説明

体積ホログラム積層体の製造方法、および製造装置

【課題】簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することが可能な、体積ホログラム積層体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】体積ホログラム転写箔、および被転写体を用い、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と、上記被転写体とが接するように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する積層工程と、上記転写用積層体を用い、上記体積ホログラム転写箔を平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する接着工程と、上記体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積ホログラム転写箔から被転写体へ体積ホログラム層を転写することにより、被転写体上に体積ホログラム層が積層された体積ホログラム積層体を製造する方法、および当該方法を実施するために用いることが可能な体積ホログラム積層体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることによって、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一波長の光が当てられると干渉縞によって回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。ホログラムは、外観が美しく、複製が困難である等の利点を有することからセキュリティ用途等に多く使用されている。なかでもクレジットカードや、キャッシュカード等に代表されるプラスチックカードにおいては、主として複製防止および意匠性付与の観点からホログラム付カードが広く用いられるに至っている。
【0003】
このようなホログラムは、干渉縞の記録形態によっていくつかの種類に分類することができるが、代表的には表面レリーフホログラムと体積ホログラムとに分けることができる。ここで、上記表面レリーフホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラムが記録されたものである。一方、上記体積ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞が、屈折率の異なる縞として厚み方向に三次元的に描画されることによってホログラムが記録されたものである。なかでも、上記体積ホログラムは材料の屈折率差によってホログラム像が記録されたものであるため、上記レリーフホログラムに比べて複製することが困難であるという利点を有することから、有価証券やカード類の偽造防止手段としての用途が期待されている。
【0004】
また、意匠性の付与や偽造防止手段等としてホログラムを用いる場合において、ホログラムを有価証券やカード等に付与する方法としては、ホログラムを付与する対象に応じて種々の方法が知られている。このような方法としては、例えば、スリット状のホログラムを編み込む方法や、ホログラムを外部から視認可能なように媒体中に埋め込む方法が知られているが、一般的にはホログラムを所定の位置に貼付する方法が用いられている。なかでも、より簡便な方法として、任意の被転写体上にホログラム層転写箔から、ホログラムを転写することによってホログラムを所定の位置に貼付する方法が広く用いられるに至っている。このような転写箔を用いる方法は、特に体積ホログラムが記録された体積ホログラム層を添付する際に広く用いられている。
【0005】
ここで、上記転写箔を用いる方法としては種々の方式のものが知られているが、なかでも転写圧が高く、被転写体と体積ホログラム層とを十分に接着させることが可能な方法として、平らな表面を有する金型を用いて転写箔を加熱する平板転写方法が知られている(特許文献1)。このような平板転写方法は、ラミネート方法等の他の転写方法と比較して、被転写体と体積ホログラム層との接着力を大きくでき、かつ転写時間を短くすることができるという点において大きな利点を有するものである。しかしながら、上記平板転写方法は、平らな表面を有する金型を用いて転写箔を加熱することによって、被転写体へ体積ホログラム層を転写するものであることから、体積ホログラム層が被転写体へ転写される際に、体積ホログラム層と被転写体との間に空気が封入されてしまうという問題点が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002‐99196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題点を改善する方法としては、例えば、(1)被転写体や体積ホログラム転写箔の表面粗さを大きくする方法、(2)平板金型の表面に曲率を設ける方法、および(3)平板金型に代えてローラー等を用いる方法等が知られている。しかしながら、上記(1)の方法は、被転写体や体積ホログラム転写箔の表面粗さを大きくするには、被転写体、あるいは体積ホログラム転写箔に特殊な処理を施すか、あるいは表面に凹凸を付与するために粒子を添加する等を行う必要があるため、使用可能な材料が限定されてしまうという問題点がある。また、粒子を添加する場合には、被転写体と体積ホログラム層との接着性が低下してしまうという問題点もある。上記(2)の方法は、金型に曲率を設けるという特殊な方法を用いるため、非常に高度な加工精度が要求され、また金型が複雑な形状を有する場合には、曲率を設けること自体が困難であるという問題点がある。さらに、上記(3)の方法は、ローラーは面で接触しないため、空気が封入されるという問題点は解消されるが、転写圧が低くなることから、被転写体と体積ホログラム層との密着性が低下してしまうという問題点がある。密着性を向上させるためにラミネート時の温度を上げる、あるいは体積ホログラム転写箔に用いられるヒートシール層の構成材料の熱接着温度を下げる等の方法も考えられるが、前者の方法では、転写温度が高くなることにより、体積ホログラム転写箔の基材に熱シワが発生したり、伸びてしまったりして転写不良が発生しやすくなるという問題点がある。