体組成計
【課題】加齢が体組成に及ぼす影響を考慮して、体組成の指標の長期的な変化を予測する。
【解決手段】体組成計100のCPU110は、ROM302から、予測対象である指標の回帰式を読み出し、この回帰式に現在の年齢(p歳)(pは自然数)を代入する。その結果、現在の年齢における変化量Y1(p)が得られる。CPU110は、n年後(nは自然数)の年齢を回帰式に代入して、変化量Y1(p+n)を求め、続いて、現在からn年後の年齢までの変化量Y1(n)=Y1(p+n)−Y1(p)を求める。CPU110は、演算により求めた変化量と体組成計100が測定した指標の現在値とに基づいて、n年後の指標の未来値を得る。
【解決手段】体組成計100のCPU110は、ROM302から、予測対象である指標の回帰式を読み出し、この回帰式に現在の年齢(p歳)(pは自然数)を代入する。その結果、現在の年齢における変化量Y1(p)が得られる。CPU110は、n年後(nは自然数)の年齢を回帰式に代入して、変化量Y1(p+n)を求め、続いて、現在からn年後の年齢までの変化量Y1(n)=Y1(p+n)−Y1(p)を求める。CPU110は、演算により求めた変化量と体組成計100が測定した指標の現在値とに基づいて、n年後の指標の未来値を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体組成の指標を推定するための装置に関し、特に、体組成の変化を予測し評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
体重や体脂肪率、内臓脂肪面積などの体組成に関わる指標を簡単に取得できる装置が広く普及している。この種の装置を用いれば、所望の体組成の指標を取得して自己の健康維持に利用することができる。
特許文献1には、被験者の体重の将来的な変化を予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−323246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食事や運動といった日々の生活習慣やストレス、加齢などの様々な要因は、人体の体組成に長期的な変化をもたらし得る。よって、体組成の指標を長期的に評価することに対する要望がある。上記技術では将来的な変化が予測されるので、上記技術を用いれば、体組成の指標の未来値を予測することが可能となる。しかしながら、上記技術では被験者の過去の記録値の推移に基づいて予測が行われるので、加齢が体組成に及ぼす影響が反映されず、5年後、10年後といった長期的な未来値を適正に予測することができない。また、従来は、過去の値から、加齢を考慮して、現在の値の良否について評価することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、加齢が体組成に及ぼす影響を考慮して、体組成の指標の長期的な変化を予測することが可能な体組成計、および過去のある時点から現在までの変化を評価することが可能な体組成判定装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、被験者の体組成の指標の未来値を予測することが可能な体組成計であって、前記被験者の前記体組成の指標の現在値を取得する現在値取得手段と、現在の年齢から未来の年齢に達するまでの前記指標の値の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、前記現在値取得手段が取得した前記現在値と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とに基づいて、前記被験者の未来の年齢における前記指標の値を前記未来値として求める第1未来値取得手段とを備えた体組成計を提供する。
【0007】
本発明によれば、体組成の指標について、加齢による影響を考慮して、未来の年齢における値を未来値として長期的に予測することが可能となる。この未来値は、被験者の体組成の指標の現在値と、現在の年齢から未来の年齢に達するまでの指標の値の平均的な変化量とに基づいて得られる。平均的な変化量は、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求められる。回帰式は、母集団(例えば、18歳以上90歳未満の女性)から体組成の指標値のサンプルを抽出して、回帰分析により見出される。「変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める」とは、回帰式に年齢を代入して演算すること、および、回帰式から得られた、変化量と年齢の対応関係を示すテーブルを記憶部に保持しておき、このテーブルに基づいて変化量を求めることを含む。上記未来値取得手段は、前記現在値と前記変化値とを足し合わせて前記未来値を得るようにしてもよい。また、回帰式は、1次式であってもよいし、2次式であってもよい。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記回帰式は、Y=aX2+bX+c、ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。上記回帰式は、体脂肪率の変化量Y1を求めるための回帰式(A)あるいは除脂肪量の変化量Y2を求めるための回帰式(B)として実施形態に例示される。
年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、bは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。
変化量Yは、所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とするから、当該所定の年齢においてY=0である。よって、独立変数である年齢Xを回帰式に代入すると、上記所定の年齢から年齢Xまでの平均的な変化量が求められる。よって、所定の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量(現在年齢変化量)および所定の年齢から未来の年齢までの平均的な変化量(未来年齢変化量)の各々を求め、未来年齢変化量から現在年齢変化量を減算すると、現在の年齢から未来の年齢までの平均的な変化量を求めることができる。よって、本態様によれば、加齢による影響を考慮して、体組成の指標の未来値を長期的に予測することが可能となる。好ましくは、前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つであってもよい。
【0009】
本発明の別の好適な態様において、前記第1未来値取得手段によって取得された前記体組成の指標の未来値に基づいて、当該体組成の指標とは異なる体組成の指標の未来値を予測する第2未来値取得手段をさらに備える。
複数の体組成の指標について未来値を取得する場合、上記回帰式が利用可能なものと、そうでないものとがある。上記回帰式が利用可能でない体組成の指標について未来値を求める場合、第2未来値取得手段によれば、回帰式が利用可能な体組成の指標について上記第1未来値取得手段によって取得された指標の未来値を、推定式に代入して演算により予測することが可能となる。本態様によれば、未来値を予測可能となる体組成の指標の範囲が拡大される。すなわち、回帰式を利用可能でない体組成の指標についても、未来値を予測することが可能となる。
【0010】
なお、本願の実施形態からは、以下の発明を把握することができる。すなわち、過去から現在までの被験者の体組成の指標の変化の良否の程度を判定する判定装置であって、前記被験者の前記体組成の指標の現在値と過去の値との差分を実変化量として取得する差分取得手段と、過去の年齢から現在の年齢に達するまでの前記指標の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、前記差分取得手段が取得した前記実変化量と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とを比較して、体組成変化の程度の良否を判定する良否判定手段とを備えた体組成判定装置を把握することができる。
【0011】
本発明によれば、過去のある年齢における体組成の指標の値と現在の値との実変化量と、同じ期間における平均的な変化量とを比較することにより、体組成の実変化の良否の程度を判定するので、過去のある時点から現在までの数年間の体組成の変化を評価することが可能となる。回帰式は、上記体組成計について上述したように、母集団(例えば、18以上90歳未満の女性)から体組成の指標値のサンプルを抽出して、回帰分析により見出される。「変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める」とは、回帰式に年齢を代入して演算すること、および、回帰式から得られた、変化量と年齢の対応関係を示すテーブルを記憶部に保持しておき、このテーブルに基づいて変化量を求めることを含む。また、回帰式は、1次式であってもよいし、2次式であってもよい。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記回帰式は、Y=aX2+bX+c、ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記過去の年齢を前記回帰式に代入することにより前記過去の年齢における変化量を過去年齢変化量として求めるとともに、前記現在の年齢を前記回帰式に代入して前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求め、前記現在年齢変化量と前記過去年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。
体組成計について上述したように、独立変数である年齢Xを回帰式に代入すると、所定の年齢から年齢Xまでの平均的な変化量が求められる。よって、所定の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量(現在年齢変化量)および所定の年齢から過去の年齢までの平均的な変化量(過去年齢変化量)を求め、現在年齢変化量から過去年齢変化量を減算すると、過去の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量を求めることができる。よって、本態様によれば、加齢による影響を考慮して、過去から現在までの体組成の指標の実変化を判定することが可能となる。
【0013】
本発明の別の好適な態様において、良否判定手段は、前記実変化量を、前記平均的な変化量を基準とした点数に換算する点数換算手段を有し、前記点数換算手段によって得られた点数が、所定の範囲内にある場合には前記変化が現在の年齢相当であると判定し、前記所定の範囲の上限よりも大きい場合には良好であると判定し、前記所定の範囲の下限よりも小さい場合には前記体組成の変化が過大であると判定する。「前記平均的な変化量を基準とした点数に換算する」とは、例えば、平均的な変化量に基づいて実変化量を点数化することを含む。本態様によれば、過去のある時点から現在までの数年間の体組成の変化が、その年齢の平均的な変化と照らし合わせて点数に換算されるので、複数の体組成の指標についてこのような判定をした場合にも、複数の体組成の指標に共通の尺度で体組成の変化を評価することが可能になる。好ましくは、前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る体組成計100の外観を示す平面図である。
