説明

体外診断装置

【課題】質量分析技術を生体試料分析に適用可能とする体外診断装置を得る。
【解決手段】質量分析用基板2の表面に固定した物質をレーザ光Lの照射によりイオン化させると共に該表面から脱離させ、イオン化された該物質を捕捉する検出器4を備えた質量分析計10と、検出器4が内部に配置された、大気圧インレット11aを備えた筐体11と、試料が収容された複数の試料容器20a,20b,20c…から、試料Sを、分注位置P1に配置された質量分析用基板2上の所望の位置に順次ピペッティングするための分注機構30と、質量分析用基板2を、分注位置P1から測定位置P0に搬送する第1の搬送機構40と、測定位置P0で質量分析用基板2を支持し、質量分析用基板2にピペッティングされた複数の試料について順次質量分析を行うために、質量分析用基板2の位置決めを行うステージ機構42と、質量分析用基板2をステージ機構42から退避させる第2の搬送機構44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、その脱離した物質を捕捉して質量分析するための質量分析技術を利用した体外診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質の同定等に用いられる質量分析法において、質量分析用基板上に接触された試料にレーザ光を照射して被分析物質を基板から脱離させ、脱離された物質を質量別に検出する質量分析方法が知られている。例えば、飛行時間型質量分析法(Time of Flight Mass Spectroscopy : TOF-MS)は、基板から脱離された物質を所定距離飛行させて、その飛行時間により物質の質量を分析するものである。
【0003】
難揮発性の物質や合成高分子等の高分子量の物質の質量分析イオン化法としては、大気圧イオン化法の一種であるエレクトロスプレーイオン化法(ESI:Electro Spray Ionization)(特許文献1参照)、電界脱離イオン化法(FD)や高速原子衝撃イオン化法(FAB)、マトリクス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)等が挙げられる。中でもMALDI法は、分子量が1万を超す被分析物質の測定が可能であり、試料に対する化学的な影響も少ない分析法として知られている。
【0004】
MALDI法は、被分析物質をマトリクスと呼ばれるシナピン酸やCHCA、等に混入したものを試料とし、マトリクスが吸収した光エネルギーを利用して被分析物質をマトリクスとともに気化させ、次いでマトリクス−被分析物質間でのプロトン移動がおこって被分析物質をイオン化させる方法である。このMALDI法を飛行時間型質量分析法(Time of Flight Mass Spectroscopy :TOF-MS)に適用したMALDI−TOF MSは、生体物質や合成高分子の分野で普及してきており、より高精度な分析を可能とするMALDI−TOF MSが検討されている(特許文献2)。
【0005】
また、さらなる感度の向上を図った、マトリックスを必要としない新たな質量分析方法として、ナノスケールの構造体表面にイニシエータと呼ばれるイオン化促進剤が備えられた基板を用いた、物質のイオン化方法を用いた、NIMS(nanostructure-initiator mass spectrometry)と呼ばれる方法も提案されている(非特許文献1参照。)。また、非特許文献1には、質量分析技術を血液、尿等の生体試料についての体外診断に用いることの可能性についても述べられている。
【特許文献1】特開平5−217545号公報
【特許文献2】特開平9−320515号公報
【非特許文献1】Nature Vol.449, 25 October 2007 p.1033-1036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在の質量分析装置は、研究者レベルのユーザにより理化学研究の目的で使用されているに過ぎない。質量分析用基板への試料の滴下は手動で行われており、また、例えばTOF−MASは、一般に内部を高真空に保つことができる筐体内に配置されているため、試料が滴下された質量分析用基板を、筐体内(測定室)に挿入するためには、測定室と外部との間に設けられたロードロックチャンバ(試料前室)と測定室との間の扉を閉とした状態で、基板を試料前室に挿入した後、該試料前室内をロータリポンプで真空引きし、その後、試料前室と測定室との間の扉を開として、基板を測定室へ移動させる必要がある。従って、測定操作に手間がかかるという問題がある。
【0007】
