説明

低酸素誘導性の細胞損傷を測定する検査システム

本発明は、ヒトを含む哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷を査定するための検査システムに関し、該システムは、サンプル注入口と、分離装置とともに配された採取チャンバーとを備えた使い捨て装置を含み、採取チャンバーは少なくとも2つの、第1および第2の可視検出区画に接続され、これらの少なくとも1つは直接的な検出のための化学的手段とともに配され、前記第1の検出区画は、前記哺乳動物から得た体液のサンプル中のヘモグロビン(Hb)の量が予め決められたレベルを超えるかどうかを測定するために配され、および、前記第2の検出区画は、前記サンプル中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量レベルを求めるために配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(例えば、ヒトを含む哺乳動物の低酸素虚血によって引き起こされた)細胞損傷を査定する、血漿分離装置にサンプル採取部を備えた使い捨て装置を含む検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の低酸素症(酸素欠乏)の査定は、採取されたサンプルから得られた体液中の乳酸脱水素酵素(LDH)の合計を測定することにより行われる。付加的な予後マーカー、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸と組み合わせたLDHの総合計を測定することによって、部分的又は完全な酸素欠乏に関する哺乳動物の状態や、さらなる医療行為の決定の基礎となる情報を明らかにする。低酸素症の検出が望ましい医療状況の例は多数あり、幼児の周産期及び、新生児期のモニタリング、緊急治療室のトリアージ、外科手術、移植あるいは他の医療処置、あるいは外科的処置を含む。低酸素症による永久的な損傷を回避するために適切な手段が可能な限り速く取られるように、前記バイオマーカーの検出が素早く行なわれることが望ましいことが明らかである。
【0003】
低酸素症を測定する方法は、特許文献1に開示されており、そこでは、患者の血漿中の全LDHが、場合によってはK、Mg、Ca、AST、ALTおよび乳酸のいずれかと組み合わせて測定され、また、これらのうち1つ以上の増加値が患者における低酸素症を示す。さらに、前記マーカーの迅速な量的又は/及び質的測定用の装置と組み合わせて、血漿分離装置の使用も開示されている。特許文献1によると、予後マーカーレベルを測定する方法は、乾式の化学的手段を並べた視覚的な検出によるものである。
【0004】
LDHレベルを測定する様々な他の方法が採用可能で、それらの多くは、試薬と染料との化学反応によって引き起こされた視覚的な検出に基づく。特許文献2は、無色の2−(p−ヨードフェニル)−3−(p−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)を、明るい赤色のl−(p−ヨードフェニル)−5−(p−ニトロフェニル)−3−フェニルホルマザン(INT ホルマザン)への還元を生じさせる特定の酵素を測定する際に有用性を見出す。特許文献2に開示された水溶性の色のついた標準溶液は、最大吸収度500ナノメートルを有し、例えば漿液乳酸脱水素酵素(LDH)、クレアチンホスホキナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アデノシンホスフェート、グルコース、グルコース−6−ホスフェート、6−ホスホグルコン酸等の判定に使用するのに適している。
【0005】
バイオマーカーの今日の測定方法に関わる一般的問題は、それらの方法が所望のマーカーを測定する可能性を有する中央検査室へのアクセスを往々にして必要とするということであり、つまりそれは、いくつかの状況では検査結果を受け取る時間が長くなるということを意味している。多くの場所では、中央検査室はまだ利用可能ではなく、1室設置するのにも多額な費用投資が必要とされる。
【0006】
中央研究室に代わるものは、例えば試験紙や、フットプリント型(foot−print)機器あるいは携帯型の分光光度計のような測定装置を利用する小さな測定機器である。そのような設備は高価であり、一般的に、読み取りの結果の管理と解釈の両方をするオペレーターのある程度の能力も必要とされる。世界的視野で見ると、多くの国々は、適切な機能と高度な医療システムを欠いており、先端技術の解決法は、資源の不足により、またはこのような検査を行なうことができる医師と医療従事者の単なる不足により、適用できないことがある。
【0007】
先進国の医療システムにおいてさえ、特に時間が重要であり、医療状態の兆候だけでも患者の適切な処置を続けるのに十分である場合、長い準備期間および/または、複雑な検査装置が好ましくない場合がある。
【0008】
先の内容を考慮すると、様々な医学的状況で適用可能な緊急検査方法の必要があり、そこでは時間は重大で、患者を迅速に査定することが更なる医療処置にとってもっとも価値あるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国出願第US12/101,470
【特許文献2】米国特許第US4056485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
様々な医学的状況で低酸素誘導性の細胞損傷を評価する改良方法を提供することが本発明の主な目的であり、このような改良は、迅速かつ使いやすい検査、好ましくは、大掛かりでなく、好ましくは任意の道具と無関係で、かつ、哺乳動物の低酸素を示す選択されたバイオマーカーの上昇値をほとんど瞬間的に検出する方法を提供する臨床検査を含む。
【0011】
本発明のさらなる目的は以下の記載および特許請求の範囲から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、ヒトを含む哺乳動物の低酸素誘導性の細胞損傷を評価するための検査システムによって達成され、該システムは、サンプル注入口と、分離装置とともに配された採取チャンバーとを備えた使い捨ての装置を含み、該採取チャンバーは少なくとも2つの(第1および第2の)可視検出区画に接続され、これらの少なくとも1つは直接的な検出のための化学的手段とともに配され、前記第1の検出区画は、前記哺乳動物から得た体液のサンプル中のヘモグロビンの量が予め決められたレベルを超えるかどうかを測定するために配され、および、前記第2の検出区画は化学的手段によって前記サンプル中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量レベルを求めるために配される。
【0013】
本発明の目的は、哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷を評価する方法によっても達成され、前記方法は、血液細胞などの粒子を含む哺乳動物からの体液のサンプルを提供する工程と、分離装置によって体液の前記サンプルからの前記粒子をその後分離させる工程と、直接的な検出のための化学的手段に前記分離させた体液を接触させる工程と、および、体液中のヘモグロビンの量が予め決められた閾値を上回るか下回るかを測定する工程を含む。ヘモグロビンの量が前記閾値以下であれば、体液中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量レベルが評価され、体液中のLDHの値の評価から低酸素誘導性の細胞損傷のリスクおよび/または存在が評価される。
【0014】
本出願において、「LDH」は、アイソザイムの総量ではなく、乳酸脱水素酵素の総量を指す。
【0015】
体液サンプルは、全血サンプル、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、腹腔内液、または、唾液の形状でもかまわないが、以下に示された実施例は、主として血液サンプルの検査に関連する。当然のことながら、用語「血液サンプル」は先に言及されたように、体液の別のタイプと解釈されてもよい。
【0016】
1マイクロリッター用量の血液サンプルを提供し、前記発明を用いて選択された予後バイオマーカーに関してそのサンプルを視覚的に分析することによって、迅速で、使いやすく、解釈も容易な検査システムが提供され、該システムは、処置が外科的なものか、トリアージであるか、または、モニタリング状況であるかどうかにかかわらず、患者の処置に直接関係する医者が使用する小型で独立型の使い捨てユニットとして分配される。
【0017】
低酸素症(hypoxia)という用語は、虚血または不適切な酸化あるいは重い貧血によって引き起こされることもある部分的または完全な酸素欠乏を意味する。低酸素症は物理的な損傷につながることもあれば、つながらないこともあり、低酸素症に対する身体の反応は患者がどのような人であるのかに依存して異なる。例えば、幼児が出生時に、または、出生間近に低酸素にさらされると、身体は脳、心臓および副腎のほうを選んで「重要でない」器官から血流を再分配する。他方では、大人は損傷を受けずには同じレベルの低酸素に耐えられないこともある。細胞に損傷を与えるほどの重篤な低酸素症は、循環に入る酵素の漏出をもたらしてしまい、結局細胞は死滅して血流中の酵素濃度をさらに増加させる。低酸素誘導性の細胞損傷を評価するために使用される酵素および予後マーカーは、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、クレアチンキナーゼ(CK)、K、Mg、および、Caである。本出願では、低酸素という用語は、細胞の損傷を生じさせるほどの重篤な酸素欠乏を指す。
【0018】
