説明

体内埋植装置

【課題】 長期間安定して動作できるコネクタを有する体内埋植装置を提供する。
【解決手段】 体内埋植装置は、メス端子を備えたメスコネクタハウジングとオス端子を備えたオスコネクタハウジングとの分割及び接続により体内装置に接続されるケーブルを所定位置で分割及び接続するためのコネクタ部とを有する。コネクタ部は、メスコネクタハウジング内に設けられる絶縁性及び弾性を有する弾性部材であって,メス端子を通過させるための複数の貫通孔が形成された弾性部材を備え、弾性部材はメスコネクタハウジングとオスコネクタハウジングとの接続により加えられる圧縮応力で弾性変形しメス端子を周囲から押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に埋植される体内埋植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内(患者の体内)に埋植される体内埋植装置として、患者の耳小骨へ音の振動を伝達する人工中耳、患者の胸部に埋植されて心臓に電気刺激を与えて不整脈の発生を抑制する心臓ペースメーカ等、刺激電極(以下、電極)を体内に埋植して、生体組織の一部を電気刺激する能動埋め込み医療機器(生体刺激装置)が知られている。また、能動埋め込み医療機器の一種である神経機能修飾装置として、電極から電気刺激パルス信号(電荷)を出力して網膜を構成する細胞を電気刺激して、視覚の再生を試みる視覚再生補助装置が開発されている。
【0003】
このような体内埋植装置は、生体内の限られたスペースに体内装置を配置する必要がある。例えば上述の視覚再生補助装置では、体外から送信される電力及び電気刺激のための情報を受信するための受信部が体外に近い位置に配置されるのに対し、刺激部は患者眼底に設置されるものが知られている。
【0004】
このように、生体内の異なる位置に体内装置の各構成部品が取り付けられる場合は、取り回しが困難となり易いため、体内装置の各構成部品を生体内に分離して埋稙することができるようにコネクタの利用が考えられる。例えば、視覚再生補助装置では、各構成部品をコネクタを有するケーブル(導線)で繋ぎ、必要に応じて分割,接続できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、体液がコネクタ内部に浸入して電気分解によって発生した電荷(イオン)が、コネクタ内部の複数の電気接点間(端子間)で伝達されてしまうと、短絡(ショート)などの電気的な不具合が発生するおそれがある。そこで、特許文献1の装置では、コネクタの外周に体温で収縮される形状記憶合金を設けて、コネクタを外側から締め付けることでコネクタ内部の気密性を向上させて体液の浸入を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011‐101692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、体内埋植装置は長期間体内に埋植されるものであり、耐久性などを考慮すると、コネクタ内部への体液の浸水を完全に抑えることには課題が残る。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、長期間安定して動作できるコネクタを有する体内埋植装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0010】
(1) メス端子を備えたメスコネクタハウジングとオス端子を備えたオスコネクタハウジングとの分割及び接続により体内装置に接続されるケーブルを所定位置で分割及び接続するためのコネクタ部とを有し生体内に埋植される体内埋植装置において、前記メスコネクタハウジング内に設けられる絶縁性及び弾性を有する弾性部材であって,前記メス端子を通過させるための複数の貫通孔が形成された弾性部材を備え、該弾性部材は、前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続により加えられる圧縮応力で弾性変形し前記メス端子を周囲から押圧することを特徴とする。
(2) (1)の体内埋植装置において、前記オスコネクタハウジング内部には前記弾性部材を軸方向に押圧するための押圧壁が形成されており、前記弾性部材は前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続において前記押圧壁により軸方向に押圧されることを特徴とする。
(3) (2)の体内埋植装置において、前記メス端子は,前記オス端子を挿入するための中空部材であって,該中空部材の少なくとも一部分には前記メス端子先端から基端に向けて軸方向に延びるスリット又は溝が形成されており、前記弾性部材の端子軸方向の圧縮弾性変形によってメス端子外周に押圧が加えられることにより前記スリット又は溝が閉じ合わせられることで,前記オス端子と前記メス端子とが密着されることを特徴とする。
