説明

住設用器物の取付構造及び取付用ブラケット

【課題】壁面等に取り付けられる棚等の住設用器物において、製品種類をそれほど増やすことなく、フック付の仕様とフック無しの仕様との選択を可能にする。
【解決手段】ブラケット10の上部に係合部11を設け、棚1に切欠を形成した係止部3を設ける。ブラケット10の係合部11は支持部11aとフランジ部11bとから成り、垂下部12の下端にフック部が形成される。ブラケット10,10を壁面Wの棚取付位置に固定し、棚1の係止部3を、ブラケット10と壁面Wとの間の差込み空間Sへ挿入し、切欠内に支持部11aを嵌合させる。棚1の係止部3が壁面Wとフランジ部11bとの間に挟持され、ブラケット10の係合部10は棚1の収納空間4内に収納される。棚1の下方に位置するフック部13を小物ハンガーとして利用できるから、棚1自体の構造に変更を加えることなく、小物ハンガー機能を付与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚やタオル掛け等の住設用器物を、壁面等の取付面へ取り付けるための取付構造、及び、これに用いるブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば浴室において、石鹸・シャンプー・リンス・ブラシ等の小物を置くための棚や、それらを収納するための容器を壁面面へ取り付けることは、従来行なわれている(特許文献1参照)。そして、このような壁面に取り付けた棚や容器に、小物を係止させるためのフックをさらに組み付けることも、従来提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313032号公報
【特許文献2】実開平6−9581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁面に取り付けた棚や容器に小物引掛け用のフックを設ける場合、従来は、特許文献2に記載されるように、フックを組み付けるための部材を別途用意し、これを棚や容器自体に装着するという構成が採用されている。このため、壁面に取り付けられる棚や容器において、フック付きの製品と、フックが付属しない製品とは構造が異なることになるので、施工に際しては、需用者の要望に応じた製品をあらかじめ準備して搬入する必要があり、現場にて仕様変更するのは困難であった。
また、需用者の多様な要望に確実に応えられるようにするには、例えば棚製品の場合、棚部分の仕様が同一のものについて、フック付きの製品とフック無しの製品とをそれぞれ用意しなくてはならず、その結果、製品の多品種化を招き、生産能率の低下や在庫管理の煩雑化をもたらすという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、壁面等の取付面に取り付けられる棚等の住設用器物において、製品の種類を増やすことなく、フック付の仕様とフック無しの仕様との選択を可能にする手段の提供を目的とする。かかる目的のために本発明が採用する住設用器物の取付構造の特徴とするところは、取付面に固定したブラケットの上部に係合部が設けられ、上記ブラケットの係合部に住設用器物に設けた係止部を係合させて、当該住設用器物が取付面に支持され、前記ブラケットは、係合部から下方へ伸びる垂下部と、該垂下部の下端又は下端付近から取付面の前方へ突出するように形成されたフック部とを有していることである。
【0006】
前記において取付面とは、部屋の壁面のほか、ドアや扉の表面、カウンターの正面、浴槽エプロンの表面、収納キャビネット等の大型家具の表面、柱の表面など、各種起立面を対象とすることが考えられる。
また本発明が対象とする住設用器物とは、棚、タオル掛け、トレイ・カゴ等の収納容器など、ブラケットを用いて取付面へ取り付けられる器具や部材を指す。
【0007】
本発明に係る住設用器物の取付構造の好ましい態様を示せば、前記住設用器物における取付面に面する側の端面に切欠を形成した係止部を設け、前記ブラケットの上部に、前記住設用器物の切欠内へ挿入される支持部と、該支持部の周囲から張り出すように構成され取付面との間に差込み空間を形成するフランジ部とから成る係合部を設け、前記ブラケットの支持部に係合させた前記住設用器物の係止部を、取付面と前記ブラケットのフランジ部との間に挟持させる構成が考えられる。
【0008】
本発明は、前記取付構造に使用される棚等の住設用器物を壁面等の取付面へ取り付けるためのブラケットを提供する。本発明に係る住設用器物の取付用ブラケットの特徴とするところは、取付面に固定される固定部を有し、住設用器物に設けた係止部を係合させるための係合部が上部に設けられ、該係合部から下方へ伸びる垂下部と、該垂下部の下端又は下端付近から前方へ突出するように形成されたフック部とを有していることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した本発明に係る取付構造によれば、棚等の住設用器物を取付面に取り付けるためのブラケットにフック部を設けたことにより、住設用器物に対し、その構造に何ら手を加えることなく、小物等を引っ掛けるハンガー機能を付与することができる。従って、住設用器物の製品品種を増やすことなく、小物用ハンガーを付け加えたいという需用者の要望が有ったときに、簡単に応じられる。
