説明

低VOCポリアミン

下記式(I)を有する化合物:
【化1】


式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してコーティング組成物および他の用途におけるpH調節のために、並びに分散剤として有用なポリアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
AMP(2−アミノ−2−メチルプロパノール)はコーティング組成物およびpH調節を必要とする他の配合物のpH調節のために、並びに分散剤として使用される。この目的に有用であるが、標準的なVOC(揮発性有機化合物)試験で測定して低い揮発性を有する化合物が望まれる。欧州特許出願公開第391,733号は式
【化1】

を有する化合物を開示するが、この文献は本願において特許請求されるポリアミン化合物を開示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第391,733号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により取り組まれる課題はコーティング組成物および他の用途におけるpH調節において有用な、並びに分散剤として有用なポリアミン化合物を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I)を有する化合物に関する:
【化2】

式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である。
【0006】
本発明はさらに、7未満のpHを有するコーティング組成物に、7.5〜9.5の最終pHを生じさせるのに充分な量の式(I)(式(I)中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である)の化合物を添加することを含む、コーティング組成物におけるpHを調節する方法に関する。
【0007】
本発明はさらに、式(I)(式(I)中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である)の化合物を製造する方法に関する。この方法は脂肪族ニトロ基を還元できる還元剤と、式(II):
【化3】

の化合物とを接触させることにより、式(II)の化合物を還元することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
他に示されない限りは、全てのパーセンテージは重量パーセンテージ(重量%)である。百万分率での濃度(ppm)は重量/体積基準で計算される。「水性」組成物は水を少なくとも30重量%、あるいは水を少なくとも35重量%、あるいは水を少なくとも38重量%含む組成物である。好ましくは、水性組成物は5重量%を超えて有機溶媒を含まない。他に特定されない限りは、「アルキル」基は線状もしくは分岐の配置の1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。アルキル基は場合によっては1以上の二重結合もしくは三重結合を有する。アルキル基上での1以上のヒドロキシもしくはアルコキシ基の置換が許容される。好ましくは、アルキル基は飽和かつ非置換である。「シクロアルキル」基は少なくとも1つの飽和環を含むアルキル基である。「ヘテロアルキル」基は少なくとも1つの炭素がO、NRもしくはS(ここで、Rは水素、アルキル、アリールもしくはアルアルキルである)によって置き換えられたアルキル基であり、例えば、−CHCHR’(OCHCHR’)−(ここで、R’は水素、メチルもしくはエチルであり、nは1〜9、またはそのヘテロアルキル基の最大サイズおよびR’の種類(identity)によって決定される上限である)である。ヘテロアルキル基の炭素数はそのヘテロアルキル基における実際の炭素原子の数であって、組み込まれたヘテロ原子を含まない。本発明のある実施形態においては、ヘテロアルキル基は酸素へテロ原子だけを有し、かつ炭素原子:酸素原子の比率は5:1〜2:1、あるいは4:1〜2.5:1である。本発明のある実施形態においては、ヘテロアルキル基はその鎖のいずれかの末端で炭素原子を介して結合されている。「アリール」基は芳香族炭化水素化合物から得られる置換基である。アリール基は、他に特定されない限りは、全部で6〜20個の環原子を有し、かつ別々もしくは縮合した1以上の環を有する。「アルアルキル」基は「アリール」基で置換された「アルキル」基である。「アリールアルキル」基はアルキル基に二官能性アリール基が挿入されている二官能性基であって、例えば、−(CH)xC(CH−であり、ここでCはo−、m−もしくはp−フェニレンであり、xおよびyは同じかもしくは異なっていてよく、好ましくは同じであり、かつアリールアルキル基の全体のサイズおよび挿入されたアリール基の種類と調和した値を有する。「アリールヘテロアルキル」基はヘテロアルキル基に二官能性アリール基が挿入されている二官能性基である。アリール基上での以下の基:ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、アルカノイル、アミノ、または1以上のアルキル、アリール、アルアルキル、ヘテロアルキルもしくはアルカノイルで置換されたアミノ:の1種以上の置換が許容される;1以上のハロ基による置換がアルキル、ヘテロアルキル、アルカノイルもしくはアルコキシ基上で可能である。好ましくは、アリール基はハロゲン原子を含まない。本発明のある好ましい実施形態においては、アリール基は非置換であるか、またはアルキル基だけで置換されている。二官能性基は2つの結合点を有する置換基であり、例えば、二官能性アルキル基の例は、−(CH−(ここで、xは2〜20であり得る)であろう。
【0009】
本発明のある実施形態においては、RおよびRは独立して水素もしくはC−Cアルキル;あるいは水素もしくはC−Cアルキル;あるいは水素、メチルもしくはエチル;あるいは水素もしくはメチル;あるいは水素である。本発明のある実施形態においては、RとRとは同じである。本発明のある実施形態においては、R、R、RおよびRは独立して水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C10アルアルキル;あるいは水素もしくはC−Cアルキル;あるいは水素もしくはC−Cアルキル;あるいはC−Cアルキル;あるいは水素、メチルもしくはエチル;あるいはメチルもしくはエチル;あるいはメチルである。本発明のある実施形態においては、RはRと同じであり、かつRはRと同じである。本発明のある実施形態においては、R、R、RおよびRは同じである。
【0010】
本発明のある実施形態においては、Xは、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−Cアリール、C−C12アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、およびC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基であるか;あるいはC−C10アルキル、C−C20ヘテロアルキル、およびC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基であるか;あるいはC−CアルキルおよびC−C15ヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基であるか;あるいはC−C15ヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である。本発明のある実施形態においては、Xは対称形であり、すなわち、Xの長さに対して垂直に対称面が存在する。
【0011】
本発明のある実施形態においては、式(I)の化合物は、以下に示されるように、
【化4】

