説明

住戸の間取り構造

【課題】 居住者のプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広くする間取り構造を提供する。
【解決手段】 集合住宅の住戸10は、エントランス11と、リビングダイニング12と、第1〜第3の居室13〜15を備える。住戸から共用通路へ出入りするためのエントランス11は、リビングダイニング12に直接に接続されている。リビングダイニング12に接続された第1〜第3の居室13〜15の各々は、例えば、就寝、勉強、趣味、収納といった特定の機能を果たすことができるよう、必要最小限の面積が確保されている。これにより、各居室におけるプライバシーを確保しつつ、リビングダイニング12の面積を広くとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分譲マンションや賃貸マンション等の集合住宅を構成する各住戸の間取り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
分譲マンションや賃貸マンション等の集合住宅では、各フロアに複数の住戸が隣接して配置されている。このようなマンションでは、単身用というよりは家族で居住するために設計される場合が多く、例えば3LDKや4LDKのように、複数の居室が設けられた間取り構造となっている。
【0003】
また、上記のマンションでは、各フロアの面積が限られていることから、各住戸は、一方が共用廊下に面し、他方がベランダに面する略長方形の形状を有している。そして、マンションの販売業者は、リビングダイニング及び居室の面積、通風、採光、内装設備といった諸要素を考慮した上で、各住戸の間取りを決定している。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、通風及び採光を確保するという観点から、L字型の第1の部屋と、この第1の部屋と隣接する第2の部屋を設け、これら第1及び第2の部屋を共用通路に面するように配置する間取り構造が提案されており、これにより、限られた住戸面積の中で、できる限り多くの部屋に通風及び採光が確保されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4643963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなマンションにおいて、リビングダイニング以外の各居室は、ベッド、机、収納スペース等を配置できるよう、少なくとも5畳程度の面積を確保する必要があった。このため、一般的な3LDKのマンション(約70m)において、各居室に5畳程度
の広さを確保する場合、リビングダイニングは13畳程度の面積しか確保することができなかった。
【0007】
一般に、家族でくつろいだり、来客をもてなしたりする場合、リビングダイニングの面積をできる限り大きくすることが望ましい。子供が多い家庭や、来客が多い家庭では、特にその要望が高いといえる。しかしながら、従来のマンションの間取りでは、リビングダイニングの面積が限られていたため、かかる要望に応えることができなかった。
【0008】
この点、居室の数を減らすことにより、リビングダイニングの面積を大きくすることは可能であるが、その場合、居住者の個室を確保することができなくなるため、居住者のプライバシー確保の観点から問題があった。
【0009】
本発明は、上記背景に鑑みなされたものであり、各居室におけるプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広く設けることができる間取り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の間取り構造は、共用通路に出入りするためのエントランスと、前記エントランスに接続されたリビングダイニングと、前記リビングダイニングに接続された少なくとも2つの居室を備え、前記居室の各々の面積が4.0m〜8.1mであることを特徴
とする。かかる構成により、各居室におけるプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広く設けることが可能となる。
【0011】
本発明の間取り構造において、前記少なくとも3つの居室の面積は、互いに異なっていてもよい。これにより、就寝、趣味、勉強といった特定の機能に適した居室を設けることができる。また、本発明の間取り構造において、前記少なくとも3つの居室は、離間して配置されていてもよく、これにより、間取り設計の自由度が向上する。
【0012】
