説明

住宅の床下用断熱材

【課題】 ヘキサブロモシクロドデカンの使用をなくして難燃性及び断熱性にすぐれ、温度変化によって膨脹したり収縮しないこと(寸法安定性)に優れ、シックハウス症候群へ対応することができる。
【解決手段】 水性懸濁液中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させた後、発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤100重量部に対して臭素系難燃剤として2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン40〜300重量部を上記可塑剤に溶解させてなる難燃剤溶解液を上記水性懸濁液中に供給して、
上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記難燃剤を含浸させることを特徴とする住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び住宅の床下用断熱材に関し、更に詳しくは、建築物の床における根太や大引き等の間、壁における柱や間柱の間、屋根における垂木の間等に配設して用いられる住宅の床下用断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等において断熱性能を高めるために、床における根太の間、あるいは、壁における柱や間柱等の支持部材の間に断熱材を配設する断熱工法は知られている。このような断熱工法において用いられる断熱材としては、従来よりグラスウールが広く一般に用いられていた。しかしながら、グラスウールは吸湿によって断熱効果の低下をきたし易いため、長期間にわたって高い断熱効果を期待できず、また施工性にも問題があった。このため、近年、この種の断熱材は、寸法安定性、断熱性に優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のものに移行しつつある。
床下断熱材としては防水性、耐吸湿性、防湿性および断熱性等のほかに、温度変化によって膨脹したり収縮しないこと(寸法安定性)が求められている。
また、この様な分野において、近年増加傾向にあるシックハウス症候群に対する対策のため、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、スチレン等の易揮発性有機化合物の放散量を低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−64212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家屋等の建築物の床下断熱材として利用される、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子としては、特許文献1に記載されたものが開示されている。しかし、特許文献1には、具体的な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法として懸濁重合法が記載されており、スチレンの重合過程の全てにおいてヘキサブロモシクロドデカンが存在している。ヘキサブロモシクロドデカンはその使用を無くすことが望まれており、なおかつスチレン単量体の重合阻害を発生させることが知られている。その結果、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中には残存易揮発性有機化合物が多く含有されており、近年要望されているシックハウス症候群への対応が困難になるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、水性懸濁液中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させた後、発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤100重量部に対して臭素系難燃剤として2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン40〜300重量部を上記可塑剤に溶解させてなる難燃剤溶解液を上記水性懸濁液中に供給して、
上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記難燃剤および難燃助剤を含浸させることを特徴とする住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒である。そして、断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体であって、平均弦長が20〜150μmである。
【0006】
特に、本発明による床下断熱材は、床における根太の間、あるいは、壁における柱や間柱等の支持部材の間に設置されるポリスチレン系発泡成形体であって、本発明のポリスチレン系発泡成形体の密度は0.020〜0.028g/cmであって、発泡体の平均弦長が20μm〜150μmであることを特徴とする。
【0007】
本発明の床下断熱材に使用されるポリスチレン発泡体は可塑剤として、例えばSP値が8.3以上9.4以下である有機化合物がアジピン酸エステル類を使用しており、その結果スチレン系モノマー、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、キシレン及びトルエンからなる群から選ばれた1種又は2種以上の芳香族有機化合物の総重量がポリスチレン発泡体の全重量に対して1000ppm未満であるポリスチレン発泡体であることを特徴としている。
【0008】
さらには、上記の範囲の寸法変化率を持つポリスチレン系発泡成形体は平均粒子径が0.3mm〜1.2mmである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ成形したものを用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床下断熱材用ポリスチレン発泡体は、ヘキサブロモシクロドデカンの使用を無くすことができ、難燃性及び断熱性にすぐれ、温度変化によって膨脹したり収縮しないこと(寸法安定性)に優れている。またホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、スチレン等の易揮発性有機化合物の含有量を1000ppm未満に抑えていることから、揮発する有機化合物量が少なく環境衛生に優れている。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の可塑剤として例えばSP値が8.3以上9.4以下のアジピン酸エステルを用いていることから、得られる発泡成形品は熱融着が良く揮発する有機化合物量が少なく環境衛生に優れている。
さらには成形体の平均気泡径を制御することにより断熱性に優れた発泡成形体であるため、建物内部の断熱性及び気密性を高める効果があるため、結果として居住空間内の冷暖房効果を有効に維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の床下用断熱材に使用される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は例えば以下のような構成が挙げられるが、この限りではない。
