説明

体内脂肪低減作用を有する組成物およびこれを含有する飲食物

【課題】通常の食生活習慣の大幅な変更を伴うことなく、しかも体内脂肪低減効果に優れた経済的かつ簡便な飲食物を提供すること、およびコーヒー抽出残渣などの廃棄資源を有効利用し、飲食物と共に摂取可能な組成物を提供。
【解決手段】1以上10分子以下のマンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする、体内脂肪低減作用を有する組成物及びこの組成物を含む飲食物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンノースを主体とする構成糖からなるオリゴ糖類を主成分とする体内脂肪低減作用を有する組成物、およびその組成物を用いた経口摂取可能な組成物、特に飲料、食物に関するものである。また、本発明は未利用資源の有効利用にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーの抽出残渣は従来、そのほとんどが焼却あるいは産業廃棄物として処理されてきた。近年になり、コーヒー抽出残渣が堆肥原料あるいは活性炭原料として利用されるようになってきたが、それらは未利用資源の高度利用という観点からは十分とはいえず、更なるコーヒー抽出残渣の高度利用の方法を確立することは重要課題となっている。
【0003】
一方、日常の運動不足、欧米化された高脂肪、特に動物性脂肪の多い食事、ストレスによる過食などの原因により、肥満が増加し続けている。肥満になると、糖尿病、高血圧症、高脂血症などいわゆる生活習慣病などの多くの疾病を起こしやすくなる。そのため、肥満を改善して健康な身体を維持することは予防医学の観点から重要である。特に高齢化社会に向かい生活習慣病が問題になってくるなか、生活習慣病を未然に防止するために「食と健康」への関心が高まっている。そのため種々の食品中から体内脂肪低減物質の探索やその作用機構についての研究が行われている(特許文献1及び2)。しかしまだ、日常の食生活で手軽にそして経済的に体内脂肪を低減し、肥満を改善できるよう開発された飲食品の例は少ない。
【特許文献1】特開平11−187843号
【特許文献2】特開2004−161616号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、通常の食生活習慣の大幅な変更を伴うことなく、しかも体内脂肪低減効果に優れた経済的かつ簡便な飲食物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらのような課題を解決するために鋭意検討の結果、マンナンを多く含む食品素材、主に、コーヒー抽出粕加水分解物から、糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1以上10以下のマンノオリゴ糖類、すなわちマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが1以上10分子以下結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類に体内脂肪低減効果を見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、無着色、無酸の糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1以上10以下のマンノオリゴ糖類を得ることで、食品への適用範囲を飛躍的に広げることができることを見いだした。
【0006】
したがって、本発明の態様は、以下の通りである。
1. 1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンオースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする体内脂肪低減作用を有する組成物。
2. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、1以上10分子以下のマンノースが結合したオリゴ糖類であることを特徴とする、上記1に記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
3. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンノースとグルコース、ガラクトース、フルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖とが、合計で1以上10分子以下結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類であることを特徴とする、上記
1に記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
4. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類の含量割合が、組成物中の総固形分に対して60重量%以上である、上記1〜3のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
5. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70重量%以上である、上記1〜4のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
6. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、分子中のマンノース単位の数が2〜6のオリゴ糖類であることを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
7. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンナンを加水分解処理することによって得られるものであることを特徴とする、上記1〜6のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
8. 前項のマンナンが、コーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣から得られるものである、上記7に記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
9. 前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、β−1,4−マンノオリゴ糖であることを特徴とする、上記1〜8のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物。
10. 上記1〜9のいずれかに1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物を含有する経口摂取可能な組成物。
11. 前記経口摂取可能な組成物が飲料である、上記10に記載の組成物。
12. 前記飲料が、液体コーヒー、インスタントコーヒー、またはコーヒーミックス飲料である、上記11に記載の組成物。
13. 前記経口摂取可能な組成物が食品である、上記10に記載の組成物。
14. 上記1〜9のいずれか1つに記載の体内脂肪低減作用を有する組成物を含有し、人の体内脂肪の低減作用を有するものであることを特徴とし、体脂肪が気になる人の飲食用に適したものである旨の表示を付した飲食品。
【発明の効果】
【0007】
体内脂肪低減作用を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類を飲食物に添加することにより、これを日常の食生活で手軽にそして経済的に摂取可能となり、体内脂肪低減効果を期待することができる。体内脂肪低減作用を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類は、コーヒー抽出残渣のような、廃棄物からも入手できるため、従来利用されていない資源を有効利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明において「マンノースを主体としたオリゴ糖類」とは、単糖であるマンノースを主たる構成要素とするオリゴ糖類を意味する。ここで「オリゴ糖類」なる語は、一般に単糖類と多糖類との間に位し、一定の小数量の単糖類分子のグリコシル結合からなる物質を指す。すなわち、結合している単糖の数が比較的少ないポリマーのことである。オリゴ糖「類」という場合、構成単糖の数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物であることを意味する。そしてマンノースを主体としたオリゴ糖「類」という場合は、構成単糖の種類や数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物を指す。本明細書において「マンノオリゴ糖類」の語は、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」の語と同様の意味において用いられる。
【0009】
本明細書において、オリゴ糖類の重合度を表すために「DP」と記載することがある。DPとは、オリゴ糖類を構成している単糖の数を意味する。すなわち単糖であるマンノースは「DP1」と表され、4つのマンノースから構成されたマンノオリゴ糖は重合度4、すなわち「DP4」と表される。学術的観点からは、重合度1(DP1)の糖は単糖であ
って、オリゴ糖ではない。しかし、本発明に用いるオリゴ糖類(組成物)中には、単糖が含まれる場合があるので、本明細書においてはこのような場合であっても総称して「オリゴ糖類」と呼ぶものとする。すなわち、「1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類」という場合には、この糖組成物中に重合度1の単糖も含まれている場合があると理解されたい。
【0010】
本発明において用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した複数種類のオリゴ糖の組成物であることが好ましい。特に好ましいオリゴ糖類は、マンノースが1以上10分子以下結合したオリゴ糖類か、あるいはマンノースとグルコース、ガラクトース、フルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖とが、合計で1以上10分子以下結合した、複数種類のオリゴ糖の組成物である。
【0011】
本発明の組成物において、総固形分に対し、マンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖の類の合計含有割合が60重量%以上が好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0012】
本発明における組成物の糖組成においてはマンノース残基の割合が70重量%以上、更に好ましくは80重量%であるものが望ましい。マンノース残基の割合が70%に満たないと、体内脂肪低減効果が大きく期待できないとともに、甘味度も増し適用の幅が狭まる傾向にある。
【0013】
また、本発明において用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、その分子中のマンノース単位の数が2〜9,特に2〜6であることが好ましい。
本発明の一の態様は、上述のマンノースを主体としたオリゴ糖類を含む、体内脂肪低減作用を有する組成物である。ここで「体内脂肪低減作用を有する組成物」という語は、広く一般に体内の脂肪を低減させる働きのある組成物を意味するが、本明細書では特に皮下脂肪と内臓脂肪を低減させ得る物質を含む混合物全般を意味する。したがって、上記の体内脂肪低減作用を有するオリゴ糖類を用いて、本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物を製造することができる。