(4) (3)の体内埋植装置は、前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続状態で前記弾性部材の圧縮変形を維持させるために、前記応力が加えられていない状態の前記弾性部材が置かれる位置に前記押圧壁を位置させるための押圧維持部材を備えることを特徴とする。
(5) (4)の体内埋植装置において、前記体内装置は患者の生体内に埋植されて生体組織の電気刺激を行うための刺激部を備え、前記ケーブルの一端は前記刺激部に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば長期間安定して動作できるコネクタを有する体内埋植装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は体内埋植装置に用いられるコネクタ部100の構成を説明するための斜視図であり、図1(a)に未接続状態、図1(b)に接続状態が示されている。図2は、コネクタ部100を軸方向に切断した断面(図1のA−A平面の断面)で見たときの模式的な断面図であり、図2(a)に未接続状態、図2(b)に接続状態が示されている。
【0013】
本実施形態のジョイントコネクタ部(以下、コネクタ部と記す)100は、複数のメス端子111を備えるメスコネクタハウジング(以下、メスハウジング)110と、複数のオス端子151を備えるオスコネクタハウジング(以下、オスハウジング)150と、メスハウジング110とオスハウジング150の接続時にコネクタ部100内に形成される空間に位置される弾性部材180とから構成される。
【0014】
メスハウジング110とオスハウジング150の接続側ではない他端には、内部に複数の導線21aが配線された周知のケーブル50が取り付けられる(図4参照)。なお、ケーブル50内では各導線21aと各メス端子111、各導線21aと各オス端子151とが接続されている。これにより、メスハウジング110とオスハウジング150との分割又は接続によって、ケーブル50の電気的な分割又は接続が切り換えられる。
【0015】
メスハウジング110は、外筒部112と、外筒部112の内部に配置された複数のメス端子111と、外筒部112内でメス端子111の位置を固定する固定部114と、外筒部112の内壁と固定部114によって形成された空間である中空部113と、から構成されている。なお、外筒部112の外周には後述するスリーブ(ナット)153を取り付けるためのネジ溝(図示を略す)が設けられている。
【0016】
一方、オスハウジング150は、複数のオス端子151と、コネクタ部100の使用状態(接続時)で、各オス端子151を各メス端子111に対応する位置に固定するための基台152とから構成されている。基台152は、その先端部分152bが外筒部112の中空部113aに収まるための径を有し、基端部分152aは外筒部112の先端面に当接する程度の径を有した段差のある円柱形状を有した部材であり、オス端子151の先端を所定量だけ突出させた状態でオス端子151を固定保持している。
【0017】
また、先端部分152bには、コネクタ部100の接続時に弾性部材180に当接される押圧壁152cが形成される。押圧壁152cによって弾性部材180が軸方向(メスハウジング110側)へと押し込まれことで、弾性部材180に所定の圧縮弾性変形が生じるようになる。
【0018】
中空部113は、オスハウジング150の基台152の先端部分152bが嵌合される形状(内径)に形成された中空部113aと、メス端子111(固定部114)側で弾性部材180を取り付ける空間を形成する中空部113bとから構成される。中空部113aは、基台152の先端部分152bの外径形状と略一致する又は若干大きい形状とされる。これにより、接続時に中空部113aの位置に基台152の先端部分152bが内包されるとともに基端部分152aが外筒部112の先端面に当接することにより、中空部113が外部から遮蔽される。
【0019】
中空部113bは、オスコネクタハウジング150とメスコネクタハウジング110とを接続した際に、嵌合される基台150の先端部分152bによって囲まれる空間であって、弾性部材180の体積よりも小さい体積の空間となるように形成されている。さらに言えば、中空部113bは弾性部材180をできるだけ隙間無く取り付けることのできる形状であるとともに、中空部113bの端子軸方向(軸方向)の長さ(深さ)d1は弾性部材180の長さ(厚さ)d2よりも短くされている。これによりメスハウジング110に弾性部材180が取り付けられた(中空部113bに収められた)状態で、オスハウジング150を完全に接続させると、基台152の押圧壁152cが弾性部材180を軸方向に押圧することになる。これにより弾性部材180に圧縮弾性変形を生じさせる応力が加えられるようになる。弾性部材180が軸方向に圧縮弾性変形(弾性変形)されることで円周方向に拡がり中空部113bが弾性部材で隙間無く塞がれるようになる。
