説明

体積位相型ホログラム記録用感光性組成物、ホログラム記録媒体とその製法、およびホログラム記録方法

【課題】
体積位相型ホログラム記録用感光性組成物、ホログラム記録媒体とその製法、およびホログラム記録方法の提供。
【解決手段】
ラジカル重合系(A)、カチオン重合系(B)、およびバインダーポリマー(C)からなり、光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物において、
カチオン重合系(B)の一構成要素であるカチオン重合開始剤(b2)が、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤であることを特徴とする体積位相型ホログラム記録用感光性組成物。
なし。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体積位相型ホログラム記録材料に関する。さらに詳しくは、光干渉パターンの明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される新規な体積位相型ホログラム記録材料用組成物、特にホログラムに要求される基本特性である透明性、回折効率、屈折率変調、加工性に優れた記録媒体を作製し得るホログラム記録材料組成物に関し、さらにこれから得られたホログラム記録媒体とその媒体の製造法、およびホログラム記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バインダーポリマーをベース樹脂として含有し、ラジカル重合系およびカチオン重合系を組み合わせたホログラム記録材料用組成物が公知である。特に、ラジカル重合系を構成するラジカル重合性モノマーとして、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有する常温で固体のラジカル重合性化合物を使用した組成物が良好な結果を与えるものとして代表される(特許文献1)。ところが、記録後のホログラムは回折効率を増幅させるために加熱処理を行った後、カチオン重合性化合物を硬化させるためにUVなどの光を照射するという、煩雑な手法をとっている。
【0003】
これに対し、光照射による光カチオン重合によらず、加熱による熱カチオン重合による方法が従来より知られている(特許文献2〜6)。これによると工程上の煩雑さは回避できるが、熱カチオン重合開始剤として、先行技術に開示の例えばジアゾニウム塩類を用いた場合は暗所で反応が進行するという欠点があり、またヨードニウム塩類に代表されるオニウム塩類、あるいは酸無水物等を用いた場合はイオン性不純物を放出しやすく、耐湿性の低下をまねくといった欠点がみられる等、実用上問題があった(非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平13−109360号公報
【特許文献2】特開平08−101501号公報
【特許文献3】特開平05−94014号公報
【特許文献4】特開平05−210343号公報
【特許文献5】特開平05−107999号公報
【特許文献6】特開平05−181271号公報
【非特許文献1】高分子35巻2月号第116−119頁(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来と同様に高い透明性、回折効率及び屈折率変調を有するホログラムを得ることができ、かつ、ホログラム記録後の後処理工程が簡便であり、更には該ホログラムの耐湿性に優れたホログラムを与える、新規な体積位相型ホログラム記録用感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、下記の新規なホログラム記録材料組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、ラジカル重合系(A)、カチオン重合系(B)、およびバインダーポリマー(C)からなり、光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物において、カチオン重合系(B)の一構成要素であるカチオン重合開始剤(b2)が、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤であることを特徴とする体積位相型ホログラム記録用感光性組成物である。
【発明の効果】
【0007】
従来と同様に高い透明性、回折効率及び屈折率変調を提供し得る体積位相型ホログラム記録用感光性組成物であって、これから作製されるホログラム記録媒体は露光後においては加熱処理工程のみで回折効率及び屈折率変調の上昇とカチオン重合性モノマー及び未反応のラジカル重合性化合物の硬化を行うことができるため作業の簡便化が図られた。併せて、媒体自体の耐湿性が改善でき、また媒体の着色も軽減された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるラジカル重合系(A)とは、実質的にラジカル重合性化合物(a1)およびラジカル重合開始剤(a2)とからなる硬化システムであり、その他、必要な増感色素(a3)等を含有していてもよい。
また、カチオン重合系(B)とは、実質的にカチオン重合性化合物(b1)およびカチオン重合開始剤(b2)とからなる硬化システムである。
本発明に係る新規なホログラム記録材料組成物は、本質的にこれらラジカル重合系(A)、カチオン重合系(B)およびバインダーポリマー(C)からなる混合物であるが、その他添加剤が含まれてよい。当該組成物は、それを用いて作製されたホログラム記録媒体がホログラム性能を発揮し得るに十分な透明性を有する組成でなければならない。
【0009】
本発明においては、光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物において、
(1)ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、およびバインダーポリマー(C)の混合物を基本組成とし、
(2)ここに重合開始剤として、可視光領域の可干渉光の干渉によって得られる干渉縞(第一の光)を露光することによりラジカル重合性化合物(a1)を重合させる光ラジカル重合開始剤(a2)、光ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いられる増感色素(a3)、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)を含み、
(3)ラジカル重合性化合物(a1)の屈折率が、カチオン重合性化合物(b1)とバインダーポリマー(C)との屈折率との加重平均値よりも大きいことを特徴とする体積位相型ホログラム記録用感光性組成物が好ましい。
【0010】
ラジカル重合性化合物(a1)
本発明で用いられるラジカル重合性化合物(a1)は、バインダーポリマー(C)および、カチオン重合性化合物(b1)にも相溶性が良いものであればよく、エチレン性不飽和二重結合を有するアクリレートモノマー、メタクリルモノマー、ビニルモノマー、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選ばれるものであってよい。
【0011】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルタメクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、tert- ブチルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0012】
