説明

住宅建築用高温炭内蔵パネル材

【課題】調湿性、防臭性にすぐれ、シックハウス症候群の発生を予防する住宅建築用パネル材を提供する。
【解決手段】小胞区画室をパネル材内芯部に形成したペーパーボード、ハニカムボード等においてその小胞区画室内に高温炭を収納させることにより、ベンゼン、トルエン等有機溶剤系の中性のVOCsガス、硫化水素(H2S)。NOx、SOx等酸性ガスを吸着し、防臭性および調湿機能をも併わせ持った住宅建築用高温炭内蔵パネル材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシックハウス症候群の発生を予防し、防臭性および調湿性の良い住宅建築用パネル材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつては日本の在来住宅建築は木造住宅が中心であり、湿度の高い日本の気候風土適したものであったが、近年になりコスト面からの低価格維持および製造容易性からいわゆる新建材といわれる素材成を中心としたプレファブ建築が一般的になってきた。従来型木造住宅であってもパネル材にはこのような新建材を採用するケースが多く見られるようになった。
【0003】
これら新建材は従来型木造住宅と比較してその吸湿性において劣り、かつ、その材料、接着剤、表面塗装剤として合成樹脂系素材を使用することが一般的であり、これらからは好ましくない臭気が発生する。そこで、防湿効果または防臭効果を向上させるために住宅建築用パネル材に木炭粉末を収納したりパネル材塗料に木炭粉末を混入させる、等の各種の工夫がなされた。
【0004】
木炭系素材を建材の一部として採用すると、湿度の高いときには室内の水分を炭類の内部微細孔に吸収保持する機能を有し、室内が乾燥状態になり湿度が下がってくると保持していた水分を放出する、という優れた調湿機能を有している。
【0005】
しかし、従来は調湿機能や防臭機能を期待して単純に木炭系素材を利用するだけで、新建材、塗料、接着剤等から発生する有害ガス対しての除去機能からの観点、あるいはそれらの除去目的で使用する木炭の質による効果の差異までの着目および研究がなされていなかったのが現状であった。
【0006】
最近の住宅はエアコン設備等の普及により、調湿面において、室内環境からは問題にする必要はなくなったと言えるが、前述のこれら新建材等から発生する人体に有害なガスおよび臭気に対してエアコン等は有効ではなく、また、木炭あるいは活性炭をパネル材に適用しただけでは吸着、除去する対象のガスに限界があった。
特に新建材から発生する、いわゆるハウスシック症候群を引き起こす原因となる有機溶剤系VOCsガスに対して十分に除去効果のある材質が要求されるようになった。
【0007】
また備長炭、竹炭、活性炭等をそれらの防臭効果および調湿効果を期待してパネル材各部に適用してきたが、充分といえるほどの効果を得ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで各種試験の結果、高温炭が一般的な木炭系素材や活性炭よりも優れた防湿および防臭効果があり、さらにハウスシック症候群を引き起こす原因となる有機溶剤系VOCsガスにも極めて高い除去効果のあることをつきとめ、この高温炭を住宅パネル材の構成主要素として採用することにより従来型のパネル材では不十分であった前述の有害ガスの除去効果を可能にした。
【0009】
炭はその焼成温度によって、低温炭(500℃以下)、中音炭(500〜800℃)および高温炭(800〜1200℃)と区分でき、その特性もかなり異なるものである。
【0010】
低温炭はアルカリ性のアンモニア系ガスやアミン系ガスの吸着力が強く、経験的にその効果は知られており、防臭・脱臭用として一般的に使用されていた。それらの除去対象である生活臭の多くはアンモニア系ガスに起因するものであるので、日常使っていた低温炭で防臭・脱臭効果を得ることができ、特に問題はなかった。
【0011】