【0011】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水性懸濁液中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させた後、発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤100重量部に対して臭素系難燃剤として2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン40〜300重量部を上記可塑剤に溶解させてなる難燃剤溶解液を上記水性懸濁液中に供給して、上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記難燃剤および難燃助剤を含浸させることを特徴とする。
【0012】
本発明におけるポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、(2)水性媒体及びポリスチレン系樹脂種粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的に或いは断続的に供給して、ポリスチレン系樹樹脂種粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法などが挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子は、上記(1)の懸濁重合法により製造し分級すればよい。
【0013】
ここで、本発明におけるポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられる。
【0014】
更に、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を主成分とする、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
【0015】
そして、ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて型内発泡成形を行う場合に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子のキャビティ内への充填性の観点から、0.5〜2.0mmが好ましく、0.6〜1.2mmがより好ましい。粒子の平均粒子径が2.0mmを超えると、キャビティ内への予備発泡粒の充填性が悪化するため、充填不良が起こり金型の細部に発泡粒が充填できないため発泡性体を得られない問題があった。一方、粒子の平均粒子径が0.5mm以下であると、成形体の強度が不足し、施工時に成形体が割れるなどの問題があった。
【0016】
更に、ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができない虞れがあるので、20万〜50万が好ましく、24万〜40万がより好ましい。
【0017】
なお、上記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3,5トリメチルヘキサノエート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0018】
そして、水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液は、上記懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、或いは、上記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。なお、水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0019】
又、上記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系単量体を重合させる際に、スチレン系単量体の液滴又はポリスチレン系樹脂の種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよく、このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩などが挙げられ、難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0020】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0021】
そして、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、上記水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を公知の要領で含浸させる。このような発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しておリ、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−へキサン、石油エーテルなどの炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテルなどの低沸点のエーテル化合物、炭酸ガス、窒素、アンモニアなどの無機ガスなどが挙げられ、沸点が−45〜40℃の炭化水素が好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンがより好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる前に或いは含浸中に、可塑剤に2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン、難燃助剤を溶解させてなる難燃剤溶解液を上記水性懸濁液中に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子に難燃剤及び難燃助剤を含浸させる。なお、含浸は加圧下にてするのが好ましい。なお、水性媒体は、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液と相溶性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0023】
更に上記難燃剤に難燃助剤を併用することによって発泡性樹脂粒子に更に優れた難燃性を付与することができる。このような難燃助剤としては特に限定されず、例えば、ジクミルパーオキサイドなどが挙げられ、1時間半減期温度が100℃〜250℃であるものが好ましい。そして、発泡性樹脂粒子中における難燃助剤の含有量は、少ないと、発泡性樹脂粒子の難燃性が低下することがある一方、多くても、発泡性樹脂粒子の難燃性に変化がないことが多いので、可塑剤100重量部に対して20〜200重量部、すなわち発泡性ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.2〜2.0重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。