【図2】体組成計100の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】体組成予測処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図5】現在−未来変化量演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】体脂肪率と年齢との関係を示すグラフである。
【図7】除脂肪量と年齢との関係を示すグラフである。
【図8】(A)および(B)は、体組成予測処理の予測結果の表示例である。
【図9】体組成判定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図10】過去−現在変化量演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】体組成判定処理の判定結果の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る体組成計について説明する。本実施形態の体組成計は、複数の体組成の指標について未来値を予測可能であるとともに、過去のある時点から現在までの体組成の指標の変化を評価することが可能である。本実施形態では、予測の対象となる体組成の指標として、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積について説明する。また、評価の対象となる体組成の指標として、体脂肪率について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る体組成計の外観を示す平面図であり、図2は、同体組成計の電気的構成を示すブロック図である。
図1および図2に示されるように、体組成計100は、本体10と、その上面に配置され、被験者の足裏に電流を供給するための電流供給用電極71(71Rおよび71L)と、被験者の足裏の2点間の電圧を測定するための電圧測定用電極72(72Rおよび72L)と、被験者への操作の案内や測定結果の通知を表示するための表示部50と、被験者またはユーザが各種指示を入力する操作入力部40とを備える。表示部50としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置がある。操作入力部40はアップキーおよびダウンキー、ならびにSETキーを有する。被験者またはユーザ(以下、単に「被験者」という)は表示部50に表示された案内にしたがってアップキーおよび/またはダウンキーを操作して数値を増減したり、表示部50に表示されたカーソルを上下させることができる。SETキーは、アップキーおよび/またはダウンキーの操作が終わったのちに押し下げすることで、各種指示を確定するために用いられる。
【0017】
加えて、本体10の上面には、操作入力部40の図中下方向の部分に、体組成の指標を被験者に指定させるための機能指定ボタンF1〜F5が配置されている。本実施形態では、機能指定ボタF1〜F5の各々に、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の各々が対応付けられている。ROM302には、これら体組成の指標を求めるための演算式(推定式)が予め記憶されている。さらに、本体10には、当該体組成計の電源をオン状態とするための電源キー5が設けられる。
【0018】
本体10の内部には、記憶部30と、重量測定装置60と、生体インピーダンス測定装置70と、CPU110とが設けられている。重量測定装置60には図示せぬ重量センサが設けられる。この重量センサは、被験者が本体10に乗ったときに、その重量である被験者の体重を重量データとして出力可能である。重量センサとしては、起歪体と歪ゲージとを有し、起歪体の歪による電圧の変化を測定して出力するロードセルがある。重量測定装置60から出力された重量データは、A/D変換器(図示略)によってデジタル信号に変換された後に体重WとしてCPU110に供給される。
【0019】
生体インピーダンス測定装置70は、電流供給部70Aおよび電圧検出部70Bを備える。電流供給部70Aは、被験者が本体10に乗ったときに、その上面部に形成された各電流供給用電極71Lおよび71Rを介して被験者の足裏に高周波の微弱な定電流を印加し、電圧検出部70Bは各電圧測定用電極72Lおよび72Rを介して電位差を測定する。測定された電位差のデータは、A/D変換器(図示略)によってデジタル変換された後に生体インピーダンスZとしてCPU110に供給される。
【0020】
記憶部30は、RAM(Random Access Memory)301と、ROM(Read Only Memory)302と、書き換え可能メモリ303とを有する。ROM302は、不揮発性のメモリであり、CPU110に各種処理を実行させるための各種プログラムおよび本実施形態に係る動作をCPU110に実行させるための体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2、さらに、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、基礎代謝量、内臓脂肪面積および体重の各々を求めるための演算式が記憶されている。本実施形態では、体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2を記憶した媒体としてROM302を使用するが、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム要素としての体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2を記憶するために使用してもよい。
【0021】
ROM302には、さらに、所定の年齢(本実施形態では、18歳以上25歳未満)における体組成の指標の平均値を基準とした回帰式が、体脂肪率および除脂肪量の各々について記憶されている。各体組成の指標を求めるための演算式および回帰式については、後段に詳述する。
RAM301は、CPU110のワークエリアとして機能する。書き換え可能メモリ303には、身長、年齢および性別といった個人データが、個人を識別する識別情報と対応付けて記憶されている。また、識別情報と対応付けて、体組成の指標の過去の測定値と測定時点の被験者の年齢とが対応づけて記録されている。
【0022】
図3は、本実施形態に係る動作の流れを示すフローチャートである。まず、体組成計100は、電源キー5が被験者によって押し下げられると、その電源がオン状態となる。そして、被験者が本体10に乗った状態において、体組成計100は、被験者の体重を測定し(ステップS1)、生体インピーダンスを測定する(ステップS3)。そして、重量測定装置60によって測定された体重Wおよび生体インピーダンス測定装置70によって測定された生体インピーダンスZは、CPU110に送られた後にRAM301に一時的に記憶される。次に、CPU110は、これらの測定値を用いて、体組成の各指標を演算する(ステップS5)。
【0023】
本実施形態では、各機能指定ボタンF1〜F5のすべてが被験者によって押し下げられたとする。よって、まず、CPU110は、体脂肪率%Fatを求めるための演算式をROM302から読み出し、読み出した演算式を用いて体脂肪率を推定する。
体脂肪率%Fatを推定するための演算式としては、例えば、以下のものがある。
%Fat=f1・Z・W/H2−f2……(1)
ただし、f1及びf2は係数であり、重回帰分析により適宜定められる値である。また、Zは生体インピーダンス、Wは体重、Hは身長である。身長Hは、ユーザが操作入力部40を用いて予め入力したものであり、そのデータは、個人データとして、書き換え可能メモリ303に記憶されている。
【0024】
次に、CPU110は、除脂肪量FFMを求めるための演算式をROM302から読み出し、除脂肪量を求める。除脂肪量FFMは、例えば、以下の式に従って求められる。
FFM=W−W・%Fat/100……(2)
ただし、Wは体重であり、%Fatは式(1)によって求められる値である。よって、例えば、体脂肪率を指定するF1ボタンが押されず、除脂肪量を指定するF2ボタンだけが押された場合でも、CPU110は、式(1)と式(2)の両方をROM302から読み出して、式(1)、式(2)の順に演算することにより除脂肪量を求める。
【0025】
同様にして、CPU110は、体脂肪量FAT、基礎代謝量BMRおよび内臓脂肪面積VFAの各々を求めるための式をROM302から読み出し、演算を実行する。体脂肪量、基礎代謝量および内臓脂肪面積は、例えば、以下の式に従って求められる。
体脂肪量FM=FFM・%Fat/(100−%Fat)……(3)
基礎代謝量BMR=p1・FFM2+p2・FFM+p3・(1/Age)+p4……(4)
内臓脂肪面積VFA=q1・H2/W+q2・FM+q3・Age+q4……(5)
ただし、係数p1〜p4およびq1〜q4は、重回帰分析により適宜定められる値であり、Ageは年齢、Hは身長、Wは体重である。身長Hおよび年齢Ageは、ユーザが操作入力部40を用いて予め入力したものであり、そのデータは、個人データとして、書き換え可能メモリ303に記憶されている。式(3)における%Fatは、式(1)によって求められる値であり、式(3)および(4)におけるFFMは式(2)によって求められる値であり、式(4)におけるFMは式(3)によって求められる値であるから、CPU110は、ROM302から、体脂肪量FMの演算に際しては式(1)〜(3)を読み出し、基礎代謝量BMRの演算に際しては式(1)から(4)を読み出し、内臓脂肪面積VFAの演算に際しては、式(1)〜(3)および(5)を読み出す。
【0026】
CPU110は、式(1)〜(5)の各々に基づいて算出された体脂肪率%Fat、除脂肪量FFM、体脂肪量FM、基礎代謝量BMおよび内臓脂肪面積VFAを、RAM301に一旦記憶する。ステップS1において測定された体重Wおよび、ステップS5で算出された体組成の指標の各値は、被験者の体組成の指標の現在値である。
【0027】
次に、ステップS7において、CPU110は、体組成の未来値の予測が被験者によって指示されているか否か判定する。体組成の未来値の予測とは、体組成の指標の5年後、10年後といった未来の値を予測することを意味する。
本実施形態では、CPU110は、ステップS7において、表示部50に、「未来値を予測しますか?」というメッセージを表示し、被験者に、「はい」または「いいえ」のいずれかを選択させる。「いいえ」が選択された場合、ステップS7の判定はNOに進み、CPU110は、体組成予測処理を実行することなく、次のステップS13に進む。
【0028】