本発明の1つの実施形態によると、哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷の評価は、まず、ヒトを含む哺乳動物から血液サンプルを提供することによって、前記血漿分離装置を介して血漿から赤血球を分離するための検査システムのサンプル注入口に血液サンプルを適用することによって行なわれる。次に、前記使い捨て装置内の負圧が、血漿分離装置を通って、さらに少なくとも第1と第2の検出区画へと血漿を移動させるために生じて、該区画で血漿は本明細書に開示の試薬に接触する。各々の検出区画は、検出されるマーカー(例えば、ヘモグロビン、LDH)に特有の試薬組成物が用いられる。検出区画に配置された血漿および試薬組成物(すなわち、化学的手段)中のマーカー間の化学反応によって、目に見える色の変化が起こり、比色分析が可能であることを意味する。例えば、Hbの場合、サンプル中のHbのレベルが予め決められたレベルを超えると色の変化が起こり、そうでなければ色の変化は起こらない。好ましくは、LDHの場合、マーカーのレベルが予め決められたレベル未満ならば、対応する検出区画ではいかなる色の変化も生じない。マーカーのレベルが予め決められたレベル以上であれば、検査される血漿中に存在するマーカーの量に比例した(必ずしもそうである必要はない)色の変化が生じる。各々の検出区画は、好ましくは目に見えるものであり、オペレーターまたは医療従事者が該区画で反応が行われているのかどうかをはっきりとわかり、結果的に、血漿中のHbとLDHのそれぞれの存在を視覚的に測定するということを意味する。サンプル中の予め決められたレベル以上のHbの存在は溶血を示し、赤血球が血清の150倍のLDHを含んでいるため、溶血がエラーの原因である。したがって、上記の予め決められたレベル以上のHbが存在する場合、検査を再度行う必要がある。溶血がまったく生じなかった場合、低酸素誘導性の細胞損傷の存在は、血漿中のLDHの視覚的な比色検出から評価される。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、予め決められたレベル以上のマーカーの存在による色の変化は、標準化された基準範囲またはカラーチャートと比較して解釈され、マーカーの量を定量的に読むために較正される。例えば、サンプル中のLDHの量は、色の強度の増大を示す縮尺の形態の標準化された基準範囲に従って示され、強度が低い色(例えば、薄紫)はLDHの低濃度に相当し、強度が高い色(例えば、濃紫)はLDHの高濃度に相当する。当該技術の現状に従って、マーカーと試薬組成物の間の反応後の色は、標準的な参考尺と比較され、それによって、サンプル中のマーカーのレベルが評価されてもよい。
【0020】
明らかに、異なる色を示す標準化された基準範囲を提供することは可能であり、例えば、赤色は低濃度のマーカーを示し、紫色は高濃度を示す。
【0021】
本発明の別の態様によれば、標準化された基準範囲は、限られた数の色のついた区域に分けられ、各区域はマーカーの特定の範囲に対応する色濃度を示す。このように、マーカーのレベルを評価するための段階的な参考尺が達成され、これはマーカーレベルについてのもっと詳細な情報が望ましい状況において有用であると判明することがある。
【0022】
サンプルに接触すると試薬組成物は徐々に色を変化させること、しかしながら、Hbの予め決められた閾値に対応する色の強度は、検査結果が正しく解釈されているということを保護する(safeguard)ために明確に明らかにされることによって、Hbのレベルを測定することも同様に本発明の範囲内である。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、溶血の評価を対象とした検出区画は、任意の化学的手段または試薬を用いない。溶血の評価は、その代りに、ろ過されたサンプル、好ましくは検出区画内に存在する血漿を単に視覚的に観察することによって達成され、前記血漿の色(または、色相)に基づいて溶血が生じたか否かを測定する。一般に、血漿が透明な場合、溶血はまったく生じていないが、血漿がピンクかまたは濃いピンクの場合、溶血が疑われ、検査が再度なされなければならない。溶血の評価を促進するために、検査システムには血漿の色との比較を対象にした基本色チャートが提供され、該システムは、対応する検出区画のすぐ近くに溶血を示すピンクの影を含む。当然のことながら、このような基本色チャートは使い捨て装置と一体的であってもよいが、使い捨て装置とともに送達される検査システムの独立部分としても等しく提供される。
【0024】
その最も簡単な形態では、本発明の検査システムは正または負の基準のみを含んでもよい。そのような実施形態によれば、予め決められたレベルは、各々のマーカーに設定され、各々の検出区画内の試薬組成物は、前記予め決められたレベルで変化(shift/change)するように配されることで、医療従事者は選択されたマーカーの量が予め決められたレベル以下なのか、該レベルと等しいのか/該レベル以上なのか簡単に分かるようになる。低酸素誘導性の細胞損傷のリスクを示すほど十分である時、そのような検査システムは有益である。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、検出区画は、乾式の化学的手段または湿式の化学的手段の形をした化学的手段とともに配される。本発明の1つの態様によれば、検出区画はそれぞれ、LDHとHbのような特定の予後マーカーのための化学的手段で配される。各々の検出区画はそのような1つのマーカーに反応するように配された試薬組成物で準備される。試薬組成物は、特定の検査システムの設計に依存して、乾式の化学的手段、または、湿式の化学的手段であってもよい。
【0026】
本発明の1つの態様によれば、LDHの検出のための試薬組成物は、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、1−(p−ヨードフェニル(jodofenyl))−5−(p−ニトロフェニル)−3−フェニルホルマザン(INT)、および、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)からなる群から好ましくは選択され、これらすべては比色定量の検査システムのための周知の物質である。好ましくは、試薬組成物は、フェナジンメトスルフェート(PMS)または1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルファート(methylphenazinium methylsulphate)(mPMS)だけでなく、乳酸およびNAD+の形状の媒介物も含む。1つの実施例によれば、LDHの検出のための試薬組成物は、N−メチル−D−グルカミンを含む緩衝剤中にテトラゾリウム化合物(NBT)を含む。好ましくは、検出区画内のpHは、最適な酵素反応が起こる条件を最適化するために、8−11の間、好ましくは8.5−10.5の間、さらに好ましくは9−10.5の間である。LDHのための試薬組成物は、実施例1乃至4でさらに例証される。
【0027】
本発明の1つの態様によって、Hbの検出のための試薬組成物は、好ましくはテトラメチルベンジジン(TMB)および3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)からなる群から選択されるベンジジン化合物の形状の試薬を含む。Hbのための試薬組成物は、好ましくは過酸化水素およびtert−ブチルヒドロペルオキシド(T−ヒドロ)からなる群から選択される過酸化物基質をさらに含む。Hbのための検出区画5Aの内部のpHは、好ましくは3−7であり、好ましくは4.5−5.5である。Hbのための試薬組成物は、実施例5と6でさらに例証される。
【0028】
本発明の1つの態様によれば、湿式の化学的手段は、湿式の試薬のための貯蔵配置内、例えば、反応ウェル内またはブリスターパック配置内の使い捨て装置内部に配置される。1つの態様によれば、ブリスターパック配置は、例えば、サンプルを使い捨て装置上に載せる前後に手動で破損させることによって、検査システムの使用開始時に、破裂するように設計されるか、または、破裂する。手動での破損は、例えば、ブリスターパックの圧縮および破損につながる位置で、使い捨て装置の表面に押し付けることでユーザーによって行なわれる。ブリスターパックの破裂によって、結果として、化学的手段が放出されて、試験されるサンプルに接触可能となる。この態様のおかげで、試薬の化学成分とサンプル中の可能なマーカーとの間の反応が加速される。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、使い捨て装置は、カード(card)上に配された2以上の検出区画を含み、好ましくは、前記区画の各々1つは、試薬組成物の形をした化学的手段とともに配される。好ましくは、2以上の検出区画はそれぞれ以下の予後マーカーからなる群の1つのメンバーの直接的な視覚的検出のための化学的手段を含む:Hb、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、クレアチンキナーゼ(CK)、K、Mg、および、Ca。好ましくは、各々の装置は、HbとLDHをそれぞれ検出するための2つの検出区画と、随意にAST、ALT、乳酸、CK、K、Mg、および、Caの1以上の検出のための1以上の検出区画を含む。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、検査システムは、血液サンプルからの血漿が前記分離装置を通って少なくとも2つの検出区画に入るよう促すために、前記使い捨て装置内部で負圧を発生させる手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の検査システムおよび方法は、添付図面に関連して、以下に、より詳細に説明される。以下の説明は好ましい形式だけのものとして見なされるべきで、限定的な意味において決定的なものではない。
