説明

住環境真菌の検出方法

【課題】真菌を属又は種レベルで同定することができ、微生物群集の解析が可能な、住環境真菌の検出方法を提供する。
【解決手段】5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅し、得られたPCR産物を制限酵素で切断し、得られた制限酵素断片長の多型を解析するT−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)法により解析し、住環境真菌の検出を行う、住環境真菌の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住環境真菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住居、商業用ビル、病院等の建物の洗濯機、浴室等に生育する真菌、又は衣服に付着する微生物は多数存在する。このうち、子嚢菌門又は不完全菌門等の真菌は、カビ汚れ、カビアレルギー、肺真菌症、皮膚真菌症等の病気の原因となる。したがって、環境衛生上の観点から、このような真菌の検出が極めて重要である。
【0003】
従来、真菌の検出は、生菌分離法により行なわれてきた。しかし、生菌分離法は、解析に時間を要し、分離できた生菌についてのみしか解析することができないため、結果の信頼性に課題が残る。さらに、生菌を分離できなければ、真菌の検出自体が不可能である。
【0004】
微生物の分子生物学的検出方法がこれまでに提案されている(例えば、特許文献1〜2及び非特許文献1〜4参照)。しかし、従来の方法では、住環境等に多数存在する真菌を同時に検出することはできない。したがって、1種又は2種以上の真菌を高感度で短時間に検出でき、住環境等に多数に存在する真菌の菌叢を解析できる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−94803号公報
【特許文献2】特開2009−82153号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Microbial Ecology、43(3)、p.329-340、2002
【非特許文献2】Molecular Ecology、16、p.4624-4636、2007
【非特許文献3】Holzforschung、61、p.104-111、2007
【非特許文献4】Journal of Food Protection、62、p.1191-1197、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、住環境真菌を属又は種レベルで同定することができ、住環境真菌群集の解析が可能な、住環境真菌の検出方法の提供を課題とする。さらに、本発明は、住環境から真菌を分離することなく、生菌分離法では通常分離、解析できない菌株であっても検出が可能な、住環境真菌の検出方法の提供を課題とする。また、本発明は、前記検出方法に好適に用いることができる住環境真菌検出用キットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のように、1種又は2種以上の真菌を高感度で短時間に検出でき、住環境等に多数に存在する真菌の菌叢を解析できる、真菌の網羅的な検出を困難にしている一因としては、住環境より微生物を分離培養後単離した後に種の同定をする必要があり、種の同定には遺伝子情報と形態情報の両方が必要であること、また真菌は細菌と比較して遺伝子情報に基づく種又は属の特定に必要な遺伝子データベースの整備が不十分であること等が挙げられる。
【0009】
このような課題に鑑み、本発明者等は、住環境真菌を属又は種レベルで識別することができ、かつ網羅的に住環境真菌を検出しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、住環境真菌のrRNAをコードするrDNAの特定領域についてT−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型解析)法により解析を行うことにより、住環境真菌を属又は種レベルで同定することができ、住環境真菌群集の解析が可能となることを見い出した。さらに、この方法によると住環境から真菌を分離することなく、生菌分離法では通常分離、解析できない菌株であっても検出することが可能となることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成するに至った。
【0010】
本発明は、5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅し、得られたPCR産物を制限酵素で切断し、得られた制限酵素断片長の多型を解析するT−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型解析)法により解析し、住環境真菌の検出を行うことを特徴とする住環境真菌の検出方法に関する。
【0011】