ビニルモノマーの具体例としては、ビニルアセテート、4−ビニルアニリン、9−ビニルアントラセン、4−ビニルアニソール、ビニルベンズアルデヒド、ビニルベンゾエイト、ビニルベンジルクロライド、4−ビニルビフェニル、ビニルブロマイド、N−ビニルカプロラクタム、ビニルクロロホルメート、ビニルクロトネート、ビニルシクロヘキサン、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキサイド、ビニルシクロペンタン、ビニルデカノエート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニルカルボネート、ビニルトリチオカルボネート、ビニル 2−エチルヘキサノエート、ビニルフェロセン、ビニリデンクロライド、ビニルホルメート、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルナフタレン、ビニルネオデカノエート、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、2−(ビニルオキシ)エタノール、4−ビニルフェニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、2−ビニルピリジン、1−ビニルー2−ピロリジノン、ビニルスルホン、ビニルトリメチルシラン等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0013】
ラジカル重合性化合物(a1)としてはカチオン重合性化合物(b1)の屈折率との差が大きいほど干渉縞記録の屈折率変化を大きくとることができる。ラジカル重合性化合物の屈折率がカチオン重合性化合物の屈折率より大きいことが好ましい。ラジカル重合性化合物は、より好ましくは屈折率が1.55以上のものであり、例えば以下に挙げる化合物である。
【0014】
ラジカル重合性化合物(a1)は、ビス(チオフェニル)スルフィド骨格、ハロゲン化フェニル骨格、カルバゾール骨格、フルオレン骨格を有するものであってもよい。
ビス(チオフェニル)スルフィド骨格を持つモノマーの具体例としては、ビス(4−アクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(4−アクリロイルチオ−2−シクロヘキセン−1−イル)スルフィド、ビス(2−アクリロイルチエニル)スルフィド、ビス(3−アクリロイルチオピリジル)スルフィド、ビス(5−アクリロイルチオピラニル)スルフィド、ビス(5−(メタ)アクリロイルチオ1,4−ジチアニル)スルフィド等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0015】
ハロゲン化フェニル骨格を持つモノマーの具体例としては、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,6−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、4,6−ジクロロ−1−ビニルベンゼン、2,6−ジブロモ−3−ヒドロキシ−フェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリクロロ−1−ビニルベンゼン、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシベンゼン、2,4−ジブロモ−6−メチル−1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシベンゼン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシベン等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0016】
カルバゾール骨格を持つモノマーの具体例としては、1−ビニルカルバゾール、2−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、9−ビニルカルバゾール、1−(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、2−(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、3−(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、9−(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、1,9−ジビニルカルバゾール、1,5,9−トリビニルカルバゾール、2,7−ジ(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール、2−メチル−1,9−ジビニルカルバゾール、1,9−ジ(メタ)アクリロイルオキシカルバゾール等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0017】
フルオレン骨格を持つモノマーは、下記一般式[I]で示されるものであってよい。
【化1】

[式中、R1およびR2は互いに同一もしくは異なる1価の有機基を意味し、そのうち少なくとも一方は末端に(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。M1およびM2は、互いに同一もしくは異なり、−(OR3n−(R3は水酸基を有してもよい低級アルキレン基、nは0、1または2)で示される2価の有機基または単結合を意味する。X1およびX2は、互いに同一もしくは異なり、水素原子または低級アルキル基を意味する。]
【0018】
ここで、R1およびR2のうち、(メタ)アクリロイル基を有しない有機基は、炭素数1〜3の低級アルキル基であってよい。
1およびM2の−(OR3n−において、nが1または2である場合、低級アルキレン基Rの炭素数は好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2である。OR3としては、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等が例示され、−(OR3n−としては、ジオキシメチレン、ジオキシエチレン等が例示される。低級アルキレン基Rが水酸基を有している場合、水酸基は同アルキレン基のどの位置にあってもよいが、水酸基を有するアルキレンは例えば(2−ヒドロキシ)プロピレンである。
有機基X1およびX2は、メチル、エチル、プロピル等の炭素数1〜5のアルキル基であってよい。
【0019】
ラジカル重合性化合物(a1)のフルオレン骨格を持つモノマーの具体例としては、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル}フルオレン等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0020】
良好な成膜性および回折効率等の光学特性を得るためには、有機基R1およびR2は共にアクリロイル基およびアクリロイルオキシ基であり、かつ、M1およびM2の−(OR3)n−においてnは0、1または2であり、nが1または2である場合は低級アルキレン基Rの炭素数は1〜2であり、かつ、X1およびX2は水素原子であることが好ましい。
【0021】
上記の条件を満たす化合物のうち、好ましい化合物としては、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン(新日鉄化学社製、「9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ASF400」)、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン(新日鉄化学社製、「ビスフェノールフルオレンジメタクリレート」)、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガス社製、「ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、BPEF−A」)、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガス社製、「ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、BPEF−MA」)、9,9−ビス[4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル]フルオレン(大阪ガス社製、「ビスフェノキシエタノールフルオレンジエポキシアクリレート、BPEF−GA」)、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン(大阪ガス社製、「ビスクレゾールフルオレンジエポキシアクリレート、BCF−GA」)が例示される。