一方、「はい」が選択された場合、ステップS7の判定はYESに進み、CPU110は次の入力処理(ステップS9)に進む。入力処理において、CPU110は、被験者に、体脂肪率、除脂肪量、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、未来値を予測したい体組成の指標を選択するよう促す画面を表示する。被験者による体組成の指標の選択が完了すると、すなわち、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、何年後の未来値を予測したいかについて、被験者に指定させる画面を表示する。本実施形態では、被験者は、「5年後」、「10年後」および「20年後」のいずれかを選択するか、または、1〜30までの所望の年数を指定することが可能である。被験者は、操作入力部40を操作することにより、体組成の指標の選択および未来値の年数の指定を行う。年数の指定が完了すると、すなわち、年数を指定させる画面において、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、体組成予測処理を実行する(ステップS11)。
【0029】
本実施形態では、被験者は、体脂肪率、除脂肪量、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の全ての指標を予測対象の指標として選択し、未来値の年数として、「5年後」および「10年後」を選択したとする。なお、説明の便宜上、未来値の予測は、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積の順に実行されるものとし、異なる年数の未来値の予測については、「5年後」、「10年後」の順に実行されるものとするが、本実施形態で示された順序に本実施形態を限定するものではない。
【0030】
図4は、図3における体組成予測処理の詳細な流れを示すフローチャートである。CPU110は、ROM302から読み出された体組成予測プログラムP1にしたがって、当該体組成予測処理を実行する。
まず、ステップSa1において、CPU110は、未来値を予測する対象となる指標が直接予測可能な指標か否かを判定する。
本実施形態では、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、体脂肪率および除脂肪量については、回帰式がROM302に記憶されており、利用可能である。よって、体脂肪率および除脂肪量についてはその未来値が直接予測可能であるものとして説明する。未来値の予測は、図6および図7に示すような、母集団におけるサンプルの観測値から見出された回帰曲線に基づいて行われる。
【0031】
図6は、女性の体脂肪率について、年齢に対応した体脂肪率%FATの観測値と、観測値の回帰曲線(2次曲線)を示すグラフである。同グラフに示されるように、体脂肪率は、加齢と共に少しずつ増加するが、直線的な増加ではなく、緩やかな曲線に集約される。よって、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量Y1(%)を、年齢を独立変数として回帰式を作成すると、
体脂肪率の変化量Y1=a1・X2+b1・X+c1……(A)
となる。ただし、Xは年齢であり、a1、b1およびc1は回帰分析によって見出された係数である。
【0032】
図7は、女性の除脂肪量について、年齢に対応した除脂肪量FFMの観測値と、観測値の回帰曲線(2次曲線)を示すグラフである。同グラフに示されるように、除脂肪量は、加齢と共に増加するが、直線的な増加ではなく、また、加齢と共に一旦増加するが、40歳前後をピークに減少に転じる、湾曲した曲線に集約される。よって、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量Y2(kg)を、年齢を独立変数として回帰式を作成すると、
除脂肪量の変化量Y2=a2・X2+b2・X+c2……(B)
となる。ただし、Xは年齢であり、a2、b2およびc2は回帰分析によって見出された係数である。
【0033】
図6および図7から理解されるように、体組成の指標ごとの加齢に伴う数値の変化には回帰的な関係を見出すことができる。よって、回帰式に年齢を当てはめることにより、例えば、被験者の現在の年齢が30歳であるとした場合に、35歳になったときに体組成の指標が平均的にどの程度変化しているのか(平均的な変化量)を知ることが可能となる。
さらに詳細には、まず、体脂肪率については、式(A)に年齢を代入して、現在の年齢(30歳)の体脂肪率の変化量Y1(30)および35歳になったときの変化量Y1(35)を求める。式(A)によって求められる変化量Y1は、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量であるから、変化量Y1(35)から変化量Y1(30)を減算すると、30歳〜35歳までの平均的な変化量Y1(30〜35)が求められる。そして、現在の体脂肪率%FATに、変化量Y1(30〜35)を加算すると、5年後の体脂肪率が求められる。
【0034】
同様に、除脂肪量については、式(B)に年齢を代入して、現在の年齢(30歳)の除脂肪量の変化量Y2(30)および35歳になったときの変化量Y2(35)を求める。式(B)によって求められる変化量Y2は、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量であるから、変化量Y2(35)と変化量Y2(30)との差が、30歳〜35歳までの平均的な変化量Y2(30-35)として求められる。そして、現在の除脂肪量FFMに、変化量Y2(30〜35)を加算すると、5年後の除脂肪量が求められる。このように、本実施形態では、加齢が体組成の指標の数値に与える影響を統計的に分析し、その分析結果に基づいて、現在の年齢から未来のある年齢までの平均的な変化量を取得する。上述の例では、女性を母集団とした場合に、30歳〜35歳の5年間で、体脂肪率および除脂肪量が一般的にどの程度増加するかを、回帰式に基づいて求める。したがって、加齢による影響を考慮した未来値の予測が可能となる。このように回帰式に基づいて予測可能な指標を、以下、「第1未来予測指標」と呼ぶ。
【0035】
一方、本実施形態では、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の回帰式はROM302に記憶されていないから、これらの指標は直接予測可能でない指標(「第2未来予測指標」と総称する)である。第2未来予測指標は、第1未来予測指標の少なくともいずれかの未来値を、演算式に代入することで、その未来値が取得される。第2未来予測指標の推定に用いられる演算式は、例えば、以下のものがある。
体脂肪量FM=FFM・%Fat/(100−%Fat)……(3)
基礎代謝量BMR=p1・FFM2+p2・FFM+p3・(1/Age)+p4……(4)
内臓脂肪面積VFA=q1・H2/W+q2・FM+q3・Age+q4……(5)
体重W=FFM+FM……(6)
式(3)〜(6)から理解されるように、いずれの式においても、除脂肪量FFMは、いずれの式においても直接的または間接的にパラメータとして利用されており、体脂肪率%Fatは、式(4)を除く全ての式で直接的または間接的にパラメータとして利用されている。よって、第2未来予測指標を推定するためには、第1未来予測指標である体脂肪率%Fatおよび除脂肪量FFMの未来値(基礎代謝利用の場合には除脂肪量FFMの未来値のみ)を事前に予測しておくことが必要となる。
【0036】
よって、ステップSa1において、未来値を予測する対象となる指標が、直接予測可能な指標でないと判定された場合(ステップSa1:NO)、すなわち、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のいずれかであった場合、次に、CPU110は、ステップSa11において、直接予測可能な全ての指標の未来値の予測が完了したか否か判定する。CPU110は、この判断結果が肯定的となるまで、ステップSa11:NO、ステップSa1:NOの処理を繰り返す。
なお、上述したように、本実施形態では、説明の便宜上、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積の順に、未来値の予測が実行されることとしている。すなわち、まず、第1未来予測指標の予測を行い、次に第2未来指標の予測を行う。よって、ステップSa1の判定がNOになると、ステップSa11の判定結果は常にYESとなる。
【0037】
一方、ステップSa1において、未来値を予測する対象となる指標が、直接予測可能な指標であると判定された場合(ステップSa1:YES)、すなわち、体脂肪率か除脂肪量のいずれかであった場合、CPU110は、処理を現在−未来変化量演算処理(ステップSa3)に進める。この場合、最初に未来値を予測する対象となる指標は体脂肪率なので、処理はステップSa3に進み、体脂肪率について、現在−未来変化量演算処理が実行される。
【0038】
図5は、現在−未来変化量演算処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。図5に示されるように、まず、ステップSb1において、CPU110は、ROM302から、予測対象である指標の回帰式を読み出す。予測対象である指標は体脂肪率なので、読み出される回帰式は、上記式(A)である。続いて、ステップSb3において、現在の年齢(p歳)(pは自然数)を式(A)に代入する。その結果、変化量Y1(p)が得られる。
【0039】
続いて、ステップSb5において、CPU110は、n年後(nは自然数)の年齢を回帰式(A)に代入して、変化量Y1(p+n)を得る。なお、この場合、未来値の年数として「5年後」が指定されているので、n=5となる。そして、ステップSb7において、現在からn年後の年齢までの体脂肪率%FATの変化量Y1(n)=Y1(p+n)−Y1(p)を求め、処理を図4のステップSa5に戻す。
【0040】
図4のステップSa5において、CPU110は、ステップS5(図3)において算出され、RAM301に一旦記憶された体脂肪率%FATの現在値と、ステップSa3で求めた体脂肪率%FATの変化量とを足し合わせて、n年後(n=5なので5年後)の体脂肪率の未来値を得る。CPU110は、この5年後の未来値を%FAT(p+5)としてRAM301に一旦記憶する。
【0041】
次に、CPU110は、同じ指標について他の未来値を予測するか否かについて判定する(ステップSa7)。ステップS9(図3)では被験者により10年後の未来値が指定されているので、ステップSa7の判定はYESとなり、CPU110は、ステップSa3〜Sa5の処理を実行する。その結果、10年後の体脂肪率の未来値を得る。CPU110は、この10年後の未来値を%FAT(p+10)としてRAM301に一旦記憶する。
【0042】
次に、CPU110は、再びステップSa7において、他に予測すべき未来値があるか否かを判定する。体脂肪率の未来値の取得は完了したので、この場合、判定結果はNOとなり、続いて、CPU110は、ステップSa9において、予測すべき別の指標があるか否かについて判定する。この場合、次に除脂肪量の未来値を予測すべきなので、判定結果はYESとなり、CPU110は、処理をステップSa1に戻す。
【0043】
続いて、CPU110は、体脂肪率の場合と同様にして、除脂肪量について5年後および10年後の未来値を各々取得し(ステップSa1:YES〜Sa9:YES)、取得した未来値を各々FFM(p+5)およびFFM(p+10)としてRAM301に一時的に記憶する。そして、CPU110は、再び、ステップSa1の処理において、次の体組成の指標が直接予測可能な指標か否か判定する。この場合、次に予測すべき体組成の指標は体脂肪量であるので、ステップSa1の判定結果はNOとなり、続いて、ステップSa11の判定結果はYESとなる。