【0020】
メス端子111は、導線方向(接続方向)に中空の円筒形状に形成されており、円筒形状の開口径(内径)はオス端子151の外形と略等しいか僅かに大きい径に形成される。これにより、オス端子151がメス端子111の中空部を挿通することで電気的に接続されるようになる。メス端子111は、生体内で電流を流しても安全な材料(生体適合性を有する電荷注入能力の高い材料)であって、使用環境下で電気分解されにくく、メス端子111の外周から加えられる応力で圧縮される程度の柔軟性を有する材料、及び圧縮可能な肉厚にて形成されることが好ましい。例えば、メス端子111には白金イリジウム等が使用される。
【0021】
このようにメス端子111に所定の柔軟性、肉厚を持たせることで、メスハウジング110とオスハウジング150との接続時に、弾性部材180の圧縮弾性変形によってメス端子111の外側から加えられる応力で、メス端子111の中空部の内径が収縮されるようになる。これにより、挿通されたオス端子151とメス端子111とが強固に(安定して)密着されるようになる。
【0022】
また、本実施形態のメス端子111の少なくとも先端部111a(接続時にオス端子151が位置される範囲または、接続時に弾性部材180が取り付けられる範囲)には、割り加工によって先端から基端に向けて軸方向(導線方向)に延びるスリット111bが形成されている。
【0023】
図5にメス端子111とオス端子151の先端付近の拡大図(斜視図)を示す。図5(a)は、各端子111、151の接続前の状態、図5(b)は各端子111、151の接続時の状態である。つまり、図5(a)に示すように、接続前に開いた状態にあるスリット111bが、図5(b)に示すように、接続時には、メス端子111の少なくとも先端部111aが弾性部材180の変形による周囲からの押圧によって閉じ合わせられる。これにより、メス端子111の内径が収縮されて、オス端子151と強固に密着される。
【0024】
なお、能動埋め込み医療機器など所定の動作を伴う装置では、体内に埋植される体内装置の構成をできるだけ小型にするため、一つのケーブル50を用いて複数種類の信号(電力、電気刺激パルス信号など)が伝達されることが好ましいとされる。この場合、ケーブル50内に複数の導線21aが用意され、上述した各端子111、151は導線21aの本数に合わせて複数本用意される。そしてここでは、複数のメス端子111は、固定部114によって外筒部112内の所定位置で固定保持される。なお固定部114は、弾性部材180よりも弾性係数が大きい(変形し難い)生体適合性を有するセラミック材料などの周知の絶縁材料で形成される。
【0025】
オスハウジング150の基台152は、メスハウジング110の固定部114と同等に生体適合性及び絶縁性を有すると共に気密性の高い周知のセラミック材料等で形成され、上述したように先端部152bはメスハウジング110の中空部113aに隙間無く嵌合されるよう、中空部113aの内径に略一致する形状に形成されている。
【0026】
オス端子151は接続時にメス端子111の取り付け位置に対応する基台152上の位置に固定されている。オス端子151は柱状(円柱形状)に形成されており、その外形(径)はメス端子111の中空部を挿通可能な大きさであると共に、メス端子111の中空部に挿通される際に折り曲げられて破損するなどの不具合が生じないよう、所定の強度を有する大きさに形成されている。
【0027】
オス端子151の長さは、メスハウジング110との接続時に、少なくともその一部がメス端子111の中空部に挿通される長さにされる。以上のような、オス端子151は、生体適合性を有し、電気分解されにくい周知の金属で形成されることが好ましい。例えば、白金、白金イリジム等が用いられる。
【0028】
また、オスハウジング150側には、外筒部112に形成されたネジ溝(雄ネジ)に組合せられる雌ネジが形成されたスリーブ(シリンダーナット)153が設けられており、外筒部112のネジ溝とスリーブ153との組み合わせでメスハウジング110内に位置された弾性部材180の圧縮変形を維持するための押圧維持部材が構成されている。なお、スリーブ153はメスハウジング110とオスハウジング150との接続状態を好適に維持するために弾性変形の少ない周知の樹脂、金属などで形成される。
【0029】