【図1A】本発明の1例にしたがって検査システムの概略的な平面図を表わす。
【図1B】図1Aにしたがって検査システムの断面側面図を表わす。
【図1C】サブ圧力生成装置を含む検査システムの概略的な平面図を表わす。
【図2A】本発明の別の1例にしたがった本検査システムを表わす。
【図2B】本発明の別の1例にしたがった本検査システムを表わす。
【図3】本発明の更に別の1例にしたがった本検査システムを表わす。
【図4A】本発明の1つの実施形態にしたがった別個の毛管状のサンプル採取装置(capillary sample collector)を有する検査システムの斜視図を表わす。また、
【図4B】一体型の毛管状のサンプル採取装置からなる検査システムの斜視図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0032】
下記では、詳細な記載の参照が、本発明による検査システム(1)の様々な実施形態を例証する図に対してなされる。しかしながら、本発明は、哺乳動物内で低酸素誘導性の細胞損傷を査定する方法に関連し、検査システム(1)に関連して開示される特徴の多くは、対応する方法にも適用可能でもあると認識されている。図1A−Bにおいて、使い捨て装置(2)を含み、後により詳細に記載されるように、好ましくは、多くの異なる検出区画(5A−C)を共に配された本発明の1つの実施形態にしたがった検査システム(1)が示されている。図1Aには、哺乳動物から採取された体液(9)(例えば全血)のサンプルを受け取るためのサンプル注入口(4)を備えたサンプル採取部を有するカートリッジ装置(2)の形式で、平坦な本体を含む本検査システム(1)の平面図が概略的に示されている。図1Bで概略的に表わされるように、使い捨てカートリッジ装置(2)には、哺乳動物から採取されている体液(9)のサンプルを供給する毛管状のサンプル採取装置(7)に適合するように調整された収容チャンバー(6)が備えられている。収容チャンバー(6)について、その底部には、既存の方法で、言わば、その体液サンプルを更に分離装置(3)への移送を更に保護するインターフェースがあり、その分離装置はフィルター(31)及び採取チャンバー(32)を含む。図1A中のフィルター(31)は、円形であり、3mmから500mmの面積であり、好ましくは150mm未満の面積を有する。フィルター(31)の適切な面積は、求められるサンプル量に左右され、したがってフィルター面積(31)は調節することができると認識されている。採取チャンバー(32)は、好ましくはマイクロ流体チャネル(33)を介して、少なくとも2つの、第1は5Aで第2は5Bの、目に見える検出区画に接続され、その2つのうち少なくとも1つ(できれば両方)が、少なくとも予後バイオマーカーLDHの、直接的検出、好ましくは直接的な目に見える検出のための化学的手段とともに配される。サンプル(9’)においてヘモグロビン(Hb)のレベル又は量を測定するために配置された検出区画(5A)には、化学的手段が提供されるかもしれないが提供されないかもしれない。溶血は、対応する区画に入る血漿の色相を観察することにより、査定されることがある。その場合、化学的手段は必要ではなくなる。しかしながら、化学的手段でHbを検出することも可能である。血漿採取チャンバー(32)と検出区画(5A−C)間において、異なる検出区画(5A−C)のそれぞれに血漿(9’)を向かわせるために、マイクロ流体チャネル(33)にはサンプルスプリッタ(34)が設置されることが可能である。
【0033】
1つの例によると、第1の検出区画(5A)は体液のサンプル中のヘモグロビン(Hb)のレベルが所定のレベル(閾値)を超えるかどうか測定するために設置され、第2の検出区画(5B)は前記サンプル中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量のレベルを評価するよう配される。図1Aの点線で表わされるように、使い捨て装置(2)は、採取チャンバー(32)に接続された2つより多い検出区画(5A−C)を含み、区画(5A−C)は、もし存在するのであれば、予後マーカーと反応するであろう試薬組成物の形式で化学的手段を含むため、その結果色の変化が起こり、前記色の変化は、人間の目でも容易に観察することができるように可視スペクトル範囲内である。可視スペクトルとは、通常は380nm−750nmの範囲内にあり、人間の目で検出することができる電磁スペクトル部分のことを指す。
【0034】
本発明によると検査システム(1)は、Hb、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、CK、K、MgおよびCaから成る群から選ばれたマーカーの直接的な目に見える検出を可能にする。確かに、LDHとHbだけを検査する装置(2)でも、いくつかの用途では十分なことがある。しかしながら、分光測光法の検出方法による読み取り(つまり色の変化)の結果を検出することもまた可能である。
【0035】
血液サンプルを補完するもの以外の、あるいは血液サンプルを補完するものとしての、例えば尿、脳脊髄液(CSF)、または唾液等の体液のサンプルが、本発明にしたがった検査システムを用いて容易に分析できる。前記分離装置(3)はサンプルを洗浄し、分析を妨害する虞があるサンプルからの不要な粒子状物質あるいは沈澱物を分離する。
【0036】
図1A−Bで解説されるように、使い捨て装置(2)は、長方形のカートリッジの形状をしているが、装置の形は本発明にとって必須のものではなく、当業者は、既知の出願の適切な形状または設計を容易に選択することができる。装置(2)は更に、射出成形またはラミネート加工のような方法を使用して、シクロ−オレフィン(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリメタクリル酸メチル(PMMA)といった透明プラスチックのような材料から構築することができる。しかしながら、装置(2)は、オペレーターの手に快適に握られるくらい十分に携帯性があって且つ小さくなる寸法に合わせることが好ましい。前記使い捨て装置(2)は携帯でき、3−15cm、好ましくは5−10cm間の長さlと、0.5−5cm、好ましくは2−4cm間の幅Wと、0.1−3cm、好ましくは0.2−2.5cm間の厚さdを有する。前記使い捨て装置(2)は好ましくは5−50gの間の重量を有する。
【0037】
検査システム(1)の仕様についてこれより記載する。全血サンプルのような哺乳動物からの体液のサンプルは、必須ではないが好ましくは、例えば約50μlにまで及ぶ全血で満たされる毛管装置(7)を使用することにより、最初に提供される。連続的な段階において、毛管装置(7)は、血液サンプル(9)を使い捨て装置(2)に接触させるために、血漿分離装置(3)のフィルター(31)上に血液サンプル(9)を配置して、血液サンプル(9)を使い捨て装置(2)に接触させる(interface)。当業者は、毛管状のサンプル採取装置(7)あるいは他のタイプのサンプル採取装置を使用して、カートリッジ(2)において液体サンプル(9)を適用する多くの方法が可能であると理解している。例えば、サンプル(9)は、サンプル容量をその上に放出するピペット形状のサンプル採取装置によって、直接フィルター(31)上に適用されることができる。したがって、カートリッジ(2)は、フィルタ(31)がカートリッジ(2)の上部表面上に配され、露出されるように設計され、その結果、サンプル量(9)が直接その上に放出されることができる。負圧はサブ圧力発生装置(subpressure generating device)(14)(図1C参照)により発生させられる。それによって血液サンプル(9)はフィルタ(31)から取り出され、その後、選択された粒子状物質(特に赤血球)はろ過される。サンプルの血清(血漿)はフィルタ(31)を通り抜けて、採取チャンバー(32)内に集められ、更にマイクロ流体チャネル(33)を通って進み、試薬が沈澱する場合には異なる検出区画(5A−C)に入る。血清内に存在する予後バイオマーカーは、それぞれの区画内に色の変化を引き起こす沈澱した試薬に反応し、サンプルが採取された哺乳動物(例えばヒト)内の低酸素誘導性の細胞損傷を査定するユーザーにより検出可能である。
【0038】
従って、本発明の方法は、次の工程を含む:
− 血球のような粒子状物質を含む、哺乳動物からの体液のサンプルを提供する工程、
− 分離装置を用いて前記体液のサンプルから前記粒子状物質を分離する工程、
− 直接的検出のための化学的手段に前記分離した体液を接触させる工程、
− 体液中のHbの量が所定の閾値より上であるか下であるかを測定する工程、及び、体液中のHbの量が前記所定の閾値未満であれば、
− 体液中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量のレベルを評価し、体液中のLDHのレベルの評価から低酸素誘導性の細胞損傷のリスク及び/または存在を査定する工程。
【0039】
本発明にしたがった方法は、(例えば、フィルタ(31)と検出区画(5A−C)を有する使い捨て装置(2)を含む)本発明にしたがった検査システム(1)によって行なわれることがあるが、その方法を行なう他のやり方も考えられると認識されている。例えば、医師が反応ウェル内にろ過された液状サンプル(9)を分布させ、引き続いて、例えば一回量の使い捨て容器で送達される試薬組成物を加えることが予見される。
【0040】