式(III)のニトロアルコールを、式(IV)におけるような2つの末端第一級もしくは第二級アミノ基を有する化合物と化合させて式(II)のニトロ化合物を生じさせ、、次いでニトロ化合物(II)を式(I)の化合物に還元することにより製造される。化合物(II)の還元は脂肪族ニトロ基を還元できる試薬を用いて達成されうる。この還元剤の例には、触媒、例えば、ラネーニッケル、担持白金もしくは担持パラジウムと組み合わせた水素ガス;または水素の非存在下でのギ酸およびパラジウム;並びに他の還元剤、例えば、水素化リチウムアルミニウム、ナトリウムもしくはリチウム、および液体アンモニア、亜鉛、スズもしくは鉄と、塩酸、水素化アルミニウム/塩化アルミニウム、水流化ナトリウムもしくは硫化アンモニウムが挙げられる。好ましい還元剤には以下の触媒:ラネーニッケル、炭素上のパラジウム、もしくは炭素上の白金のいずれか:と組み合わせた水素ガスが挙げられる。ニトロ基の水素化の条件は周知であり、例えば、約25〜75℃、103〜3800KPaである。
【0012】
本発明のある実施形態においては、化合物(IV)は、アミノアルキル基、例えば、C−Cアミノアルキル基でキャップされたアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドの重合残基、例えば、2〜6つの残基を有する。本発明のある実施形態においては、Xは平均式−CH(CH)CH(OCHCH(CH))−(式中、nは約2.7である)を有する基の混合物を表す。この混合物は、2、3および4に等しいnを有するものを少なくとも含み、これはそれぞれXがC、C12またはC15ヘテロアルキル基であることに対応する。本発明のある実施形態においては、Xは2つの酸素原子を有するC−Cヘテロアルキル基である。
【0013】
7未満の当初pHを有する水性コーティング組成物または他の水性組成物におけるpHを調節するのに式(I)の化合物が使用される場合には、添加される化合物(I)の量は、当初pH、所望の最終pH、および組成物中に存在する他の成分に応じて明らかに変動しうる。しかし、当業者は化合物(I)の必要な量を容易に決定できる。アクリルラテックスコーティング組成物においては、典型的には、化合物(I)の量は、コーティング組成物中のカルボン酸基の全重量の10重量%〜125重量%、あるいは25重量%〜100重量%の範囲であろう。本発明のある実施形態においては、水性組成物の当初pHは2〜7、あるいは2.5〜6である。目標pH値は好ましくは7.8〜9.3、あるいは8〜9.2である。本発明のある実施形態においては、水性コーティング組成物はアクリルもしくはメタクリル酸と、アクリルもしくはメタクリル酸C−Cアルキルとのコポリマーを含むアクリルラテックスである。本発明のある実施形態においては、アクリルラテックスは40〜65重量%、あるいは45〜62重量%、あるいは45〜55重量%のポリマー固形分を含む。式(I)の化合物は、典型的なコーティング組成物もしくは他の組成物の他の成分並びに顔料についての分散剤であるという追加の利点を有する。
【実施例】
【0014】
N,N’−(3,3’−(2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(2−メチル−2−ニトロプロパン−1−アミン(TTDA−ビス−NMP)の合成
1Lの三ツ口フラスコに磁気攪拌装置、窒素ブランケットを伴う還流凝縮器、並びに熱電対が取り付けられた。このフラスコに、119.14グラム(1.0モル)のNMP、および110.16グラム(0.5モル)の4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(TTDA)を入れた。無色透明の溶液が窒素下、室温で11日間攪拌された。ヘキサン(約100mL)がこの反応混合物に添加され、そしてそれは共沸混合物として水を除去しつつ加熱還流された。次いで、ヘキサンが真空蒸留によって除去された。透明黄色液体としてのTTDA−ビス−NMPの収率は209グラム(99%)であった。GC分析は約11%の少量の残留NMPの存在を示した。GC/MS、IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。
【0015】
,N’−(3,3’−(2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(TTDA−ビス−AMP)の合成
