説明

体液採取装置

【課題】作業者の負担が少なく、長時間連続して体液を採取可能な体液採取装置を提供する。
【解決手段】プローブ(203)を移動させて、ガイド(201)に順次装填される試験管(202)に唾液採取針(204)を刺して唾液を注入する。プローブをさらに移動させることで、唾液が注入された試験管はガイド上をさらに移動し、印字機構(211)によってシリアル番号が印字される。またPC(301)は唾液採取時刻とシリアル番号とを関連付けて記憶する。シリアル番号の印字後、プローブは戻り方向に移動して、試験管から針が抜かれ、試験管収納ケース(208)から新たな試験管が装填される。ガイド上の試験管は玉突き状に移動し、最終的にガイドから排出されて試験管格納部(214)で冷蔵保存される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を連続かつ自動的に採取可能な体液採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間や動物の生体試料(血液や唾液などの体液)を用いたストレス研究が行われている。ストレス研究では、被験者に対して体液採取に伴う余分なストレスを与えないことが求められる。また、ストレスの時間変動を計測するためには一定時間ごとに体液採取を繰り返す必要がある。長期間の測定を行う場合は、何回も採取作業を行わなければならず非常に手間がかかってしまう。また、このように体液採取を繰り返すと被験者に対してストレスを与えてしまう原因になってしまう。
【0003】
したがって、人間や動物の体液を連続かつ自動的に採取できることが望ましい。このような自動採取装置として、動物実験用の自動採血装置が知られている(株式会社エイコム製・自動血液サンプリング装置DR−2(非特許文献1)、特許文献1)。この装置では、動物にカテーテルを埋め込み定期的に採血を行う。この際、採取された血液の保管は以下のように行われる。まず、あらかじめ血液保管部に試験管を整列させておく。採取された血液を試験管に注入する抽出口は移動可能となっており、採血を行うたびに整列された試験管に順次血液を注入していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116666号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「エイコム 動物用血液サンプリング装置 DR−2」、株式会社エイコム、[online]、[平成20年11月21日検索]、インターネット<URL:http://www.eicom.co.jp/item/dr2/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術には次のような問題がある。
【0007】
第一に、体液採取を行う前に複数の試験管を保管部に設置する必要があるが、この作業が手間であるという問題がある。特に、どの時間帯に採取した体液であるかを識別可能とするためには、識別ラベルが印字された試験管を適切な位置に設置しなければならず、採取を開始するための準備に手間がかかる。
【0008】
第二に、体液採取の回数が、あらかじめ設置可能な試験管の数によって制限されてしまうという問題がある。設置可能な試験管数を増やせば採取回数を増やすことはできるが、装置の大型化・高コスト化を招いてしまう。また、試験管の設置可能数をどれだけ増やしても、その数によって採取回数の上限が定められるという本質的な問題は解消できない。
【0009】
本発明はこのような問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、作業者の負担が少なく、長期間連続して自動的に体液を採取可能な体液採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による体液採取装置は、以下の手段により連続的かつ自動的に体液を採取可能とする。
【0011】
本発明の体液採取装置は、ガイドと、容器装填手段、体液採取手段、採取針移動手段、容器移動手段、容器識別手段、格納部および制御部を備える。ガイドは容器を案内するものである。このガイドには、容器装填手段によって容器が順次装填される。体液採取手段は、体液採取用の管に採取針が接続された構成である。この採取針によって、採取される体液を容器に注入することができる。採取針移動手段は、採取針をガイドに沿って移動させる。なお、体液採取のための機構は従来の構成を採用可能である。採取針移動手段によって採取針を送り方向に移動させることで、採取針が容器に刺さり、これにより容器に体液を注入可能にすることができる。容器移動手段は、ガイド上の容器を移動させる。容器識別手段は、採取された体液が注入された容器を識別可能とする。この容器識別手段は、容器に識別情報を付加するか、容器にあらかじめ付加された識別情報を読み取る。容器識別手段によって処理された容器は、さらに送り方向に移動されることでガイドから排出され、格納部に保存される。制御部は、上記の採取針移動手段、容器移動手段、および容器識別手段を連動して制御する。