また、後者の方法では、ヒートシール層自体がブロッキングしやすくなり、ロール加工することが困難になるという問題点もある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することが可能な、体積ホログラム積層体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を用い、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と、上記被転写体とが接するように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する積層工程と、上記転写用積層体を用い、上記体積ホログラム転写箔を平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する接着工程と、上記体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明においては、上記接着工程において上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する前に上記積層工程を実施し、当該積層工程において上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接するように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層して転写用積層体を作製した後、上記接着工程において上記転写用積層体を対象として平板転写することにより、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写することができる。また、上記接着工程では平板金型を用いて平板転写が実施されることになるため、転写圧を大きくすることができ、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で接着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
このようなことから、本発明の体積ホログラム層の製造方法によれば、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0011】
本発明においては、上記積層工程が、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを、事後的に剥離可能な程度に仮接着することにより、上記転写用積層体を作製するものであることが好ましい。これにより、上記積層工程を実施した後、上記接着工程を開始するまでの間に、上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が混入してしまうことを、より効果的に防止することができるからである。
【0012】
また本発明は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有する体積ホログラム転写箔および被転写体を、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と、上記被転写体とが接するように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製することができる積層手段と、平板金型を備え、上記体積ホログラム転写箔を上記平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着することができる接着手段と、上記体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離することができる剥離手段と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記積層手段を用いて上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接するように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製した後、上記接着手段を用いて、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着し、その後、上記剥離手段を用いて、体積ホログラム転写箔の基材を剥離することにより、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、体積ホログラム積層体の製造方法、および体積ホログラム積層体の製造装置に関するものである。
以下、これらの発明について順に説明する。
【0017】
A.体積ホログラム積層体の製造方法
まず、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について説明する。上述したように本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を用い、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する積層工程と、上記転写用積層体を用い、上記体積ホログラム転写箔を平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する接着工程と、上記体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離する剥離工程と、を有することを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図1に例示するように、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、基材11と、上記基材11上に形成された剥離性保護層12と、上記剥離性保護層12上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層13と、上記体積ホログラム層13上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層14とを有する体積ホログラム転写箔10、および被転写体21を用い(図1(a))、上記体積ホログラム転写箔10の上記ヒートシール層14と上記被転写体21とが接し、かつ上記ヒートシール層14と上記被転写体21との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔10と上記被転写体21とを積層することにより転写用積層体20を作製する積層工程と(図1(b))、上記転写用積層体20を用い、上記体積ホログラム転写箔10を平板金型30で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔10と上記被転写体21とを接着する接着工程と(図1(c))、上記体積ホログラム転写箔10の上記基材11を剥離する、剥離工程と(図1(d))、を有することを特徴とするものである。なお、図1に示す例においては、上記剥離工程において、上記基材11に加えて、剥離性保護層12、体積ホログラム層13、およびヒートシール層14の一部も剥離されることになる。