2Lの316ステンレス鋼PARR反応器に209グラム(0.495モル)のTTDA−ビス−NMP、500グラムのメタノールおよび36.7グラムの水に濡らされたRaNi3111触媒が入れられた。この反応器は窒素でフラッシュされ、次いで水素で加圧された。還元は65℃で550psig水素(3790KPa)で行われた。還元は約1.5時間で完了した。反応器混合物はろ過されて触媒を除去し、ろ液は透明で淡青色であった。メタノールおよび水はロータリーエバポレーションによってろ液から除かれ、169グラム(94%)のTTDA−ビス−AMPを透明青色液体として生じた。GC分析は8.4%のモノ付加物(TTDA−AMP)の存在を示した。GC/MS、IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。滴定により、pK=9.77およびpK=6.45が得られた。改変されたEPA試験方法24による揮発度(volatility)は0.2%であった。
【0016】
JEFFAMINE(ジェファーミン)D230−ビス−NMP(JD230−ビス−NMP)の合成
1Lの3ッ口フラスコに機械式攪拌装置、窒素ブランケットを伴った還流凝縮器、並びに温度制御装置および熱電対を伴う加熱マントルを備え付けた。このフラスコに、238.3グラム(2.0モル)のNMP、および230.4グラム(1.0モル)のジェファーミンD230を入れた。この混合物が窒素下、室温で攪拌され、無色透明溶液を生じた。この溶液は室温で24時間攪拌され、次いで150mLのヘキサンが添加され、そしてこの混合物は共沸混合物として水を除去しつつ加熱還流された。次いで、ヘキサンが真空蒸留によって除去された。透明黄色液体としてのJD230−ビス−NMPの収率は432.3グラム(100%)であった。IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。
【0017】
ジェファーミンD230−ビス−AMP(JD230−ビス−AMP)の合成
2Lの316ステンレス鋼PARR反応器に400グラム(0.93モル)のJD230−ビス−NMP、400mLのメタノールおよび52.1グラムの水に濡らされたRaNi3111触媒が入れられた。この反応器は窒素でフラッシュされ、次いで水素で加圧された。還元は65℃で490psig水素(3380KPa)で行われた。還元は約2時間で完了した。反応器混合物はろ過されて触媒を除去し、ろ液は透明で淡黄色であった。メタノールおよび水はロータリーエバポレーションによってろ液から除かれ、330.3グラム(96%)のJD230−ビス−AMPを透明淡黄色液体として生じた。IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。滴定により、pK=9.6およびpK=5.9が得られた。改変されたEPA試験方法24による揮発度は2%であった。
【0018】
N,N’−(2,2’−エタン−1,2−ジイルビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(2−メチル−2−ニトロプロパン−1−アミン)(EDBDA−ビス−NMP)の合成
500mLの3ッ口フラスコに磁気攪拌装置、窒素ブランケットを伴った還流凝縮器、並びに温度制御装置および熱電対を伴う加熱マントルを備え付けた。このフラスコに、165.57グラム(1.39モル)のNMP、および103.0グラム(0.695モル)の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBDA)を入れた。この混合物が窒素下、室温で攪拌され、無色透明溶液を生じた。室温で5日間の攪拌後、この反応混合物は60℃に加熱された。60℃で7時間後、LC分析はNMPが残っていることを示さなかった。ヘキサン(100mL)が添加され、そしてこの混合物は共沸混合物として水を除去しつつ加熱還流された。次いで、ヘキサンが真空蒸留によって除去された。透明黄色液体としてのEDBDA−ビス−NMPの収率は243.5グラム(98%)であった。LC/MS、IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。LC/MSはEDBDA−ビス−NMPがさらなるNMPと反応した幾分かのトリス付加物の存在も検出した。
【0019】
,N’−(2,2’−エタン−1,2−ジイルビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(2−メチルプロパン−1,2−ジアミン)(EDBDA−ビス−AMP)の合成
