説明

体液の被分析物を測定するための分析システム

【課題】信頼性を向上させるために、公知の体液の被分析物を測定するための分析システムを提供する。
【解決手段】テストエレメント3は、試料塗布領域(8)と2つの分析領域9a、9b、および被分析物との反応により所望の分析結果を特徴付ける変化を生じる試薬システムを有し、測定・評価ユニット4は、分析領域9a、9bのアナログ測定信号11a、11bを生成する2つのアナログ測定ユニット10a、10b、デジタル化する2つのアナログ・デジタル変換器12a、12b、制御データ値17a、17bをデジタル化測定信号16a、16bに基づいて比較するための比較器13、制御データ値17a、17b間の決定された偏差が予め規定された値より小さい場合、制御データ値17a、17bの少なくとも1つがさらなる処理のために通過を許可される最終処理ユニット15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被分析物との反応が、所望の分析結果を特徴付ける検出可能な変化を生じる試薬システムを含むテストエレメント、および測定・評価ユニットを備える分析装置を有する、体液の被分析物を測定するための分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てのテストエレメント、試験担体または試験片を用いる体液の被分析物を測定するための分析システムは、先行技術において周知である。この種のシステムは、種々の被分析物の濃度を測定するために用いられる。たとえば、血中のグルコース濃度またはコレステロール濃度が測定される。
【0003】
テストエレメントは、一般に、液体試料との反応が、分析システムを用いて測定することができる、検出可能な変化を生じる1以上の試薬から成る試薬システムを含む。測光分析システムにおいては、テストエレメントが試料と反応したとき、テストエレメントの検出層に色の変化が生じるが、それは、分析システムに付属の測定・評価ユニットを用いて光度測定が行なわれる。たとえば、テストエレメントによって反射された光の強さが測定される。
【0004】
代替として、所謂電気化学分析システムも用いることができるが、この場合、液体試料をテストエレメントに供給したとき電気化学反応が生じ、それは、検出可能な荷電量の変化、電流、または電圧変化として検出される。
【0005】
公知の分析システムは、適切に使用されたとき、高い信頼性が得られるように動作する。しかし、誤った測定結果が、分析機器の誤動作またはテストエレメントの誤った使用によってもたらされることがある。充分な注意がそのような分析システムとテストエレメントの作製には払われているが、誤った結果を出力することを回避するために、測定装置の故障が判定できる程の高い品質管理が望まれる。
【0006】
とりわけ血中グルコース濃度が測定されるグルコース測定システムについては、高い信頼性と低い許容誤差であることが求められる。血中グルコース濃度の濃度測定の結果は、患者の治療の基礎となる。インスリンの投与は、測定したグルコース濃度によって決められるために、誤りのない分析値が重要になる。誤った測定結果に基づく、よってインスリンの誤った(低すぎるまたは高すぎるインスリン量の)投与が行なわれる患者の治療は、健康並びに生命に危害を与える可能性がある。
【0007】
このために、重複システムが用いられ、その場合、分析領域からの反射光を測定する、たとえば2つの光度検出器が並列に配置される。この種のシステムは、米国特許第6955060号明細書に記載されている。代替として、1つの検出器を用いて2つの異なる分析結果を得るために、2つの光源により2つの分離した分析領域を照射することもできる。
【0008】
分析システムのエラーは、一般に機械的、測定技術の、または電子機器のレベルにおいて影響を及ぼす。デジタル・サブシステムそのものは、充分にモニター可能であるが、デジタル・アナログ部分系においては、測定の精度および/または正確度を確保するための品質管理は、かなり困難なものになる。
【0009】
測定精度を向上させるとともに、特にエラーを回避するために、互いに独立した複数回の測定を患者が実施するようにもできる。たとえば、ユーザに、同一の装置、ただし2つの異なるテストエレメントを用いて2つの独立した測定を連続して実施するようにさせることもできる。しかし、この種の作業を実際にユーザに求めることは適当ではない。
【0010】