質量分析技術を体外診断に用いるに当たっては、臨床検査技師が装置を使用することを想定し、測定操作が容易であることを要し、かつ、多数の試料について高速に検査を行えるようにする必要がある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、容易に操作することができ、かつスループットの高い、質量分析技術を用いた体外診断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の質量分析技術を用いた体外診断装置は、質量分析用基板の表面に固定した物質をレーザ光照射によりイオン化させると共に該表面から脱離させ、イオン化された該物質を捕捉する検出器を備えた質量分析計と、
前記検出器が内部に配置された、該内部を高真空に保つことができる筐体であって、外部の測定位置に配置された前記質量分析用基板から脱離した前記イオン化された該物質を該筐体内に導入するための大気圧インレットを備えた筐体と、
試料が収容された複数の試料容器から、前記試料を、分注位置に配置された前記質量分析用基板上の所望の位置に順次ピペッティングするための分注機構と、
前記質量分析用基板を、前記分注位置から前記測定位置に搬送する第1の搬送機構と、
前記測定位置で前記質量分析用基板を支持し、該質量分析用基板にピペッティングされた複数の試料について順次質量分析を行うために、該質量分析用基板の位置決めを行うステージ機構と、
前記質量分析用基板を前記ステージ機構から退避させる第2の搬送機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、前記分注位置と前記測定位置との間に、前記質量分析用基板上にピペッティングされた試料を乾燥させるための乾燥手段を備えることが望ましい。該乾燥手段としては、例えば、ファンと加熱手段の少なくともいずれかを備えてなるものが好適である。
【0011】
さらに、前記質量分析用基板上にピペッティングされた試料への塵埃の付着を防止するシールド手段を備えることが望ましい。シールド手段は、クリーンブース等の清浄な環境を維持できる筐体により実現できる。HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を備えることがより好ましい。
【0012】
また、前記質量分析用基板が、Si基板の表面をフッ酸処理して形成されたナノメートルスケールの微細構造を有する基板であり、該基板の表面に、前記試料のイオン化を促進するイオン化剤が塗布されてなるものであることが望ましい。
イオン化剤としては、例えば、C24H20F34OSi2、C20H20F26OSi2等の有機シラン系化合物が挙げられる。
【0013】
本発明の体外診断装置においては、前記分注機構、前記第1の搬送機構および第2の搬送機構、乾燥手段、シールド手段等が、一体的に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体外診断装置は、自動分注機構、質量分析計、装置内において基板を搬送する第1および第2の搬送機構を備えており、自動ピペッティング作業により効率が向上し、分注から、測定までを自動で行うよう構成されていることから、操作が容易であり、かつ高スループットで、多数の試料についての質量分析を効率よく行うことができる。また、質量分析計を備えていることから、従来の抗体、抗原反応等による診断装置と異なり、生物試料を必要しないため、コストを格段に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の体外診断装置の実施の形態を説明する。
【0016】
体外診断装置1は、質量分析用基板2の表面に固定した物質をレーザ光照射によりイオン化させると共に該表面から脱離させ、イオン化された該物質を捕捉する検出器4を備えた質量分析計10と、検出器4が内部に配置された、該内部を高真空に保つことができる筐体であって、外部の測定位置P0に配置された質量分析用基板2から脱離したイオン化された物質を筐体内に導入するための大気圧インレット11aを備えた筐体11と、試料が収容された複数の試料容器20a、20b、…から、試料を、分注位置P1に配置された質量分析用基板上の所望の位置に順次ピペッティングするための自動分注機構30と、質量分析用基板2を、分注位置P1から測定位置P0に搬送する第1の搬送機構40と、測定位置P0で質量分析用基板2を支持し、該質量分析用基板2にピペッティングされた複数の試料について順次質量分析を行うために、該質量分析用基板2の位置決めを行うステージ機構42と、質量分析用基板2をステージ機構42から退避させる第2の搬送機構44とを備えている。
