説明

体液分離フィルタ装置

【課題】 毛細血管現象及び吸着性と大きさの差により分離するフィルタにおいて、比重差を利用してより速やかか精度よく分離することを可能とする体液分離フィルタ装置を提供する。
【解決手段】 体液が付着されると、毛細管現象により吸引し、内部で血清もしくは血漿などの液状成分を、血球などの固形成分に対して比重差により分離することを可能とする体液分離ストリップを用いた体液分離フィルタ装置であって、体液分離フィルタストリップ6が保持されているフィルタホルダー3と、体液が滴下されかつ収納される収納凹部を有する体液採取プレート2とを備え、フィルタホルダー3に保持された体液分離フィルタストリップ6の端部6aを下端として、該端部を体液採取プレート2の収納凹部2dに収納されている体液に浸漬されることが可能とされている体液分離フィルタ装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液から血清もしくは血漿を分離する場合のように、体液から液状成分を分離するのに用いられる体液分離フィルタ装置に関し、より詳細には、濾紙などのストリップ状の体液分離フィルタストリップを用いた体液分離フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査等においては、血液を検体として検査する場合、血液から血清または血漿が分離されている。この血清または血漿を血液から分離するに際しては、血球成分と、血清または血漿との比重差を利用する方法が多用されている。すなわち、採取された血液が収容された管状容器を遠心分離装置にセットし、遠心分離により血清もしくは血漿を血球成分と分離する方法が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、遠心分離装置を必要とし、作業が比較的大がかりにならざるを得ない。
【0004】
そこで、近年、人の指等から採取した少量の血液を濾紙に染み込ませ、濾紙から血液を溶出し、測定する方法が試みられている。しかしながら、濾紙から溶出された全血を用いているため、血球成分の影響を受ける被測定物質の測定には用いることができなかった。
【0005】
他方、下記の特許文献1には、このような問題を解決するものとして、少量の血液から血清を分離し得る血清分離シートが開示されている。ここでは、グラスファイバーの繊維や合成分子の繊維からなる構造体を用いて構成されている濾紙状の血清分離シートが用いられている。また、下記の特許文献2,3にも同様の血清分離シートが開示されている。すなわち、濾紙などと同様に構成されており、血液が滴下されると、血清分離シートにおいて血液が展開し、血球と、血清もしくは血漿との吸着性及び大きさの差による移動速度差により、血清もしくは血漿を分離することが可能とされている。
【0006】
特許文献1〜3に記載の血清分離シートあるいは血清もしくは血漿分離シートを用いた場合、遠心分離装置を用いることなく、少量の血液から血清または血漿を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−221794号公報
【特許文献2】特開2004−144636号公報
【特許文献3】特開平10−132800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のような血清分離シートや血清または血漿分離シートを用いる場合、水平方向に延びるように配置されたシートの上方からシートの上面に血液が滴下されていた。他方、この種のシートは、相対的に表面層が緻密であり、内部の方が空隙が多い構造を有する。また、シート表面にはコーティング層が設けられていたり、異なる材料からなる表面層がラミネートされている。
【0008】
従って、シート上面に血液を滴下した場合、表面層もしくはコーティング層を血液が通過するのに時間を要しがちであった。すなわち、上記血清もしくは血漿分離シートでは、内部の空隙が多い部分において、血清もしくは血漿が効果的に分離されるが、上記のように表面層もしくはコーティング層を通過するのに比較的時間を要するため、血清もしくは血漿の分離を短時間で行うことは困難であった。
【0009】
また、滴下した地点からその周囲の全方向に血液が拡散もしくは凝集する。従って、少量の血液から血清もしくは血漿を分離するに際し、滴下地点の周囲の全方向に血清もしくは血漿が分散するため、拡散してきた血清もしくは血漿を効率良く利用することが困難であった。
【0010】
さらに、上記血清もしくは血漿分離シートに血液を滴下させる方法では、滴下させる血液の量が多過ぎると、シートにおける濾過容量を超え、血清もしくは血漿を確実に分離することができないことがあった。また、人の指先などから直接血液を滴下させた場合、その血液量は不明である。従って、採取すべき血清や血漿の量が著しく不足することがあった。従って、血清や血漿を十分な量を採取するには、滴下される血液量を事前にシリンジやピペットを用いて定量しておく必要があった。
【0011】