【0012】
このように、体液が採取された容器に識別情報が付されるか、容器にあらかじめ付された識別情報が読み取られるため、体液採取後に容器に付されている識別情報を読み取ることでどのタイミングで採取が行われたのかを把握可能である。したがって、装置をセットアップする際に容器を所定の順番に配置する必要がなくなり、作業者の負担が減少する。
【0013】
また、本発明における容器装填手段は、容器をガイドと平行に複数収納可能であり、底面は傾斜面となっておりガイドに合わせた開口部が設けられている収納ケースとすることができる。
【0014】
容器装填手段としてこのような構成を採用することで、作業者は装置のセットアップ時に容器を必要な数だけ収納ケースに入れれば良く、順序通りに整列させる必要がないため、作業者の負担が軽減する。また、収納ケースに容器を並べて収納する構成を採用すると、収納効率が高くなるため、同じスペースにより大量の容器を設置可能となる。すなわち、装置の大型化を招くことなく、多数回の体液採取を自動的かつ連続的に実施することができる。
【0015】
また、本発明における容器は、円筒形状の試験管にゴム製の蓋部が設けられたものであることが好ましい。
【0016】
ゴム製の蓋部が設けられているので採取針を刺して採取された体液を注入可能であり、また、注入された体液が容器からこぼれることもない。また、円筒形状の試験管であるため、上記の傾斜底面を有する収納ケースを容器装填手段として採用した場合に、よりスムースに容器がガイド上に装填される。
【0017】
また、本発明における容器識別手段は、容器にシリアル番号を印字するものとして構成することできる。あるいは、容器には識別情報がバーコードの形式であらかじめ付されており、容器識別手段は容器に付されたバーコードを読み取るバーコード読み取り装置として構成することもできる。いずれの場合も、制御手段は、それぞれのシリアル番号と関連付けて体液採取期間を記憶することが好ましい。
【0018】
このように、容器にシリアル番号を印字したり、あらかじめ付されている識別情報を読み取り、体液採取期間と識別情報を関連付けておくことで、体液採取後の容器がバラバラになってしまっても任意の容器に採取された体液がどのタイミングで採取されたものか判
断可能となる。すなわち、体液採取後の容器の順序が入れ替わらないように管理する手間が省け、作業者の負担が軽減される。
【0019】
また、本発明における容器移動手段と採取針移動手段は同一の装置で構成しても良い。すなわち、採取針移動手段が採取針を移動させて容器に刺し、さらに採取針を移動させることで採取針が刺さった状態の容器を移動させる構成としても良い。
【0020】
このような構成によれば、容器を移動するために別途の機構を必要としないため、簡単な構成で装置を作成可能である。また、装置コストの低減可能である。
【0021】
また、採取針が刺さった状態での容器の移動は容器約一個分の距離だけおこなわれ、この移動にともなってガイド上の容器が玉突き状に移動するように構成しても良い。
【0022】
このようにすれば、容器移動手段(採取針移動手段)の移動距離を少なくすることができる。
【0023】
また、本発明におけるガイドに、採取針を容器に刺す際、および、採取針を容器から抜く際に、容器の動きを防止する抵抗手段が設けられることも好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、作業者の負担が少なく、長時間連続して自動的に体液を採取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】唾液採取装置の全体構造を示すブロック図である。
【図2】唾液採取装置における唾液注入保管装置の構成を示すブロック図である。
【図3】唾液注入保管装置の一部を示す斜視図である。
【図4】試験管収納ケースによる試験管のガイドへの供給を説明する図である。
【図5】試験管収納ケースの開口付近を示す斜視図である。
【図6A】唾液採取装置の動作を説明する図である。
【図6B】唾液採取装置の動作を説明する図である。
【図6C】唾液採取装置の動作を説明する図である。
【図6D】唾液採取装置の動作を説明する図である。
【図6E】唾液採取装置の動作を説明する図である。
【図7】試験管収納ケースから新たな試験管がガイド上に供給される動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施形態では人体から唾液を自動的かつ連続的に採取する唾液採取装置を例に説明するが、本発明は唾液以外にも血液等の体液を採取する装置に適用しても良い。また、本発明は人間以外にラット、犬、猫、牛などの動物を対象としてその体液を採取する装置に適用しても良い。
【0027】
<全体構造>
図1は、本実施形態に係る唾液採取装置の全体構造を示すブロック図である。唾液採取装置は、大略、人体から唾液を採取する唾液吸引回路1と、吸引された唾液を容器に注入し保管する唾液注入保管装置2と、これらを制御する機構とから構成される。
