説明

体液吸引装置

【課題】比較的少ない吸引流量から比較的多い吸引流量までの広い範囲にわたって体液を吸引できるようにした体液吸引装置の安全性を向上させること。
【解決手段】本発明では、吸引ポンプ(2)に接続した吸引チューブ(3)で体液を吸引する体液吸引装置(1)において、吸引流量を設定するための吸引流量設定手段(7)と、吸引流量設定手段(7)で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプ(2)を制御するための制御手段(6)とを有し、制御手段(6)は、吸引流量設定手段(7)で設定された吸引流量が所定値以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ(2)を連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段(7)で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ(2)を連続運転不可能とするように制御することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引ポンプに接続した吸引チューブで痰や唾液などの体液を吸引するために医療用途で用いられる体液吸引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者の痰や唾液などの体液を吸引除去するために、吸引ポンプに接続した吸引チューブで体液を吸引するように構成した体液吸引装置が医療用途で広く利用されている。
【0003】
従来の体液吸引装置では、1分間当たり数リットル程度の比較的多い吸引流量で体液を短時間で吸引するように構成されており、介護者が数時間おきに体液吸引装置を用いて患者の体液を吸引除去するようにしていた。
【0004】
しかしながら、上記体液吸引装置では、人工呼吸器を装着した患者の場合、切開した気管に取付けられた気管カニューレから人工呼吸器を一旦取外した後に気管カニューレに体液吸引装置の吸引チューブを挿入して吸引除去を行うといった体液の吸引除去作業を数時間おきに行う必要があり、介護者が患者に一晩中つきっきりで体液の吸引除去作業を行わなければならず、介護者の負担が大きく使い勝手が良好とは言えない装置となっていた。
【0005】
そのため、本発明者は、下記特許文献1に開示したように、従来の気管カニューレ及び体液吸引装置に改良を施して、比較的多い吸引流量で体液を短時間で吸引するだけでなく、1分間当たり数百ミリリットル程度の比較的少ない吸引流量で体液を連続して吸引することもできるようにした。
【0006】
【特許文献1】特開2007−307185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、体液吸引装置で比較的少ない吸引流量から比較的多い吸引流量までの広い範囲で体液を吸引することができるようにした場合には、比較的少ない吸引流量であれば連続して体液を吸引しても患者の身体に負担をかけることはないが、比較的多い吸引流量で長時間にわたって連続して体液を吸引してしまうと、患者の身体に負担を強いることになり危険性が増大してしまうといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、吸引ポンプに接続した吸引チューブで体液を吸引する体液吸引装置において、吸引流量を設定するための吸引流量設定手段と、吸引流量設定手段で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプを制御するための制御手段とを有し、制御手段は、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転不可能とするように制御することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記制御手段は、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを所定時間運転した後に吸引ポンプの運転を停止するように制御することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記制御手段は、吸引ポンプを駆動するモータの回転数に基づいて吸引ポンプの吸引流量を制御することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、吸引ポンプに接続した吸引チューブで体液を吸引する体液吸引装置において、吸引流量を設定するための吸引流量設定手段と、吸引流量設定手段で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプを制御するための制御手段とを有し、制御手段は、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転不可能とするように制御することにしているために、使用者が誤って比較的多い吸引流量で長時間にわたって連続して体液を吸引してしまうのを未然に防止することができ、体液吸引装置の安全性を向上させることができる。
【0013】
特に、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを所定時間運転した後に吸引ポンプの運転を停止するように制御した場合には、所定時間だけ比較的多い吸引流量で体液の吸引を行うことができ、体液吸引装置で比較的少ない吸引流量から比較的多い吸引流量まで良好に体液を吸引することができ、体液吸引装置の使い勝手を向上させることができる。
【0014】
また、吸引ポンプを駆動するモータの回転数に基づいて吸引ポンプの吸引流量を制御するようにした場合には、吸引流量を計測するための流量計などを設けなくても吸引流量の制御を容易に行うことができ、体液吸引装置の構成を簡単なものとして低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る体液吸引装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に模式的に示すように、体液吸引装置1は、吸引ポンプ2に吸引チューブ3を収容容器4を介して接続し、吸引ポンプ2の吸引力(負圧力)によって吸引チューブ3で患者の痰や唾液などの体液を吸引し、吸引した体液を収容容器4に収容するように構成している。なお、使用に際しては吸引チューブ3の先端に専用のカテーテルが接続されることもある。
【0017】
また、体液吸引装置1は、吸引ポンプ2に駆動用のモータ5を接続し、モータ5にCPUやインターフェースなどから構成した制御手段6を接続し、制御手段6にスイッチや表示器などから構成した吸引流量設定手段7を接続している。
【0018】
そして、体液吸引装置1は、使用者が吸引流量設定手段7を操作することによって吸引ポンプ2による吸引流量を任意に設定することができ、制御手段6でモータ5の回転数を制御することによって吸引流量設定手段7で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプ2を制御するようにしている。