【0022】
特に好ましい化合物としては、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが例示される。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよく、単独で用いても2以上の組み合せで用いてもよい。
【0023】
光ラジカル重合開始剤(a2)
本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤(a2)としては、可視光領域のコヒーレンス性に優れた第一の光の干渉縞を照射することによりラジカルを発生するものである。例えば、カルボニル化合物、アミン化合物、アリールアミノ酢酸化合物、有機錫化合物、アルキルアリールホウ素塩、トリハロゲノメチル置換トリアジン化合物、有機過酸化物、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物が好ましく、有機過酸化物、ビスイミダゾール誘導体が特に好ましい。
これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0024】
例えば、有機過酸化物として3, 3′,4, 4′−テトラ(tert- ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンが、またビスイミダゾール誘導体として2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾリルが、更にはチタノセン化合物としてビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムがそれぞれ好ましく例示される。有機過酸化物が特に好ましい。
【0025】
光増感色素(a3)
光増感色素(a3)は、紫外線から可視光線の領域の光を効率よく吸収するため、光ラジカル重合開始剤(a2)と組み合わせて、複合型光ラジカル重合開始剤として使用される。
好ましい光増感剤(a3)としては、ミヒラケトン、アクリジンイエロー、メロシアニン、メチレンブルー、カンファーキノン、エオシン、脱カルボキシル化ローズベンガル等が挙げられる。
光増感色素は、可視領域の光に吸収を示すものであればよく、上記以外に、例えば、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、ケトクマリン誘導体、キノロン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、チアジン系色素等も使用可能であり、更には「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、 1986 年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、 1983 年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、 1986 年)に記載される光増感色素も用いることができる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0026】
クマリン誘導体として、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジオクチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンジミダゾリル)-7-ジエチルアミノ)クマリンが例示される。
【0027】
ケトクマリン誘導体としては、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3,3'-カルボニルビス-7-ジエチルアミノクマリン-7'-ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、3,3'-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)が例示される。
【0028】
ベーススチリル誘導体としては、2-[p-(ジメチルアミノ)スチリル]ベンゾチアゾール、2-[p-(ジメチルアミノ)スチリル]ナフト[1,2-d]チアゾール、2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾールが例示される。
【0029】
メロシアニン誘導体としては、3-エチル-5-[(3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]-2-チオキソ-4-オキサゾリジノン、5-[(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)エチリデン]-3-エチル-2-チオキソ-4-オキサゾリジノンが例示される。
【0030】
本発明において特に好ましい複合型光ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤として有機過酸化物またはビスイミダゾール誘導体を用いて光増感色素と組み合わせた場合である。
【0031】
有機過酸化物−光増感色素の組み合わせの具体例としては、3, 3′,4, 4′−テトラ(tert- ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンと、林原生物化学研究所社製の光増感色素であるNKX653、NKX3883、NKX1880、NKX1595、NKX1695、NK4256、NK1886、NK1473、NK1474、NK4795、NK4276、NK4278、NK91、NK1046、NK1237、NK1420、NK1538、NK3590との組み合わせが好ましい。
【0032】
光ラジカル重合開始剤として有機過酸化物またはビスイミダゾール誘導体を用いた場合の光増感色素はクマリン系色素が好ましい。
【0033】
カチオン重合性化合物(b1)
本発明で用いられるカチオン重合性化合物(b1)は、いずれの成分とも相溶性がよく、ラジカル重合性化合物(a1)よりも屈折率が極力低く、常温常圧で液体であることが好ましい。このようなカチオン重合性化合物を用いることによって、ホログラム記録前では全組成物が十分に相溶しているが、ホログラム記録が開始されるとともにラジカル重合性化合物(a1)の拡散移動が起こりやすくなる。さらに、屈折率が低いものを選択することによって、ラジカル重合性化合物(a1)の拡散移動によるカチオン重合性化合物(b1)との分離において、両者の間でわずかな分離しか起こらなくても、大きな屈折率差(屈折率変調)を得ることができる。
当該カチオン重合性化合物(b1)は、カチオン重合開始剤(b2)の存在下、好ましくは60℃以上の温度で加熱することで重合し得るものである。
【0034】
カチオン重合性化合物(b1)としては、オキシラン構造及びオキセタン構造のいずれかを1分子中に少なくとも1つ以上、あるいは両者をそれぞれ少なくとも1つ以上含有する化合物を例示できる。
【0035】
グリシジルエーテル類としては、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオネンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トチメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが例示できる。