まず、従来、血液から血清もしくは血漿を分離するだけでなく、血液を含む様々な体液から液状成分を分離するのに同様の分離シートが用いられていたが、同様の問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、体液中の液状成分を分離するのに用いられる体液分離フィルタスリップを用いた体液分離フィルタ装置であって、体液から液状成分を比較的短時間で簡便にかつ効率良く分離することができ、しかも供給する体液量を予め定量することなく、十分な量の液状成分を確実に採取することを可能とする体液分離フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、体液が付着されると、体液を吸引し、内部で体液中の液状成分を拡散させる体液分離フィルタストリップを用いた体液分離フィルタ装置であって、前記体液分離フィルタストリップが保持されているフィルタホルダーと、検査対象である体液が滴下されかつ収納されるように上方に開いた体液収納凹部を有する体液採取プレートとを備え、前記フィルタホルダーに保持された体液分離フィルタストリップの一端を下端として、該一端を前記体液採取プレートの体液収納凹部内に収納されている体液に浸漬することが可能とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る体液分離フィルタ装置のある特定の局面では、前記体液分離フィルタストリップの一端を前記体液収納凹部内の体液に接触し得る状態となるように、前記フィルタホルダーを前記体液採取プレートに連結している連結構造がさらに備えられている。
【0015】
本発明に係る体液分離フィルタ装置の他の特定の局面では、前記連結構造が、前記フィルタホルダーの一端もしくはその近傍を中心として、前記フィルタホルダーが前記体液採取プレートに対して回転可能に連結されている構造を有し、前記フィルタホルダーに保持された前記体液分離フィルタストリップの前記一端が前記体液収納凹部内の体液に接触され得るように、前記フィルタホルダーが立設され得る。
【0016】
本発明に係る体液分離フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記連結構造が、前記体液採取プレートの上面に設けられた少なくとも1つの連結穴もしくは連結突起と、前記フィルタホルダーに設けられており、前記連結穴もしくは連結突起に嵌合される連結突起もしくは連結穴である。
【0017】
本発明に係る体液分離フィルタ装置のさらに別の特定の局面では、前記体液採取プレートの側面に、前記フィルタホルダーに設けられた前記連結突起もしくは連結穴に嵌合する収納用連結穴もしくは連結突起が形成されている。
【0018】
本発明に係る体液分離フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記フィルタホルダーと、前記体液採取プレートとが別部材として用意されており、かつ前記フィルタホルダー及び体液採取プレートを収納するケース部材がさらに備えられている。
【0019】
本発明に係る体液分離装置のさらに限定的なある局面では、体液として血液が用いられ、従って、血液から液状成分としての血清もしくは血漿を分離する血液分離フィルタ装置が構成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る体液分離フィルタ装置では、体液が付着されると、体液中の液状成分を吸引する体液分離フィルタストリップがフィルタホルダーに保持されており、体液採取プレートには、検査対象である体液が滴下されかつ収納される上方に開いた体液収納凹部が設けられている。そして、上記フィルタホルダーに保持された体液分離フィルタストリップの一端が下端として、体液採取プレートの体液収納凹部内に収納されている体液に浸漬され得る。
【0021】
従って、上記体液採取プレートの体液収納凹部内に収納された体液に、上記体液分離フィルタストリップの一端が下端として浸漬されるため、該体液分離フィルタストリップの一端から体液中の液状成分が速やかに吸引される。通常、この種の体液分離フィルタストリップは、表面が相対的に均一であり、内部が相対的に空隙の多い空洞を有する。また、この種の体液分離フィルタストリップの製造に際しては、長尺状の体液分離フィルタストリップ材料を用意した後、切断することにより、個々の体液分離フィルタストリップが得られている。従って、該体液分離フィルタストリップの一端では、端面において表面層だけでなく、内部の相対的に空隙の多い構造部分が露出されているため、液状成分が効率良くかつ速やかに吸引されている。
【0022】
しかも、従来の血清分離シートでは、上方から体液がシートに滴下され、滴下地点の周囲の全方向に体液が拡散するため、液状成分を効率良く利用することができなかった。これに対して、本発明の体液分離フィルタ装置では、体液分離フィルタストリップの一端から液状成分が他端側に向って吸引され、移動していく。従って、比較的少量の体液を用意した場合であっても、液状成分を効率良く採取することができる。よって、少量の体液を用意した場合であっても、採取すべき液状成分の量が不足し難い。