また、本発明は、前記住環境真菌の検出方法に用いる住環境真菌検出用キットであって、前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAをコードするDNA領域をPCR法により増幅するためのプライマーセット、及びEcoRI、BsaHI、NlaIV、BsoBI及びAvaIからなる群より選ばれる少なくとも1種の制限酵素を含む住環境真菌検出用キットに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の住環境真菌の検出方法によれば、カビ汚れ、カビアレルギー、肺真菌症、皮膚真菌症等の原因とされている住環境真菌を属又は種レベルで同定することができ、住環境真菌群集の解析が可能となる。また、本発明の住環境真菌の検出方法によれば、住環境から真菌を分離することなく、生菌分離法では通常分離、解析できない住環境真菌であっても検出することができる。さらに、本発明の住環境真菌検出用キットは、前記検出方法に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の住環境真菌の検出方法は、5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR法により増幅し、得られたPCR産物を制限酵素で切断し、得られた制限酵素断片長の多型を解析するT−RFLP法により解析し、住環境真菌の検出を行うことを特徴とする。本発明の住環境真菌の検出方法においては、検出対象とする試料から住環境真菌を分離するか否かに関わらず、住環境真菌を検出することができる。
【0014】
本発明において「住環境真菌」とは、住居、商業用ビル、研究所、工場、病院、学校、飲食店、浴場等の建築物に存在する真菌、衣服に付着する真菌、空調機器、洗濯槽、製造設備、医療機器、調理用具等に存在する真菌をいう。
【0015】
前記で示すような住環境真菌としては、子嚢菌門又は不完全菌門の真菌が知られている。具体的には、洗濯水、洗濯槽、家庭用排水、浴室、家庭用浴室又は公衆浴場の風呂水、排水汚泥から子嚢菌門及び不完全菌門の真菌が検出されている(例えば、Bokin Bobai、30(11)、p.703-708(2002);生活衛生、49(3)、p.161-167(2005);Mycopathologia、97、p.17-23(1987);Bokin Bobai、30(6)、p.369-376(2002);「カビによる病気が増えている」、p.139-144、農分協、2006年、等参照)。本発明の住環境真菌の検出方法により、このような真菌を検出することができる。
【0016】
本発明の住環境真菌の検出方法により検出できる住環境真菌の具体例としては、Exophiala属真菌、Acremonium属真菌、Fusarium属真菌、Scolecobasidium属真菌、Chetomium属真菌、Phoma属真菌、Phialophora属真菌、Cladosporium属真菌、Ochroconis属真菌、Alternaria属真菌、Saccharomyces属真菌、Rhodotorula属真菌、Aspergillus属真菌、Penicillium属真菌、Aureobasidium属真菌、Candida属真菌、Pichia属真菌、Ramichloridium属真菌、Capronia属真菌、Trichoderma属真菌、Alcaligenes属真菌、Eurotium属真菌、Carvularia属真菌、Cruptococcus属真菌、Chrysosporium属真菌、Byssochlamys属真菌、Botrytis属真菌、Epicoccum属真菌、Geotricham属真菌、Gliocladium属真菌、Monascus属真菌、Monillia属真菌、Mucor属真菌、Nigrospora属真菌、Oidium属真菌、Paecilomyces属真菌、Pestalotia属真菌、Rhizopus属真菌、Rhizoctonia属真菌、Scopulariopsis属真菌、Stachybotrys属真菌、Symcephalastrum属真菌、Trichothesium属真菌、Ulocladium属真菌及びWallemia属真菌が挙げられる。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
【0017】
本発明の検出方法により、浴室、洗濯槽、衣類、製造現場、空調機器等に存在する住環境真菌を検出することができる。
【0018】
本発明の検出方法において、まず住環境真菌の検出を行う試料を採取する。試料の採取は、例えば、汚れ部分あるいは着色部分を剥がし取る、切り取る又は擦り取るなどの方法により行うことができる。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0019】
次いで、採取した試料から通常の方法によりDNA又はRNAを抽出し、PCRグレードまで精製する。DNAの抽出・精製法は種々採用でき、たとえば、界面活性剤やメルカプトエタノール等を含む溶液中で菌体を破砕後フェノール・クロロホルムで精製する方法、各種DNA抽出キットを用いる方法が挙げられる。RNAの抽出は、例えば、チオシアン酸グアニジンとフェノールなどの変性剤を含む溶液中で菌体を破砕後クロロフォルムやイソプロピルアルコール等で精製する方法、各種RNA抽出キットを用いる方法が挙げられる。抽出したRNAは逆転写酵素を用いた逆転写反応によりcDNA化する。逆転写反応に用いるプライマーとして、ランダムヘキサマー等を利用できる。
【0020】
本発明の検出方法において、5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅する。この工程で用いる核酸プライマーとしては、住環境真菌の当該DNA領域を増幅できるものであれば特に制限はなく、例えば、真菌同定用のユニバーサルプライマーとして汎用されているITS3プライマー(配列番号3)及びNL4プライマー(配列番号2)、又はこれらのプライマーと約80%以上の相同性を有するプライマーを用いることができる。これらのユニバーサルプライマーは、例えば、the fungal Holomorph:Mitotic,Meiotic and Pleomorphic Specioation in Fungal Systematics,pp.225-233(1993)等を参考に合成委託することで入手できる。
住環境真菌の前記DNA領域を増幅するために、下記(c)及び(b)のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いることが好ましい。

