説明

低電圧駆動有機発光素子およびその製造方法

本発明は、第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された発光層を含む2層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層は、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を含む有機発光素子およびその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧駆動有機発光素子およびこの製造方法に関する。
本出願は、2008年11月13日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2008−0112886号の出願日の利益を主張し、その内容すべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、加えられた電圧によって電流を通じて光を出す電気素子である。Tangなどは、論文[Applied Physics Letters 51,p.913,1987]にて優れた特性を有する有機発光素子を報告した。また、この論文に開示された有機発光素子の構造を利用しながら、高分子物質を用いた有機発光素子も開発された。
【0003】
このような先行技術の核心は、有機発光素子が光を出すための過程、すなわち、電荷注入、電荷輸送、励起子形成、および光の発生をそれぞれ異なる有機物層を利用して役割を分担させることである。最近では、図1に開示されているように、正極7、正孔注入層6、正孔輸送層5、発光層4、電子輸送層3、電子注入層2、および負極1を含む有機発光素子、またはこれ以上の層に細分化された構造の有機発光素子が用いられている。
【0004】
このような有機発光素子の構造のうちで正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層については、既存の有機物の導電率(mobility)を向上させるために数種類の異なる物質をドーピングする研究がなされている{日本特許公開第2000−196140号、論文[Applied Physics Letters,73,p.729−731,1998]、論文[Applied Physics Letters,72,pp.2147−2149,1998]米国特許第5,093,698号、国際特許公開WO01/67825}。
【0005】
このような文献は、ドーピングによって単純に電荷輸送層または電荷注入層の導電率を増加させて効率の良い素子を実現している。例えば、国際特許公開WO01/67825には、正孔輸送層を、200g/mol以上の高い分子量のアクセプター型の安定した有機分子材料でP−ドーピングすれば(低いドーピング濃度1:110〜10000)、ドーピングしないものよりも正孔導電率が増加すると記載されている。これと同様に、電子輸送層には、分子質量が高いドナー型の安定した分子をn−ドーピングすれば、上述したものと類似の効果が得られることが記載されている。
【0006】
一方、現在、有機発光素子において、電子輸送層から電子が発光層に入る程度が正孔輸送層から正孔が発光層に入る程度よりも小さいため、正孔輸送層の導電率を減少させて素子の効率を大きくするものがある[Applied Physics letters,86,203507,2005]。
【0007】
この文献には、大きいエネルギーバンドギャップを有する正孔輸送層[N、N’−bis−(1−naphthyl)−N,N’−diphenyl−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine(NPB),HOMO:−5.5eV,LUMO:−2.4eV]に、小さいエネルギーバンドギャップを有する正孔注入層[copper phthalocyanine(CuPC)、HOMO:−5.1eV,LUMO:−3eV]をドーピングした例が記載されている。このような素子における効率増加は、CuPCのHOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギーレベルを利用して正孔をトラップ(trapping)し、発光層に入る正孔と電子の比率を合わせて効率を増加させた結果である。
【0008】
また、他の一方として、特許(KR10−0823443)では、正孔注入層および/または輸送層を、本来の正孔注入層および/または輸送物質として用いられるHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共に、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を利用して形成させると、高い効率を有する有機発光素子が得られるという事実が明らかにされている。しかし、この技術では、有機物層の厚さが厚い場合には低電圧駆動を達成し難いという問題がある。
【0009】
有機発光素子の駆動電圧を低めることは、単純にエネルギー効率を高くする効果をもたらすだけではなく、有機発光素子の実際の応用において必須な光学的共鳴構造を形成させるために無くてはならない事項であることが知られている。周知の光学的共鳴構造の形成は、(イ)内部共鳴構造の応用[ref(Journal of applied physics v97 093102)]、(ロ)MIM共鳴構造の応用[ref(Journal of applied physics v97 103112)]、(ハ)外部共鳴構造の応用[ref(Journal of applied physics v93 p19)、(Journal of applied physics v86 p2407)、(Journal of applied physics v80 p6954)]に分類することができる。このうち(イ)と(ロ)において、本発明は、有機発光素子の駆動電圧を低める技術を提供することにより、全体的な有機発光素子のエネルギー効率を高め、実際の応用に必要な光学的共鳴構造の形成において発生する電圧に関する制限を部分的に解消する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of applied physics v97 093102
【非特許文献2】Journal of applied physics v97 103112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、有機発光素子において、正孔注入または輸送有機物層として本来に正孔注入層および/または輸送物質として用いられるHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共に、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む有機物層を利用すると同時に、前記有機物層に接するLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層を利用することにより、低電圧駆動の有機発光素子が得られるという事実を明かした。これにより、本発明は、低電圧駆動が可能な有機発光素子およびこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された発光層を含む2層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層が、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および
前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層
を含む有機発光素子を提供する。
【0013】
