説明

低VOC塗料における材料およびオリゴマー

塗料組成物は、架橋剤と、架橋剤との反応性がある官能基を有する第1の硬質材料と、架橋剤との反応性がある官能基を有する第2の軟質材料とを含む熱硬化性バインダを含む。第1の硬質材料は、ポリマー、オリゴマーまたは化合物であり、該第1の材料は、少なくとも40℃のガラス転移温度、2000以下の数平均分子量、および架橋剤との反応性がある官能基1当量当たり150〜600グラムの換算質量を有する。第2の軟質材料は、4つ以上の異性体、近異性体および/または相同構造体の非晶質混合物であり、硬化条件下で架橋剤と熱不可逆結合を形成する2〜4つの官能基を有する化合物であり、各官能基は、少なくとも4個の原子によってそれぞれの他の官能基と隔てられている。第1の硬質材料は、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つとの反応性がある官能基1当量当たり約220〜約850グラムの換算質量を有していてもよく、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと単独で反応すると、16以上のツーコン硬度を有する膜を形成することになる材料であってもよく、第2の軟質材料は、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つとの反応性がある官能基1当量当たり220〜2000グラムの換算質量を有していてもよく、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと単独で反応すると、4未満のツーコン硬度を有する膜を形成することになる材料であってもよく、該塗料組成物は、約7〜約12のツーコン硬度を有する硬化膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗料組成物、特に熱硬化性工業用塗料組成物、特に自動車のトップコートのための塗料組成物、塗装方法、および該塗料組成物から製造される塗装品に関する。
【0002】
このセクションは、先行技術であってもなくてもよい、本開示に関連する背景情報を示す。
【0003】
硬化性熱硬化塗料組成物は、塗料の技術分野で広く使用されている。それらは、自動車用塗料および工業用塗料工業においてトップコートとしてしばしば使用されている。当該トップコートは、ベースコート、クリアーコートまたは一塗装トップコートであってよい。カラー+クリアーコート(またはベースコート+クリアーコート)複合塗料は、格別の光沢、色の深み、鮮映性または特別の金属効果が所望されるトップコートとして特に有用である。自動車工業は、自動車の車体パネルおよびバンパー等の外装部品にこれらの塗料を広く利用してきた。
【0004】
しかし、カラー+クリアー複合塗料は、所望の視覚的効果を達成するためにクリアーコートにおける極めて高度な透明性を必要とする。高光沢塗料は、また、高い鮮映性(DOI)等の所望の視覚的効果を達成するために、塗料の表面における低度の視覚的収差を必要とする。最後に、当該複合塗料は、また同時に、耐久性、硬度、柔軟性、ならびに環境腐食、引掻き、擦傷、溶媒および/または酸に対する抵抗性等の仕上げ膜特性の望ましいバランスを提供しなければならない。
【0005】
塗料工業に一般的に必要とされる極めて滑らかな仕上げを得るために、塗料組成物は、硬化前に良好な流動性を示さなければならない。良好な流動性は、塗料組成物が、滑らかな外観を呈するように、それが基材に塗布されてから硬質膜に硬化するまでの何らかの時点で十分に流動する場合に観察される。塗布するとすぐに良好な流動性を示す塗料組成物もあれば、高温での塗布後でなければ良好な流動性を示さない塗料組成物もある。
【0006】
流動特性および良好な流動性を塗料組成物に付与するための1つの方法は、揮発性有機溶媒を組成物に含めることである。これらの溶媒は、塗装方法を通じて所望の流動性および流動をもたらすが、高温の硬化温度に曝されると蒸発して、塗料成分のみが残る。
【0007】
しかし、当該溶媒を使用すると、塗料組成物の揮発性有機物含有量(VOC)が増大する。揮発性有機溶媒は環境に悪影響を及ぼし得るため、多くの政府条例は、使用できる揮発性溶媒の量に制限を課している。塗料組成物の不揮発分の割合(%NV)を増加させ、またはVOCを減少させると、環境問題、大気排出制限および費用に関して競争力のある利点がもたらされる。
【0008】
塗料組成物および当該塗料組成物の成分の揮発性有機物含有量(VOC)を減少させながら先行技術の問題を回避することが継続的に望まれている。これは、最適なレベルの滑らかさおよび外観を維持しながら、問題のない組成物塗布に必要とされる塗料組成物の流動特性を犠牲にすることなく実施されなければならない。最後に、いずれの当該塗料組成物も、耐久性、硬度、柔軟性、ならびに剥離、環境腐食、引掻き、擦傷、溶媒および/または酸に対する抵抗性に関する特性の良好な組合せを有する仕上げ膜を継続的に与えなければならない。
【0009】
より具体的には、重合に関して不活性であるが、高い硬化温度に曝されても揮発しない材料で重合された膜形成成分を含む反応性ポリマー組成物を提供することが望ましい。理想的には、当該材料は、前記膜形成成分を含む熱硬化性塗料組成物の膜形成反応を開始する。該材料を最終的な膜に含めることの所望の効果は、塗料の架橋密度を増大させること、ならびに腐食抵抗性、柔軟性、引掻きおよび擦傷または剥離抵抗性等のプラスの膜属性を付与することである。
【0010】
よって、先行技術のバインダの多くの利点を確保するが、硬化性塗料組成物に対する揮発性有機溶媒の量を小さくしながらも望ましい塗布特性、ならびに特に引掻きおよび擦傷抵抗性に関して商業的に許容可能な外観および性能特性を有する仕上げ膜を与える硬化性塗料組成物に有用な反応性ポリマー組成物を提供するのが有利である。
【0011】
塗料組成物は、1つまたは複数の架橋剤と、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基を有する第1の硬質材料と、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基を有する第2の軟質材料とを含む熱硬化性バインダを含む。第1の硬質材料は、ポリマー、オリゴマーまたは化合物であり、該第1の材料は、少なくとも約40℃のガラス転移温度、2000以下の数平均分子量、および1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基1当量当たり150〜600グラムの換算質量を有する。第1の硬質材料と架橋剤との反応によって形成された架橋結合は、熱可逆的、熱不可逆的またはその両方の組合せであってよい。第2の軟質材料は、少なくとも4つの異性体化合物、近異性体(構造の違いは1つまたは2つの水素の違いを含むことを意味する)である化合物もしくは相同構造体またはこれらの組合せの非晶質混合物であり、その各分子が非対称であってよい。第2の軟質材料の各分子は、2〜4つの官能基を有し、その少なくとも2つが、硬化条件下で架橋剤と熱不可逆結合を形成し、各官能基は、少なくとも4個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられ、それら4個以上の炭素原子に加えて他の種類の原子によって隔てられていてもよい。第2の軟質材料の分子の混合物は、好ましくは、約1.5以下の多分散度を有する。塗料組成物は非水性であってよい。官能基は、硬化条件下で1つまたは複数の架橋剤と反応し、すなわち、その反応は、塗料組成物が熱硬化塗膜に硬化されるときに生じる。
【0012】
塗料組成物は、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある基を(1分子当たりの平均で)1つのみ有する材料等の他の膜形成材料を場合によって含むことができる。
【0013】
オリゴマーは、モノマー単位が比較的少ないポリマーである。一般に、「オリゴマー」は、10個以下のモノマー単位を有するポリマーを指す。「化合物」は、非ポリマー材料を指す。材料のガラス転移温度を例えばフォックス式によって理論的に求めることができ、または示差走査熱分析(DSC)によって測定することができる。特に、材料がオリゴマーまたはポリマーであるときにポリスチレン標準品を使用することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって材料の分子量を測定することができる。「熱不可逆結合」という用語は、その逆転が、自動車用塗料組成物に用いられる従来の硬化スケジュールの下で熱的に支持されない結合を指す。好適な熱不可逆化学結合の実例は、ウレタン、尿素、エステルおよびエーテルである。好適な熱不可逆化学結合は、ウレタン、尿素およびエステルであり、ウレタン結合が最も好適である。当該化学結合は、ヒドロキシル基とアミノプラスト樹脂の反応を介して形成された結合の場合のように、架橋方法を通じて破断・改質しない。特殊な場合に、硬化時の熱不可逆架橋結合の形成を通じてさらなる官能基が形成され得ることを理解されたい。例えば、エポキシド基と酸性水素の反応を通じてヒドロキシル基が形成され得る。熱不可逆架橋結合の形成を通じて形成されたさらなる官能基(例えばヒドロキシル)は、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の1つと反応することもでき、熱可逆または熱不可逆結合を形成することができる。
【0014】
本発明の塗料組成物を、非常にわずかな有機溶媒を用いたスプレー塗装粘度で製造することができる。成分のブレンドの独特の性質により、該組成物は、優れた外観および優れた耐久性の両方を備えた硬化塗料を与える。
【0015】
別の態様において、本発明者らは、架橋剤、ならびに(1)塗料組成物の架橋剤と単独で反応すると16以上のツーコン硬度を有する膜を形成することになる、複数の架橋性基および1当量当たり約220〜約850グラムの換算質量を有する第1の材料;ならびに(2)架橋剤と単独で反応すると4未満のツーコン硬度を有する膜を形成することになる、複数の架橋性基および1当量当たり約200〜約2000グラムの換算質量を有する第2の材料を含む塗料組成物を開示する。第1の材料および第2の材料は、塗料組成物の硬化膜のツーコン硬度が約7〜約12のツーコン硬度を有する量で使用される。ツーコン硬度がより小さいと、許容不可能な汚染物が滞留する。ツーコン硬度がより大きいと、標準的な自動車用塗料試験での剥離抵抗性が低下し、亀裂が生じる。第1および第2の材料の組合せを用いて得られた塗料は、それら2つの材料の特性の平均値を有する単一材料を使用して得られる塗料より優れた特性を有する。
【0016】
本明細書に使用されている不定冠詞(「a」および「an」)は、「少なくとも1つの」項目が存在することを指す。可能であれば、複数の当該項目が存在してもよい。詳細な説明の最後に示される使用実施例以外では、添付の請求項を含む本明細書における(例えば量または条件の)パラメータのすべての数値が、いずれの場合も「約」という用語によって修正されることを理解すべきである。「約」は、値に適用される場合は、計算または測定が、値が幾分不正確であることを見込んでいる(値が正確に近い;ほぼまたは合理的にその値に近い;ほぼ)を指す。「約」によって示される不正確さが、当該技術分野においてこの通常の意味と異なる意味で理解されなければ、本明細書に使用される「約」は、当該パラメータを測定する通常の方法に起因し得る少なくともばらつきを指す。加えて、範囲の開示は、すべての値、および全範囲内のさらに分割された範囲の開示を含む。
【0017】
応用可能なさらなる分野は、本明細書に示される説明から明らかになるであろう。説明および具体的な実施例は、例示のみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0018】
以下の説明は、本質的に例示にすぎず、本開示、応用または使用を限定することを意図するものではない。
【0019】
塗料組成物は、1つまたは複数の架橋剤と、架橋剤(または複数の架橋剤が存在する場合は少なくとも1つの架橋剤)との反応性がある官能基を有する第1の硬質材料と、架橋剤(または複数の架橋剤が存在する場合は少なくとも1つの架橋剤)との反応性がある第2の軟質材料とを含む熱硬化性バインダを含む。第1の硬質材料は、少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約60℃のガラス転移温度、および2000以下の数平均分子量、および1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基1当量当たり約150〜約600,好ましくは約170〜約570グラムの換算質量を有する。含むことができる、架橋剤との反応性がある官能基の好適な例は、限定することなく、カルバメート基、末端尿素基、ヒドロキシル、カルボキシル、環状無水物、エポキシド基、アルコキシシラン基、アミノプラスト官能基、イソシアネート、(ブロックまたは非ブロック)、環状カーボネート、アミン、アルデヒドおよびこれらの組合せ等の活性水素含有官能基である。第1の硬質材料の官能基の反応は、熱可逆的であってもなくてもよい化学結合を生成することができる。好適な官能基(ii)は、ヒドロキシル、一級カルバメート、イソシアネート、アミノプラスト官能基、エポキシ、カルボキシルおよびそれらの混合物である。最も好適な官能基(ii)は、ヒドロキシル、一級カルバメートおよびそれらの混合物である。これらの選択は、熱可逆結合が所望されるか、熱不可逆結合が所望されるかにかかわらず当てはまる。得られる結合が熱可逆的であるか不可逆的であるかを決定づけるのは、膜形成成分(b)または架橋成分(c)における対応する反応可能な官能基の選択であることを当業者なら理解するであろう。
【0020】
アミノプラスト官能基を、活性化アミン基とアルデヒドまたはホルムアルデヒドの反応から生成される官能基と定義することができる。例示的な活性化アミン基は、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン、アミドおよびカルバメート等である。得られた反応生成物を第1の硬質材料の官能基としてそのまま使用することができ、または第1の硬質材料の官能基として使用する前にアルコールでエーテル化することができる。Balwantの米国特許第5,665,852号に記載されているように、アミノプラストを、例えばアミドとの反応によって、さらに変性してその基本的特性のいくつかを変化させて、粉末塗料に使用するために、得られた材料のTgを上昇させることができる。
【0021】
第1の硬質材料の官能基としての使用に好適なアミン基は、一級または二級アミンであってよいが、一級アミンが最も好適である。
【0022】
一部の実施形態において、第1の硬質材料はオリゴマーまたはポリマーである。一実施形態において、第1の硬質材料はアクリルポリマーを含む。アクリルポリマーは、数平均分子量が、(ポリスチレン標準品を使用して)GPCによって測定した場合に約2000以下、好ましくは約1500以下であり、理論ガラス転移温度がフォックス式から求めた場合に少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約60℃である。アクリルポリマーは、1当量当たり約150〜約600グラムの換算質量を有する。
【0023】
アクリルポリマーは、架橋剤、または塗料組成物が複数の架橋剤を含む場合は少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基を含む。本発明の1つの好適な実施形態において、第1の硬質材料は、カルバメート基を含むアクリルポリマーである。カルバメート官能性モノマーを使用して重合することによって、または形成されたポリマー上の官能基をさらなる反応で反応させてその位置にカルバメート基を生成することによって、カルバメート基をポリマーに導入することができる。アクリルポリマー(b)上の官能基がイソシアネート基である場合は、イソシアネート基をヒドロキシアルキルカルバメート、またはエポキシ基が後にCO2、次いでアンモニアとの反応によってカルバメートに変換されるヒドロキシ含有エポキシドと反応させることができる。好ましくは、イソシアネート官能性アクリルポリマーをヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、ヒドロキシブチルカルバメートまたはそれらの混合物と反応させる。官能基がヒドロキシルである場合は、カルバメート含有化合物上の反応性基は、アルキルカルバメート上のカルバメート基のC(=O)−O部、またはメチロールアクリルアミド(HO−CH2−NH−C(=O)−CH=CH2)等とのメチロールの酸素であってよい。アルキルカルバメート上のC(=O)−O基の場合は、ポリマー上のヒドロキシル基がC(=O)−O基とエステル交換することで、カルバメート基をポリマーに付加させる。メチロールアクリルアミドの場合は、次いで不飽和二重結合が過酸化物と反応してエポキシ基、次いでCO2に変換して、環状カーボネートを形成し、次いでアンモニアまたは一級アミンと反応してカルバメートを形成する。ポリマー上の官能基がカルボキシル基の場合は、カルボキシル基をエピクロロヒドリンと反応させてモノグリシジルエステルを形成し、それをCO2、次いでアンモニアと反応させることによってカルバメートに変換することができる。
【0024】
ポリマーと、カルバメートに変換することができる基を有する化合物とを反応させ、次いでその基をカルバメートに変換することによってカルバメート官能基をアクリルポリマーに導入することもできる。カルバメートに変換することができる基を有する好適な化合物の例としては、限定することなく、アンモニアとの反応によってカルバメートに変換可能である活性水素含有環状カルバメート化合物(例えば、グリシドールとCO2の反応生成物)、CO2、次いでアンモニアとの反応によってカルバメートに変換可能なモノグリシジルエーテルおよびエステル、アルコール基がイソシアネート官能基との反応性を有し、二重結合を過酸化物との反応によってカルバメートに変換することができるアリルアルコール、およびエステル基がイソシアネート官能基との反応性を有し、ビニル基を過酸化物、次いでCO2、次いでアンモニアとの反応によってカルバメートに変換することができるビニルエステルが挙げられる。ポリマーとの反応前に基をカルバメートに変換することによってカルバメートに変換可能な基でなく、カルバメート基を含む化合物として上記化合物のいずれも使用することができる。
【0025】
遊離ラジカル重合することが可能な少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーから当該ポリマーを製造することができる。例示的なエチレン性不飽和モノマーとしては、限定することなく、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸等の、3〜5個の炭素原子を含むα、β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、ならびにそれらの酸のエステル、ニトリルおよびアミド;4〜6個の炭素原子を含むα、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、ならびにそれらの酸の無水物、モノエステルおよびジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトンおよび芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物が挙げられる。カルバメート官能性エチレン性不飽和モノマー、環状カーボネート官能性エチレン性不飽和モノマーおよび/またはイソシアネート官能性エチレン性不飽和モノマーを最も好ましくは他のエチレン性不飽和モノマーと組み合わせて使用することもできる。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸の好適なエステルの代表例としては、限定することなく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ステアリル、スルホエチルおよびイソボルニルアクリレート、メタクリレートおよびクロとネート;ならびにポリアルキレングリコールアクリレートおよびメタクリレート等の、1〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪族および脂環式アルコールとの反応によるエステルが挙げられる。官能基をアクリルモノマーのエステル部に組み込むことができる。例えば、当該ポリマーを形成するのに使用できるヒドロキシ官能性アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられ;アミノ官能性アクリルモノマーとしては、t−ブチルアミノエチルメタクリレートおよびt−ブチルアミノ−エチルアクリレートが挙げられ;酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が挙げられ;エポキシド官能性モノマーとしては、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート;(TMI(登録商標)としてAmerican Cyanamidが販売する)メタイソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートおよびイソシアナトエチルメタクリレート等のエチレン性不飽和イソシアネートモノマーが挙げられる。環状カーボネートエチレン性不飽和モノマーは、当該技術分野で周知であり、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレートを含む。他のエチレン性不飽和重合性モノマーの代表例としては、限定することなく、フマル酸、マレイン酸およびイタコン酸無水物、モノエステル、ならびにメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールおよびtert−ブタノール等のアルコールとのジエステル等の化合物が挙げられる。重合性ビニルモノマーの代表例としては、限定することなく、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル、ハロゲン化ビニルおよびビニリデン、ならびにビニルエチルケトン等の化合物が挙げられる。芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物の代表例としては、限定することなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレンおよび2−ビニルピロリドン等の化合物が挙げられる。代表例としては、アクリル酸およびメタクリル酸アミド、ならびにアミノアルキルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。
【0026】
官能性モノマーおよび化合物は、少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約60℃のガラス転移温度、および1当量当たり約150〜約600グラムの換算質量を与えるように選択・配分される。重合条件(例えば、開始剤の種類および濃度、連鎖移動剤、モノマー濃度、反応温度等)は、約2000以下の数平均分子量、および約4000以下、好ましくは約3000以下の質量平均分子量を与えるように選択される。
【0027】
カルバメート官能性アクリルポリマーを製造するための1つの方法は、モノマーのエステル部にカルバメート官能基を有するアクリルモノマーを製造することである。当該モノマーは、当該技術分野で周知であり、例えば、その開示内容が参考として本明細書で援用される米国特許第3,479,328号、同第3,674,838号、同第4,126,747号、同第4,279,833号および同第4,340,497号、同第5,356,669号、ならびにWO94/10211に記載されている。1つの合成方法は、ヒドロキシ官能性モノマーと(尿素の熱分解によって形成することができる)シアン酸とを反応させてカルバミルオキシカルボキシレート(すなわちカルバメート変性(メタ)アクリレート)を形成することを含む。別の合成方法は、α、β−不飽和酸エステルとヒドロキシカルバメートエステルとを反応させてカルバミルオキシカルボキシレートを形成する。さらに別の技術は、一級または二級アミンまたはジアミンとエチレンカーボネート等の環状カーボネートとを反応させることによってヒドロキシアルキルカルバメートを形成することを含む。次いで、ヒドロキシアルキルカルバメート上のヒドロキシ基をアクリル酸またはメタクリル酸との反応によってエステル化してモノマーを形成する。カルバメート変性アクリルモノマーを製造する他の方法は、当該技術分野で記載されており、同様に利用され得る。次いで、アクリルモノマーを、望まれる場合は、当該技術分野で周知の技術によって他のエチレン性不飽和モノマーとともに重合することができる。
【0028】
カルバメート官能性ポリマーを製造するための他の代替的な方法は、その開示内容が参考として本明細書で援用される米国特許第4,758,632号に記載されているように、アクリルポリマー等の既に形成されたポリマーを別の成分と反応させてポリマー骨格に付加されるカルバメート官能基を形成することである。第2の成分として有用なアクリルポリマーを製造するための1つの技術は、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーの存在下で尿素を熱分解して(アンモニアおよびHNCOを生じさせて)カルバメート官能性アクリルポリマーを形成することを含む。別の技術は、ヒドロキシアルキルカルバメートのヒドロキシル基をイソシアネート官能性アクリルまたはビニルモノマーのイソシアネート基と反応させて、カルバメート官能性アクリルを形成することを含む。イソシアネート官能性アクリルは、当該技術分野で既知であり、例えば、その開示内容が参考として本明細書で援用される米国特許第4,301,257号に記載されている。イソシアネートビニルモノマーは、当該技術分野で周知であり、不飽和m−テトラメチルキシレンイソシアネートおよびイソシアナトエチルメタクリレートを含む。さらに別の技術は、カルバメート官能性アクリルを形成するために、環状カーボネート官能性アクリル上の環状カーボネート基をアンモニアと反応させることである。環状カーボネート官能性アクリルポリマーは、当該技術分野で既知であり、例えば、その開示内容が参考として本明細書で援用される米国特許第2,979,514号に記載されている。別の技術は、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーをアルキルカルバメートでカルバミル交換することである。該ポリマーを製造するより困難であるが、実行可能な方法は、アクリレートポリマーをヒドロキシアルキルカルバメートでエステル交換することである。
【0029】
ヒドロキシ官能性アクリルを、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレートは、化合物がアクリレートまたはメタクリレートであり得ることを示すために使用されている)等のヒドロキシル官能性付加重合モノマーとの共重合によって製造することができる。変性アクリルを使用することもできる。当該アクリルは、当該技術分野で周知であるポリエステル変性アクリルまたはポリウレタン変性アクリルであってよい。ε−カプロラクトンで変性されたポリエステル変性アクリルは、その開示内容が参考として本明細書で援用されるEtzellらの米国特許第4,546,046号に記載されている。ポリウレタン変性アクリルも当該技術分野で周知である。それらは、例えば、その開示内容が参考として本明細書で援用される米国特許第4,584,354号に記載されている。好ましくは、当該変性アクリルもカルバメート官能基を有することになる。
【0030】
アクリルポリマーは、グリシジル(メタ)アクリレートの重合によるエポキシド基、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸および無水コハク酸の重合によるカルボキシル基、(Cytecが販売する)TMI等のイソシアネート官能性モノマーもしくはイソシアナトエチル(メタ)アクリレートの重合によるイソシアネート基、またはトリアルキオキシプロピルシリルメタクリレート等のモノマーの重合によるアルコキシシラン基を含むことができる。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと環状無水物との反応によって、重合の前または後に官能基をモノマーに導入することもできる。
【0031】
該官能基を有するモノマーを1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーと共重合することができる。共重合のための当該モノマーは、当該技術分野で既知である。それらは、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレートおよびイソデシルメタクリレート等;ならびに不飽和m−テトラメチルキシレンイソシアネート、スチレンおよびビニルトルエン等のビニルモノマーを含む。
【0032】
第2の実施形態において、第1の硬質材料は、構造
【化1】