【0044】
次に、CPU110は、ROM302から体脂肪量を求めるための式(3)を読み出し(ステップSa13)、RAM301に一旦記憶しておいた、FFM(p+5)および%FAT(p+5)を演算式に代入して、体脂肪量FMの5年後の未来値を求める(ステップSa15)。取得された値は、FM(p+5)として、RAM301に一旦記憶される。CPU110は、次に、ステップSa17において、同じ指標について予測すべき未来値が他にあるか否かを判定する。この場合、10年後の未来値を予測すべきであるので、ステップSa17の判定結果はYESとなり、CPU110は体脂肪量FMの10年後の未来値について、ステップSa15の処理を実行する。すなわち、RAM301に一旦記憶しておいた、FFM(p+10)および%FAT(p+10)を演算式(3)に代入する。そして、取得した未来値をFM(p+10)として、RAM301に一旦記憶する。続いて、CPU110は、ステップSa17において、同じ指標について予測すべき未来値が他にあるか否かを再び判定し、この判定結果はNOとなるので、処理をステップSa9に進める。この場合、予測すべき別の指標があるので、ステップSa9の判定結果はYESとなり、処理はステップSa1に戻る。
【0045】
CPU110は、続いて、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の各指標について、ステップSa1:NO、Sa11:YES、Sa13およびSa15の処理を実行し、取得した各未来値をRAM301に記憶する。そして、Sa17の判定結果がNOとなり、且つ、ステップSa9の判定結果がNOとなると、処理をステップSa19に進める。ここで、ステップSa13においては、予測対象となる体組成の指標の推定に必要となる演算式が全て読み出される。例えば、体重Wを求めるための演算式(6)では体脂肪量FMがパラメータとして用いられるので、体重Wの未来値の推定の際には、式(3)および(6)がROM302から読み出される。
【0046】
ステップSa19において、CPU110は、RAM301に記憶しておいた各体組成の指標の現在値と未来値を示す表示データを生成する。生成された表示データは、例えば、図8の(A)に示すような表データIMG1となる。また、表データIMG1に加えて、図8の(B)に示すような、体脂肪率についての現在値、5年後の値および10年後の値が各々座標表示された画面データIMG2を生成する。
CPU110は、表データIMG1および画面データIMG2を生成すると、表データIMG1および画面データIMG2をRAM301に一旦記憶し、体組成予測処理を終了し、処理を図3のステップS13に進める。
【0047】
ステップS13において、CPU110は、体組成の判定が被験者によって指示されているか否か判定する。体組成の判定とは、体組成の指標について過去のある時点(例えば、5年前)から現在までの実変化と、同じ年齢における平均的な変化とを比較して、その良否の程度を判定(すなわち、評価)することを意味する。
本実施形態では、CPU110は、ステップS13において、表示部50に、「体組成の変化を評価しますか?」というメッセージを表示し、被験者に、「はい」または「いいえ」のいずれかを選択させる。「いいえ」が選択された場合、ステップS13の判定はNOに進み、CPU110は、体組成判定処理を実行することなく、次のステップS19に進む。すなわち、上述のステップ7において、体組成の予測が被験者によって指示されていると判定され、ステップS11における体組成予測処理を実行した場合には、ステップS19において、CPU110は、表データIMG1および画面データIMG2をRAM301から読み出して画面50に順に表示して処理を終了する。また、上述のステップ7において、体組成の予測が被験者によって指示されていると判定されなかった場合であり、且つ、ステップS13における判定結果がNOとなった場合には、ステップS19において、CPU110は、RAM301に記憶しておいた体組成の指標の各現在値を表示部50に表示して処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS13において、「はい」が選択された場合、ステップS13の判定はYESに進み、CPU110は入力処理(ステップS15)に進む。入力処理において、CPU110は、被験者に、体脂肪率および除脂肪量のうち、体組成の変化を評価したい体組成の指標を選択するよう促す画面を表示する。被験者による体組成の指標の選択が完了すると、すなわち、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、何年前の過去の値と現在値との変化について評価したいかについて、被験者に指定させる画面を表示する。本実施形態では、被験者は、「5年前」、「10年前」のいずれかを選択するか、または、1〜15までの所望の年数を指定することが可能である。被験者は、操作入力部40を操作することにより、体組成の指標の選択および年数の指定を行う。本実施形態では、被験者は、体脂肪率を評価対象の指標として選択し、過去の値の年数として、「5年前」を選択したものとする。
【0049】
年数の指定が完了すると、すなわち、年数を指定させる画面において、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、被験者の現在の年齢から、指定された年数だけ遡った年齢における測定値が、指定された体組成の指標について、被験者を示す識別情報に対応付けて書き換え可能メモリ303に記憶されているか否かを判定する。記憶されている場合にはその記憶値を読み出し、過去の値として表示部50に表示する。記憶されていない場合には、被験者に、過去の値を入力するように促す画面を表示することにより、過去の値を取得する。評価の対象となる全ての指標について過去の値が表示された状態において、「SET」キーが押し下げされると、表示された過去の値はRAM301に一旦記憶され、CPU110は、体組成判定処理を実行する(ステップS17)。
なお、被験者を示す識別情報に対応付けて書き換え可能メモリ303に記憶されている過去の値(例えば、5年前の年齢における測定値)は、1つだけであるとは限らない。その場合、その年齢に対応づけて記憶されている複数の測定値の平均値を上記過去の値としてもよい。
【0050】
図9は、図3のステップS17における体組成判定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。CPU110は、ROM302から読み出された体組成判定プログラムP2にしたがって、当該体組成判定処理を実行する。
図9に示されるように、まず、CPU110は、ステップSc1において、評価すべき指標の過去の値(5年前の値)をRAM301から読み出すとともに、同指標について、ステップS5(図3)で測定した現在値を読み出す。続いて、ステップSc3において、現在値から過去の値を減算することにより実変化量を求める。具体的には、CPU110は、体脂肪率%FATについて、上記実変化量を求め、%FAT(f)としてRAM301に一旦記憶する。
【0051】
続いて、CPU110は、ステップSc5において、過去−現在変化量演算処理を実行する。図10は、過去−現在変化量演算処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図10に示されるように、まず、ステップSd1において、CPU110は、ROM302から、評価対象である指標の回帰式を読み出す。評価の対象である指標は体脂肪率なので、読み出される回帰式は上記式(A)である。続いて、ステップSd3において、現在の年齢(p歳)を式(A)に代入する。その結果、変化量Y1(p)が得られる。
【0052】
続いて、ステップSb5において、CPU110は、m年前(mは自然数)の年齢を回帰式(A)に代入して、変化量Y1(p−m)を得る。なお、この場合、過去の値の年数として「5年前」が指定されているので、m=5となる。そして、ステップSd7において、m年前の年齢から現在までの体脂肪率%FATの変化量Y1(m)=Y1(p)−Y1(p−m)を求め、処理を図9のステップSc7に戻す。
【0053】
ステップSc7において、CPU110は、RAM301に一旦記憶しておいた実変化量%FAT(f)と、回帰式に基づいて求められた平均的な変化量である変化量Y1(m)とを比較して、実変化の良否の程度を判定する。
体組成の指標には加齢により数値が増加する傾向にあるものと、減少する傾向にあるものとがある。例えば、図6から理解されるように、体脂肪率は、加齢により数値が増加する傾向にある。よって、ステップSc7における良否判定処理では、加齢により数値が増加する指標について行った体組成判定処理において実変化量がマイナスの値になった場合には、直ちに、変化の良否の程度が「優良」であると判定する。一方、加齢により数値が減少する指標について行った体組成判定処理において実変化量がプラスの値になった場合には、直ちに「優良」であると判定する。なお、「優良」であるとは、後述の「キープ」よりも変化の良否の程度が良いことを示す判定指標である。
【0054】
CPU110は、「優良」と判定されなかった場合について、例えば、以下のような判定を行う。
一例として、現在(30歳)の体脂肪率が23.00%であり、25歳の時の体脂肪率が22.00%であった被験者A(女性)について説明する。過去−現在変化量演算処理において回帰式(A)に基づいて、25歳〜30歳女性の平均的な体脂肪率変化量が1.09%であると求められたとする。良否の程度の判定においては、まず、実変化量1.00%と平均的な変化量1.09%とが比較される。この比較は、平均的な変化量1.09%を基準として実変化量を点数化することにより行われる。すなわち、平均的な変化量1.09%を50点とし、0%(すなわち、変化なし)を100点として、実変化量を点数(以下「キープ点」という)に換算する。具体的には、(x,y)=(1.09,50)、(x,y)=(0,100)を満たす方程式y=−45.875x+100を見出す。次に、この方程式にx=1(実変化量)を代入してy=54.1(小数点以下を四捨五入して54点)を求める。CPU110は、算出したキープ点に基づいて、実変化の良否の程度を判定する。本実施形態では、キープ点が40点未満のときに、変化が「過大」であったと判定し、40点以上60点未満のときに「年齢相当」であったと判定し、60点以上80点未満のときに「ほぼキープ」、80点以上のときに「キープ」であると判定する。
上述の例の場合、キープ点は54点なので、「年齢相当」であると判定される。CPU110は、この判定結果とキープ点の点数とをRAM301に一旦記憶する。
【0055】
次に、CPU110は、他に判定すべき指標があるか否か判定する(ステップSc9)。この判定結果がYESの場合、すなわち、他に判定すべき指標がある場合、CPU110は、その指標について、上述のステップSc5およびSc7の処理を再び実行し、ステップSc7の判定結果とキープ点の点数とをRAM301に一旦記憶する。