また、本発明は、第1電極を準備するステップ、第1電極上に発光層を含む2層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層を形成するステップが、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層を形成させるステップ、および
HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を、前記第1正孔注入または輸送層と接するように形成させるステップ
を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された少なくとも2つ以上の発光ユニットを含むスタック型(stacked)有機発光素子であって、前記発光ユニットが、発光層、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を含むスタック型有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、有機発光素子の正孔注入または輸送層として、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上にHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層が備えられた構造を利用することにより、低電圧駆動の有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、有機発光素子の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、有機物層として、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および
前記第1正孔注入または輸送層と接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共にLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第2正孔注入または輸送層
を含むことを特徴とする。
【0018】
一般的に、有機発光素子は、高い効率特性を得るために、複数の機能性層、例えば正極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、または負極などからなる構成をとっている。また、通常の場合、駆動電圧は、前記各層間の界面における正孔または電子の注入特性、または界面で正孔と電子が生じる程度、各層における正孔または電子の移動速度(Carrier Mobility)に依存する。特に、各層間の界面における正孔または電子の注入特性または界面で正孔と電子が生じる程度は、有機発光素子において極めて重要である。
【0019】
例えば、正極と発光層との間を考慮すると、正極と正孔注入層との界面、および正孔注入層と正孔輸送層との界面は、駆動電圧特性において極めて重要である。各界面間で正孔注入が円滑に起こらない場合には、駆動電圧の上昇に繋がり、特に正孔注入層または正孔輸送層の厚さが増えるにしたがって駆動電圧の上昇が酷くなる場合がある。
【0020】
また、正孔または電子注入特性は、界面にかかる電界(Electric Field)が大きいほど良好になるが、正孔注入層または正孔輸送層の厚さが増えるほど電界が小くなるため、駆動電圧が上昇するようになる。
このような特性を考慮するとき、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共にLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む正孔注入または輸送層のみを用いる場合には、光学的な共鳴構造が形成され、高い効率の有機発光素子を得ることができるが、各界面における正孔または電子注入が円滑でない場合、あるいは厚さが増加した場合に、駆動電圧が上昇することがある。
【0021】
したがって、本発明は、電極と発光層との間に、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、およびHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を備えることによって、電極と正孔注入または輸送層との界面における正孔注入層の特性を向上させ、正孔注入層および輸送層の厚さ増加による駆動電圧の上昇に関係なく、低電圧でも優れた効率を有する有機発光素子を提供することができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、電極と発光層との間にLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、およびHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を含み、前記第2正孔注入または輸送層と発光層との間にHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を正孔輸送層または電子遮断層として用いる場合に、各層の界面における正孔注入層特性がより優れ、電極と発光層の間における駆動電圧を上昇させることができる余地を最大限に抑制する効果を得ることができる。
【0023】
本発明において、HOMOエネルギーレベル(またはIP(ionization potential))およびLUMO(またはEA(Electron Affinity))エネルギーレベルは、有機または無機物質をフィルム形態で測定することによる、当技術分野における周知の装置または計算方法によって得ることができる。例えば、HOMOエネルギーレベルは、UPS(ultra−violet photoemission spectroscopy)またはRiken Keiki(日本)社のAC−2またはAC−3装備を利用して測定することができる。また、LUMOエネルギーレベルは、IPES(inverse photoemission spectroscopy)を利用して測定するか、あるいはHOMOエネルギーレベルを測定した後、この値から光学バンドギャップを引いて計算することができる。
【0024】
前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共にLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第2正孔注入または輸送層において、前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、従来から正孔注入または輸送物質として用いられるものであれば制限なく用いることができる。前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、HOMOエネルギーレベルが−9eV以上であることが好ましい。
【0025】
前記正孔注入または輸送物質としては、アミン基、カバゾール基、およびチオフェン基からなる群より選択された1種または2種以上の作用基を有する有機物を用いることが好ましい。前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、窒素原子を1つ以上含むアリールアミン化合物が好ましく、具体的な例としては、トリ(テルフェニル−4−イル)アミン(p−TTA)(−5.6eV)、N,N’−ビス−(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4、4’−ジアミン(NPB)(−5.5eV)、N,N‘−ジフェニル−N,N‘−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4‘−ジアミン(TPD)(−5.2eV)、m−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−TDATA)(−5.1eV)などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0026】