【0017】
また、分注位置P1と測定位置P0との間に、質量分析用基板2上にピペッティングされた試料を乾燥させるための乾燥手段50を備えている。本実施形態においては、乾燥手段50は、加熱手段であるヒータ52を備えている。なお、ヒータに代えてファンを備えていてもよいし、ヒータとファンの両者を備えていてもよい。
【0018】
従来の質量分析測定においては、質量基板上に滴下した試料を自然乾燥させた後、質量分析装置にセッティングするのが一般的であり、乾燥手段による乾燥を行っていなかった。乾燥手段を備えることにより、基板への試料の滴下から測定に至る時間を著しく短縮し、スループットを向上させることができる。
【0019】
さらに、質量分析用基板上にピペッティングされた試料への塵埃の付着を防止するシールド手段として、質量分析計10、筐体11、分注機構30、乾燥手段50、搬送機構40、44等の各機構を内包するクリーンブース54を備えている。クリーンブース54には該クリーンブース54内を清浄に保つためのHEPAフィルタ56を備えたHEPAユニットを備えている。また、クリーンブース54には、図示しない試料容器および基板挿入口、基板排出口を備えている。クリーンブース54内は大気圧であり、基板は基本的に大気圧下にある。
【0020】
質量分析用基板2は、従前の質量分析装置において用いられるいかなる質量分析用基板を用いてもよいが、特に、Si基板の表面をフッ酸処理して形成されたナノ構造を表面に有する基板であり、該基板の表面に、試料のイオン化を促進するイオン化剤が塗布されていることが好ましい。具体的なナノ構造としては、Si基板をフッ酸水溶液中でエッチング処理することにより形成される、ポーラスシリコン構造が挙げられる。微細孔の口径、形状および密度はエッチングの条件によって変化させることが可能である。なお、基板の材料はSiに限るものではなく、金、白金等の金属からなる基板を用いてもよい。ナノ構造の形成方法もフッ酸処理によるものに限らず、レーザエッチングほか、ナノインプリント等の方法により形成されたものであってもよい。
イオン化剤としては、C24H20F34OSi2、C20H20F26OSi2、等が望ましく、C11H17ClSi、C9H24N2OSi、C12H26O5Si2等の有機シラン系化合物を用いても良い。
【0021】

本実施形態の質量分析計10は、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)である。図示されるように、質量分析計10は、筐体11内部に配置された、後述の質量分析用基板2から脱離したイオン化物質を検出するリニア検出器4およびリフレクトロン検出器5と、質量分析用基板2と検出器4との間に、基板2の表面に対向する位置に配された引き出しグリッド12と、引き出しグリッド12の質量分析用基板2側の面と反対側の面に対向して配されたエンドプレート16と、エンドプレート16とリニア検出器4との間に設けられた、イオン化物質を反転させるリフレクトロン18とを備える。図中の符号15は、TOF用のチューブである。さらに、筐体11外部に配置された質量分析用基板2の表面に接触された試料にレーザ光Lを照射して、分析対象物質を表面から脱離させる光照射手段19を備えている。
【0022】
リニア検出器4は、基板2から検出器までイオンを直線的に飛行させる測定モード(リニアモード)で用いられる検出器であり、リフレクトロン検出器5は、リフレクトロン18という静電場ミラーを用いてイオンの向きを反転させて飛行させる測定モード(リフレクトロンモード)で用いられる検出器であり、いずれもマルチチャンネルプレート型検出器(MCP検出器)により構成することができる。
【0023】
光照射手段19は、レーザ光源を備えており、光源から出射される光を導光するミラーなどの導光系を備えていてもよい。出力されるレーザ光Lとしては、例えば、波長337nm、パルス幅50ps〜50ns程度のパルスレーザが挙げられる。
【0024】
なお、検出器4、5は、該検出器の出力を増幅させる、図示しないアンプに接続され、該アンプはその出力信号を処理する図示しないデータ処理部に接続されており、検出器、アンプおよびデータ処理部により質量分析計の分析部が構成されている。
【0025】
筐体11は、内部を高真空に保つためターボ分子ポンプ(TMP)に接続されてTMPによる排気がなされており、質量分析用基板から脱離した分析対象物質を筐体内部へ導入するための大気圧インレット11aはロータリーポンプ(RP)に接続されたRPによる排気がなされている。大気圧インレット11aで中程度の真空度(〜10-3torr程度)、イオンが自由飛行する筐体内部では高真空(10−6torr程度)が保たれるよう構成されている。