【0036】
オキセタン系化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル〕ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、3-エチル-3-(2エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-{〔3-(トリエトキシシリル)プロポキシ〕メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキシサン、フェノールノボラックオキセタンが例示できる。
【0037】
さらに、他に使用できる化合物としては、重合収縮がほとんどないスピロオルソエステル、スピロオルソカーボネート、ビシクロオルソカーボネート類や3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポシキシクロヘキサンカルボキシレート(CY179)も有用である。
【0038】
上記例示化合物は2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。また、単独で用いても2以上の組合わせで用いてもよい。特にオキシラン化合物とオキセタン化合物を混合して使用したとき、カチオン重合速度が上昇し、かつ、高分子量のポリマーが形成されるため好適に使用できる。
【0039】
熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)
本発明において特徴的に使用されるカチオン重合開始剤(b2)は、アルミニウム錯体とアリールシラノールの組合せから成る熱潜在性カチオン重合開始剤である。
【0040】
本発明で用いられるアルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)は、干渉露光工程では光開始機能を有しないことを前提として、常温では開始剤としての機能を有しないものであって、それ以上の温度、例えば好ましくは60℃以上の温度条件下でカチオン重合性化合物(b1)を重合させ得るカチオン重合開始能を発現するものであればよく、具体的には下記式のアルミニウム錯体[II]とアリールシラノール[III]の組合せが例示される。
【0041】
【化2】

[式中、R4、R6は互いに同一または異なって炭素数が1から12の置換基を有してもよいアルキル基を意味し、R5は置換基を有していてよい炭素原子を意味する。]
【0042】
【化3】

[式中、R7、R8は互いに同一または異なって炭素数が1から12の置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を意味する。mは0から3の整数である。]
【0043】
アルミニウム錯体中、R4およびR5はそれらに挟まれた炭素原子およびその他の原子と共同してアリール基を形成するものも含まれるものとする。形成されたアリール基は置換基を有していてもよい。
【0044】
アルミニウム錯体の具体例としては、下記式で具体的に表される、i)トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ii)トリス(エチルアセトアセタート)アルミニウム、iii)トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムが好ましく挙げられる。
【化4】

【0045】
アリールシラノ-ル中、R7が複数個含まれる場合は、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。OR8についても同様である。R7はフェニル基が好ましい。
【0046】
アリールシラノールの具体例としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランが挙げられる。
【0047】
バインダーポリマー(C)
本発明で用いられバインダーポリマー(C)は、ラジカル重合性化合物(a1)およびカチオン重合性化合物(b1)と相溶性が良く、有機溶媒中で不溶部を含有せず完全に溶解しうるものであればよい。代表的なものは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、または、該モノマーと、これと共重合可能な共重合性モノマーとの共重合体、ジフェノール化合物とジカルボン酸化合物の縮合重合体、分子内に炭酸エステル基を有する重合体、分子内に−SO2−基を有する重合体、セルロース誘導体、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0048】
バインダーポリマー(C)の具体例としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ−1,2−ジクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ−α−ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−o−メチルスチレン、ポリ−p−メチルスチレン、ポリ−p−フェニルスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリアリーレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、透明ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられる。
バインダーポリマー(C)の上記例示化合物は、単独で用いても2以上の組合わせで用いてもよい。
【0049】
バインダーポリマー(C)はホログラムの用途、応用等により種々選択することができる。良好な成膜性および回折効率等の光学特性を得るためには、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、セルロースアセテートブチラート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルホルマール等が好ましく用いられる。
【0050】
より良好な耐熱性、成膜性および回折効率等の光学特性を得るためには、バインダーポリマー(C)は、100℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体を構成する(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルの環状脂肪族部分は、ボルニル骨格、イソボルニル骨格またはノルボルニル骨格を有するものであってよい。(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体を構成する(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルの例としてはボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。後者の場合は共重合体は2種以上の(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの3元以上の共重合である。
さらに良好な耐熱性を持つホログラムを得るためには、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体のガラス転移温度は130℃以上であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体は、その1種を用いてもよいし、2種以上の組合わせを用いてもよい。
【0051】
組成比