前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質と共にLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第2正孔注入または輸送層において、前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルによって有機発光素子の正孔注入または輸送層の導電率を調節する役割を有し得る。具体的に、前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層と接する第2正孔注入または輸送層の導電率を増加させる役割を有する。これにより、素子の低電圧駆動を向上させることができる。
【0027】
前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層は、前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質およびLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第2正孔注入または輸送層と接して備えられる。
【0028】
前記第1正孔注入または輸送層および第2正孔注入または輸送層において、前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下でさえあればその種類は特に限定されない。前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルが−5eV以下であることがより好ましい。また、前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルが−9eV以上であることが好ましい。前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質の具体的な例としては、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換された3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換されたPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換されたNTCDA、シアノ置換されたNTCDA、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)などがあるが、これらの例にのみ限定されるものではない。前記第1正孔注入または輸送層および第2正孔注入または輸送層にそれぞれ含まれるLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、同じ種類のものを用いてもよく、異なる種類のものを用いてもよい。
【0029】
前記第1正孔注入または輸送層およびこれに接する第2正孔注入または輸送層は、第1電極と発光層との間に配置される。このとき、前記第1正孔注入または輸送層が前記第1電極側に配置され、前記第2正孔注入または輸送層が前記発光層側に配置されることが好ましいが、この反対方向に配置されてもよい。
【0030】
前記第1電極と第1正孔注入または輸送層および前記第2正孔注入または輸送層の積層構造の間には、追加の有機物層、例えば、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む1層以上の層、またはHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む1層以上の層を含ませることができる。前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、従来から正孔注入または輸送物質として用いられるものであれば制限なく用いることができる。また、既存の多様な方法により、第1電極から有機物層に電荷を円滑に注入または輸送させることができるすべての構造{[国際特許公開WO01/67825][Applied Physics letters,86,203507,2005]}を含むことができる。さらに、前記第1正孔注入または輸送層および前記第2正孔注入または輸送層の積層構造と前記発光層との間にも、追加の有機物層が備えられ得る。
【0031】
本発明に係る有機発光素子の第2正孔注入または輸送層において、前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質との比は特に限定されず、それぞれの物質が単独で用いられる場合に比べて駆動電圧が減少する比率で用いることができる。このような比率は、混合する物質の種類、素子の製作、または駆動条件などに応じて当業者によって選択されることができる。
【0032】
前記第1正孔注入または輸送層および前記第2正孔注入または輸送層を形成する方法としては、特に制限されず、当技術分野における周知の方法を利用することができる。例えば、前記物質を溶液工程によってコーティングする方法、前記物質を蒸着する方法などによって形成することができる。コーティング方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、または熱転写法などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0033】
本発明に係る有機発光素子において、前記第1正孔注入または輸送層の厚さは0.1〜100nmが好ましく、前記第2正孔注入または輸送層の厚さは1〜1000nmが好ましい。
【0034】
本発明に係る有機発光素子は、上述した第1正孔注入または輸送層と第2正孔注入または輸送層との積層構造を含むことを除いては、当技術分野における周知の構造を有することができる。
【0035】
本発明に係る有機発光素子において、前記第1または第2正孔注入または輸送層は、無機物をさらに含むことができる。無機物は、金属または金属酸化物であることが好ましい。無機物の仕事関数は6eV以下、好ましくは2.5eV以上6eV以下であることが良い。仕事関数が6eV以下の無機物の具体的な例は、Au(5.1eV)、Pt(5.6eV)、Al(4.2eV)、Ag(4.2eV)、Li(2.9eV)などである。
【0036】
本発明に係る有機発光素子は、第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された有機物層を含む構造であって、前記有機物層は、発光層以外に、前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層のみを含むこともでき、この他に追加の有機物層、例えば、電子輸送層、電子注入層、正孔または電子遮断層、およびバッファー層のうちから選択される1つ以上の層を含むこともできる。また、本発明において、前記第1電極が正孔注入層電極であり第2電極が電子注入電極であってもよく、その反対であってもよい。
【0037】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板、正孔注入層電極、第1正孔注入または輸送層、第2正孔注入または輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入電極を順に積層した形態として含む構造であることができる。このような構造の有機発光素子を通常は正方向構造の有機発光素子というが、本発明はこれに限定されず、逆方向構造の有機発光素子も含む。すなわち、本発明の有機発光素子は、基板、電子注入電極、電子輸送層、発光層、正孔注入層、および/または輸送層および正孔注入層電極が順に積層された構造を有することもできる。