2Lの316ステンレス鋼PARR反応器に237.2グラム(0.68モル)のEDBDA−ビス−NMP、400mLのメタノールおよび33.3グラムの水に濡らされたRaNi3111触媒が入れられた。この反応器は窒素でフラッシュされ、次いで水素で加圧された。還元は65℃で490psig水素(3380KPa)で行われた。還元は約1.5時間で完了した。反応器混合物はろ過されて触媒を除去し、ろ液は無色透明であった。メタノールおよび水はロータリーエバポレーションによってろ液から除かれ、192.3グラム(98%)のEDBDA−ビス−AMPを透明でほぼ無色の液体として生じた。IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。GC/MSは4.8%のモノ付加物EDBDA−AMP、1%のモノメチルEDBDA−ビス−AMP、EDBDA−ビス−AMPのモノイミダゾリジン誘導体1.2%、およびEDBDA−ビス−NMPがさらなるNMPと反応したトリス付加物1.6%の存在も検出した。滴定により、pK=9.7およびpK=5.8が得られた。改変されたEPA試験方法24による揮発度は0%であった。
【0020】
,N−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)ヘキサン−1,6−ジアミン[114136−87−7](HD−ビス−NMP)の合成
500mLの3ッ口フラスコに磁気攪拌装置、窒素ブランケットを伴った還流凝縮器、並びに温度制御装置および熱電対を伴う加熱マントルを備え付けた。このフラスコに、119.14グラム(1.0モル)のNMP、58.18グラム(0.5モル)の1,6−ヘキサンジアミン、10グラムの水および50mLのメタノールを入れた。この混合物が窒素下、室温で攪拌され、透明黄色溶液を生じた。室温で5日間の攪拌後、蒸留によってメタノールが除去され、次いで、約100mLのヘキサンが添加された。この混合物は共沸混合物として水を除去しつつ加熱還流された。次いで、ヘキサンが真空蒸留によって除去された。透明黄色オイルとしてのHD−ビス−NMPの収率は151.9グラム(95%)であった。LC/MS、IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。LC/MS分析はHD−ビス−NMPがさらなるNMPと反応した幾分かのトリス付加物の存在も示した。
【0021】
,N’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(2−メチルプロパン−1,2−ジアミン)(HD−ビス−AMP)の合成
2Lの316ステンレス鋼PARR反応器に141グラム(0.44モル)のEDBDA−ビス−NMP、500mLのメタノールおよび25.8グラムの水に濡らされたRaNi3111触媒が入れられた。この反応器は窒素でフラッシュされ、次いで水素で加圧された。還元は65℃で490psig水素(3380KPa)で行われた。還元は約1時間で完了した。反応器混合物はろ過されて触媒を除去し、ろ液は透明で淡黄色であった。メタノールおよび水はロータリーエバポレーションによってろ液から除かれ、110.9グラム(97%)のHD−ビス−AMPを透明で淡黄色の液体として生じた。この液体は置いておくと固化して、MP=25〜35℃を有する白色結晶固体を生じた。GC/MS、IR、H−および13C−NMR分析は提示された構造と整合していた。GC/MSは幾分かのモノ付加物HD−AMP、および幾分かのHD−ビスAMPモノ−イミダゾリジンの存在も示した。滴定により、pK=10.0およびpK=6.9が得られた。改変されたEPA試験方法24による揮発度は8.9%であった。
【0022】
半光沢ラテックス塗料における中和剤および共分散剤(co−dispersant)としてのTA−AMPおよびTA−ACyHMの評価
JD230−ビス−AMP、EDBDA−ビス−AMP、TTDA−ビス−AMP、およびHD−ビス−AMPの性能が、半光沢ラテックス塗料配合物においてAMPに対して評価された。新規のポリアミノアルコールが等モルベースでAMPと置き換わった。ANGUS(アンガス)AEPD VOX1000およびVantex(バンテックス)Tは市販の低臭気低VOCアミンであり、これらは等モルベースでAMPと置き換えて同様に使用された。ベースラインAMP配合は以下の表に記載される通りであった。最初の3種の「グラインド」成分は示された順に一緒にされ、そして10分間高速で攪拌され、次いで残りのグラインド成分が低速で添加された。完全なグラインドは高速で15分間分散させられ、次いでDREWPLUS(ドリュープラス)Y−381脱泡剤の最終添加を除く「レットダウン」成分が添加され、そして高速で10分間分散させられた。最終添加用の脱泡剤が添加され、そして完全な混合物は低速で10分間攪拌された。この配合物のpHは>9であり、その粘度は86−92KUであった。
【0023】
【表1】