【0014】
本発明の他の態様は、体内脂肪低減作用を有する組成物を含有し、人の体内脂肪低減作用を有するものであることを特徴とし、体脂肪が気になる人の飲食用に適したものである旨の表示を付した飲食品である。ここで「体脂肪が気になる人」とは、医学的に見て肥満の域に属し、何らかの医学的治療が必要であるとされる人のみならず、慢性的にあるいは一時的に肥満の自覚を有する人、肥満に悩む人、内臓脂肪を含む体内脂肪の増加の自覚を有する人、及びこれに悩む人などを広く示す。「体脂肪が気になる人の飲食用に適したものである旨の表示」とは、かかる体脂肪が気になる人が飲んだり食したりした場合に、体脂肪の低減が期待できるような記載、及びこれに類する記載を指す。表示は、飲食物それ自体に刻印などの手段により記載するほか、飲食物のパッケージ、包装紙、缶、瓶、ボトルなどを含む包装に記載すること、及びこれらの説明書、パンフレットなどの書類に記載すること、及び各種チラシ、インターネットを含むかかる飲食物の宣伝のために用いられる広告に記載することを含む。
【0015】
さて、本発明に用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、マンナンを加水分解することにより製造することができる。ここで原料のマンナンは、たとえばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処
理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。かかる当混合物中には、上述した体内脂肪低減作用を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類が含まれている。したがって、このようにして得た組成物は、本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物となる。さらに、本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。したがって、本明細書において単に「マンナン」という場合は、D−マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトースまたはグルコースと構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含めるものとする。なお、D−マンノースはアルドヘキソースであり、D−グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0016】
さらに本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、コーヒー生豆または焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みコーヒー残渣を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である。一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖を得ることができる。
【0017】
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸および/または高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これに限定されない。酸および/または高温により加水分解する方法としては特開昭61−96947号、特開平2−200147号等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもできるし、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用するのが便利であるが比較的高温で短時間の反応を行わせるのに向いているものならば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10〜40のマンナンをDP1〜10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得ることができる。なお、ここでコーヒー抽出残査とは、大気中あるいは加圧条件下で焙煎粉砕コーヒーを水などの溶媒で抽出した後の、いわゆるコーヒー抽出粕を意味する。
【0018】
本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、コーヒー豆(焙煎コーヒー豆、及び焙煎粉砕コーヒー豆を含む)および/またはコーヒー抽出残渣の加水分解処理により得る場合、使用するコーヒー豆の種類や産地に特に制限はなく、アラビカ種、ロバスタ種、リベリカ種等いずれのコーヒー豆でもよく、さらにブラジル、コロンビア産等いずれの産地のコーヒー豆も使用することができ、一種類の豆のみを単独で使用しても、ブレンドした2種以上の豆を使用しても良い。通常、商品価値がないとして廃棄処分されるような品質の悪いコーヒー豆または小粒のコーヒー豆であっても使用することができる。上記コーヒー豆
を一般的に用いられている焙煎機(直火、熱風、遠赤、炭火式など)による極浅炒り、浅炒り、中炒り、深炒りに焙煎したコーヒー豆、及びこの焙煎コーヒー豆を、一般的な粉砕機、ロールミルなどを用いて粉砕することにより得た、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を用いることができる。
【0019】
また、コーヒー抽出残渣は、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において、焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後のものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0020】
