説明

住宅における雨水利用システム

【課題】特に寒冷地、とりわけ一年の間の寒暖の差が激しい山形地方などにおいても年間を通じて暖房機器を使用せずに稼働させることができる雨水利用システムを提供する。
【解決手段】屋根15および樋29,30を伝って落下する雨水をフィルター31で濾過した後に収容する雨水タンク27を住宅の戸外に設置した雨水利用設備空間28に収容し、この雨水タンクに貯めた水を住宅内の水洗トイレ25,26や植栽用に有効利用するようにした住宅における雨水利用システムであり、住宅室内にこもった熱を排熱するための換気ファン33と、該換気ファンによる排熱を雨水利用設備空間内に導入する第一の排熱路35と、該換気ファンによる排熱を直接戸外に排出する第二の排熱路36と、該換気ファンによる排熱を第一の排熱路と第二の排熱路のいずれか一方に選択的に通過させるための分岐スイッチ37とを有する。外気温または住宅室内温度を検出する温度センサからの検出結果に応じて分岐スイッチを自動制御するようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅における雨水利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅において、屋根や樋などを伝って落ちてくる雨水をフィルターで濾過した後に雨水タンクに貯水し、これを水洗トイレや植栽用に有効利用することが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
雨水タンクは戸外に設置されることが多いため、寒冷地の特に冬季には雨水タンク内の水が凍ってしまうことを防止するために暖房機器を稼働させなければならず、コストがかかっていた。
【0004】
本発明者は、冬季には外気が−10℃あるいはそれ以下にまで下がる寒冷地であり且つ寒暖差も激しい山形地方において長年に亘って住宅建設を手掛ける中で、暖房器具を一切使用せずに冬季を含む一年間を快適に過ごすことができるような住宅構造および工法を開発し、「ノーヒーティングシステム」の実現に成功した。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、特に寒冷地、とりわけ一年の間の寒暖の差が激しい山形地方などにおいても年間を通じて暖房機器を使用せずに稼働させることができる雨水利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る発明は、屋根および樋を伝って落下する雨水をフィルターで濾過した後に収容する雨水タンクを住宅の戸外に設置した雨水利用設備空間に収容し、この雨水タンクに貯めた水を住宅内の水洗トイレや植栽用に有効利用するようにした住宅における雨水利用システムにおいて、住宅室内にこもった熱を排熱するための換気ファンと、該換気ファンによる排熱を雨水利用設備空間内に導入する第一の排熱路と、該換気ファンによる排熱を直接戸外に排出する第二の排熱路と、該換気ファンによる排熱を第一の排熱路と第二の排熱路のいずれか一方に選択的に通過させるための分岐スイッチとを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の雨水利用システムにおいて、外気温または住宅室内温度を検出する温度センサからの検出結果に応じて分岐スイッチを自動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋根および樋を伝って落下する雨水をフィルターで濾過した後に収容する雨水タンクを住宅の戸外に設置した雨水利用設備空間に収容し、この雨水タンクに貯めた水を住宅内の水洗トイレや植栽用に有効利用するようにした住宅における雨水利用システムにおいて、住宅室内にこもった熱を排熱するための換気ファンと、該換気ファンによる排熱を雨水利用設備空間内に導入する第一の排熱路と、該換気ファンによる排熱を直接戸外に排出する第二の排熱路と、該換気ファンによる排熱を第一の排熱路と第二の排熱路のいずれか一方に選択的に通過させるための分岐スイッチとを設けている。
【0009】
このような構成を採用したことにより、主に冬季においては室内からの排熱を第一の排熱路に通過させるように分岐スイッチを操作し、排熱を雨水利用設備空間に送り込むことができる。これにより雨水利用設備空間が暖房されるので、冬季であっても雨水タンクが凍らず、貯まっている水を水洗トイレなどにおいて有効利用することができる。雨水タンクの凍結防止のために暖房機器を使用する必要がないので、東北などの寒冷地でも一年中雨水を家庭用トイレに利用することができ、水資源の節約およびコスト削減にきわめて有効である。
【0010】
一方、主として夏季においては室内の排熱を第二の排気路に通過させるように分岐スイッチを操作することにより、排熱を直接戸外に排出して室内温度が過度に上昇することを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1において、符号10は木造家屋住宅であり、この実施形態では二階建の住宅として示されている。符号11は一階居室の床、12は一階居室13の天井ないし二階居室14の床、15は屋根、16は階段を示す。
【0012】