【0026】
ステージ機構42は、測定位置P0に質量分析用基板2を支持する電極を兼ねた保持部43を備え、保持部43に支持された質量分析用基板2を二次元的に移動させることが可能な移動ステージ、例えばXYステージであり、質量分析用基板2上の複数の分析対象物質が配置されたそれぞれの箇所が、レーザ照射位置に位置するように質量分析用基板2を移動させるものである。
【0027】
自動分注機構30は、複数のピペットカートリッジ32を備え、試料ラック20に収容された複数の試料容器20a、20b、20c…から、試料容器毎にピペットを交換しつつ順次試料を吸引し、質量分析用基板2上の所定位置に順次ピペッティングする。複数の試料容器を収容するラックは、48穴、96穴等のタイタープレートであってもよく、この場合、各穴が個々の試料容器に相当する。
【0028】
第1の搬送機構40は、質量分析用基板2を、分注位置P1から乾燥手段50を介して測定位置P0に搬送するものであり、例えば、質量分析用基板は直線的に移動させる第1のリニアスライド機構と、XYステージ42の保持部に質量分析用基板を押し出す押し出し機構から構成することができる。
【0029】
第2の搬送機構44は、質量分析用基板2をステージ機構42から退避位置P2に退避させるものであり、例えば、第2のリニアスライド機構と、質量分析用基板2をXYステージ42から第2のリニアスライド機構に移動させる図示しない押し出し機構とから構成することができる。
【0030】
以下、上記構成の体外診断装置1を用いた検査処理工程を説明する。
1)まず、ユーザが、クリーンブース内の自動分注器30に、それぞれ血液試料が注入された複数の試料容器を収容するラック20を装填すると共に、質量分析用基板2を分注位置P1に載置する。
【0031】
2)自動分注機構30において、複数の試料容器20a、20b、…を収容するラック20の試料容器毎にピペットを交換しつつ試料Sが質量分析用基板2上の所定位置に順次ピペッティングされる。この際、図2に示すように、複数の試料は、それぞれが質量分析用基板2上の各座標位置XiYiに順次配置される。
【0032】
3)その後、質量分析用基板2は第1の搬送機構40により乾燥手段50内に搬入される。乾燥手段50内ではヒータ52による加熱により試料Sが乾燥される。乾燥手段50内での移動速度あるいは、一時待機時間などは、試料の乾燥時間により適宜設定する。
【0033】
4)さらに、質量分析用基板2は、第1の搬送機構40により乾燥手段50からステージ42の測定位置P0へと搬送され、測定位置P0にて保持部43に支持される。
【0034】
5)質量分析計10により質量分析が行われる。なお、ここではリニアモードで測定を行う場合について説明する。
X−Yステージ42により、まず、質量分析用基板2上の位置X11がレーザ照射位置となるように位置調整される。
質量分析用基板2に電圧Vs印加され、所定のスタート信号により光照射手段19から特定波長のレーザ光Lが質量分析用基板2上の位置Xに照射される。レーザ光Lの照射により、試料中の分析対象物質がイオン化されると共に基板表面から脱離される。なお、分析対象物質はイオン化された後に脱離されるものであってもよいし、脱離された後にイオン化されるものであってもよい。
脱離された分析対象物質は、質量分析用基板2と引き出しグリッド12との電位差Vsにより引き出しグリッド12の方向に引き出されて加速し、中央の孔を通ってエンドプレート16の方向にほぼ直進して飛行し、更にエンドプレート16の孔を通過して検出器4に到達して検出される。
検出器4からの出力信号は、アンプにより所定レベルに増幅され、その後データ処理部に入力される。データ処理部では、上記スタート信号と同期する同期信号が入力されており、この同期信号とアンプからの出力信号とに基づいて分析対象物質の飛行時間を求めることができるので、その飛行時間から質量を導出して質量スペクトルを得ることができる。なお、データ処理部に試料容器と質量分析用基板上のピペッティング位置とが関連付けられて記憶されている。
その後、ステージ42により、位置X12にレーザ光が照射されるように基板2の位置を調整し、同様の手順で質量分析を行う。ステージ42により基板2の位置を順次ずらして複数の試料についての質量分析を順次行う。
【0035】
6)1つの基板2上の全ての試料についての質量分析が終了した後、基板2は第2の搬送機構44により測定位置P0から退避位置P2に退避される。
【0036】