図1Cにおいて、体液のサンプルからの血漿が、前記分離装置(3)を通って少なくとも2つの検出区画(5A−B)の中へと促すために前記採取チャンバー(32)の内部での負圧を生じさせる手段(14)が供給された検査システム(1)の1つの典型的な実施形態が例証されている。本発明の1つの態様によると、前記手段(14)が手動で操縦可能で、採取チャンバー(32)及びマイクロ流体チャネル(33)(例えば密封可能な空気孔(142)からなる圧縮可能なベローズポンプ(14))内の負圧を発生させるように配されている。ここに示された実施形態によると、サブ圧力生成装置(14)は、カートリッジ(2)に統合され、マイクロ流体チャネル(141A)、(141B)を経由して検出区画(5A−C)に接続される。カートリッジ装置(2)の内部の負圧の発生は次の方法で達成される。オペレーターは、好ましくはカートリッジ(2)の表面上に示される、サブ圧力生成装置(14)の場所に対応する位置で、カートリッジ装置(2)の表面を押す。空気は、これによってカートリッジ(2)のマイクロ流体チャネル(33)と(141A)、(141B)、(81)から密封可能な空気孔(142)を通って、出ることになる。サブ圧力生成装置(14)の放出の際、例えば、制水弁を含むことによって、ユーザーが手動によってその孔(142)を密閉することによって、空気孔(142)が密閉されるのが好ましい。このことはサブ圧力生成装置(14)の放出が、(例えばその元の形を再び取り戻すベローズポンプによって)カートリッジ装置(2)内のサブ圧力を生成することにつながり、マイクロ流体チャネル(33)、(141A)、(141B)、(81)の内部にある流体は、検査システム(1)を通って移動するよう促されることになる。
【0041】
使い捨て装置には、対応する検出区画(5A−C)が観察される光学表示領域(10A−C)が設けられ、起こりうる色の変化がユーザーまたは医療従事者によって容易に観察されるということを意味する。Hbについては、Hbのレベルが所定のレベル、閾値として設定されている前記レベルを超過する場合にのみ、色の変化が生じることが好ましい。この場合、閾値が溶血を示している。色の変化がHbについて区画(5A)内で観察される場合は、検査は無効となり、新しい検査をする必要がある。
【0042】
Hb以外の検出区画に関して、色の変化は、マーカーの存在を示す。試薬組成物への順応及び、起こりうる色の変化の解釈のために標準化された一覧表の設計については様々な解決策が可能である。1つの例によれば、マーカーが所定の濃度以上に存在する場合にのみ、当該試薬組成物は、色を変化するよう設定されている。別の選択肢は、当該試薬組成物は濃度を上げるために徐々に色濃度を変化させるよう設定されることであり、その場合には、色彩強度は体液中にあるマーカーの量に比例する。明らかに、マーカーレベルが予め設定されたリミット未満である場合、検出区画が無色であることはありえ、そのリミット以上ではその色はマーカーの濃度によっては、多かれ少なかれ濃く見えるようになる。
【0043】
その色の変化の強度は、標準化された参考尺または間隔に例えられ、それにより対応するマーカーのレベルが決定されて、低酸素症の危険性が査定される。先に本明細書中に記載されたように、その標準化された参考尺は、その試薬組成物の調節にあわせて設計され、つまりそれが多くの不連続の色のついた区画、好ましくは少なくとも2つの区画の形状であり、既存の色のついた区分を備えた検出区画における色の変化を比較することにより、マーカーレベルは評価されることを意味する。標準化された参考尺は、図面2と3に関連してより詳細に記載される。
【0044】
異なる検出区画に沈殿させた化学的手段は、特有の検査システムの設計によっては、乾式化学的手段、あるいは湿式化学的手段であるかもしれない。
【0045】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、湿式化学試薬の場合には、各検出区画の試薬組成物は、各検出区画(5A)、(5B)につながったカートリッジ(2)内にある保護用ブリスターパッケージ内に配される。本発明にしたがったシステムを用いて検査を始めることに関しては、当該ブリスターパッケージは壊れるように配され、前記試薬組成物の形状で内容物が放出される。こうして導入されたサンプル(9’)は、当該サンプルが対応するマーカーを含むことを条件として、湿式試薬組成物と混じって反応が始まる。前記ブリスターパッケージの破損は、例えば使い捨て装置(2)の表面に対して圧迫するユーザーによって、手動で遂行されることもあり、その結果カートリッジ(2)の側面は一体化したブリスターを破損させるのに十分なほど押圧される。
【0046】
さらに、乾式化学的手段の場合には、選択された試薬は、検出区画の内部で乾かされる。流体サンプル(9’)がそれぞれの区画へ入る時、反応が開始できるように、この乾かされた試薬は溶解し始める。反応成分の再水和を促進するために、乾式化学的手段に補助試薬を加えることが好ましい。
【0047】
先に述べられたように、検出区画(5A−C)およびマーカー内の試薬組成物間の化学的相互作用は、低酸素誘導性の細胞損傷の危険性をオペレーターに警告する色の変化を引き起こす。検査システム(1)のロバスト性を保護するために、検出区画(5A−C)の内部で起こる反応が所定時間(間隔)に限定され、その結果すべての検査ユニットが比較可能となることが好ましい。このため、使い捨て装置(2)は、所定の時間にバイオマーカーと試薬組成物間の反応を中断するための反応停止物質(reaction stopper)を備えた区画(8)を含み、その後、検査のユーザーは負の流体を生じさせた。このことは、血液サンプルが初めにフィルター(31)を引き戻された時点から、反応停止物質が試薬とバイオマーカー間の反応を中断する時までの時間間隔が、常に同じであることを意味する。
【0048】
当業者にとって明らかであるように、反応停止物質の代わりにタイマーをセットすることが可能であり、特定の所定の時間の後、どの色の変化が起こったか判定することは可能である。
【0049】
反応停止物質(8)の概要の一例は図1Aに見られ、この図では、使い捨て装置(2)が、酵素活性を遮断するのに適した物質または化合物、例えばHCl、クエン酸、あるいはNaOHのような基本的な溶液を含有する区画(8)を含む。さらに、反応停止物質として様々な界面活性剤あるいは添加剤を使用することが可能であり、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、反応停止物質としてよく作用することが証明されている。
【0050】
本発明の1つの実施形態によれば、負圧が生成される場合、反応停止物質は、マイクロ流体チャネル(81)を通って、反応を止めるようと意図する検出区画(5B)へ向って流れ始める。マイクロ流体チャネル(81)の長さは、反応停止物質が区画(5B)に達するまでに要する時間を測定する。図1Aにおいてマイクロ流体チャネル(81)は反応が止まるまでの時間を稼ぐために曲がりくねった管である、しかしながら、チャネル(81)の長さを調節する多くの方法がその一方で可能である。明らかに、カートリッジ(2)を配することは同様に可能であり、試薬組成物と混合されたサンプル(9’)は 特定の反応時間の後(例えばマイクロ流体チャネル(81)を経由して)、固定された反応停止物質(8)を備えた区画へ移動する。このような実施形態では、固定された反応停止物質(8)は、乾式または湿式反応停止物質の形状である。
【0051】
概略的に示された図1Bは、血漿分離装置(3)に設置されるよう配された全血サンプル(9)を含む毛管装置(7)を受けとめるよう適合されたチャンバー(6)に接続されたサンプル注入口の形状の、サンプル注入口(4)を含む使い捨て装置(2)の透明な側面図を示す。サンプル注入口(4)は、毛管状のサンプル採取装置(7)をチャンバー(6)へ導くため、漏斗のような挿入穴によって囲まれていることが好ましい。ここでは、検出区画(5A−B)の内部の進行中の反応を観察すること可能にする、前記光学表示領域(10A)が、更に見られる。
【0052】
図2A−B内で、本発明による使い捨て装置(2)の1例が表わされている。図2Aは上平面から見たもので、図2Bは図2A内の(11B)にしたがった断面図である。本明細書中に、装置(2)は、約50μlにもなる全血量で充填される毛管装置(7)により、検査血液(9)が供給されている。患者および(または)装置(2)の特殊な設計(例えば検出区画の数、チャネルのサイズ等)次第で、様々な血液サンプルの量が想定され、1μlほどの少量、あるいは100μlもの多量、好ましくは25−75μlの間の量を、使用することが可能である。
【0053】
サンプルの挿入を促進するために、サンプル注入口(4)周辺の領域は、毛管装置(7)をチャンバー(6)へ導くための穴があけられるのが望ましい。図2Aにおいて、毛管装置(7)は、血液サンプル(9)をカートリッジ(2)に接触させるために、すでにカートリッジ(2)の区画(6)に挿入されており、血液サンプル(9)を血漿分離装置(3)のフィルター(31)上に配する。毛管装置(7)の代わりに、カートリッジ(2)上の印のついた領域上に1滴のサンプルを放出するピペットを用いることで、サンプル(9)を供給することが考えられる。負圧は手動で発生され、血漿は、フィルター(31)を通って血漿採取チャンバー(32)へと促され、そこからマイクロ流体チャネル(33)を通って異なる検出区画(5A−C)へ分配される。図2Bに見られるように、検査システムは光学表示領域(10B)を含み、各検出区画(5B)上の使い捨て装置(2)の少なくとも(10A−C)の部分は透明であることから、それは各検出区画(5B)は目に見えて反応中にも観察される。
【0054】
1つの実施形態によれば、検出区画(5A−C)はそれぞれ、次に述べる予後マーカーのうちの1つに反応するよう配された試薬組成物を用いて準備される:Hb、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、CK、K、MgおよびCa。各装置(2)は、HbとLDHを個々に検出するための、少なくとも2つの検出区画5(A−B)を含むことが好ましく、また随意にはAST、ALT、乳酸、CK、K、MgおよびCaの1つ以上の検出のための1つ以上の検出区画を含む。
【0055】