【0038】
本発明に係る有機発光素子の製造方法は、第1電極を準備するステップ、第1電極上に発光層を含む2層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層を形成するステップが、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層を形成させるステップ、および、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を前記第1正孔注入または輸送層と接するように形成させるステップを含む。
【0039】
本発明に係る有機発光素子の製造方法は、上述した第1正孔注入または輸送層と第2正孔注入または輸送層とを接するように形成させることを除いては、当技術分野における周知の方法および材料を利用して製造することができる。
【0040】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e−beam evaporation)のようなPVD(physical vapor deposition)方法を利用して基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成させ、その上に有機物層を形成させた後、その上に負極として用いることができる物質を蒸着させることによって製造することができる。このような方法の他にも、上述したように逆方向構造の有機発光素子を製作するために、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製作することもできる。
【0041】
本発明に係る有機発光素子のうちで有機物層は、多様な高分子素材を用いて蒸着法ではない溶媒工程(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、または熱転写法などの方法により、より少ない数の層で製造することができる。
【0042】
本発明に係る有機発光素子の電極のうちで正孔注入層電極物質としては、通常は有機物層に正孔注入層が円滑になされるように仕事関数が大きい物質が好ましい。本発明で用いられる正孔注入層電極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオペン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0043】
本発明に係る有機発光素子の電極のうちで電子注入電極物質としては、通常は有機物層に電子注入が容易になされるように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0044】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子がそれぞれ輸送されて結合することによって可視光線領域の光を出すことができる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率が優れた物質が好ましい。具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯物(Alq);カルバゾル系列化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシキノリン金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールおよびベンゾイミダゾール系列の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系列の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレン;燐光ホストCBP[[4,4’−bis(9−carbazolyl)biphenyl];などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0045】
また、前記発光物質は、蛍光または燐光特性を向上させるために燐光ドーパントまたは蛍光ドーパントをさらに含むことができる。前記燐光ドーパントの具体的な例としては、ir(ppy)3[fac tris(2−phenylpyridine)iridium]またはF2Irpic[iridium(III)bis(4,6,−di−fluorophenyl−pyridinato−N,C2)picolinate]などがある。蛍光ドーパントとしては、当技術分野における周知のものなどを用いることができる。
【0046】
前記電子輸送物質としては、電子注入電極から電子が適切に注入されて発光層に移すことができる物質であって、電子に対する移動性が大きい物質が好ましい。具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯物;Alqを含んだ錯物;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯物などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0047】
また、本発明は、第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された少なくとも2つ以上の発光ユニットを含むスタック型(stacked)有機発光素子であって、前記発光ユニットが、発光層、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を含む、スタック型有機発光素子を提供する。前記発光ユニットの間には、中間導電または電荷発生層を備えられ得る。前記中間導電または電荷発生層は単一層であってもよく、2層以上の積層構造であってもよいが、当技術分野における周知の材料および構造を有することができる。
【0048】
以下、実施例を参照しながら本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためものに過ぎず、本発明の範囲が制限されるものではない。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
有機基板上に正孔注入層電極として透明電極(Indium Tin Oxide)を100nmの厚さに蒸着し、酸素プラズマ処理を30mtorr圧力で80wで30秒の間実行した。その上に真空状態で熱を加え、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカーボンニトリル(LUMO:約−5.5〜−6eV)[cp10]を1nmの厚さに蒸着して第1正孔注入または輸送層を形成させた。その上に第2正孔注入または輸送層として、N,N’−ビス−(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)[cp3](HOMO:約−5.5eV)および[cp10]を下記の表のようにドーピング濃度を体積比率として1:0〜0:1で調節して40nmの厚さで蒸着した。その上に正孔輸送および電子遮断層としてNPBを30nmの厚さに蒸着し、その上に発光層として[cp1]および[cp2]を20nmの厚さで蒸着した。続いて、その上に電子輸送および注入層としてtris(8−hydroxyquinolino)aluminum(Alq)を20nmの厚さに蒸着し、その上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに蒸着し、その上に電子注入電極としてアルミニウム(Al)を150nmの厚さに蒸着して有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0050】
【表1】