(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド

前記(c)及び(b)のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号3及び2に記載の塩基配列に対する相同性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、前記オリゴヌクレオチドには、配列番号3若しくは2に記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾された塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号3又は2に記載の塩基配列に適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0021】
前記PCRにおいて、フォワードプライマー及びリバースプライマーの2種のプライマーが用いられる。T−RFLP法により解析を行う本発明の検出方法において、前記2種類のプライマーの一方又は両方を蛍光色素で標識する。
【0022】
前記蛍光色素としては、T−RFLP法で通常用いられるものであればよく、例えば、カルボキシフルオレセイン(FAM、青色)、PET(赤色)、NED(黄色)、VIC(緑色)、LIZ(橙色)、TET(6-carboxy-2',4,7,7'-tetrachlorofluorescein)、HEX(6-carboxy-2',4,4',5',7,7'-hexachlorofluorescein)、ROX(6-carboxy-x-rhodamine)、TAMRA(6-carboxytetramethylrhodamine)、VIC(登録商標)等が挙げられる。
また、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方を蛍光色素によりラベル化する場合、蛍光色が互いに異なる蛍光色素で前記2種のプライマーをそれぞれ標識するのが好ましい。
【0023】
5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域のPCR法による増幅に関して説明する。
本発明におけるPCR条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。例えば、PCR反応に用いる鋳型としての2本鎖DNA量は0.1ng以上が好ましく、1〜50ngがより好ましい。また、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を92〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜60℃で10〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を60〜72℃で5〜120秒間行い、これらを1サイクルとしたものを20〜40サイクル行う。サイクル反応の前に初期変性反応を行い、サイクル反応後に追加の伸長反応をおこなうことが好ましい。
PCRにおける初期変性反応条件について、変性温度は92〜98℃が好ましく、92〜96℃がより好ましく、約94℃がさらに好ましい。変性時間は30秒〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましく、約2分がさらに好ましい。
PCRにおけるサイクル反応時の変性条件について、変性温度は92〜96℃が好ましく、約94℃がより好ましい。変性時間は20〜40秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおけるアニーリング条件について、アニーリング温度は52〜58℃が好ましく、約55℃がより好ましい。アニーリング時間は20〜40秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおける伸長反応条件について、伸長反応温度は68〜72℃が好ましく、約72℃がより好ましい。伸長反応時間は20〜60秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおけるサイクル数は、25〜35サイクルが好ましく、約30サイクルがより好ましい。
PCRにおけるサイクル反応後の追加の伸長反応条件について、温度は約72℃が好ましい。時間は30秒〜10分が好ましく、1〜10分がより好ましく、約5分がさらに好ましい。
【0024】
本発明の検出方法において、予め18S rRNAの一部、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域をPCRにより増幅して、得られたPCR産物(本明細書において、第1次PCR産物ともいう)を鋳型として前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域をPCRにより増幅し、得られたPCR産物(本明細書において、第2次PCR産物ともいう)についてT−RFLP法により解析することが好ましい。
【0025】
前記、18S rRNAの一部、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域の増幅に用いられる核酸プライマーとしては、住環境真菌の当該DNA領域を増幅できるものであれば特に制限はなく、例えば、真菌同定用のユニバーサルプライマーとして汎用されているITS5プライマー(配列番号1)及びNL4プライマー(配列番号2)、又はこれらのプライマーと約80%以上の相同性を有するプライマーを用いることができる。これらのユニバーサルプライマーは、例えば、the fungal Holomorph:Mitotic,Meiotic and Pleomorphic Specioation in Fungal Systematics,pp.225-233(1993)等を参考に合成委託することで入手できる。
住環境真菌の前記DNA領域を増幅するために、下記(a)及び前記(b)のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いることが好ましい。

