説明

体液採取器具

【課題】 採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる体液採取器具を提供する。
【解決手段】 長尺状の基材1上に、矩形の両面粘着テープ2を介して矩形の変色紙3が貼り付けられる。変色紙3上には、複数の孔40を有する矩形の開口両面粘着テープ4が貼り付けられる。開口両面粘着テープ4上には、例えば不織布からなる矩形の採取紙5が貼り付けられる。このようにして、体液採取器具10が形成される。採取された体液により採取紙5が湿潤し、体液の一部は開口両面粘着テープ4に形成された孔40を通過し、変色紙3に吸収される。それにより、孔40内の変色紙3の部分が変色する。使用者は、変色部分を湿潤した採取紙5を通して目視で確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を採取するための体液採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における変調または疾患は、生体反応として血液、唾液、尿または汗等の体液中の成分の変化に現れることが知られている。そこで、体液中に含まれる特定成分を測定することにより体内の情報を得ることが行われている。
【0003】
例えば、唾液および血液中に主として含まれるアミラーゼの活性を測定することにより、ストレスの程度および疾患の有無を判定することができる。
【0004】
体液中の成分の測定の際には、必要な量の体液を確実に採取することが求められる。例えば、特許文献1に示す採取器具では、板状基盤上に、体液の採取部、展開部および判定部が順につながるように設けられている。この採取器具では、採取部により採取された体液が展開部を通して判定部に導かれる。判定部に体液が到達したことを示す手段として、濡れチェッカー用インキまたはpH指示薬等の色変化を呈する成分を用いる方法が例示されている。
【0005】
特許文献2に示す採取器具では、親水性吸収体に吸収部、保液部、保液量の確認表示部および回収孔が連ねて配置されている。この採取器具では、吸収部により吸収された口腔内分泌液が保液部に導かれる。続いて口腔内分泌液が確認表示部を通過すると、確認表示部が湿潤することにより透光性が変化する。これにより、親水性吸収体の背面の有色部を湿潤した確認表示部を通して目視で確認することができる。これにより、必要な量の口腔内分泌液が採取されたことを容易に確認することができる。
【特許文献1】特開平6−201689号公報
【特許文献2】W02002/086453公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の採取器具によれば、必要な量の体液が採取されたことを確認することは可能であるが、採取量を定量的に確認することはできない。
【0007】
それにより、経験および技術等を有しない被検者がこれらの採取器具を使用する場合、どの程度の量の体液が採取されたかを知ることができず、体液採取の度合を調節することが困難となる。
【0008】
そのため、被検者は、採取量が必要な量に達していないときに、何度も体液の採取を繰り返す場合が生じる。その結果、被検者の精神状態が乱され、測定結果にも影響を及ぼす場合がある。
【0009】
本発明の目的は、採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる体液採取器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)
本発明に係る体液採取器具は、体液を採取するための体液採取器具であって、体液に接触することにより変色する変色材と、1または複数の開口を有する不透液性の通過膜と、透液性および保液性を有する採取材とがこの順に積層されたものである。
【0011】
この体液採取器具においては、採取材に採取された体液の一部は、通過膜に形成された開口を通過し、変色材に接触する。それにより、開口内の変色材の部分が変色する。使用者は、変色部分を採取材を通して目視で確認することができる。変色部分の面積または数は体液の採取量の増加に伴って増加する。したがって、使用者は、変色部分の面積、数、形状または変色パターン等により、採取された体液の量を定量的に確認することができる。
【0012】
また、採取材に採取された体液が飽和量に達した場合、開口内の変色材の全ての部分が変色する。それにより、使用者は、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0013】
(2)
通過膜は透光性シートであってもよい。この場合、変色材の変色前に通過膜の開口が見えにくく、採取材の表面が均一に見える。それにより、変色材の変色部分がより明確に現れる。したがって、採取された体液の量をより定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことをより容易に認識することができる。
【0014】
(3)
通過膜は、複数の開口を有してもよい。この場合、採取材に採取された体液の一部は、通過膜に形成された複数の開口を通過し、変色材に接触する。それにより、複数の開口内の変色材の部分が変色する。使用者は、変色部分を目視で確認することができる。