【0051】
前記表に示すように、発明に係る有機発光素子は電圧駆動に効果があることが理解でき、最適な駆動電圧は体積比率50:50程度であることが分かる。
【0052】
[実施例2]
前記実施例1において、第2正孔注入または輸送層として[cp3]および[cp10]のドーピング濃度を体積比率として1:1で調節してそれぞれ30〜150nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製造した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0053】
【表2】

【0054】
前記dV/dLは、構成された有機物層の単位厚さあたりの駆動電圧の1次近似として解釈することができ、本発明の効果を示す主な性能の指標である。特に、下記の比較例2、比較例3、比較例4のように、正孔注入または輸送層として[cp3]を単独で用いたときよりも、約15倍程度少ない駆動電圧が印加されることが分かる。
【0055】
[実施例3]
前記実施例1において、第2正孔注入または輸送層として[cp4](HOMO:−5.33eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0056】
【表3】

【0057】
[実施例4]
前記実施例1において、第2正孔注入または輸送層として[cp5](HOMO:−5.3eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0058】
【表4】

【0059】
[実施例5]
前記実施例1において、第2正孔注入または輸送層として[cp6](HOMO:−5.2eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0060】
【表5】

【0061】
[実施例6]
前記実施例において、第2正孔注入または輸送層として[cp7](HOMO:−5.4eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0062】
【表6】

【0063】
[実施例7]
前記実施例1において、第2正孔注入または輸送層として[cp8](HOMO:−5.4eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで製造された素子特性は、下記の表のとおりである。
【0064】
【表7】

【0065】
[実施例8]
前記実施例1において、透明電極上に[cp9](LUMO:約−5.0〜−5.3eV)を1nmの厚さに蒸着して第1正孔注入または輸送層を形成し、その上に第2正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)および[cp9](LUMO:約−5.0〜−5.3eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0066】
【表8】

【0067】
[実施例9]
実施例1において、透明電極上に[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)を1nmの厚さに蒸着して第1正孔注入または輸送層を形成し、その上に第2正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)を1nmの厚さに蒸着した後、[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)を1nmの厚さで蒸着した。その上に正孔注入層および正孔輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:1で調節して30nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は5.61(V)である。
【0068】
[比較例1]
実施例1において、透明電極(Indium Tin Oxide)のすぐ上に正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:0〜1:4で調節して40nmの厚さに蒸着し、その上に正孔輸送および電子遮断層としてNPBを40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで製造された素子特性は、下記の表のとおりである。
【0069】
【表9】

【0070】
[比較例2]
実施例1において、正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)を0nm〜120nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0071】
【表10】

【0072】
[比較例3]
実施例1において、透明電極(Indium Tin Oxide)のすぐ上に正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)を40nm〜150nmの厚さに蒸着し、その上に正孔輸送および電子遮断層としてNPBを40nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0073】
【表11】

【0074】
[比較例4]
実施例1において、透明電極(Indium Tin Oxide)のすぐ上にNPBを1nmの厚さに蒸着し、その上に正孔注入または輸送層として[cp3](HOMO:約−5.5eV)および[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)のドーピング濃度を体積比率として1:1で調節して30nm〜150nm厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は下記の表のとおりである。
【0075】
【表12】

【0076】
[比較例5]
実施例1において、透明電極(Indium Tin Oxide)上に[cp10](LUMO:約−5.5〜−6eV)を1nmの厚さに蒸着し、さらに[cp3](HOMO:約−5.5eV)を1nmの厚さに蒸着した後、正孔注入または輸送層として[cp3]および[cp10]のドーピング濃度を体積比率として1:1で調節して30nmの厚さに蒸着したことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機発光素子を製作した。
電流密度50mA/cmで、製造された素子の特性は11.25(V)である。
【0077】
【化1】