(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド

前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号1及び2に記載の塩基配列に対する相同性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、前記オリゴヌクレオチドには、配列番号1若しくは2に記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、挿入あるいは置換といった変異や、修飾された塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1又は2に記載の塩基配列に適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0026】
18S rRNAの一部、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域のPCR法による増幅に関して説明する。
本発明におけるPCR条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。例えば、PCR反応に用いる鋳型としての2本鎖DNA量は0.1ng以上が好ましく、1〜50ngがより好ましい。また、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を92〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜60℃で10〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を60〜72℃で5〜120秒間行い、これらを1サイクルとしたものを20〜40サイクル行う。サイクル反応の前に初期変性反応を行い、サイクル反応後に追加の伸長反応をおこなうことが好ましい。
PCRにおける初期変性反応条件について、変性温度は92〜98℃が好ましく、92〜96℃がより好ましく、約94℃がさらに好ましい。変性時間は30秒〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましく、約2分がさらに好ましい。
PCRにおけるサイクル反応時の変性条件について、変性温度は92〜96℃が好ましく、約94℃がより好ましい。変性時間は20〜40秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおけるアニーリング条件について、アニーリング温度は52〜58℃が好ましく、約55℃がより好ましい。アニーリング時間は20〜40秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおける伸長反応条件について、伸長反応温度は68〜72℃が好ましく、約72℃がより好ましい。伸長反応時間は20〜60秒が好ましく、約30秒がより好ましい。
PCRにおけるサイクル数は、25〜35サイクルが好ましく、約30サイクルがより好ましい。
PCRにおけるサイクル反応後の追加の伸長反応条件について、温度は約72℃が好ましい。時間は30秒〜10分が好ましく、1〜10分がより好ましく、約5分がさらに好ましい。
【0027】
本発明の検出方法において、5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR法により増幅したPCR産物について制限酵素処理を行う。本発明に用いる制限酵素としては特に制限はないが、6塩基の特定の配列を認識する制限酵素が好ましく、EcoRI(制限酵素認識部位:G/AATTC)、BsaHI(制限酵素認識部位:GRCGYC)、NlaIV(制限酵素認識部位:GGNNCC)、BsoBI(制限酵素認識部位:CYCGRG)及びAvaI(制限酵素認識部位:CYCGRG)からなる群より選ばれる少なくとも1種の制限酵素を用いるのが好ましい。
【0028】
制限酵素処理を行ったPCR産物について、プライマーにラベルした蛍光標識を指標として切断されたフラグメントの塩基配列の長さを決定する。フラグメントの塩基配列の長さの決定はDNAシークエンサーを用いた電気泳動法などの通常の方法により行うことができる。具体的には、フラグメントサンプルと同時にDNAシーケンサーに供するサイズスタンダードの蛍光検出ピークのサイズからフラグメントサンプルの蛍光検出ピークの塩基長を算出することで、フラグメントサンプルのサイズを決定する。サイズスタンダードとしては、DNAサイズマーカーや分子量マーカーを使用することが可能である。
【0029】
実施例でも示すように、住環境真菌の5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域において、制限酵素認識部位が微生物種の属又は種レベルで異なる。したがって、蛍光標識された制限酵素処理産物のサイズに基づき、微生物の属を特定することができる。
【0030】
住環境真菌の属の特定に際して、データベースを構築する。ここでいうデータベースとは、制限酵素の種別、その制限酵素を用いてPCR産物を処理したときの標識されたフラグメントのサイズ、及び住環境真菌の属及び/又は種とを対応させたデータベースである。このようなデータベースは、解析対象とする遺伝子配列が既知の菌株又は環境分離菌など解析対象とする遺伝子配列が未知の菌株を対象として構築することができる。データベースは、解析対象とする遺伝子配列が既知の菌株については、通常のDNAデータベースを利用する、当該菌株からDNAを抽出し、それを鋳型としてPCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定し、制限酵素処理産物のサイズを算出する、あるいは、当該菌株からDNAを抽出し、それを鋳型として色素標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を制限酵素処理し、得られた制限酵素処理産物のサイズをDNAシーケンサーなどを用いて決定する、といった方法で構築することができる。また、環境分離菌など解析対象とする遺伝子配列が未知の菌株については、その菌株からDNAを抽出し、それを鋳型としてPCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定し、制限酵素処理産物のサイズを算出する、あるいは、当該菌株からDNAを抽出し、それを鋳型として色素標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を制限酵素処理し、得られた制限酵素処理産物のサイズをDNAシーケンサーなどを用いて決定する、といった方法で構築することができる。なお、環境分離菌においては、その微生物種又は属の同定は、rDNA等の領域の塩基配列の解析により行ってもよいし、形態観察により行ってもよいが、これら両方を併用するのがより好ましい。
【0031】
下記に本発明の住環境真菌の検出方法について好ましい態様を説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0032】