本発明の間取り構造において、前記エントランスと、前記リビングダイニングまたは前記少なくとも3つの居室を接続する廊下を備えない構成としても良い。これにより、エントランスとリビングダイニングを連結する廊下を省略することができ、その分をリビングダイニングに充てることができるから、リビングダイニングの面積をさらに大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各居室の面積を必要な限り小さくするとともに、リビングダイニングの面積を大きくしたから、住戸全体の面積を維持し、居住者のプライバシーを確保しつつも、広いリビングダイニングを確保することができる。また、各居室を、例えば寝室、収納、趣味といった機能に特化した部屋にすることで、入居者の多様なライフスタイルに対応した住戸を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る集合住宅の間取り構造を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る集合住宅の間取り構造を示す説明図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る集合住宅の間取り構造を示す説明図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る集合住宅の間取り構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る集合住宅の住戸の間取り構造を示した説明図である。なお、本発明において、集合住宅とは、例えば分譲用や賃貸用のマンションであり、社員寮も含まれる。そして、各階において複数の住戸が隣接して配置され、各住戸のエントランス(玄関)側は共用通路に面しており、その反対側にはバルコニーが設けられている。なお、隣接する住戸の個々の間取りは同一であっても良く、異なっていても良いが、個々の住戸は、3LDKや4LDKのように複数の居室が設けられた間取り構造とされている。
【0016】
図1において、住戸10は、エントランス11と、リビングダイニング12と、第1〜第3の部屋13〜15と、バルコニー16,17と、キッチン18と、パントリー19と、洗面所20と、バスルーム21と、トイレ22とを備えている。
【0017】
エントランス11は、住戸10から共用通路へ出入りするためのドアを有する一区画であり、本実施形態では略正方形状とされているが、その形状は問わない。また、エントランス11は、リビングダイニング12に直接に接続されている。ここで、「直接に接続されている」とは、これらエントランス11とリビングダイニング12との間に一定の面積を有する区画(例えば廊下や別の部屋)が設けられていないことを意味する。なお、エントランス11とリビングダイニング12との間には、スライド式あるいは開閉式のドアが設けられていても良い。
【0018】
リビングダイニング12は、スライド式あるいは開閉式のドアを介して、第1〜第3の居室13〜15及び洗面所20に接続され、また、キッチン18及びパントリー19と接続されている。また、リビングダイニング12は、開閉自在の窓12aが設けられ、この窓12aを介して図示しないベランダに接続される。これにより、リビングダイニング12への採光及び通風を確保することができる。
【0019】
第1〜第3の居室13〜15は、互いに隣接して設けられ、図中左側に設けられた第3の居室15がベランダ16に接続されている。また、第1〜第3の居室13〜15の各々は、従来の居室と異なり、例えば、就寝、勉強、趣味、収納といった特定の機能を果たすことができるよう、必要最小限の面積が確保されている。ここで、居室を過度に広くしてしまうと、リビングダイニングの面積を大きくとることができず、逆に居室を過度に狭くしてしまうと、就寝、勉強等に不向きとなるため好ましくないことから、第1〜第3の居室13〜15の面積は、4m(約2.5畳)〜8.1m(約5畳)とすることが好ましく、より好ましくは4m(約2.5畳)〜7.4m(約4.5畳)であり、特に好ましくは5m(約3畳)〜6.6m(約4畳)である。
【0020】
キッチン18は、リビングダイニング12に隣接して配置され、リビングダイニング12と対面するカウンターが備えられており、いわゆる対面キッチンとなっている。また、キッチン18の奥には、冷蔵庫置き場や収納室として用いられるパントリー19が配置されている。また、エントランス11の近傍には、洗面所20,バスルーム21及びトイレ22といった水回りが、リビングダイニング12に隣接して配置されている。
【0021】
かかる間取り構造によれば、第1〜第3の居室13〜15の面積を必要最小限とすることで、従来、各居室に割り当てていた面積との差に相当する部分だけ、リビングダイニング12に割り当てることができる。その結果、例えば一般的な3LDKの住戸(約70m)において、各居室13〜15の面積を約3.3畳とすることで、リビングダイ
ニング12の面積を約21.9畳と広くすることができる。
【0022】
これにより、住居全体の面積を大きくすることなく、居住者のプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広くすることが可能となり、例えば家族でくつろいだり、来客をもてなしたりする等の場合に、広いリビングダイニングを利用することができる。また、就寝、趣味等の場面では、必要最小限の面積が割り当てられた各居室13〜15において行うことができるので、プライベートとパブリックを確実に分離することができる。
【0023】
さらに、エントランスとリビングダイニングとを直結することで、従来の間取り構造において必要であった廊下を省略することができるので、リビングダイニングをさらに広くすることが可能となる。