【0015】
変色部分の数は体液の採取量の増加に伴って増加する。したがって、使用者は、変色部分の数により、採取された体液の量を定量的に確認することができる。
【0016】
また、採取材に採取された体液が飽和量に達した場合、複数の開口内の変色材の全ての部分が変色する。それにより、使用者は、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0017】
(4)
採取材は、不織布、織布、和紙または発泡多孔質材料であってもよい。この場合、不織布、織布、和紙および発泡多孔質材料は高い透液性および保液性を有する。これにより、体液をさらに確実に採取および保持することができる。したがって、必要な採取量を効率良く採取することができるとともに、採取された体液の量をより定量的に確認することができる。
【0018】
また、不織布、織布、和紙および発泡多孔質材料は比較的高い透光性を有する。これにより、変色材の変色部分をより容易に確認することができる。
【0019】
(5)
変色材、通過膜および採取材を支持する長尺状の基材をさらに備え、基材は、採取材よりも大きな寸法を有してもよい。この場合、体液を採取する際に基材を把持することができる。これにより、さらに簡便かつ確実に体液を採取することができる。
【0020】
(6)
通過膜は第1および第2の面を有し、第1の面に変色材が接着され、第2の面に採取材が接着されてもよい。この場合、変色材、通過膜および採取材が一体的に形成されるので、取り扱いが容易である。
【0021】
(7)
通過膜の第1の面は粘着性を有してもよい。これにより、通過膜の第1の面と変色材とが容易に接着される。したがって、製造が容易である。
【0022】
(8)
通過膜の第2の面は粘着性を有してもよい。これにより、通過膜の第2の面と採取材とが容易に接着される。したがって、製造が容易である。
【0023】
(9)
体液は口腔内分泌液を含んでもよい。この場合、採取された口腔内分泌液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の口腔内分泌液が採取されたことを容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、変色材の変色部分を採取材を通して目視で確認することができる。変色部分の面積、数、形状または変色パターン等は体液の採取量の増加に伴って変化する。したがって、使用者は、変色部分の面積、数、形状または変色パターン等により、採取された体液の量を定量的に確認することができる。
【0025】
また、採取材に採取された体液が飽和量に達した場合、開口内の変色材の全ての部分が変色する。それにより、使用者は、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る体液採取器具について図面を参照しながら説明する。本実施の形態の体液採取器具は、体液として唾液等の口腔内分泌液を採取するために用いられる。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る体液採取器具の構成を示す分解斜視図である。図2は図1の体液採取器具の模式的断面図である。
【0028】
図1および図2に示すように、例えばポリエステルフィルム等のプラスチックからなる長尺状の基材1上に、矩形の両面粘着テープ2を介して矩形の変色紙3が貼り付けられる。変色紙3上には、複数の孔40を有する矩形の開口両面粘着テープ4が貼り付けられる。本実施の形態では、変色紙3に5個の円形の孔40が形成されている。開口両面粘着テープ4上には、例えば不織布からなる矩形の採取紙5が貼り付けられる。このようにして、体液採取器具10が形成される。
【0029】
開口両面粘着テープ4の孔40は、開口両面粘着テープ4の対角線上に形成される。1個の孔40は開口両面粘着テープ4の中央部に配置され、他の4個の孔40は開口両面粘着テープ4の四隅の近くに配置される。各孔40の直径は例えば2mmであり、中央部の孔40と他の各孔40との間の距離は例えば2mmである。基材1の幅は例えば10mmであり、長さは例えば120mmであり、厚みは例えば0.3mmである。両面テープ2の幅は例えば9mmであり、長さは例えば10mmである。変色紙3の幅は例えば9mmであり、長さは例えば10mmであり、厚みは例えば0.17mmである。開口両面粘着テープ4の幅は例えば9mmであり、長さは例えば10mmである。採取紙5の幅は例えば9mmであり、長さは例えば10mmであり、厚みは例えば0.23mmである。
【0030】
変色紙3には体液を吸収することにより黒または他の色に変色する材料を用いる。例えば、濡れチェッカー用インキ、ph指示薬またはコバルト錯体等の成分が添加された紙材が挙げられる。また、開口両面粘着テープ4は透光性を有することが好ましい。
【0031】
採取紙5には保液性および透液性を有する材料を用いる。採取紙5としては、特に、不織布、織布、和紙または発泡多孔質材料等の透光性を有する材料を用いることが好ましい。本実施の形態では、採取紙5の材料として、不織布が用いられる。