真菌の属又は種が特定されている住環境真菌については、既存のDNAデータベースから、用いる制限酵素の種別、その制限酵素を用いて5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域を鋳型として増幅したPCR産物を処理したときの標識されたフラグメントのサイズ、及び住環境真菌の属及び/又は種とを対応させたデータベースを構築する。あるいは、真菌の属又は種が特定されている住環境真菌あるいは真菌の属又は種が特定されていない住環境真菌については、その菌株からDNAを抽出し、それを鋳型としてPCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定し、制限酵素処理産物のサイズを算出し、得られた結果を基にデータベースを構築する。あるいは、真菌の属又は種が特定されている住環境真菌あるいは真菌の属又は種が特定されていない住環境真菌については、その菌株からDNAを抽出し、それを鋳型としてPCRを行い、増幅産物の制限酵素処理を行い、制限酵素処理産物のサイズDNAシーケンサーなどを用いて算出し、得られた結果を基にデータベースを構築する。
【0033】
次に、本発明の検出方法による住環境真菌の検出には目的の場所からサンプルを採取し、採取したサンプルからDNAを抽出する。DNAの抽出は採取したサンプルから直接DNAを抽出してもよいし、採取したサンプルの一定量をポテトデキストロース寒天培地、グルコースペプトン寒天培地、サブローグルコース寒天培地、コーンミール寒天培地、ツァペックドックス寒天培地、モルトエキストラクト培地、素寒天培地、YM培地等にて約25℃で7〜14日培養し、培地から菌体を回収し、回収した菌体からDNAを抽出してもよい。
【0034】
真菌同定用として汎用されているユニバーサルプライマーITS5(配列番号1)及びNL4(配列番号2)を用いて、住環境真菌の18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCRにより増幅する。
【0035】
得られたPCR産物を鋳型とし、真菌同定用として汎用されているユニバーサルプライマーITS3(配列番号3)及びNL4(配列番号2)を用いて、住環境真菌の5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCRにより増幅する。このとき、前記ユニバーサルプライマーITS3及びNL4の両方又は一方を蛍光色素で標識する。
【0036】
得られたPCR産物に制限酵素を添加し、酵素処理を行い、制限酵素処理により得られた蛍光標識されたフラグメントのサイズを決定する。
【0037】
このようにして得られたフラグメントのサイズから、予め構築したデータベースを基に住環境真菌の種類を特定する。
【0038】
本発明の住環境真菌の検出方法に用いることができるプライマーセットを予めパッケージングしてキット化することができる。
例えば、本発明の住環境真菌検出用キットは、(i)住環境真菌の5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域を増幅することができる2種類のプライマー(例えば、前記(c)及び(b)のオリゴヌクレオチド、好ましくは真菌検出用として汎用されているユニバーサルプライマーITS3(配列番号3)及びNL4(配列番号2))であって当該プライマーの両方又は一方が蛍光色素により標識されたもの、及び(ii)制限酵素(例えば、EcoRI、BsaHI、NlaIV、BsoBI及びAvaIから選ばれる少なくとも1種の制限酵素)を含有する。好ましくは、本発明の住環境真菌検出用キットはさらに、(iii)前記DNA領域を増幅する際に鋳型として用いるDNAを増幅するためのプライマー対(例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド、好ましくは真菌検出用として汎用されているユニバーサルプライマーITS5(配列番号1)及びNL4(配列番号2))を含有する。本発明の住環境真菌検出用キットは、前記核酸プライマーの他に、目的に応じ、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、住環境真菌の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明のプライマーによってPCR反応が正常に進行することを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の検出方法により増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【0039】
本発明の住環境真菌の検出方法においては、5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域を対象としてT−RFLP法により解析を行う。
なお、前記DNA領域を対象とすることで、T−RFLP法だけではなく、単鎖DNA高次構造多型解析(Single strand conformation polymorphism)法(例えば、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electorophoresis)、温度勾配ゲル電気泳動(Temperature Gradient Gel Electorophoresis))などによっても、住環境真菌の検出が可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
試験例1
表1に示す住環境からの分離菌1〜17について、MicroSeqD2Kit(商品名アプライドバイオシステムズ社)を用い、rDNAのD2領域約500bpの塩基配列解析を行い、環境分離菌の属又は種の特定を行った。また、環境分離菌1(Exophaiala sp.type A)、環境分離菌7(Phoma sp.)及び環境分離菌8(Phialophora sp.)については、前記遺伝子解析の他に形態観察(コロニー形態と光学顕微鏡による分生子の観察)を併用して、属の特定を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
住環境真菌として、前記の方法により属の特定を行ったExophaiala sp.type A(環境分離株)、Exophaiala sp.type B(環境分離株)、Exophaiala sp.type C(環境分離株)、Exophaiala sp.type D(環境分離株)、Exophaiala sp.type E(環境分離株)、Exophaiala sp.type F(環境分離株)、Phoma sp.(環境分離株)、Phialophora sp.(環境分離株)、Ochroconis又はScolecobasidium sp.(環境分離株)、Cladosporium sp.(環境分離株)、Alternaria sp.(環境分離株)、Candida sp.(環境分離株)、Pichia sp.(環境分離株)、Aureobasidium sp.(環境分離株)、Capronia sp.(環境分離株)、Ramichloridium sp.(環境分離株)、Fusarium sp.(環境分離株)並びに、微生物株保存機関より譲渡されたSaccharomyces cerevisiae IFO1661(購入株)及びRhodotorula mucilaginosa NBRC0909(購入株)をそれぞれポテトデキストロース寒天培地にて25℃で7〜14日間培養し、各菌体からDNA抽出キット(商品名:Genとるくん(酵母用)、タカラバイオ社製)を用いてDNAを抽出し、精製した。
【0044】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、表2に示したITS5及びNL4のプライマーセット(ニッポンイージーティー社に合成委託)を用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行ない、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0045】
【表2】