【0010】
請求項2に記載した本発明に係る取付構造によれは、住設用器物に切欠を形成した係止部を設け、ブラケットの上部に支持部とフランジ部とから成る係合部を設け、住設用器物の係止部をブラケットの支持部に係合させて、取付面とフランジ部との間に挟持するという構成を採用したものであり、これは汎用性の高い構造であるから、既存の製品への適用が容易である。
【0011】
請求項3に記載した本発明に係るブラケットは、住設用器物を施工するにあたり予め準備しておくことにより、施工現場にて、小物用ハンガーを付け加えたいという要望が需用者から出たときに、これに容易に対処することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る住設用器物の取付構造の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は棚を正面側から見た斜視図、図(B)はブラケットを正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る住設用器物の取付構造の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は棚を裏面側から見た斜視図、図(B)はブラケットを裏面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る住設用器物の取付構造の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は棚をブラケットに組み付けた状態を示す正面側から見た斜視図、図(B)は棚をブラケットに組み付けた状態を示す裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る住設用器物の取付構造の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は棚とブラケットとを分解して示す側面図、図(B)は棚をブラケットに組み付けた状態の要部の側面図、図(C)は棚をブラケットに組み付けた状態の要部の平面図であり、いずれも棚については断面して示したものである。
【図5】図(A)〜図(D)は、本発明に係るブラケットのフック部に関する各種実施形態を例示する側面図である。
【図6】本発明に係る住設用器物の取付構造の第2の実施形態を示すものであって、図(A)はタオル掛け及びブラケットを個別に示す正面側から見た斜視図、図(B)はタオル掛けをブラケットに組み付けた状態の正面側から見た斜視図である。
【図7】本発明に係る住設用器物の取付構造の第3の実施形態を示すものであって、図(A)は棚及びブラケットを個別に示す正面側から見た斜視図、図(B)は棚をブラケットに組み付けた状態の正面側から見た斜視図である。
【図8】本発明に係る住設用器物の第4の実施形態を示すものであって、図(A)は棚及びブラケットを分解して示す要部の背面図、図(B)は棚をブラケットに組み付けた状態の要部の背面図である。
【図9】本発明に係る住設用器物の取付構造の第5の実施形態を示すものであって、図(A)は棚及びブラケットを個別に示す正面側から見た斜視図、図(B)は棚をブラケットに組み付けた状態の正面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1〜図4に、棚1(住設用器物)をブラケット10により壁面W(取付面)へ取り付ける取付構造に、本発明を適用した実施形態を示す。本例における棚1は、浅い箱状であり、壁面Wに面する後端面2の適所(本例では左右に適宜間隔を置いた2個所)に、下部を開口させた切欠を形成した係止部3が形成されている。係止部3の内側には、後述するブラケット10の係合部11を挿入させる収納空間4が設けられている。なお、棚1を浴室等の水を使用する環境に設置する場合は、図4(A)に示すように、底部1aの適所に排水用の開孔又はスリット1bを形成することが望ましい。
【0014】
壁面Wに固定されるブラケット10は、その上部に、棚1の係止部3を係合させる係合部11が設けられ、係合部11から下方へ伸びるように設けられた垂下部12の下端に、壁面Wの前方へ突出するフック部13が形成されている。ブラケット10の材質は、金属・プラスチック・セラミック・木質等、所要の強度を有する適当な素材を用いればよい。
【0015】