【0028】
唾液吸引回路1は真空機101、圧縮機104および2つのバルブ103,106を用
いて、プローブ203が刺された試験管202内の圧力を制御し、カテーテル109を介して人体から唾液を吸引して試験管202内に吸い込む。真空機101および圧縮機104には、圧力の急激な変動を和らげるための中間タンクとして、真空タンク102およびエアタンク105が設けられている。また、廃棄タンク107は余分に採取された唾液を廃棄するためのタンクである。
【0029】
唾液注入保管装置2は、唾液を採取するためのプローブ203と、採取した唾液を注入する試験管(容器)202を収納する収納ケース208と、唾液が注入された試験管にナンバリングする印字機構211と、試験管を格納する格納部214とから構成される。プローブ203(唾液採取針204)は移動可能となっており、唾液採取を行うたびに新たな試験管に唾液を注入する。唾液が注入された試験管は印字機構211によって印字可能な位置に移動されて、印字機構211によってラベルが付される。ナンバリング処理が施された試験管はさらに移動されて試験管格納部214で格納される。
【0030】
コンピュータ(PC)301は、リレー302および近接センサ303を利用して、唾液吸引回路1および唾液注入保管装置2を連動して制御する。より詳細には、PC301には、唾液を採取する時間間隔および採取回数または採取期間が設定され、唾液採取タイミングになると唾液吸引回路1の真空機101,圧縮機104やバルブ103,106と、唾液注入保管装置2のプローブの移動を制御して、試験管内に唾液を吸引する。また、PC301は印字機構211も制御し、唾液が採取された試験管にシリアル番号を付すとともに、唾液吸引の開始時刻および終了時刻をシリアル番号に関連付けて内部の記憶装置に記憶する。
【0031】
<唾液注入保管装置の構成>
次に、唾液注入保管装置2の構成をより詳細に説明する。図2は唾液注入保管装置2の詳細な構成を示すブロック図であり、図3は唾液注入保管装置2の一部を示す斜視図である。
【0032】
唾液注入保管装置2には、採取された唾液を注入する容器である試験管202を案内するガイド201が設けられている。試験管202は、おおよそ円筒形状の硬質ガラス管であり、その開口部にはゴム製のキャップ(蓋部)が設けられている。
【0033】
プローブ203は、採取された唾液を試験管202内に注入するための唾液採取針204および試験管202内の気圧を制御するための気圧制御針205を含み、これらの針がプローブ本体203aに固定されている。なお、唾液採取針204は被験者の口腔につながる唾液採取用のカテーテル109に接続され、気圧制御針205は唾液吸引回路1につながる気圧制御用のカテーテル108に接続されている。プローブ203は、固定部203bを介してアクチュエータ206によって移動可能となっている。PC301がモータ207を制御してアクチュエータ206を駆動することで、プローブ203がガイド201に沿って移動する。ガイド201には、プローブ203の固定部203aが通過できるように間隙部201aが設けられている。このようにプローブ203を移動させることで、唾液採取針204と気圧制御針205が試験管202のゴム製キャップに刺さる。この状態で、唾液吸引回路1によって試験管内の気圧を制御すると、試験管202内に唾液が注入される。
【0034】
試験管収納ケース208は、空の状態の試験管202を収納するケースである。試験管収納ケースは底面208aが傾斜面となっており、傾斜底面の下部にガイド201に位置合わせされた開口208bが設けられている。試験管収納ケース208のガイド201に沿った方向の長さは試験管202の長さとほぼ同一であり、試験管202をガイド201と平行に複数収納可能である。試験管収納ケース208の傾斜底面208aと開口208
bにより、図4に示すように、収納されている試験管202は1本ずつガイド201に供給(装填)される。なお、開口208bの上部に複数の試験管202が積み重なってジャミングを起こしてしまわないように、収納ケース208には規制部材208cが設けられている。この規制部材208cにより、開口208bの上部に試験管202が1本のみとなるように規制されるのでジャミングを防止できる。また、図5に示すように、開口208b付近の側面(プローブ側)には、試験管202がプローブ203上で引っかからずに確実にガイド201に供給されるように、試験管202を送り方向に弾く付勢部208dが設けられている。
【0035】