【0023】
また、従来の血清分離シートでは濾過容量を超える体液が滴下された場合には、液状成分を確実に分離することができなかった。これに対して、本発明の体液分離フィルタ装置では、体液分離フィルタストリップの一端側から体液が吸引され、内部で液状成分が拡散していくため、目視により拡散の状態を把握しつつ液状成分を採取することができる。従って、体液採取プレートの体液収納凹部に採取されている体液量の多少にかかわらず、確実に液状成分を採取することができる。よって、予めシリンジやピペットを用いて、提供される体液量を定量する作業を省略することができる。
【0024】
体液分離フィルタストリップの一端が、体液収納凹部内の体液に接触し得る状態となるように、フィルタホルダーが体液収納プレートに連結している連結構造がさらに備えられている場合には、フィルタホルダーが体液収納プレートに連結され、一体化されている体液分離フィルタ装置を提供することができる。従って、携帯が容易であり、かつ部品の紛失が生じ難い体液分離フィルタ装置を提供するとことができる。
【0025】
上記連結構造が、フィルタホルダーの一端もしくはその近傍を中心としてフィルタホルダーが体液採取プレートに対して回転可能に連結されている構造を有し、フィルタホルダーに保持された体液分離フィルタストリップの一端が、体液収納凹部内の体液に接触され
るようにフィルタホルダーが立設される場合には、一体化されている体液分離フィルタ装置において、フィルタホルダーを体液採取プレートに対して立設させるように回転させ、その状態でフィルタホルダーに保持されている体液分離フィルタストリップの一端を収納凹部内の体液に接触させればよい。従って、一体型の体液分離フィルタ装置において、簡便な操作で、体液分離フィルタストリップの一端を体液収納凹部内の体液に確実にかつ速やかに接触させることができる。
【0026】
連結構造は、体液採取プレートの上面に設けられた少なくとも1つの連結穴もしくは連結突起と、フィルタホルダーに設けられており、上記連結穴もしくは連結突起に勘合される連結突起もしくは連結穴である場合には、フィルタホルダーの上記連結突起もしくは連結穴を、体液採取プレートの上面の連結穴もしくは連結突起に勘合することにより、フィルタホルダーを体液採取プレートに連結することができ、しかもその状態において、フィルタホルダーに保持されている体液分離フィルタストリップの一端を下端とし、該下端を体液採取プレートの体液収納凹部内の体液に確実に接触させることができる。
【0027】
体液採取プレートの側面に、フィルタホルダーに設けられた上記連結突起もしくは連結穴に勘合する収納用連結穴もしくは収納用連結突起が形成されている場合には、初期状態では、該収納用連結穴もしくは連結用突起に、フィルタホルダーの連結突起もしくは連結穴を勘合させることにより、体液収納プレートをフィルタホルダーと一体化することができる。そして、使用に際しては、上記勘合状態を解き、フィルタホルダーの連結突起もしくは連結穴を、収納プレートの上面に設けられた前述の連結穴もしくは連結突起に勘合させればよい。従って、保管及び携帯に適した構造の体液分離フィルタ装置を提供することができる。
【0028】
上記フィルタホルダーと、上記体液採取プレートとが別部材として用意されており、かつ上記フィルタホルダー及び体液採取プレートを収納するケース部材とをさらに備える場合には、本発明の体液分離フィルタ装置を、上記ケース部材にフィルタホルダー及び体液収納プレートが収納され、従って保管を容易とすることができるとともに、フィルタホルダーや体液収納プレートの紛失のおそれを少なくすることが可能となる。
【0029】
また、本発明において、体液として、血液が採取され、血液から血清もしくは血漿を毛液状成分として分離する用途に用いた場合には、本発明に従って血液分離フィルタ装置が提供される。よって、速やかかつ簡便に少量の血液から血清もしくは血漿を分離することが可能となる。
【0030】
また、本発明に係る体液分離フィルタ装置では、上記体液分離フィルタストリップにおいて、体液中の成分を比重差を利用して拡散により展開することができるため、該体液分離フィルタストリップは、クロマトグラフストリップであってもよく、その場合には、本発明に従って、体液中の成分をクロマトグラフィー法により検出することが可能となる。そして、上記クロマトグラフィー法により体液中の成分を検出する場合、イムノクロマトグラフィー法により検出を可能とするために、抗原もしくは抗体を体液分離フィルタストリップに固定化しておいてもよい。その場合には、イムノクロマトグラフィー法により体液中の物質を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0032】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る血液分離フィルタ装置の斜視図及び血液を排出する工程を示す斜視図である。