本実施形態では、図3のステップS15の入力処理において被験者によって指定された体組成の指標は体脂肪率のみなので、ステップSc9の判定結果はNOとなる。続いて、CPU110は、ステップSc11において、RAM301から、ステップSc7における良否の程度の判定結果とキープ点の数値とを読み出し、表示部50に表示するための表示データを生成する。表示データとしては、例えば、図11に示すように、5年前の実測定値と現在の実測定値とを座標表示するとともに、キープ点「54点」および判定結果「年齢相当」を表示した画面データIMG3を生成する。CPU110は、生成した画面データIMG3をRAM301に一旦記憶し、表示データの生成処理を終了する。続いて、処理は図3のステップS19に戻る。
なお、本実施形態では、一つの時点(5年前)の過去の値と現在値との差を実変化として求め、その変化について判定を行ったが、複数の時点(例えば、5年前と10年前)の過去の値と現在値との差を各々実変化として求め、各々について判定を行ってもよい。
【0056】
ステップS19において、CPU110は、RAM301に記憶されている、表データIMG1、画面データIMG2およびIMG3を画面50に順次表示する。あるいは、表データIMG1および画面データIMG2が生成されていない場合には画面データIMG3のみを画面50に表示して処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る体組成計においては、回帰分析によって得られた回帰式に基づいて、ある母集団における、加齢に伴う体組成の指標の平均的な変化量を求める。よって、上記体組成計によれば、加齢が体組成に及ぼす影響を考慮して、5年後、10年後といった体組成の長期的な変化を予測することが可能になるとともに、過去のある時点から現在までの変化を評価することが可能になる。したがって、従来のように、被験者本人の過去の記録値に基づいて体組成の指標の未来値を予測する場合と比較して、加齢が体組成に及ぼす影響を適切に反映した、長期的な未来値の予測を行うことが可能となる。また、回帰式に基づいて平均的な変化量を取得することが可能なので、過去のある時点から現在までの変化についても、その変化の程度を評価することが可能となる。
【0058】
上記体組成計を用いれば、被験者は、5年後、10年後といった体組成の未来値を知ることができるので、食事や運動といった現在の生活習慣を見直すきっかけとなる。また、過去から現在までの変化の程度が評価されることも、生活習慣を見直すきっかけとなり得る。例えば、キープ点の数値が低い場合には、食生活を見直し、ダイエットを始める動機付けとなり得る。また、図8(A)の表に示されるような数値の変化予測によれば、年齢とともに体脂肪率や体脂肪量は増加し基礎代謝量が減少するといった傾向を、自らの体組成の数値予測を見ることで実感できる。体組成の数値が加齢と共に変化することは、自らの体型が加齢と共に崩れていくことを暗示している。よって、危機感をあおることで体型を維持するために食習慣や生活習慣に気をつけようという意識付けにもつながる。
さらには、上記体組成計を用いて現在値を測定することのみで未来値の予測が可能なので、単なる現在値の測定結果に加えて予言的な表示を簡単に得ることが可能になる。よって、測定の楽しみ、面白みにつながる。
【0059】
<変形例>
変形例1:
上述した実施形態においては、未来値を直接予測可能でない第2未来予測指標として、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積について説明したが、筋肉量についても同様に予測可能である。例えば、筋肉量MVは、以下の演算式にしたがって算出することが可能である。
BMC=r1・FFM・r2……(7)
MV=FFM−BMC……(8)
ただし、BMCは骨量、FFMは除脂肪量であり、r1およびr2は回帰分析によって見出された係数である。
さらに、上述した実施形態において、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積は、第2未来予測指標であるとして説明したが、体脂肪率や除脂肪量について図6および図7に示したように、観測値に基づいて回帰式を求め、その回帰式に基づいて、未来値を直接予測するようにしてもよい。すなわち、第2未来予測指標についても回帰式が利用可能とすれば、第1未来予測指標となり得る。筋肉量についても同様のことが云える。各体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積および筋肉量について回帰式が利用可能な場合、これらの指標についても回帰式に基づいた体組成判定処理を行うことが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態においては、第1未来予測指標である体脂肪率および除脂肪量について、体組成判定処理を実行可能な態様について説明したが、第2未来予測指標である他の指標についても、体組成判定処理を実行可能である。すなわち、回帰式が利用可能でない体組成の指標についても体組成判定処理を行うことが可能である。例えば、体脂肪量について体組成判定処理を行う場合、図9におけるステップSc5における処理は以下のようになる。
CPU110は、まず、回帰式(A)に基づいて過去の年齢における体脂肪率の平均的な変化量Y1(p−m)および現在の年齢における平均的な変化量Y1(p)を得る。同様に、回帰式(B)に基づいて過去の年齢における除脂肪量の平均的な変化量Y2(p−m)および現在の年齢における平均的な変化量Y2(p)を得る。体脂肪量は式(3)(FM=FFM・%Fat/(100−%Fat))によって求められるから、Y1(p−m)およびY2(p−m)を式(3)に代入して、過去の年齢における体脂肪量の平均的な変化量FM(p−m)を得る。同様にして、現在の年齢における体脂肪量の平均的な変化量FM(p)を得る。そして、両者の差(FM(p)−FM(p−m))を体脂肪量の平均的な変化量として取得する。CPU110は、この平均的な変化量と実変化量とを比較して、良否判定処理(ステップSc7)を実行する。
【0061】
体脂肪量、体重、および内臓脂肪面積は加齢とともに増加傾向にある指標である。これに対し、基礎代謝量や筋肉量は、加齢とともに減少傾向にある指標である。すなわち、加齢とともに筋肉量が減少し体脂肪が増加すると、これに伴い基礎代謝量が減少する。また、筋肉量が減少すると、特に老齢期において骨折や腰痛、膝痛などの要因となり得る。よって、加齢に伴う基礎代謝量や筋肉量の減少を予測することで、健康的な生活を長期にわたって維持するための指標とすることができる。
【0062】
なお、いずれの指標においても、回帰分析に用いられる母集団の最も単純な区分は、性別である。性別に加えて、人種、国、居住地など、人体の体型に影響を与え得る区分を用いるようにしてもよい。
【0063】
変形例2:
上記実施形態では、回帰式(A)または(B)に年齢を代入して、CPU110に演算させる態様について説明したが、予め回帰式から得られる年齢ごとの変化量をテーブルとして指標ごとに保持しておき、CPU110に、年齢に対応する変化量を取得させるようにしてもよい。この態様によれば、CPU110の処理負荷が軽減される。
また、上記回帰式(A)または(B)は、いずれも2次曲線(2次式)を表していたが、加齢の影響を加味した指標の変化を表すものとして適切である場合には、Y=ax+bによって表される直線(1次式)であってもよい。
【0064】
変形例3:
上記実施形態においては、体組成判定処理の判定は、実変化量を、平均的な変化量に基づいて点数化した上で、点数が、「過大」、「年齢相当」、「ほぼキープ」あるいは「キープ」である等の判定を行っていたが、必ずしも指標値を点数化する必要はない。例えば、平均的な変化量(絶対値)を用いて、平均的な変化量を中心とした(または平均的な変化量を含む)所定の範囲を設定し、実変化量(絶対値)が当該所定の範囲内にある場合には年齢相当であると判定し、所定の範囲の上限よりも大きい場合には過大であると判定し、所定の範囲の上限よりも小さい場合には良好であると判定するようにしてもよい。良好であるとは、加齢の影響を抑制し、体型を維持している状態を示す。
また、上記実施形態においては、「年齢相当」よりも評価が良い判定指標として「ほぼキープ」および「キープ」を設けたが、両者をまとめて「キープ」または「良好」と判定してもよいし、「過大」、「年齢相当」、「ほぼキープ」あるいは「キープ」なる判定指標を、さらに細分化してもよい。体組成判定処理における判定の指標は、上記実施形態および当該変形例に記載した態様に限定されない。
【0065】
変形例4:
上記実施形態では、体組成計で体組成の指標の現在値を計測し、計測した現在値に基づいて体組成予測処理および体組成判定処理を実行する態様について説明したが、この態様に限られない。例えば、体組成計の代わりに体脂肪計において、体脂肪率の未来値を予測する処理や体脂肪率の変化を評価する処理を行ってもよい。また、上記実施形態においては、体組成予測処理および体組成判定処理の両方を実行することが可能な体組成計について説明したが、いずれか一方の機能のみを有する態様としてもよい。よって、体組成予測装置と体組成判定装置とは別体の装置であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、体組成計に体組成予測処理および体組成判定処理を実行させる態様としたが、装置自体が、体組成の指標を計測する機能を有していなくともよい。よって、例えば、体組成計で体組成の指標の現在値を計測し、計測した現在値のデータをパーソナルコンピュータに転送し、パーソナルコンピュータにおいて上記体組成予測処理および上記体組成判定処理の少なくともいずれかを行ってもよい。すなわち、パーソナルコンピュータを、体組成予測装置および体組成判定装置の少なくともいずれかとして機能させてもよい。具体的には、例えば、図3におけるステップS1〜S5は、従来型の体組成計を用いて処理し、ステップS7以降の処理をパーソナルコンピュータで処理する。また、図3におけるステップS1〜S19の各処理のうち、ステップS19の表示処理のみを外部の表示装置に行わせる態様としてもよい。
【0067】
体組成計からパーソナルコンピュータに対して転送する現在値のデータは、体組成計に出力インターフェースを設けることにより出力すればよい。この出力インターフェースは、当該体組成計とパーソナルコンピュータとを有線で接続するための接続端子であってもよいし、例えば、赤外線通信によりデータを出力する赤外線通信ポートなどの無線通信手段であってもよい。さらに、被験者が、パーソナルコンピュータの入力インターフェースを用いて、体組成の指標の測定値を自ら入力してもよいし、USB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROMなどの可搬記録媒体を介して、パーソナルコンピュータに読み込んでもよい。体組成予測装置または体組成判定装置として機能するパーソナルコンピュータは、体組成計の出力インターフェースから出力された現在値のデータを取得する手段を有する。すなわち、体組成計と有線で接続されている場合にはデータ入力端子を有し、赤外線通信によりデータを受信する場合には、赤外線受信ポート等の無線通信手段を有する。また、USB接続端子やCD−ROMドライブ等の記録媒体接続/再生装置を有する。さらに、体組成判定処理では、被験者の過去の測定値が必要である。よって、パーソナルコンピュータにおいて、被験者の過去の測定値を記録しておき、体組成の判定処理に利用する構成としてもよい。
【0068】