【0032】
採取紙5には体液が採取および保持される。体液の量が所定量に達すると採取紙5は飽和状態となり、それ以上の体液は採取紙5に採取および保持されない。以下、採取紙5が飽和状態に達する体液の量を飽和量と呼ぶ。
【0033】
なお、採取紙5の飽和量は、採取紙5の大きさ、厚みおよび材料により決定される。したがって、採取紙5の大きさ、厚みおよび材料を適宜選択することにより、採取紙5の飽和量を必要な体液の量に設定する。
【0034】
図3は、本実施の形態の体液採取器具10により体液が採取された際の体液採取器具10の変色を段階的に示した平面図である。図3(a)は体液採取前の体液採取器具10の状態を示し、図3(b)は採取紙5の飽和量より少ない量の体液が採取された場合の体液採取器具10の状態を示し、図3(c)は採取紙5の飽和量の体液が採取された場合の体液採取器具10の状態を示す。
【0035】
図3(a)に示すように、採取紙5に体液が採取されていない状態では、変色紙3が変色しないので、採取紙5の表面の色は一様に変化しない。
【0036】
図3(b)に示すように、採取紙5に飽和量より少ない量の体液が採取された状態では、採取された体液の一部が、開口両面粘着テープ4に形成された一部の孔40を通過し、変色紙3に吸収される。それにより、一部の孔40内の変色紙3の部分が変色する。この場合、一部の孔40内の変色部分50を採取紙5を通して目視で確認することができる。
【0037】
図3(c)に示すように、採取紙5に飽和量の体液が採取された状態では、採取された体液の一部が、開口両面粘着テープ4に形成された全ての孔40を通過し、変色紙3に吸収される。それにより、全ての孔40内の変色紙3の部分が変色する。この場合、全ての孔40内の変色部分50を採取紙5を通して目視で確認することができる。
【0038】
なお、図3(b)および図3(c)の状態では、採取紙5に体液が湿潤することにより採取紙5の透光性が向上する。これにより、変色紙3の変色部分50を容易に確認することができる。
【0039】
(第1の実施の形態の効果)
上記のように、第1の実施の形態に係る体液採取器具10においては、変色紙3の変色部分50の数が採取紙5における体液の採取量の増加に伴って増加する。したがって、使用者は、変色部分50の数により、採取された体液の量を定量的に確認することができる。
【0040】
また、採取紙5に採取された体液が飽和量に達した場合、開口両面粘着テープ4の全ての孔40内の変色紙3の部分が変色する。それにより、使用者は、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0041】
また、採取紙5に体液が湿潤することにより採取紙の透光性が向上する。これにより、変色紙3の変色部分50を容易に確認することができる。
【0042】
また、開口両面粘着テープ4は透光性を有する。この場合、変色紙3の変色前に開口両面粘着テープ4の孔40が見えにくく、採取紙5の表面が均一に見える。それにより、変色後の変色部分50がより明確に現れる。したがって、採取された体液の量をより定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことをより容易に認識することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態に係る体液採取器具の構成を示す分解斜視図である。
【0044】
第2の実施の形態に係る体液採取器具10の構成は、以下の点を除いて図1および図2に示す第1の実施の形態の体液採取器具10の構成と同様である。
【0045】
図4に示すように、変色紙3上に貼り付けられる矩形の開口両面粘着テープ4には、9個の孔40が形成される。1個の孔40は開口両面粘着テープ4の中央部に配置され、4個の孔40は開口両面粘着テープ4の四隅の近くに配置され、残りの4個の孔40は開口両面粘着テープ4の四辺の中央の近くに配置される。各孔40の直径は例えば1mmである。
【0046】
第2の実施の形態に係る体液採取器具10においても、上記第1の実施の形態と同様に、使用者は、変色部分50の数により、採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0047】
特に、開口両面粘着テープ4の孔40の数が多いので、採取紙5に採取された体液の量の定量性が向上する。
【0048】
(他の実施の形態)
図5は体液採取器具10の開口両面粘着テープ4の他の例を示す平面図である。
【0049】
図5(a)の開口両面粘着テープ4においては、1個の孔40が開口両面粘着テープ4の中央部に形成され、4個の孔40が開口両面粘着テープ4の四辺の中央の近くに形成されている。
【0050】
図5(b)の開口両面粘着テープ4は円形に形成されている。この場合、両面テープ2、変色紙3および採取紙5も開口両面粘着テープ4と同様に円形に形成されている。
【0051】
図5(c)の開口両面粘着テープ4においては、1個の孔40のみが開口両面粘着テープ4の中央部に形成されている。孔40の直径は1mmよりも大きいことが好ましい。
【0052】
図5(d)の開口両面粘着テープ4においては、複数のスリット状の孔40が平行に形成されている。