【0019】
さらに、体液吸引装置1は、吸引ポンプ2と収容容器4とを連結チューブ8で接続し、連結チューブ8の中途部にフィルタ9を介設するとともに、連結チューブ8の中途部に分岐チューブ10を分岐接続し、分岐チューブ10に減圧弁などから構成した吸引圧力調整手段11と圧力計12とを接続し、吸引圧力調整手段11にスイッチや表示器などから構成した吸引圧力設定手段13を接続している。
【0020】
そして、体液吸引装置1は、使用者が吸引圧力設定手段13を操作することによって吸引ポンプ2による吸引圧力を任意に設定することができ、吸引圧力設定手段13で設定された吸引圧力で吸引するように吸引圧力調整手段11を調整するようにしている。
【0021】
体液吸引装置1は、以上に説明したように構成しており、吸引流量設定手段7によって1分間当たり数百ミリリットル程度の比較的少ない吸引流量から1分間当たり数リットル程度の比較的多い吸引流量までの広い範囲の吸引流量を設定することができるようになっている。
【0022】
そして、上記体液吸引装置1では、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値(たとえば、1分間当たり500ミリリットル)以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を連続運転不可能とするように制御手段6で制御するようにしている。
【0023】
たとえば、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が1分間当たり300ミリリットルに設定された場合には、運転開始操作から運転停止操作がされるまでの間、連続して1分間当たり300ミリリットルで吸引ポンプ2によって体液を吸引するように吸引ポンプ2に接続したモータ5を制御手段6で制御する。これにより、人工呼吸器を装着した患者の場合などであっても比較的少ない吸引流量で体液を連続して吸引することができ、介護者の負担を軽減することができる。
【0024】
一方、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が1分間当たり10リットルに設定された場合には、運転開始操作から所定時間(たとえば、3分間)だけ1分間当たり10リットルで吸引ポンプ2によって体液を吸引するように吸引ポンプ2に接続したモータ5を制御手段6で制御し、所定時間経過後にモータ5の駆動を停止して吸引ポンプ2による吸引を停止するように制御手段6で制御する。これにより、比較的多い吸引流量で長時間にわたって連続して体液を吸引してしまい患者の身体に負担を課してしまうのを未然に防止することができる。
【0025】
なお、体液吸引装置1は、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を連続運転不可能とするように制御手段6で制御すればよく、上述したように、所定時間経過後に停止させてもよく、また、所定時間経過後に所定値まで徐々に連続的に或いは断続的に吸引流量が少なくなるように制御してもよく、さらに、警報を発生するようにしてもよい。
【0026】
以上に説明したように、上記体液吸引装置1では、吸引ポンプ2に接続した吸引チューブ3で体液を吸引するように構成し、吸引流量を設定するための吸引流量設定手段7と、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプ2を制御するための制御手段6とを有し、制御手段6は、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を連続運転不可能とするように制御している。
【0027】
そのため、上記構成の体液吸引装置1では、比較的少ない吸引流量で連続して体液を吸引することができるので、体液吸引装置1の使い勝手を向上させることができ、しかも、使用者が誤って比較的多い吸引流量で長時間にわたって連続して体液を吸引してしまうのを未然に防止することができるので、体液吸引装置1の安全性を向上させることができる。
【0028】
また、上記体液吸引装置1では、吸引流量設定手段7で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプ2を所定時間運転した後に吸引ポンプ2の運転を停止するように制御している。
【0029】
そのため、上記構成の体液吸引装置1では、所定時間だけ比較的多い吸引流量で体液の吸引を行うことができ、体液吸引装置1で比較的少ない吸引流量から比較的多い吸引流量まで良好に体液を吸引することができ、体液吸引装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0030】
さらに、上記体液吸引装置1では、吸引ポンプ2を駆動するモータ5の回転数に基づいて吸引ポンプ2の吸引流量を制御するようにしている。
【0031】
そのため、上記構成の体液吸引装置1では、吸引流量を計測するための流量計などを設けなくても吸引流量の制御を容易に行うことができ、体液吸引装置1の構成を簡単なものとして低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る体液吸引装置を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 体液吸引装置
2 吸引ポンプ
3 吸引チューブ
4 収容容器
5 モータ
6 制御手段
7 吸引流量設定手段
8 連結チューブ
9 フィルタ
10 分岐チューブ
11 吸引圧力調整手段
12 圧力計
13 吸引圧力設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ポンプに接続した吸引チューブで体液を吸引する体液吸引装置において、
吸引流量を設定するための吸引流量設定手段と、吸引流量設定手段で設定された吸引流量で吸引するように吸引ポンプを制御するための制御手段とを有し、制御手段は、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値以下の場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転可能とする一方、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを連続運転不可能とするように制御することを特徴とする体液吸引装置。
【請求項2】
前記制御手段は、吸引流量設定手段で設定された吸引流量が所定値よりも大きい場合には、その設定された吸引流量で吸引ポンプを所定時間運転した後に吸引ポンプの運転を停止するように制御することを特徴とする請求項1に記載の体液吸引装置。
【請求項3】
前記制御手段は、吸引ポンプを駆動するモータの回転数に基づいて吸引ポンプの吸引流量を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の体液吸引装置。

【図1】
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