所定の時間の間隔後、その反応は、反応停止物質により中断され、検査システム(1)のユーザーによってどんな色の変化も視覚的に検出される。2Aにおける血液サンプル(9)の適用から(2C)における検査結果の測定までの合計時間は5分以下であるが、望ましいのは2分以内である。
【0056】
図2Aは、ありえる反応が検査区画(5A−C)内で起こった後の、本検査システムの平面図を表す。予後マーカーのレベルを決定するために、各検出区画(5A−C)における色の変化(もしあるなら)は、検査システムが供に提供されているのが好ましいとされる標準基準範囲と比較される。本発明の1つの実施形態によれば、各検出区画(5A−C)の隣の領域は、マーカーレベルの査定を容易に行う際に用いられる多くの基本色(11)が設けられている。ここでは、検出区画(5A)はHbの存在を測定する際に用いる、(5B−C)は他の予後のどのマーカー(LDH、AST、ALT、乳酸、CK、K、MgあるいはCa)のレベルでも決定または推定するよう配されている。
【0057】
例えば図2Aでは、Hbのための区画(5A)で色の変化が全く起こらなかった状況が例証され、これはその検査が有効であることを示す。反応が区画(5B)に生じ、その色の変化は基本色(11)のうちの1つに相当するが、一方では、顕著な反応は区画(5C)には生じなかった。検査システム(1)のユーザーは、色の変化が特定の色彩強度をもたらした場合、反応するように命じられる。そのような指示は、例えば低酸素症の危険性を示す基準範囲の部分を表す兆候の形状で、基準範囲へ関連して印を付けられることがある。
【0058】
2Aにおいて、区画(5B−C)用の標準基準(standard reference)(11)は3つの色のついた区分を有するが、当業者は、測定値の解明を深めるために、ここに見られるような不連続の色のついた区分の代わりに、連続的な色のついた区間を有することも可能であり、同様に、多くの色のついた区分が可能であることを当業者もわかるだろう。
【0059】
可能性のある基準範囲(11)の更に別の例は図3に見られ、標準基準(11)は2つの色のついた区分しか有さず、それは測定値がユーザーに肯定的または否定的な回答のみを提供することを意味する。このような標準基準の設計は、上回ると診療行為をとることが常に要求される濃縮限界を予め設定することが可能な医学的状況において、あるいは単純で速い測定が定量的で正確なマーカーレベルの測定よりも更に重要な状況において、適切である。
【0060】
4A−Bにおいて、本発明の他の例にしたがった検査システムが提供され、カートリッジの設計を有する代わりに、使い捨て装置(2)が2つの短い側部(21)および(21’)を備えた縦長に伸長した本体を有する単にスティック(stick)として形成されている。当該例によると、サンプル注入口(4)を備えたサンプル注入口は使い捨て装置(2)の側部(21)に配される。(図4A−Bに関連して「検査スティック(2)」とも呼ばれる)
【0061】
検査スティック(2)の検査設計が、ここに解説される。概略的に図4に示される第1の検査スティック(2)は、図1−2中に提示されたものに類似したチャンバー(6)を備えた収容部を有する。検査スティック(2)のチャンバー(6)を備えた特有の利点は、それが毛管装置(7)全体を受け入れるよう配され、その結果、一旦チャンバー(6)に挿入されれば毛管装置(7)のどの部分もスティック(2)の外側に伸長することはなくなる、ということである。使用済で血液を含む毛管装置が放置されることも、不注意でこじあげられることもないため、したがって使用された検査スティック(2)は、雑菌混入の観点からも望ましい1つの実体として処分される。
【0062】
第2の検査スティック(2)は、図4Bの中で概略的に解説されており、1つの側部(21)から突出すると共にスティック(2)内の血漿分離装置(3)に直接つながっている統合された毛管状の部材(7)を含む。したがって、血液サンプル(9)は、個別のユニットとして毛管装置(7)を扱う必要なく、このように直接装置(2)に採取される。
【0063】
そのおかげで、本発明の当該方法と実施形態は、広く様々な状況下での低酸素症の測定に効果がある。例えば、本発明の実施形態は 新生児からの血液を分析することにより、例えば、臍帯から提供されるサンプルの分析によって、新生児における低酸素誘導性の細胞障害の査定を含むが、それだけに限定されない。本発明の方法および実施形態はさらに、胃腸管(例えば結腸吻合)、特定の器官(例えば肝臓や大動脈)、腰椎のドレーン管からの脳脊髄液および移植される器官内の低酸素症の測定を可能にする。さらに、本発明の実施形態は、重病だと知られていたまたはその可能性のある患者(例えば、外傷、敗血症、出血あるいは広範囲の手術に関連している多重器官機能不全に潜在的に苦しんでいる哺乳動物)における、1つ以上の臓器系からの細胞の漏出を査定および(または)監視、出産前期の窒息の後の脳障害(低酸素症の虚血性脳障害、HIE)の予測、および哺乳動物の末梢血循環の監視を可能にする。
【0064】
異なる予後マーカーおよび予後マーカーの組合せは、本願に組み込まれている米国特許公開第US2008/0213744内でより詳細に述べられているように、異なる医学的状況において低酸素症を査定するのに役立つことが証明された。LDHはすべての体内組織の中にあり、一般的な細胞損傷の完全なマーカーである。しかしながら、他のマーカーと組み合わせることによって、臨床像はさらに明らかになりうる。下記には、特殊な医学的状況での興味深いとされるマーカーとの組み合わせのいくつかの例が提供されている。
− ALT(肝臓特有)のような臓器特有のマーカーとの組み合わせのLDH。
− 一般に全ての有機体あるいは特有の組織内で起きる低酸素症の事象のより急性のマーカーである乳酸および(または)Mgと組み合わせたLDH。
− 以前に生じた低酸素症の事象の潜在的で一時的なマーカーにする、双方共異なる血漿中半減期を有するAST、およびALTとLDHの組合せ。法医学の態様において、新生児が窒息により損傷を受けると遡及的研究が行われる。
【0065】
以下に、低酸素が重大な懸念であるいくつかの病状が提示されており、故に本発明による検査システムは有益である。
【0066】
出産中あるいはその直前、低酸素症の判定は、周産期の窒息、および(または)出生前の窒息(例えばHIE)後の脳損傷の予測に効果がある。予測された脳損傷の状況で、新生児は、低温症治療を施され、それによって低酸素症の虚血性脳障害(HIE)の進行が回避される。これによって、HIEを発病する危険がある幼児を識別する迅速で容易な方法、特に医療システムが現在これらの幼児を識別するのが十分発展していない国々で、脳損傷から無数の小児を救うことができるような方法が、提供される。
【0067】
トリアージ中に、目的は順番待ちの患者を選別し、その結果、最も緊急のケースを最初に処置することである。示されたマーカーの1つ以上の測定による低酸素症の査定は待合室の患者を選別することができる一つの方法である。
【0068】
1つの実施形態では、第1の基準血液サンプルは医療に先立って所望の部位から集められ、本発明による検査システムを使用して、予後マーカーのために分析される。医療手技の完成に先立って、第2の血液サンプルは興味のあるポイントから得ることができ、第1のサンプルと同じ方法で分析される。第1と第2サンプル中の予後マーカーの断定は、低酸素誘導性の細胞損傷の存在を査定するために、比較することができる。様々な実施形態において、多数の予後マーカーが分析される。
【0069】
このような実施形態は、基準サンプルと最終の血液サンプル双方の血漿中の少なくともHbおよびLDHと、基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT、CKおよび乳酸からなる群から随意に選ばれた1つ以上の追加の予後マーカーの量を測定することを含む。
従って、第1と第2のサンプル中の個々の予後マーカーのそれぞれの量は、吻合のための適切な部位を識別するために比較されうる。1つの実施形態では、医療手技は、胃腸管の吻合術を含む。
【0070】
別の態様では、本発明の実施形態は、移植療法後の患者において疾病率および死亡率を低下させることができる。移植後の患者における疾病率及び死亡率に影響を与える主要因の1つは、肝臓移植中の肝臓の移植片といった移植片の貯蔵損傷と関係がある。例えば、潅水の中へのLDH、ASTおよびALTの漏出は、肝細胞の細胞膜保全の損失の兆候である。
【0071】
1つのそのような実施形態では、哺乳動物へ移植される器官内で低酸素誘導性の細胞損傷の存在を測定するための方法は、上に記載されるように、移植手術前の予後マーカーのために、血液サンプルの提供としてそのサンプルの分析する工程を含む。1つの実施形態では、サンプルは、Hbの存在、LDHの総量および、基本的にK、Mg、Ca、AST、ALT、CKおよび乳酸からなる群から選ばれたサンプル中の少なくとも1つの追加の予後マーカーを測定するために分析される。1つの好ましい実施形態では、移植用の器官は肝臓を含む。
【0072】
また別の態様では、本発明の実施形態は、医療または外科手術前後に哺乳動物の四肢の状態を判定するために使用されうる。例えば、外傷、骨折および血管閉塞は、四肢周辺および筋肉(隔壁腔症候群)への循環に影響しかねない。また米国特許公開第US2008/0213744の中で提示されるように、虚血の筋肉中の酸素と乳酸ならびにLDHのレベル間の有意な相互関係が存在し、乳酸は、閉塞性末梢動脈疾患の患者の大腿部の血液中で制御値と比較して上昇している。本発明の実施形態による装置は、特定の四肢の虚血の診断するために、またほとんどの処置の影響を判定するために、酵素と乳酸のレベルを使用することを可能にする。
【0073】