7)その後、クリーンブース54の基板排出口からユーザが基板2を取り出す。
【0037】
このように、ユーザは工程1)において、質量分析用基板2と試料容器ラックを装填する作業、工程7)において測定終了後の質量分析用基板2を取り出す作業を行うのみであり、基板上への試料の滴下、乾燥および、質量分析工程はすべて本発明の体外診断装置が自動で行う。従って、ユーザの負担は軽く、容易に操作することができ、かつ多数の試料について高効率に検査を行うことができる。
【0038】
本実施形態では、質量分析計10がTOF−MSである場合を例に説明したが、イオン化された試料イオンの質量分析を行う装置としては、TOF型のものに限らず、IT(Ion Trap;イオントラップ型)、FT(ICR)(Fourier-Transform Ion Cyclotron Resonance;フーリエ変換型)、また複数の質量分析手法を組み合わせた手法であるQqTOF(Quadrupole-TOF;四重極-TOF型)、TOF−TOF(TOF連結型)などの質量分析装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施形態の体外診断装置の概略構成図
【図2】本発明に係る体外診断装置で用いられる質量分析用基板2の平面図
【符号の説明】
【0040】
1 体外診断装置
2 質量分析用基板
4、5 検出器
10 質量分析装置
11 筐体
11a 大気圧インレット
12 引き出しグリッド
16 エンドプレート
18 リフレクトロン
19 光照射手段
20 試料ラック
20a、20b、20c… 試料容器
30 分注機構
40 第1の搬送機構
42 ステージ
44 第2の搬送機構
50 乾燥手段
52 ヒータ
L レーザ光
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析用基板の表面に固定した物質をレーザ光照射によりイオン化させると共に該表面から脱離させ、イオン化された該物質を捕捉する検出器を備えた質量分析計と、
前記検出器が内部に配置された、該内部を高真空に保つことができる筐体であって、外部の測定位置に配置された前記質量分析用基板から脱離した前記イオン化された該物質を該筐体内に導入するための大気圧インレットを備えた筐体と、
試料が収容された複数の試料容器から、前記試料を、分注位置に配置された前記質量分析用基板上の所望の位置に順次ピペッティングするための分注機構と、
前記質量分析用基板を、前記分注位置から前記測定位置に搬送する第1の搬送機構と、
前記測定位置で前記質量分析用基板を支持し、該質量分析用基板にピペッティングされた複数の試料について順次質量分析を行うために、該質量分析用基板の位置決めを行うステージ機構と、
前記質量分析用基板を前記ステージ機構から退避させる第2の搬送機構とを備えたことを特徴とする体外診断装置。
【請求項2】
前記分注位置と前記測定位置との間に、前記質量分析用基板上にピペッティングされた試料を乾燥させるための乾燥手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の体外診断装置。
【請求項3】
前記乾燥手段が、ファンと加熱手段の少なくともいずれかを備えてなるものであることを特徴とする請求項2記載の体外診断装置。
【請求項4】
前記質量分析用基板上にピペッティングされた試料への塵埃の付着を防止するシールド手段を備えたことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の体外診断装置。
【請求項5】
前記質量分析用基板が、Si基板の表面をフッ酸処理して形成されたナノスケールの微細構造を有する基板であり、該基板の表面に、前記試料のイオン化を促進するイオン化剤が塗布されてなるものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の体外診断装置。
【請求項6】
前記分注機構、前記第1の搬送機構および第2の搬送機構が、一体的に構成されていることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の体外診断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−71829(P2010−71829A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240205(P2008−240205)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】