代替として、測定の信頼性を向上させるために、測定を、互いに完全に独立した2つの装置を用いて実施することもできる。この方法も、また、測定の手間とコストが大きく増大するために、現実的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、信頼性を向上させるために、公知の分析システムを改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1記載の特徴を有する分析システムによって達成される。本発明による分析システムの、従属請求項に記載のさらなる改良項目が、その他の有利な、非自明の特徴を規定する。
【0013】
本発明による、体液の被分析物を測定する分析システムは、被分析物との反応が、所望の分析結果を特徴付ける検出可能な変化を生じる試薬システムを備えるテストエレメントを有する。テストエレメントは、試料塗布領域と2つの分析領域を有する。分析システムは、測定・評価ユニットを備える分析装置を有する。該ユニットは、1つの分析領域における変化に相当するアナログ測定信号がその各々において生成される(少なくとも)2つのアナログ測定ユニット、アナログ測定信号をデジタル化するための2つのデジタル・アナログ変換器、デジタル化測定信号に基づいて制御データ値を比較する比較器、および最終処理ユニットを有する。デジタル化測定信号の比較制御データ値間の測定偏差が予め規定された値より小さい場合、制御データ値の少なくとも1つが最終処理ユニットにおいて有効にされ、また、所望の分析結果を得るために、有効になった制御データ値がさらに処理される。
【0014】
本発明の用語の意味について説明すると、アナログ測定に相当する信号とは、測定信号の値が分析領域における変化についての測定値であると理解される。測定信号は、変化に比例していてもよいが、このことは厳格な数学的意味において理解されるべきものではなく、被分析物濃度と測定信号の間の典型的な非線形の関係も含むものとする。
【0015】
本発明においては、エラーの影響が、機械的レベルまたは測定技術レベル、並びに、たとえば所謂ビットフリップの形態で電子的レベルの両方において発生する可能性があるために、分析領域、アナログ測定ユニットおよびアナログ・デジタル変換器を重複して有する総合的な評価チャネルを設計することが、とりわけ重要であることが判った。先行技術において、分析システムのデジタル成分を、たとえばソフトウェアのアルゴリズムによるチェックを介してモニターする実施形態は公知であるが、デジタル・アナログ複合系または部分系をモニタリングすることは、大きい困難を伴う。この困難は、測定チャネルを重複構成することによって解決された。代替として、2つの評価チャネルだけではなく、重複した3つ以上の評価チャネルを設けることもできる。
【0016】
本発明によると、分析システムは、2つの互いに独立した測定が平行して行なわれるように、重複構成されている。2つの分析領域の各々には、アナログ測定ユニットとアナログ・デジタル変換器が設けられており、分析領域における変化に比例するおよび/または変化の測定値であるアナログ測定信号が、アナログ測定ユニットにおいて生成される。アナログ・デジタル変換器を有するデジタル・ユニットは、アナログ測定ユニットからの測定信号をデジタル化する。分析システムは、このように、互いに独立して動作する2つの評価チャネルを有し、評価チャネルは、アナログ測定ユニットだけでなく、アナログ・デジタル変換器として実施されたデジタル・ユニットも有する。両方の測定は、互いに完全に独立して実施され、同時並行の実施も可能である。分析システムは、きわめて確実で信頼性の高い結果を提示する。ユーザは並行測定に気付かないために、システムのユーザにとっての使い易さは非常に高い。1つの評価チャネルで発生した測定エラーは、直ちに認識される。この種の分析システムは、とりわけグルコースの測定に好適であるが、それは、非常に低い許容誤差、非常に高い品質管理および確実な分析結果が求められるからである。
【0017】
この目的に必要なことは、2つの異なる分析領域を用いることである。分析領域の用語は、面積だけでなく、分析容積および/または評価容積も含むと了解されるものとし、このことは、分析領域は、三次元であることを意味する。従って、2つの分析領域は、同一のサイズであっても、互いに空間的に対応させたときの容積は異なる。2つの分析領域の重複および/または両領域が共有する部分的容積または部分的量は、まったく可能なことである。2つの分析領域は同一である必要はないが、そうでない場合には、得られた測定結果の量が減少する。
【0018】
測定精度をさらに向上させ、不正確な測定を回避するために、本発明による分析システムは、分析領域の、たとえば湿潤性モニタリングまたはインピーダンス測定による内因性モニタリングのような別の測定と組み合わせることもできる。しかし、この種のエラーも、また、本発明による分析システムによって認識される。
【0019】