[式中、
各R1、R2およびR3は、独立して、カルバメート基、およびカルバメート基に対する炭素βまたはγ上のヒドロキシル基を含む]を有するβ−ヒドロキシカルバメートまたはγ−ヒドロキシカルバメート化合物を含む。当該基は、環状カーボネートとアンモニアとの反応によって形成され、環状カーボネートは、5または6員環である。一実施形態において、R1、R2およびR3の各々は、独立して、
【化2】

である。別の実施形態において、R1、R2およびR3の各々は、独立して、
【化3】

[式中、
各Rは、独立して、H、または1〜6個の炭素原子を含み、酸素、窒素、シラン、ホウ素、リンおよびそれらの組合せのヘテロ原子結合基をさらに有してよいアルキル基であり、nは1〜4の整数である]である。本発明の一部の実施形態において、アルキル基であるR基の数は、0、1または2であり、nは1である。
【0033】
1つの合成において、トリグリシジルイソシアヌレートを最初に二酸化炭素と反応させてオキシラン基を環状カーボネート基に変換し、次いでアンモニアまたは一級アミンと反応させて環状カーボネート基をβ−ヒドロキシカルバメート基に変換することによって第1の硬質材料を製造することができる。トリグリシジルイソシアヌレートを最初に二酸化炭素と反応させてオキシラン基を環状カーボネート基に変換し、次いでアンモニアと反応させて環状カーボネート基をβ−ヒドロキシカルバメート基に変換することによってβ−ヒドロキシカルバメート化合物を製造することができる。トリグリシジルイソシアヌレートは、市販されており、イソシアヌル酸とエピハロヒドリン、特にエピクロロヒドリンとの反応によって製造され得る。トリグリシジルイソシアヌレートの反応を大気圧から超臨界CO2圧力までの任意の圧力で実施することができるが、は高圧(例えば60〜150psi)下が好ましい。この反応の温度は、好ましくは60〜150℃である。有用な触媒としては、三級アミンまたは四級塩(例えば、臭化テトラメチルアンモニウム)、複合有機スズハロゲン化物とアルキルホスホニウムハロゲン化物の組合せ(例えば、(CH33SnI、Bu4SnI、Bu4PIおよび(CH34PI)、好ましくはクラウンエーテルと組み合わせたカリウム塩(例えば、K2CO3、KI)、オクタン酸スズおよびオクタン酸カルシウム等の、オキシラン環を活性化させる触媒が挙げられる。別の合成において、第1の硬質材料を、米国特許第6,812,300号、同第6,858,674号、同第6,900,270号、同第6,977,309号および同第5,532,061号に記載されているようにγ−ヒドロキシカルバメート基を用いて製造することができる。
【0034】
環状カーボネート基を、環状カーボネートを開環させてβ−ヒドロキシカルバメートを形成するアンモニアとの反応によってカルバメート基に変換することができる。アンモニアは、無水アンモニアまたはアンモニア水(NH4OH)であってよい。カーボネート環は開環して、R1、R2およびR3基について以上に示した2つの異性体構造のいずれかを生成することができる。
【0035】
第3の実施形態において、第1の硬質材料は、やはり構造
【化4】

[ただし、式中、
1、R2およびR3は、独立して、
【化5】

であり、R4は、アルキレン(シクロアルキレンを含む)、アルキルアリーレン、アリーレン、好ましくはアルキレンであり、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはH、または1〜4個の炭素原子のアルキルである]を有するカルバメート官能性化合物を含む。本実施形態において、トリグリシジルイソシアヌレートと、1つのカルボキシル基および1つのカルバメート基を含む化合物とを反応させることによって第1の硬質材料を製造することができる。1つのカルボキシル基および1つのカルバメート基を含む化合物の非限定的な例としては、環状無水物とヒドロキシアルキルカルバメート化合物との反応生成物が挙げられる。好適な環状無水物の非限定的な例としては、無水マレイン酸、1,2−シクロヘキサン無水物、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、これらの無水物のアルキル置換バージョンが挙げられ、アルキル基の非限定的な例は、1〜12個の炭素原子を含む基であり、アルキル基は、ヘテロ原子結合基を含んでいてもよく、当該ヘテロ原子の非限定的な例は、酸素、窒素、シラン、リン、およびこれらの組合せを含む基であり、アルキル側基は、エチレン性不飽和を含むことができる。
【0036】
第4の実施形態において、第1の硬化材料は、少なくとも2つのウレタンまたは尿素基を有するカルバメート官能性化合物を含む。第1の硬質材料のこの種の好適な化合物を、構造
【化6】

[Rは、Hまたはアルキル、好ましくはH、または1〜4個の炭素原子のアルキルであり、R’およびR’’は、それぞれ独立して、Hまたはアルキルであり、あるいはR’およびR’’は、一緒になって複素環式環構造を形成し、好ましくはR’およびR’’は、それぞれ独立して、Hまたは1〜4個の炭素原子のアルキルであり、あるいはR’およびR’’は、一緒になってエチレン架橋を形成し;
1は、アルキレンまたはアリールアルキレン、好ましくはアルキレン、好ましくは5〜10個の炭素原子のアルキレンであり;
2は、好ましくは約2〜約4個の炭素原子を有するアルキレンまたは置換アルキレンであり;
3は、アルキレン(シクロアルキレンを含む)アルキルアリーレン、アリーレン、またはシアヌル環、ウレタン基、尿素基、カルボジイミド基、ビウレット構造もしくはアロホネート基を含む構造、好ましくはアルキレン(シクロアルキレンを含む)、またはシアヌル環を含む構造であり;
nは、0〜約10の整数、好ましくは0〜約5の整数であり;
mは、2〜約6の整数、好ましくは2または3であり;
Lは、O、NHまたはNR4であり、R4は、アルキル、好ましくは1〜約6個の炭素原子のアルキルであり;
pは、1〜5の整数、好ましくは1または2であり、m+pは、2〜6の整数、好ましくは3である]で表すことができる。好ましくは、R、R’およびR’’は、それぞれHであり、R3は、アルキレン(シクロアルキレンを含む)、アルキルアリーレン、アリーレン、またはシアヌル環を含む構造である。一部の実施形態において、R3は、(m+pが2である)ヘキサメチレン、
【化7】

およびこれらの混合物の群から選択される構成要素である。Lは、好ましくは酸素原子である。
【0037】
少なくとも1つのポリイソシアネートと、カルバメートもしくは末端尿素基を有する化合物、または少なくとも1つのポリイソシアネートとの反応後にカルバメートもしくは末端尿素基に変換される基とを反応させることによって、第1の硬質材料のこの実施形態を製造することができる。
【0038】
第1の硬質材料のこの実施形態は、好ましくは、カルバメートもしくは末端尿素基、より好ましくはカルバメート基を有し、またはカルバメートもしくは末端尿素基に変換できる基を有してよい。第1の硬質材料が、カルバメートまたは末端尿素基に変換できる基を有する場合は、カルバメートまたは末端尿素基への変換は、ポリイソシアネートを含む反応と同時に、またはその後に実施される。カルバメートに変換できる基としては、環状カーボネート基、エポキシ基および不飽和結合が挙げられる。環状カーボネート基を、環状カーボネートを開環させてβ−ヒドロキシカルバメートを形成するアンモニアまたは一級アミンとの反応によってカルバメート基に変換することができる。エポキシ基を、最初に、CO2との反応により環状カーボネート基に変換することによってカルバメート基に変換することができる。これを大気圧から超臨界CO2圧力までの任意の圧力で実施することができるが、は高圧(例えば60〜150psi)下が好ましい。この反応の温度は、好ましくは60〜150℃である。有用な触媒としては、三級アミンまたは四級塩(例えば、臭化テトラメチルアンモニウム)、複合有機スズハロゲン化物とアルキルホスホニウムハロゲン化物の組合せ(例えば、(CH33SnI、Bu4SnI、Bu4PIおよび(CH34PI)、好ましくはクラウンエーテルと組み合わせたカリウム塩(例えば、K2CO3、KI)、オクタン酸スズおよびオクタン酸カルシウム等の、オキシラン環を活性化させる触媒が挙げられる。次いで、環状カーボネート基を上記のようにカルバメート基に変換することができる。最初に過酸化物と反応させてエポキシ基に変換し、次いでCO2と反応させて環状カーボネートを形成し、次いでアンモニアまたは一級アミンと反応させてカルバメートを形成することによって、不飽和結合をカルバメート基に変換することができる。
【0039】
ヒドロキシル基またはイソシアネート基等の他の基をカルバメート基に変換することもできる。しかし、ヒドロキシル基が化合物上に存在することになり、それらの基をポリイソシアネートとの反応後にカルバメートに変換することが所望される場合、それらは、初期反応等を通じて化学量論過剰で反応しないために、一部が、カルバメートもしくは末端尿素基への後の変換のために未反応を維持することが期待されるように、ブロックまたは保護されなければならない。カルバメートまたは尿素への変換をポリイソシアネートとの反応前に実施することも可能である。ヒドロキシル基を、二級カルバメート基(すなわち、Rがアルキルである上記構造のカルバメート)を形成するためのモノイソシアネート(例えばメチルイソシアネート)との反応、または一級カルバメート基(すなわち上記カルバメート基の式におけるRがHである)を形成するためのシアン酸(尿素の熱分解によってin situ形成できる)との反応によってカルバメート基に変換することができる。この反応は、好ましくは、当該技術分野で既知である触媒の存在下で生じる。ヒドロキシル基をホスゲン、次いでアンモニアと反応させて一級カルバメート基を形成するか、またはヒドロキシルとホスゲン、次いで一級アミンとを反応させて、二級カルバメート基を有する化合物を形成することもできる。別の手法は、イソシアネートをヒドロキシアルキルカルバメート等の化合物と反応させてカルバメートキャップイソシアネート誘導体を形成することである。例えば、トルエンジイソシアネート上の1つのイソシアネート基をヒドロキシプロピルカルバメートと反応させた後に、他のイソシアネート基と過剰のポリオールとを反応させてヒドロキシカルバメートを形成することができる。最後に、ヒドロキシル基をアルキルカルバメート(例えば、メチルカルバメート、エチルカルバメート、ブチルカルバメート)と反応させて一級カルバメート基含有化合物を形成するエステル交換手法によってカルバメートを製造することができる。この反応は、好ましくは有機金属触媒(ジブチルスズジラウレート)等の触媒の存在下で高温にて実施される。カルバメートを製造するための他の技術も当該技術分野で既知であり、例えば、P.Adams&F.Baron,"Esters of Carbamic Acid",Chemical Review,v.65,1965に記載されている。
【0040】
オキサゾリドン等の基を末端尿素基に変換することもできる。例えば、ヒドロキシエチルオキサゾリドンを使用してポリイソシアネートと反応させた後、アンモニアまたは一級アミンとオキサゾリドンを反応させて末端尿素官能基を生成することができる。
【0041】
カルバメートもしくは末端尿素基、またはカルバメートもしくは末端尿素基に変換できる基に加えて、該化合物は、また、イソシアネート官能基との反応性がある基を有する。イソシアネート官能基との反応性がある好適な基としては、限定することなく、ヒドロキシル基、一級アミン基および第2のアミン基が挙げられる。好ましくは、ポリイソシアネートと反応する化合物は、イソシアネート官能基との反応性がある基としてヒドロキシル基または一級アミン基、より好ましくはヒドロキシル基を有する。該化合物は、イソシアネート官能基との反応性がある少なくとも1つの基を有し、好ましくは、1〜約3つの当該基を有し、より好ましくは1つの当該反応性基を有する。好適な実施形態において、該化合物は、カルバメート基およびヒドロキシル基を有する。当該化合物の1つの好適な例は、ヒドロキシアルキルカルバメート、特にβ−ヒドロキシアルキルカルバメートである。別の好適な実施形態において、ポリイソシアネートと反応する化合物は、末端尿素基およびヒドロキシル基を有する。
【0042】
ポリイソシアネートとの反応性がある好適な化合物には、限定することなく、カルバメートまたは末端尿素基およびヒドロキシルまたは一級もしくは二級アミン基を有する化合物のいずれも含まれる。この種の好適な化合物の実例としては、限定することなく、ヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメートおよびヒドロキシエチレンエチル尿素等のヒドロキシアルキルカルバメートおよびヒドロキシアルキレンアルキル尿素が挙げられる。例えば、ヒドロキシプロピルカルバメートおよびヒドロキシエチルエチレン尿素は、周知であり、市販されている。アミノカルバメートは、米国特許第2,842,523号に記載されている。アミノアルコールのアミン基を塩酸、次いで尿素と反応させてヒドロキシ末端尿素化合物を形成することによって、ヒドロキシルおよび末端尿素基を有する化合物を製造することもできる。例えばオキサゾリドンをアンモニアと反応させることによって、アミノアルコールを製造することができる。例えば、ケトンを、(例えば立体阻害によって)反応から保護された1つのアミン基を有するジアミンと反応させた後、(例えば、尿素の熱分解によって生成された)HNCOと反応させ、最後に水と反応させることによってアミノ末端尿素化合物を製造することができる。あるいは、それらの基が以下に記載されているカルバメートまたは末端尿素に変換することができる基を有する化合物から出発して、ポリイソシアネートとの反応の開始前にその基をカルバメートまたは尿素に変換することによってこれらの化合物を製造することができる。
【0043】
ポリイソシアネートと反応させる他の好適な化合物としては、ポリイソシアネートとの反応性がある基、およびヒドロキシアルキル環状カーボネート等の、カルバメートに変換することができる基を有する化合物が挙げられる。3−ヒドロキシプロピルカーボネート(すなわちグリセリンカーボネート)のような特定のヒドロキシアルキル環状カーボネートが市販されている。環状カーボネート化合物をいくつかの異なる手法のいずれかによって合成することができる。1つの手法は、上記の条件下で上記の触媒を用いてエポキシ基含有化合物をCO2と反応させることを含む。エポキシドを当該触媒の存在下でβ−ブチロラクトンと反応させることもできる。別の手法において、グリセリンのようなグリコールを少なくとも80℃の温度にて触媒(例えば炭酸カリウム)の存在下でジエチルカーボネートと反応させて、ヒドロキシアルキルカーボネートを形成する。あるいは、構造:
【化8】