ガイド201には、試験管202の移動を制限するための抵抗部材209,210が設けられている。抵抗部材209はプローブ203を送り方向に移動させたときに、針204,205が刺さるように試験管202を固定するためのものである。抵抗部材209による抵抗力はそれほど強くなく、針204,205が試験管202に刺さった状態でプローブ203を送り方向に移動させると、試験管202は抵抗部材209を越えて移動可能となっている。抵抗部材209は、また、プローブ203を戻り方向に移動させて試験管202から針204,205を抜けるように試験管202を固定するためのものでもある。抵抗部材210は、印字機構211によって試験管202に印字する際に試験管202が動かないように固定するものである。この抵抗部材210の抵抗力もそれほど強くなく、試験管202は抵抗部材210を越えて移動可能である。これらの抵抗部材209,210は、バネ部材として構成しても良く、ゴム製のO−リングなどにより構成しても良い。
【0036】
印字機構211は、試験管202に数字を刻印する刻印装置である。印字機構211はアクチュエータ212によって上下に移動可能である。PC301は、印字機構211が刻印する数字の設定を行い、モータ213を制御することで、任意の番号を試験管202へ刻印可能である。本実施形態では、試験管202にシリアル番号を付与する。PC301では、試験管202にシリアル番号を刻印するよう印字機構211等を制御するとともに、シリアル番号と関連させて試験管202内の唾液が採取された時刻(開始時刻および終了時刻)を記憶装置(ハードディスク等)に記憶する。
【0037】
シリアル番号が刻印された試験管202は、ガイド201から排出されて試験管格納部214に格納される。試験管格納部214にはペルティエ冷却板が設けられており、採取された唾液は冷蔵保存される。
【0038】
<動作説明>
次に、本実施形態の唾液採取装置の動作を図6A〜図6Eを参照しつつ説明する。図6Aは、試験管収納ケース208からガイド201上に新たな試験管202Aが供給された状態を示す図である。唾液採取の時刻になるとPC301はモータ207を介してアクチュエータ206を制御し、図6Bに示すように、プローブ203を送り方向に移動させて唾液採取針204および気圧制御針205を試験管202Aのゴム製キャップに刺す。なお、試験管202Aは抵抗部材209によって移動が防止されるため、針を刺すことができる。
【0039】
唾液採取針204および気圧制御針205が試験管に刺されると唾液採取可能となるため、PC301は唾液吸引回路1を制御して、唾液を試験管202A内に吸引する。唾液の吸引が完了すると、PC301は図6Cに示すようにプローブ203をさらに送り方向に試験管約一個分の距離だけ移動させて、印字機構211によって処理可能な位置に試験管202Aを移動させる。なお、唾液の吸引を開始した時刻および終了した時刻はPC301内の一時メモリに記憶される。また、唾液の吸引は、試験管202Aが図6Bに示す状態のときに行っても良いが、図6Cに示す状態のときに行っても良く、あるいは試験管
202Aを移動させている間に行っても構わない。
【0040】
試験管202Aが印字機構211によって処理可能な位置に到達すると、PC301は印字機構211によるシリアル番号の刻印処理を行う。この際、PC301は、試験管202Aに刻印するシリアル番号と、試験管202Aに対する唾液採取の開始時刻および終了時刻を関連付けて、記憶装置に記憶する。
【0041】
シリアル番号の印字処理が終了すると、図6Dに示すように、PC301はプローブ203を戻り方向に移動させる。試験管202Aは抵抗部材209によって抑えられるため、試験管202Aから唾液採取針204および気圧制御針205のみを抜くことができる。プローブ203を試験管収納ケース208の開口208bよりも後方まで移動させると、試験管収納ケース208から新たな空の試験管202Bがガイド201に供給される。
【0042】
新たな試験管がガイド201に供給されるときの動作を図7に示す。図7(A)に示すように、プローブ203が送り方向に移動しており試験管収納ケース208の開口208bの下に位置しているときは、次の試験管はプローブ203の上に乗っかった状態となっている。図7(B)に示すようにプローブ203が戻り方向に移動すると、試験管収納ケース208の戻り側の側面に設けられた付勢部208dはプローブ203の上面との摩擦により戻り方向に変形する。付勢部208dの変形量が一定以上となると、図7(C)に示すように、付勢部208dは、プローブ203上面との間の摩擦に抗して元の状態に戻り、これによりプローブ203の上に乗っかっていた試験管が弾かれて確実にガイド201上に供給される。
【0043】
図6Dに示すように試験管収納ケース208から新たな試験管202Bが供給されると、唾液採取装置は次の唾液採取タイミングまで動作を休止する。次の唾液採取タイミングになると、上記の処理(図6A〜図6D)が繰り返される。この処理が繰り返されるたびに、図6Eに示すように、プローブ203が刺さった試験管が移動するのに押される形で、それより前方にある試験管は玉突き状に移動することになる。このようにして試験管はガイド201から排出されて試験管格納部214に格納されて冷蔵保存される。
【0044】
<本実施形態の作用/効果>