【0033】
本実施形態の血液分離フィルタ装置は、体液としての血液を検体とする血液分離フィルタ装置1である。血液分離フィルタ装置1は、血液採取プレート2と、フィルタホルダー3とを有する。血液採取プレート2は、合成樹脂または金属などの保形性を有する材料で構成されている。本実施形態では、血液採取プレート2は、合成樹脂により構成されている。
【0034】
血液採取プレート2は、本実施形態では、細長い板状部材により構成されている。血液採取プレートの一端2aの外周縁は平面視した場合に、略半円形の外周縁を有する。一端2a近傍部分は相対的に厚みが厚くされている。この厚肉部において、上面に血液収納凹部2bが形成されている。また、厚肉部は、段差2cを介して薄肉部2dに連ねられている。薄肉部2dは、血液採取プレート2の一端2aとは反対側の端部2eに至るように設けられている。
【0035】
上記薄肉部2dは、その平面形状が矩形とされている。
【0036】
血液収納凹部2bは、図1(b)に示すように、血液を採取し、収納する部分を構成している。従って、血液収納凹部2bの容量は、採取される血液量よりも十分な大きさとされている。もっとも、本実施形態では、後述するように、少量の血液を用いて血清もしくは血漿を採取することができるので、血液収納凹部2bはさほど大きな容量を有するように構成する必要はない。
【0037】
他方、なお、本実施形態では、上記血液収納凹部2bが設けられている部分の外周縁が平面視した場合略半円状の形状を有するように構成されていたが、本発明において、血液採取プレートの平面形状は特に図示の形状に限定されるものではない。
【0038】
また、段差2cを介して薄肉部2dが厚肉部に連ねられていたが、このような段差2cが設けられずともよい。
【0039】
他方、フィルタホルダー3は、略矩形板状の形状のホルダープレート4を有する。もっとも、ホルダープレート4の形状についても特に限定されるものではない。ホルダープレート4は、合成樹脂または金属などの保形性を有する材料で構成され得る。本実施形態では、ホルダープレート4は、合成樹脂により構成されている。
【0040】
ホルダープレート4の一端側には、幅方向両側に連結片4a,4bが設けられている。連結片4a,4b間の距離は、血液採取プレート2の幅方向寸法と同等もしくは該幅方向寸法よりも大きくされている。そして、連結片4a,4bが、ピン5により、血液採取プレート2の厚肉部の側面に回動自在に連結されている。なお、ピン5に代えて、ボルトや血液採取プレート2に一体に設けられた凸部を採用してもよい。
【0041】
従って、フィルタホルダー3は、上記ピン5を中心として、回動自在とされているため、図1(a)及び図3に示されているように、血液採取プレート2を水平方向に載置した場合に、フィルタホルダー3をホルダープレート4の主面上下方向に延びるように位置させることが可能とされている。すなわち、フィルタホルダー3が、図1(a)に示すように、立設された位置に配置され得るように、フィルタホルダー3が血液採取プレート2に対して回転自在に連結されている。
【0042】
ホルダープレート4内には、血液分離フィルタストリップ6が収納されている。図2(a)及び(b)は、図1(a)中のA−A線及びB−B線に沿う断面図である。フィルタホルダー3には、横断面が矩形の中空部4dが形成されている。中空部4dは、ホルダー
プレート4の長さ方向に延び、端部4cに開口している。この端部4c側の開口から、フィルタ押動操作部材7が挿入されている。そして、フィルタ押動操作部材7の内側端よりも内側に、血液分離フィルタストリップ6が配置されている。
【0043】
上記フィルタ押動操作部材7は合成樹脂または金属からなる。フィルタ押動操作部材7の挿入深度を深くするように操作することによりフィルタ押動操作部材7の内側端により血液分離フィルタストリップ6が移動され、血液分離フィルタストリップ6のフィルタ押動操作部材7とは反対側の端部6aがホルダープレート4の端部から突出されるように構成されている。そして、突出された血液分離フィルタストリップ6の端部6aが、後述するように血液収納凹部2b内の血液に浸漬され得るように構成されている。
【0044】
上記血液分離フィルタストリップ6の端部6aが血液に接触した際に、血液が毛細管現象で吸収され、血液分離フィルタストリップ6内を血液が拡散する。その際に、血球やフィブリノーゲンあるいはフィブリンなどが捕捉され、血漿または血清がより長い距離を拡散し、血清もしくは血漿を採取することができるように構成されている。このような作用を果たす限り、血液分離フィルタストリップ6は、様々な公知の濾紙状の血液分離フィルタ材料により構成することができる。このような血液分離フィルタストリップ6の例としては、ポール社製、商品名:ヘマセップL,商品名:グラスファイバーフィルタータイプA/D、Whatman社製、商品名:Fusion5,商品名:CF3、アドバンテック社製、商品名:GF−75などを挙げることができる。