【0019】
本発明においては、上記接着工程において上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する前に上記積層工程を実施し、当該積層工程において上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層して転写用積層体を作製した後、上記接着工程において上記転写用積層体を対象として平板転写することにより、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写することができる。また、上記接着工程では平板金型を用いて平板転写が実施されることになるため、転写圧を大きくすることができ、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で接着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
このようなことから、本発明の体積ホログラム層の製造方法によれば、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0020】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、少なくとも上記積層工程と、接着工程と、剥離工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0021】
1.積層工程
まず、本発明に用いられる積層工程について説明する。本工程は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を用い、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と、上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する工程である。
【0022】
(1)体積ホログラム転写箔
まず、本工程に用いられる体積ホログラム転写箔について説明する。本工程に用いられる体積ホログラム転写箔は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有するものである。また、必要に応じてこれら以外の他の構成を有してもよいものである。
【0023】
(体積ホログラム層)
上記体積ホログラム層について説明する。上記体積ホログラム層は、体積ホログラムが記録されたものである。上記体積ホログラム層としては、体積ホログラムが記録されたものであれば特に限定されるものではなく、一般的に公知の体積ホログラム層を用いることができる。このような体積ホログラム層の具体例としては、例えば、カチオン重合性官能基を有するカチオン重合性化合物、およびラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物の重合物を含有し、体積ホログラムが記録されたものを挙げることができる。
【0024】
上記カチオン重合性化合物としては、カチオン重合性官能基を有し、後述するラジカル重合性化合物と併用されることにより、体積ホログラム層を記録することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられるカチオン重合性化合物は、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ環やオキセタン環に代表される環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類が挙げられる。具体例として、エポキシ環含有化合物を挙げることができる。このようなカチオン重合性化合物の例としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。なお、本工程に用いられるカチオン重合性化合物は、1種類のみであってもよく、または2種類以上であってもよい。
【0025】
上記ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性官能基を有し、上述したカチオン重合性化合物と併用されることにより、体積ホログラム層を記録することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられるラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、本工程に用いられるラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以下である場合には、屈折率変調が不十分となるからである。
【0026】
本工程に用いられるラジカル重合性化合物としては少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物が挙げられ、例えば不飽和カルボン酸、及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物が挙げられる。具体例として脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーを挙げることができる。より具体的には、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレンなどが例示される。また、特開昭61−72748号公報に開示されている、硫黄含有アクリル化合物を使用することもでき、例えば、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステル化合物名のうち、「アクリレート」が「メタクリレート」に、「アクリロキシ」が「メタクリロキシ」に、「アクリロイル」が「メタクリロイル」になる化合物を挙げることができる。
【0027】
なお、本工程に用いられるラジカル重合性化合物は、1種類のみであってもよく、または2種類以上であってもよい。
【0028】