ここで、上記加水分解処理について、いくつか詳細に説明する。酵素により分解する方法としては、たとえばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへたとえば市販のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度およびその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であればとくに問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件およびその他の要因によって適宜選択すればよい。
【0021】
微生物発酵により分解する方法としては、たとえば水性媒体に懸濁させたコーヒー抽出残渣にセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを産出する微生物を植菌して培養させればよい。使用する微生物は、細菌類や担子菌類などコーヒー抽出残渣中のマンナンを分解する酵素を産出するものであれば良く、使用する微生物によって培養条件などは適宜選択すればよい。
【0022】
上記の方法によって得られたマンノースを主体とするオリゴ糖類を含む体内脂肪低減作用を有する組成物を含む反応液は、必要に応じて精製することができる。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法、溶剤抽出法等で脱色・脱臭を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うことが挙げられる。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースを主体とするオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
また、本発明は、上記に説明した本発明に係る体内脂肪低減作用を有する組成物を含有する経口摂取可能な組成物、特に飲料及び食料にも関する。さらに、本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、上記飲食物のみならず、化粧品、医薬品、飼料等幅広い分野で使用することも可能である。本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、特に飲食物としてヒトが口から摂取することにより体内脂肪低減効果を発揮する。
【0024】
例えば、コーヒー抽出残渣を酸および/または熱により加水分解しオリゴ糖類を高純度に含むように調製した体内脂肪低減作用を有する組成物を液体コーヒー、インスタントコーヒー等にそのまま添加して使用することもできるが、必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂、溶剤等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理をした組成物を添加した方が、コーヒー本来の味、香りのより豊かなコーヒーを提供することができる。ここで、液体コーヒーとしては、缶あるいはいわゆるペットボトル容器に入れられて市販されているコーヒー飲料あるいはコーヒー入り飲料と呼ばれるものが挙げられ、インスタントコーヒーとしては、焙煎粉砕コーヒーを熱湯で抽出した抽出液を噴霧あるいは凍結乾燥方法により水分を除去した可溶性粉末コーヒーと呼ばれるものが挙げられ、コーヒーミックス飲料としては、可溶性粉末コーヒーに砂糖、クリーミングパウダーなどを添加して混合した飲料などが挙げられる。
【0025】
(発明の効果)
本発明者らは、先の課題を解決するために、上記の方法により得られた1以上10分子以下のマンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする、体内脂肪低減作用を有する組成物を使用して体内脂肪低減効果を研究した結果、内臓脂肪減少効果が顕著に発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【実施例】
【0026】
本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物、およびこれを含有する液体コーヒーを以下のように調製し、この飲料の体内脂肪低減効果を調べた。本実施例は本発明の実施態様を具体的に説明したものであって、本発明の範囲を限定することを意図しない。
実施例1
マンノオリゴ糖の調製
常法により得た焙煎粉砕コーヒーを、商業上使用されるパーコレション系にて抽出し、後に残ったコーヒー抽出残渣を使用した。
【0027】
コーヒー抽出残渣は反応器に送りやすくするために、まず粉砕して粒径を約1mmにした。次いで、水とこの粉砕物からなる総固形分濃度が約14重量%のスラリーを調製し、4mの熱栓流反応器内において熱処理した。滞留時間8分に対応する速度で高圧蒸気とともに栓流反応器にポンプ輸送し、6.35mmφオリフィスを用いて約210℃に維持した。その後、大気圧下に噴出することによって、反応を急止した。できたスラリーを濾過して、不溶性固形分から可溶性固形分を含む液を分離した。この可溶性固形分含有液を活性炭、吸着樹脂で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した後、濃縮、乾燥してマンノースを主体とする単糖類が1乃至10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を収率14%で得た。
【0028】