なお、体組成計以外の装置に体組成予測処理および体組成判定処理の少なくとも一方を実行させる場合、PDA(Personal Digital Assistant)および携帯電話などの携帯型情報処理端末であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
5…電源キー、10…本体、30…記憶部、40…操作入力部、50…表示部、60…重量測定装置、70…生体インピーダンス測定装置、70A…電流供給部、70B…電圧検出部、71…電流供給用電極、72…電圧測定用電極、100…体組成計、110…CPU、301…RAM、302…ROM、303…書き換え可能メモリ,F1〜F5…機能指定ボタン、IMG1…表データ、IMG2,IMG3…画面データ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体組成の指標を推定するための装置に関し、特に、体組成の変化を予測し評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
体重や体脂肪率、内臓脂肪面積などの体組成に関わる指標を簡単に取得できる装置が広く普及している。この種の装置を用いれば、所望の体組成の指標を取得して自己の健康維持に利用することができる。
特許文献1には、被験者の体重の将来的な変化を予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−323246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食事や運動といった日々の生活習慣やストレス、加齢などの様々な要因は、人体の体組成に長期的な変化をもたらし得る。よって、体組成の指標を長期的に評価することに対する要望がある。上記技術では将来的な変化が予測されるので、上記技術を用いれば、体組成の指標の未来値を予測することが可能となる。しかしながら、上記技術では被験者の過去の記録値の推移に基づいて予測が行われるので、加齢が体組成に及ぼす影響が反映されず、5年後、10年後といった長期的な未来値を適正に予測することができない。また、従来は、過去の値から、加齢を考慮して、現在の値の良否について評価することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、加齢が体組成に及ぼす影響を考慮して、体組成の指標の長期的な変化を予測することが可能な体組成計、および過去のある時点から現在までの変化を評価することが可能な体組成判定装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、被験者の体組成の指標の未来値を予測することが可能な体組成計であって、前記被験者の前記体組成の指標の現在値を取得する現在値取得手段と、現在の年齢から未来の年齢に達するまでの前記指標の値の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、前記現在値取得手段が取得した前記現在値と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とに基づいて、前記被験者の未来の年齢における前記指標の値を前記未来値として求める第1未来値取得手段とを備えた体組成計を提供する。
【0007】
本発明によれば、体組成の指標について、加齢による影響を考慮して、未来の年齢における値を未来値として長期的に予測することが可能となる。この未来値は、被験者の体組成の指標の現在値と、現在の年齢から未来の年齢に達するまでの指標の値の平均的な変化量とに基づいて得られる。平均的な変化量は、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求められる。回帰式は、母集団(例えば、18歳以上90歳未満の女性)から体組成の指標値のサンプルを抽出して、回帰分析により見出される。「変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める」とは、回帰式に年齢を代入して演算すること、および、回帰式から得られた、変化量と年齢の対応関係を示すテーブルを記憶部に保持しておき、このテーブルに基づいて変化量を求めることを含む。上記未来値取得手段は、前記現在値と前記変化値とを足し合わせて前記未来値を得るようにしてもよい。また、回帰式は、1次式であってもよいし、2次式であってもよい。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記回帰式は、Y=aX2+bX+c、ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。上記回帰式は、体脂肪率の変化量Y1を求めるための回帰式(A)あるいは除脂肪量の変化量Y2を求めるための回帰式(B)として実施形態に例示される。
年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、bは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。
変化量Yは、所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とするから、当該所定の年齢においてY=0である。よって、独立変数である年齢Xを回帰式に代入すると、上記所定の年齢から年齢Xまでの平均的な変化量が求められる。よって、所定の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量(現在年齢変化量)および所定の年齢から未来の年齢までの平均的な変化量(未来年齢変化量)の各々を求め、未来年齢変化量から現在年齢変化量を減算すると、現在の年齢から未来の年齢までの平均的な変化量を求めることができる。よって、本態様によれば、加齢による影響を考慮して、体組成の指標の未来値を長期的に予測することが可能となる。好ましくは、前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つであってもよい。
【0009】
本発明の別の好適な態様において、前記第1未来値取得手段によって取得された前記体組成の指標の未来値に基づいて、当該体組成の指標とは異なる体組成の指標の未来値を予測する第2未来値取得手段をさらに備える。
複数の体組成の指標について未来値を取得する場合、上記回帰式が利用可能なものと、そうでないものとがある。上記回帰式が利用可能でない体組成の指標について未来値を求める場合、第2未来値取得手段によれば、回帰式が利用可能な体組成の指標について上記第1未来値取得手段によって取得された指標の未来値を、推定式に代入して演算により予測することが可能となる。本態様によれば、未来値を予測可能となる体組成の指標の範囲が拡大される。すなわち、回帰式を利用可能でない体組成の指標についても、未来値を予測することが可能となる。
【0010】
なお、本願の実施形態からは、以下の発明を把握することができる。すなわち、過去から現在までの被験者の体組成の指標の変化の良否の程度を判定する判定装置であって、前記被験者の前記体組成の指標の現在値と過去の値との差分を実変化量として取得する差分取得手段と、過去の年齢から現在の年齢に達するまでの前記指標の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、前記差分取得手段が取得した前記実変化量と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とを比較して、体組成変化の程度の良否を判定する良否判定手段とを備えた体組成判定装置を把握することができる。
【0011】
本発明によれば、過去のある年齢における体組成の指標の値と現在の値との実変化量と、同じ期間における平均的な変化量とを比較することにより、体組成の実変化の良否の程度を判定するので、過去のある時点から現在までの数年間の体組成の変化を評価することが可能となる。回帰式は、上記体組成計について上述したように、母集団(例えば、18以上90歳未満の女性)から体組成の指標値のサンプルを抽出して、回帰分析により見出される。「変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める」とは、回帰式に年齢を代入して演算すること、および、回帰式から得られた、変化量と年齢の対応関係を示すテーブルを記憶部に保持しておき、このテーブルに基づいて変化量を求めることを含む。また、回帰式は、1次式であってもよいし、2次式であってもよい。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記回帰式は、Y=aX2+bX+c、ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、前記変化量取得手段は、前記過去の年齢を前記回帰式に代入することにより前記過去の年齢における変化量を過去年齢変化量として求めるとともに、前記現在の年齢を前記回帰式に代入して前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求め、前記現在年齢変化量と前記過去年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する。
体組成計について上述したように、独立変数である年齢Xを回帰式に代入すると、所定の年齢から年齢Xまでの平均的な変化量が求められる。よって、所定の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量(現在年齢変化量)および所定の年齢から過去の年齢までの平均的な変化量(過去年齢変化量)を求め、現在年齢変化量から過去年齢変化量を減算すると、過去の年齢から現在の年齢までの平均的な変化量を求めることができる。よって、本態様によれば、加齢による影響を考慮して、過去から現在までの体組成の指標の実変化を判定することが可能となる。
【0013】
本発明の別の好適な態様において、良否判定手段は、前記実変化量を、前記平均的な変化量を基準とした点数に換算する点数換算手段を有し、前記点数換算手段によって得られた点数が、所定の範囲内にある場合には前記変化が現在の年齢相当であると判定し、前記所定の範囲の上限よりも大きい場合には良好であると判定し、前記所定の範囲の下限よりも小さい場合には前記体組成の変化が過大であると判定する。「前記平均的な変化量を基準とした点数に換算する」とは、例えば、平均的な変化量に基づいて実変化量を点数化することを含む。本態様によれば、過去のある時点から現在までの数年間の体組成の変化が、その年齢の平均的な変化と照らし合わせて点数に換算されるので、複数の体組成の指標についてこのような判定をした場合にも、複数の体組成の指標に共通の尺度で体組成の変化を評価することが可能になる。好ましくは、前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る体組成計100の外観を示す平面図である。
【図2】体組成計100の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】体組成予測処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図5】現在−未来変化量演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】体脂肪率と年齢との関係を示すグラフである。
