説明

住宅の階段下構造

【課題】住宅の室内に配置した直階段の下側空間を、機能的且つ効率的に有効利用することができる階段下構造の提供を目的とする。
【解決手段】この階段下構造は、蹴込板を廃止したシースルータイプの直階段10を、室内1の壁面1aに沿って配置して、直階段10の下側空間20における一方の側面を、室内1の壁面1aによって閉塞するとともに、下側空間20のうち直階段10の下半分10aの下側に位置する小空間21における他方の側面を、間仕切り壁7によって閉塞して、下側空間20のうち直階段10の上半分10bの下側に位置する大空間22における他方の側面を、開放状態としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅の室内に配置した直階段の下側空間を有効利用するための階段下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅の室内に配置した直階段の下側空間を、壁や建具によって覆い隠して、収納空間として利用するといった提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。ところが、特に狭小な室内においては、直階段の下側空間を収納空間として利用すると、その分だけ室内の生活空間が狭められて、窮屈感や圧迫感を与えてしまうといった不具合があった。
【0003】
一方で、住宅の室内に配置した直階段の下側空間を、壁や建具によって覆い隠すことなく開放して、室内の生活空間に一体的に連続させることで、生活空間の一部として利用することも日常的になされている。ところが、直階段の下側空間のうち、特に直階段の下半分の下側に位置する小空間は、高さが低くて狭いことから、生活空間としての使い勝手が悪く、しかも開放することで人目につき易くなることから、収納空間としての利用にも適さず、デッドスペースとなり易いといった不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−128216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来においては、住宅の室内に配置した直階段の下側空間を、収納空間や生活空間の一部として利用してはいるものの、今一つ機能性や効率性に欠けていて、十分な有効利用が図れていないのが実情であった。
【0006】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、住宅の室内に配置した直階段の下側空間を、機能的且つ効率的に有効利用することができる階段下構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の住宅の階段下構造は、蹴込板を廃止したシースルータイプの直階段10を、室内1の壁面1aに沿って配置して、前記直階段10の下側空間20における一方の側面を、前記室内1の壁面1aによって閉塞するとともに、前記下側空間20のうち前記直階段10の下半分10aの下側に位置する小空間21における他方の側面を、前記室内1の壁面1aに対して前記直階段10を挟んで対向し、且つ、前記室内1の床面1bと天井面1cとに跨るように配置した間仕切り壁7によって閉塞して、前記下側空間20のうち前記直階段10の上半分10bの下側に位置する大空間22における他方の側面を、開放状態としたことを特徴とする。そして、前記下側空間20の床仕様を、前記室内1の主空間の床仕様と同じにしている。
【0008】
また、前記大空間22の他方の側面に対して直交する前記大空間22の階段上端側の前面を、開放状態としている。
【0009】
さらに、前記大空間22の他方の側面に対して直交する前記大空間22の階段上端側の前面を、前記室内1の壁面1aに対して直交し、且つ、前記室内1の床面1bと天井面1cとに跨るように配置した別の間仕切り壁30によって閉塞するとともに、前記室内1の壁面1aに前記大空間22の一方の側面を開放状態とする出入口33を形成して、前記室内1と別の室内34とを前記大空間22を介して出入可能に連通している。さらにまた、この場合、前記間仕切り壁7と別の間仕切り壁30とを、前記室内1の壁面1aに対して前記直階段10を挟んで対向し、且つ、前記室内1の天井面1cから垂下した垂れ壁31を介して連結している。
【発明の効果】
【0010】
この発明の住宅の階段下構造によれば、直階段の下側空間は、その大空間の他方の側面が開放されているので、室内の生活空間に一体的に連続した状態となって、生活空間の一部として有効に利用することができる。さらに、下側空間は、その上方がシースルータイプの直階段によって覆われ、その一方の側面が室内の壁面によって覆われ、他方の側面が間仕切り壁によって半分程度覆われた状態となっているので、単に生活空間を拡張するだけではなく、光や風が通り抜ける開放感と適度な囲われ感を両立した特異な空間となり、例えば簡易な居室等として多目的に利用することができる。しかも、下側空間のうち、特に高さが低くて狭くなっている小空間が重点的に覆われて、人目につき難い状態となっているので、生活空間としての使い勝手が今一つの小空間を、収納空間や物干し空間として有効に利用することができる。これにより、直階段の下側空間を、機能的且つ効率的に有効利用することができる。
【0011】