しかし、前述の如くかつての木造建築住宅と異なり、新建材を多用する最近の住宅建築においては各種の化学物質が発生するようになり、従来の低温炭や活性炭ではそれらをすべて吸着することに対応しきれなくなってきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような過程から各種の炭を試験した結果、高温炭が従来の一般的木炭や活性炭では除去不十分であったベンゼン、トルエン、ホルムアルデヒド、ホルマリン等の中性のVOCsガスに対する吸着効果が極めて大きいことを発見し、その効果を最も有効的に活用する手段として高温炭を内蔵する住宅建築用パネル材を住宅建材を発明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
低温炭に比較して高温炭のガス吸着能が高い理由はその内部構造に極めて多くの微細孔を有しており、そこにガスが入り込むと発散されにくい状態となり、これを吸着された状態と言う。図1は低温炭、中温炭、高温炭の内部断面写真である。これから容易に読み取れるように高温炭は低温炭や中温炭より多くの微細孔を有している。
【0014】
高温炭には各種の木が原料として採用できるが、特にスギやヒノキ等の針葉樹を利用した高温炭が好ましい。
【0015】
備長炭(白炭)のように高温で焼成した炭でも、低温炭や中温炭に比べると有機溶剤系のVOCsガスに対して優れた吸着能を発揮するが、この原料となる馬目樫(ウバメガシ)やブナの木やナラ材等の広葉樹はスギやヒノキ等の針葉樹から焼成製造した高温炭と比較すると、その吸着能は針葉樹のそれに対するよりも劣ることが判明した。
【0016】
広葉樹の高温炭および針葉樹の高温炭はその断面構造から判断すると、広葉樹の方が微細孔サイズにばらつきがあり、針葉樹の方は均一化した微細孔が多いという差異はあるが、両者いずれも微細孔を大量に擁している。それでいて広葉樹高温炭と針葉樹高温炭との吸着能には差異が生じる。
【0017】
広葉樹は針葉樹に比べシリカ成分が多く含まれているため、焼成過程において、そのシリカ成分が溶出してきて微細孔を塞いでしまうこと、あるいは広葉樹のカシのような場合、細胞壁が厚く緻密であるため、焼成過程における熱で収縮を起こし、微細孔が塞がれてしまうこと、等の理由が考えられる。
【0018】
図2は針葉樹高温炭、備長炭(広葉樹高温炭)、竹炭等のホルムアルデヒドの吸着の比較試験を行なった例の時間経過と吸着残留濃度とのグラフであり、広葉樹高温炭の備長炭でも竹炭に比較して優れた吸着能を発揮していることが見て取れるが、針葉樹高温炭を使用した場合、1時間経過しただけで特定雰囲気中のホルムアルデヒド濃度は備長炭の吸着率を上回り、木炭、竹炭との比較に至っては、はるかに凌駕する吸着率であることが分かる。
【0019】
さらに針葉樹高温炭の3時間経過後の吸着率は、その他の炭の25時間経過後よりも高い吸着率であることが分かる。
【0020】
図3はトルエンガスに対する吸着率比較試験であるが、当初1時間経過後のトルエンの吸着率は備長炭にわずか劣るものの、その後急激に吸収効果を上げ、5時間後には備長炭の24時間後吸着率よりもはるかに高い吸着率の効果をあげている。一般木炭および竹炭とでは比較の対象にならない程の差異である。このデータからは木炭や竹炭ではトルエンに対しては用を成さないことが判明する。
【0021】
図4のアンモニアガスについては竹炭が備長炭よりも良い吸着率を示しているが、針葉樹高温炭の吸着率の半分程度の速度でしか吸着除去をしない。
【0022】
このように針葉樹高温炭は、広葉樹高温炭や低温炭、竹炭よりも優れた有害な化学物質吸着効果を有し、防臭、脱臭、調湿性も併せ持ったものであるが、さらに鉱石のトルマリンを併用することにより、その効果を向上させることができる。
【0023】
トルマリンは電気石と呼ばれ、空気中の水分と接触すると微弱電流(0.006ミリアンペア)を放電する性質を持ち、この放電により空気中の水分は電気分解されて空気中の悪臭成分の微粒子と結合し、悪臭成分はその付着性が失われたところを高温炭の微細孔内に取り込まれてしまう。
【0024】