この住宅10の南側には、一階居室13および二階居室14に隣接してサンヒーティングルームが設けられている。サンヒーティングルームは一階と二階を通して吹き抜けで設けても良いが、この実施形態では一階サンヒーティングルーム17と二階サンヒーティングルーム18とに分けて設けてある。一階サンヒーティングルーム17の外壁面17aと一階居室13側の室内面17bはいずれもほぼ全面または少なくとも比較的大面積の領域に亘ってガラス面(ガラス戸またはガラス窓)とされていて日射を有効に一階居室13に取り込めるようになっている。同様に、一階サンヒーティングルーム18についても外壁面18aと二階居室14側の室内面18bはいずれもほぼ全面または少なくとも比較的大面積の領域に亘ってガラス面(ガラス戸またはガラス窓)とされていて日射を有効に二階居室14に取り込めるようになっている。一階居室13と一階サンヒーティングルーム17との間の室内ガラス面17bと、二階居室14と二階サンヒーティングルーム18との間の室内ガラス面18bにはそれぞれドア(図示せず)が設けられていて一階居室13と一階サンヒーティングルーム17との間および二階居室14と二階サンヒーティングルーム18との間での出入りを可能にしている。
【0013】
一階サンヒーティングルーム17および二階サンヒーティングルーム18の各外壁ガラス面17a,18aの室内側にはブラインド19,20が取り付けられている。ブラインド19,20はフィンの角度が自動調整可能なタイプであり、このための制御ユニット32が適所に取り付けられている。なお、この実施形態では単一の制御ユニット32で一階のブラインド19と二階のブラインド20のフィン角度調整を同時に一括して制御するようにしているが、これらのブラインド19,20のフィン角度を個別独立に制御するために各々に専用の制御ユニットを用いる実施形態を採用しても良い。
【0014】
制御ユニット32は、日射量を検出する日射センサ22およびサンヒーティングルーム17,18の室温を検出する温度センサ23からの検出信号に基づいて、ブラインド19,20のフィン角度を自動調整する。このような日射センサ22および温度センサ23は公知であり、市場において容易に入手可能である。
【0015】
太陽光の日射角度は季節や時間および場所(緯度)によって大きく変動する。たとえば山形地方では、正午における日射角度は夏至のときで約80度、冬至のときで約30度である。日射センサ22が検出する日射量は日射角度および天候に依存して変動するが、冬季は積極的に日射を室内に取り込んで室温を上げる必要があるので、制御ユニット32は、ブラインド19,20のフィン角度を日射角度にほぼ一致させるように制御する。本発明者の実験によれば、このようにすると、外気温が−10℃のときであってもサンヒーティングルーム17,18の室温は40℃以上まで上昇することが分かった。このサンヒーティングルーム17,18の室温が境界ガラス面17b,18bを介して一階居室13および二階居室14に熱伝達して、これら居室を効果的に(たとえば上記外気温のときであっても室温20℃程度まで)暖房することができる。
【0016】
厳冬期以外では上記のようにするとサンヒーティングルーム17,18の室温が上がりすぎてしまうことがあるので、温度センサ23がたとえば40℃以上の室温を検出したときは、制御ユニット32は、日射を遮るようにブラインド19,20のフィン角度を調整する。図1において符号Sは夏季の日射、符号Wは冬季の日射を示している。
【0017】
なお、室内温度を上げるにはブラインド19,20のフィン角度を日射角度に略一致させて積極的に日射を取り込むようにするのが基本的な制御手法であるが、ブラインド19,20のフィン表面を黒色などの濃色にしたり、トランス1,4−ポリブタジエンなどの蓄熱性材料を主成分とする塗料を塗布したりすることで、日射をフィン表面に当てて蓄熱させることができるようにしても良い。この場合には、ブラインドの表面における蓄熱が徐々にサンヒーティングルーム17,18に放散されて該サンヒーティングルームの室温を維持し、したがって居室13,14内の室温低下を防ぐことができるので、たとえば、日射が得られている日中はブラインド19,20のフィン角度を日射角度に略一致させておき、日射が得られなくなる夕刻にブラインド19,20のフィン角度を日射角度に所定角度で交差させるようにして蓄熱効果を得るように制御することができる。
【0018】
一階サンヒーティングルーム17には、ヒートポンプ給湯装置21のコンプレッサー24が設置されている。コンプレッサー24は一般的には室外に設置されることが多いが、特に冬季の寒冷地などでは室外設置のコンプレッサー24から100℃近くの熱湯を作り出すのは熱効率がきわめて悪く、エネルギーを無駄に使うことになる。この実施形態によれば、前述のように外気温が−10℃などの厳冬期であってもサンヒーティングルーム17の室温を40℃以上とすることができるので、熱効率良くコンプレッサー24を作動させることができ、エネルギーの無駄な消費を抑える。また、コンプレッサー24を通過した空気は熱交換によって約7℃温度が下がるので、コンプレッサー24をサンヒーティングルーム17に設置することで、夏季にはこの冷排気を冷房用に使用することができる。
【0019】
この住宅10では、雨水を利用してトイレ25,26で使用する水を作り出すようにしている。符号27は雨水タンクであり、住宅10の構造躯体の凹所を利用して設置した雨水利用設備空間28内に収容され、外に向けた開口に扉を開閉可能に設けてメンテナンスなどを行えるようにしている。雨水は、屋根15、軒樋29および竪樋30を伝って落下し、フィルター31で濾過された後に雨水タンク27に貯水される。