【0046】
次に、下記工程(1)又は(2)に示す方法により、各供試菌株(前記環境分離菌、Saccharomyces cerevisiae IFO1661株、及びRhodotorula mucilaginosa NBRC0909株)のフラグメントサイズを決定した。
【0047】
工程(1)
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、表3に示したITS3及び5'末端側をカルボキシフルオレセイン(FAM)でラベルした5’FAM−NL4のプライマーセット(ニッポンイージーティーに合成委託)を用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0048】
【表3】

【0049】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、EcoRI(タカラバイオ社)50U又はBsaHI(ニューイングランド社)10Uを添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、FAMで標識された3'末端側のフラグメントをキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。その結果を表5に示す。
【0050】
工程(2)
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、表4に示したITS3及びNL4のプライマーセット(ニッポンイージーティー社に合成委託)を用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0051】
【表4】

【0052】
続いて、得られた第2次PCR産物の塩基配列を通常の方法により決定し、決定した塩基配列中に存在する制限酵素部位を確認し、NlaIV、AvaI又はBsoBIで制限酵素処理を行ったときの3'末端側の切断断片サイズを算出した。その結果を表5に示す。
【0053】
さらに、日本DNAデータバンク(DDBJ)のデータベースに登録されているAspergillus niger NRRL6411株、Penicillium Citrinum NRRL35459株及びAcremonium sp.NG-N-B12株について、塩基配列中に存在する制限酵素部位を確認し、EcoRI、BsaHI、NlaIV、AvaI又はBsoBIで制限酵素処理を行ったときの3'末端側の切断断片サイズを算出した。その結果を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
表5に示すように、制限酵素断片サイズ(フラグメントサイズ)は住環境真菌種の属又は種レベルで異なる。したがって、上記のように本手法を用いてデータベースを構築できる。さらに構築したデータベースを用いて、T−RFLPにより住環境真菌を網羅的に検出できることがわかる。
【0056】
実施例1
種名未知の住環境真菌株として、住環境(浴室、洗濯槽、衣類など)から分離した黒カビA〜Sをそれぞれポテトデキストロース寒天培地にて25℃で7〜14日間培養し、各菌体からDNA抽出キット(商品名:Genとるくん(酵母用)、タカラバイオ社製)を用いてDNAを抽出し、精製した。
【0057】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、前記表2に示したITS5及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0058】
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表3に示したITS3及び5’FAM−NL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0059】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、EcoRI(タカラバイオ社)50U又はBsaHI(ニューイングランド社)10Uを添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、FAMで標識された3'末端側のフラグメントをキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。その結果を表6に示す。
さらに、上記のようにして決定したフラグメントサイズと、試験例1で構築した表5に示すデータベースを基に、住環境から分離した黒カビA〜Sの同定を行った。その結果も表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
表6に示すように、制限酵素で処理したフラグメントのサイズが住環境真菌の属又は種に一致した。これら菌株について、MicroSeqD2Kit(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、rDNAのD2領域約500bpの塩基配列解析を行い、真菌の属又は種を同定したところ、T−RFLP解析による同定結果と一致した。これらの結果から、本発明により住環境真菌の属又は種を同定できることがわかった。さらに、本発明により住環境からこれら真菌を検出できることが明らかとなった。
【0062】
実施例2
浴室のパッキンに形成されたカビ汚れ、洗濯機の脱水槽に形成された汚れ、衣料上に形成された汚れに存在する住環境真菌の検出を下記の通り行なった。
【0063】
まず、カビ汚れが付着した浴室内パッキンをパッキンごと剥がし取り、それぞれ異なる箇所からカビ汚れを回収し、サンプルNo.11〜15を調製した。
さらに、洗濯機の脱水槽に形成された暗色汚れ部分約2平方センチメートルを滅菌したピンセットで剥がし取り、それぞれ異なる箇所から洗濯機の脱水槽に形成された汚れを回収し、サンプルNo.21〜27を調製した。
さらに、衣料上に形成された着色汚れ部分を滅菌したハサミで切り取ったのち、滅菌したピンセットで単繊維までほぐし、それぞれ異なる箇所から汚れ部分のみを回収し、サンプルNo.31〜44を調製した。
【0064】
上記の方法で調製したサンプルからDNA抽出キット(商品名:Genとるくん(酵母用)、タカラバイオ社製)を用いてDNAを抽出し、精製した。
【0065】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、前記表2に示したITS5及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0066】
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表3に示したITS3及び5’FAM−NL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0067】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、EcoRI(タカラバイオ社)50U又はBsaHI(ニューイングランド社)10Uを添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、FAMで標識された3'末端側のフラグメントをキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。
【0068】
浴室のパッキンに形成されたカビ汚れについて、EcoRIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表7に、BsaHIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表8に示す。
【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
表7及び8に示す結果及び試験例1の表5から、EcoRIを用いた場合及びBsaHIを用いた場合のいずれの場合においても、浴室のパッキンに形成されたカビ汚れから調製したサンプルのうち、No.11及び12からAlternaria属真菌が検出され、No.13からExophaiala真菌が検出され、No.14からPhoma属真菌が検出され、No.15からPhoma属真菌及びCladosporium属真菌が検出された。このように、本発明の方法により、浴室のパッキンに形成されたカビ汚れの中に住環境真菌が存在することを明らかとすることができた。
【0072】
洗濯機の洗濯槽に形成された汚れについて、EcoRIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表9に、BsaHIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表10に示す。
【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
表9及び10に示す結果及び試験例1の表5から、EcoRIを用いた場合及びBsaHIを用いた場合のいずれの場合においても、洗濯機の洗濯槽に形成された汚れから調製したサンプルのうち、No.21からExophaiala属真菌、Phialophora属真菌、及びOchroconis又はScolecobasidium属真菌が検出され、No.22からPhoma属真菌、及びOchroconis又はScolecobasidium属真菌が検出され、No.23及び24からPhoma属真菌が検出され、No.25からExophaiala属真菌が検出され、No.26からOchroconis又はScolecobasidium属真菌が検出され、No.27からExophaiala属真菌及びPhoma属真菌が検出された。このように、本発明の方法により、洗濯機の洗濯槽に形成された汚れの中に住環境真菌が存在することを明らかとすることができた。
【0076】
衣料上に形成された汚れについて、EcoRIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表11に、BsaHIを用いてT−RFLP解析によって検出された3'末端側のフラグメントのサイズを表12に示す。
【0077】
【表11】