【0053】
図5(a),(b),(d)の体液採取器具10においても、第1の実施の形態と同様に、使用者は、変色部分50の数により、採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0054】
図5(c)の体液採取器具10においては、使用者は、変色部分50の面積により、採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【0055】
なお、開口両面粘着テープ4の孔40の数、位置、形状および大きさは、上記実施の形態に限定されず、任意の数、位置、形状および大きさに設定することができる。例えば、開口両面粘着テープ4の孔40の形状が、三角形または星型等の他の形状であってもよい。
【0056】
また、体液採取器具10の両面粘着テープ2、変色紙3、開口両面粘着テープ4および採取紙5の形状および大きさは、上記実施の形態に限定されず、任意の形状および大きさに設定することができる。例えば、両面粘着テープ2、変色紙3、開口両面粘着テープ4および採取紙5の形状が、円形または三角形等の他の形状であってもよい。
【0057】
また、体液採取器具10の基材1の形状および大きさは、上記実施の形態に限定されず、任意の形状および大きさに設定することができる。例えば、基材1の形状が、楕円形またはL字型等の他の形状であってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態の体液採取器具10を用いた場合、使用者は、変色部分50の面積または数により採取された体液の量を定量的に確認することができるが、各孔40の大きさを適切に設定することにより変色部分50の形状または変色パターン等により採取された体液の量を定量的に確認することも可能である。
【0059】
(請求項の各構成要素と実施の形態の各部の対応)
上記実施の形態においては、変色紙3が変色材に相当し、孔40が開口に相当し、開口両面粘着テープ4が通過膜に相当し、採取紙5が採取材に相当する。
【0060】
開口両面粘着テープ4の変色紙3に接着された面が通過膜の第1の面に相当し、採取紙5に接着された面が第2の面に相当する。
【0061】
(実施例1)
実施例1では、第1の実施の形態の体液採取器具10に水分を滴下し、変色紙3の変色を目視で確認した。
【0062】
図6は実施例1における体液採取器具10の変色の結果を示す写真である。各写真の下側に水分滴下前の体液採取器具10を示し、上側に水分滴下後30秒間経過した状態の体液採取器具10を示す。
【0063】
本実施例に用いる水分は浄水とし、水分の滴下量は10μlから5μl毎に35μlまでとした。また、採取紙5の飽和量は25μlである。
【0064】
(実施例1の評価)
図6に示すように、10μlの水分を滴下した場合、1個の変色部分を確認することができた。15μlの水分を滴下した場合、2個の変色部分を確認することができた。20μlの水分を滴下した場合、3個の変色部分を確認することができた。25μl以上の水分を滴下した場合は開口両面粘着テープ4に形成された5個全ての孔40内の変色部分を確認することができた。
【0065】
このように、滴下した水分量の増加に伴い、目視することができる変色部分の数が増加した。それにより、変色部分の数により、採取された水分の量を定量的に確認することができた。
【0066】
また、滴下した水分量が採取紙5の飽和量に達した時点で開口両面粘着テープ4の全ての孔40内の変色紙3の変色部分を確認することができた。それにより、必要な量の水分が採取されたことを容易に認識することができた。
【0067】
(実施例2)
実施例2では、第2の実施の形態の体液採取器具10に水分を滴下し、変色紙3の変色を目視で確認した。
【0068】
図7は実施例2における体液採取器具10の変色の結果を示す写真である。各写真の下側に水分滴下前の体液採取器具10を示し、上側に水分滴下後30秒間経過した状態の体液採取器具10を示す。
【0069】
水分の種類、水分の滴下量および採取紙5の飽和量は上記実施例1と同様である。
【0070】
(実施例2の評価)
図7に示すように、10μlの水分を滴下した場合、3個の変色部分を確認することができた。15μlの水分を滴下した場合、5個の変色部分を確認することができた。20μlの水分を滴下した場合、6個の変色部分を確認することができた。25μl以上の水分を滴下した場合は開口両面粘着テープ4に形成された9個全ての孔40内の変色部分を確認することができた。
【0071】
このように、滴下した水分量の増加に伴い、目視することができる変色部分の数が増加した。それにより、変色部の数により、採取された水分の量を定量的に確認することができた。
【0072】
また、滴下した水分量が不織布5の飽和量に達した時点で開口両面粘着テープ4の全ての孔40内の変色紙3の変色部分を確認することができた。それにより、必要な量の水分が採取されたことを容易に認識することができた。
【0073】
(実施例3)
実施例3では、開口両面粘着テープ4の孔40の直径が0.5mmである点を除いて第2の実施の形態の体液採取器具10と同様の構成を有する体液採取器具10を用いた。体液採取器具10に水分を滴下し、変色紙3の変色を目視で確認した。