上記体積ホログラム層には、必要に応じて上記カチオン重合性化合物、およびラジカル重合性化合物以外の他の化合物が含まれていてもよい。本工程に用いられる他の化合物は、特に限定されるものではなく、任意の機能を有する化合物を適宜選択して用いることができる。中でも本工程においては、上記他の化合物として、通常、光ラジカル重合開始剤系、および光カチオン重合開始剤系が用いられることが好ましい。なお、上記ラジカル重合開始剤系、および光カチオン重合開始剤系については、一般的に公知のものを用いることができる。
【0029】
上記体積ホログラム層の厚みは、所定の体積ホログラム像を記録することができる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上述した構成材料の種類に応じて適宜調整することができる。なかでも本工程に用いられる体積ホログラム層の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。
【0030】
(基材)
次に、本工程に用いられる基材について説明する。本工程に用いられる基材としては、体積ホログラム転写箔を構成する剥離性保護層、体積ホログラム層、およびヒートシール層を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。また、上記基材の厚みは、通常、2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0031】
(剥離性保護層)
上記剥離性保護層は、上述した基材および体積ホログラム層の間に形成されるものであり、被転写体に接着された体積ホログラム転写箔の基材を剥離する際に、容易に基材を剥離することができる剥離性を有し、かつ体積ホログラム層を保護するものである。剥離性保護層に用いられる材料としては、例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したもの等を挙げることができる。また、剥離性保護層の厚みは、通常、0.1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0032】
(ヒートシール層)
上記ヒートシール層は、上述した体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するものであり、体積ホログラム転写箔を用いて体積ホログラム層を被転写体へ転写する際に、体積ホログラム層と被転写体とを接着させる機能を有するものである。
【0033】
上記ヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂としては、被転写体の種類に応じて、体積ホログラム層と被転写体とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの熱可塑性樹脂であっても好適に用いることができる。なお、本工程に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0034】
本工程に用いられるヒートシール層には、上記熱可塑性樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。本発明に用いられる添加剤としては、例えば、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0035】
本工程に用いられるヒートシール層の厚みは特に限定されるものではなく、体積ホログラム転写箔の種類や、被転写体の種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
【0036】
(他の構成)
本工程に用いられる体積ホログラム転写箔は、少なくとも上記基材、剥離性保護層、体積ホログラム層、およびヒートシール層を有するものであるが、必要に応じてこれら以外の任意の構成を有するものであってもよい。任意の構成としては、所望の機能を付与することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に好適に用いられる任意の構成としては、画像形成層を挙げることができる。上記画像形成層は、上記体積ホログラム層と上記ヒートシール層との間に形成されるものであり、体積ホログラム転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層と共に被転写体に転写され、製造される体積ホログラム積層体に意匠性や偽造防止機能等の諸機能を付与することができるものである。
【0037】
画像形成層としては、本発明によって製造される体積ホログラム積層体に画像を付与することにより、意匠性や偽造防止機能等を付与することできるものであれば特に限定されるものではない。このような画像形成層としては、本発明の体積ホログラム転写箔を用いて製造される体積ホログラム積層体の用途に応じて、所望の画像を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、任意の材料によって画像が形成されたものを用いることができる。ここで、本工程に用いられる画像形成層は、通常、画像形成層自体がパターン状に形成されることによって画像を構成するものであり、画像形成層に画像が描画されるものではない。なお、本工程に用いられる画像形成層によって形成される画像は、本発明の体積ホログラム転写箔を用いて製造する体積ホログラム積層体の用途に応じて、所望の画像とすることができる。なお、上記「画像」とは、パターン、線画、文字、図形、記号等のみならず、単に全面が着色された態様も含むものである。
【0038】
(2)被転写体
本工程に用いられる被転写体としては、特に限定されるものではなく、例えば、紙、合成紙、プラスチック、金属からなるフィルム、シート、カード、あるいはガラス板等の透明、または不透明な材質でできたものが挙げられる。プラスチックとしては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
【0039】
(3)転写用積層体の作製方法
次に、本工程において上記体積ホログラム転写箔および被転写体を用い、転写用積層体を作製する方法について説明する。本工程においては上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する。
【0040】
本工程において上記転写用積層体を作製する方法としては、上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法しては、例えば、上記被転写体上に上記ヒートシール層を配置し、両者をロールラミネーターで圧着させる方法や、体積ホログラム転写箔と被転写体を接触させた状態で減圧しながら積層する方法等を挙げることができる。