【図7】除脂肪量と年齢との関係を示すグラフである。
【図8】(A)および(B)は、体組成予測処理の予測結果の表示例である。
【図9】体組成判定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図10】過去−現在変化量演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】体組成判定処理の判定結果の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る体組成計について説明する。本実施形態の体組成計は、複数の体組成の指標について未来値を予測可能であるとともに、過去のある時点から現在までの体組成の指標の変化を評価することが可能である。本実施形態では、予測の対象となる体組成の指標として、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積について説明する。また、評価の対象となる体組成の指標として、体脂肪率について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る体組成計の外観を示す平面図であり、図2は、同体組成計の電気的構成を示すブロック図である。
図1および図2に示されるように、体組成計100は、本体10と、その上面に配置され、被験者の足裏に電流を供給するための電流供給用電極71(71Rおよび71L)と、被験者の足裏の2点間の電圧を測定するための電圧測定用電極72(72Rおよび72L)と、被験者への操作の案内や測定結果の通知を表示するための表示部50と、被験者またはユーザが各種指示を入力する操作入力部40とを備える。表示部50としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置がある。操作入力部40はアップキーおよびダウンキー、ならびにSETキーを有する。被験者またはユーザ(以下、単に「被験者」という)は表示部50に表示された案内にしたがってアップキーおよび/またはダウンキーを操作して数値を増減したり、表示部50に表示されたカーソルを上下させることができる。SETキーは、アップキーおよび/またはダウンキーの操作が終わったのちに押し下げすることで、各種指示を確定するために用いられる。
【0017】
加えて、本体10の上面には、操作入力部40の図中下方向の部分に、体組成の指標を被験者に指定させるための機能指定ボタンF1〜F5が配置されている。本実施形態では、機能指定ボタF1〜F5の各々に、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の各々が対応付けられている。ROM302には、これら体組成の指標を求めるための演算式(推定式)が予め記憶されている。さらに、本体10には、当該体組成計の電源をオン状態とするための電源キー5が設けられる。
【0018】
本体10の内部には、記憶部30と、重量測定装置60と、生体インピーダンス測定装置70と、CPU110とが設けられている。重量測定装置60には図示せぬ重量センサが設けられる。この重量センサは、被験者が本体10に乗ったときに、その重量である被験者の体重を重量データとして出力可能である。重量センサとしては、起歪体と歪ゲージとを有し、起歪体の歪による電圧の変化を測定して出力するロードセルがある。重量測定装置60から出力された重量データは、A/D変換器(図示略)によってデジタル信号に変換された後に体重WとしてCPU110に供給される。
【0019】
生体インピーダンス測定装置70は、電流供給部70Aおよび電圧検出部70Bを備える。電流供給部70Aは、被験者が本体10に乗ったときに、その上面部に形成された各電流供給用電極71Lおよび71Rを介して被験者の足裏に高周波の微弱な定電流を印加し、電圧検出部70Bは各電圧測定用電極72Lおよび72Rを介して電位差を測定する。測定された電位差のデータは、A/D変換器(図示略)によってデジタル変換された後に生体インピーダンスZとしてCPU110に供給される。
【0020】
記憶部30は、RAM(Random Access Memory)301と、ROM(Read Only Memory)302と、書き換え可能メモリ303とを有する。ROM302は、不揮発性のメモリであり、CPU110に各種処理を実行させるための各種プログラムおよび本実施形態に係る動作をCPU110に実行させるための体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2、さらに、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、基礎代謝量、内臓脂肪面積および体重の各々を求めるための演算式が記憶されている。本実施形態では、体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2を記憶した媒体としてROM302を使用するが、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム要素としての体組成予測プログラムP1および体組成判定プログラムP2を記憶するために使用してもよい。
【0021】
ROM302には、さらに、所定の年齢(本実施形態では、18歳以上25歳未満)における体組成の指標の平均値を基準とした回帰式が、体脂肪率および除脂肪量の各々について記憶されている。各体組成の指標を求めるための演算式および回帰式については、後段に詳述する。
RAM301は、CPU110のワークエリアとして機能する。書き換え可能メモリ303には、身長、年齢および性別といった個人データが、個人を識別する識別情報と対応付けて記憶されている。また、識別情報と対応付けて、体組成の指標の過去の測定値と測定時点の被験者の年齢とが対応づけて記録されている。
【0022】
図3は、本実施形態に係る動作の流れを示すフローチャートである。まず、体組成計100は、電源キー5が被験者によって押し下げられると、その電源がオン状態となる。そして、被験者が本体10に乗った状態において、体組成計100は、被験者の体重を測定し(ステップS1)、生体インピーダンスを測定する(ステップS3)。そして、重量測定装置60によって測定された体重Wおよび生体インピーダンス測定装置70によって測定された生体インピーダンスZは、CPU110に送られた後にRAM301に一時的に記憶される。次に、CPU110は、これらの測定値を用いて、体組成の各指標を演算する(ステップS5)。
【0023】
本実施形態では、各機能指定ボタンF1〜F5のすべてが被験者によって押し下げられたとする。よって、まず、CPU110は、体脂肪率%Fatを求めるための演算式をROM302から読み出し、読み出した演算式を用いて体脂肪率を推定する。
体脂肪率%Fatを推定するための演算式としては、例えば、以下のものがある。
%Fat=f1・Z・W/H2−f2……(1)
ただし、f1及びf2は係数であり、重回帰分析により適宜定められる値である。また、Zは生体インピーダンス、Wは体重、Hは身長である。身長Hは、ユーザが操作入力部40を用いて予め入力したものであり、そのデータは、個人データとして、書き換え可能メモリ303に記憶されている。
【0024】
次に、CPU110は、除脂肪量FFMを求めるための演算式をROM302から読み出し、除脂肪量を求める。除脂肪量FFMは、例えば、以下の式に従って求められる。
FFM=W−W・%Fat/100……(2)
ただし、Wは体重であり、%Fatは式(1)によって求められる値である。よって、例えば、体脂肪率を指定するF1ボタンが押されず、除脂肪量を指定するF2ボタンだけが押された場合でも、CPU110は、式(1)と式(2)の両方をROM302から読み出して、式(1)、式(2)の順に演算することにより除脂肪量を求める。
【0025】
同様にして、CPU110は、体脂肪量FAT、基礎代謝量BMRおよび内臓脂肪面積VFAの各々を求めるための式をROM302から読み出し、演算を実行する。体脂肪量、基礎代謝量および内臓脂肪面積は、例えば、以下の式に従って求められる。
体脂肪量FM=FFM・%Fat/(100−%Fat)……(3)
基礎代謝量BMR=p1・FFM2+p2・FFM+p3・(1/Age)+p4……(4)
内臓脂肪面積VFA=q1・H2/W+q2・FM+q3・Age+q4……(5)
ただし、係数p1〜p4およびq1〜q4は、重回帰分析により適宜定められる値であり、Ageは年齢、Hは身長、Wは体重である。身長Hおよび年齢Ageは、ユーザが操作入力部40を用いて予め入力したものであり、そのデータは、個人データとして、書き換え可能メモリ303に記憶されている。式(3)における%Fatは、式(1)によって求められる値であり、式(3)および(4)におけるFFMは式(2)によって求められる値であり、式(4)におけるFMは式(3)によって求められる値であるから、CPU110は、ROM302から、体脂肪量FMの演算に際しては式(1)〜(3)を読み出し、基礎代謝量BMRの演算に際しては式(1)から(4)を読み出し、内臓脂肪面積VFAの演算に際しては、式(1)〜(3)および(5)を読み出す。
【0026】
CPU110は、式(1)〜(5)の各々に基づいて算出された体脂肪率%Fat、除脂肪量FFM、体脂肪量FM、基礎代謝量BMおよび内臓脂肪面積VFAを、RAM301に一旦記憶する。ステップS1において測定された体重Wおよび、ステップS5で算出された体組成の指標の各値は、被験者の体組成の指標の現在値である。
【0027】
次に、ステップS7において、CPU110は、体組成の未来値の予測が被験者によって指示されているか否か判定する。体組成の未来値の予測とは、体組成の指標の5年後、10年後といった未来の値を予測することを意味する。
本実施形態では、CPU110は、ステップS7において、表示部50に、「未来値を予測しますか?」というメッセージを表示し、被験者に、「はい」または「いいえ」のいずれかを選択させる。「いいえ」が選択された場合、ステップS7の判定はNOに進み、CPU110は、体組成予測処理を実行することなく、次のステップS13に進む。
【0028】
一方、「はい」が選択された場合、ステップS7の判定はYESに進み、CPU110は次の入力処理(ステップS9)に進む。入力処理において、CPU110は、被験者に、体脂肪率、除脂肪量、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、未来値を予測したい体組成の指標を選択するよう促す画面を表示する。被験者による体組成の指標の選択が完了すると、すなわち、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、何年後の未来値を予測したいかについて、被験者に指定させる画面を表示する。本実施形態では、被験者は、「5年後」、「10年後」および「20年後」のいずれかを選択するか、または、1〜30までの所望の年数を指定することが可能である。被験者は、操作入力部40を操作することにより、体組成の指標の選択および未来値の年数の指定を行う。年数の指定が完了すると、すなわち、年数を指定させる画面において、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、体組成予測処理を実行する(ステップS11)。