このようにして得られた体内脂肪低減作用を有する組成物中に含まれるオリゴ糖のDP分布は、DP1;2.4%、DP2;26.6%、DP3;20.2%、DP4;17.8%、DP5;10.9%、DP6;8.9%、DP7;6.0%、DP8;3.6%、DP9;1.9%、DP10;1.7%で、糖鎖中のマンノース残基の含有量は90%であるが、DP分布および糖鎖中のマンノース残基の含有量は加水分解条件により種々の値をとりうる。オリゴ糖のDP1としてはマンノース等、DP2としてはマンノビオース等、DP3としてはマンノトリオース等、DP4としてはマンノテトラオース等、DP5としてはマンノペンタオース等、DP6としてはマンノヘキサオース等、DP7としてはマンノヘプタオース等、DP8としてはマンノオクタオース等、DP9としてはマンノノナオース等、DP10としてはマンノデカオース等で、結合様式はβ−1,4結合であった。このようにして得られたマンノオリゴ糖類を用いて以下の体内脂肪低減実験を行った。ヒト試験用液体コーヒーの調製
コーヒー濃縮液にマンノオリゴ糖類を含む組成物、さらにコーヒー固形分濃度が1.1%になるよう水を加えて希釈し、常法に従い殺菌、900ml容ペットボトルに充填した。マンノオリゴ糖類を含む組成物は、900ml容ペットボトル1本あたり9g(1g/100ml)含まれるよう調製した。官能評価した結果、風味良好な液体コーヒーであった。これを試験飲料としてヒト試験に使用した。
【0029】
また、対照飲料として、マンノオリゴ糖類を含む組成物をコーンシロップソリッドに置換して、上記と同様の方法で液体コーヒーを製造した。コーンシロップソリッドは、900ml容ペットボトル1本あたり9g(1g/100ml)含まれるよう調製した。官能評価した結果、風味良好な液体コーヒーであった。これを対照飲料としてヒト試験に使用した。
液体コーヒーの体内脂肪低減効果
日本肥満学会の肥満度判定基準に従い、Body Mass Indexから判断して肥
満(1度)に属する健常成人男性14名、成人女性14名を被験者とした。各種計測値、検査値がほぼ同一になるように2群に分け、一方は試験群として実施例1の液体コーヒーを、他方は対照群として比較例1の液体コーヒーを摂取した。被験者は、試験飲料または対照飲料を一日300ml、8週間連続で摂取した。そして、摂取初日、4週間目、8週間目に来院して、医師の問診と腹部CTスキャン撮影を行った。被験者には、体脂肪減少作用を標榜する医薬品および食品類は摂取させないこととした。また、試験期間中の食生活は試験期間前と大きく変更させないようにさせ、アルコール量は1日当たりビール瓶1本(633ml)相当以下の量に留めるよう指導した。そして、被験者は各来院日前の3日間、
間食も含む全食事内容を記録して、栄養摂取量の状況を把握した。
【0030】
図1に示すとおり、試験飲料であるマンノオリゴ糖含有液体コーヒー飲用群(図1中、”試験飲料群”のグラフ)は、対照飲料飲用群(図1中、”対照飲料群”のグラフ)に比べ、有意な総脂肪面積と皮下脂肪面積の低下が認められた。また、内臓脂肪面積も低下傾向が認められた。栄養摂取量については、両群で有意な差は認められなかった。
【0031】
従って、本発明に係る体内脂肪低減作用の組成物は、体内脂肪を顕著に減少させると云える。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物は、体内脂肪低減作用を有するマンノースを主体とするオリゴ糖類を含み、具体的にはマンナンを加水分解することにより製造することができる。本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物を飲食物に添加して日常的に摂取することによって、体内脂肪低減効果を期待できる。本発明の体内脂肪低減作用を有する組成物の原料として、例えばコーヒー豆やコーヒー抽出残渣を利用することができる。すなわち、従来は廃棄物として処理されていたコーヒー抽出残渣から体内脂肪低減効果のある組成物を調製し、それを飲食物などと共に摂取することが可能となるため、健康改善効果に加えて廃棄資源の再利用という観点からも非常に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】8週間にわたり本発明による飲料を飲用した群と対照飲料を飲用した群につき、総脂肪面積、皮下脂肪面積、及び内臓脂肪面積相対値を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上10分子以下の単糖類が結合したオリゴ糖類であって、マンノース残基の割合が70重量%以上であるオリゴ糖類組成物を含有する、皮下脂肪および内臓脂肪低減剤。
【請求項2】
前記オリゴ糖類が、マンナンを加水分解処理することによって得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の皮下脂肪および内臓脂肪低減剤。
【請求項3】
前記マンナンが、コーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣から得られるものである、請求項2に記載の皮下脂肪および内臓脂肪低減剤。
【請求項4】
前記オリゴ糖類が、β−1,4−マンノオリゴ糖であることを特徴とする、請求項1に記載の皮下脂肪および内臓脂肪低減剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−275047(P2009−275047A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155800(P2009−155800)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【分割の表示】特願2004−271412(P2004−271412)の分割
【原出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000243766)味の素ゼネラルフーヅ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】