【0041】
本工程において作製される転写用積層体においては、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが接着されていてもよく、あるいは接着されていなくてもよい。また、接着されている場合においては、事後的に剥離が不可能な程度に完全に接着されていてもよく、あるいは、事後的に剥離可能な程度に仮接着されていてもよい。本工程において作製される転写用積層体はこれらの何れの態様のものであってもよいが、仮接着された態様の場合は、本工程から後述する接着工程までの間に、上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が混入してしまうことをより効果的に防止することができると同時に、事後的に剥離が可能であることから、体積ホログラム層の部分的な転写も可能になるという利点がある。
【0042】
なお、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが接着(仮接着を含む)された転写用積層体を作製する方法としては、例えば、両者を圧着する方法や熱接着する方法等を挙げることができる。なかでも、本工程においては体積ホログラム転写箔のヒートシール層と被転写体とが接するように積層されるため、積層時に加熱することによりヒートシール層を接着層として用いて接着させることが可能である。ここで、加熱の程度を制御することにより、事後的に剥離不能な程度に完全に接着させることもでき、また事後的に剥離可能な程度に仮接着させることもできる。より具体的には、完全に接着させるには、100℃〜200℃程度で加熱することが好ましく、仮接着させるには25℃〜100℃程度で加熱することが好ましい。
【0043】
(4)転写用積層体
本工程において作製される転写用積層体は、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と、上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを積層された構成を有するものとなる。ここで、上述したように、本工程において作製される転写用積層体は、体積ホログラム転写箔と被転写体とが接着(仮接着を含む)していてもよく、または接着していなくてもよい。
【0044】
2.接着工程
次に、本発明に用いられる接着工程について説明する。本工程は、上述した積層工程において作製された転写用積層体を用い、当該転写用積層体を構成する上記体積ホログラム転写箔を平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着する工程である。本工程においては、上記接着工程において作製された転写用積層体を用いることにより、体積ホログラム転写箔と被転写体との間に空気が混入することなく、両者を接着することができる。
【0045】
本工程においては、平板金型を用い、これを転写用積層体を構成する体積ホログラム転写箔の所定の位置に押し当てて、加熱された箇所についてのみ体積ホログラム転写箔と被転写体とを接着させることになる。なお、本工程において接着される箇所は、事後的に剥離が不可能な程度に十分に接着されることになる。
【0046】
本工程において、体積ホログラム転写箔と被転写体とが接着される態様としては、体積ホログラム転写箔の一部が被転写体と接着される態様であってもよく、または体積ホログラム転写箔の全体が被転写体と接着される態様であってもよい。また、前者の態様においては、スポット的に体積ホログラム転写箔と被転写体とが接着される態様であってもよく、または帯状に接着される態様であってもよい。
【0047】
本工程に用いられる平板金型については、一般的に転写法に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、本工程に用いられる平板金型の温度としては、上記体積ホログラム転写箔のヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、通常、100℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、120℃〜180℃の範囲内であることがより好ましい。温度が上記範囲よりも高いと、体積ホログラム転写箔の基材に熱シワ等が発生してしまうおそれがあり、また上記範囲よりも低いと体積ホログラム転写箔と被転写体との密着性が不十分になってしまうおそれがあるからである。
【0048】
3.剥離工程
次に、本発明に用いられる剥離工程について説明する。本工程は上述した接着工程において、被転写体に接着された体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離する工程である。
【0049】
本工程において、体積ホログラム転写箔から基材を剥離する方法としては、特に限定されるものではなく、被転写体の種類や、体積ホログラム転写箔の形態等に応じて任意の方法を用いることができる。例えば、体積ホログラム転写箔が長尺状のものである場合、本工程において基材を剥離する方法としては、例えば、基材を連続的にロール状に巻き取る方法等を用いることができる。また、転写後に体積ホログラム転写箔と被転写体との間に、棒状や刃状の部材、もしくはエアーナイフ等を導入して強制的に剥離する方法などが挙げられる。
【0050】
なお、本工程においては少なくとも上記体積ホログラム転写箔の基材を剥離するものであるが、例えば、上述した接着工程において体積ホログラム転写箔と被転写体とが部分的に接着されている場合には、接着されていない箇所の体積ホログラム転写箔そのものも同時に被転写体上から剥離されることになる(図1参照)。
【0051】
4.体積ホログラム積層体の製造方法
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記積層工程、接着工程、および剥離工程を有するものであるが、本発明においてこれらの各工程は、連続的に実施されてもよく、または別個独立に実施されてもよい。上記各工程を連続的に実施する方法としては、例えば、上記体積ホログラム転写箔、および被転写体としてロール状に巻き取られた長尺状のものを用い、両者を巻き出しながら連続的に積層工程を実施することにより、長尺状の転写用積層体を作製し、次いで作製された転写用積層体を巻き取ることなく、そのまま搬送して連続的に接着工程を実施した後、剥離工程を実施して体積ホログラム転写箔の基材等を連続的に剥離しながら、作製された体積ホログラム積層体をロール状に巻き取るという方法を挙げることができる。一方、上記各工程を別個独立に実施する方法としては、例えば、上記体積ホログラム転写箔、および被転写体としてロール状に巻き取られた長尺状のものを用い、両者を巻き出しながら連続的に積層工程を実施することにより、長尺状の転写用積層体を作製した後、一旦ロール状に巻き取り、次いで、ロール状に巻き取られた転写用積層体を巻き出しながら、接着工程を実施して、接着された転写用積層体を再度ロール状に巻き取り、最後に、接着された転写用積層体を再度巻き出しながら剥離工程を実施し、製された体積ホログラム積層体をロール状に巻き取るという方法を挙げることができる。