本発明の体積位相型ホログラム記録用感光性組成物の各成分の組成比は、ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、バインダーポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(a2)、増感色素(a3)、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)の合計100重量部に対して、(a1)は10〜70、(b1)は10〜70、(C)は10〜70、(a2)は0.5〜15、(a3)は0.01〜1、(b2)は0.5〜15がそれぞれ好ましい。更に好ましくは、(a1)は15〜50、(b1)は15〜50、(C)は15〜50、(a2)は1〜8、(a3)は0.05〜0.5、(b2)は1〜8が望ましい。
【0052】
他添加剤
本発明によるホログラム記録材料組成物は、必要に応じて、増粘剤、熱重合禁止剤、連鎖移動剤等の添加剤や、溶媒等を含むことができる。
増粘剤としては無機微粒子、例えばシリカゲルの微粒子としてダイソー社製の「ダイソーゲルSPシリーズ」、富士シリシア化学社製の「サイリシア」や「フジシリカゲル」、シオノギ製薬社製の「カープレックス」、日本アエロジル社製の「アエロジル」、トクヤマ社製の「レオロシール」、「トクシール」、「ファインシール」等が使用できる。または有機微粒子、例えば特開平10−72510、特開平10−310684各公報に記載の方法で作製され得るジアリルフタレート系ポリマー、若しくは「新材料シリーズ『超微粒子ポリマーの最先端技術』」(シーエムシー、室井宗一監修、1991年)に記載のある花王社製「PB,200シリーズ」、鐘紡社製「ベルパールシリーズ」、積水化成品社製「テクポリマーシリーズ」、積水ファインケミカル社製「ミクロパールシリーズ」、綜研化学社製「MRシリーズ」「MPシリーズ」等が使用できる。これら微粒子の粒径はホログラムの膜厚よりも小さければよく、通常は0.1〜20nmの範囲が好ましい。
【0053】
有機溶媒は、粘度調整、相溶性調節のほか、製膜性等を向上させるために有効であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒等がよく用いられる。この場合、溶媒添加により溶液、懸濁液どちらになってもよいが、溶液になるものが好ましい。しかしながら、水は、粘度調整、相溶性調節、製膜性等を阻害するので、使用できない。水はエマルジョン形態でも媒質として使用できない。
溶媒の使用量は、ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、バインダーポリマー(C)の合計100重量部に対して0.5〜1000重量部程度である。
【0054】
熱重合禁止剤の例としては、生成したラジカルを消去する働きのある、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、tert−ブチルカテコール、ナフチルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0055】
連鎖移動剤の例としては、α−メチルスチレンダイマー、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、tert−ブチルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、プロピレン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0056】
組成物の調製方法
ホログラム記録材料組成物を調製するには、例えば、ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、バインダーポリマー(C)、ラジカル重合開始剤(a2)、増感色素(a3)及び熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)、あるいは上記任意添加成分を、ガラスビーカー等の耐有機溶媒性容器に入れて、全体を撹拌する。この場合、固体成分の溶解を促進するために、組成物の変性が生じない範囲で、これを例えば40〜90℃程度に加熱してもよい。
【0057】
媒体の製造方法
本発明による体積位相型ホログラム記録材料組成物を用いてホログラム記録媒体を作製するには、同記録材料組成物を基板の片面に塗布し、生じた塗膜すなわち記録層(記録用感光膜)と基板とからなる2層構造の記録媒体を得る。また、必要に応じて、基板上の記録層の上にフィルム状、シート状ないしは板状の保護材を被せて3層構造体を得る。記録層の形成工程で有機溶媒を用いることが好ましい。この場合、ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、バインダーポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(a2)、増感色素(a3)、及び熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)あるいは上記任意添加成分を溶媒に溶解させ、得られた溶液を基板上に塗布し、その後、溶媒を揮散させ記録層を形成する。記録層に保護材を被せる場合は、保護材被覆の前に溶媒を風乾や減圧加熱等によって除去しておくのがよい。基板は、例えばガラス板やポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板のようなプラスチック板もしくはフィルム等からなる。基板の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。基板は平面である必要はなく屈曲や湾曲あるいは表面に凹凸構造のあるものでもよい。保護材の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。塗布方法はグラビア塗布、ロールコーティング塗布、バーコート塗布、スピンコート塗布等である。溶媒除去後の記録層の厚みは、好ましくは1〜100μmになるように塗布することが好ましい。
【0058】
記録方法・一般的方法
本発明によるホログラム記録媒体に被記録物をホログラムとして記録するには、通常の記録方法が採用できる。すなわち、波長が400〜700nmの範囲内にある可干渉性光を2つに分け、そのうち一方の光線(参照光)と、他方の光線を記録すべき物体に照射して得られる物体からの反射光(物体光)と(または予め該物体の情報を記録した体積位相型マスターホログラムに照射して得られるマスターホログラムからの透過光(物体光)と)を、該記録媒体に対してそれぞれ同一面よりあるいは表裏面より入射させて、干渉させることにより得られる干渉縞を捕らえることができる位置に、該体積位相型ホログラム記録材料用媒体を配置し、同媒体に上記物体を記録する。より詳しくは、レーザー光をビームスプリッター等で2つの光線に分け、ミラー等の使用により両者を再度合わせることで干渉縞を得る(2光束露光法)。あるいは1つのレーザー光をミラーにより反射させ、入射光と反射光の両者を再度合わせることにより干渉縞を得る(1光束露光法)。このような干渉パターンを得る際には、別途作製したホログラムをマスターホログラムとして光路上に配置して、1光束および/または2光束露光法にて干渉縞を得ても良い。このように形成した干渉パターンの明暗の強度分布を捉えることのできる位置に記録媒体を設置する。この状態で、通常、数秒から数分間レーザー光照射を行うと、ホログラムとなる干渉縞が記録媒体上に記録される。ホログラム記録中はなるべく振動を与えないようにするため、これらの記録は光学除振台の上で行うべきである。用いるレーザー光の光量は、光強度と照射時間との積で表して、好ましくは1〜1万mJ/cm2程度である。光量がこの範囲よりも少ないと記録が困難であり、またこの範囲を超えるとホログラムの回折効率が低下する場合があるので、いずれの場合も好ましくない。
【0059】
光源の種類
本発明で用いられる光源について説明する。