また、直階段の下側空間における大空間の階段上端側の前面を開放することで、直階段の下側空間における室内の生活空間との繋がりが良好になり、生活空間の一部としての使い勝手を向上することができる。
【0012】
さらに、直階段の下側空間における大空間の階段上端側の前面を別の間仕切り壁によって覆うとともに、大空間の一方の側面を出入口によって開放して、室内と別の室内とを大空間を介して出入可能に連通することで、直階段の下側空間を、ある程度の広がりを持った通路として利用することができるとともに、室内及び別の室内の生活空間の一部として共有することができ、利便性を高めることができる。さらにまた、間仕切り壁と別の間仕切り壁とを垂れ壁を介して連結することで、直階段全体を連続した壁で囲って見栄えを良好にすることができるとともに、直階段の昇降時の安全性を高めることができる。
【0013】
また、直階段の下側空間の床仕様を室内の生活空間の床仕様に合わせることで、室内の生活空間と下側空間との一体感を高めることができ、下側空間を生活空間の一部として違和感なく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る階段下構造を示す斜視図である。
【図2】同じくその側面図である。
【図3】同じくその横断面図である。
【図4】直階段の設置構造を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態に係る階段下構造を示す斜視図である。
【図6】同じくその側面図である。
【図7】同じくその横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の第1実施形態に係る階段下構造は、図1乃至図3に示すように、例えば狭小住宅における1階の室内1に適用されており、シースルータイプの直階段10を使用して、その下側空間20の有効利用を図るようにしている。
【0016】
なお、室内1には、キッチン2、ダイニング3、リビング4が一続きに設けられ、これらキッチン2、ダイニング3、リビング4によって室内1の主空間(生活空間)が構成されており、またキッチン2と玄関5とが壁6を介して隣接されている。
【0017】
直階段10は、図1及び図4に示すように、左右一対のささら桁12間に複数の段板13を段差状に差し渡すことによってユニット化されており、段板13間において蹴込板が廃止されていて、段板13間の隙間を通して光や風が通り抜けるようになっている。この直階段10は、ささら桁12の上端部が連結具を介して2階床梁15に固定され、ささら桁12の下端部が連結具を介して1階土間コンクリート16に固定された状態で、室内1における長手方向の壁面1aに沿って配置されている。
【0018】
この直階段10の下半分10aは、室内1の壁面1aと間仕切り壁7とによって挟まれた状態となっていて、直階段10の上半分10bは、一方の側面側に室内1の壁面1aが存在するだけとなっている。間仕切り壁7は、室内1の壁面1aに対して直階段10を挟んで対向し、且つ、室内1の床面1bと天井面1cとに跨るように配置されている。
【0019】
直階段10の下側空間20は、直階段10の下半分10aの下側に位置する側断面略三角形状の小空間21と、直階段10の上半分10bの下側に位置する側断面略台形状の大空間22とが連続した状態となっている。そして、下側空間20における一方の側面が、室内1の壁面1aによって閉塞され、下側空間20のうち小空間21における他方の側面が、間仕切り壁7によって閉塞されて、下側空間20のうち大空間22における他方の側面、及び、この他方の側面に対して直交する階段上端側の前面が、開放状態とされている。なお、図2中、白抜き矢印は前後方向を示している。
【0020】
また、下側空間20の床仕様は、室内1の主空間(生活空間)の床仕様と同じフローリング仕上げとされていて、室内1の主空間(生活空間)の床と下側空間20の床とが見境なく連続した状態となっている。
【0021】
上記構成により、直階段10の下側空間20は、その大空間22の他方の側面及び前面が開放されていることで、室内1の生活空間に一体的に連続した状態となって、生活空間の一部として有効に利用することができる。さらに、下側空間20は、その上方がシースルータイプの直階段10によって覆われ、その一方の側面が室内1の壁面1aによって覆われ、他方の側面が間仕切り壁7によって半分程度覆われた状態となっているので、単に生活空間を拡張するだけではなく、光や風が通り抜ける開放感と適度な囲われ感を両立した特異な空間となり、例えば書斎や子どもの遊び場等のような簡易な居室として多目的に利用することができる。なお、図1乃至図3においては、室内1の生活空間と下側空間20とに跨るようにして、室内1の壁面1aに沿って長机8を設けて、大空間22を書斎として利用した例を示している。
【0022】
しかも、下側空間20のうち、特に高さが低くて狭くなっている小空間21が重点的に覆われて、人目につき難い状態となっているので、生活空間としての使い勝手が今一つの小空間21を、収納空間や物干し空間として有効に利用することができる。
【0023】
次に、第2実施形態に係る階段下構造について説明する。この第2実施形態に係る階段下構造では、図5乃至図7に示すように、直階段10の下側空間20において、その大空間22の階段上端側の前面が、別の間仕切り壁30によって閉塞され、間仕切り壁7と別の間仕切り壁30とが垂れ壁31を介して連結されている。