【0052】
B.体積ホログラム積層体の製造装置
次に、本発明の体積ホログラム積層体の製造装置について説明する。上述したように本発明の体積ホログラム積層体の製造装置は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を、上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製することができる積層手段と、平板金型を備え、上記体積ホログラム転写箔を上記平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着することができる接着手段と、上記体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離することができる剥離手段と、を有することを特徴とするものである。
【0053】
本発明によれば、上記積層手段を用いて上記体積ホログラム転写箔の上記ヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製した後、上記接着手段を用いて、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着し、その後、上記剥離手段を用いて、体積ホログラム転写箔の基材を剥離することにより、簡易な方法で、空気が封入されることなく体積ホログラム層を被転写体へ転写し、体積ホログラム層と被転写体とが十分な強度で密着された体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0054】
本発明の体積ホログラム積層体の製造装置は、少なくとも上記積層手段、接着手段、および剥離手段を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について順に説明する。
【0055】
1.積層手段
まず、本発明に用いられる積層手段について説明する。本発明に用いられる積層手段は、体積ホログラム転写箔および被転写体を、上記体積ホログラム転写箔のヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製することができるものである。ここで、上記体積ホログラム転写箔は、基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有するものである。
【0056】
本工程に用いられる積層手段としては、体積ホログラム転写箔および被転写体を、上記体積ホログラム転写箔のヒートシール層と上記被転写体とが接し、かつ上記ヒートシール層と上記被転写体との間に空気が封入されないように上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とが積層された転写用積層体を作製することができるものであれば特に限定されるものではない。このような積層手段としては、例えば、ロールラミネーターを備え、体積ホログラム転写箔と被転写体とを圧着させる手段や、体積ホログラム転写箔と被転写体を接触させた状態で減圧しながら積層する手段等を挙げることができる。
【0057】
2.接着手段
次に、本発明に用いられる接着手段について説明する。本発明に用いられる接着手段は、平板金型を備え、上記体積ホログラム転写箔を上記平板金型で加熱することにより、上記体積ホログラム転写箔と上記被転写体とを接着することができるものである。本発明に用いられる接着手段は、平板金型を備えるものであるが、通常は、当該平板金型を加熱する加熱手段や、体積ホログラム転写箔を加熱するために平板金型を移動させる移動手段等が用いられる場合もある。
なお、上記接着手段に用いられる平板金型については、一般的に転写法に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0058】
3.剥離手段
次に、本発明に用いられる剥離手段について説明する。本発明に用いられる剥離手段は、体積ホログラム転写箔の上記基材を剥離するものである。ここで、本発明に用いられる剥離手段は、少なくとも上記体積ホログラム転写箔の基材を剥離するものであるが、例えば、上述した接着手段により体積ホログラム転写箔と被転写体とが部分的に接着されている場合には、接着されていない箇所の体積ホログラム転写箔そのものも同時に被転写体上から剥離されることになる。
【0059】
本発明に用いられる剥離手段としては、少なくとも上記体積ホログラム転写箔の基材を剥離することができるものであれば特に限定されるものではなく、被転写体の種類や、体積ホログラム転写箔の形態等に応じて任意の方法を用いることができる。例えば、体積ホログラム転写箔が長尺状のものである場合、剥離手段としては巻き取りロールを備えるものを用いることができる。これにより、基材を連続的に巻き取ることによって基材を剥離することができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0062】
[実施例1]
(離型フィルム/体積ホログラム形成用材料層/離型フィルムの第1積層体)
表面離型性PETフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60、厚み50μm)上に、体積ホログラム形成用材料として、下記組成からなる体積ホログラム形成用材料を、乾燥膜厚10μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、塗工面に表面離型処理PETフィルム(東セロ(株)製、SP−PET、厚み50μm)をラミネートし、第1積層体を作製した。
(体積ホログラム形成用材料)
ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000) ・・・ 500重量部
3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩 ・・・ 5重量部