本例では、ブラケット10の係合部11を、壁面Wに固定される円盤状の支持部11aと、支持部11aの周囲に張り出すように形成したフランジ部11bとで構成した。図4(A)に示す如く、支持部11aを壁面Wに固定することにより、フランジ部11bと壁面Wとの間に差込み空間Sが形成される。従って本例では、支持部11aが、ブラケット10の固定部を兼ねている。支持部11aを壁面Wへ固定する手段は特に限定されないが、例えば、ブラケット10の正面側から支持部11aを貫通させたネジを壁面Wにねじ込む方法、接着剤による方法、壁面Wを金属製として磁石を用いる方法などが考えられる。
【0016】
図4(C)に示す如く、支持部11aの直径は、棚1の係止部3に設けた切欠の幅寸法よりもわずかに小さく設定され、フランジ部11bの幅寸法は、係止部3の切欠の幅寸法よりも大きく設定されている。
【0017】
上記のように構成された棚1をブラケット10で壁面Wへ取り付けるには、まずブラケット10,10を、左右に所定の間隔を置いて、壁面Wにおける棚取付位置に適宜手段で固定する。次いで棚1の係止部3を、ブラケット10の上方から壁面Wとの間の差込み空間Sへ挿入し、切欠内に支持部11aを嵌合させる。これにより、棚1の係止部3が壁面Wとブラケット10のフランジ部11bとの間に挟持され、ブラケット10の係合部11は棚1の収納空間4内に収納されるので、棚1は壁面W上に安定して取り付けられる。
【0018】
このとき、図3に示す如く、棚1の下方にブラケット10のフック部13が位置し、当該フック部13を小物を引っ掛けるハンガーとして利用することができる。従って、係止部3の構造を共通にしておけば、任意の棚1をこのブラケット10を用いて壁面Wに取り付けできると同時に、ハンガー機能を付与することが可能となる。つまり、本発明によれば、棚1自体の構造については変更を加えることなく、所望に応じ、小物ハンガー付きの製品を提供できるという効果を発揮する。また、ブラケットを使用せずに、小物ハンガーのみを使用したいという要望にも応じることが可能である。
【0019】
なおフック部13の形態について、本例では、図4(A)(B)に示すように、ブラケット10を壁面Wに取り付けた状態で、水平方向に対し先端側がわずかに上り勾配となる緩やかな傾斜片としたが、これに限定されるものではない。他の例を示せば、図5(A)に示すように、2段階の傾斜を有する形態、同図(B)に示すようにJ字形に湾曲させた形態、同図(C)に示す如く、ほぼ水平とする形態、同図(D)に示す如く、水平に伸ばした先端を直角に折り曲げて起立部を設けた形態などが考えられる。
【0020】
なお前記の例ではいずれも、フック部13を垂下部12の下端から形成する態様を採用したが、フック部13を、垂下部12の下端ではなく、下端より若干上方位置から形成することも妨げない。さらに複数のフック部13を、上下又は左右に連設する態様も可能である。
【0021】
[第2の実施形態]
本発明は、棚以外に、図6に示すようなタオル掛け20を、適用対象とすることができる。このタオル掛け20は、左右のホルダー21,21の間にタオルバー22を保持する構造であって、ホルダー21,21を壁面へ取り付ける手段として、前記ブラケット10を用いたものである。
【0022】
図6(B)に示す如く、フック部13を設けた前記ブラケット10を用いてタオル掛け20を壁面に取り付けることにより、タオル掛け20自体の構造には変更を加えずに、所望に応じ、小物ハンガー機能を付加することが可能である。
【0023】
[第3の実施形態]
図7は、本発明に係るブラケットの異なる実施形態を示すものである。この例のブラケット10は、同図(A)に示す如く、例えば棚1の後端面2に左右に離して設けた係止部それぞれと係合する係合部11,11を連結片15で連結して、一体化したものである。かかる構成のブラケット10は、係合部11,11の間隔が規定されるから、施工が容易である。
【0024】
また本例では、ブラケット10の一方のフック部14を、壁面に沿って左右方向の外側へ伸びるように構成した。かかる構成によれば、図7(B)に示す如く、棚1を取り付けたときに、一方のフック部14が棚1の側方へ突出する。従って、小物を引っ掛けやすくなると共に、左右のフック13,14で引っ掛ける方向が異なるから、小物どうしの干渉を緩和できる効果が発揮される。
【0025】
[第4の実施形態]
図8は、棚1等の住設用器物に設ける係止部3の異なる実施形態を示すものである。本例は、棚1の後端面2の係止部3として、下方に開口する切欠を形成する点は同じであるが、この切欠下端の開口3a,3aの間口寸法を、ブラケット10の支持部11aの幅寸法よりも狭く設定すると共に、係止部3の適所にスリット3b等を設けて、係止部3が弾性的に拡開できるように構成したところを特色とする。
【0026】