可視光領域の可干渉性光の干渉縞を得、体積位相型ホログラム記録を行うための好ましい光源としては、レーザーが使用できる。レーザーは単一波長であり、コヒーレンス性を有しているため、ホログラム記録において好ましい光源である。最も好ましい光源はコヒーレンス性に優れた光源、例えば、上記レーザーにエタロン等の光学素子等を装着したものがある。これは該単一波長の周波数を単一周波数にしたものであり、干渉距離を長くすることができるため特に好ましい。代表的なレーザーの具体例としては、Kr(波長647nm、413nm、407nm)、He−Ne(波長633nm)、Ar(波長514.5nm、488nm)、YAG(波長532nm)、He−Cd(波長442nm)等が例示できる。これら光源は単独で用いても、2種以上組み合わせて使用していも良い。また、該光源は連続光でも、ある一定または任意間隔にてパルス発振していても良い。
【0060】
作用の説明
次に、本発明の体積位相型ホログラム記録媒体を用いた、本発明の体積位相型ホログラムの形成方法について説明する。ここでは、可視光のレーザーで反応が起こる光ラジカル重合開始剤と、紫外線で反応が起こるカチオン重合開始剤と含む場合を例にとって説明する。この場合、体積位相型ホログラム記録媒体中では、露光前はラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、バインダーポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(a2)、光増感色素(a3)、および熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)が相溶しているが、可視光のレーザー光の干渉縞露光とともにラジカル重合性化合物(a1)が優先的に光重合して高分子化することでホログラム記録層となる。
【0061】
すなわち、本発明による記録材料組成物を基板上に塗布してなる2層構造体、あるいはこの記録層の上に保護材を被せてなる3層構造体に可視光領域の光の明暗の強度分布を有する干渉縞を露光すると、まず、干渉縞中の光量の多い部分で光ラジカル重合開始剤(a2)よりラジカルが発生し、光ラジカル重合反応性に富むラジカル重合性化合物(a1)が光重合を開始し、その部分が体積収縮をきたすと同時に、ラジカル重合性化合物(a1)の濃度が減少する。これによって生じた凹み及び濃度勾配を補うために、光量の少ない部分から未反応の重合物が流れ込むと共に、カチオン重合性モノマー(b1)およびバインダーポリマー(C)はラジカル重合性化合物(a1)から相分離し、光量の少ない部分へ排除される。光量の多い部分へと拡散移動したラジカル重合性化合物(a1)は、その光重合がさらに進む。これらの結果、光量の多い部分には屈折率の高い、ラジカル重合性化合物(a1)の重合物が集積し、逆に光量の少ない部分には屈折率の低いバインダーポリマー(C)が集積した構造を形成する。
【0062】
ここで、カチオン重合性モノマー(b1)は主として、ラジカル重合性化合物(a1)とバインダーポリマー(C)との分離を促進させるための成分として機能する。これは露光初期では系中に均一に存在するが、最終的には光量の少ない部分、即ちバインダーポリマー(C)側へと排除される。こうして、光量に応じた組成分布、すなわちラジカル重合性化合物(a1)が多い部分と、カチオン重合性モノマー(b1)とバインダーポリマー(C)が多い部分との屈折率の差に基づいた干渉縞がホログラムとして形成される。
【0063】
このようにして得られた体積位相型ホログラムは十分な屈折率変調と有しているが、加熱処理を行うことによりさらに高めることができる。加熱処理を行うことで記録時の温度では拡散移動しきれなった未反応のラジカル重合性化合物(a1)の干渉縞明部への移動を促進させることができ、その結果、屈折率変調がさらに高くなり回折効率の高い明るいホログラムが得られる。
【0064】
続いて、加熱処理をそのまま継続することにより、未反応成分として主として残存しているカチオン重合性モノマーを重合させることで、紫外線照射等のよる煩雑な後処理工程を必要とせず、組成物全体が硬化した耐湿性良好な体積位相型ホログラムが形成される。
【0065】
上述の加熱処理の条件は、遮光下で60〜150℃の温度範囲で0.5〜24時間にわたり該記録媒体を加熱すればよい。80℃〜100℃の温度範囲で6〜12時間加熱するのが好ましい。
【0066】
ホログラムの再生について
本発明による体積位相型ホログラム記録媒体を用いれば、被記録物としての物体を記録および再生することができる。通常の写真では物体の振幅の情報のみしか記録できないために、写真に記録された物体は2次元としてしか見ることができないが、該記録媒体は物体の位相と振幅の情報を同時に記録できるため、つまり、完全な3次元の情報を記録できるため、記録された物体も完全な3次元として見ることができる。本発明の実施例ではミラーを用いた1光束露光法による記録が記載されているが、この場合、記録すべき物体はミラーの鏡面である。干渉縞を得るためには物体光および参照光を記録媒体の記録面に対して同一面より入射させ、あるいは表裏面より入射させ、干渉させることができる。このとき前者では透過型ホログラム、後者では反射型ホログラムが記録される。1光束露光法においてもミラーの鏡面が被記録物となるが、ミラーの代りに別の被記録物を用い、光源にレーザー光等のコヒーレンス性を有する光を用い、入射光(参照光)と物体からの反射光(物体光)との干渉によって形成される干渉縞を捕らえることができる位置に、該記録媒体を配置し、同媒体に物体を記録することができる。記録を再生する際には、参照光として白色光や記録時用いた光源を用いることができ、好ましくは後者の光源をホログラム記録時の参照光と同一角度にて照射することにより効率よく物体光が再生される。また、物体光を得るためには予め物体の情報を記録した体積位相型ホログラムを用いてもよい。この方式では記録済のホログラムをマスターホログラムとして用い、一光束露光法にて該ホログラムの情報をコピーすることができる。この場合、一光束露光法は参照光(マスターホログラムからの透過光(物体の情報を含まない))と物体光(マスターホログラムからの回折された透過光(物体の情報を含む))との干渉により形成される干渉縞を記録することができる。この方式は量産化が行ない易いといった利点がある。本発明の実施例にて評価されている回折効率とは、参照光の強度に対する再生されたミラー鏡面の明るさ、つまり、物体光の強度のことであり、いかに物体を明るく記録でき、かつ、再生できたかを示す指標である。
【0067】
以下、本発明の実施例を幾つか挙げ、本発明を具体的に説明する。ただし、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1
1)9,9−ジアリールフルオレン骨格を有し、かつ、常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物 (a1)として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(新日鐵化学社製、「ASF400」、単体の屈折率:1.63)1.00g(全組成物に対する重量百分率:27.8wt%)、カチオン重合性化合物(b1)として3,4-エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(バンティコ社製、「CY-179」、単体の屈折率:1.50)1.00g(27.8wt%)、バインダーポリマー(C)としてポリメチルメチルメタクリレート(和光純薬社製、「メタクリル酸メチルポリマー」、単体の屈折率:1.49)1.25g(34.8wt%)、光ラジカル重合開始剤(a2)として3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、「BTTB−25」)0.25g(7.0wt%)、光増感色素(a3)としてクマリン系色素(林原生物化学社製、NK1538)0.005g(0.1wt%)、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在カチオン重合開始剤(b2)としてトリス(2,4−ペンタジオナト)アルミニウム(III)(東京化成)とアリールシラノールであるLS−5900(信越化学)をそれぞれ0.05g(1.4wt%)、0.04g(1.1wt%))、および溶媒としてアセトン5gを常温で混合し、記録材料用組成物を調製した。