ここでは、オスハウジング150とメスハウジング110の接続状態で、スリーブ153を閉め込むと内側端面153aは、基端部分152aを押して押圧壁152cが中空部113aと中空部113bの間の段差(切り換え位置)に密着させることで、中空部113aの内部が弾性部材180で充填されるようにしている。つまり、押圧維持部材によって、弾性部材180が置かれる位置に押圧壁152cを位置させると共に、その状態を維持することによって、中空部113aの内部を弾性部材180で充填させて、体液が中空部113bに浸入しても端子間の短絡がより好適に抑えるようになる。
【0030】
弾性部材180は、外側から加えられる押圧で変形可能な弾性と絶縁性を有する材料で形成される。より好ましくは、体内に埋植された状態で材料特性を長期間安定して維持できる材料が用いられる。例えば、シリコーン等の周知の樹脂材料が用いられる。また、弾性部材180にはメス端子111の取り付け位置に対応する位置に、接続方向(端子軸方向)に延びる複数の貫通孔181が形成されている。貫通孔181の径は、メス端子111が挿通可能であると共に、コネクタ部100の接続時に生じる弾性部材180の圧縮弾性変形で、各メス端子111をオス端子151に対して密着させることのできる(隙間無く押さえることのできる)大きさに形成される。
【0031】
以上のような構成の弾性部材180は、中空部113bに取り付け可能な形状に形成される。また、メスハウジング110とオスハウジング150の接続時に、コネクタ部100内部に残される中空部113bの軸方向の幅(厚さ)d1よりも、弾性部材180の軸方向の長さ(厚さ)d2が大きくなるように形成される。これにより、接続時にはメスハウジング110側に置かれた弾性部材180に対して、オスハウジング150の押圧壁152cが当接され弾性部材180に軸方向からの押圧が加えられて圧縮弾性変形が生じるようになる。
【0032】
なお、弾性部材180は軸方向の圧縮弾性変形によって、中空部113bの空間内で円周方向に広がろうとする。しかし、中空部113bの空間の外側は外筒部112でカバーされているため、弾性部材180は広がることは出来ず、中空部113に位置しているメス端子111の内径を収縮させる方向に広がろうとする。これによりメス端子111に弾性部材180が隙間無く密着されると共に、内径が収縮されることで中空部に位置されるオス端子151と密着されるようになる。
【0033】
なお、ここでは、中空部113bの導線方向の厚さd1が、応力が加えられていない状態での弾性部材180の導線方向の厚さd2よりも薄く形成されることで、押圧壁152cによる押圧が弾性部材180に加えられるようになっている。これ以外にも、弾性部材180の厚さd2がコネクタ部100の接続時に内部に形成される空間の軸方向の幅(固定部114と押圧壁152cの間隔)よりも大きく形成されていることで、同様に弾性部材180に圧縮弾性変形を生じさせることができる。例えば、コネクタ部100が完全に接続された状態での押圧壁152cの位置が中空部113bの内部に位置する場合には、弾性部材180の厚さd2は中空部113bの厚さd1と同じ又は薄くても良い。又は、応力が加えられない状態の弾性部材180と外筒壁112との間に隙間が形成されていても良く、弾性部材180が弾性変形によって中空部113内の径方向に広がることで中空部113bに充填されるようにしても良い。
【0034】
このようにメス端子111の周囲に弾性部材180が隙間無く充填された状態にすることで、中空部113内が密閉されて隣り合うメス端子111(オス端子151)間の絶縁性が好適に確保されると共に、隣り合うメス端子111(オス端子151)間に体液が浸水しがたくなる。また、浸水が生じたとしても各端子間の線間抵抗の低下が抑えられて、使用上に問題となる短絡状態の発生が抑えられるようになる。
【0035】
つまり、体内埋植装置の長期埋植によって、コネクタ部100内に体液が浸水しようとしても、弾性部材180がコネクタ部100の内部空間に隙間無く位置されるので、浸水はコネクタ部100の界面までに抑えられる。これにより、コネクタ部100の各端子111、151に体液が接触することで生じる電気分解の発生が抑えられるだけでなく、仮に体液が浸入しようとしてもその容量が抑えられるので、体液の電気分解が生じたとしても発生したイオンが各端子間に伝導されることによる影響を抑えることができ、コネクタ部100を長期間安定して使用できるようになる。
【0036】
また、本実施形態ではコネクタ部100の接続時に、弾性部材180の圧縮弾性変形によって貫通孔181の内径が収縮されることで、メス端子111の内径が収縮され、簡単な構成でメス端子111とオス端子151とが強固に接続されるようになっている。
【0037】