【0078】
【表12】

【0079】
表11及び12に結果及び試験例1の表5から、EcoRIを用いた場合及びBsaHIを用いた場合のいずれの場合においても、衣料上に形成された汚れから調製したサンプルのうち、No.31からExophaiala属真菌及びRhodotorula mucilaginosaが検出され、No.32〜34からExophaiala属真菌が検出され、No.35及び39からPhoma属真菌及びRhodotorula mucilaginosaが検出され、No.36、37、40及び41からPhoma属真菌が検出され、No.38及び43からPhoma属真菌及びCladosporium属真菌が検出され、No.42からExophaiala属真菌及びPhialophora属真菌が検出され、No.44からOchroconiss又はScolecobasidium属真菌、Cladosporium属真菌及びSaccharomyces cerevisiaeが検出された。このように、本発明の方法により、衣料上に形成された汚れの中に住環境真菌が存在することを明らかとすることができた。
【0080】
以上の結果から、検出されるフラグメントサイズに基づき、サンプル中に存在する住環境真菌を属又は種レベルで同定でき、住環境真菌群集の解析が可能となる。さらに、住環境から採取したサンプルから真菌を分離することなく、住環境真菌の検出が可能であった。したがって、本発明によれば、住環境真菌を簡便かつ網羅的に検出でき、短時間で住環境真菌の群集構造を低コストかつ効率的に分析することができる。
【0081】
試験例2
住環境真菌として、試験例1で属の特定を行ったExophaiala sp.type A(環境分離株)、Exophaiala sp.type B(環境分離株)、Exophaiala sp.type C(環境分離株)、Exophaiala sp.type D(環境分離株)、Exophaiala sp.type E(環境分離株)、Exophaiala sp.type F(環境分離株)、Phoma sp.(環境分離株)、Phialophora sp.(環境分離株)、Ochroconis又はScolecobasidium sp.(環境分離株)、Cladosporium sp.(環境分離株)、Alternaria sp.(環境分離株)、Candida sp.(環境分離株)、Pichia sp.(環境分離株)、Aureobasidium sp.(環境分離株)、Capronia sp.(環境分離株)、Ramichloridium sp.(環境分離株)及びFusarium sp.(環境分離株)、Saccharomyces cerevisiae IFO1661(購入株)並びにRhodotorula mucilaginosa NBRC0909(購入株)をそれぞれポテトデキストロース寒天培地にて25℃で7〜14日間培養し、各菌体からDNA抽出キット(商品名:Genとるくん(酵母用)、タカラバイオ社製)を用いてDNAを抽出し、精製した。
【0082】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、前記表2に示したITS5及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0083】
次に、下記工程(11)又は(12)に示す方法により、各供試菌株(前記環境分離菌、Saccharomyces cerevisiae IFO1661株、及びRhodotorula mucilaginosa NBRC0909株)のフラグメントサイズを決定した。
【0084】
工程(11)
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表13に示した5'末端側をPETでラベルした5’PET−ITS3及び5'末端側をカルボキシフルオレセイン(FAM)でラベルした5’FAM−NL4のプライマーセット(ニッポンイージーティー社に合成委託)を用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0085】
【表13】

【0086】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、BsaHI(ニューイングランド社)を10U添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、PETで標識された5'末端側のフラグメント及びFAMで標識された3'末端側のフラグメントをそれぞれキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。その結果を表14に示す。
【0087】
工程(12)
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表4に示したITS3及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0088】
続いて、得られた第2次PCR産物の塩基配列を通常の方法により決定し、決定した塩基配列中に存在する制限酵素部位を確認し、BsaHIで制限酵素処理を行ったときの5’末端側及び3'末端側の切断断片サイズを算出した。その結果を表14に示す。
【0089】
さらに、日本DNAデータバンク(DDBJ)のデータベースに登録されているAspergillus niger NRRL6411株及びPenicillium Citrinum NRRL35459株について、塩基配列中に存在する制限酵素部位を確認し、BsaHIで制限酵素処理を行ったときの5’末端側及び3'末端側の切断断片サイズを算出した。その結果を表14に示す。
【0090】
【表14】

【0091】
表14に示すように、制限酵素断片サイズ(フラグメントサイズ)は住環境真菌種の属又は種レベルで異なる。したがって、本手法を用いてデータベースを構築できる。さらに構築したデータベースを用いて、T−RFLPにより住環境真菌を網羅的に検出できることがわかる。
【0092】
実施例3
実施例1で用いた黒カビB、黒カビC、黒カビD、黒カビE、黒カビF、黒カビH、黒カビJ、黒カビK、黒カビM、黒カビN、黒カビP及び黒カビSから実施例1と同様にDNAを抽出し、精製した。
【0093】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、前記表2に示したITS5及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0094】
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表13に示した5’PET−ITS3及び5’FAM−NL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0095】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、BsaHI(ニューイングランド社)を10U添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、PETで標識された5'末端側のフラグメント及びFAMで標識された3'末端側のフラグメントをそれぞれキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。その結果を表15に示す。
さらに、上記のようにして決定したフラグメントサイズと、試験例2で構築した表14に示すデータベースを基に、住環境から分離した黒カビB、黒カビC、黒カビD、黒カビE、黒カビF、黒カビH、黒カビJ、黒カビK、黒カビM、黒カビN、黒カビP及び黒カビSの同定を行った。その結果も表15に示す。
【0096】
【表15】