また、室内のテレビ、パソコン、蛍光灯等の電気機器から発生する電磁波はプラスイオンであり、生体電流(生体イオン)の働きにより生理機能をコントロールする人体に対しては、体内イオンバランスが崩され有害であることが知られているが、この電磁波はトルマリンの発生するマイナスイオンにより中和無害化される。
【0025】
本発明は、トルマリンのマイナスイオン発生効果と炭からのマイナスイオン発生効果との相乗効果、および防臭、脱臭、調湿性により、室内における不快感からくるイライラ等の居住者の精神不安定をリラックス、鎮静化する作用も期待でき、人体に有害と言われる電磁波を中和吸収し、さらにカビの発生を抑えるなど、快適な居住空間、住宅を創り出すことのできる住宅建築用高温炭内蔵パネル材を提供するものである。
【実施例1】
【0026】
図5はパネル内部を示すもので、パネル材を構成するパネル外装材4の内側全面に接着剤を塗布し、多数の小胞区画室1を形成したペーパーコア(あるいはハニカムコアでもよい)2をその上に戴置し、粒状体の高温炭3をすべての小胞区画室1または適宜数の小胞区画室1内に入れ、粒状高温炭3をパネル外装材4内面に接着保持させる。
【0027】
次にパネル外装材4の接着塗装面に接着しなかった高温炭粒状物3を取り除き、もう1枚のパネル外装材4で蓋をするようにペーパーコア2をサンドイッチ状に挟み住宅建築用高温炭内蔵パネル材5を製作する。
図6は住宅建築用高温炭内蔵パネル材5内部に高温炭粒状物3が接着剤により付着内蔵された状態の図を示している。
【実施例2】
【0028】
実施例1と同様の工程において、高温炭粒状物3を小胞区画室1に入れるときにトルマリン粒状物も同時に併せて内蔵させることにより、高温炭粒状物3およびトルマリン粒状物が接着収納された住宅建築用高温炭内蔵パネル材5を製造する。
【0029】
図7は前記のようにして製作した住宅建築用高温炭内蔵パネル材5を利用して壁構造部材6を構成した例で、構造柱7の内装側にはその内部に高温炭粒状物3を収納したペーパーコア2を内芯材とした住宅建築用高温炭内蔵パネル材5を取り付け、構造柱7の外側には熱遮断性建築用材8を取り付け、リブ胴縁9を介して仕上材10を外装面を取り付けて壁構造部材6を構成した例である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】低温炭、中温炭、高温炭の内部断面の比較写真である。
【図2】ホルムアルデヒド吸着比較試験の経時的変化のグラフと表である。
【図3】トルエン吸着比較試験の経時的変化のグラフと表である。
【図4】アンモニア吸着比較試験の経時的変化のグラフと表である。
【図5】本発明の縦断面図である。
【図6】本発明の平面断面図である。
【図7】本発明のパネルを利用した壁構成部材の例である。
【符号の説明】
【0031】
1 小胞区画室
2 ペーパーコア
3 粒状高温炭
4 パネル外装材
5 住宅建築用高温炭内蔵パネル材
6 壁構造部材
7 構造柱
8 熱遮断性建築用材
9 リブ胴縁
10 仕上材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小胞区画室をパネル材内芯部に形成したペーパーボード、ハニカムボード等において、その小胞区画室内に高温炭を収納した住宅建築用高温炭内蔵パネル材。
【請求項2】
高温炭が針葉樹を800℃〜1200℃で焼いた炭である請求項1記載の住宅建築用高温炭内蔵パネル材。
【請求項3】
小胞区画室をパネル材内芯部に形成したペーパーボード、ハニカムボード等においてその小胞区画室内に高温炭およびトルマリンを収納した住宅建築用高温炭内蔵パネル材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−9544(P2006−9544A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215002(P2004−215002)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503460149)
【Fターム(参考)】