2)この組成物を60mm×60mmのガラス基板の片面に乾燥後の厚みが15〜20μmになるようにスピンコートにより塗布し、減圧下で加熱処理を施すことにより塗布層から溶媒を除去し、基板と記録層からなる2層構造の記録媒体を作成した。
3)この記録媒体の記録層に厚み50μmのPETフィルムを被せて3層構造の体積位相型ホログラム記録用感光板を作製した。
4)次に該感光板のガラス面をキシレンを溶媒として介してミラーと重ね合わせた。層構成は順にミラー、キシレン、ガラス、感光性組成物、PETフィルムである。
5)この状態でPET面からコヒーレンス性の優れた単一周波数を有する514.5nmのArイオンレーザーを垂直に入射させ1光束の反射型ホログラムを記録した。このときに形成される干渉縞は入射光とミラーからの反射光によって形成される。
6)1光束の反射型ホログラムの記録例を図1に示す。図中、(A)はレーザー発生装置、(CL)はコリメータレンズ、(B1)は入射光である。また、記録に用いられるサンプル図2に示す。(M)はミラー、(K)はキシレン、(G)はガラス、(H)は組成物、(P)はPETフィルム、(B1)はレーザーの入射光、(B2)はレーザーの反射光である。
7)この状態で感光板を露光し、ホログラムとなる干渉縞を感光板上に記録した。
1光束の反射型ホログラムの露光は、ビームの光強度を1.0mW/cm2として、40秒間、露光量として40mJ/cm2行った。
8)得られた反射型ホログラムを100℃で4時間加熱した。
【0069】
実施例2
実施例1で得られた反射型ホログラム(回折効率:85%、再生波長:485nm)(層構成:上よりPET/記録層/ガラス基盤)からPETフィルムを剥がし、粘着フィルム(住友スリーエム社製、スコッチクリアーテープ、「CK-24」)をその粘着層がホログラム層に接着するように貼り合わせた。回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。 このように粘着剤貼り合わせによってホログラム性能に変化が起こらないのは、ホログラム膜中に未反応成分がほとんど残っていないからであり、カチオン重合が進行しているためである。
【0070】
実施例3
実施例1で得られた反射型ホログラムに実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせ(層構成:上よりPET/粘着層/記録層/ガラス基盤)、ここから粘着フィルム由来のPETフィルムを剥がし、アルミ蒸着フィルム(木村アルミ箔株式会社製、ポリコート無し)をアルミ蒸着面が粘着層に接着するように貼り合わせた(層構成:上よりPET/アルミ蒸着層/粘着層/記録層/ガラス基盤)。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ変化は無かった。このことよりアルミ蒸着層は酸によって侵食されなかったことがわかる。
【0071】
実施例4
実施例1の配合組成において、(B)カチオン重合性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、「40E」、単体の屈折率:1.46)を用いて実験を行った。
【0072】
実施例5
実施例4で得られた反射型ホログラム(回折効率:88%、再生波長:487nm)(層構成:上よりPET/記録層/ガラス基盤)からPETフィルムを剥がし、粘着フィルム(住友スリーエム社製、スコッチクリアーテープ、「CK-24」)をその粘着層がホログラム層に接着するように貼り合わせた。回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。 このように粘着剤貼り合わせによってホログラム性能に変化が起こらないのは、ホログラム膜中に未反応成分がほとんど残っていないからであり、カチオン重合が進行しているためである。
【0073】
実施例6
実施例4で得られた反射型ホログラムに実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせ(層構成:上よりPET/粘着層/記録層/ガラス基盤)、ここから粘着フィルム由来のPETフィルムを剥がし、アルミ蒸着フィルム(木村アルミ箔株式会社製、ポリコート無し)をアルミ蒸着面が粘着層に接着するように貼り合わせた(層構成:上よりPET/アルミ蒸着層/粘着層/記録層/ガラス基盤)。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ変化は無かった。このことよりアルミ蒸着層は酸によって侵食されなかったことがわかる。
【0074】
実施例7
実施例1の配合組成において、(C)バインダーポリマーとして酢酸ビニルポリマー(キシダ化学社製、「酢酸ビニルポリマー」、ポリマーの屈折率:1.43)を用いて実験を行った。
【0075】
実施例8
実施例7で得られた反射型ホログラム(回折効率:91%、再生波長:483nm)(層構成:上よりPET/記録層/ガラス基盤)からPETフィルムを剥がし、粘着フィルム(住友スリーエム社製、スコッチクリアーテープ、「CK-24」)をその粘着層がホログラム層に接着するように貼り合わせた。回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。 このように粘着剤貼り合わせによってホログラム性能に変化が起こらないのは、ホログラム膜中に未反応成分がほとんど残っていないからであり、カチオン重合が進行しているためである。
【0076】
実施例9
実施例7で得られた反射型ホログラムに実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせ(層構成:上よりPET/粘着層/記録層/ガラス基盤)、ここから粘着フィルム由来のPETフィルムを剥がし、アルミ蒸着フィルム(木村アルミ箔株式会社製、ポリコート無し)をアルミ蒸着面が粘着層に接着するように貼り合わせた(層構成:上よりPET/アルミ蒸着層/粘着層/記録層/ガラス基盤)。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ変化は無かった。このことよりアルミ蒸着層は酸によって侵食されなかったことがわかる。
【0077】
比較例1
実施例1の配合組成において、カチオン重合開始剤においてトリアリールスルホニウム系化合物(旭電化工業社製、「SP-170」)を用いて実験を行った。記録方法は同じで、後処理工程を比較例の場合は、加熱処理の後にUV照射を行いカチオン重合性化合物を硬化させた。
【0078】
比較例2
比較例1で得られた反射型ホログラム(回折効率:83%、再生波長:483nm)に実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせた。 回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。光カチオン重合開始剤と熱潜在性カチオン重合開始剤の反応性に変わりがなかった。
【0079】
比較例3
比較例1で得られた反射型ホログラムに実施例3と同様に粘着フィルム、およびアルミ蒸着フィルムを貼り合わせた。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ、アルミ蒸着層にピンホールが開いていた。これはアルミ蒸着層が酸によって侵食されたためである。
【0080】
比較例4
実施例4の配合組成において、カチオン重合開始剤においてトリアリールスルホニウム塩(旭電化工業社製、「SP-150」)を用いて実験を行った。記録方法は同じで、後処理工程を比較例の場合は、加熱処理の後にUV照射を行いカチオン重合性化合物を硬化させた。
【0081】
比較例5