棚1を取り付けるには、図8(A)に示すように、壁面に固定したブラケット10の上方から、係止部3を差込み空間内へ挿入させる。このとき、係止部3の切欠開口3aは、支持部11aの幅寸法よりも間口が狭くなっているが、弾性変形するためのスリット3bが形成されているので、力を加えることにより、開口3a,3aが弾性的に拡開し、やがて、同図(B)に示す如く、支持部11aが切欠内へ無理嵌め状態に嵌合する。
【0027】
係止部3を前記のように構成した本例の取付構造によれば、棚1をブラケット10に取り付けた状態では、係止部3の開口3a,3aが支持部11aと干渉するから、棚1がブラケット10から脱落するのを防止する効果が発揮される。
【0028】
[第5の実施形態]
図9は、棚30を壁面Wに取り付ける構造のさらに異なる実施形態を示すものである。本例の棚30は、物品を置くための板状の載置部31と、その後端部から垂下するように設けた取付部32とから成りる。そして取付部32の適所には、後述するブラケット10へ装着する際に用いられる切欠33と、その上方に位置する凹部34とから成る係止部35が形成されている。切欠33は、下方が開口し、その幅寸法は、ブラケット10の幅寸法とほぼ同じか又は若干小さく設定される。
【0029】
本例のブラケット10は、金属やプラスチック等の所要の弾性と強度とを有する部材で製作される。上部の係合部16は、前方へ若干突出して壁面との間に差込み空間Sを形成する受け部16aと、受け部16aの上方を壁面側へ折り曲げて形成した押え部16bとから成る。差込み空間Sの奥行き寸法は、棚30における取付部32の厚み寸法にほぼ等しく設定される。本例のブラケット10は、係合部16から下方へ伸びるように形成した垂下部12において、ネジ17等により壁面へ固定される。従って本例では、垂下部12が固定部を兼ねている。さらに、垂下部12の下端に、J字状に湾曲するフック部13が設けられる。
【0030】
前記棚30をブラケット10で壁面へ取り付けるには、まずブラケット10,10を、左右に所定の間隔を置いて、壁面の棚取付位置へ固定する。次いで、図9(B)に示す如く、棚30の切欠33とブラケット10の係合部16とが合致するように位置合わせをしたのち、棚30の取付部32を、ブラケット10の上方から、壁面と受け部16aとの間の差込み空間Sへ挿入する。このとき、ブラケット10の受け部16a及び押え部16bは弾性的に変形する。
やがて棚30の切欠33の上端が、ブラケット10の受け部16aの下端に到達し、ブラケット10の垂下部12の一部が、棚30の切欠33内に嵌合した状態となる。このとき、ブラケット10の受け部16aは、棚30の取付部32における切欠33の上方部位を挟持する。またブラケット10の押え部16bが、棚取付部32の凹部34内に嵌合する。その結果、左右方向に位置ずれすることがなく、またブラケット10から脱落しにくい棚30の取付構造が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1…棚(住設用器物) 2…後端面 3…係止部(切欠) 4…収納空間 10…ブラケット 11…係合部 11a…支持部 11b…フランジ部 12…垂下部 13…フック部 20…タオル掛け S…差込み空間 W…壁面(取付面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚等の住設用器物を壁面等の取付面へ取り付けるための構造であって、
取付面に固定したブラケットの上部に係合部が設けられ、
上記ブラケットの係合部に住設用器物に設けた係止部を係合させて、当該住設用器物が取付面に支持され、
前記ブラケットは、係合部から下方へ伸びる垂下部と、該垂下部の下端又は下端付近から取付面の前方へ突出するように形成されたフック部とを有していることを特徴とする住設用器物の取付構造。
【請求項2】
前記住設用器物における取付面に面する側の端面に切欠を形成した係止部が設けられ、
前記ブラケットの上部に、前記住設用器物の切欠内へ挿入される支持部と、該支持部の周囲から張り出すように構成され取付面との間に差込み空間を形成するフランジ部とから成る係合部が設けられ、
前記ブラケットの支持部に係合させた前記住設用器物の係止部が、取付面と前記ブラケットのフランジ部との間に挟持されている請求項1に記載の住設用器物の取付構造。
【請求項3】
棚等の住設用器物を壁面等の取付面へ取り付けるためのブラケットであって、
取付面に固定される固定部を有し、
住設用器物に設けた係止部を係合させるための係合部が上部に設けられ、
該係合部から下方へ伸びる垂下部と、
該垂下部の下端又は下端付近から前方へ突出するように形成されたフック部とを有していることを特徴とする住設用器物の取付用ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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