【0024】
上記難燃剤溶解液は、可塑剤に粉末状難燃剤を溶解させてなる。このような可塑剤としては、難燃剤を溶解させることができれば、特に限定されず、例えば、アジピン酸エステル類ではアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、フタル酸エステル類ではフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸エステル類ではセバシン酸ジブチル、などの1種又は2種以上が挙げられ、特にアジピン酸ジイソブチルが好ましい。
【0025】
このような可塑剤としては、SP値(Solubility parameter)が8.3以上9.4以下の有機物、好ましくはSP値が8.5以上9.2以下である、アジピン酸エステル類が挙げられ、特に好ましくはアジピン酸ジイソブチル(DIBA)(SP値=8.9)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)が好ましい。本発明のSP値は1分子の単位体積あたりの蒸発エネルギーΔEおよびモル容積Vを次式に代入することにより算出される。
(SP)=ΔE/V
【0026】
そして、上記難燃剤としては、ポリスチレン系樹脂粒子中に含浸させる条件において他の媒体に溶解させない状態で存在した場合に粉末状であればよく、臭素系フェノール誘導体の中でも2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパンが挙げられ、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパンがもっとも好ましい。
【0027】
そして、難燃剤溶解液中における粉末状難燃剤の含有量は、少ないと使用しなければならない難燃剤溶解液の量が多くなり、ポリスチレン系樹脂粒子中への難燃剤の含浸が低下する一方、多いと、難燃剤が可塑剤に溶解し難くなるので、可塑剤100重量部に対して40〜300重量部に限定され、50〜270重量部が好ましい。
特に、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパンは、可塑剤100重量部に対して40〜300重量部含有していることが好ましい。
【0028】
更に、水性懸濁液中に難燃剤溶解液を供給するにあたって、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における難燃剤の含有量が、難燃剤を含浸させるポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.4〜2.5重量部となるように、より好ましくは0.5〜2.0重量部となるように調整することが好ましい。これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における難燃剤の含有量が少ないと、得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の自消性が悪化することがあるからである。
【0029】
可塑剤中に含有される粉末状難燃剤2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパンを持つ難燃剤は可塑剤中に均一に分散されている。さらに可塑剤は液状であって水性懸濁液中に均一に且つ安定的に分散することから、この可塑剤中に均一に分散している粉末状難燃剤も水性懸濁液中に均一に且つ安定的に分散させることができ、よって、水性懸濁液中に分散させた各ポリスチレン系樹脂粒子中に難燃剤を均一に且つ優れた含浸効率にて含浸させることが可能である。
粉末状難燃剤を可塑剤に溶解させる要領としては、特に限定されず、例えば、可塑剤を所定温度に加熱した上で、この可塑剤を攪拌しながら可塑剤中に粉末状難燃剤を添加する方法などが挙げられる。
【0030】
なお、水性媒体は、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液と相溶性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液の水性媒体と同一のものが好ましい。
そして、難燃剤溶解液を分散させる水性媒体の量は、少ないと、難燃剤溶解液を水性媒体中に安定的に分散させることができないことがある一方、多いと、ポリスチレン系樹脂中への難燃剤の含浸効率が低下することがあるので、難燃剤溶解液中の可塑剤100重量部に対して100〜3000重量部に限定され、200〜2000重量部が好ましい。
【0031】
又、難燃剤溶解液を水性媒体中に分散させる場合、水性媒体中に、難燃剤溶解液と水性媒体との間における界面エネルギーを低下させて、難燃剤溶解液を難燃剤溶解液中により安定的に分散させるために界面活性剤を含有させてもよい。
このような界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤;アルキルアンモニウム酢酸塩類、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩類、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類、オキシアルキレンアルキルアミン類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などのカチオン界面活性剤;脂肪酸ジエタノールアミド類、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール類、ポリエーテル変性シリコーン類などのノニオン界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
なお、界面活性剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
そして、界面活性剤の使用量は、少ないと、水性媒体中における難燃剤溶解液の分散性が向上しない一方、多いと、界面活性剤に起因した泡立ちが過剰になり、生産上のトラブルが発生する虞れがあるので、難燃剤溶解液中の可塑剤100重量部に対して0.005〜10重量部が好ましく、更には0.05〜5重量部が好ましい。
【0033】
又、難燃剤溶解液を水性媒体中に分散させる場合、水性媒体中に難水溶性無機塩を含有させることが好ましく、このような難水溶性無機塩としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、ピロリン酸マグネシウムが好ましい。
【0034】
そして、難水溶性無機塩の使用量は、少ないと、水性媒体中における難燃剤溶解液の分散性が低下することがある一方、多いと、難燃剤溶解液を分散させてなる分散液の粘性が上昇して、難燃剤溶解液が水性媒体中に均一に分散させることができないので、難燃剤溶解液中の可塑剤100重量部に対して10〜500重量部が好ましく、更には20〜200重量部が好ましい。
【0035】