【0024】
別の間仕切り壁30は、室内1の壁面1aに対して直交し、且つ、室内1の床面1bと天井面1cとに跨るように配置されている。また、垂れ壁31は、室内1の壁面1aに対して直階段10を挟んで対向し、且つ、室内1の天井面1cから垂下されている。
【0025】
そして、この垂れ壁31の直下における間仕切り壁7と別の間仕切り壁30との間の開口部分32によって、大空間22の他方の側面が開放状態とされている。また、室内1の壁面1aには、大空間22の一方の側面を開放状態とする出入口33が形成されている。そして、開口部分32と出入口33とは大空間22を挟んで対向配置されていて、これにより室内1と別の室内34とが大空間22を介して出入可能に連通された状態となっている。
【0026】
なお、室内1には、ダイニング35、リビング36が一続きに設けられ、これらダイニング35、リビング36によって室内1の主空間(生活空間)が構成されており、また別の室内34には、キッチン37が設けられ、このキッチン37によって別の室内34の主空間(生活空間)が構成されている。
【0027】
また、下側空間20の床仕様は、室内1の主空間(生活空間)及び別の室内34の主空間(生活空間)の床仕様と同じフローリング仕上げとされていて、これら室内1、34の主空間(生活空間)の床と下側空間20の床とが見境なく連続した状態となっている。
【0028】
上記構成により、直階段10の下側空間20は、その大空間22の両方の側面が開放されて、室内1と別の室内34とを繋ぐある程度の広がりを持った通路として利用することができるとともに、室内1及び別の室内34の生活空間の一部として共有することができる。さらに、下側空間20は、その上方がシースルータイプの直階段10によって覆われ、小空間21の一方の側面が室内1の壁面1aによって覆われ、小空間21の他方の側面が間仕切り壁7によって覆われ、大空間22の前面が別の間仕切り壁30によって覆われた状態となっているので、光や風が通り抜ける開放感と適度な囲われ感を両立した特異な空間となり、簡易な居室としても利用することができる。なお、第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0029】
以上に、この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、シースルータイプの直階段としては、上記のようにユニット化されたものだけに限らず、造り付けのものであっても良い。また、直階段の下側空間の床仕様は、必ずしも室内の主空間の床仕様と同じにする必要はなく、フローリング以外のタイルやカーペット等であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・室内、1a・・壁面、1b・・床面、1c・・天井面、7・・間仕切り壁、10・・直階段、10a・・直階段の下半分、10b・・直階段の上半分、20・・下側空間、21・・小空間、22・・大空間、30・・別の間仕切り壁、31・・垂れ壁、33・・出入口、34・・別の室内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蹴込板を廃止したシースルータイプの直階段(10)を、室内(1)の壁面(1a)に沿って配置して、前記直階段(10)の下側空間(20)における一方の側面を、前記室内(1)の壁面(1a)によって閉塞するとともに、前記下側空間(20)のうち前記直階段(10)の下半分(10a)の下側に位置する小空間(21)における他方の側面を、前記室内(1)の壁面(1a)に対して前記直階段(10)を挟んで対向し、且つ、前記室内(1)の床面(1b)と天井面(1c)とに跨るように配置した間仕切り壁(7)によって閉塞して、前記下側空間(20)のうち前記直階段(10)の上半分(10b)の下側に位置する大空間(22)における他方の側面を、開放状態としたことを特徴とする住宅の階段下構造。
【請求項2】
前記大空間(22)の他方の側面に対して直交する前記大空間(22)の階段上端側の前面を、開放状態とした請求項1記載の住宅の階段下構造。
【請求項3】
前記大空間(22)の他方の側面に対して直交する前記大空間(22)の階段上端側の前面を、前記室内(1)の壁面(1a)に対して直交し、且つ、前記室内(1)の床面(1b)と天井面(1c)とに跨るように配置した別の間仕切り壁(30)によって閉塞するとともに、前記室内(1)の壁面(1a)に前記大空間(22)の一方の側面を開放状態とする出入口(33)を形成して、前記室内(1)と別の室内(34)とを前記大空間(22)を介して出入可能に連通した請求項1記載の住宅の階段下構造。
【請求項4】
前記間仕切り壁(7)と別の間仕切り壁(30)とを、前記室内(1)の壁面(1a)に対して前記直階段(10)を挟んで対向し、且つ、前記室内(1)の天井面(1c)から垂下した垂れ壁(31)を介して連結した請求項3記載の住宅の階段下構造。
【請求項5】
前記下側空間(20)の床仕様を、前記室内(1)の主空間の床仕様と同じにした請求項1乃至4のいずれかに記載の住宅の階段下構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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