分析システムは、別の装置との一体化が可能であるという別の利点を有する。たとえば本発明による分析システムは、傷を身体の部位に形成し、この傷から血液および/または体液を受承してシステム内部に転送する穿刺・分析複合システムと一体化することができる。体液は、穿刺システムによってだけ、分析システムの、体液との反応で測定可能な変化が生じる分析領域に転送されるようになっていなければならない。
【0020】
本発明によると、各々がデジタル化測定信号に基づくデジタル制御データ値は、比較器で互いに比較される。これらの制御データ値は、分析領域において検出された変化に基づいて決まった測定信号であることを意味する。いずれの場合にも、制御データ値は、測定信号のデジタル化測定値から決められた(たとえば計算された)「処理中の値」または「途中の値」である。これらの途中の値は、生データでもある。この場合、それらは、デジタル化測定信号と同一である。従って、制御データ値は、アナログ測定信号のデジタル化と所望の分析結果の間の処理チェーンにおいて生成された値である。制御データ値は、被分析物の測定濃度値でもあることが好ましい。
【0021】
分析結果は、少なくとも1つの制御データ値をさらに処理して生成される値である。その値は、たとえばユーザに示されるまたは別の機器に伝送される。分析結果は、代替として、デジタル化測定信号から決められた2つの濃度値に基づいていてもよい。濃度値は、また、同様にデジタル化測定信号から生成される制御データ値に基づいていてもよい。
【0022】
制御データ値をさらに処理して所望の分析結果を得る前に、制御データ値の少なくとも1つが、最終処理ユニットによって有効にされていなければならない。これは、比較器で決められた制御データ値間の偏差が、閾値と呼ばれる予め規定された制限値より小さい場合に実行される。
【0023】
評価チャネルでの両方の測定は、2つの評価チャネルから等しい(または同一の)制御データ値が得られるまたはそれらの偏差が予め決められた制限値(許容値)より小さい場合にだけ、エラーを含んでいないと言える。評価チャネルの1つで、アナログ測定ユニットまたはデジタル・アナログ変換器でのエラー、または、たとえば分析領域の1つの不完全な湿潤によるエラーが発生すると、このエラーは、2つの制御データ値間の過度な偏差のために直ちに認識される。次いで、分析結果を得るための処理は、終了されるかまたは反復される。これにより、誤った結果が、確実に出力されないようになる。エラー信号が、別途生成・出力される。
【0024】
本発明による分析システムは、試薬システムの内部で生じた、色の変化のような変化の光学的検出、および電流および/または電圧の変化を検出する電気化学的評価に好適である。光学的測定は、ここでは、蛍光測定、発光測定または類似の測定を含む。拡散反射により生じた光信号の測定または透過原理に基づく測定は、一般的である。
【0025】
(光学的検出に基づく)光学的分析システムの簡単な実施形態は、測定・評価ユニットを有し、その中に一定の光信号が伝送されるとともに、そのアナログ測定ユニットにおいて受信した測定信号の変化が測定される。より複雑な実施形態においては、変調またはパルス光信号が生成される。アナログ測定ユニットは、たとえば、信号を「バックグラウンド」(ノイズ)から得るために、受信測定信号が時系列的に適宜割り当てられるように実施される。
【0026】
(変化を電気化学的に検出する機能を備える)電気化学的分析システムが用いられる場合、測定・評価ユニットの簡単な実施形態において、分極電圧が分析領域に印加され、化学反応により発生した電流が、アナログ測定ユニットで測定される。しかし、電流測定に加えてインピーダンスを測定することにより別の情報を入手するために、異なるAC電圧も時間的順序で印加することができる。別の情報を入手する操作については、たとえば米国特許出願公開第2006/0156796号明細書に記載されている。
【0027】
本発明の中で用いられる(短縮)用語「アナログ測定信号」は、従ってアナログ信号が生成され、また、測定される分析システムの一部に関する。従って、アナログ測定信号は、また、分析システムの実施形態に応じ、複素時系列曲線を含んでいてもよい。
【0028】
測定の種類(光学的測定または電気化化学的測定)とは別に、2つの分析チャネルは、同一のものであってよくまたは少なくとも一部が対称に形成されていてよい。光学的測定中は、単一の光送信器が、(2つの)分析領域に光を照射するために用いられることが好ましい。測定・評価ユニットは、2つの光受信器を有することが好ましい。受信器の各々は、光受信器が分析領域からの反射光を受光するように分析領域に割り当てられる。光受信器は、たとえば光電セル、光ダイオードまたは類似の受信器である。好ましい実施形態において、2つのアナログ測定ユニットの各々は、特定の光受信器によって受光した反射光に比例するアナログ測定信号を生成し、受光した光は、特定の分析領域からの反射光である。