【0045】
上記のように、付着した血液を毛細管現象により拡散させ、血球成分などと、血清もしくは血漿などの比重差により血漿もしくは血清を捕獲する血液分離フィルタストリップ6では、通常紙面の表面にコーティング層が設けられていたり、表面層が内部に比べて緻密に構成されている。しかしながら、端部6aは、製造に際し切断されて露出されている。従って、端部6aにおいては、内部の血液が拡散しやすい、相対的に緻密ではない部分が露出している。よって、血液分離フィルタストリップ6の端部6aが血液に接触されると、血液は速やかに毛細管現象により吸収され、かつ血清もしくは血漿が速やかに拡散され得る。
【0046】
なお、上記フィルタ押動操作部材7は、その内側端が血液分離フィルタストリップ6を押し動かすように操作されるが、血液分離フィルタ押動操作部材7は、血液分離フィルタストリップ6と接着もしくは機械的な接合構造等により固定されていてもよい。
【0047】
なお、ホルダープレート4の厚みは、前述した血液採取プレート2の厚肉部と薄肉部2dとの厚みの差に相当する厚みとされている。
【0048】
従って、フィルタホルダー3を図1(a)に示す状態から回動させ、ホルダープレート4を薄肉部2dに重ねた状態では、ホルダープレート4の上面と厚肉部の上面が面一とされる(図1(b)参照)。従って、外観性に優れ、かつ携帯が簡便な血液分離フィルタ装置1を提供することが可能とされている。
【0049】
次に、本実施形態の血液分離フィルタ装置1の使用方法の一例を説明する。
【0050】
初期状態では、図1(b)に示すように、血液分離フィルタ装置1において、フィルタホルダー3が血液採取プレート2上に重ねられている。この状態において、血液採取プレート2の血液収納凹部2bは露出している。従って、人の指から採血し、血液Xを血液収納凹部2bに滴下する。それによって、血液収納凹部2bに血液が収納される。この場合、収納される血液量は予め定量する必要はない。また、上記血液分離フィルタストリップ6を用いるため、収納すべき血液量は少量でよく、0.1μL〜400μL程度で十分で
ある。
【0051】
次に、図1(a)及び図3に示すように、血液分離フィルタ装置1において、フィルタホルダー3をピン5を中心として回転させて立設する。この状態においては、ホルダープレート4の下方に血液収納凹部2bが位置することになる。従って、フィルタ押動操作部材7を指で下方に押し動かし、血液分離フィルタストリップ6を移動させる。その結果、図4に示すように、血液分離フィルタストリップ6の端部6aが下方に移動し、血液収納凹部2b内の血液Xに浸漬される。この場合、血液分離フィルタストリップ6がその長さ方向が鉛直方向に延びるように配置されている。従って、血液に対しては重力が作用する。従って、毛細管現象により血液が血液分離フィルタストリップ6に吸引され、上昇するに際し重力が作用する。
【0052】
よって、血液分離ストリップを水平方向に寝かせた状態で用いた場合に比べて、重力の作用により、血球、フィブリンあるいはフィブリノーゲンは比重が軽い血清もしくは血漿に比べて上方に移動し難い。従って、毛細血管現象と、吸着性や大きさの差とにより分離が行われるフィルタにおいて、比重差を利用してより速やかにかつ高精度に分離が行われ得る。すなわち、比重の小さい血清もしくは血漿は速やかに上方に拡散し、比重の大きい血球、フィブリンまたはフィブリノーゲンは血清もしくは血漿は上方に移動し難い。よって、血清もしくは血漿などから高精度にかつ確実に分離することができる。
【0053】
しかも、前述したように、血液分離フィルタストリップ6の端部6aは、通常切断により露出されている面であるため、血液が速やかに毛細管現象により血液が吸収される。
【0054】
よって、本実施形態の血液分離フィルタ装置1によれば、上記のように血液分離フィルタストリップ6が鉛直方向に延びるように配置された状態で、端部6aから血液が吸収されるため、血清もしくは血漿を血球などに対し、速やかにかつ高精度に分離することができる。
【0055】
なお、この分離に必要な血液と血液分離フィルタストリップ6とを接触させる時間は、0.1μL〜400μL程度とすればよい。
【0056】
もっとも、上記のようにして血液から血清もしくは血漿を分離した後には、図5に示すように、再度フィルタホルダー3をピン5を中心として回転し、ホルダープレート4を血液採取プレート2に重ねればよい。従って、分離後に、血液分離フィルタ装置全体の寸法を小さくすることができ、かつ保管も容易に行い得る。
【0057】
図6及び図7は、本発明の第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置を示す各斜視図である。
【0058】