を有する1,2−ジオールのケタールを含む官能性化合物を、好ましくは微量の酸を含む水で開環させて1,2−グリコールを形成し、次いでグリコールをジエチルカーボネートとさらに反応させて環状カーボネートを形成する。
【0044】
環状カーボネートは、典型的には、当該技術分野で既知である5または6員環を有する。5員環は、その合成が容易で、商業的に入手可能な程度がより高いため好適である。環状カーボネートの形成について当該技術分野で既知の条件下でホスゲンを1,3−プロパンジオールと反応させることによって6員環を合成することができる。6員環式カーボネートの開環により形成されるヒドロキシカルバメート基は、5員環の開環によるものより安定しているが、5員環の方が入手が容易で安価である。本発明を実施する上で使用される好適なヒドロキシアルキル環状カーボネートを式:
【化9】

[R(またはnが1より大きい場合はRの各実例)は、直鎖状または分枝状であってよく、ヒドロキシル基の他に置換基を有してよい1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子のヒドロキシアルキル基であり、mは1、2または3、好ましくは1または2であり、nは1または2であり、ブロックアミンまたは不飽和基等の1つ以上の他の置換基で置換されていてよい]で表すことができる。ヒドロキシ基は、一級、二級または三級炭素上にあってよい。より好ましくは、Rは、−−(CH2p−−OHであり、ヒドロキシルは、一級または二級炭素上にあってよく、pは1〜8であり、さらにより好ましくは、ヒドロキシルは、一級炭素上にあり、pは1または2である。
【0045】
ポリイソシアネート化合物の好適な例としては、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートの両方が挙げられる。有用なポリイソシアネートとしては、モノマーイソシアネート、例えば、エチレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネートまたはHDIもしくはHMDI)、1,4−ブチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メタ−キシリレンジイソシアネートおよびパラ−キシリレンジイソシアネートの様々な異性体、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロ−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネートおよび1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートおよびアリール脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。加えて、α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートの様々な異性体を使用することができる。イソシアネート官能性オリゴマー、または2〜約6つのイソシアネート基を有してよいモノマーイソシアネートの低分子量反応生成物を使用することもできる。これらの例としては、イソシアヌレート、および3モルのジイソシアネートと1モルのトリオール(例えば、3モルのIPDIと1モルのトリメチロールプロパンまたは2モルのIPDIと1モルのネオペンチルグリコール)との反応生成物等の過剰イソシアネートとポリオールとの反応生成物;イソシアネートと尿素との反応生成物(ビウレット);ならびにイソシアネートとウレタンとの反応生成物(アロファネート)が挙げられる。ポリイソシアネートは、好ましくは、2〜4つのイソシアネート基を有し、より好ましくは、ポリイソシアネートは、1分子当たり2つまたは3つのイソシアネート基を有する。イソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート等のイソシアヌレートが特に好適である。1つの好適な実施形態において、ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、またはこれらの組合せである。別の好適な実施形態において、ポリイソシアネートは、ジイソシアネートとポリオールとのイソシアネート官能性モノマーまたはオリゴマー、好ましくはモノマー反応生成物である。当該反応生成物を、ポリオール1当量当たり1モルのジイソシアネートを反応させることによって製造することができる。このエンドキャップは、好ましくは、ポリオールのヒドロキシル1当量に対してジイソシアネートの少なくとも2当量のイソシアネートを反応させることによって達成される。ジイソシアネートは、好ましくは、イソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートである。ポリオールは、好ましくは、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールまたはこれらの組合せである。
【0046】
この第4の実施形態の1つの好適な例において、第1の硬質材料は、米国特許第5,512,639号に記載されているように、イソシアネート(好ましくはジイソシアネート、例えば、HDI、IPDI、または前のパラグラフに記載されているイソシアネート官能性エンドキャップポリオール)と、ヒドロキシプロピルカルバメート等の化合物との混合物を反応させて、カルバメートキャップポリイソシアネート誘導体を形成することを含む工程によって製造される。
【0047】
第1の硬質材料のこの第4の実施形態のさらなる例において、反応混合物は、ポリイソシアネートおよびポリイソシアネートと反応性がある化合物の他に、活性水素連鎖延長剤を含む。連鎖延長剤を使用して、少なくとも1つのカルバメート基または末端尿素基を有し、少なくとも2つのウレタンまたは尿素結合基を有する化合物の長さを増大させ、または2つ以上の当該化合物を架橋させることができる。有用な活性水素含有連鎖延長剤は、一般には、少なくとも2つ、好ましくは約2つの活性水素基、例えば、ジオール、ジチオール、ジアミン、またはアルカノールアミン、アミノアルキルメルカプタンおよびヒドロキシアルキルメルカプタン等のヒドロキシル、チオールおよびアミン基の混合物を有する化合物を含む。本発明のこの態様の目的では、一級アミン基および二級アミン基はいずれも1つの活性水素を有すると考えられる。活性水素含有連鎖延長剤は、水をも含む。好適な実施形態において、ポリオールが連鎖延長剤として使用される。特に好適な実施形態において、分枝を最小にするようにポリオールがほとんどないか、多くないジオールが連鎖延長剤として使用される。好適な連鎖延長剤の例としては、限定することなく、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート(Eastman Chemical CoがEsterdiol 204として販売)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール(Eastman Chemical CoがCHDMとして販売)、エチルプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、1,3−ジヒドロキシアセトン二量体、2−ブテン−1,4−ジオール、パントテノール、ジメチルタルトレート、ペンタエチレングリコール、ジメチルシリルジプロパノールおよび2,2’−チオジエタノールが挙げられる。少なくとも3つのヒドロキシル基を含むポリヒドロキシ化合物を連鎖延長剤として使用することができるが、これらの化合物を使用すると、より高分子量のより高度に分枝した化合物を製造することができる。より高官能性のポリヒドロキシ化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリスリトール等の化合物が挙げられる。特に好適な実施形態において、モノマーイソシアネートは、ジイソシアネート、特にイソホロンまたはヘキサメチレンジイソシアネートであり、1分子当たり平均で1つのイソシアネート基が、イソシアネートとの反応性を有する基、およびカルバメート基、またはカルバメート基に変換することができる基を含む化合物、好ましくはヒドロキシプロピルカルバメートと反応し、残りのイソシアネート基は、ポリオール、特に2−エチル−1,6−ヘキサンジオールと反応する。ポリイソシアネートと、カルバメートまたは尿素基を与える化合物、および連鎖延長化合物との反応を、同時を含む任意の順序で実施することができる。反応生成物の混合物を想定することができるが、イソシアネート基の各々は、ほぼ同じ反応性を有し、少なくとも一部は、ポリイソシアネートの分子が、カルバメートまたは尿素基を与える化合物および連鎖延長化合物の両方と反応した理想的生成物であるべきである。
【0048】
本実施形態の化合物の別の合成方法は、最初にポリイソシアネートのイソシアネート基と、イソシアネートおよび非イソシアネート官能基と反応性がある基を有する化合物とを反応させることである。次いで、この付加物と、少なくとも1つのカルバメート基、またはカルバメートに変換できる基、および非イソシアネート官能基との反応性がある少なくとも1つの基を含む化合物とを反応させる。非イソシアネート官能基の例としては、カルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、アミノが挙げられる。当該基をカルバメートまたは尿素基に変換するための方法の好適な例は既に以上に詳細に記載されている。
【0049】
第5の実施形態において、第1の硬質材料は、
【化10】