【0029】
2つの測定チャネルがまったく同じように形成されている場合、分析装置は、2つの光送信器を有し、投光部の各々は、2つの分析領域の一方に光を照射する。2つの投光部は、1つの信号発生器によって作動されるまたはそれから供給されるようになっているほうが有利である。
【0030】
好ましい実施形態において、データ制御値は、所望の濃度値である。従って、2つの濃度値が、比較器に比較のために供給される。濃度値の偏差に対する許容限度として予め規定された値は、基準濃度値である。この好ましい実施形態において、所望の濃度値は、デジタル化測定信号から既に生成されており、それは、2つの濃度値の偏差が基準濃度値未満の場合、比較器と最終処理ユニットでさらに処理される。
【0031】
以下、図示した好ましい実施形態に基づき、本発明について詳細に説明する。そこに示した特殊な形態は、本発明の好ましい実施形態を提供するために、個別にまたは組み合わせて用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜4は、分析装置2とテストエレメント3を有する、本発明による分析システム1を示す。分析装置2は、測定・評価ユニット4と、好ましくは、測定・評価ユニット4によって決定された分析結果6またはエラー信号が出力される出力ユニット5を有する。
【0033】
出力ユニット5は、光信号としての分析結果6を、たとえばグルコース値のような数字としてまたは種々のシンボルの形態で表示することができる。また、結果を、音響により出力することも可能である。出力ユニット5は、分析結果6に加え、たとえば正しく実行された測定の結果が、明瞭なテキストとしてまたはエラー信号のときのようにトーン信号として出力可能であること、のような別の情報を提示することができる。また、追加情報を、ユーザのために表示することもできる。
【0034】
図1〜4に示した分析装置2は、任意で、たとえば途中の値または分析結果6のような測定結果が記憶されるメモリ7を有する。測定結果のヒストリーも、同様にして記憶される。メモリは、インタフェイスを介して、たとえば接続された装置つまりコンピュータによって読み取られる。分析結果6または別の情報は、出力ユニット5に表示することの代替としてまたはそれに追加して、インタフェイスを介して別の装置に伝送してさらに分析するまたはアーカイブに保管することもできる。
【0035】
テストエレメント3は、試料塗布領域8と2つの分析領域9a、9bを有する。試料塗布領域8は、テストエレメント3の上部に配置されていることが好ましく、分析領域9a、9bは、テストエレメントの底部に配置されている。好ましい実施形態において、テストエレメント3は、試料塗布領域8と2つの分析領域9a、9bの間に毛細流路を有する。試料塗布領域8に塗布された体液は、毛細流路を介して分析領域9a、9bに誘導される。毛細流路は、図1〜4には示されていない。
【0036】
試料塗布領域8、および分析領域9a、9bと毛細流路の両方は、テストエレメント3の試薬システムの一部であり、その内部で、被分析物内の体液の反応が起こったとき、被分析物を特徴付ける検出可能な変化が生じ、その変化は、分析領域9a、9bで検出される。図示したように、2つの分析領域9a、9bは互いに異なっているが、重複領域を設けることも可能である。従って、両方の分析領域9a、9bは、異なる分析容積を有しており、それは、異なる大きさの容積を有することを意味する。
【0037】
分析領域9a、9bで検出可能な、テストエレメント3の試薬システムの変化は、2つのアナログ測定ユニット10a、10bによって検出されるが、アナログ測定ユニット10a、10bの各々は、対応する特定の分析領域9aまたは9bの変化に比例するアナログ測定信号11aまたは11bを生成する。
【0038】
測定・評価ユニット4は、2つのアナログ・デジタル変換器12a、12b(A/Dコンバータ)を有し、その各々の入力端は、特定のアナログ測定ユニット10a、10bの出力端に接続されているとともに、その入力端には、アナログ測定信号11aまたは11bが入力される。
【0039】
図1に例示した実施形態において、測定・評価ユニット3は、処理チェーンとして直列に接続されている比較器13、評価ユニット14および最終処理ユニット15を有する。
【0040】