第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置11は、第1の実施形態のフィルタホルダー3と類似の構造のフィルタホルダー12を有する。フィルタホルダー12は、合成樹脂あるいは金属などの保形性を有する材料からなり、全体が略矩形板状の形状を有する。このフィルタホルダー12には、長さ方向に延びる中空部12aが形成されており、該中空部12a内に、血液分離フィルタストリップ6が収納されている。また、血液分離フィルタストリップ6をその長さ方向に移動させ得るようにフィルタ押動操作部材7が中空部12aに挿入されている。
【0059】
血液分離フィルタストリップ6及びフィルタ押動操作部材7及び中空部12aを有する構造は、第1の実施形態のフィルタホルダー3における中空部4d、血液分離フィルタ装ストリップ6及びフィルタ押動操作部材7と同様である。
【0060】
フィルタホルダー12がフィルタホルダー3と異なるところは、連結片4a,4bに代えて、連結突起12b,12cが設けられていることにある。連結突起12b,12cは、フィルタホルダー12の一端側において、外側に突出するように形成されており、より具体的には、フィルタホルダー12を立設させた状態で、下端から下方に延びるように形成されている。
【0061】
なお、連結突出12b,12cは、フィルタホルダー12のフィルタ押動操作部材7が挿入される側とは反対側の端部に設けられておればよいが、好ましくは、図6に示されているように、切欠12dが設けられている。切欠12dは、連結突起12b,12cが設けられている部分よりも内側の端面部12eを形成するために設けられている。端面部12eには、上記中空部12aが開口している。そして、図7に示すように、フィルタホルダー12を立設させた状態で、下方に移動された血液分離フィルタストリップ6の一部が上記切欠12dから目視により確認し得るように端面部12eがトナーにおいて、連結突起12b,12cが設けられている部分よりも上方に位置されている。
【0062】
他方、本実施形態では、血液採取プレート13は、第1の実施形態の血液採取プレート2の厚肉部と同様の構造を有する。そして、血液採取プレート13は、上面に、連結穴13a,13bを有する。連結穴13a,13bは、連結突起12b,12cが勘合し得るように構成されている。この連結穴13a,13b間の領域に、血液収納凹部13cが形成されている。
【0063】
上記血液採取プレート13についても、金属または合成樹脂などの保形性を有する材料により構成され得る。
【0064】
なお、図6では、明確ではないが、血液採取プレート13の側面13dには、連結突起12b,12cが勘合する一対の連結穴が形成されている。従って、使用前には、連結突起12b,12cを側面13dに形成された一対の連結穴に挿入することにより、血液採取プレート13と、フィルタホルダー12とが一体化された状態で用意される。すなわち、図9に斜視図で示すように、例えば上方に開いたケース21と、蓋22とを有するパッケージ内に、本実施形態の血液分離装置11を収納することができる。この場合、上記のように、血液採取プレート13と、フィルタホルダー12とを一体化した構造とすることにより、ケース21内に無理なく収納することができる。
【0065】
使用に際しては、図6に示すように、フィルタホルダー12の連結突起12b,12cを、血液採取プレート13の側面13dから分離する。そして、第1の実施形態の場合と同様に、血液採取プレート13の血液収納凹部13cに血液を採取する。
【0066】
しかる後、図7に示すように、フィルタホルダー12を立設させ、連結突起12b,12cを連結穴13a,13bに勘合させ、フィルタホルダー4を立設した状態で固定する。この状態においては、血液分離フィルタストリップ6は、鉛直方向にその長さ方向が延びることになる。そして、図7の矢印で示すように、フィルタ押動操作部材7を押し動かすことにより、血液分離フィルタストリップ6の端部6aが血液に浸漬される。従って、第1の実施形態の場合と同様に、血液が毛細管現象により血液分離フィルタストリップ6に速やかに吸引され、第1の実施形態の場合と同様に、比重差を利用して血清もしくは血漿が速やかにかつ確実に血球等に対して分離され得る。
【0067】
なお、図9に示したケース21及び蓋22に代えて、図8に斜視図で示すケース23及び蓋24を用いてもよい。すなわち、一端に開口を有し、該開口23aから血液分離フィルタ装置11を挿入し、開口23を閉成するように、開口23a近傍において、ケース2
3に外挿される蓋24をケース23に外挿・固定してもよい。
【0068】
第2の実施形態では、保管に際して、フィルタホルダー12と血液採取プレート13とを一体化するために、血液採取プレート13の側面13dに第2の連結穴を設けたが、この連結穴は必ずしも必要ではない。もっとも、該第2の連結穴を設けることにより、保管に際して、フィルタホルダー12と血液採取プレート13とを一体化することができる。また、携帯や保管も容易となるため、第2の連結穴を設けることが望ましい。
【0069】
また、第2の実施形態では、血液採取プレート13に連結穴を設け、フィルタホルダー12側に連結突起12b,12cを設けたが、逆に、連結突起を血液採取プレート13側に設け、該連結突起に勘合する連結穴をフィルタホルダー12側に設けてもよい。