[式中、
1、R2およびR3の各々は、独立して、CH2CH2LR4Fであり、Lは、ウレタンまたはエステル基であり、R4は、アルキレン(シクロアルキレンを含む)、アルキルアリーレン、アリーレン、好ましくはアルキレンであり、Fは、架橋剤、または塗料組成物が複数の架橋剤を含む場合は少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基を含むアルキル基である]の構造を有する化合物を含む。
【0050】
トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートと、架橋剤との反応性がある官能基を有するイソシアネート官能性材料とを反応させることによって、この第5の実施形態の硬質材料を製造することができる。一例において、ジイソシアネートをトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートと、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート1モルに対してジイソシアネート3モルのモル比で半ブロックさせて、イソシアネート官能性の第1の硬質材料を得る。ジイソシアネートは、好ましくは、イソシアネート基が、オリゴマー化を最小限に抑えるように異なる反応性を有するものである。このイソシアネート官能性生成物と、ヒドロキシエチルカルバメート、β−ヒドロキシプロピルカルバメートまたはγ−ヒドロキシプロピルカルバメート等のヒドロキシアルキルカルバメートとを反応させることによって、カルバメート官能性材料を得ることができる。このイソシアネート官能性生成物とジメチルアミノエタノール等のアミノアルコールとを反応させることによってヒドロキシ官能性材料を得ることができる。
【0051】
あるいは、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートと環状無水物とを反応させてカルボキシル官能性材料を生成することによって、この第5の実施形態の硬質材料を製造することができる。カルボキシル官能性材料を、ポリエポキシド架橋剤等の、カルボキシル基との反応性がある基を有する架橋剤とともに使用することができ、または異なる官能基を与えるように誘導体化することができる。
【0052】
この代替、すなわち第5の実施形態の硬質材料の例において、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートを無水マレイン酸、無水マロン酸、無水コハク酸および無水フタル酸等の環状無水物と反応させて、カルボキシル官能性材料を生成する。ヒドロキシル官能基をカルボキシル基の還元によって得ることができる。カルバメート官能基を、カルボキシル官能基をヒドロキシエチルカルバメートまたはヒドロキシプロピルカルバメート等のヒドロキシアルキルカルバメートでエステル化することによって得ることができる。酸官能性生成物を反応させてアミドを形成した後、ニトリルに変換し、続いてアミンに還元することによって、第5の実施形態のアミン官能性硬質材料を得ることができる。イソシアネート官能基を、アミン官能性軟質材料と二酸化炭素との反応を介して得ることができる。アミノプラスト官能基を、カルバメートまたは上記のアミド官能性材料とホルムアルデヒドまたはアルデヒドとの反応を介して形成することができる。得られた反応生成物をメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノール等の低沸点アルコール場合によってエステル化することができる。尿素官能基を、アミン官能性材料と尿素との反応を介して形成することができる。あるいは、第5の実施形態のアミン官能性硬質材料をホスゲンと反応させた後、アンモニアと反応させて所望の尿素官能基を生成することができる。エポキシ官能基を酸またはヒドロキシル官能性材料から、エピクロロヒドリンとの反応によって得ることができる。環状カーボネート官能基を、エポキシ官能基への二酸化炭素の挿入を介して形成することができる。
【0053】
第1の硬質材料の他に、塗料組成物は、架橋剤、または塗料組成物が複数の架橋剤を有する場合は少なくとも1つの架橋剤との反応性がある官能基を有する第2の軟質材料を含む。塗料組成物の第2の軟質材料は、4つ以上の異性体、近異性体、相同構造体またはこれらの組合せの非晶質混合物であり、その少なくとも2つが硬化条件下で塗料組成物における架橋剤と熱不可逆結合を形成する2〜4つの官能基を有する化合物である。各官能基は、少なくとも4つの炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられる。第2の軟質材料のいくつかの例において、各官能基は、少なくとも6つの炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられ、他の例において、核官能基は、少なくとも10個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられる。いくつかの実施形態において、炭素原子以外の原子も官能基を隔てることができる。
【0054】
第2の軟質材料は非晶質混合物である。すなわち、塗料組成物から単離されると、それは、固体のときに結晶性でないため、規則的な秩序的配列を特徴としない。第2の軟質材料は、室温で、明確な秩序的構造を有さない非結晶の蝋または液体であってよい。第2の軟質材料は、4つ以上の異性体、近異性体もしくは相同構造体またはこれらの組合せの混合物である。すなわち、それは、そのそれぞれが他の3つの分子の1つ以上に関して、(1)異なる化合物であるが同一の分子式を有し、(2)1または2個の水素原子が異なる分子式を有し、あるいは(3)相同体、特に(CH2nが異なる分子式を有する相同体として関連づけられる4つ以上の分子の混合物である。それら4つ以上の構造体は、異性体、近異性体および相同体の任意の組合せであってよい。4つ以上の異性体または相同構造体(または異性体と相同構造体の組合せ)の混合物は非結晶性であるが、個々の構造体は、混合物から単離された場合に、それ自体は結晶性または非結晶性であってよいことに留意されたい。したがって、1つの構造体を析出技術によって結晶として物理的に単離することが可能であり得る。また、4つ以上の分子の混合物を製造するのに使用できる試薬の純度、ならびに生じ得る副反応は、わずかに異なる分子式を有する第2の軟質材料における限定された数の構造体をもたらし得ることに留意されたい。当該混合物も4つ以上の異性体または相同構造体の混合物の本定義に含まれる。
【0055】
第2の軟質材料は、約1.5以下の多分散度を有する。いくつかの実施形態において、第2の軟質材料が約1.2以下の多分散度を有するのが好適である。多分散度を数平均分子量に対する質量平均分子量の比として測定することができ、質量および数平均分子量を、ポリスチレン標準品を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、第2の軟質材料の構造の少なくとも1つは、非対称である。本発明の第1の実施形態において、「非対称」は、同一要素の外部で、材料が、"Molecular Symmetry and Group Theory by Alan Vincent,John Wiley and Sons,August 1981"に定義されている他の対称要素を保有しないことを意味する。本発明の第2の実施形態において、「非対称」は、材料が、異なる構造および異なる対称要素をそれぞれ有する類似の分子量の一連の関連材料で構成されていることを意味する。この第2の定義による非対称の単純な例は、n−ブタノールとi−ブタノールとt−ブタノールの混合物である。混合物として捉えた場合、3つのアルコールの混合物は、異なる構造および対称要素を有することになる。材料がどのように加工されるかによって、類似しているが異なる分子式を有する材料もこの定義に含まれる。この一例は、C18脂肪酸の二量体化による反応生成物である。該脂肪酸二量体は、二量体のいくつかが環式、芳香族および異なる程度のアルケン基を含む材料を含む。脂肪酸の二量体は、一連の異なる材料で構成されるが、当業者は、材料のすべてをそれが1つの材料であるかの如く見なす。
【0057】
第2の軟質材料は、少なくとも2つの官能基を含まなければならず、2〜4つの官能基を有してよいが、最も好ましくは、第2の軟質材料は、2つまたは3つの官能基を有することになる。官能基は、塗料組成物の硬化中に反応する。官能基と架橋剤との反応は、硬化条件下で熱不可逆結合を形成する。本明細書に使用される「熱不可逆結合」という用語は、その逆転が、自動車用塗料組成物に用いられる従来の硬化スケジュールの下で熱的に支持されない結合を指す。好適な熱不可逆化学結合の実例は、ウレタン、尿素、エステルおよび非アミノプラストエーテルである。好適な熱不可逆化学結合は、ウレタン、尿素およびエステルであり、ウレタン結合が最も好適である。当該化学結合は、ヒドロキシル基とアミノプラスト樹脂の反応を介して形成された結合の場合のように、架橋方法を通じて破断・改質しない。
【0058】
特定の対の官能基は、当該熱不可逆化学結合を生成することになる。対の一方の構成要素が第2の軟質材料の官能基としての使用に向けて選択される場合は、その対の他方の構成要素は、架橋剤の官能基として選択されることになる。熱不可逆結合を生成する例示的な反応物質または官能基対の例は、ヒドロキシ/イソシアネート(ブロックまたは非ブロック)、ヒドロキシ/エポキシ、カルバメート/アミノプラスト、カルバメート/アルデヒド、酸/エポキシ、アミン/環状カーボネート、アミン/イソシアネート(ブロックまたは非ブロック)および尿素/アミノプラスト等である。
【0059】
第2の軟質材料のための例示的な好適な官能基は、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、カルバメート、イソシアネートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好適な官能基(ii)は、ヒドロキシル、一級カルバメートおよびそれらの混合物である。一実施形態において、官能基は2つの架橋を形成することが可能であり得る。例えば、官能基がβヒドロキシカルバメートである場合は、カルバメート基およびヒドロキシ基の両方が架橋反応を行うことができる。別の非限定的な例において、官能基が酸である場合は、エポキシと反応して、ヒドロキシル基を通じてさらなる架橋反応を行うことができるβヒドロキシエステルを生成することができる。
【0060】
第1の実施形態において、4つ以上の分子は、第2の軟質材料のための非環式構造体、第2の軟質材料のための芳香族含有構造体、第2の軟質材料のための環式含有構造体、およびそれらの混合物からなる群から選択される2つ以上の飽和または不飽和構造体の混合物を含むことになる。非芳香族不飽和部位のない飽和構造体および芳香族構造体が、特に耐久性の問題が重要である場合に好適である。例えば、4つ以上の分子は、脂肪族構造体、芳香族含有構造体、脂環式含有構造体およびそれらの混合物からなる群から選択される2つ以上の構造体の混合物を含むことができる。
【0061】
第1の実施形態の好適な例において、第2の軟質材料は、1つ以上の脂肪族構造体、場合によって1つ以上の芳香族含有構造体、および1つ以上の脂環式含有構造体を含むことになる。第2の軟質材料のための特に有利な混合物は、脂肪族構造体を有する3〜25質量%の分子、芳香族含有構造体を有する3〜25質量%の分子、および脂環式含有構造体を有する50〜94質量%の分子を含むことになる。第2の軟質材料のためのより好適な混合物は、脂肪族構造体を有する3〜18質量%の分子、芳香族含有構造体を有する5〜23質量%の分子、および脂環式含有構造体を有する55〜85質量%の分子を含むことになる。第2の軟質材料の最も好適な混合物は、脂肪族構造体を有する5〜10質量%の分子、芳香族含有構造体を有する10〜20質量%の分子、および脂環式含有構造体を有する60〜70質量%の分子を含むことになる。
【0062】
カルボキシル官能基を有する第2の軟質材料の第1の実施形態の例は、脂肪酸、ならびに二量体化、三量体化および四量体化脂肪酸反応生成物およびそれらのより高度なオリゴマー等のそれらの付加反応生成物である。好適な酸官能性二量体およびより高度なオリゴマーをC12〜18単官能性脂肪酸の付加反応によって得ることができる。飽和および不飽和二量体化脂肪酸は、Uniquema(米国デラウェア州ウィルミントン)から市販されている。UV耐久性が重要であるときは、40未満のヨウ素価を有する材料が好適であり、10未満のヨウ素価を有する材料が特に好適である。
【0063】
第2の軟質成分の第1の実施形態として好適なヒドロキシル官能性材料は、Uniquema(米国デラウェア州ウィルミントン)が提供するPripol(商標)飽和脂肪酸二量体(Pritol(商標)2033)として市販されている。ヒドロキシル官能性の第2の軟質材料を既に記載されている脂肪酸の酸基の還元、または脂肪酸とエポキシド官能性化合物の混合物との反応によって得ることもできる。一例において、HexionのCardura E10をジカルボン酸または環状無水物、例えば、1,12−ドデカン二酸、無水コハク酸、または脂肪ジオール(例えば1,18−オクタデカンジオール)と環状無水物(例えば無水コハク酸)との反応生成物と反応させる。
【0064】
2つ以上のカルバメート官能基を有する第1の実施形態の第2の軟質材料を、以上に記載されているヒドロキシル官能性材料と、メチルカルバメート等の低分子量カルバメート官能性モノマーとの適切な反応条件下における反応を介して得ることができる。あるいは、カルバメート官能性の第2の軟質材料を、ヒドロキシル官能性材料の存在下での尿素の分解を介して形成することができる。最後に、カルバメート官能性の第2の軟質材料を、ホスゲンと、以上に記載されているヒドロキシル官能性軟質材料とを反応させた後に、アンモニアと反応させることにより得ることができる。
【0065】
アミン官能基を有する第1の実施形態の第2の軟質材料を、酸官能性脂肪酸材料を反応させてアミドを形成した後に、ニトリルに変換し、続いてアミンに還元することにより得ることができる。イソシアネート官能基を、アミン官能性軟質材料と二酸化炭素との反応を介して得ることができる。
【0066】
アミノプラスト官能基を有する第1の実施形態の第2の軟質材料を、カルバメートまたは上記のアミド官能性軟質材料とホルムアルデヒドまたはアルデヒドとの反応を介して形成することができる。得られた反応生成物をメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノール等の低沸点アルコールで場合によってエステル化することができる。
【0067】
尿素官能基を、アミン官能性の第2の軟質材料と尿素との反応を介して形成することができる。あるいは、アミン官能性の第2の軟質材料をホスゲンと反応させた後に、アンモニアと反応させて所望の尿素官能基を生成することができる。
【0068】
上記の飽和または不飽和脂肪酸の第2の軟質材料を使用してエポキシ官能基を得ることができる。不飽和脂肪酸を使用する場合は、過酸化物との反応によって内部エポキシ基が形成されることになる。より好ましくは、酸またはヒドロキシル官能性の第2の軟質材料をエピクロロヒドリンと反応させる。環状カーボネート官能基を、エポキシド基への二酸化炭素の挿入を介して形成することができる。
【0069】
第1の実施形態の第2の軟質材料は、以下の構造体の混合物を含むことができる。
【0070】
【化11】

【0071】
カルバメート官能基を有する構造体が示されているが、他の官能基を以上に概説されているように得ることができる。
【0072】
第2の実施形態において、第2の軟質材料は、脂肪反応物質の2つ以上の残基が多官能性反応分子との反応によって結合された脂肪酸異性体および/または相同体の混合物の誘導体、あるいは脂肪反応物質の2つ以上の残基が多官能性反応分子との反応によって結合された脂肪酸異性体および/または相同体のエポキシドエステルの混合物の誘導体である。好適な脂肪酸反応物質としては、限定することなく、8〜14個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状脂肪酸の混合物、特に、ネオアルカン酸混合物、例えば、ネオデカン酸等の分枝状脂肪酸および/またはこれらの酸のグリシジルエステルの混合物が挙げられる。ネオデカン酸異性体のグリシジルエステルは、HexionからCardura E10として市販されている。脂肪ネオアルカン酸を一般構造
【化12】

で表すことができ、
ネオアルカン酸のエポキシドエステルを一般構造
【化13】

[式中、
1、R2およびR3は、それぞれヒドロカルビル基であり、R1、R2およびR3は、合わせて6〜12個の炭素原子を有し;
好ましくは、R1、R2およびR3の少なくとも1つがメチル基である]で表すことができる。
【0073】
第2の実施形態の第1の例において、第2の軟質材料は、ネオアルカン酸混合物のグリシジルエステルとポリカルボン酸との反応生成物を含むことができる。ポリカルボン酸の非限定的な例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、チオグリコール酸、トリカルバリル酸、アゼライン酸、無水トリメリット酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸およびアジピン酸ならびにそれらの酸の無水物が挙げられる。
【0074】
次いで、酸/エポキシ開環反応から誘導されるヒドロキシ基含有生成物をヒドロキシル官能性の第2の軟質材料として使用することができ、またはヒドロキシル基を反応させて別の官能基を生成することができる。一例において、カルバメート官能性の第2の軟質材料を形成するために、ヒドロキシル基とシアン酸、および/またはカルバメート基もしくは尿素基を含む化合物とを反応させる。シアン酸を尿素の熱分解、または米国特許第4,389,386号または同第4,364,913号に記載されているような他の方法によって形成することができる。カルバメートまたは尿素基を含む化合物が利用される場合、ヒドロキシル基との反応は、ヒドロキシル基とカルバメートまたは尿素基とのエステル交換であると考えられる。カルバメート化合物は、ヒドロキシル基と反応(エステル化)することが可能なカルバメート基を有する任意の化合物であり得る。これらは、例えば、メチルカルバメート、ブチルカルバメート、プロピルカルバメート、2−エチルヘキシルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、フェニルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、ヒドロキシエチルカルバメートおよびヒドロキシブチルカルバメート等を含む。有用なカルバメート化合物を式:
R’−O−(C=O)−NHR’’
[式中、
R’は、(好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の)置換または非置換アルキルであり、R’’は、H、(好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の)置換または非置換アルキル、(好ましくは6〜10個の炭素原子の)置換または非置換シクロアルキル、あるいは(好ましくは6〜10個の炭素原子の)置換または非置換アリールからである]によって特徴づけることができる。好ましくは、R’’はHである。
【0075】
尿素基を一般には式
R’−NR−(C=O)−NHR’’
[式中、
RおよびR’’は、H、または好ましくは1〜4個の炭素原子のアルキルをそれぞれ独立して表し、あるいはRおよびR’’は、一緒になって複素環式環構造を形成することができ(例えば、RおよびR’’は、エチレン架橋を形成する)、R’は、(好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の)置換または非置換アルキルを表す]によって特徴づけることができる。
【0076】
カルバメートまたは尿素とヒドロキシル基含有化合物とのエステル交換反応を典型的なエステル交換条件下、例えば室温から150℃の温度で、オクタン酸カルシウム、KOH等の金属水酸化物、ナトリウムおよびリチウム等の第I族またはII族金属、クラウンエーテルとの併用により強化され得る炭酸カリウムまたは炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、酸化ジブチルスズのような金属酸化物、NaOCH3およびAl(OC373等の金属アルコキシド、オクタン酸第一スズおよびオクタン酸カルシウム等の金属エステル、H2SO4またはPh4SbI等のプロトン酸等のエステル交換触媒を用いて実施することができる。該反応を、その開示内容が参考として本明細書で援用されるR.Anand,Synthetic Communications,24(19),2743−47(1994)に記載されているようにAmberlyst−15(登録商標)(Rohm&Haas)等のポリマー支持触媒を用いて室温で実施することもできる。
【0077】
カルボン酸によるエポキシド化合物のオキシラン環の開環により、ヒドロキシエステル構造体が得られる。その後のカルバメート化合物によるこの構造体上のヒドロキシ基のエステル交換により、
【化14】