更に、弾性部材180が各端子間に隙間無く充填されるので、体外から加えられる意図しない応力の影響を避けることができる。例えば、各端子111、151が弾性変形領域の少ない金属で形成される場合、生体から加えられる意図しない応力によって接触不良の可能性が生じる。一方、本実施形態では各端子が弾性部材180によって保持された状態となるので、このような意図しない応力により生じる端子材料の塑性変形による接触不良の可能性が抑えられる。
【0038】
次に、以上のような構成のコネクタ部100を用いた体内埋植装置の例として、患者の網膜を構成する細胞を電気刺激して視覚の再生を促す視覚再生補助装置1を例に挙げて説明する。
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図3は視覚再生補助装置1の外観を示した概略図である。図4は視覚再生補助装置1の体内装置20の説明図であり、図4(a)に体内装置20の全体構成の説明図、図4(b)に刺激部20bの断面図が示されている。
【0039】
視覚再生補助装置1は、外界を撮影するための体外装置10と、網膜を構成する細胞に電気刺激を与えて視覚の再生を促す体内装置20とから構成される。体外装置10は、患者が掛けるグラス11、グラス11に取り付けられて患者に視認させる被写体像を撮影するためのCCDカメラ等からなる撮影装置12、外部デバイス13、一次コイルからなる送信手段14等で構成される。
【0040】
外部デバイス13には、CPU等の演算処理回路を有するパルス信号変換手段13aと、視覚再生補助装置1(体外装置10及び体内装置20)に電力供給をするバッテリー13bを備える。パルス信号変換手段13aは、撮影装置12で撮影された被写体像の画像処理を行い、視覚再生のための電気刺激パルス用データを生成する。送信手段14は、電気刺激パルス用データと電力を電磁波として体内装置20側に伝送(無線送信)する。なお、送信手段14の中心には磁石15が取り付けられ、受信手段23との位置固定に用いられると共に、データ伝送効率が向上される。
【0041】
図4に示す体内装置20は、体外装置10からの電磁波を受信する2次コイルからなる受信手段23と、受信手段23で受信された電磁波から各種信号(電気刺激パルス、指定された各刺激電極27(以下、電極27と記す)に電気刺激パルスを分配する制御信号など)と電力を抽出する制御部25とからなる受信部20aと、複数の電極27が形成された基板21とマルチプレクサを含む電子回路40が搭載された刺激部20bと、制御部25と基板21電子回路40を生体内で電気的に接続するケーブル50から構成される。受信手段23の中心には磁石24が取り付けられ、外部装置10の磁石15との組み合わせによる磁力で受信部20aの位置が固定される。
【0042】
制御部25は、受信手段23で受信された電磁波に含まれる電気刺激パルス用データと電力とを分ける回路、電気刺激パルス用データを基に視覚を得るための電気刺激パルスと制御信号を得るための変換回路、変換した電気刺激パルス及び制御信号を電子回路40へ送るための電気回路等の制御回路を有する半導体集積回路(LSI)を含む。このような制御部25による電気刺激パルス用データの変換処理により生成された電気刺激パルスと制御信号とが電子回路40へと送られる。なお、眼内に留置される不関電極(参照電極)26はコネクタ100部に接続される。
【0043】
電極27は、金、白金等の生体適合性、耐食性に優れた導電性を有する材料にて、基板21に形成された各導線21aの末端に各々形成される。これにより、各電極27が電子回路40に対して個々に接続される。例えば、図4に示すように、複数の電極27は基板21の長手方向に沿ってマトリックス状の等間隔に複数個で配置される、又は2次元的に等間隔で互い違いになるように複数個形成され、電極アレイを形成する。電極27の数は、数個〜数十個程度に多く形成される。電極の設置スペースや配線技術等に問題がなければ、それ以上の個数であってもよい。
【0044】
基板21はポリイミド等の生体適合性の高い樹脂による所定厚で折り曲げ可能に形成される。基板21上には複数の導線21aが配線される。導線21aはベース部に周知のフォトレジスト法、真空蒸着法やスパッタ法等を用いて、耐腐食性の金属材料を蒸着させる手法やレーザー加工装置による箔材からの切り出し、或いは小径ワイヤーによって、基板21に形成される。
【0045】
ケーブル50は、制御部25と電子回路40とを電気的に接続する複数の導線21aを内包し、刺激部20bを眼球上に取り付けた際に眼球に沿って這わせることができると共に、受信部20aと刺激部20bとを連結できる所定長さに形成される。導線21aは個々にパリレン、ポリイミド等で絶縁被膜された状態で、さらにパリレン、ポリイミドポリウレタン、シリコン等の生体適合性を有し絶縁性を持つ樹脂を用いて包埋されケーブル状に一体化される。また、導線21aは制御部25から出力される信号や電力を刺激部20b側の電子回路40に送るために必要な本数が用意される。なお、導線21aは、金,白金等からなる細い単線を撚り合わせて形成されるヨリ線であることが好ましく、ヨリ線とされることで所定の強度を有し、断線され難くなる。