加えて、本発明の実施形態は、所望する四肢からのサンプルを分析することおよび、血漿中のLDHの総量を測定することによる、低酸素虚血を測定するための方法を含む。また、当該装置を用いた手術中には、四肢の切断中に生存能力のある細胞組織のボーダーが、査定される。LDHの測定と同時に、追加の予後マーカーの量は、本装置を使用して計ることができる。このことは、医療的または外科的処置前後の哺乳動物の四肢への血液循環の査定を可能にする。
【0074】
本発明の実施形態は、装置と方法、および臨床的に低酸素誘導性の細胞損傷を査定する方法を含み、その結果は多くとも数分で得ることが可能である。そのような実施形態は、HbとLDHの測定と分析のためにサンプルを入手することを含む。好ましい実施形態においては、当該方法は、基本的にAST、ALTおよび乳酸からなる群から選ばれた血漿中の少なくとも1つの追加の予後マーカーの量を測定する工程を含む。
【0075】
LDHとHbのための試薬組成物はそれぞれ、次の限定されない例1−6により更に記載されており、そこでは1−4はLDHの検出に関連し、5−6はHbの検出に関連する。
【0076】
実施例1
テトラゾリウム塩、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2−p−ヨードフェニル−3−p−ニトロフェニル−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)および3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)は、ジメチルスルホキシドに別々に溶かして10mMの原液を生成し、メディエーターフェナジンメトスルフェート(PMS)およびl−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(mPMS)を別々に水に溶かして、1mMの原液を生成する。NADの原液はバッファー中で調製された。乳酸ナトリウムは水に溶かされ、pHは1Mのトリスで約9に調製された。
【0077】
同僚からの対照血清(それぞれ2.2および4.7μkatal/l)および血液サンプルが使用された。血液サンプルは、分離装置(Vacuette、Greiner)およびカリウム−EDTAチューブ(Vacuette、Greiner)を備えたLi−ヘパリンチューブに集められた。当該チューブは1500xgで15分間遠心分離機にかけられ、血漿はエッペンドルフチューブへ移された。
【0078】
酵素分析は、目視検査に加えて、従来の分光光度計を用いて、島津製作所UV−VIS1610分光光度計を用いて、プラスチック1mlのキュベットを用いて行なわれた。反応混合物は表1にしたがって調製され、反応が50μlのNADの追加によって開始された。
【0079】
【表1】

【0080】
結果
反応後は、NBTは紺色、INTは紫、MTSは赤褐色に見え、特定の反応時間後に色の変化が起こった。
【0081】
実施例2
分析は、Emax Molecular Devicesの、ELISAプレートリーダを使用して、目視検査に加えて96ウェルプレートを用いて行なわれた。96ウェルプレートの底部は光学面として測定に使用され、各々のウェルは400μlまで液体を含有できる。吸収度はウェル内の溶液の深さにより変化する。この実験の中で使用されるプレートはNUNC社(結合能力が高い)のものである。
【0082】
テトラゾリウム塩、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2−p−ヨードフェニル−3−p−ニトロフェニル−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)および3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)は、ジメチルスルホキシドに別々に溶かして、10mMの原液を生成する。
【0083】
メディエーターフェナジンメトスルフェート(PMS)およびl−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(mPMS)を、別々に水に溶かして1mMの原液を生成する。NADとNADHの原液はバッファーの中で調製された。乳酸ナトリウムは水に溶かされ、pHは1Mのトリスで約9に調節された。
【0084】
同僚からの対照血清(それぞれ2.2および4.7μkatal/l)および血液サンプルが使用された。血液サンプルは、分離装置(Vacuette、Greiner)およびカリウム−EDTAチューブ(Vacuette、Greiner)を備えたLi−ヘパリンチューブに集められた。そのチューブは1500xgで15分間遠心分離機にかけられ、血漿はEppendorfチューブへ移された。
【0085】
酵素活性の測定は、100および50μlの全容量でそれぞれ行われた。
【0086】
【表2】

【0087】
当該サンプルはまた、血液サンプルを使用する際に20μl未満の血漿に対応するよう希釈されて検査された。
【0088】
【表3】

【0089】
当該サンプルはまた、血液サンプルを使用する際に10μl未満の血漿に対応するよう希釈されて検査された。
反応混合物:同量のテトラゾリウム塩原液、メディエーター原液、乳酸およびNAD+原液が、サンプルに加える前に混合された。
【0090】
結果
色の変化は、すべてのテトラゾリウム塩染料にうまく観察された。NBTは、LDH活動の視覚的検出によく適している。PMSとmPMSのどちらもメディエーターとしての役割を果たすことができるが、pMSが光化学的分解に感度が低いので、mPMSの方が好ましい。大いに驚くべきことだが、その例は、10μl以下という少量であっても、目に見える検出によって認められる色の変化を与えるのに十分であることを示す。
【0091】
実施例3
次の例3は、血漿サンプル中のLDHの存在の査定のために湿式試薬組成物に関連する。
【0092】
テトラゾリウム塩と、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)はジメチルスルホキシドに溶かされて、10mMの原液を生成した。メディエーターl−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(mPMS)は、別々に水に溶かされて1mMの原液を生成した。NAD+の原液はバッファーの中で調製された。乳酸ナトリウムは水に溶かされた。N−メチル−D−グルカミンは水(1M)に溶かされpHがHC1で10に調節された。
【0093】
同僚からの対照血清(それぞれ2.2および4.7μkatal/l)および血液サンプルが使用された。血液サンプルは、分離装置(Vacuette、Greiner)およびカリウム−EDTAチューブ(Vacuette、Greiner)を備えたLi−ヘパリンチューブに集められた。チューブは1500xgで15分間遠心分離機にかけられ、血漿はEppendolfチューブへ移された。
【0094】
反応混合物:同量のテトラゾリウム塩原液、メディエーター原液、乳酸およびNAD+原液は、サンプルに加える前に混合された。
【0095】
酵素活性の測定は、80μlの反応混合物および20μlのサンプルを含む総量100μlで行われた。
【0096】
結果
色の変化はうまく観察された。色の変化は、視覚的及び分光測光法で検出された。
【0097】
実施例4
次の例4は、血漿サンプル中のLDHの存在の査定のために乾式試薬組成物に関連する。
【0098】
表4にしたがって原液が配された。
【0099】
【表4】

【0100】
原液を使用して、NMG(0.61ml)、NAD(0.467ml)、L−乳酸(0.440ml)、NBT(1.21ml)およびmPMS(0.997ml)は混合され、プラスチックシート上で乾かされた。乾燥後、5μlのLDHを添加した血漿は乾燥した地点で適用され、反応を2分間進行させた効果があった。その反応を2MのHC1で止めた。
【0101】
結果
LDHレベルの高レベルと低レベル間の色の描写が明らかに観察された。
【0102】
実施例5
次の例5は、血漿中のHbの判定用の湿式試薬組成物に関連する。
【0103】
試薬液は以下のように調製された。発色体の化合物、Ν,Ν,Ν’,Ν−テトラメチルベンジジン(TMB)および3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)は、ジメチルスルホキシドで個別に溶解されるか、または直接緩衝液(リン酸塩シトラートバッファー)に別々に溶かされた。基礎の過酸化水素および、tert−ブチルヒドロペルオキシド(T−hydro)は、それぞれの発色体の合成溶液で別々に溶かされた。
【0104】
そのpHは4−7の範囲に調節された。90μlの量の試薬液および10μlの量の血漿(サンプル)が、反応のために混ぜられた。
【0105】
結果
色は、個々の試薬液の各々にうまく進行し、TMBは透明な黄色(Hbなし)から緑(Hbあり)へ色を変えた。DABは透明色(Hbなし)から茶色(Hbあり)へ色を変化させた。色の変化は、視覚的及び分光測光法で検出された。
【0106】
実施例6
次の例6は血漿中のHbの測定用の乾式試薬組成物に関連する。
【0107】
TMB、過酸化水素およびバッファー(pH 5.5)から成る試薬混合物は、プラスチックシートの上で乾かされ、水分は、加えられたレベルのHbを含む10μlの血漿サンプルによって再水和された。再水和の後、TMBの濃度は、0.2mg/ml、過酸化水素0.04%およびバッファー50 mMだった。
【0108】
結果
この色の進行は、Hbの濃度は異なり、より高濃度のHbで色の濃度が増したサンプルにとってすぐれた描写を示した。
【0109】
当業者は、上記の説明から逸脱する発明性のある技術を使用(例えば、プラスチックなどの代わりにガラスあるいは他の適切な材料の使用)することなく、多種多様な改良が行われることを認識している。更に、可視スペクトル内の分光光度法によって検査結果(色の変化)を分析することは、本発明の範囲内である。