【0024】
これらの点は、居住者から見れば、マンションの購入費用または賃料を低く抑えつつも、広い部屋を享受することができるというメリットがある。一方、マンション販売業者ないし賃貸人からみれば、販売費用または賃料を抑えつつ、広い部屋を提供することができる点で大きなアピールポイントとなる。
【0025】
本発明の間取り構造は上記実施形態に限定されることはなく、適宜、レイアウトを変更することができる。図2は、本発明の第2実施形態に係る住戸の間取り構造を示したものである。なお、図2において、図1と同じ構成部材については、同一の符番を付して詳細な説明を省略している。
【0026】
この実施形態にかかる住戸30では、図1の例と比較して、第1〜第3の居室31〜33を、共用通路側ではなく、外壁側に配置した点で相違する。この実施形態においても、第1〜第3の居室31〜33の面積を、ある機能を備えるための必要最小限なものにおさえることで、住居全体の面積を大きくすることなく、居住者のプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広くすることができる。
【0027】
図3は、本発明の第3実施形態に係る住戸の間取り構造を示したものである。この実施形態にかかる住戸40では、図1の例と比較して、ベランダ16を省略するとともに、4つの居室41〜44を配置している点で相違する。この実施形態においても、第1〜第4の居室31〜34の面積を必要最小限に抑えることで、住居全体の面積を大きくすることなく、居住者のプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広くすることができる。
【0028】
図4は、本発明の第4実施形態に係る住戸の間取り構造を示したものである。この実施形態に係る住戸50では、図1の例と比較して、居室51、52と居室53が分離されている点で相違する。この実施形態においても、第1〜第3の居室51〜53の面積を必要最小限に抑えることで、住居全体の面積を大きくすることなく、居住者のプライバシーを確保しつつ、リビングダイニングを広くすることができる。なお、本実施形態では、2つの居室51,52が隣接して配置されているが、これらを分離して配置(すなわち、全ての居室を分離して配置する)しても良い。これにより、間取り設計の自由度が向上する。
【0029】
上記実施形態では、3LDK及び4LDKの間取りを例にして説明しているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば5LDK以上の間取りに対しても、同様に適用することができる。
【0030】
上記実施形態では、各居室の面積を等しいものとして説明しているが、これら居室の面積は異なっていても良い。例えば、複数人(たとえば夫婦や幼児)が就寝するための居室に対しては、約3.7畳のスペースを確保し、読書や工作といった趣味のための居室に対しては、約3.0畳のスペースとするように、用途に応じて居室の面積を変えることで、各機能に特化した居室を確保しつつ、広いリビングダイニングを享受することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、各居室の面積を必要最小限とすることにより、リビングダイニングを広くすることが可能な集合住宅の住戸として有用である。
【符号の説明】
【0032】
10、30,40,50 住戸
11 エントランス
12 リビングダイニング
13,31,41,51 第1の居室
14,32,42,52 第2の居室
15,33,43,53 第3の居室
44 第4の居室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸が共用通路に面して配置された集合住宅の住戸の間取り構造において、
前記共用通路に出入りするためのエントランスと、
前記エントランスに接続されたリビングダイニングと、
前記リビングダイニングに接続された少なくとも2つの居室を備え、
前記居室の各々の面積が4m〜8.1mであることを特徴とする住戸の間取り構造。
【請求項2】
前記少なくとも3つの居室の面積は、互いに異なっていることを特徴とする、請求項1記載の住戸の間取り構造。
【請求項3】
前記少なくとも3つの居室は、離間して配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の住戸の間取り構造。
【請求項4】
前記エントランスと、前記リビングダイニングまたは前記少なくとも3つの居室を接続する廊下を備えないことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の住戸の間取り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28970(P2013−28970A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166167(P2011−166167)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)