本実施形態による唾液採取装置では、唾液の採取を連続的かつ自動的に行うことができる。静脈穿刺による採血は侵襲的であり被験者に余分なストレスを与えてしまい、ストレス研究には不向きである。また血液採取は医療従事者により行わなければならない法的制約もあり、手軽に行えるものではない。綿棒による唾液採取は非侵襲的であり手軽にできるが、採取の際にストレス負荷の一時停止が必要で、連続採取は困難である。これに対して、本実施形態による唾液採取装置では被験者の口腔内にカテーテルを含ませ、気圧制御を行うことで自動的に唾液を採取可能である。また、唾液を試験管に注入し保管する工程も自動的に行われる。このように被験者はカテーテルを口腔内に含んでいるだけで唾液の採取が自動的に行われるので、被験者が採取のために何らかの作業を行ったりする必要がなく、また実験者が採取のたびに近づく必要もないので、被験者にストレスを与えることなく唾液の採取を行える。
【0045】
また、本実施形態による唾液採取装置では、採取開始前のセットアップ処理として唾液を採取する容器(試験管)を用意するときに、試験管を試験管収納ケースに収納するだけでよい。採取が行われるたびに、試験管にシリアル番号が付されるので、あらかじめ試験管に番号を振っておいたり番号順に試験管を設置したりするという手間を省くことができ、試験管収納ケースに採取回数分の試験管を入れるだけで十分である。
【0046】
また、唾液が採取された試験管にはシリアル番号が印字されるので、試験管格納部21
4の中で試験管が動いても、シリアル番号を読み取ることで採取順序が分かる。また、シリアル番号に関連付けて採取タイミングも記憶されているので、シリアル番号から採取の開示時刻および終了時刻が分かる。
【0047】
試験管収納ケースには試験管を並べて収納しているので、収納が楽であることに加えて、収納効率が高いという利点がある。円筒形の試験管を横に並べて積み上げる形で収納しているので、空間的に効率良く試験管を収納可能である。唾液の採取を長時間(多くの回数)行う場合には多量の試験管が必要となるが、効率良く試験管を収納可能であるため装置の大型化を招くことがない。また、試験管収納ケースに入りきらないほど多数回にわたって唾液採取を行う場合でも、試験管収納ケースに試験管を追加することで容易に多数回の採取にも対応可能である。あるいは、試験管収納ケースを脱着可能として、多数回の採取を行う場合には大容量の試験管収納ケースを装着することとしても、多数回の採取に対応可能である。
【0048】
このように、本実施形態による唾液採取装置では、作業者の負担が少なく、長時間連続して自動的に唾液を採取することができる。
【0049】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0050】
・容器移動手段
上記の実施形態では、試験管(容器)の移動を、プローブの唾液採取針が試験管に刺さった状態でプローブを容器約一個分だけ移動させ、それに伴ってガイド上の試験管を玉突き状に移動させる構成を採用しているが、その他の構成を採用しても構わない。
【0051】
たとえば、採取針が試験管に刺さった状態でプローブを送り方向に移動させて試験管を印字機構によって処理可能な位置まで移動させた後、さらにプローブを送り方向に移動させてガイドから排出可能な位置まで移動させても良い。そしてプローブを戻り方向に移動させて試験管から採取針を抜き、試験管がガイドから排出されて格納部に格納される構成としても良い。
【0052】
また、試験管の移動は、プローブの移動機構(採取針移動手段)とは別の機構によって行われても構わない。たとえば、プローブは試験管から採取針が抜けた状態(図6A)と試験管に採取針が刺さった状態(図6B)の間のみで移動可能としてもよい。この場合、試験管の移動は、ガイド上に設けられた搬送ベルトや搬送テーブルなどによって移動させられる構成とすればよい。
【0053】
・容器装填手段
上記の実施形態では装置の製造コストを下げるために、底面が斜面となった収納ケースに開口部を設けて試験管に掛かる重力によって、ガイドに新しい試験管が装填される構成を採用している。しかしながら、容器装填手段としてはガイドに試験管が順次装填される構成であれば任意の構成を採用可能である。たとえば、機械的に装填を行う装填装置を採用しても構わない。
【0054】
・容器識別手段
上記の実施形態では、容器識別手段として試験管にシリアル番号を印字(刻印)する印字機構を採用したが、他の手法によって試験管に識別情報を付加しても構わない。たとえば、レーザー方式やインクジェット方式で試験管に印字(印刷)を行っても良く、シリアル番号等が記載されたラベルを貼付するラベル貼付装置を用いても良い。また、シリアル
番号以外に採取時刻等の情報を記載しても良く、さらに文字としての印字ではなくバーコードの形式で付加しても構わない。さらには、シリアル番号等の識別情報が格納されたICタグを試験管に貼付する構成としても良い。
【0055】