【0078】
前記実施例1〜9の結果により、有機発光素子において、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む正孔注入または輸送層を形成させる場合には、30%程度駆動電圧が下降する(駆動電圧変動率−30%水準)低電圧駆動を有する素子が実現され得るという事実を確認することができる。
【0079】
比較例1の結果から、透明電極のすぐ上に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を形成させる場合には、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上にHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を形成させる場合よりも駆動電圧が高くなることが分かる。一方、実施例2の結果と比較例2および比較例3の結果とを比較することにより、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を厚く形成させる場合でも、駆動電圧上昇が極めて抑制される低電圧駆動を有する素子が実現されることが分かる。また、実施例1および実施例5の結果と比較例4および比較例5の結果とを比較することにより、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を形成させる場合には、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質ではない他の物質([cp3](LUMO:−2.4))の次に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を形成させる場合よりも、低電圧駆動において利点があることが分かる。
【0080】
さらに、実施例9の結果と比較例5の結果とを比較することにより、第1電極上に多数の層が存在する構造上に、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層上に、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入層および/または輸送層を形成させる場合には、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層なしで、HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む正孔注入または輸送層を形成させる場合よりも、50%程度駆動電圧が下降することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された発光層を含む2層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、
前記有機物層が、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および
前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質含む第2正孔注入または輸送層
を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【請求項2】
前記第1正孔注入または輸送層および前記第2正孔注入または輸送層が、前記第1電極と前記発光層との間に順に備えられることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1正孔注入または輸送層と前記第1電極との間に、LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層およびHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む層のうちの1層以上がさらに備えられることを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第2正孔注入または輸送層と前記発光層との間に、少なくとも1つの有機物層をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記発光層と前記第2電極との間に電子輸送層、電子注入層、正孔または電子遮断層、およびバッファー層のうちから選択される1つ以上の層をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第1正孔注入または輸送層の厚さが0.1〜100nmであり、前記第2正孔注入または輸送層の厚さが1〜1000nmであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質が、アミン基、カバゾール基、およびチオフェン基からなる群より選択される1つまたは2つ以上の作用基を有する有機物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、HOMOエネルギーレベルが−9eV以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質は、LUMOエネルギーレベルが−9eV以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質が、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換された3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換されたPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換されたNTCDA、シアノ置換されたNTCDA、およびヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質が、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカーボンニトリルであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記発光層が、蛍光ドーパントおよび燐光ドーパントのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記第1正孔注入または輸送層および第2正孔注入または輸送層のうちの少なくとも1つが、無機物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記無機物が金属または金属酸化物であることを特徴とする、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記無機物の仕事関数が2.5eV〜6eVであることを特徴とする、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記有機発光素子が、正孔注入層電極、発光層を含む2層以上の有機物層、および電子注入電極が下から順に積層された正方向構造であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記有機発光素子が、電子注入電極、発光層を含む2層以上の有機物層、および正孔注入層電極が下から順に積層された逆方向構造であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項18】
第1電極、第2電極、およびこれら2つの電極の間に配置された少なくとも2つ以上の発光ユニットを含むスタック型(stacked)有機発光素子であって、
前記発光ユニットが、
発光層、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層、および
前記第1正孔注入または輸送層に接するHOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層
を含むことを特徴とする、スタック型有機発光素子。
【請求項19】
前記発光ユニットの間に、中間導電層または電荷発生層がさらに備えられることを特徴とする、請求項18に記載のスタック型有機発光素子。
【請求項20】
第1電極を準備するステップ、第1電極上に発光層を含む2層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層を形成するステップが、
LUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質を含む第1正孔注入または輸送層を形成させるステップ、および
HOMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とLUMOエネルギーレベルが−4eV以下の物質とを含む第2正孔注入または輸送層を前記第1正孔注入または輸送層と接するように形成させるステップ
を含む、請求項1ないし18のうちのいずれか一項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項21】
前記第1正孔注入または輸送層、あるいは前記第2正孔注入または輸送層を形成させるステップが、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、または熱転写法によって行われることを特徴とする、請求項20に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−508975(P2012−508975A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536251(P2011−536251)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006700
【国際公開番号】WO2010/056070
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】