【0110】
ここに述べられた本発明の多くの改善点、および他の実施形態は、先の説明および関連する図面の中で提示された教示の恩恵を受けて、これらの発明が関連する分野の当業者も思いつくであろう。したがって、本発明が、開示された特有の実施形態に限定されず且つその改良点および他の実施形態が添付のクレームの範囲内に含まれるように意図されることが理解されている。特定な用語はここに用いられるが、それらは、限定目的ではなく、包括的で記述的な意味においてのみ使用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷を査定するための検査システムであって、
前記システムは、サンプル注入口(4)と、分離装置(3)とともに配された採取チャンバー(32)とを備えた使い捨て装置(2)を含み、
採取チャンバー(32)は少なくとも2つの、第1(5A)および第2(5B)の可視検出区画に接続され、これらの少なくとも1つは直接的な検出のための化学的手段とともに配され、
前記第1の検出区画(5A)は、前記哺乳動物から得た体液(9)のサンプル中のヘモグロビン(Hb)の量が予め決められたレベルを超えるかどうかを測定するために配され、および、
前記第2の検出区画(5B)は、化学的手段によって前記サンプル中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量レベルを評価するために配されることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
少なくとも2つの検出区画(5A、5B)は、それぞれ、HbとLDHの前記量を直接検出するための化学的手段とともに配されることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
少なくとも2つの可視検出区画(5A、5B)は、比色分析手段による直接的な目に見える検出のための化学的手段とともに配されることを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
少なくとも2つの可視検出区画(5A、5B)は、分光光度手段による直接的な検出のための化学的手段とともに配されることを特徴とする請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項5】
分離装置(3)は、3mmから500mmの面積、好ましくは、150mm未満の面積の分離フィルタ(31)を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の検査システム。
【請求項6】
前記サンプルは全血サンプル(9)であり、前記分離装置(3)は、前記全血サンプル(9)内の血液細胞から血漿(9’)を分離させるためのフィルタ(31)を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の検査システム。
【請求項7】
前記サンプルは、血漿、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、腹腔内液、または、唾液のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の検査システム。
【請求項8】
体液(9)のサンプルの量が1μL−100μL、より好ましくは10μL−75μLであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項9】
体液(9)のサンプルをサンプル注入口(4)を介して適用してから低酸素誘導性の細胞損傷の査定が視覚的検出によって可能になるまでの時間は、5分未満であり、好ましくは2分未満であり、さらに好ましくは1分未満であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項10】
体液(9)のサンプル中の予後マーカーの総量は、増加する色強度の標準的な参考尺と比較して推定され、
一方で、色がないこと、または、それほど濃くない色は、低濃度のマーカーに対応し、より濃い色は高濃度のマーカーに対応することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項11】
使い捨て装置(2)は、カード上に配された2以上の可視検出区画(5A−C)を含み、好ましくは、前記区画の各々1つは、試薬組成物の形をした化学的手段とともに配されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項12】
前記少なくとも2つの可視検出区画(5A−5C)の各々は、予後マーカー、Hb、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、クレアチンキナーゼ(CK)、K、Mg、および、Caからなる群の1つのメンバーの直接的な目に見える検出のための試薬組成物とともに配されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項13】
前記使い捨て装置(2)は、サンプル注入口(4)に接続された収容チャンバー(6)を有し、該収容チャンバー(6)はサンプル採取装置(7)のための区画とインターフェースを形成することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項14】
前記サンプル注入口(4)は哺乳動物から体液のサンプルを採取するために、一体型の毛管状のサンプル採取装置(7)を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項15】
前記化学的手段は乾式の化学的手段または湿式の化学的手段の形状の試薬組成物であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項16】
前記試薬組成物はLDHを測定するために配され、テトラゾリウム化合物、好ましくは、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、1−(p−ヨードフェニル)−5−(p−ニトロフェニル)−3−フェニルホルマザン(INT)および3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の検査システム。
【請求項17】
前記試薬組成物はフェナジンメトスルフェート(PMS)、または、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(mPMS)の形状のメディエーターを含むことを特徴とする請求項15または16に記載の検査システム。
【請求項18】
前記試薬組成物は乳酸およびNADをさらに含むことを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載の検査システム。
【請求項19】
検出区画(5A−C)内部のpHが8−11、好ましくは8.5−10、さらに好ましくは8.8−9.8であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項20】
前記試薬組成物は、N−メチル−D−グルカミンを含むバッファ中のLDHを測定するために配されることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項21】
検出区画(5A−C)内部のpHが9−11、好ましくは9.5−10.5、さらに好ましくは9.8−10.2であることを特徴とする請求項15または20のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項22】
前記試薬組成物はHbを測定するために配され、テトラメチルベンジジン(TMB)および3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)からなる群から好ましくは選択されるベンジジン化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載の検査システム。
【請求項23】
前記試薬組成物は、過酸化水素およびtert−ブチルヒドロペルオキシド(T−hydro)からなる群から好ましくは選択される過酸化物基質を含むことを特徴とする請求項22に記載の検査システム。
【請求項24】
検出区画(5A)内部のpHが3−7、好ましくは4.5−5.5であることを特徴とする請求項22または23のいずれかに記載の検査システム。
【請求項25】
前記使い捨て装置(2)は、あらかじめ決められた時間後に、予後マーカーと前記試薬組成物との間の反応を中断するための反応停止物質を備えた区画(8)を含むことを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項26】
体液のサンプルからの血漿が前記分離装置(3)を通って、少なくとも2つの検出区画(5A−B)に入るのを促すために、前記血漿採取チャンバー(32)内部で負圧を生じさせるための手段(14)を含むことを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項27】
使い捨て装置(2)は携帯でき、3−15cm、好ましくは5−10cmの長さ(l)、0.5.−5cm、好ましくは2−4cmの幅(w)、および、0.1.−3cm、好ましくは0.3.−0.7cmの厚さ(d)を有することを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項28】
前記使い捨て装置(2)は5−50gの重量を有することを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1つに記載の検査システム。
【請求項29】
哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷を査定する方法であって、