また、容器識別手段は、個々の容器を識別して採取に関する情報と関連付けることが目的であるので、容器に識別情報を付す構成だけでなく、容器にすでに付加されている識別情報を読み取る構成としても良い。たとえば、容器識別手段は、あらかじめシリアル番号等の識別情報が目視用の文字と読み取り用のバーコードの形式で付された容器から、そのバーコード情報を読み取るバーコード読み取り装置であっても構わない。この際、読み取られた識別情報と採取時刻等の採取処理に関する情報とを関連付けてコンピュータに記憶することで、個々の容器に採取された唾液がいつ採取されたものであるかを把握可能である。
【0056】
・採取対象
上記の実施形態では、ストレス研究を考慮して人間の唾液を採取の対象としている。しかしながら、本発明に係る体液採取装置の採取対象は唾液のみに限られず、血液などのその他の体液を採取しても良い。また、人間ではなくてラット、犬、猫、牛などの動物を対象としてその体液を採取する装置として構成しても構わない。
【0057】
なお、採取対象に応じて、上記実施形態の唾液吸引回路およびプローブは適宜変更する必要がある。しかしながら、唾液注入保管装置の基本構成は採取対象にかかわらずそのまま適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 唾液吸引回路、 2 唾液注入保管装置、 201 ガイド、 202 試験管(容器)、 203 プローブ、 204 唾液採取針、 205 気圧制御針、 206
アクチュエータ、 208 試験管収納ケース、 208a 底面、 208b 開口、 208c 規制部、 208d 付勢部、 209 抵抗部材、 210 抵抗部材、 211 印字機構、 212 アクチュエータ、 213 モータ、 214 試験管格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体液を採取する体液採取装置であって、
容器を案内するガイドと、
前記ガイドに容器を順次装填する容器装填手段と、
体液採取用の管に採取針が接続されている体液採取手段と、
前記採取針をガイドに沿って移動させ、前記採取針を前記容器に刺し、または、前記採取針を前記容器から抜く採取針移動手段と、
前記ガイド上の容器を移動させる容器移動手段と、
採取された体液が注入された容器に識別情報を付加するか、または、その容器にあらかじめ付加された識別情報を読み取る容器識別手段と、
前記ガイドから排出される容器を格納する格納部と、
前記体液採取手段、前記採取針移動手段、前記容器移動手段および前記容器識別手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする体液採取装置。
【請求項2】
前記容器装填手段は、
前記容器を前記ガイドと平行に複数収納可能であり、傾斜面の底面を有し、該底面に前記ガイドに合わせた開口部が設けられている収納ケースである
ことを特徴とする請求項1に記載の体液採取装置。
【請求項3】
前記容器は、円筒形状の試験管にゴム製の蓋部が設けられたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の体液採取装置。
【請求項4】
前記容器識別手段は、容器にシリアル番号を印字するものであり、
前記制御手段は、各シリアル番号に係る体液採取の採取期間を記憶する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体液採取装置。
【請求項5】
容器には、識別情報がバーコードの形式で付加されており、
前記容器識別手段は、容器に付されたバーコードを読み取るバーコード読み取り装置であり、
前記制御手段は、各容器の識別情報と、その容器についての体液採取の採取期間を記憶する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体液採取装置。
【請求項6】
前記容器移動手段は、前記採取針が前記容器に刺さった状態で前記採取針を移動させる前記採取針移動手段である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の体液採取装置。
【請求項7】
採取針が刺さった状態での容器の移動は容器約一個分の距離だけ行われ、この移動に伴ってガイド上の容器が玉突き状に移動される
ことを特徴とする請求項6に記載の体液採取装置。
【請求項8】
前記ガイドには、前記採取針を前記容器に刺す際、および、前記採取針を前記容器から抜く際に、前記容器の動きを防止する抵抗手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の体液採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−203840(P2010−203840A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48009(P2009−48009)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】