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート ・・・ 50重量部
2,2−ビス〔4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン
・・・ 800重量部
ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル ・・・ 800重量部
【0063】
(基材/剥離性保護層の第2積層体)
PETフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60、厚み50μm)上に、剥離性保護層として、ハクリニスUVC−5W((株)昭和インク工業所製)を乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、第2積層体を作製した。
【0064】
(ヒートシール層/離型フィルムの第3積層体)
表面離型性PETフィルム(東セロ(株)製、SP−PET、厚み50μm)上に、ヒートシール剤(中央理化工業(株)製、EC1700)を乾燥膜厚2μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、第3積層体を作製した。
【0065】
(体積ホログラム転写箔の作製)
第1積層体に532nmの波長のレーザー光を用いて体積ホログラムを記録し、100℃、10分間加熱した後、一方の離型フィルムを剥離し、その剥離面に第2積層体をその剥離性保護層側から80℃でラミネートし、基材/剥離性保護層/体積ホログラム層/離型フィルムの積層構成とした。
得られた積層構成に、高圧水銀灯を使用して2500mJ/cmの照射量で体積ホログラムを定着処理した後、離型フィルムを剥離し、その剥離面に第3積層体をそのヒートシール層側から100℃でラミネートし、基材/剥離性保護層/体積ホログラム層/ヒートシール層/離型フィルムからなる体積ホログラム転写箔を作製した。
【0066】
(被着体への転写)
上記で作製した体積ホログラム転写箔を5cm角にカットし、その離型フィルムを剥離、むき出しとなったヒートシール層面と被転写体であるPVCカード表面とを対向させた状態で、市販のラミネータ装置を用いて、室温、速度1m/minでラミネートした。その後、ホットスタンプ装置(ナビタス(株)製)にて、3cm角の平板金型を用い、150℃、0.1secの条件で加熱・加圧し、体積ホログラム転写箔の基材及び平板金型で転写されなかった体積ホログラム転写箔を剥離してPVCカード上に体積ホログラム転写箔を転写した。転写領域は空気が封入されることなく綺麗な転写部であった。
また、転写部の上からセロハンテープを貼りつけ、90°の角度でセロハンテープを剥離して密着性を確認したところ、体積ホログラムとPVCカードとは剥離せず、密着性は良好であった。
【0067】
[比較例1]
実施例1の被着体への転写において、ラミネータ装置を使用せずに、体積ホログラム転写箔をPVCカード表面に重ねた状態でホットスタンプ装置にて加熱・加圧した以外は、同様な方法でPVCカードに転写した。
その結果、転写部中央に体積ホログラム転写箔とPVCカード界面で空気が封入されていた。また、転写部の上からセロハンテープを貼りつけ、90°の角度でセロハンテープを剥離して密着性を確認したところ、空気が封入された部分の体積ホログラム転写箔がPVCカード表面から剥離した。
【0068】
[実施例2]
実施例1で作製した体積ホログラム転写箔を幅3cm、長さ1mで切断して短冊状の体積ホログラム転写箔ロールを作製し、被転写体として易接着PETフィルム(東レ(株)製、ルミラーU12、厚み50μm)を、ラミネータ装置での接着温度を130℃とした以外は、実施例1と同様な方法で転写した。
その結果、転写領域全域で空気が封入されることなく綺麗な転写部であり、実施例1と同様の方法で密着性を確認したところ、体積ホログラムと易接着PETとは剥離せず、密着性は良好であった。
【符号の説明】
【0069】
10 … 体積ホログラム転写箔
11 … 基材
12 … 剥離性保護層
13 … 体積ホログラム層
14 … ヒートシール層
20 … 転写用積層体
21 … 被転写体
30 … 平板金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された剥離性保護層と、前記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を用い、
前記体積ホログラム転写箔の前記ヒートシール層と、前記被転写体とが接するように前記体積ホログラム転写箔と前記被転写体とを積層することにより転写用積層体を作製する積層工程と、
前記転写用積層体を用い、前記体積ホログラム転写箔を平板金型で加熱することにより、前記体積ホログラム転写箔と前記被転写体とを接着する接着工程と、
前記体積ホログラム転写箔の前記基材を剥離する、剥離工程と、
を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層工程が、前記体積ホログラム転写箔と前記被転写体とを、事後的に剥離可能な程度に仮接着することにより、前記転写用積層体を作製するものであることを特徴とする、請求項1に記載の体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項3】
基材と、前記基材上に形成された剥離性保護層と、前記剥離性保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有する体積ホログラム転写箔、および被転写体を、前記体積ホログラム転写箔の前記ヒートシール層と、前記被転写体とが接するように前記体積ホログラム転写箔と前記被転写体とが積層された転写用積層体を作製することができる積層手段と、
平板金型を備え、前記体積ホログラム転写箔を前記平板金型で加熱することにより、前記体積ホログラム転写箔と前記被転写体とを接着することができる接着手段と、
前記体積ホログラム転写箔の前記基材を剥離することができる剥離手段と、
を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−168451(P2012−168451A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30953(P2011−30953)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】