【0020】
一階居室13や浴室(図示せず)などに換気ファン33が設けられ、この換気ファン33の作動によって室内からの排熱を排熱管34に送り込む。排熱管34は、雨水利用設備空間28に排気口を有する排熱利用管35と戸外に向けて排気口を有する排気管36とに分岐しており、いずれか一方を分岐スイッチ37で選択する。主に冬季においては室内からの排熱を排熱利用管35に通過させるように分岐スイッチ37を操作し、排熱を雨水利用設備空間28に送り込む。これにより雨水利用設備空間28が暖房されるので、冬季であっても雨水タンク27が凍らず、貯まっている水をトイレ25,26で利用することができる。雨水タンク27の凍結防止のためにヒータを設置する必要がないので、東北などの寒冷地でも一年中雨水を家庭用トイレに利用することができ、水資源の節約およびコスト削減にきわめて有効である。
【0021】
一方、主として夏季においては室内の排熱を排気管36に通過させるように分岐スイッチ37を操作して、排熱を直接戸外に排出して室内温度が過度に上昇することを防止する。換気ファン33は常時作動させても良いが、電気代が安く済む深夜の時間帯を中心として作動させることが好ましい。また、分岐スイッチ37の操作を手動で行うことに代えて、外気温や居室内温度を検出する温度センサなどからの検出結果を受けて自動的に分岐制御するようにしても良い。
【0022】
図示の実施形態における雨水タンク27はトイレ25,26の水として雨水を利用・供給するものであるが、これに代えて、またはこれと併用して、他の目的に雨水利用しても良いことは言うまでもない。たとえば、サンヒーティングルーム17,18や居室13,14に観葉植物などを置く場合の植栽用の水として雨水利用するために雨水タンクを使用することができる。特に、冬季であっても40℃以上の室温となる一階サンヒーティングルーム17に雨水タンクを設置すると、室内の排熱を利用しなくても凍結を防止することができるので、好ましい実施形態である。
【0023】
また、図示の実施形態では、ヒートポンプ給湯装置21のコンプレッサー24を一階サンヒーティングルーム17に設置しているが、これに代えて、またはこれと併用して、前述の雨水利用設備空間28に該コンプレッサーを設置しても良い。この場合も、前述のように冬季であっても室内からの排熱利用によって雨水利用設備空間28を暖めることができるので、熱効率を高めて省エネルギー消費に資すると共に、夏季には該コンプレッサーからの冷排気を冷房用に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による温度調整システムの一実施形態が適用された住宅の概略立面図である。
【図2】雨水利用設備空間の内部構造を概略的に示す平面図であり、(a)は主として冬季、(b)は主として夏季における排熱の流れを示す。
【符号の説明】
【0025】
10 住宅
11 一階床
12 二階床
13 一階居室
14 二階居室
15 屋根
16 階段
17 一階サンヒーティングルーム
17a 一階サンヒーティングルームの外壁ガラス面
17b 一階サンヒーティングルームの室内側ガラス面
18 二階サンヒーティングルーム
18a 二階サンヒーティングルームの外壁ガラス面
18b 二階サンヒーティングルームの室内側ガラス面
19 一階ブラインド
20 二階ブラインド
21 ヒートポンプ給湯装置
22 日射センサ
23 温度センサ
24 コンプレッサー
25 一階トイレ
26 二階トイレ
27 雨水タンク
28 雨水利用設備空間
29 軒樋
30 竪樋
31 フィルター
32 制御ユニット
33 換気ファン
34 排熱管
35 排熱利用管(第一の排熱路)
36 排気管(第二の排熱路)
37 分岐スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根および樋を伝って落下する雨水をフィルターで濾過した後に収容する雨水タンクを住宅の戸外に設置した雨水利用設備空間に収容し、この雨水タンクに貯めた水を住宅内の水洗トイレや植栽用に有効利用するようにした住宅における雨水利用システムにおいて、住宅室内にこもった熱を排熱するための換気ファンと、該換気ファンによる排熱を雨水利用設備空間内に導入する第一の排熱路と、該換気ファンによる排熱を直接戸外に排出する第二の排熱路と、該換気ファンによる排熱を第一の排熱路と第二の排熱路のいずれか一方に選択的に通過させるための分岐スイッチとを有することを特徴とする、住宅における雨水利用システム。
【請求項2】
外気温または住宅室内温度を検出する温度センサからの検出結果に応じて分岐スイッチを自動制御することを特徴とする、請求項1記載の雨水利用システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−299315(P2009−299315A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153130(P2008−153130)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(506231766)株式会社ボスコ (3)
【Fターム(参考)】