【0070】
図10及び図11は、本発明の第3の発明に係る血液分離フィルタ装置を示す各斜視図である。
【0071】
血液分離フィルタ装置31は、フィルタホルダー32と、血液採取プレート33とを有する。ここでは、フィルタホルダー32は、細長い矩形板状の形状を有する。フィルタホルダー32は、金属もしくは合成樹脂などの保形性を有する材料からなる。
【0072】
フィルタホルダー32は、長さ方向に延びる凹部32aが一方主面側に設けられている。凹部32a内には、内側壁から中央に向って延びる保持突起32b,32bが形成されている。凹部32aの底面と保持突起32bの凹部32aの底面と対向する面との間には、わずかな隙間が設けられており、該隙間に血液分離フィルタストリップ6が配置されている。すなわち、血液分離フィルタストリップ6は、凹部32a内に収納されており、かつ保持突起32bによりその位置が規制されている。もっとも、保持突起32bは、血液分離フィルタストリップ6の主面と直交な方向、すなわち凹部32aの開口部から外側に脱落する方向への移動を規制しているが、血液分離フィルタストリップ6は、その長さ方向には移動可能とされている。
【0073】
他方、血液採取プレート33は、板状の部材からなる。該血液採取プレート33は、金属もしくは合成樹脂などの保形性を有する材料からなる。血液採取プレート33の上面には、血液収納凹部33aが形成されている。
【0074】
本実施形態では、上記のように、血液分離フィルタストリップ6は、細長い矩形板状のフィルタホルダー32に収納された状態で収納される。使用に際しては、血液採取プレート33の血液収納凹部33a上に血液を採取する。血液の採取は第1の実施形態の血液分離フィルタ装置1の場合と同様にして行われる。
【0075】
次に、細長い矩形板状のフィルタホルダー32に保持されている血液分離フィルタストリップ6を、図2に示すように血液採取プレート33の上方に移動させる。しかる後、血液分離フィルタストリップ6を、フィルタホルダー32の長さ方向に対して、図示の矢印で示すように移動させる。この移動の結果、血液分離フィルタストリップ6の端部6aが下方に突出し、血液収納凹部33a内に浸漬される。従って、第1,第2の実施形態の場合と同様に、比重差により、吸引された血液中の血球成分等に対し、血清もしくは血漿が速やかにかつ確実に分離することができる。
【0076】
なお、血液分離フィルタストリップ6は、図10に示すように、フィルタホルダー32を鉛直方向に配置した段階で、重力により端部6aが下方に移動するように、保持突起32bにより保持されていてもよく、あるいは治具を用いて血液分離フィルタストリップ6を下方に移動する構造としてもよい。いずれにしても、血液を吸引する際には、血液分離
フィルタストリップ6の長さ方向が鉛直方向に延びるため、第1,第2の実施形態の場合と同様に比重差を利用して血清または血漿を確実にかつ速やかに分離することがでる。
【0077】
なお、第3の実施形態の血液分離フィルタ装置31は、例えば、図11に示すケース34に収納することができる。ケース34では、上方に開いた開口34aを有するケース本体34bに、回転可能に蓋34cが連結されている。そして、開口34a内には、リブ34dが複数設けられている。リブ34dは、血液分離フィルタストリップ6が保持されているフィルタホルダー32が内部で移動しないように保持するために設けられている。また、図11では示されていないが、血液採取プレート33は、ケース34のケース本体34aにおいて、上記フィルタホルダー32が配置されている部分上に重ねて配置され得るようにリブ34dを構成してもよい。
【0078】
なお、上述した各実施形態では、体液として血液を用いる血液分離フィルタ装置を示したが、本発明は、血液以外の体液から液状成分を分離する用途に用いられてもよい。また、液状成分の分離に際し、体液分離フィルタストリップ上において液状成分及び体液中に含まれている他の成分を展開し、クロマトグラフ法により体液中の成分を検出する用途にも用いることができる。すなわち、本発明における体液分離フィルタ装置における分離とは、クロマトグラフ法により成分を展開し、分離し、検出する用途をも含めた用語として用いている。従って、上記血液分離フィルタストリップ6に代えて、クロマトグラフ紙やイムノクロマトグラフストリップを用いてもよく、このようなクロマトグラフ紙やクロマトグラフストリップもまた、本発明における体液分離フィルタストリップに含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る血液分離フィルタ装置の斜視図及び血液を採取する工程を示す斜視図。
【図2】(a)及び(b)は、図1(a)のA−A線及びB−B線に沿う断面図。
【図3】図1(a)に示した血液分離フィルタ装置の側面図。
【図4】第1の実施形態の血液分離装置を用いて血清または血漿を分離する工程を示すための斜視図。