【0074】
図8は実施例3における体液採取器具10の変色の結果を示す写真である。各写真の下側に水分滴下前の体液採取器具10を示し、上側に水分滴下後30秒間経過した状態の体液採取器具10を示す。
【0075】
水分の種類、水分の滴下量および採取紙5の飽和量は上記実施例1および2と同様である。
【0076】
(実施例3の評価)
図8に示すように、10μlの水分を滴下した場合、4個の変色部分を確認することができた。15μlの水分を滴下した場合、2個の変色部分を確認することができた。20μlの水分を滴下した場合、5個の変色部分を確認することができた。25μlの水分を滴下した場合、6個の変色部分を確認することができた。30μlの水分を滴下した場合、5個の変色部分を確認することができた。35μlの水分を滴下した場合、4個の変色部分を確認することができた。
【0077】
このように、開口両面粘着テープ4の孔40の直径を実施例2の場合に比べて小さくすることにより水分の採取量の定量性が低くなった。この場合、開口両面粘着テープ4の厚みを小さくすることにより水分の採取量の定量性を向上させることができると考えられる。これらの結果、体液の種類を考慮して、開口両面粘着テープ4の孔40の数、位置、形状および大きさならびに開口両面粘着テープ4の大きさおよび厚みを適宜選択することにより、採取された体液の量を定量的に確認することができるとともに、必要な量の体液が採取されたことを容易に認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、唾液等の口腔内分泌液、血液、尿または汗等の種々の体液の採取に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る体液採取器具の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の体液採取器具の模式的断面図である。
【図3】図3は、本実施の形態の体液採取器具により体液が採取された際の体液採取器具の変色を段階的に示した平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る体液採取器具の構成を示す分解斜視図である。
【図5】図5は体液採取器具の開口両面粘着テープの他の例を示す平面図である。
【図6】図6は実施例1における体液採取器具の変色の結果を示す写真である。
【図7】図7は実施例2における体液採取器具の変色の結果を示す写真である。
【図8】図8は実施例3における体液採取器具の変色の結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0080】
1 基材
2 両面粘着テープ
3 変色紙
4 開口両面粘着テープ
5 採取紙
10 体液採取器具
40 孔
50 変色部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を採取するための体液採取器具であって、
体液に接触することにより変色する変色材と、
1または複数の開口を有する不透液性の通過膜と、
透液性および保液性を有する採取材とがこの順に積層されたことを特徴とする体液採取器具。
【請求項2】
前記通過膜は透光性シートであることを特徴とする請求項1記載の体液採取器具。
【請求項3】
前記通過膜は、複数の開口を有することを特徴とする請求項1または2記載の体液採取器具。
【請求項4】
前記採取材は、不織布、織布、和紙または発泡多孔質材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体液採取器具。
【請求項5】
前記変色材、前記通過膜および前記採取材を支持する長尺状の基材をさらに備え、前記基材は、前記採取材よりも大きな寸法を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の体液採取器具。
【請求項6】
前記通過膜は第1および第2の面を有し、
前記第1の面に前記変色材が接着され、前記第2の面に前記採取材が接着されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の体液採取器具。
【請求項7】
前記通過膜の前記第1の面は粘着性を有することを特徴とする請求項6記載の体液採取器具。
【請求項8】
前記通過膜の前記第2の面は粘着性を有することを特徴とする請求項6または7記載の体液採取器具。
【請求項9】
前記体液は口腔内分泌液を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の体液採取器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−337252(P2006−337252A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164104(P2005−164104)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】