[式中、
nは、少なくとも2の正の整数であり、
R’は、H、アルキルまたはシクロアルキルを表し、
Rは、アルキル、アリールまたはシクロアルキルを表し、
Xは、エポキシド化合物の残基である有機基を表す]の構造で表すことができるカルバメート官能性成分が得られる。本明細書に使用されているように、これらのアルキル、アリールまたはシクロアルキル基は置換されていてよいことを理解されたい。塗料のUV耐久性が所望される場合は、非芳香族および飽和環状無水物が好適である。
【0078】
第2の軟質材料の本実施形態において、2つの異なる種類の官能基が各分子上に存在してよい。1つの好適な実施形態において、エポキシド官能性化合物と有機酸との反応生成物は、化合物毎に複数のヒドロキシル基を有し、概して、すべての数を下回るヒドロキシル基が、シアン酸、またはカルバメートもしくは尿素基を含む化合物と反応する。特に好適な実施形態において、エポキシド官能性化合物と有機酸との反応生成物は、分子毎に約2〜約4つのヒドロキシル基を有し、概して、これらの基の一部のみが反応して、第2の軟質材料の化合物上にカルバメート基または尿素基を形成する。別の好適な実施形態において、エポキシド官能性化合物と有機酸との反応の前駆体生成物は、化学量論余剰の酸基の反応から得られる残留酸基を有する。次いで、形成されたヒドロキシル基は、シアン酸、またはカルバメートもしくは尿素基を含む化合物と反応して、カルバメートまたは尿素官能基ならびにエポキシドまたは酸官能基を有する成分の化合物を形成する。
【0079】
別の実施形態において、形成されたヒドロキシル基を保持して、ヒドロキシル官能性の第2の軟質材料を得る。別の実施形態において、ヒドロキシル基を環状無水物と反応させて、カルボキシル官能性の第2の軟質材料を得る。エチレン性不飽和エポキシド官能性化合物を使用し、有機酸との反応後に、エチレン基を過酸化水素で酸化することによってエポキシド基を得ることができる。アルコキシシラン官能基を用いた実施形態は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のエポキシド官能性アルコキシシラン化合物との反応によって得られる。
【0080】
第2の実施形態の第2の例において、第2の軟質材料は、ジオールを環状無水物と反応させて、2つの内部エステル基を有するジカルボン酸を形成し、次いでジカルボン酸を脂肪酸のモノエポキシドエステルと反応させることによって形成される。場合によって、エポキシド反応工程によるヒドロキシル基は、カルバメート基または他の官能基に変換される。
【0081】
この第2の例において、好適な非限定的なジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2−プロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチルヘキサン−1,6−ジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコール等の、2〜18個の炭素原子を有するジオールが挙げられる。例えば1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール等のペンタエリスリトールのシクロヘキサンジメタノールおよび環状ホルマール等の脂環式ジオールを使用することもできる。また、芳香族ジオール、例えば、1,4−キシリレングリコールおよび1−フェニル−1,2−エタンジオール、ならびに多官能フェノール化合物とアルキレンオキシドまたはその誘導体との反応生成物を使用することができる。ビスフェノールA、ヒドロキノンおよびレソルシノールを使用することもできる。
【0082】
ジオールを環状無水物と反応させる。好適な環状無水物としては、限定することなく、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水アジピン酸、無水グルタル酸および無水マロン酸等が挙げられる。それらの無水物は、アルキル基を含む非反応性置換基を有してよい。
【0083】
好ましくは、ジオールと環状無水物とを、カルボキシル基がジオールのヒドロキシル基毎に反応生成物における無水物から生成されるように、約1:1のモル比で反応させる。次いで、この中間体反応生成物を脂肪酸相同体および/または異性体のモノエポキシドエステルの混合物、好ましくはネオアルカン酸のグリシジルエステルの混合物と反応させる。生成物は、ヒドロキシル官能性の第2の軟質材料である。
【0084】
生成物のヒドロキシル基をカルバメート基等の他の官能基に変換することができる。この第2の例のカルバメート官能性の第2の軟質材料を、上記のヒドロキシル官能性材料とメチルカルバメート等の低分子量カルバメート官能性モノマーとを適切な反応条件下で反応させることによって製造することができる。あるいは、カルバメート基をヒドロキシル官能性材料の存在下での尿素の分解によって形成することができる。最後に、この例のカルバメート官能性の第2の軟質材料を、ホスゲンを上記のヒドロキシル官能性材料と反応させた後にアンモニアと反応させることにより得ることができる。
【0085】
イソシアネート官能基を、アミン官能性軟質材料と二酸化炭素と反応させることにより、またはジイソシアネートをヒドロキシル官能性材料で半キャッピングすることによって得ることができる。
【0086】
アミノプラスト官能基を、カルバメートまたは上記のアミド官能性軟質材料とホルムアルデヒドまたはアルデヒドとの反応を介して形成することができる。得られた反応生成物をメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノール等の低沸点アルコールで場合によってエステル化することができる。
【0087】
尿素官能基をアミン官能性の第2の軟質材料と尿素との反応を介して形成することができる。あるいは、アミン官能性の第2の軟質材料をホスゲンと反応させた後に、アンモニアと反応させて所望の尿素官能基を生成することができる。
【0088】
エポキシド官能基をカルボキシルまたはヒドロキシル官能性の第2の軟質材料とエピクロロヒドリンとの反応によって得ることができる。環状カーボネート官能基を、エポキシド基への二酸化炭素の挿入を介して形成することができる。
【0089】
脂肪酸、または脂肪酸のエポキシドエステルを用いて形成される第2の実施形態の第3の例において、ポリエポキシド化合物を上記脂肪酸の混合物と反応させる。好適なポリエポキシド化合物としては、限定することなく、デカンジオール酸のジエポキシドエステル等のジエポキシド、シクロヘキサントリカルボン酸のトリエポキシドエステル等のトリエポキシド、ならびにエポキシ化大豆油およびエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油等の低分子量エポキシド官能性オリゴマーが挙げられる。脂肪酸とポリエポキシドのエポキシド基との反応は、β−ヒドロキシエステル基を生成する。
【0090】
場合によって、この反応工程によるヒドロキシル基は、他の官能基に変換される。カルバメート基をヒドロキシル基とメチルカルバメート等の低分子量カルバメート官能性モノマーとの反応によって生成することができる。あるいは、カルバメート基をヒドロキシル官能性材料の存在下での尿素の分解によって形成することができる。最後に、カルバメート官能性の第2の軟質材料を、ホスゲンをヒドロキシル基と反応させた後、アンモニアと反応させることによって得ることができる。カルボキシル基をヒドロキシル基と無水マレイン酸等の環状無水物との反応によって生成することができる。エポキシド基を酸またはヒドロキシ官能性材料とエピクロロヒドリンとの反応によって生成することができる。環状カーボネート官能基を、エポキシド基への二酸化炭素の挿入を介して形成することができる。
【0091】
カルボキシル官能性材料を反応させてアミドを形成した後、ニトリルに変換し、続いてアミンに還元することによりアミン官能基を得ることができる。イソシアネート官能基を、アミン官能性軟質材料と二酸化炭素との反応を介して得ることができる。アミノプラスト官能基を、カルバメートまたはアミド官能性軟質材料とホルムアルデヒドまたはアルデヒドとの反応を介して形成することができる。得られた反応生成物をメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノール等の低沸点アルコールで場合によってエステル化することができる。
【0092】
尿素官能基を、アミン官能性の第2の軟質材料と尿素との反応を介して形成することができる。あるいは、アミン官能性の第2の軟質材料をホスゲンと反応させた後にアンモニアと反応させて、所望の尿素官能基を生成することができる。
【0093】
第2の軟質材料の第2の実施形態の第4の例において、ヒドロキシアルキルカルバメート化合物を環状無水物と反応させて、カルバメート基およびカルボン酸基を有する化合物を製造し、次いでカルボン酸基をネオアルキルモノエポキシドの混合物等の脂肪酸エポキシエステルの混合物と反応させる。この反応は、ヒドロキシル基を生成し、それを、先の例について概説したようにカルバメート基等の他の官能基に場合によって変換することができる。カルバメート基は、ヒドロキシアルキルカルバメートによっても得られる。
【0094】
第2の軟質材料に脂肪酸成分を組み込む第2の実施形態の第5の例において、二環式無水カルボン酸をヒドロキシアルキルカルバメート化合物と反応させて、2つのカルバメート基および2つのカルボン酸基を有する化合物を製造し、次いで2つのカルバメート基および2つのカルボン酸基を有する化合物とネオアルキルモノエポキシドとを反応させる。場合によって、エポキシド反応工程によるヒドロキシル基をカルバメート基に変換する。
【0095】
第2の軟質材料の第3の実施形態において、第2の軟質材料は、エポキシ基をカルボン酸基と反応させ、得られたヒドロキシル基を既に記載した方法または当該技術分野で既知の方法の1つによってカルバメート基に変換する工程によって製造される超分枝状官能性材料である。特に、超分枝状官能性材料は、その構造内に超分枝状または星形ポリオールコア、ポリカルボン酸もしくは環状無水物に基づく第1の連鎖延長部、エポキシド含有化合物に基づく第2の連鎖延長部を有し、コア、第2の連鎖延長部またはその両方にカルバメート官能基を有するカルバメート官能樹脂である。次いで、当該超分枝状化合物は、そのコアとしてのポリオールの残基、その第1の延長部としてのポリカルボン酸または環状無水物の残基、およびその次の延長部としてのエポキシドの残基を有する。各エポキシド環は、内部または外部の炭素において開環し得るため、当該反応生成物は、異性体の混合物になる。
【0096】
本発明のカルバメート官能樹脂は、星形または超分枝状コアに基づき、カルバメート官能基を含む。コアと、カルバメート基およびコア上のヒドロキシル基との反応性がある官能基を含む化合物とを反応させることによって、カルバメート官能基をコア上に導入することができる。あるいは、それを、ポリカルボン酸または無水物およびエポキシ化合物を用いた一連の延長工程によって導入した後、カルバモイル化することができる。
【0097】
星形コアは、星形ポリオールに基づく構造体である。星形ポリオールは、3つ以上の一級または二級ヒドロキシル基を含むモノマーポリオールである。好適な実施形態において、星形ポリオールは、4つ以上のヒドロキシル基を有する。星形ポリオールの例としては、限定することなく、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)メタン、ジグリセロール、トリメチロールエタン、キシリトール、グルシトール、ズルシトールおよびスクロースが挙げられる。星形ポリオールの混合物は、本発明のカルバメート官能樹脂の星形コアを形成することもできる。
【0098】
超分枝状コアは、超分枝状ポリオールに基づく構造体である。超分枝状ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する第1の化合物と、1つのカルボキシル基および2つ以上のヒドロキシル基を有する第2の化合物との反応によって製造される。第1の化合物と第2の化合物を反応させて、第1の世代の超分枝状ポリオールを形成することができる。あるいは、第2の化合物を第1の世代の超分枝状ポリオールと反応させて第2の世代、そして所望される場合は、後続の世代を形成することができる。好ましくは、第1の世代または第2の世代の超分枝状ポリオールは、カルバメート官能樹脂の超分枝状コアとして使用される。
【0099】
第1の化合物は、好適には、脂肪族、脂環式または芳香族ジオール、トリオールまたはテトロール、ソルビトールおよびマンニトール等の糖アルコール、ジペンタエリスリトール、α−メチルグリコシド等のα−アルキルグルコシド、あるいはアルキレンオキシドまたはその誘導体と、上記アルコールのいずれかの1つ以上のヒドロキシル基との反応によって生成される、分子量がせいぜい約8000のアルコキシレートポリマーであり得る。これらの混合物を第1の化合物として使用することもできる。
【0100】
第1の化合物として好適なジオールとしては、2〜18個の炭素原子を有する直鎖状ジオールが挙げられる。例としては、限定することなく、1,3−プロパンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0101】
ジオールは、また、例えばジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2−プロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチルヘキサン−1,6−ジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオール等の分枝状であり得る。他の好適なジオールとしては、限定することなく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0102】
シクロヘキサンジメタノール、および例えば1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール等のペンタエリスリトールの環状ホルマール等の脂環式ジオールを使用することもできる。
【0103】
また、芳香族ジオール、例えば、1,4−キシリレングリコールおよび1−フェニル−1,2−エタンジオール、ならびに多官能フェノール化合物とアルキレンオキシドまたはそれらの誘導体との反応生成物を使用することができる。ビスフェノールA、ヒドロキノリンおよびレソルシノールを使用することもできる。
【0104】
エステル型のジオール、例えばネオペンチルヒドロキシピバレートも好適なジオールである。
【0105】
1,2−ジオールの代用として、対応する1,2−エポキシドまたはα−オレフィン性オキシドを使用することができる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシドおよびスチレンオキシドを当該化合物の例として挙げることができる。
【0106】
好適なトリオールは、3つの一級ヒドロキシル基を含むことができる。トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタンおよび3,5,5−トリメチル−2,2−ジヒドロキシメチルヘキサン−1−オールがこの種のトリオールの例である。他の好適なトリオールは、2種類のヒドロキシル基、すなわち一級ならびに二級ヒドロキシル基を有するトリオール、例えばグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオールである。脂環式および芳香族トリオールおよび/またはアルキレンオキシドもしくはそれらの誘導体を有する対応する付加物を使用することも可能である。
【0107】
第1の化合物として使用される好適なテトロールとしては、限定することなく、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロールおよびジトリメチロールエタンが挙げられる。脂環式および芳香族テトロールおよび/またはアルキレンオキシドもしくはそれらの誘導体を有する対応する付加物を使用することも可能である。
【0108】
超分枝状ポリオールを製造するのに使用される第2の化合物は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する単官能性カルボン酸であり得る。例としては、限定することなく、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(ジメチロールプロピオン酸)、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、または3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のフェニル環(フェノールヒドロキシル基)に直接ペンダント結合した少なくとも2つのヒドロキシル基を有するα−フェニルカルボン酸が挙げられる。
【0109】
第1の化合物と第2の化合物とをエステル化条件下で反応させることによって超分枝状ポリオールを製造することができる。反応温度は、一般には0〜300℃、好ましくは50〜280℃、最も好ましくは100〜250℃である。
【0110】
第1の世代の中間体は、第1の化合物と第2の化合物とを、約1:2〜約2:1の第2の化合物上のカルボキシル基に対する第1の化合物上のヒドロキシルの当量モル比で反応させることによって製造される。好ましくは、当量モル比は、約1:1.5〜約1.5:1、さらにより好ましくは約1:1.2〜約1.2:1である。
【0111】
第1の世代の中間体および任意の後続の世代の官能価および多分散度は、各工程における反応物質のカルボキシル基に対するヒドロキシル基の当量モル比に左右される。超分枝状ポリオールの官能価は、第1の世代または後続の世代にかかわらず、4つのヒドロキシル基以上であるべきである。広範な多分散度を有する超分枝状ポリオールが有用である。多分散度は、約2.5未満、好ましくは約2.0未満、最も好ましくは約1.8未満であるのが好適である。
【0112】
本発明の樹脂を製造するために、上記の星形または超分枝状のコアポリオールを次にポリカルボン酸または無水物と反応させて、エステル結合および遊離カルボキシル基を含む第1の連鎖延長部を形成する。環状無水カルボン酸がポリカルボン酸または無水物として好適である。開環エステル化は、コアポリオール上の残留するヒドロキシル基の反応より速く、カルボキシル基が開環反応によって解放されるため、この工程には無水物が有利である。結果として、第1の連鎖延長部は、重合またはポリエステル形成をほとんど伴わない半酸エステルである。
【0113】
好適な無水物としては、限定することなく、隣接する炭素上にカルボキシル基を有するジカルボン酸の無水物が挙げられる。無水物は、脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。例としては、限定することなく、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸および無水トリメリット酸が挙げられる。本発明において有用な他の無水物としては、限定することなく、無水アジピン酸、無水グルタル酸および無水マロン酸等が挙げられる。
【0114】
ポリカルボン酸または無水物とコアポリオールとの反応により、カルボキシル官能基を有し、コアポリオール上のあらゆる未反応ヒドロキシル基から得られるいくつかの一級または二級ヒドロキシル基を含むことができる第1の中間体が形成される。
【0115】
化学量論は、コアポリオールの少なくとも1つの一級ヒドロキシル基がポリカルボン酸または無水物と反応するように選択される。好ましくは、コアポリオール上の少なくとも2つのヒドロキシル基が反応する。いくつかの実施形態において、ポリカルボン酸または無水物上のカルボキシル基に対するコアポリオール上のヒドロキシルのモル比は、コアポリオール上のあらゆるヒドロキシル基がエステル化されるようにほぼ1:1になる。
【0116】
少なくとも1つのカルボキシル基を含み、上記の一級または二級ヒドロキシル基を場合によって有する第1の中間体を、次に、エポキシド基を含む化合物と反応させて、限定することなくネオデカン酸もしくはネオノナン酸等のネオ酸のグリシジルエステル、または脂肪酸の混合物のグリシジルエステル、またはこれらの組合せに基づく連鎖延長部を有する第2の中間体を形成する。
【0117】
エポキシド化合物と第1の中間体との反応は、好ましくは、触媒を用いずに実施される。この場合、エポキシド含有化合物のエポキシド基は、第1の中間体に存在することができる任意の一級または二級ヒドロキシル基よりカルボキシル基と速く反応する。したがって、エポキシドの開環により得られる二級ヒドロキシル基、ならびに第1の中間体の形成において未反応のままであったあらゆる一級または二級ヒドロキシル基を含む第2の中間体を形成するために比較的クリーンな連鎖延長部が達成される。反応条件は、当該技術分野で既知の反応条件に従って、エポキシド基をいずれかの方向に開環させて生成物の混合物を得るように選択される。
【0118】
好ましくは、エポキシ含有化合物を第1の中間体上のカルボキシル基に対して約1:1のモル比で反応させる。しかし、(例えば、アミンで塩処理して水分散性塗料を得るために)最終生成物にカルボキシル基が所望される場合は、過剰のカルボキシル基官能性の第1の中間体を使用することができる。
【0119】
カルバメート基を第2の中間体に付加するための技術は、既に記載されている。例えば、第2の中間体をホスゲン、次いでアンモニアと反応させて、一級カルバメート基を有する化合物を形成することによって、または第2の中間体をホスゲン、次いで一級アミンと反応させて、二級カルバメート基を有する化合物を形成することによって、カルバメート基を第2の中間体に付加することができる。あるいは、第2の中間体を1つ以上の尿素と反応させて、二級カルバメート基(すなわちN−アルキルカルバメート)を有する化合物を形成することができる。この反応は、第2の中間体と尿素との混合物を加熱することによって遂行される。別の技術は、第2の中間体とモノイソシアネート、例えばメチルイソシアネートとを反応させて、二級カルバメート基を有する化合物を形成することである。別の例において、第2の中間体を、尿素の熱分解によって形成されたシアン酸と、または第2の中間体上のヒドロキシル基とのエステル交換が可能なカルバメート基を有する化合物と反応させることができる。これらは、限定することなく、メチルカルバメート、ブチルカルバメート、プロピルカルバメート、2−エチルヘキシルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、フェニルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメートおよびヒドロキシエチルカルバメート等を含む。第2の中間体とカルバメート化合物とのエステル交換反応を上記の典型的なエステル交換条件下で実施することができる。
【0120】
別の実施形態において、カルバメート化合物は、イソシアネート基およびカルバメート基を有する分子を含む。当該分子を、例えば、有機ジイソシアネートと、カルバメート基に加えて、反応性ヒドロキシルまたはアミノ基を含む二官能性化合物とを反応させることによって製造することができる。二官能性分子は、例えば、アンモニアまたは一級アミンとアルキレンカーボネートとの反応生成物であるヒドロキシカルバメートであり得る。
【0121】
カルバメート化合物を形成するための二官能性化合物との反応に好適なジイソシアネートとしては、1,11−ジイソシアナトウンデカン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−および2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、4,4’−ビス−(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2−ビス−(イソシアナトメチル)シクロブタン、1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサヒドロ−2,4−および/または−2,6−ジイソシアナトトルエン、1−イソシアナト−2−イソシアナトメチルシクロペンタン、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび1−イソシアナト−4(3)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
【0122】
他の好適なジイソシアネートとしては、限定することなく、テトラメチル−1,3−および/または−1,4−キシリレンジイソシアネート、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートナフタレン、p−キシリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0123】
好適なジイソシアネートは、また、それらが2つのイソシアネート基を含むのであれば、ビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネートおよび/またはカルボジイミド基等の変性基を含むものを含むことが理解される。
【0124】
ジイソシアネートを二官能性化合物と反応させることによって、ジイソシアネートのイソシアネート基の1つをカルバメート基に変換することによってカルバメート化合物を製造することができる。ただ1つのイソシアネート基の変換を容易にするために、反応性が異なるイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物を使用するのが好適である。この状況において、イソシアネートの1つが二官能性化合物と優先的に反応することになる。
【0125】
反応性が異なるイソシアネート基を有するジイソシアネートの例としては、限定することなく、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートとしても知られる)、1−イソシアナト−2−イソシアナトメチルシクロペンタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,3−トルエンジイソシアネートおよび2,4−トルエンジイソシアネートが挙げられる。好適な実施形態において、イソホロンジイソシアネートが使用される。
【0126】
当該反応の生成物は、イソシアネート基およびカルバメート基を有する化合物である。実例として、ジイソシアネートがイソホロンジイソシアネートであり、二官能性分子がアンモニアとプロピレンカーボネートとの反応生成物であるときは、カルバメート化合物の1つの異性体を理想化された構造
【化15】