A/Dコンバータ12a、12bの入力端に入力されたアナログ信号11aまたは11bは、デジタル化されて、デジタル制御データ値17a、17bの形態のデジタル化測定信号16a、16bとしてA/Dコンバータ12a、12bから比較器13に伝送される。図1に示した実施形態において、制御データ値17a、17bは、デジタル化測定信号16a、16bと同一である。制御データ値17a、17bは、比較器13において互いに比較されて、評価ユニット14に伝送される。所望の濃度値18a、18bは、評価ユニット14の分析アルゴリズムを用いて制御データ値17a、17bから決定される。評価アルゴリズムは、制御データ値17a、17bと濃度値18a、18bの間の割当てを含む。この割当ては、たとえば評価ユニット14にテーブルの形で記憶される。
【0041】
評価ユニット13で決定された制御データ値17a、17b間の偏差が、予め規定された値(閾値)より小さい場合、制御データ値17a、17bおよび/または制御データ値17a、17bに基づいた濃度値18a、18bの少なくとも1つが、最終処理ユニット15において有効にされる(通過が許可される)。有効化制御データ値17a、17bまたは濃度値18a、18bは、最終処理ユニット15においてさらに処理されて分析結果6になり、それは、さらなる処理のために測定・評価ユニット4の出力端から出力される。
【0042】
両方の制御データ値17a、17bは、2つの制御データ値17a、17b間の偏差が予め規定された値より小さい場合、最終処理ユニット15によって通過を許可される(有効化されている)ことが好ましい。次いで、それらは、さらに処理されて、両方の制御データ値17a、17bの基づく所望の分析結果6に成ることが好ましい。分析結果6は、2つの制御データ値17a、17bの平均値から算出されることがとりわけ好ましい。最終処理ユニット15において、それら2つの値から算術平均または幾何平均を算出することが可能である。加重平均のような他の平均値を算出することも、可能である。分析結果6も、また、2つの濃度値18a、18bの平均値であることが好ましい。
【0043】
代替として、分析結果6は、最終処理ユニット15において2つの制御データ値17a、17bの低い方のまたは高い方の値から決定してもよい。ここでは制御データ値17a、17bに代えて、濃度値18a、18bを用いてもよい。
【0044】
制御データ値17a、17b間の決定された偏差が予め規定された値を超える場合、最終処理ユニット15において通過の許可が出されないことが好ましい。代わりに、エラー信号が、生成されて出力ユニット5に伝送される。
【0045】
図1に示した実施形態において、分析システム1は、重複構成された2つの評価チャネル19a、19bを有し、その各々は、分析領域9a、9b、アナログ測定ユニット10a、10bおよびA/Dコンバータ12a、12bを有する。
【0046】
図2に示した実施形態も、また、重複した2つの評価チャネル19a、19bを有する。これら評価チャネル19a、19bの各々は、分析領域9a、9bに加えて評価ユニット14a、14b、並びにアナログ測定ユニット10a、10bとA/Dコンバータ12a、12bを有する。このように、測定・評価ユニット4は、2つの評価ユニット14a、14bを有することが好ましい。制御データ値17a、17bが、評価ユニット14a、14bの各々において、評価アルゴリズムを用いてデジタル化測定信号16a、16bから生成される。評価アルゴリズムは、デジタル化測定信号16a、16bと制御データ値17a、17bの値の間の割当てを含む。
【0047】
制御データ値17a、17bは、濃度値18a、18bであることが好ましい。この好ましいケースにおいて、分析領域9a、9bにおいて検出した変化に対応する濃度値18a、18bが評価ユニット14a、14bに出力されるよう、評価アルゴリズムは、デジタル化測定信号16a、16bと濃度値18a、18bの値の間の割当てを含む。2つの濃度値18a、18bは、比較器13において互いに比較される。
【0048】
評価ユニット14、14a、14bの評価アルゴリズムの割当ては、較正によって決められることが好ましい。較正を行なっているとき、デジタル基準測定信号が、基準濃度値の各々について生成される。その後、それらの信号と値は、たとえばテーブルなどの形で、RAM、EPROM、EEPROMなどのようなメモリに記憶される。不揮発性メモリを用いることが好ましく、メモリは、たとえば評価ユニット14、14a、14bのようなデジタル部品の1つに組み込まれる。
【0049】
濃度値を較正により予め決定しておくことによって、一方では、デジタル化測定信号の濃度値への変換を非常に簡単かつ迅速に行うことができる。他方では、バッチ固有の割当てを装置に記憶させておくことが可能になり、これにより、テストエレメントの分析領域において検出した変化と濃度値の間の異なる割当てを、(試験片または類似の物体のような)用いたテストエレメントに応じて実施することができる。