【0046】
本実施形態のケーブル50の所定位置には上述のコネクタ部100が接続されており、上述したようにコネクタ部100が接続、分割されることで、受信部20aと刺激部20bとの電気的な接続の有無が切り換えられる。なお、図4の実施例ではコネクタ部100はケーブル50の中間位置に設けられているが、受信部20aとコネクタ部100とを一体成形しても良い。つまり、受信部20aの気密端子がコネクタ部100を兼ねる構造としても良い。
【0047】
次に、以上のような構成の体内装置20の体内への取り付け方法を説明する。まず、コネクタ部100が分割された状態で、例えば、刺激部20bは黄斑付近などの電気刺激の効果が得られやすい位置に取り付けられ、受信部20aは患者の側頭部の皮下などの体外装置10からの信号を受信し易い位置に取り付けられるとする。
【0048】
受信部20aと刺激部20bの個別の埋稙手術が終了したら、メス端子111の中空部にオス端子151が通過されるように、メスハウジング110とオスハウジング150とを接続(嵌合)させる。このとき、メスハウジング110の中空部113bには予め弾性部材180が取り付けられており、接続時に加えられる押圧で弾性部材180が中空部113b内で圧縮弾性変形される。これにより、弾性部材180の貫通孔181が収縮され、これにより加えられる応力でメス端子111の先端111aに形成されたスリットが閉じ合わせられる。そして、メス端子111とオス端子151とが強固に密着されるようになる(図5参照)。また、外筒部112のネジ溝に対してスリーブ153が取り付けられることで、弾性部材180が弾性変形した状態が好適に保持されるようになる。
【0049】
そして、メス端子111(オス端子151)の周囲に弾性部材180が隙間無く位置されることで、コネクタ部100内に体液が浸水しようとしても弾性部材180の界面で阻止される。これにより、コネクタ部100内の複数の端子間(電気接点間)でのイオン伝導によって短絡などの不具合が発生することが防止され、長期間コネクタ部100の絶縁性が好適に確保されるようになる。
【0050】
なお、本発明は上記の構成に限られるものではない。例えば、メス端子111は、弾性部材180の圧縮弾性変形で加えられる応力によって、メス端子111の中空部の径が内径方向に収縮される形状になっていれば良い。
図6にメス端子111の変用例を示す。なお、図6では先端111aをコネクタ部100の接続側(軸方向)から見たときの模式図が示されている。例えば、図6(a)に示されるように、上述したようなスリット111bは複数の部分に設けられても良い。この場合、先端111aの内径がより収縮され易くなる。また、図6(b)に示されるように、先端111aに溝111cを形成しても良い。更には、図6(c)に示されるように、先端111aを複数の溝による蛇腹形状に形成しても良い。このように、メス端子111の中空部の少なくとも一部分にメス端子111の先端から基端に向けて軸方向に延びるスリット又は溝を形成することで、メス端子111とオス端子151とがより強固に密着させることができる。勿論、先端111aにスリット又は溝などを形成せずに、メス端子111の弾性変形によってオス端子151と密着させることもできる。
【0051】
また、上記では、メスハウジング110とオスハウジング150との接続時に弾性部材180がメス端子111の中空部の径を圧縮するように弾性変形することで、弾性部材180がコネクタ部100内の中空部113bに隙間無く充填される構成とした。これ以外にも、メス端子111の中空部の径をオス端子151が通過可能な程度に小さく形成する(メス端子111の径をオス端子151の径よりも小さくする)。そして、上述と同様にメス端子111に弾性部材180が取り付けられた状態から、メスハウジング110に対してオスハウジング150を接続する。このとき、オス端子151の先端にテーパーやR加工を設けることでより好適にメス端子111の中空部の内径を広げながらメス端子111の中空部に挿通される。この場合、弾性部材180が外側に向けて弾性変形され、コネクタ部100内に弾性部材180が隙間無く配置されるようになる。また、弾性部材180の弾性変形で生じる押圧でメス端子111とオス端子151とが密着されるようになる。
【0052】