難燃剤溶解液を水性媒体中に分散させる要領としては、粉末状難燃剤が全て可塑剤に溶解した状態で、可塑剤が水性媒体中に分散しておればよく、例えば、水性媒体中に必要に応じて界面活性剤や難水溶性無機塩を添加して所定温度に加熱した上で、粉末状難燃剤及び可塑剤を添加して攪拌し、粉末状難燃剤を可塑剤に溶解させて難燃剤溶解液を形成させると同時に難燃剤溶解液を水性媒体中に分散させる方法、水性媒体中に必要に応じて界面活性剤や難水溶性無機塩を添加して所定温度に加熱する一方、粉末状難燃剤を可塑剤に溶解させて難燃剤溶解液を作製し、この難燃剤溶解液を上記水性媒体中に供給して攪拌して分散させる方法などが挙げられる。
【0036】
この難燃剤溶解液又は該難燃剤溶解液を水性媒体に分散させてなる難燃剤溶解液の分散体を、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させている水性懸濁液中に添加する時期は、発泡剤の含浸前あるいは含浸途中のいずれであってもよく、又、難燃剤溶解液若しくは該難燃剤溶解液の分散体の水性懸濁液への添加は、難燃剤溶解液又は該難燃剤溶解液の分散体を全量、一度に添加してもよいし、難燃剤溶解液又は該難燃剤溶解液の分散体を複数回に分けて添加してもよいし、或いは、難燃剤溶解液又は該難燃剤溶解液の分散体を少量づつ連続的に添加してもよい。
そして、水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤及び難燃剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造した後、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水性懸濁液中から取り出して、必要に応じて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に洗浄処理、乾燥処理を施せばよい。
【0037】
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、難燃剤以外に、物性を損なわない範囲内において、気泡調整剤、充填剤、滑剤、着色剤、溶剤などの添加剤を必要に応じて添加することができ、これら添加剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に添加する場合には、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させた水性懸濁液中に添加剤を添加するか、又は、難燃剤溶解液若しくは該難燃剤溶解液の分散体中に添加剤を添加すればよい。
【0038】
次に、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いてポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造要領について説明する。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いてポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する要領としては、公知の方法を採用することができ、具体的には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡させて、嵩密度0.01〜0.05g/cm程度のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子とし、このポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱、発泡させることによってポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0039】
又、発泡体の平均弦長は、20〜150μmが好ましく、30〜120μmがより好ましい。これは、発泡成形体の気泡の平均弦長が小さいと、発泡成形体中における気泡壁の数、即ち、気泡壁の表面積が多くなり過ぎて各気泡壁の厚さが薄くなり、気泡壁の数は多くなって熱の遮断回数は多くなるものの、気泡壁による熱の遮断効果の低下度合いの方が大きくなってしまい、結果として、発泡成形体の収縮が大きくなってしまう。一方、発泡成形体の平均弦長が大きいと、発泡成形体の厚み方向における全体の気泡数が減少し、その結果、発泡成形体の強度が低下してしまうからである。
【0040】
上記ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度は、低いと、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の独立気泡率が低下して、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性や機械的強度が低下することがある一方、高いと、型内発泡成形における一サイクルに要する時間が長くなり、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の生産効率が低下することがあるので、0.01〜0.05g/cmが好ましい。さらに、床下断熱材に用いられる場合には0.020〜0.028g/cm3が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに、第三リン酸カルシウム(大平化学社製)120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.4g、ペンゾイルパーオキサイド(純度75重量%)160g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを供給して攪拌羽を100rpmの回転速度にて回転させて攪拌して水性懸濁液を形成した。
【0042】
次に.攪拌羽を100rpmの回転速度で回転させて水性懸濁液を攪拌しながら、オートクレーブ内の温度を90℃まで昇温して90℃にて6時間に亘って保持し、更に、オートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間に亘って保持することによって、スチレン単量体を懸濁重合した。
【0043】
しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却してオートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、粒子径が0.6〜0.85mmで且つ重量平均分子量が30万のポリスチレン粒子を得た。
【0044】
次に、別の100リットルの攪拌機付オートクレーブにイオン交換水30kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4g、ピロリン酸マグネシウム100gを供給した後、オートクレーブ内に上記ポリスチレン粒子11kgを種粒子として供給して攪拌して水中に均一に分散させた。
【0045】
又、イオン交換水6kgにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g及びピロリン酸マグネシウム20gを分散させてなる分散液を作製する一方、スチレン単量体5kgに重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド(純度75%)132g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート50gを溶解させてなるスチレン単量体溶液を作製し、このスチレン単量体溶液を上記分散液に添加してホモミキサーを用いて攪拌して乳濁化させて乳濁液を得た。