で表すことができる。理想化された構造は、二官能性化合物とイソホロンジイソシアネート上の一級イソシアネートとの優先的反応を示す。当該反応の実際の生成物は、統計的に、二級イソシアネート上で置換された何らかの生成物、ならびに二置換ジイソシアネートおよび何らかの未反応ジイソシアネートを含むことになる。次いで、生成物を第2の中間体と反応させて本発明の樹脂を得ることができる。
【0127】
超分枝状材料は、コア上、第2の連鎖延長部上またはその両方にカルバメート基を含むことができる。上記説明から、コア上のあらゆるカルバメート基が一級または二級ヒドロキシルカルバメート基に結合され、第2の連鎖延長部上のあらゆるカルバメート基が二級ヒドロキシル基に結合されることがわかる。
【0128】
一実施形態において、カルバメート官能樹脂上の少なくとも一部の遊離ヒドロキシル基の存在は、水素結合を可能にすることによって被膜間密着を強化するのに好適である。例えば、第2の中間体上の一級ヒドロキシル基のすべてまたは一部を選択的にカルバモイル化して、本発明の樹脂上に非置換の二級ヒドロキシル基を残すことができる。一級ヒドロキシル基とカルバメート化合物との反応速度は、二級ヒドロキシル基の反応速度より大きい。一級基の選択的カルバモイル化は、カルバメート化合物が優先的に一級ヒドロキシル基と反応するため、簡単である。
【0129】
他方で、別の実施形態において、第2の中間体上の利用可能なヒドロキシル基のすべてがカルバメート基に変換される。これは、樹脂においてより大きな架橋密度が所望されるときに望ましい。
【0130】
別の例として、カルバメート官能樹脂をコアポリオール自体の直接的なカルバモイル化によって製造することができる。コアの一級ヒドロキシル基を上記技術のいずれかによってカルバメート官能基に変換することができる。樹脂を有機溶媒に可溶にするために、コアポリオール上の一級ヒドロキシル基の少なくとも1つを、イソシアネート基およびカルバメート基を有する第2の化合物との反応によって変換することが好適である。当該化合物は、上記有機ジイソシアネートから製造される。好ましくは、コアポリオール上の一級または二級ヒドロキシル基のほとんどまたはすべてを第2の分子と反応させて、カルバメート官能性の高い樹脂を形成する。
【0131】
非限定的な例において、超分枝状コアポリオールは、トリメチロールプロパンとジメチロールプロピオン酸とを、ジメチロールプロピオン酸上のカルボキシル基に対するトリメチロールプロパン上のヒドロキシル基の当量が等しくなるように1:3のモル比で反応することによって形成される。6つの一級ヒドロキシル基を有するコアポリオールが得られる。コアポリオールを、イソホロンジイソシアネートとヒドロキシカルバメートとの反応によって製造されることになるカルバメート官能性イソシアネート分子と反応させる。
【0132】
第3の実施形態において、第2の軟質材料は、ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸と、カルバメートもしくは尿素基、またはカルバメートもしくは尿素基に変換できる基、およびラクトンまたはヒドロキシカルボン酸との反応性がある基を含む化合物とを反応させる工程を含む方法によって製造される。カルバメートもしくは尿素基に変換できる基の場合は、該基は、ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸との反応の最中または後にカルバメートもしくは尿素基に変換される。第2の軟質材料の第3の実施形態を製造するための方法は、第1の工程のヒドロキシル官能性生成物を、少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物と反応させるさらなる工程を含むことができる。
【0133】
さらに別の実施形態において、第2の軟質材料は、Rinkらの米国特許第6,878,841号に従って製造された化合物の混合物を含むこともできる。例えば、a)エチル基を有するジエチルオクタンジオールジカルバメートの混合物の少なくとも1つは、置換パターンの混合物およびb)ジエチルオクタンジオールジアロファネートの混合物を有する。当該化合物をジエチルオクタンジオールから製造することができる。2つのエチル基に関して、ジエチルオクタンジオールの直鎖状8炭素鎖は、2,3;2,4;2,5;2,6;2,7;3,4;3,6;および4,5の置換パターンを有してよい。2つのヒドロキシ基に関して、直鎖状8炭素鎖は、1,2;1,3;1,4;1,5;1,6;1,7;1,8;2,3;2,4;2,5;2,6;2,7;2,8;3,4;3,5;3,6;3,7;3,8;4,5;4,6;4,7;4,8;5,6;5,7;5,8;6,7;6,8;または7,8の置換パターンを有してよい。2つのエチル基および2つのヒドロキシル基の置換パターンを所望の様式で互いに組み合わせることができる。ジエチルオクタンジオール反応物質の置換パターンの例が、Rinkらの米国特許第6,878,841号に記載されている。
【0134】
ジエチルオクタンジオール反応物質を(例えば、2エチルヘキサノール合成の副産物として)商業的に購入するか、または塩基触媒によるアルドール縮合等の既知の合成方法によって製造することができる。
【0135】
ジエチルオクタンジカルバメート異性体の混合物をジエチルオクタンジオール異性体の混合物から、ジエチルオクタンジカルバメートおよびアルコール副産物を生成するためのメチルカルバメート、ブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメートまたはフェニルカルバメート等のアルキル、シクロアルキルまたはアリールカルバメートとの反応によって製造することができる。それらの副産物を真空蒸留等の通常の方法によって除去することができる。代替的な合成において、ジエチルオクタンジオールの混合物をホスゲン、次いで(一級カルバメート基を形成するために)アンモニアと、または(二級カルバメート基を形成するために)一級アミンと反応させることができる。
【0136】
ジエチルオクタンジオールアロファネート異性体の混合物をジエチルオクタンジオール異性体の混合物から、メチルアロファネートまたはエチルアロファネート等のアルキル、シクロアルキルまたはアリールアロファネートとの反応によって製造することができる。この反応を、50〜150℃の反応温度にて、真空下での蒸留等により副産物のアルコールを除去して、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下で実施することができる。
【0137】
本発明の塗料組成物は、第1の硬質材料の官能基および第2の軟質材料の官能基との反応性がある少なくとも1つの架橋剤を含むこともできる。架橋剤の実例としては、第1の硬質材料および第2の軟質材料との反応性がある複数の架橋性官能基を有するものが挙げられる。当該官能基としては、例えば、アミノプラスト、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シランおよびアセトアセテート基が挙げられる。これらの基を、所望の硬化条件下、一般には高温で非ブロックされ、架橋反応に利用可能になるようにマスクまたはブロックすることができる。有用な架橋性官能基としては、ヒドロキシ、エポキシ、酸、無水物、シラン、活性化メチレンおよびアセトアセテート基が挙げられる。好適な架橋剤は、ヒドロキシ官能基およびアミノ官能基を含む架橋性官能基ならびにイソシアネート基を有することになる。ジおよび/またはポリイソシアネートおよび/またはアミノプラスト樹脂が、本発明の混合物(II)を含む塗料組成物における架橋剤としての使用に最も好適である。混合架橋剤を使用することもできる。
【0138】
架橋剤を、いずれも塗料組成物の固定媒体(膜形成材料)総量に対して1〜90質量%、好ましくは3〜75質量%、より好ましくは25〜50質量%の量で使用することができる。
【0139】
例示的な一実施形態において、架橋剤、または塗料組成物が複数の架橋剤を含む場合は少なくとも1つの架橋剤は、第1の硬質材料の官能基と反応して、硬化条件下で不可逆である架橋を形成することになる官能基を有する。これは、反応性添加剤を膜において架橋された状態に維持するのに役立つ。この範疇に含まれる架橋性官能基対のいくつかの非限定的な例は、カルバメート:アミノプラスト、ヒドロキシ:エポキシおよびヒドロキシ:イソシアネートである。硬化条件下で可逆的である架橋の例は、ヒドロキシ:アミノプラストおよびヒドロキシ:活性化メチレンである。
【0140】
例えば、第1の硬質材料および/または第2の軟質材料がヒドロキシ官能基を含むときは、架橋剤をアミノプラスト樹脂、ポリイソシアネートおよびブロックポリイソシアネート樹脂(イソシアヌレート、ビウレット、またはジイソシアネートと、20個未満の炭素原子を有するポリオールとの反応生成物を含む)、ポリエポキシド、カルボキシルまたは無水官能性架橋剤およびそれらの混合物の群から選択することができる。第2の軟質材料がヒドロキシル官能性であるときは、架橋剤、または塗料組成物が複数の架橋剤を含む場合は少なくとも1つの架橋剤は、ブロックされているか非ブロックされているかにかかわらず、最も好ましくはイソシアネート基である。
【0141】
ポリエポキシド架橋成分の実例は、以上に記載したもの等のポリオールとポリカルボン酸のグリシジルエステルおよびエーテル等のポリエポキシド、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルメタクリレートポリマーおよびイソシアヌレート含有エポキシド官能性ポリマー、ならびにイソホロンジイソシアネート(IPDI)の三量体等のグリシドールとイソシアネート官能性イソシアヌレートとの反応生成物である。
【0142】
イソシアネート官能性架橋剤(c)の実例は、いずれも既知のイソシアネート官能性ポリマーおよびオリゴマーである。好適なイソシアネート官能性架橋剤は、ブロックされていても非ブロックされていてもよい、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートポリマー等のイソシアネート官能性ビニルポリマー、特に低分子量のもの、IPDIおよびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネートの三量体である。
【0143】
第1の硬質材料または第2の軟質材料の官能基がカルボキシルであるときは、架橋剤は、最も好ましくは、上記ポリエポキシドである。
【0144】
第1の硬質材料または第2の軟質材料の官能基がカルバメートであるときは、架橋剤をアミノプラスト樹脂、アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。最も好ましくは、第1の硬質材料または第2の軟質材料の官能基がカルバメートであるときは、架橋剤はアミノプラスト樹脂である。あるいは、第1の硬質材料の場合に熱可逆結合が十分であれば、架橋剤はポリイソシアネートであってよい。この場合、得られる結合は、ジブチルスズジアセテート等のルイス酸触媒を使用すると硬化スケジュール中に可逆性にすることができるアロファネートである。
【0145】
好適なアミノプラスト樹脂の実例は、メラミンホルムアルデヒド樹脂(モノマーまたはポリマーメラミン樹脂および部分または完全アルキル化メラミン樹脂を含む)、尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のメチロール尿素、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアルコキシ尿素)およびカルバメートホルムアルデヒド樹脂である。
【0146】
抗ポッピング成分(a)および/または膜形成成分(b)の官能基がエポキシであるときは、官能基(iii)は、カルボキシルもしくはヒドロキシルまたはそれらの混合物であってよく、カルボキシルが最も好適である。カルボキシル官能性架橋成分(c)の実例は、酸官能性アクリル、酸官能性ポリエステル、酸官能性ポリウレタン、およびトリメチロールプロパン等のポリオールと無水ヘキサヒドロフタル酸等の環状無水物との反応生成物である。
【0147】
抗ポッピング成分(a)および/または膜形成成分(b)の官能基が環状カーボネートであるときは、官能基(iii)は、熱可逆結合が所望される場合はアミンであるべきである。アミン官能性架橋成分(c)の実例は、トリアミノノナンである。別の例は、例えば、ヒドロキシケタミンとイソシアネート官能性材料、オリゴマーまたはポリマーとの反応によって形成することができるヒドロキシケタミン樹脂の反応生成物である。
【0148】
同様に、官能基がアミンであるときは、官能基(iii)は、熱不可逆結合を得るために、上記のようにイソシアネート官能性の環状カーボネート、またはそれらの混合物であるべきである。
【0149】
環状カーボネート官能性架橋剤を二酸化炭素と上記エポキシ官能性架橋剤のいずれかとの反応生成物によって得ることができる。あるいは、環状カーボネート官能性モノマーを、二酸化炭素とグリシジルメタクリレートまたはグリシドール等のエポキシ官能性モノマーとを反応させた後、環状カーボネート官能性モノマーを重合/オリゴマー化することによって得ることができる。環状カーボネート官能性架橋剤を得るさらなる方法が当該技術分野で既知であり、使用できる。
【0150】
官能基がイソシアネートであるときは、官能基(iii)は、熱可逆結合を得るためにヒドロキシ、アミンまたはそれらの混合物であってよく、ヒドロキシが最も好適である。ヒドロキシ官能性架橋成分(c)は、当該技術分野で既知である、ポリオール、ヒドロキシ官能性アクリル、ヒドロキシ官能性ポリエステル、ヒドロキシ官能性ポリウレタン、ヒドロキシ官能性イソシアヌレートおよびそれらの混合物である。
【0151】
互いに反応性があり、熱可逆結合をもたらす官能基の例が当該技術分野で周知である。実例は、アミノプラストとポリオールとの反応、環状無水物とポリオールとの反応、およびTACT等の活性化二級カルバメートとヒドロキシ基との反応である。個々の成分の好適な例は、以上に記載されており、相応に選択できる。
【0152】
本発明の方法に使用される塗料組成物は、抗ポッピング成分(a)と膜形成成分(b)と架橋剤(c)との硬化反応を促進させるための触媒を含むことができる。例えば、アミノプラスト化合物、特にモノマーメラミンが架橋剤(c)として使用されるときは、強酸触媒を利用して硬化反応を促進させることができる。当該触媒は、当該技術分野で周知であり、限定することなく、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、マレイン酸モノブチル、リン酸ブチルおよびヒドロキシリン酸エステルを含む。強酸触媒は、例えばアミンでしばしばブロックされる。本発明の組成物に有用であり得る他の触媒としては、ルイス酸、亜鉛塩およびスズ塩が挙げられる。
【0153】
さらなる薬剤、例えば、界面活性剤、充填剤、安定剤、湿潤剤、分散剤、定着剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等を、本発明の方法に使用される塗料組成物に組み込むことができる。当該添加剤は先行技術で周知であるが、使用量を制御して、塗料特性に悪影響を及ぼすことを回避しなければならない。
【0154】
本発明の方法をプライマー、ベースコート、トップコートおよび/またはクリアーコートとして機能する塗料組成物に用いることができる。好適な塗料組成物は、一成分、二成分または多成分塗料組成物であってよく、粉末塗料組成物、粉末スラリー塗料組成物、水系塗料/水性分散液または溶媒系塗料組成物の形であってよい。
【0155】
本発明の方法への適用に好適な例示的な粉末塗料は、以上に記載されている抗ポッピング成分(a)、膜形成成分(b)および架橋成分(c)を有するものである。本発明の方法における使用に好適な粉末塗料を、許容される粉末コンパウンド製造技術、例えばシート、ロールまたはドロップ技術により成分(a)、(b)および(c)の混合物を処理することによって製造することができる。固化した後、混合物は、所望の大きさおよび形状を有する粒子に粉砕される。コンパウンド粒子の平均的な大きさおよび形状は、取り扱い、処理および装置条件に左右される。
【0156】
好ましくは、該コンパウンドは、規則的または不規則な寸法を有する球体、平坦チップまたは円板の形である。約0.1〜100ミクロンの平均粒径を有する粒子が好適であり、1〜75ミクロンの平均粒径が好適であり、15〜45ミクロンの平均粒径が最も好適である。粒径は、本明細書に使用されているように、既知の試験方法で測定できる、不規則な境界を有する物体の平均直径を指す。
【0157】
本発明の方法における使用に好適な粉末スラリー組成物を、固体微粒子成分を液体成分に分散させることによって製造することができる。固体微粒子成分は、上記の粉末塗料組成物であってよく、あるいは抗ポッピング成分(a)、膜形成成分(b)および架橋成分(c)の1種以上の種を含む固体微粒子成分であってよい。液体成分は、水、水溶性溶媒、液体架橋成分およびそれらの混合物であってよい。例示的な液体架橋成分としては液体アミノプラスト樹脂が挙げられる。
【0158】
好適な粉末スラリー組成物の製造時に、それらの成分を従来の方法によって十分に配合および混合することができる。当該混合の後に、粉砕または磨砕工程を行うことができる。好適な製造方法が、参考として本明細書で援用される米国特許第5,379,946号に開示されている。粉末スラリー組成物をスプレーまたは静電塗装によって塗布することができる。
【0159】
請求されている方法における使用に好適な例示的な水系塗料は、一般には、抗ポッピング成分(a)ならびに場合によって膜形成成分(b)および/または架橋成分(c)の1種以上を含む有機バインダ成分の水性分散液を含むことになる。これらの成分の水への分散は、化学的助剤、すなわちイオン性および/または非イオン性界面活性剤、分散および/または安定化樹脂;微小流動化装置等の高応力および/または高剪断装置を介する機械的手段、ならびにそれらの組合せを用いて行われ得る。
【0160】
例示的なイオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のイオン性または両性界面活性剤が挙げられる。市販の好適なイオン性界面活性剤の例は、Rhodia of Cranbury(米国ニュージャージ州)のABEX EP110である。
【0161】
例示的な非イオン性界面活性剤としては、ポリエトキシ化アルコールまたはポリエトキシーポリアルコキシブロックコポリマー、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル等に基づく非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0162】
高応力技術等の機械的手段を使用して、好適な水性分散液を製造することもできる。必要な粒径分布を達成するのに十分な応力が加えられるのであれば、応力を水と有機バインダ成分の混合物に加える代替的な方式を利用することができる。例えば、応力を加える1つの代替的な方法は、超音波エネルギーの使用である。
【0163】
水性分散液を製造するための好適な高応力技術は、Microfluidics Corporation(マサチューセッツ州ニュートン)から入手可能なMICROFLUIDIZER.RTM乳化機を使用する。MICROFLUIDIZER(登録商標)高圧衝突型乳化機は、米国特許4,533,254号で特許が与えられている。該装置は、高圧(25000psi)ポンプ、および乳化が行われる相互作用室からなる。概して、有機バインダ成分と水の混合物が5000〜15000psiの圧力で1回乳化機を通される。多数の流路により、粒径をより小さくし、粒径分布の範囲をより狭くすることができる。
【0164】
高応力技術等の機械的手段を以上に記載されているような界面活性剤等の化学的分散助剤、あるいは以下に記載される安定化および/または分散樹脂と組み合わせることができる。最も好ましくは、高応力技術は、好適な化学的助剤、特に安定化樹脂および/または分散樹脂と組み合わせられる。
【0165】
好適な分散および/または安定化樹脂またはポリマーの実例は、米国特許第6,309,710号に教示されているヒドロキシル含有乳化剤および様々な非ポリアルコキシ化安定化樹脂である。
【0166】
好適なヒドロキシル含有乳化剤は、好ましくは、乳化特性を有するジオールおよび/またはポリオールであり、特に好ましくは、500〜50000ダルトンの分子量を有し、極めて好ましくは500〜10000ダルトン、特に500〜5000ダルトンの分子量を有するジオールおよび/またはポリオールである。乳化ジオールおよび/またはポリオールは、好ましくは、ポリアクリレート−ジオールおよび/または−ポリオール、ポリエステル−ジオールおよび/または−ポリオールならびにポリエーテル−ジオールおよび/または−ポリオールからなる群、極めて好ましくは、ポリウレタン−ジオールおよび/または−ポリオール、ポリカーボネート−ジオールおよび/または−ポリオールならびにポリエーテル−ジオールおよび/または−ポリオールからなる群から選択される。
【0167】
ジオールおよび/またはポリオールにおける親水性成分の疎水性成分に対する比は、好ましくは、ジオールおよび/またはポリオールの分子量ならびにジオールおよび/またはポリオールに既に存在する親水性基の割合によって、あるいはカルボキシルまたはカルボン酸塩基、スルホン酸硫酸またはスルホン酸塩基およびホスホン酸またはホスホン酸塩基を例とする酸基またはそれらの塩等のさらなる親水性基の導入によって設定される。
【0168】
特に好適なポリエーテル−ジオールおよび/または−ポリオールは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位からなるブロックコポリエーテルであり、エチレンオキシド単位の割合は、30〜50%であり、ポリエチレンオキシド単位の割合は50〜70質量%である。分子量は、好ましくは約9000ダルトンである。この種の乳化剤は、例えば、Pluronic(登録商標)PE9400の商品名でBASF AGが販売している。
【0169】
特に好適な安定化樹脂は、水分散性を付与する複数の官能基を有するアクリルコポリマーである。当該安定化樹脂は、1つ以上の疎水性エチレン性不飽和モノマーおよび1つ以上の親水性エチレン性不飽和モノマーの遊離ラジカル重合生成物であり、当該モノマーは、所望の程度の安定化を達成するように適切な比率で使用される。複数の安定化または水分散性官能基は、典型的には、親水性モノマーの重合を介してコポリマーに組み込まれることが理解されるであろう。
【0170】
最も好適な安定化樹脂は、通常5000〜50000、好ましくは10000〜25000の数平均分子量を有することになり、15000〜20000の分子量が最も好適である。さらに、最も好適な安定化樹脂は、40〜60、好ましくは42〜52、最も好ましくは44〜48の酸価を有する。
【0171】
水分散性または安定性を安定化樹脂に付与する官能基は、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性であり得る。陽イオン性基、(すなわちアミン)基は、任意の最終硬化塗料に黄色化を引き起こす傾向があるため、陰イオン性および非イオン性基が最も好適である。
【0172】
好適な疎水性エチレン性不飽和モノマーは、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物、および3〜5個の炭素原子を含むα、β−エチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸の、5個以上の炭素原子を有するアルキルエステルである。芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物、およびアクリル酸またはメタクリル酸等のα、β不飽和モノカルボン酸のC4以上のアルキルエステルが好適である。
【0173】
アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸の好適なエステルの代表例としては、限定することなく、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ステアリルおよびスルホエチル等の、4〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪族および脂環式アルコールとの反応によるエステルが挙げられる。4〜12個の炭素原子のアルキルエステルが好適であり、4〜10個の炭素原子のアルキルエステルが最も好適である。2−エチルヘキシルアクリレートが特に好適である。
【0174】
芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物の代表例としては、限定することなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレンおよび2−ビニルピロリドン等の化合物が挙げられる。スチレンが最も好適な例である。
【0175】
本発明の方法に使用される水系塗料組成物に使用される安定化樹脂の製造に使用される最も好適な疎水性ノマーは、スチレン、エチルヘキシルアクリレートおよびブチルメタクリレートである。
【0176】
好適な親水性エチレン性不飽和モノマーは、水性分散液における安定化樹脂および有機バインダ成分の両方を安定化させるように作用するものである。実例は、水素結合を可能にする低分子量アルキルアクリレートエステル、弱水素結合供与体、強水素結合供与体、およびポリエーテルに基づく水素結合受容体である。
【0177】
例えば、3個未満の炭素のアルキル基を有するα、β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の低分子量アルキルエステルを親水性モノマーとして使用することができる。代表例としては、アクリル酸およびメタクリル酸と、3個以下の炭素原子の飽和脂肪族アルコール、すなわちメチル、エチルおよびプロピルとのエステルが挙げられる。
【0178】
好適な弱水素結合供与体は、ヒドロキシル、カルバメートおよびアミド等の官能基を有するエチレン性不飽和モノマーである。カルバメート官能性エチレン性不飽和モノマーを使用することもできる。ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート等のヒドロキシル官能性エチレン性不飽和モノマーも好適である。代表例としては、限定することなく、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸アミドおよびアミノアルキルアミド、アクリロニトリルならびにメタクリロニトリルも好適である。
【0179】
強酸等の強水素結合供与体も、親水性モノマーとしての使用に好適である。有用なエチレン性不飽和酸としては、3〜5個の炭素原子を含むα、β−オレフィン性不飽和モノカルボン酸、4〜6個の炭素原子を含むα、β−オレフィン性不飽和ジカルボン酸およびそれらの無水物、不飽和スルホン酸、ならびに不飽和ホスホン酸が挙げられる。代表例としては、限定することなく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらのそれぞれの無水物が挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸が最も好適である。
【0180】
ポリエーテル系水素結合受容体を最も好適な安定化樹脂に使用することもできる。有用なエチレン性不飽和ポリエーテルとしては、エチレンオキシド、および3〜5個の炭素原子を含むα、β−オレフィン性不飽和モノカルボン酸のアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールエステルまたはアミドが挙げられる。モノマーを形成するのに使用されるアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールまたはアルコキシポリ(オキシアルキレン)アミンを、エチレンオキシドまたはエチレンオキシドとプロピレンオキシドもしくはブチレンオキシド等の10個までの炭素原子の他のエポキシドとの混合物による一価アルコールのアルコキシ化によって得ることができる。
【0181】
最も好適な安定化樹脂として好適なアクリルポリマーに含有されるアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールまたはアミンの残基をD(CH(R1)CH2O−−)n2で表すことができ、それは、1〜1000の整数であるnの重合度を有するアルコキシポリオキシエチレンまたはアルコキシポリオキシエチレン/ポリオキシアルキレンコポリマーである。Dは、アルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールの場合はOであり、アミンの場合はNHである。好ましくは、nは20〜200、より好ましくは30〜70の整数である。したがって、R1は、水素、または水素と1〜8個の炭素原子のアルキルとの混合物である。R1が水素、または水素と1〜3個の炭素原子のアルキルとの混合物であるのが特に有利である。R2は1〜30個の炭素原子のアルキルである。R2は、好ましくは、1〜10個の炭素原子のアルキルである。一実施形態において、R1は水素であり、R2はメチルであり得る。
【0182】
好ましくは、好適な安定化樹脂を製造するのに使用される親水性モノマーは、カルボン酸基、ヒドロキシル基、オキシラン基、アミド基およびそれらの混合物からなる群から選択される官能基を有することになる。最も好ましくは、酸基、ヒドロキシル基およびカルバメート基の混合物を有する親水性モノマーが使用されることになる。しかし、カルボン酸基を有する親水性モノマーは、好ましくは、仕上げ膜特性への悪影響を回避するためにできるだけ最小限に抑えられることになる。最も好適な親水性モノマーは、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0183】
好適な実施形態において、本発明の方法は、水系、溶媒系または粉末塗料組成物の塗布を含むことになる。最も好適な実施形態において、塗布される塗料組成物は、水系塗料組成物である。
【0184】
本発明の方法を用いて、塗布された塗料組成物が高光沢塗料および/または複合カラー+クリアー塗料のクリアーコートになる硬化塗料膜を得ることができる。高光沢塗料を、200グロス以上(ASTM D523−89)または少なくとも80のDOI(ASTM E430−91)を有する硬化塗料膜を与える塗料ということができる。
【0185】
クリアーコート複合カラー+クリアー系を形成するのに該塗料組成物を使用するのが好ましいが、塗布された塗料組成物がベースコートまたは高光沢着色ペイント塗料になる硬化塗料膜を形成するのに該塗料組成物を使用することもできる。この場合、本発明の方法に使用される塗料組成物は、任意の有機もしくは無機化合物または有色材料等の1つ以上の顔料、充填剤、マイカもしくはアルミニウムフレーク等の金属または他の無機フレーク材料、ならびに当該技術分野が通常当該塗料に含む種類の他の材料を含むことができる。顔料および充填剤等の他の不溶性微粒子コンパウンドは、通常、バインダ成分(a)および架橋成分(c)ならびに任意の他の膜形成成分の全固体質量に対して1%〜100%の量で組成物において使用される(すなわち、顔料対バインダの比が0.1〜1である)。
【0186】
本発明の方法は、塗料組成物を基材に塗布することを必要とする。好適な基材は、塗装すること、および塗布された塗料を硬化させるのに十分な条件に曝すことが可能な任意の表面であってよい。特に好適な基材は、典型的には、輸送/自動車工業で見られるものである。実例としては、鋼、アルミニウムおよび様々な合金等の金属基材、軟質プラスチック、硬質プラスチックならびにプラスチック複合体が挙げられる。金属基材および硬質プラスチック基材が好適である。
【0187】
好適な基材は、本発明の方法が用いられる前に、塗装されていてもいなくてもよい。実例としては、電着塗装基材、下塗り基材、ベースコート塗装基材およびそれらの混合物が挙げられる。好適な実施形態において、本発明の方法に使用される基材は、上記のような基材に塗布される塗装膜を有することになる。基材上の塗装膜は、硬化または未硬化塗料膜であってよい。好適な実施形態において、本発明の方法に使用される基材は、未硬化の既に塗布された塗料膜、最も好ましくは、複合カラー+クリアー塗料系の一部である未硬化着色ベースコートで塗装された基材である。この最も好適な実施形態において、本発明の方法の一部として塗布される塗料組成物は、クリアーコート塗料組成物である。本発明のクリアーコート塗料組成物を水系ベースコート組成物または溶媒系ベースコート組成物の層に塗布して優れた結果を得ることができ、自動車組立および装備品工場で使用される方法で塗布することができる。
【0188】
この最も好適な実施形態において、クリアーコート塗料組成物がその上に塗布される未硬化塗装膜は、当該技術分野で既知である任意の着色ベースコート組成物であってよく、本明細書で詳細に説明する必要はない。ベースコート組成物に有用であることが当該技術分野で既知であるポリマーとしては、アクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキドおよびポリシロキサンが挙げられる。好適なポリマーとしては、アクリルおよびポリウレタンが挙げられる。本発明の1つの好適な実施形態において、ベースコート組成物は、カルバメート官能性アクリルポリマーをも利用する。ベースコートポリマーは、熱可塑性であってよいが、好ましくは架橋性であり、1種以上の架橋性官能基を含む。当該基としては、例えば、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シランおよびアセトアセテート基が挙げられる。これらの基を、所望の硬化条件下、一般には高温で非ブロックされ、架橋反応に利用可能になるようにマスクまたはブロックすることができる。有用な架橋性官能基としては、ヒドロキシ、エポキシ、酸、無水物、シランおよびアセトアセテート基が挙げられる。好適な架橋性官能基としては、ヒドロキシ官能基およびアミノ官能基が挙げられる。本発明の方法において基材として機能する着色ベースコートは、本発明の方法に使用される着色塗料組成物に関して上述されているもの等の顔料を含むことができる。
【0189】
本発明の方法は、少なくとも2.0ミル/50.8ミクロンの硬化塗料膜が得られる量で塗料組成物を塗布することを必要とする。概して、自動車OEM用途に使用することを意図する液体塗料は、少なくとも1.3ミル/33.0ミクロン、特に1.3〜3.0ミル/33.0ミクロン〜76.2ミクロン、最も好ましくは1.3〜2.0ミル/33.0〜50.8ミクロンの範囲の仕上げ膜構造目標を有する。しかし、適用の不整合により太く、または厚い縁、および2.0ミル/50.8ミクロンを超える硬化膜の重い膜構造がしばしばもたらされる。したがって、本発明の方法は、少なくとも2.0ミル/50.8ミクロンの硬化膜構造、より好ましくは2.5ミル/63.5ミクロンの硬化膜構造、最も好ましくは少なくとも3.0ミル/76.2ミクロンの硬化膜構造においてより大きいポッピング許容度を与えることを意図する。
【0190】
概して、硬化性塗料組成物は、55%〜100%、好ましくは70%〜100%の%NV(不揮発分質量%)を有し、有機液体塗料は、概して70%〜90%の%NVを有し、粉末塗料は約100%の%NVを有する。したがって、本発明の方法において、硬化性塗料組成物は、一般には、約2.6〜6.0ミル/66.0〜152.4ミクロンの未硬化塗料膜、より好ましくは約3.0〜4.8ミル/76.2〜121.9ミクロン、最も好ましくは約3.6〜4.6ミル/91.4〜116.8ミクロンの未硬化塗料膜が得られるように塗布されることになる。少なくとも2.0ミル/50.8ミクロン、好ましくは少なくとも2.5ミル/63.5ミクロン、最も好ましくは少なくとも3.0ミル/76.2ミクロンの硬化液体塗料を得るためには、液体塗料組成物は、相応に、2.5ミル/63.5〜15ミル/381ミクロンの未硬化膜構造で塗布されなければならない。少なくとも2.0ミル/50.8ミクロン、好ましくは少なくとも4.0ミル/101.6ミクロン、最も好ましくは少なくとも6.0ミル/152.4ミクロンの硬化粉末塗料膜を得るためには、未硬化粉末塗料組成物は、同様の対応する膜構造で塗布されることになる。
【0191】
本明細書に記載の塗料組成物は、好ましくは、塗布塗料層を硬化するような条件に曝される。様々な硬化方法を用いることができるが、熱硬化が好適である。概して、熱硬化は、塗装物を主に放射熱源によって提供される高温に曝すことによって実施される。硬化温度は、架橋剤に使用される特定のブロッキング基に応じて異なるが、それらは、一般には90℃〜180℃の範囲である。
【0192】
好適な実施形態において、硬化温度は、ブロック酸触媒系に対しては、好ましくは115℃〜150℃、より好ましくは115℃〜140℃の温度である。非ブロック酸触媒系に対しては、硬化温度は、好ましくは80℃〜100℃である。硬化時間は、使用される特定の成分、および層の厚さ等の物理的パラメータに応じて異なるが、典型的な硬化時間は、ブロック酸触媒系では15〜60分、好ましくは15〜25分であり、非ブロック酸触媒系に対しては10〜20分である。
【0193】
本発明をさらに以下の実施例で説明する。実施例は、単に例示であり、記載および主張されている本発明の範囲をいかなる方法においても限定するものではない。すべての部は、特記しない限り質量部である。
【0194】
実施例
製造1.第1の硬化材料
8.9部のメチルカルバメートと17.2部のAromatic S−100との混合物を不活性雰囲気下で140℃に加熱した。次いで、12.5部のヒドロキシエチルメタクリレートと、7.2部のヒドロキシプロピルメタクリレートと、14.8部のシクロヘキシルメタクリレートと、1部のエチルヘキシルアクリレートと、0.1部のメタクリル酸と、5部のPerkadox AMBM−GR(Akzo Nobelから入手)との混合物を4時間にわたって添加した。次に、1.1部のトルエンと0.3部のPerkadox AMBM−GRとの混合物を15分間にわたって添加する。次いで、1.1部のトルエンを添加した。次いで、反応混合物を140℃で2時間15分間保持した。次いで、反応混合物を冷却し、0.2部のジブチルスズ酸化物、0.36部のリン酸トリイソデシルおよび16.5部のトルエンを添加した。次いで、反応混合物を加熱して不活性雰囲気下で還流させた。還流中に1回、不活性雰囲気を解除し、メタノール/トルエンアズトロトープを反応混合物から除去した。少なくとも95%のヒドロキシ基を一級カルバメート基に変換した後、余剰のメチルカルバメートおよびトルエンを真空蒸留によって除去した。次いで、反応生成物を冷却し、13.9部のプロパンジオールモノエチルエーテルを添加した。
【0195】
製造2.第1の硬化材料
19.5部の酢酸アミルと37部のDesmodur Z4470SN(Bayerから入手)との混合物を不活性雰囲気下で60℃に加熱した。次いで、0.013部のジブチルスズジラウレートおよび1部の酢酸アミルを添加した。次に、12.1部のヒドロキシプロピルカルバメートを徐々に添加した。添加中に、反応温度を80℃に昇温させた。次いで、1.7部の酢酸アミルを添加し、すべてのヒドロキシプロピルカルバメートが反応するまで反応混合物を80に保持した。次いで、0.5部のブタノール、19.1部の酢酸アミルおよび4.2部のイソブタノールを添加した。
【0196】
製造3.第2の軟質材料
59.6部のPripol(登録商標)2030(Uniqemaから入手)、17.6部のメチルカルバメート、0.11部のジブチルスズ酸化物と、0.56部のリン酸トリイソデシルと、22.13部のトルエンとの混合物を不活性雰囲気下で加熱して還流させた。還流中に1回、不活性雰囲気を解除し、メタノール/トルエンアズトロトープを反応混合物から除去した。少なくとも95%のヒドロキシ基を一級カルバメート基に変換した後、余剰のメチルカルバメートおよびトルエンを真空蒸留によって除去した。
【0197】
製造4.第2の軟質材料
16.1部のドデカンジオイック酸と16.3部のキシレンとの混合物を不活性雰囲気下で130℃に加熱した。次いで、34部のCardura E10P(Hexionから入手)を徐々に添加した。次いで、反応混合物を、140℃を超えない温度まで加熱した。反応が完了すると、反応混合物を少なくとも100℃まで冷却し、13.6部のメチルカルバメート、0.28部のジブチルスズ酸化物、0.57部のリン酸トリイソデシルおよび9.5部のトルエンを添加した。次いで、反応混合物を加熱して還流させた。還流中に1回、不活性雰囲気を解除し、メタノール/トルエンアズトロトープを反応混合物から除去した。少なくとも95%のヒドロキシ基を一級カルバメート基に変換した後、余剰のメチルカルバメートおよびトルエンを真空蒸留によって除去した。
【0198】
製造5.第2の軟質材料
第1部:30.9部のヒドロキシエチルカルバメートと68.9部のε−カプロラクトンとの混合物を125℃に加熱しながら該混合物に窒素を吹き込んだ。125℃で1回、窒素バブラーを取り除き、不活性雰囲気下にある間に、0.18部のFascat 2003(King Industriesから入手)を添加した。次いで、反応混合物を、反応が完了するまで130℃に保持した。
【0199】
第2部:17.4部のVestanat TMDI(CreaNovaから入手)と、24.4部の無水メチルアミルケトンと、0.06部のジブチルスズジラウレートとの混合物を不活性雰囲気下で45℃に加熱した。次いで、57.0部の第1部の反応生成物を徐々に添加した。添加中に、反応混合物が81℃を超えないようにした。次いで、反応が実施されるまで反応混合物を80℃に保持した。次いで、1,1部のi−ブチルアルコールを添加した。
【0200】
塗料組成物の実施例
塗料組成物を、製造1〜5の材料を使用して製造し、商業的に入手可能なクリアーコート塗料組成物、R10CG062、バッチ#0101636094と比較した。
【0201】
実施例1
491.7質量部の製造3の樹脂と、156.9質量部の完全メチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、カルバメート官能基を有するアクリル樹脂に分散された125.4質量部のヒュームドシリカと、6.1質量部のヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤と、13.0質量部のアクリル化ヒンダードアミン光安定剤と、1.5質量部のポリアクリレート抗ポッピングポリマーと、72.9質量部のブロック酸触媒溶液と、1.2質量部のポリシロキサン溶液と、44.6質量部のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール溶液と、86.7質量部のn−ブタノールと、を混合することによって塗料組成物を製造した。
【0202】
実施例2
309.3質量部の製造4の樹脂と、203.4部の製造2の樹脂と、184.7質量部のRESIMENE747(Solutia Inc.から入手可能)と、カルバメート官能基を有するアクリル樹脂に分散された136.5質量部のヒュームドシリカと、6.6質量部のヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤と、14.2質量部のアクリル化ヒンダードアミン光安定剤と、1.7質量部のポリアクリレート抗ポッピングポリマーと、79.4質量部のブロック酸触媒溶液と、1.3質量部のポリシロキサン溶液と、48.5質量部のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール溶液と、14.5質量部のn−ブタノールとを混合することによって塗料組成物を製造した。
【0203】
実施例3
223.3質量部の製造1の樹脂と、200.9質量部の製造4の樹脂と、227.4質量部の完全メチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、カルバメート官能基を有するアクリル樹脂に分散された141.6質量部のヒュームドシリカと、6.9質量部のヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤と、14.7質量部のアクリル化ヒンダードアミン光安定剤と、1.7質量部のポリアクリレート抗ポッピングポリマーと、82.4質量部のブロック酸触媒溶液と、1.3質量部のポリシロキサン溶液と、50.3質量部のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール溶液と、39.3質量部のn−ブタノールとを混合することによって塗料組成物を製造した。
【0204】
実施例4
243.5質量部の製造2の樹脂と、210.7質量部の製造4の樹脂と、207.7質量部の完全メチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、カルバメート官能基を有するアクリル樹脂に分散された141.6質量部のヒュームドシリカと、6.9質量部のヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤と、14.7質量部のアクリル化ヒンダードアミン光安定剤と、1.7質量部のポリアクリレート抗ポッピングポリマーと、82.4質量部のブロック酸触媒溶液と、1.3質量部のポリシロキサン溶液と、50.3質量部のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール溶液と、49.5質量部のn−ブタノールとを混合することによって塗料組成物を製造した。
【0205】
実施例5
カルバメート官能基を有する575.0質量部のポリウレタン樹脂と、138.5質量部の完全メチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、カルバメート官能基を有するアクリル樹脂に分散された129.8質量部のヒュームドシリカと、6.3質量部のヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤と、13.5質量部のアクリル化ヒンダードアミン光安定剤と、1.6質量部のポリアクリレート抗ポッピングポリマーと、75.5質量部のブロック酸触媒溶液と、1.2質量部のポリシロキサン溶液と、46.2質量部のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール溶液と、12.4質量部のn−ブタノールとを混合することによって塗料組成物を製造した。
【0206】
実施例1〜5の実例塗料組成物の物理特性を対照と比較した。測定結果を以下の表に示す。
【0207】
【表1】