【0050】
デジタル評価ユニット14a、14bが重複して設けられているために、特定の動作状況または環境の下で発生し、体系的に認識不可能な(散発的エラー、ビットフリップのような)エラーが、評価ユニット14a、14bにおいて認識される。本発明による分析システム1の信頼性は、この種のエラーを捕捉することによって、ここでも高まる。
【0051】
分析結果6は、最終処理ユニット15において濃度値18a、18bを互いに比較して決まるが、上述のように、その決定は、最終処理ユニット15によって通過を許可された濃度値18a、18bの両方または一方に基づいて行なわれる。
【0052】
図3は、2つの評価チャネル19a、19bが(重複した)評価ユニット14a、14bを有する、本発明による分析システム1の実施形態を示す。この好ましい実施形態において、測定・評価ユニット4は、分析領域9a、9b各々からの反射光を受光する2つの光受信器20a、20bを有する。光受信器20aは、分析領域9aからの反射光を受光し、光受信器20bは、分析領域9bからの反射光を受光する。光受信器20a、20bは、アナログ測定ユニット10a、10bに組み込まれている。分析装置2は、テストエレメント3の2つの分析領域9a、9bに光を照射するための光送信器21を有する。照射された光は分析領域9a、9bで反射されて、各々光受信器20aまたは20bを内蔵する2つのアナログ測定ユニット10a、10bによって受光される。アナログ測定ユニット10a、10bの各々は、対応する分析領域9a、9bからの反射光に比例するアナログ測定信号11a、11bを生成する。
【0053】
図3に示したように、光ファイバ22が、光送信器21と分析領域9a、9bの間に配置されており、それを用いて、分析領域9a、9bの少なくとも1つに光が照射されるようになっていることがとりわけ好ましい。両方の分析領域9a、9bは、光の反射が特定の分析領域9a、9bで生じるように、光が照射されることがとりわけ好ましい。光ファイバ23a、23bは、光受信器20a、20bと割り当てられた分析領域9a、9bの間に設けられていて、対応する分析領域9a、9bからの反射光を光受信器20a、20bに伝送するようになっていることが好ましい。
【0054】
次いで、光源信号により生成されたアナログ測定信号11a、11bは、図2の実施形態のように公知の方法で、分析結果6が決定されるまでさらに処理される。他の実施形態同様、この実施形態においては、制御データ値17a、17bおよび/または濃度値18a、18bの間の決定された偏差が予め規定された制限値未満の場合、制御データ値17a、17bおよび/または濃度値18a、18bだけが、通過を許可されることが好ましい。そうでない場合には、通過が阻止されるとともに、エラー信号が、生成されて出力ユニット5に出力される。
【0055】
光学的測定に基づく分析システム1の代替の実施形態においては、2つの光送信器が設けられていて、その各々が、分析領域9a、9bの1つに光を照射する。2つの評価チャネル19a、19bの各々は2つの光送信器の一方を有し、両チャネルは、まったく同じになるように構成されている。
【0056】
光学的測定に基づく分析システムは、分析領域9a、9bにおける変化を非常に迅速かつ簡単に測定できるという利点を有する。この無接触測定は、テストエレメント3と分析装置2を空間的に分離できるという利点を有する。とりわけ、ポリマーやガラス繊維などにより形成した光導波路などの光ファイバが用いられている場合、光学的測定は、とりわけ既存の穿刺・分析複合システムと一体化することによって、大量の種類の構成を実施することを可能にする。
【0057】
図4は、図2の本発明による分析システムの別の好ましい実施形態を示しており、その測定原理は、電気化学的測定に基づく。導電体24が、電圧源または電流源である電源25を2つの分析領域9a、9bに接続する。2つの導電体26a、26bが、導電体24、分析領域9a、9bおよび導電体26a、26b(戻りとして)を流れる電流をアナログ測定ユニット10aまたは10bにおいて測定できるよう、特定の分析領域9a、9bを関連付けられたアナログ測定ユニット10a、10bに接続する。勿論、測定・評価ユニット4は、先行技術におい周知の構成要素を有していてよいために、分極電圧に加えて、別のAC電圧を電源25において時間的順序で発生させることもできる。電流測定に加えてインピーダンスを測定し、それにより、液体試料についての別の情報を得ることもできる。
【0058】
代替として、2つの電源を設け、その各々を1つの導電体を用いて分析領域9a、9bの一方に接続することによって、2つの分離された回路を設けることもできる。
【0059】
