co、Cu、Mn、Ni及びFeイオンから選択される1つ又はそれ以上のものである、ガラス。
【請求項2】
45〜62%SiO、0.5〜1.5%P、並びに合計含有率6〜28%のNaO及びKOを含み、そして/又は、MgO 0〜12%、ZnO 0〜10%、B 0〜15%、及びフッ素源(例えば、CaF)0〜10%を含む、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
非晶質ガラス網状構造を含み、前記低酸素模倣イオンが非晶質ガラス網状構造に組み込まれている、請求項1又は2に記載のガラス。
【請求項4】
前記低酸素刺激イオンがCo又はCuである、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項5】
前記低酸素刺激イオン源が0.5〜5モル%で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項6】
47〜50%SiO;0.5〜15%P;0〜2%B;合計モル%18〜25%のCaO及びSrO;合計モル%24〜27%のNaO及びKO;0〜2%ZnO;0〜2%MgO;及び0.1〜10%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項7】
骨又は硬質組織用途、例えば、骨又は硬質組織の修復又は再生を促進するために使用される、請求項6に記載のガラス。
【請求項8】
49〜50%SiO;0.5〜1.5%P(例えば0〜10%);合計モル%16〜18%のCaO及びSrO;合計モル%18〜20%のNaO及びKO;1〜3%ZnO;1〜3%MgO;及び0.1〜5%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項9】
歯周用途に使用される、請求項8に記載のガラス。
【請求項10】
46〜50%SiO;0.5〜15%P(例えば0〜10%);0〜2%B;合計モル%20〜29%のCaO及びSrO;合計モル%12〜14%のNaO及びKO;2〜4%ZnO;2〜4%MgO;0〜9%CaF;及び0.1〜5%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項11】
多孔質骨足場の形成に使用される、請求項10に記載のガラス。
【請求項12】
48〜50%SiO;0.5〜15%P(例えば0〜10%);合計モル%30〜41%のCaO及びSrO;合計モル%6〜8%のNaO及びKO;及び0.1〜10%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項13】
4〜6%ZnO及び4〜6%MgOをさらに含む、請求項12に記載のガラス。
【請求項14】
複合材料用の充填剤に使用される、請求項12又は13に記載のガラス。
【請求項15】
47〜62%SiO;0.5〜15%P;0〜2%B;合計モル%12〜17%のCaO及びSrO;合計モル%12〜27%のNaO及びKO;0〜6%ZnO;0〜3%MgO;及び0.1〜10%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項16】
軟質組織用途に使用される、請求項15に記載のガラス。
【請求項17】
47〜50%SiO;0.5〜15%P;0〜2%B;合計モル%18〜21%のCaO及びSrO;合計モル%24〜27%のNaO及びKO;0〜6%ZnO;及び0.1〜5%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項18】
脱毛症を治療するためのシャンプーに使用される、請求項17に記載のガラス。
【請求項19】
30〜50%SiO;0.5〜15%P;合計モル%22〜28%のCaO及びSrO;22〜28%のNaO;及び0.1〜5%低酸素刺激イオン源を含む、請求項1又は3から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項20】
ガラスが生物活性ガラスである、請求項1から14又は17から18のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項21】
ガラスが生物活性でない、請求項1から5、15又は16のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項22】
SiO、P及びBの合計モル%が、80%を超えない、請求項1から21のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項23】
SrO、CaO、MgO、NaO及びKOの合計モル%が、40〜60%である、請求項1から22のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項24】
0.5〜1.5%Pを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項25】
粒子形態において、3D構造物として、固形物、例えばディスク又はモノリスとして、分解性ポリマー足場に組み込まれる足場として使用される多孔質固形物として、提供される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項26】
請求項1から24のいずれか一項に記載のガラスを含む、3D多孔質足場、繊維、被覆埋め込み可能物質、骨代替物、組織再生構成物、創傷治癒デバイス、組織工学足場、縫合糸、プロテーゼインプラント、ポリマーマトリックス、フィブリンゲル、ヒドロゲル、プラスター、創傷被覆材、クリーム又はシャンプー。
【請求項27】
医薬に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項28】
組織の損傷の予防及び/又は治療に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項29】
血管新生又はリンパ管新生の誘導、抗微生物活性の促進、又は細胞生存力の維持に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項30】
軟質組織再生を促進することによる創傷修復に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項31】
創傷、火傷、潰瘍(糖尿病性、神経障害性、血管性)、褥瘡、術後皮膚創傷、アクネ、脱毛症、歯周病、虫歯、脱灰歯、歯の知覚過敏、脊椎形成術、骨折の予防及び/又は治療に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項32】
骨及び/又は硬質組織の再生及び修復の促進、感染症の治療、細胞保護特性の増強、細胞損傷の抑制及び修復細胞(成体幹細胞)の漸増、軟骨の修復、再建及び再生、指向幹細胞分化、発毛の促進及び/又は髪の太さの増加、例えば、脱毛症、加齢によるか又は化学療法の結果としての髪減少の治療に使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項33】
請求項1から24のいずれか一項に記載のガラスを含む組成物であって、歯科用複合材料、分解性ポリマー、ポリマー足場複合材料、天然ポリマー複合材料、ポリマー縫合糸、生物活性多孔質足場、創傷被覆材、ポリペプチドゲル、アルギネートビーズ、骨代替物、ヒドロゲル、フィブリン構成物、散剤、クリーム剤、シャンプー、生物活性ガラス充填アクリル、ガラス充填ポリアクチド又は他のポリマー、ガラス充填Bis GMA又は歯科用複合材料、ガラスグラニュール又は焼結ガラスである組成物。
【請求項34】
組織の損傷の予防及び/又は治療に使用される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス又は請求項33又は34に記載の組成物と、培養細胞、又は患者若しくはドナーから直接分離した細胞(ケラチノサイト、線維芽細胞、マクロファージ、骨芽細胞、軟骨細胞、内皮細胞、幹細胞及び神経細胞の1つ又はそれ以上を含むがそれらに限定されない)を含む組成物。
【請求項36】
成体幹細胞、胚性幹細胞、多能性細胞の分化を指向するか、インビトロ培養細胞の表現型を維持するか、又はインビボでの細胞表現系を維持するために使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス、又は請求項33又は34に記載の組成物。
【請求項37】
成体幹細胞及び胚性幹細胞の軟骨細胞型への分化を指向するために使用される、請求項36に記載のガラス。
【請求項38】
組織の損傷を予防及び/又は治療する方法であって、請求項1から24のいずれか一項に記載のガラス、又は請求項33から35のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項39】
骨折、歯周病、潰瘍、創傷治癒及び軟骨修復の治療に使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
任意の1つ又はそれ以上の実施例及び/又は図面に関して本明細書に実質的に記載されているガラス又は組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2011−524324(P2011−524324A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511080(P2011−511080)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001323
【国際公開番号】WO2009/144453
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(508047679)インペリアル イノベーションズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】