【0208】
塗料組成物の試験
実施例1〜5および対照例R10CG062のクリアーコート塗料組成物を空気霧化法によって市販の水系ベースコート組成物(0.6〜0.8ミルの硬化膜厚で塗布された、BASF Corp.から入手したE54KW401)上に約1.6〜1.9ミルの厚さのクリアーコート膜に上塗りした。塗布した塗料層を約280°F(137℃)で約20分間硬化させた。
【0209】
示されたデータを得るのに使用したSTM試験法は、Q−Sun試験−D7356、20°光沢−D523、ツーコン硬度−D1474、ガロン毎質量−D3363−74および不揮発分質量−D1475、QCT−D4585である。示されたデータを得るのに使用したSAE試験法は、8時間のUV、4時間の湿気を伴うQUV−J2020およびWOM−J1960である。他の試験手順は、クロックメータ−フェルトで覆われた5/8’’ドエルおよび9μmの3M281Q WETODRY研磨紙が装着されたアトラスA.A.T.C.Cクロックメータを使用して、10回の往復行程で塗装面を研磨した。次いで、試験表面積に対して試験後の光沢保持率%を計算した。キシレン往復擦り試験−32ozのボールピンハンマーヘッドを4層厚の4’’×4’’チーズクロスで覆い、キシレンに浸し、往復擦り毎に同じ領域を往復して擦った。
【0210】
実施例1〜5の実例塗料組成物および対照の試験結果を以下の表に示す。
【0211】
【表2】