【0046】
そして、オートクレーブ内を75℃に加熱、保持した上でオートクレーブ内に上記乳濁液を添加し、ポリスチレン種粒子中にスチレン単量体及びベンゾイルパーオキサイドが円滑に吸収されるように30分間に亘って保持し、しかる後、オートクレーブ内を75℃から108℃まで0.2℃/分の昇温速度で昇温しながら、オートクレーブ内にスチレン単量体28kgを160分かけて連続的に滴下し、次に、スチレン単量体の滴下が終了してから20分後に、1℃/分の昇温速度で120℃まで昇温して90分間に亘って保持してシード重合によりポリスチレン粒子を得た。又、スチレン単量体は全て重合に用いられていた。
【0047】
イオン交換水2kgにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6g及び複分解法で得られたピロリン酸マグネシウム112gを供給して攪拌した上で50℃に加熱、保持しつつ、上記イオン交換水中に可塑剤としてアジピン酸ジイソブチル(SP値=8.9)(DIBA)(田岡化学工業社 製商品名「DI4A」350g、難燃剤2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン(第一工業製薬社製)310g及び難燃助剤ジクミルパーオキサイド130gを加え、ホモミキサー(特殊機化工業社製 T.K.ホモミクサーMARK II fmodel)を用いて7000rpmで30分間に旦って攪拌して、難燃剤及び難燃助剤を中に全て溶解させて難燃剤溶解液を形成すると同時に、この難燃剤溶解液をイオン交換水中に分散させて難燃剤溶解液の分散体を形成した。次にオートクレーブ内を1℃/分の降温速度にて50℃まで冷却した上で、上記難燃剤溶液をオートクレーブ内に供給した。
【0048】
そして、オートクレーブ内に難燃剤溶液を供給してから30分経過後にオートクレーブを密閉し、しかる後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン(重量比)=3300gを窒素加圧によってオートクレーブ内に30分間で圧入し、オートクレーブ内を表1の「発泡剤含浸温度」に示した温度まで昇温させその温度で2時間30分保持した。
【0049】
しかる後、オートクレーブ内を25℃まで冷却し.オートクレーブ内から発泡性ポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、難燃性発泡性ポリスチレン粒子を分級して粒子径が0.90〜1.40mm、平均粒子径が1.1mmの熱可塑性発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、難燃剤溶解液は全てポリスチレン粒子に含浸されていた。
【0050】
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
(実施例2)
難燃剤を310gの代わりに180gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
【0051】
(実施例3)
難燃剤を310gの代わりに660gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
【0052】
(実施例4)
発泡剤含浸温度を100℃の代わりに97℃としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
【0053】
(実施例5)
発泡剤含浸温度を100℃の代わりに103℃としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
【0054】
(実施例6)
可塑剤としてアジピン酸ジイソブチルの代わりにセバシン酸ジブチル(DBS)(SP値=9.2)を使用したこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。さらに得られた発泡成形体は、断熱性能が優れているとともに、外観が良好であった。
【0055】
(比較例1)
難燃剤2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパンの代わりにテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3ジブロモプロピルエーテル)としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この発泡性ポリスチレン粒子を用いて予備発泡させた予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体を作成したところ、そのキャビティ内への充填性が良好であった。また得られた発泡成形体はその発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られず、難燃剤の均一吸収が起こっていた。また得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ、難燃剤の使用量が適度であることから、気泡の密化は見られなかった。しかし得られたポリスチレン発泡成形体の燃焼試験は、燃焼し、自消性は×であった。
【0056】
(比較例2)
難燃剤を310gの代わりに130gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。そのため、難燃剤の不均一吸収が起こり、発泡性成形体の発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られた。
(比較例3)
難燃剤を310gの代わりに1300gとしたこと以外は実施例2と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ難燃剤の使用量が多いため気泡の密化が見られた。そのため、発泡性成形体の発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られた。
【0057】
(比較例4)
発泡剤含浸温度を100℃の代わりに80℃としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ160μmとなり発泡体の外観が悪く、そのため、発泡性成形体の発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られた。
【0058】
(比較例5)
発泡剤含浸温度を100℃の代わりに120℃としたこと以外は実施例2と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。得られた発泡成形体の平均弦長を測定したところ15μmとなりそのため、発泡性成形体の発泡粒子同士の融着部分に凹凸が見られた。
【0059】
(比較例6)