1.HEC増粘剤、修飾セルロース、ダウから入手可能
2.分散剤、アクリルコポリマー、ロームアンドハースから入手可能
3.ベンジル−ポリエチレングリコール−t−オクチルフェニルエーテル
4.アニオン性スルホスクシナート界面活性剤
5.脂肪酸エステルアルコール
6.非イオン性ウレタンポリマー、ロームアンドハースから入手可能
【0024】
様々なアミンを用いて製造された配合物のサンプルが試験され、結果は以下の表に示される。各配合物のpHはコーニングモデル430pH計で、セラミックジャンクションプローブを用いて測定される。クレブス単位(KU)粘度はストーマー(Stormer)粘度計でストロボタイマーを用いて(ASTM D562)測定される。混合中に暖まるので、当初の値を除いてサンプル温度は24±1℃である。高剪断(ICI)粘度はASTM D4287に従って、ブルックフィールドCAP1000+粘度計を用い、12,000秒−1のせん断速度で、900rpmで、半径1.511cmの0.45°コーンを用いて、25℃に制御されたサンプル温度で測定される。
【0025】
色および光沢測定は、3ミル湿潤膜ドローダウンバーを用いてレネタフォーム(Leneta Form)3−B不透明チャートに適用された膜上で行われる。60℃で2週間後の熱老化安定性サンプルから、さらなるドローダウンが製造される。パネルは測定の前に少なくとも24時間室温で乾燥させられる。
【0026】
色測定はBYK−ガードナーカラーガイド球体(Gardner Color Guide Sphere)色度計(D65光源/10°オブザーバー)を用いて行われ、これはASTM E1164に従う反射スペクトルを測定する。この色度計はCIEL色システムに従う色パラメータを計算する。黄色度は本明細書においては、b(黄−青スケール)パラメータで報告される。60°光沢はBYK−ガードナーマイクロ−トリ−光沢計を用いて、ASTM D523に従って測定される。
【0027】
湿式スクラブ(wet−scrub)耐性はGardco(ガードコ)−モデルD10洗浄性、摩耗および摩擦試験機を用いて、37サイクル/分の固定速度で、ASTM D2486に従って測定される。ダウラテックスバーの7ミル(180μm)ギャップサイドを用いて、繰り返しの並んだドローダウンが、レネタP−121−10N黒色プラスチックパネル上にドローされる。このパネルは7日間、50%相対湿度、25℃で乾燥させられる。このパネルは並んだ膜のそれぞれの下のシムを用いてスクラブ試験機のステージに固定されて、持ち上げられた試験領域を与える。その試験の各400サイクルの前に、10gの特定の研磨媒体および5mLの水がスクラブブラシの経路に置かれる。持ち上げられた試験表面の幅を横切る完全な塗料除去の連続した線をブラシが摩耗形成したときに、それぞれの塗料膜についての終点が記録される。
【0028】
ブロッキングはASTM D4946に従って、室温および50℃で測定される。不透明チャートに適用された3ミル(76μm)の湿式膜厚さの膜は、試験前に3および7日間、50%相対湿度、25℃で乾燥させられる。各試験のために、コーティングされたパネルを1.5インチ(3.8cm)正方形の3つのペアに切り出した。正方形の各ペアは対面するように配置され、次いで各ペアはNo.8ゴムストッパで覆われる。このゴムストッパ上に1kgの重りが配置される。室温試験は1時間の間行われ、50℃オーブン試験は30分間行われる。各期間の終わりに、重りが取り外され、正方形のペアがゆっくりとした一定の力で分離させられる。接着の量が観察され、0(最も大きな接着)から10(最も少ない接着)の尺度で評価される。
【0029】
アミンpK値は滴定により決定され;アミンVOCはEPA方法24によって決定される。
【0030】
【表2】