前記方法は、
a.血液細胞などの粒子状物質を含む、哺乳動物からの体液(9)のサンプルを提供する工程と、
b.分離装置(3)によって体液(9)の前記サンプルから前記粒子状物質を分離させる工程と、
c.直接検出のための化学的手段に前記分離させた体液(9’)を接触させる工程と、
d.体液(9’)中のHbの量があらかじめ決められた閾値を上回るか下回るか、および、Hbの量が前記閾値を下回るかどうかを測定する工程と、
e.体液(9’)中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量のレベルを評価する工程と、および、
f.体液(9’)中のLDHのレベルの評価から低酸素誘導性の細胞損傷のリスクおよび/または存在を査定する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
工程(d)−(e)において、マーカーHbとLDHのレベルをそれぞれ測定する工程と評価する工程は、比色分析手段による直接的な目に見える検出によって行われることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程(d)−(e)において、マーカーHbとLDHのレベルをそれぞれ測定する工程と評価する工程は、分光光度検出によって行われることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
分離装置(3)は体液(9’)から粒子状物質を分離させるためのフィルタ(31)を含み、前記分離フィルタ(31)は3mmから500mmまで、好ましくは150mm未満の面積を含むことを特徴とする請求項29乃至31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルは全血サンプル(9)であり、前記分離装置(3)は前記全血サンプル(9)内の血液細胞から血漿(9’)を分離させるためのフィルタを含むことを特徴とする請求項29乃至32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記サンプルは全血サンプル、血漿、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、腹腔内液、または、唾液のいずれかの形状の体液(9)であることを特徴とする請求項29乃至32のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
体液(9)のサンプルの量が1μL−100μL、より好ましくは、10μL−75μLであることを特徴とする請求項29乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
体液(9)のサンプルをサンプル注入口(4)を介して適用してから低酸素誘導性の細胞損傷の査定が目に見える検出によって可能になるまでの時間は、5分未満であり、好ましくは2分未満であり、さらに好ましくは、1分未満であることを特徴とする請求項29乃至35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記化学的手段は乾式の化学的手段または湿式の化学的手段の形状の試薬組成物であることを特徴とする請求項29乃至36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記試薬組成物はLDHを測定するために配され、テトラゾリウム化合物、好ましくは、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、1−(p−ヨードフェニル)−5−(p−ニトロフェニル)−3−フェニルホルマザン(INT)および3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)からなる群から選択されることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記試薬組成物はフェナジンメトスルフェート(PMS)、または、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(mPMS)の形状のメディエーターを含むことを特徴とする請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記試薬組成物は乳酸およびNADをさらに含むことを特徴とする請求項37乃至39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
試薬組成物中のpHが8−11、好ましくは8.5−10、さらに好ましくは8.8−9.8であることを特徴とする請求項29乃至40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記試薬組成物は、N−メチル−D−グルカミンを含むバッファ中のLDHを測定するために配されることを特徴とする請求項37乃至40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
試薬組成物中のpHが9−11、好ましくは9.5−10.5、さらに好ましくは9.8−10.2であることを特徴とする請求項37または42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記試薬組成物はHbを測定するために配され、テトラメチルベンジジン(TMB)および3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)からなる群から好ましくは選択されるベンジジン化合物を含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記試薬組成物は、過酸化水素およびtert−ブチルヒドロペルオキシド(T−hydro)からなる群から好ましくは選択される過酸化物基質を含むことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
試薬組成物中のpHが3−7、好ましくは4.5−5.5であることを特徴とする請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
体液(9)のサンプル中のHbおよびLDHなどの予後マーカーの総量は、それぞれ、増加する色強度の標準的な参考尺と比較して推定され、
色がないこと、または、それほど濃くない色は低濃度のマーカーに対応し、より濃い色は高濃度のマーカーに対応することを特徴とする請求項29乃至46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
低酸素症を査定するために、および、出生前の窒息後の低酸素症の虚血性脳障害を予測することを可能にするために、体液(9)のサンプルは新生児から採取されることを特徴とする請求項29乃至47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
血液サンプルは医療処置の前に採取されることを特徴とする請求項29乃至48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記医療処置は移植を含むことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記医療処置は胃腸管の手術を含むことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項52】
請求項29乃至51のいずれかに記載の方法に従って、哺乳動物における低酸素誘導性の細胞損傷を査定するための使い捨て装置の使用であって、
前記装置は、少なくともサンプル注入口(4)と、分離装置(3)とともに配された採取チャンバー(32)とを備え、
採取チャンバー(32)は少なくとも2つの、第1(5A)および第2(5B)の可視検出区画に接続され、各々の区画は直接的な検出のための化学的手段とともに配され、
前記第1の検出区画(5A)は、前記哺乳動物からの体液(9)のサンプル中のヘモグロビン(Hb)の量が予め決められたレベルを超えるかどうかを測定するために配され、および、
前記第2の検出区画(5B)は、前記サンプル中の乳酸脱水素酵素(LDH)の総量レベルを評価するために配されることを特徴とする使用。
【請求項53】
使い捨て装置(2)は、カード上に配された2以上の可視検出区画を含み、好ましくは、前記区画の各々1つは、試薬組成物の形をした化学的手段とともに配されることを特徴とする請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記少なくとも2つの可視検出区画(5A−5C)の各々は、予後マーカー:Hb、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸、クレアチンキナーゼ(CK)、K、Mg、および、Caからなる群の1つのメンバーの直接的な目に見える検出のための試薬組成物とともに配されることを特徴とする請求項53に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−506833(P2013−506833A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532049(P2012−532049)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051048
【国際公開番号】WO2011/040874
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512081306)カルマーク スウェーデン アクチエボラグ (1)
【Fターム(参考)】