可塑剤をアジピン酸ジイソブチルの代わりにフタル酸ジメチル(DMP)(SP値=10.7)としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。しかし、得られた発泡性ポリスチレン粒子を予備発泡したところ、予備発泡機内の缶壁への付着物が多く、また発泡粒子同士が合一したブロッキング量が多かったため、結果として発泡成形体を得ることが出来なかった。
【0060】
(比較例7)
可塑剤をアジピン酸ジイソブチルの代わりに流動パラフィン(SP値=7.5)としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン粒子を得た。しかし、得られた発泡性ポリスチレン粒子を予備発泡したところ、予備発泡機内の缶壁への付着物が多く、また発泡粒子同士が合一したブロッキング量が多かったため、結果として発泡成形体を得ることが出来なかった。
【0061】
得られた発泡性ポリスチレン粒子について、予備発泡性、発泡成形性、燃焼性、並びに、発泡成形体の気泡の平均弦長を下記の要領で測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
[予備発泡]
得られた発泡性ポリスチレン粒子40000g、並びに、表面処理剤としてポリエチレングリコール10g、ステアリン酸亜鉛40g、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド(川研ファインケミカル社製 商品名「K−3ワックス500」)16g及びステアリン酸モノグリセライド(理研ビタミン社製 商品名「リケマールS−100F」)20gをタンブラーミキサーに供給し、30分間に亘って攪拌して発泡性ポリスチレン粒子の表面に表面処理剤を被覆した。
次に、発泡性ポリスチレン粒子を15℃の保冷庫にて48時間に旦って保管した後、攪拌機付き予備発泡機に発泡性ポリスチレン粒子420gを供給して水蒸気を用いて加熱することによって予備発泡させ、嵩倍数40倍の予備発泡粒子を得た。
(発泡成形性)
上記ポリスチレン予備発泡粒子を発泡成形機(積水工機社製 商品名「ACE−3SP」)の金型内に充填し、水蒸気を用いて二次発泡させることによって、縦300mm×横400mm×高さ30mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
(発泡成形体の外観評価)
発泡成形体の外観を目視観察し下記の基準に基づいて評価をした。
○・・・発泡粒子同士の融着部分が平滑であった。
×・・・発泡粒子同士の融着部分に凹凸が発生していた。
【0065】
[燃焼性試験]
得られたポリスチレン発泡成形体から縦200mm×横25mm×高さ10mmの直方体形状の試験片5個をバーチカルカッターにて切り出し、60℃オーブンで1日間養生後、JIS A9511−2006の測定方法Aに準じて測定を行い、5個の試験片の平均値を求め、消炎時間とし、下記基準に基づいて総合的に評価し.その結果を自消性として表1、2に示した。なお、上記JIS規格では消炎時間が3秒以内である必要があり、2秒以内であれば好ましく、1秒以内であればより好ましい。
×・・・消炎時間が3秒を超えているか、又は、試験片の1個でも残じんがあるか若しくは燃焼限界指示線を超えて燃焼する。
○・・・消炎時間が3秒以内であり、5個のサンプル全てにおいて、残じんがなく燃焼限界指示線を超えて燃焼しない。
◎・・・消炎時間が1秒以内であり、5個のサンプル全てにおいて、残じんがなく燃焼限界指示線を超えて燃焼しない。
【0066】
[平均弦長]
発泡成形体の平均弦長は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には、発泡成形体を略二等分となるように切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 商品名「S−3000N」)を用いて100倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描く、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することもなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。更に、撮影した画像の任意の5箇所において上述と同様の要領で平均弦長を算出し、これらの平均弦長の相加平均値を発泡成形体の平均弦長とする。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、住宅の床下用断熱材に用いられる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させた後、発泡剤を含浸させる前又は含浸中に、溶解性パラメーター値(SP値)が8.3以上9.4以下である可塑剤100重量部に対して臭素系難燃剤として2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモアルコキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン40〜300重量部を上記可塑剤に溶解させてなる難燃剤溶解液を上記水性懸濁液中に供給して、
上記ポリスチレン系樹脂粒子中に上記難燃剤を含浸させることを特徴とする
住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記可塑剤は、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル又はセバシン酸エステル類である請求項1記載の住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の住宅の床下に用いられる断熱材用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなることを特徴とする住宅の床下に用いられる断熱材用予備発泡粒子。
【請求項4】
請求項3記載の予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られたことを特徴とする発泡成形体であって平均弦長が20〜150μmであることを特徴とする住宅の床下用断熱材。
【請求項5】
請求項4記載の住宅の床下用断熱材であって、
スチレン系モノマー、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、キシレン及びトルエンからなる群から選ばれた1種又は2種以上の芳香族有機化合物の総重量がポリスチレン発泡体の全重量に対して1000ppm未満であることを特徴とする住宅の床下用断熱材。
【請求項6】
請求項4又は5記載の予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られたポリスチレン系発泡成形体であって、
ポリスチレン系発泡成形体の密度が0.020〜0.028g/cmであり、
ポリスチレン系発泡成形体は平均粒子径が0.3mm〜1.2mmのポリスチレン系樹脂粒子である住宅の床下用断熱材。


【公開番号】特開2011−12104(P2011−12104A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155121(P2009−155121)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】