図5は、同一形状に形成され、電子ユニット27に接続されている2つの評価チャネル19a、19bを有する分析装置2の好ましい実施形態を示す。電子ユニット27は、比較器13と最終処理ユニット15を有する。分析装置2は、光学的測定原理を利用しているために、アナログ測定ユニット10a、10bの各々は光受信器20a、20bを有する。
【0060】
テストエレメント3は、検査棒28として実施されている。試料塗布領域8は、テストエレメント3の小さい幅の側部の1つに配置されている。3つの光ファイバが、検査棒28の内部に平行に設けられており、中央の光ファイバ22が、分析装置2から試料塗布領域8の下方に配置された分析領域9a、9b(この図では見えない)に光を伝送する。2つの外側の光ファイバ23a、23bは、分析領域9a、9bでの反射光を、分析装置2の光受信器20a、20bに送り返す。
【0061】
テストエレメント3の検査棒28としての実施は、この種の検査棒の取扱いが非常に容易で、また、ユーザからも広く受け入れてもらえるという利点を有する。同時に、試料塗布領域8と測定・評価ユニット4の明確な分離も行なわれている。それにもかかわらず、試験棒28は、分析領域9a、9bと試料塗布領域8が非常に小さいサイズになるよう実施されるために、100nl以下という非常に少量の血液で動作する。液体の搬送流路は非常に短い。光を用いる光伝送であるために、実際の測定部を、試料塗布領域8から離れた装置2の位置に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による分析システムのブロック図である。
【図2】分析システムの別の実施形態のブロック図である。
【図3】光学的測定に基づく、図2の分析システムのブロック図である。
【図4】電気化学的測定に基づく、図2の分析システムのブロック図である。
【図5】分析装置と、棒の形態に実施されたテストエレメントの略回路図である。
【符号の説明】
【0063】
1 分析システム
2 分析装置
3 テストエレメント
4 測定および評価ユニット
5 出力ユニット
6 分析結果
7 メモリ
8 塗布領域
9a、9b 分析領域
10a、10b アナログ測定ユニット
11a、11b アナログ測定信号
12a、12b アナログ−デジタル変換器
13 比較ユニット
14 評価ユニット
15 最終処理ユニット
16a、16b デジタル化測定信号
17a、17b 制御データ値
18a、18b 濃度値
19a、19b 評価チャネル
20a、20b 光受信器
21 光送信器
22、23a、23b 光ファイバ
24、26a、26b 導電体
25 電源
27 電気ユニット
28 検査棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液の被分析物を測定するための分析システムにおいて、
被分析物との反応により所望の分析結果を特徴付ける検出可能な変化を生じる試薬システム、試料塗布領域(8)、および2つの分析領域(9a、9b)を備えるテストエレメント(3)と、
測定・評価ユニット(4)を備える分析装置(2)とを有し、
前記分析装置(2)は、
前記分析領域(9a、9b)の1つに対応するアナログ測定信号(11a、11b)を各々が生成する2つのアナログ測定ユニット(10a、10b)と、
前記アナログ測定信号(11a、11b)をデジタル化する2つのアナログ・デジタル変換器(12a、12b)と、
制御データ値(17a、17b)をデジタル化測定信号(16a、16b)に基づいて比較するための比較器(13)と、
前記デジタル化測定信号(16a、16b)の前記制御データ値(17a、17b)間の決定された偏差が予め規定された値より小さい場合、前記所望の分析結果(6)を得るために、前記制御データ値(17a、17b)の少なくとも1つがさらなる処理のために通過を許可される最終処理ユニット(15)とを有することを特徴とする分析システム。
【請求項2】
前記制御データ値(17a、17b)は濃度値(18a、18b)であり、前記予め規定された値は基準濃度値であることを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項3】
前記測定・評価ユニット(4)は、評価アルゴリズムを用いて前記制御データ値(17a、17b)から濃度値(18a、18b)が決定される評価ユニット(14)を有し、前記評価アルゴリズムは、前記制御データ値(17a、17b)と濃度値(18a、18b)の間の割当てを含み、さらに前記評価ユニット(14)は、前記比較器(13)と前記最終処理ユニット(15)との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の分析システム。
【請求項4】