【図5】第1の実施形態の血液分離フィルタ装置において、分離後にフィルタホルダーを血液採取プレートに重ねるように移動させた状態を示す斜視図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置の分解斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置により血清または血漿を分離する工程を説明するための斜視図。
【図8】第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置を収納する構造の一例を示す分解斜視図。
【図9】第2の実施形態に係る血液分離フィルタ装置を収納する構造の他の例を示す分解斜視図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る血液分離フィルタ装置を示す分解斜視図。
【図11】第3の実施形態の血液分離フィルタ装置を収納する構造の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0080】
1…血液分離フィルタ装置
2…血液採取プレート
2a…端部
2d…血液収納凹部
2e…段差部
2f…薄肉部
2g…端部
3…フィルタホルダー
4…ホルダープレート
4a…連結片
4b…連結片
4c…端部
4d…中空部
5…ピン
6…血液分離フィルタストリップ
7…フィルタ押動操作部材
11…血液分離フィルタ装置
12…フィルタホルダー
12a…中空部
12b,12c…連結突起
12d…切欠
12e…端面
13…血液採取プレート
13a,13b…連結穴
13c…血液収納凹部
13d…側面
21…ケース
22…蓋
23…ケース
24…蓋
31…血液分離フィルタ装置
32…フィルタホルダー
32a…凹部
32b…保持突起
33…血液採取プレート
33a…血液収納凹部
34…ケース
34a…ケース本体
34b…開口
34c…蓋
34d…リブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液が付着されると、体液を吸引し、内部で体液中の液状成分を拡散させる体液分離フィルタストリップを用いた体液分離フィルタ装置であって、
前記体液分離フィルタストリップが保持されているフィルタホルダーと、
検査対象である体液が滴下されかつ収納されるように上方に開いた体液収納凹部を有する体液採取プレートとを備え、前記フィルタホルダーに保持された体液分離フィルタストリップの一端を下端として、該一端を前記体液採取プレートの体液収納凹部内に収納されている体液に浸漬することが可能とされている、体液分離フィルタ装置。
【請求項2】
前記体液分離フィルタストリップの一端を前記体液収納凹部内の体液に接触し得る状態となるように、前記フィルタホルダーを前記体液採取プレートに連結している連結構造をさらに備える、請求項1に記載の体液分離フィルタ装置。
【請求項3】
前記連結構造が、前記フィルタホルダーの一端もしくはその近傍を中心として、前記フィルタホルダーが前記体液採取プレートに対して回転可能に連結されている構造を有し、前記フィルタホルダーに保持された前記体液分離フィルタストリップの前記一端が前記体液収納凹部内の体液に接触され得るように、前記フィルタホルダーが立設され得る、請求項1に記載の体液分離フィルタ装置。
【請求項4】
前記連結構造が、前記体液採取プレートの上面に設けられた少なくとも1つの連結穴もしくは連結突起と、前記フィルタホルダーに設けられており、前記連結穴もしくは連結突起に嵌合される連結突起もしくは連結穴である、請求項2に記載の体液分離フィルタ装置。
【請求項5】
前記体液採取プレートの側面に、前記フィルタホルダーに設けられた前記連結突起もしくは連結穴に嵌合する収納用連結穴もしくは連結突起が形成されている、請求項2に記載の体液分離フィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタホルダーと、前記体液採取プレートとが別部材として用意されており、かつ前記フィルタホルダー及び体液採取プレートを収納するケース部材をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の体液分離フィルタ装置。
【請求項7】
前記体液として血液が付着され、血清もしくは血漿が分離される血液分離フィルタ装置である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の体液分離フィルタ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−170726(P2006−170726A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361925(P2004−361925)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】