1.2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
2.N−ブチル−N,N−ジエタノールアミン
【0031】
二重線と二重線との間に入っているものが本発明の範囲内のアミンであり、他のものは比較である。より小さな配合物粒子サイズは、配合物中での顔料のより良好な分散を示す。
【0032】
【表3】

1.b白色
2.QUVB116時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)を有する化合物:
【化1】

式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である。
【請求項2】
およびRが独立して水素もしくはC−Cアルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、RおよびRが独立して水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C10アルアルキルである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
XがC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−Cアリール、C−C12アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、またはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
とRとが両方とも水素もしくはメチルであり;R、R、RおよびRが独立して水素、もしくはC−Cアルキルであり;並びに、XがC−C10アルキル、C−C20ヘテロアルキル、およびC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
7未満のpHを有するコーティング組成物に、7.5〜9.5の最終pHを生じさせるのに充分な量の下記式(I)
【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である)の化合物を添加することを含む、コーティング組成物におけるpHを調節する方法。
【請求項7】
とRとが両方とも水素もしくはC−Cアルキルであり;並びに、R、R、RおよびRが独立して水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、またはC−C10アルアルキルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
XがC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−Cアリール、C−C12アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、またはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
とRとが両方とも水素もしくはメチルであり;R、R、RおよびRが独立して水素、もしくはC−Cアルキルであり;並びに、XがC−C10アルキル、C−C20ヘテロアルキル、およびC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脂肪族ニトロ基を還元できる還元剤と、式(II)
【化3】

の化合物とを接触させることにより、式(II)の化合物を還元することを含む、
式(I)
【化4】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C10アリール、もしくはC−C20アルアルキルであり;Xは、C−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、C−C10アリール、C−C20アリールアルキル、C−C20ヘテロアルキル、もしくはC10−C20アリールヘテロアルキルからなる群から選択される二官能性基である)の化合物を製造する方法。

【公表番号】特表2013−507386(P2013−507386A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533349(P2012−533349)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/051995
【国際公開番号】WO2011/044472
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【Fターム(参考)】