前記測定・評価ユニット(4)は、前記デジタル化測定信号(16a、16b)と濃度値(18a、18b)の間の割当てを含む評価アルゴリズムを各々に用いて前記デジタル化測定信号(16a、16b)から濃度値(18a、18b)が決定される2つの評価ユニット(14a、14b)を有し、前記評価ユニット(14a、14b)は、前記比較器(13)の前の処理チェーンに配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の分析システム。
【請求項5】
前記評価アルゴリズムの割当ては、デジタル化基準測定信号が、基準濃度値の替わりに生成される較正によって実行されることを特徴とする請求項3または4記載の分析システム。
【請求項6】
前記分析装置(2)は、前記分析領域(9a、9b)に光を照射するための光送信器(21)を有し、
前記測定・評価ユニット(4)は、1つの分析領域(9a、9b)からの光を各々受光するための2つの光受信器(20a、20b)を有し、
さらに、前記2つのアナログ測定ユニット(10a、10b)の各々においてアナログ測定信号(11a、11b)が生成され、前記アナログ測定信号(11a、11b)は、前記分析領域(9a、9b)での反射光に比例することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記分析領域(9a、9b)の少なくとも1つに光が照射されるよう、前記光送信器(21)と分析領域(9a、9b)との間に光ファイバ(22)が配置されており、
また、前記分析領域(9a、9b)での反射光が前記光受信器(20a、20b)に伝送されるよう、各々の光受信器(20a、20b)と各々の分析領域(9a、9b)との間に光ファイバ(23a、23b)が配置されていることを特徴とする請求項6記載の分析システム。
【請求項8】
前記測定・評価ユニット(4)は、前記分析領域(9a、9b)の少なくとも1つに接続されている第1の導電体(24)と、分析領域(9a、9b)とアナログ測定ユニット(10a、10b)に接続されている第2の導電体(26a、26b)とを有し、前記第1の導電体(24)と、前記分析領域(9a、9b)の少なくとも1つと、前記第2の導電体(26a、26b)とを流れる電流が前記アナログ測定ユニット(10a、10b)の1つによって測定できるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項9】
前記試料塗布領域(8)と前記分析領域(9a、9b)との間に毛細流路を配置することによって、体液が前記分析領域(9a、9b)に搬送されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項10】
2つの分析領域(9a、9b)は、互いに異なる分析容量を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項11】
前記2つの制御データ値(17a、17b)間の偏差が予め規定された値より小さい場合、両制御データ値(17a、17b)が、前記最終処理ユニット(15)において有効にされるとともに、前記所望の分析結果(6)を得るために、両制御データ値(17a、17b)に基づきさらに処理が実行されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項12】
前記分析結果(6)は、前記2つの制御データ値(17a、17b)の平均値から決定されることを特徴とする請求項11記載の分析システム。
【請求項13】
前記分析結果(6)は、前記2つの制御データ値(17a、17b)の低い方の値または高い方の値から決定されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項14】
前記デジタル化測定信号(16a、16b)の前記制御データ値(17a、17b)間の決定された偏差が予め規定された値を超える場合、前記制御データ値(17a、17b)は通過が許可されず、エラー信号が生成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項15】
前記分析装置(2)は、前記分析結果(6)またはエラー信号が出力される出力ユニット(5)を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−75112(P2009−75112A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−241193(P2008−241193)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】