【0212】
【表3】

【0213】
上記表の試験結果は、これらの低VOC塗料が、従来のクリアーコートR10CG062と同程度の耐久性を有し、それ以上の性能を発揮することを実証している。これらの低VOC塗料は、良好な性能を有し、環境影響が小さい。
【0214】
製造したパネルを試験し、結果を記録した。
【0215】
本発明を、その好適な実施形態を参照しながら詳細に説明した。しかし、本発明および続く請求項の趣旨および適用範囲内で変更および修正を加えることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種の架橋剤または複数種の架橋剤と、
少なくとも約40℃のガラス転移温度、2000以下の数平均分子量、および1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと硬化条件下で反応性がある官能基を有する第1の硬質材料と、
4種以上の化合物の非晶質混合物である第2の軟質材料であって、該化合物の各々が、異性体、近異性体または相同構造体として他の化合物の少なくとも1つに関連し、かつ該化合物の各々が、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと熱不可逆結合を形成する2〜4つの官能基を有し、各官能基が、少なくとも4個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられている第2の軟質材料と
を含む、熱硬化性バインダを含む塗料組成物。
【請求項2】
非水性である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
第2の軟質材料の化合物が、非対称である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
第2の軟質材料の化合物が、異性体または近異性体である化合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
第2の軟質材料の1つの化合物の少なくとも2つの官能基が、炭素原子以外の原子によって互いに隔てられている、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
非晶質混合物が、約1.5以下の多分散度を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある基を1分子当たりの平均で1つのみ有する材料をさらに含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】
第1の硬質材料が、オリゴマーまたはポリマーである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項9】
第1の硬質材料が、少なくとも約60℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項10】
第1の硬質材料が、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある官能基1当量当たり約150〜約600グラムの換算質量を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項11】
1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある第1の硬質材料の官能基が、カルバメート官能基を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項12】
第1の硬質材料の官能基が、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応して熱可逆化学結合を生成する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項13】
第1の硬質材料が、約1500以下の数平均分子量を有するアクリルポリマーである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項14】
第1の硬質材料が、構造
【化1】

[式中、
1、R2およびR3の各々は、独立して、カルバメート基、およびカルバメート基に対するβ炭素またはγ炭素上のヒドロキシル基を含む]を有するβ−ヒドロキシカルバメートまたはγ−ヒドロキシカルバメート化合物である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項15】
1、R2およびR3の各々が、独立して、
【化2】

である、請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項16】
1、R2およびR3の各々が、独立して、
【化3】

であり、R4は、アルキレン、アルキルアリーレンまたはアリーレンであり、Rは、Hまたはアルキルである、請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項17】
4がアルキレンであり、RがHである、請求項16に記載の塗料組成物。
【請求項18】
1、R2およびR3の各々が、独立して、
【化4】

[式中、
各Rは、独立して、H、または1〜6個の炭素原子を含み、酸素、窒素、シラン、ホウ素、リンおよびそれらの組合せのヘテロ原子結合基をさらに有してよいアルキル基であり、nは、1〜4の整数である]である、請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項19】
第1の硬質材料が、少なくとも2つのウレタンまたは尿素基を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項20】
第1の硬質材料が、
【化5】

[式中、
Rは、Hまたはアルキルであり、R’およびR’’は、それぞれ独立して、Hまたはアルキルであり、あるいはR’およびR’’は、一緒になって複素環式環構造を形成し、R1は、アルキレンまたはアリールアルキレンであり、R2は、アルキレンまたは置換アルキレンであり、R3は、アルキレン、アルキルアリーレン、アリーレン、またはシアヌル環、ウレタン基、尿素基、カルボジイミド基、ビウレット構造もしくはアロホネート基を含む構造であり、nは0〜約10の整数であり、mは2〜約6の整数であり、LはO、NHまたはNR4であり、R4はアルキルであり、pは1〜5の整数であり、m+pは2〜6の整数である]からなる群から選択される構造体を含む、請求項19に記載の塗料組成物。
【請求項21】
RはHであり、R’およびR’’は、それぞれHであり、あるいはR’およびR’’は、一緒になってエチレン架橋を形成し、R1は、5〜10個の炭素原子のアルキレンであり、R2は、約2〜約4個の炭素原子のアルキレンまたは置換アルキレンであり、R3は、アルキレン、またはシアヌル環を含む構造であり、nは0〜約5の整数であり、mは2または3であり、pは1または2であり、m+pは3である、請求項20に記載の塗料組成物。
【請求項22】
3は、m+pが2であるヘキサメチレン、
【化6】

、およびこれらの混合物の群から選択される構成要素であり、Lは酸素原子である、請求項20に記載の塗料組成物。
【請求項23】
第1の硬質材料が、構造
【化7】

[式中、
1、R2およびR3の各々は、独立して、
CH2CH2LR4
であり、
Lは、ウレタンまたはエステル基であり、R4は、アルキレン、アルキルアリーレンまたはアリーレンであり、Fは、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つとの反応性がある官能基を含むアルキル基である]を有する化合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項24】
第2の軟質材料の官能基のすべてが、硬化条件下で、1種の架橋剤または複数種の架橋剤の1つと不可逆結合を形成する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項25】
第2の軟質材料の官能基の各々が、少なくとも6個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられている、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項26】
第2の軟質材料の官能基の各々が、少なくとも10個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられている、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項27】
炭素原子以外の原子が、第2の軟質材料の官能基の少なくとも2つを隔てる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項28】
第2の軟質材料の混合物が、約1.2以下の多分散度を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項29】
第2の軟質材料の少なくとも1つの化合物が非対称である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項30】
第2の軟質材料が、少なくとも1つの非環式脂肪族化合物および少なくとも1つの脂環式化合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項31】
第2の軟質材料が、多官能性反応物質と、脂肪酸異性体、脂肪酸相同体、または脂肪酸異性体および脂肪酸相同体の両方の混合物との反応生成物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項32】
第2の軟質材料が、多官能性反応物質と、脂肪酸異性体、脂肪酸相同体、または脂肪酸異性体および脂肪酸相同体の両方のエポキシドエステルの混合物との反応生成物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項33】
脂肪酸異性体、相同体またはその両方のエポキシドエステルが、ネオアルカン酸異性体、相同体またはその両方のグリシジルエステルである、請求項32に記載の塗料組成物。
【請求項34】
多官能性反応物質が、ポリカルボン酸およびそれらの無水物からなる群から選択される、請求項33に記載の塗料組成物。
【請求項35】
第2の軟質材料が、カルバメート官能基を有する、請求項33に記載の塗料組成物。
【請求項36】
ポリカルボン酸が、2つの内部エステル基を有する、請求項34に記載の塗料組成物。
【請求項37】
第2の軟質材料が、超分枝状化合物の混合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項38】
超分枝状化合物が、ポリオールの残基であるコアを有する、請求項37に記載の塗料組成物。
【請求項39】
第2の軟質材料が、少なくともカルバメート官能基およびヒドロキシル官能基を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項40】
第2の軟質材料が、ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸と、カルバメートもしくは尿素基、または反応後にカルバメートもしくは尿素基に変換される基、およびラクトンまたはヒドロキシカルボン酸との反応性がある基を含む化合物との反応生成物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項41】
第2の軟質材料が、ジエチルオクタンジオールジカルバメートの混合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項42】
第2の軟質材料が、ジエチルオクタンジオールジアロファネートの混合物を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項43】
クリアーコート層として請求項1の塗料組成物を塗布し、塗布した塗料組成物を硬化することを含む方法によって製造される塗装基材。
【請求項44】
1種の架橋剤または複数種の架橋剤と、
1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと単独で反応すると、16以上のツーコン硬度を有する膜を形成することになる、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある官能基1当量当たり約220〜約850グラムの換算質量を有する第1の硬質材料と、
1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと単独で反応すると、4未満のツーコン硬度を有する膜を形成することになる、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと反応性がある官能基1当量当たり200〜2000グラムの換算質量を有する第2の軟質材料と、
を含む熱硬化性バインダを含む塗料組成物であって、
約7〜約12のツーコン硬度を有する硬化膜を形成する塗料組成物。
【請求項45】
第2の軟質材料は、4種以上の化合物の非晶質混合物であり、該化合物の各々が、異性体、近異性体または相同構造体として他の化合物の少なくとも1つに関連し、かつ該化合物の各々が、硬化条件下で1種の架橋剤または複数種の架橋剤の少なくとも1つと熱不可逆結合を形成する2〜4つの官能基を有し、各官能基が、少なくとも4個の炭素原子によってそれぞれの他の官能基から隔てられている、請求項44に記載の塗料組成物。
【請求項46】
クリアーコート層として請求項44の塗料組成物を塗布し、塗布した塗料組成物を硬化することを含む方法によって製造される塗装基材。

【公表番号】特表2010−536988(P2010−536988A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521841(P2010−521841)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/008670
【国際公開番号】WO2009/025703
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】