【0097】
表15に示すように、制限酵素で処理したフラグメントのサイズが住環境真菌の属又は種に一致した。これら菌株については実施例1で示したように、MicroSeqD2Kit(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、rDNAのD2領域約500bpの塩基配列解析を行い、真菌の属又は種を同定しており、本実施例のT−RFLP解析による同定結果と一致した。これらの結果から、本発明により住環境真菌の属又は種を同定できることがわかった。さらに、本発明により住環境からこれら真菌を検出できることが明らかとなった。
【0098】
実施例4
浴室のパッキンに形成されたカビ汚れに存在する住環境真菌の検出を下記の通り行なった。
【0099】
まず、カビ汚れが付着した浴室内パッキンをパッキンごと剥がし取り、それぞれ異なる箇所からカビ汚れを回収し、サンプルNo.51〜55を調製した。
【0100】
上記の方法で調製したサンプルからDNA抽出キット(商品名:Genとるくん(酵母用)、タカラバイオ社製)を用いてDNAを抽出し、精製した。
【0101】
次に、抽出したDNA 1ng以上を鋳型とし、前記表2に示したITS5及びNL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分配列A(18S rRNAの一部分、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第1次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0102】
前記第1次PCR産物を滅菌イオン交換水又はトリスEDTA緩衝液を用いて1/100倍又は1/1000倍濃度に希釈した溶液1μLを鋳型とし、前記表13に示した5’PET−ITS3及び5’FAM−NL4のプライマーセットを用いて、住環境真菌のrRNA遺伝子の部分領域B(5.8S rRNAの一部分、ITS−2及び28S rRNAの一部分)をコードするrDNA遺伝子の部分配列をPCR法により増幅した。PCR反応は25μLの容量で行い、第2次PCR産物を得た。PCR法による増幅は、変性温度を94℃として2分間維持し、その後、94℃30秒→55℃30秒→72℃30秒というサイクルを単位として30サイクル行い、その後72℃を5分間維持することで実施した。
【0103】
次に、得られた第2次PCR産物2.5μLに対し、BsaHI(ニューイングランド社)を10U添加し、37℃で一晩酵素処理を行い、PETで標識された5'末端側のフラグメント及びFAMで標識された3'末端側のフラグメントをキャピラリーDNAシーケンサ(商品名:3130DNA Analyzer、アプライドバイオシステムズ社製、キャピラリー:30cm)に供し、サイズスタンダードとして、LIZ1200 size standard(商品名、アプライドバイオシステムズ社)を用い、解析のアプリケーションとしてGeneMapper−Generic(商品名)を適用し、Gene Mapperソフトウェア(商品名、アプライドバイオシステムズ社製)を用いてフラグメントサイズを決定した。その結果を表16に示す。
【0104】
【表16】

【0105】
表16に示す結果及び試験例2の表14から、浴室のパッキンに形成されたカビ汚れから調製したサンプルのうち、No.51〜53からAlternaria属真菌が検出され、No.54からExophaiala属真菌及びPhoma属真菌が検出され、No.55からCladosporium属真菌が検出された。このように、本発明の方法により、浴室のパッキンに形成されたカビ汚れの中に住環境真菌が存在することを明らかとすることができた。
【0106】
以上の結果から、検出されるフラグメントサイズに基づき、サンプル中に存在する住環境真菌を属又は種レベルで同定でき、住環境真菌群集の解析が可能となる。さらに、住環境から採取したサンプルから真菌を分離することなく、住環境真菌の検出が可能であった。したがって、本発明によれば、住環境真菌を簡便かつ網羅的に検出でき、短時間で住環境真菌の群集構造を低コストかつ効率的に分析することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域についてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅し、得られたPCR産物を制限酵素で切断し、得られた制限酵素断片長の多型を解析するT−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)法により解析し、住環境真菌の検出を行うことを特徴とする住環境真菌の検出方法。
【請求項2】
前記制限酵素がEcoRI、BsaHI、NlaIV、BsoBI及びAvaIからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項3】
前記PCR産物をEcoRI、BsaHI、NlaIV、BsoBI及びAvaIからなる群より選ばれる少なくとも2種の制限酵素で切断することを特徴とする請求項1又は2記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項4】
前記PCR産物をEcoRI、BsaHI、NlaIV、BsoBI及びAvaIからなる群より選ばれる少なくとも1種の制限酵素で切断することを特徴とする請求項1又は2記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項5】
下記(c)及び(b)のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域を増幅することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の住環境真菌の検出方法。
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド
【請求項6】
両方又は一方が蛍光色素で標識された前記(c)及び(b)のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域をPCR法により増幅することを特徴とする請求項5記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項7】
18S rRNAの一部、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域をPCR法により増幅して、得られたPCR産物を鋳型として、前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域を増幅することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項8】
下記(a)及び前記(b)のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、前記18S rRNAの一部、ITS−1、5.8S rRNA、ITS−2及び28S rRNAの一部をコードするDNA領域をPCR法により増幅することを特徴とする請求項7記載の住環境真菌の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は当該塩基配列に対して80%以上の相同性を有しかつ前記DNA領域の増幅が可能なオリゴヌクレオチド
【請求項9】
住環境真菌が環境Exophiala属真菌、Acremonium属真菌、Fusarium属真菌、Scolecobasidium属真菌、Phoma属真菌、Phialophora属真菌、Cladosporium属真菌、Ochroconis属真菌、Alternaria属真菌、Saccharomyces属真菌、Rhodotorula属真菌、Aspergillus属真菌、Penicillium属真菌、Aureobasidium属真菌、Candida属真菌、Pichia属真菌、Capronia属真菌及びRamichloridium属真菌からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の住環境真菌の検出方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか記載の住環境真菌の検出方法に用いる住環境真菌検出用キットであって、前記5.8S rRNAの一部、ITS−2及び28S rRNAをコードするDNA領域をPCR法により増幅するためのプライマーセット、及びEcoRI、BsaHI、NlaIVBsoBI及びAvaIからなる群より選ばれる少なくとも1種の制限酵素を含む住環境真菌検出用キット。

【公開番号】特開2011−130747(P2011−130747A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295457(P2009−295457)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】