比較例4で得られた反射型ホログラム(回折効率:85%、再生波長:486nm)に実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせた。 回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。光カチオン重合開始剤と熱潜在性カチオン重合開始剤の反応性に変わりがなかった。
【0082】
比較例6
比較例1で得られた反射型ホログラムに実施例3と同様に粘着フィルム、およびアルミ蒸着フィルムを貼り合わせた。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ、アルミ蒸着層にピンホールが開いていた。これはアルミ蒸着層が酸によって侵食されたためである。
【0083】
比較例7
実施例7の配合組成において、カチオン重合開始剤においてジフェニルヨードニウム塩(みどり化学社製、「BBI−102」)を用いて実験を行った。記録方法は同じで、後処理工程を比較例の場合は、加熱処理の後にUV照射を行いカチオン重合性化合物を硬化させた。
【0084】
比較例8
比較例7で得られた反射型ホログラム(回折効率:89%、再生波長:481nm)に実施例2と同様の粘着フィルムを貼り合わせた。 回折効率や再生波長などのホログラム性能は粘着フィルムを貼り合わせても維持された。光カチオン重合開始剤と熱潜在性カチオン重合開始剤の反応性に変わりがなかった。
【0085】
比較例9
比較例1で得られた反射型ホログラムに実施例3と同様に粘着フィルム、およびアルミ蒸着フィルムを貼り合わせた。このサンプルを60℃/95%RHの環境下に10日間置いた。この高温高湿環境下に長時間さらされたサンプルのアルミ層の外観を調べたところ、アルミ蒸着層にピンホールが開いていた。これはアルミ蒸着層が酸によって侵食されたためである。
【0086】
性能評価
上記実施例および比較例で得られたホログラムについて、記録後のホログラムの膜厚および回折効率を測定した。
a)膜厚
記録後のホログラムの膜厚をマイクロメーターを用いて測定した。
b)反射型ホログラムの回折効率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製、「V−550」)による透過率の測定により求めた。回折効率の算出方法を図3に示す。得られた反射型ホログラムを紫外可視分光光度計にて測定すると図3のようなチャートが得られる。図中、(T)はサンプルの透過率、(P)は回折光のピーク高さである。反射型ホログラムの回折効率は、全体の透過率に対する回折光のピーク高さより、次式より算出した。
回折効率(%)=(回折光のピーク(高さ)/全体の透過率(高さ))×100
【0087】
得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0088】
表1から明らかなように、実施例1で得られた反射型ホログラムの記録性は、比較例1で得られたそれと変わらない。また硬化性の点でも、実施例2の結果が比較例2に変わらないことから、潜在性熱カチオン重合開始剤を含む配合においても十分な硬化が行われたことが示された。実施例3では貼り合せたアルミ蒸着層に変化が生じなかったのに対し、比較例3ではアルミ蒸着層に小さな穴が開いており、酸によるアルミの腐食が起きていた。また、自然光の下、目視観察したところ、比較例の媒体はいずれも淡黄色に着色が見られたところ、本発明の媒体は無色であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によるホログラム記録用感光性組成物は、簡便な製造工程が要求され、また、十分な耐湿性が要求されるホログラム記録媒体の製造分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】反射型ホログラムの例を示した概略図である。
【図2】回折効率の算出方法を示した概念図である。
【符号の説明】
【0091】
(A):レーザー発生装置
(BS):ビームスプリッター
(M):ミラー
(S):感光板
(B1):物体光
(B2):参照光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合系(A)、カチオン重合系(B)、およびバインダーポリマー(C)からなり、光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物において、
カチオン重合系(B)の一構成要素であるカチオン重合開始剤(b2)が、アルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤であることを特徴とする体積位相型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項2】
光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物において、
(1)ラジカル重合性化合物(a1)、カチオン重合性化合物(b1)、およびバインダーポリマー(C)の混合物を基本組成とし、
(2)ここに重合開始剤として、可視光領域の可干渉光の干渉によって得られる干渉縞(第一の光)を露光することによりラジカル重合性化合物(a1)を重合させる光ラジカル重合開始剤(a2)、光ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いられる増感色素(a3)、およびアルミニウム錯体とアリールシラノールから成る熱潜在性カチオン重合開始剤(b2)を含み、
(3)ラジカル重合性化合物(a1)の屈折率が、カチオン重合性化合物(b1)とバインダーポリマー(C)との屈折率との加重平均値よりも大きいことを特徴とする、
体積位相型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項3】
アルミニウム錯体が下記式[II]で表される化合物であり、かつ、アリールシラノ-ルが下記式[III]で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の体積位相型ホログラム記録用感光性組成物。
【化1】

[式中、R4、R6は互いに同一または異なって炭素数が1から12の置換基を有してもよいアルキル基を意味し、R5は置換基を有していてよい炭素原子を意味する。]
【化2】

[式中、R7、R8は互いに同一または異なって炭素数が1から12の置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を意味する。mは0から3の整数である。]
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の体積位相型ホログラム記録用感光性組成物が基材上に形成され、必要に応じて感光膜が保護材で覆われてなるホログラム記録媒体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3に記載の組成物を有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、得られた溶液もしくは懸濁液を基板上に塗布し、その後、溶剤を揮散させることを特徴とするホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載のホログラム記録媒体に体積位相型ホログラムを記録するにあたり、始めに可視光領域の可干渉光の干渉によって得られる干渉縞(第一の光)をホログラム記録媒体に露光し、次いで遮光下で60〜150℃の温度範囲で0.5〜24時間にわたり該記録媒体を加熱することよりなるホログラム記録媒体の記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−3387(P2006−3387A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176692(P2004−176692)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】