更には、上記ではスリーブ153と外筒部112の組み合わせによる押圧維持部材によって、弾性部材180の軸方向への圧縮状態が好適に維持されるようにしている。これ以外にも、押圧維持部材として周知のラチェット機構を用いても良い。例えば、ラチェット機構は、外筒部112の外周位置に設けられた溝と、その溝に嵌合される凸部が形成された筒部であって、コネクタ部100の外径形状に一致される筒部(図示を略す)との組み合わせで構成される。なお、この時の溝と凸部は、上述したようにコネクタ部100の接続時に、押圧壁152cが弾性部材180が置かれる位置に位置されるように決定される。これにより、コネクタ部100の接続時にラチェット機構の溝と凸部とが嵌合されることで、コネクタ部100(弾性部材180)を軸方向に圧縮された状態が好適に維持されるようになる。
【0053】
また、上記では体内埋植装置として、能動埋め込み医療機器(生体刺激装置)である患者の網膜を構成する細胞に電気刺激を与えることで視覚の再生を促す視覚再生補助装置を例に挙げて説明した。これ以外にも、患者の耳小骨へ音の振動を伝達する人工中耳、患者の胸部に埋植されて心臓に電気刺激を与えて不整脈の発生を抑制する心臓ペースメーカ等、周知の装置のコネクタ部に適用可能である。更には、体内埋植装置に限らず、液体中(例えば、海水中)等で使用されるコネクタ部に本実施形態の構成が適用されることで、コネクタ内の複数の電気接点間での短絡を生じさせることなく、コネクタ部の好適な接続状態を長期間保つことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】コネクタ部の斜視図である。
【図2】コネクタ部を軸方向に切断した模式的断面図である。
【図3】視覚再生補助装置の外観を示した概略図である。
【図4】視覚再生補助装置の体内装置の説明図である。
【図5】メス端子とオス端子の先端付近の拡大図である。
【図6】メス端子の形状の変用例である。
【符号の説明】
【0055】
50 ケーブル
100 コネクタ部
110 メスハウジング
111 メス端子
111a 先端部
111b スリット
111c 溝
112 外筒部
113 中空部
150 オスハウジング
152 基台
152c 先端面(押圧壁)
153 雄ネジ
180 弾性部材
181 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メス端子を備えたメスコネクタハウジングとオス端子を備えたオスコネクタハウジングとの分割及び接続により体内装置に接続されるケーブルを所定位置で分割及び接続するためのコネクタ部とを有し生体内に埋植される体内埋植装置において、
前記メスコネクタハウジング内に設けられる絶縁性及び弾性を有する弾性部材であって,前記メス端子を通過させるための複数の貫通孔が形成された弾性部材を備え、
該弾性部材は、前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続により加えられる圧縮応力で弾性変形し前記メス端子を周囲から押圧することを特徴とする体内埋植装置。
【請求項2】
請求項1の体内埋植装置において、
前記オスコネクタハウジング内部には前記弾性部材を軸方向に押圧するための押圧壁が形成されており、前記弾性部材は前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続において前記押圧壁により軸方向に押圧されることを特徴とする体内埋植装置。
【請求項3】
請求項2の体内埋植装置において、
前記メス端子は,前記オス端子を挿入するための中空部材であって,該中空部材の少なくとも一部分には前記メス端子先端から基端に向けて軸方向に延びるスリット又は溝が形成されており、
前記弾性部材の端子軸方向の圧縮弾性変形によってメス端子外周に押圧が加えられることにより前記スリット又は溝が閉じ合わせられることで,前記オス端子と前記メス端子とが密着されることを特徴とする体内埋植装置。
【請求項4】
請求項3の体内埋植装置は、
前記メスコネクタハウジングと前記オスコネクタハウジングとの接続状態で前記弾性部材の圧縮変形を維持させるために、前記弾性部材が置かれる位置に前記押圧壁を位置させるための押圧維持部材を備えることを特徴とする体内埋植装置。
【請求項5】
請求項4の体内埋植装置において、
前記体内装置は患者の生体内に埋植されて生体組織の電気刺激を行うための刺激部を備え、前記ケーブルの一端は前記刺激部に接続されることを特徴とする体内埋植装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94456(P2013−94456A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240531(P2011−240531)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】