【0029】
本実施形態では、被験者は、体脂肪率、除脂肪量、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の全ての指標を予測対象の指標として選択し、未来値の年数として、「5年後」および「10年後」を選択したとする。なお、説明の便宜上、未来値の予測は、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積の順に実行されるものとし、異なる年数の未来値の予測については、「5年後」、「10年後」の順に実行されるものとするが、本実施形態で示された順序に本実施形態を限定するものではない。
【0030】
図4は、図3における体組成予測処理の詳細な流れを示すフローチャートである。CPU110は、ROM302から読み出された体組成予測プログラムP1にしたがって、当該体組成予測処理を実行する。
まず、ステップSa1において、CPU110は、未来値を予測する対象となる指標が直接予測可能な指標か否かを判定する。
本実施形態では、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、体脂肪率および除脂肪量については、回帰式がROM302に記憶されており、利用可能である。よって、体脂肪率および除脂肪量についてはその未来値が直接予測可能であるものとして説明する。未来値の予測は、図6および図7に示すような、母集団におけるサンプルの観測値から見出された回帰曲線に基づいて行われる。
【0031】
図6は、女性の体脂肪率について、年齢に対応した体脂肪率%FATの観測値と、観測値の回帰曲線(2次曲線)を示すグラフである。同グラフに示されるように、体脂肪率は、加齢と共に少しずつ増加するが、直線的な増加ではなく、緩やかな曲線に集約される。よって、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量Y1(%)を、年齢を独立変数として回帰式を作成すると、
体脂肪率の変化量Y1=a1・X2+b1・X+c1……(A)
となる。ただし、Xは年齢であり、a1、b1およびc1は回帰分析によって見出された係数である。
【0032】
図7は、女性の除脂肪量について、年齢に対応した除脂肪量FFMの観測値と、観測値の回帰曲線(2次曲線)を示すグラフである。同グラフに示されるように、除脂肪量は、加齢と共に増加するが、直線的な増加ではなく、また、加齢と共に一旦増加するが、40歳前後をピークに減少に転じる、湾曲した曲線に集約される。よって、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量Y2(kg)を、年齢を独立変数として回帰式を作成すると、
除脂肪量の変化量Y2=a2・X2+b2・X+c2……(B)
となる。ただし、Xは年齢であり、a2、b2およびc2は回帰分析によって見出された係数である。
【0033】
図6および図7から理解されるように、体組成の指標ごとの加齢に伴う数値の変化には回帰的な関係を見出すことができる。よって、回帰式に年齢を当てはめることにより、例えば、被験者の現在の年齢が30歳であるとした場合に、35歳になったときに体組成の指標が平均的にどの程度変化しているのか(平均的な変化量)を知ることが可能となる。
さらに詳細には、まず、体脂肪率については、式(A)に年齢を代入して、現在の年齢(30歳)の体脂肪率の変化量Y1(30)および35歳になったときの変化量Y1(35)を求める。式(A)によって求められる変化量Y1は、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量であるから、変化量Y1(35)から変化量Y1(30)を減算すると、30歳〜35歳までの平均的な変化量Y1(30〜35)が求められる。そして、現在の体脂肪率%FATに、変化量Y1(30〜35)を加算すると、5年後の体脂肪率が求められる。
【0034】
同様に、除脂肪量については、式(B)に年齢を代入して、現在の年齢(30歳)の除脂肪量の変化量Y2(30)および35歳になったときの変化量Y2(35)を求める。式(B)によって求められる変化量Y2は、18歳以上25歳未満の平均値をゼロとした場合の変化量であるから、変化量Y2(35)と変化量Y2(30)との差が、30歳〜35歳までの平均的な変化量Y2(30-35)として求められる。そして、現在の除脂肪量FFMに、変化量Y2(30〜35)を加算すると、5年後の除脂肪量が求められる。このように、本実施形態では、加齢が体組成の指標の数値に与える影響を統計的に分析し、その分析結果に基づいて、現在の年齢から未来のある年齢までの平均的な変化量を取得する。上述の例では、女性を母集団とした場合に、30歳〜35歳の5年間で、体脂肪率および除脂肪量が一般的にどの程度増加するかを、回帰式に基づいて求める。したがって、加齢による影響を考慮した未来値の予測が可能となる。このように回帰式に基づいて予測可能な指標を、以下、「第1未来予測指標」と呼ぶ。
【0035】
一方、本実施形態では、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の回帰式はROM302に記憶されていないから、これらの指標は直接予測可能でない指標(「第2未来予測指標」と総称する)である。第2未来予測指標は、第1未来予測指標の少なくともいずれかの未来値を、演算式に代入することで、その未来値が取得される。第2未来予測指標の推定に用いられる演算式は、例えば、以下のものがある。
体脂肪量FM=FFM・%Fat/(100−%Fat)……(3)
基礎代謝量BMR=p1・FFM2+p2・FFM+p3・(1/Age)+p4……(4)
内臓脂肪面積VFA=q1・H2/W+q2・FM+q3・Age+q4……(5)
体重W=FFM+FM……(6)
式(3)〜(6)から理解されるように、いずれの式においても、除脂肪量FFMは、いずれの式においても直接的または間接的にパラメータとして利用されており、体脂肪率%Fatは、式(4)を除く全ての式で直接的または間接的にパラメータとして利用されている。よって、第2未来予測指標を推定するためには、第1未来予測指標である体脂肪率%Fatおよび除脂肪量FFMの未来値(基礎代謝利用の場合には除脂肪量FFMの未来値のみ)を事前に予測しておくことが必要となる。
【0036】
よって、ステップSa1において、未来値を予測する対象となる指標が、直接予測可能な指標でないと判定された場合(ステップSa1:NO)、すなわち、体重、体脂肪量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のいずれかであった場合、次に、CPU110は、ステップSa11において、直接予測可能な全ての指標の未来値の予測が完了したか否か判定する。CPU110は、この判断結果が肯定的となるまで、ステップSa11:NO、ステップSa1:NOの処理を繰り返す。
なお、上述したように、本実施形態では、説明の便宜上、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積の順に、未来値の予測が実行されることとしている。すなわち、まず、第1未来予測指標の予測を行い、次に第2未来指標の予測を行う。よって、ステップSa1の判定がNOになると、ステップSa11の判定結果は常にYESとなる。
【0037】
一方、ステップSa1において、未来値を予測する対象となる指標が、直接予測可能な指標であると判定された場合(ステップSa1:YES)、すなわち、体脂肪率か除脂肪量のいずれかであった場合、CPU110は、処理を現在−未来変化量演算処理(ステップSa3)に進める。この場合、最初に未来値を予測する対象となる指標は体脂肪率なので、処理はステップSa3に進み、体脂肪率について、現在−未来変化量演算処理が実行される。
【0038】
図5は、現在−未来変化量演算処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。図5に示されるように、まず、ステップSb1において、CPU110は、ROM302から、予測対象である指標の回帰式を読み出す。予測対象である指標は体脂肪率なので、読み出される回帰式は、上記式(A)である。続いて、ステップSb3において、現在の年齢(p歳)(pは自然数)を式(A)に代入する。その結果、変化量Y1(p)が得られる。
【0039】
続いて、ステップSb5において、CPU110は、n年後(nは自然数)の年齢を回帰式(A)に代入して、変化量Y1(p+n)を得る。なお、この場合、未来値の年数として「5年後」が指定されているので、n=5となる。そして、ステップSb7において、現在からn年後の年齢までの体脂肪率%FATの変化量Y1(n)=Y1(p+n)−Y1(p)を求め、処理を図4のステップSa5に戻す。
【0040】
図4のステップSa5において、CPU110は、ステップS5(図3)において算出され、RAM301に一旦記憶された体脂肪率%FATの現在値と、ステップSa3で求めた体脂肪率%FATの変化量とを足し合わせて、n年後(n=5なので5年後)の体脂肪率の未来値を得る。CPU110は、この5年後の未来値を%FAT(p+5)としてRAM301に一旦記憶する。
【0041】
次に、CPU110は、同じ指標について他の未来値を予測するか否かについて判定する(ステップSa7)。ステップS9(図3)では被験者により10年後の未来値が指定されているので、ステップSa7の判定はYESとなり、CPU110は、ステップSa3〜Sa5の処理を実行する。その結果、10年後の体脂肪率の未来値を得る。CPU110は、この10年後の未来値を%FAT(p+10)としてRAM301に一旦記憶する。
【0042】
次に、CPU110は、再びステップSa7において、他に予測すべき未来値があるか否かを判定する。体脂肪率の未来値の取得は完了したので、この場合、判定結果はNOとなり、続いて、CPU110は、ステップSa9において、予測すべき別の指標があるか否かについて判定する。この場合、次に除脂肪量の未来値を予測すべきなので、判定結果はYESとなり、CPU110は、処理をステップSa1に戻す。
【0043】
続いて、CPU110は、体脂肪率の場合と同様にして、除脂肪量について5年後および10年後の未来値を各々取得し(ステップSa1:YES〜Sa9:YES)、取得した未来値を各々FFM(p+5)およびFFM(p+10)としてRAM301に一時的に記憶する。そして、CPU110は、再び、ステップSa1の処理において、次の体組成の指標が直接予測可能な指標か否か判定する。この場合、次に予測すべき体組成の指標は体脂肪量であるので、ステップSa1の判定結果はNOとなり、続いて、ステップSa11の判定結果はYESとなる。
【0044】
次に、CPU110は、ROM302から体脂肪量を求めるための式(3)を読み出し(ステップSa13)、RAM301に一旦記憶しておいた、FFM(p+5)および%FAT(p+5)を演算式に代入して、体脂肪量FMの5年後の未来値を求める(ステップSa15)。取得された値は、FM(p+5)として、RAM301に一旦記憶される。CPU110は、次に、ステップSa17において、同じ指標について予測すべき未来値が他にあるか否かを判定する。この場合、10年後の未来値を予測すべきであるので、ステップSa17の判定結果はYESとなり、CPU110は体脂肪量FMの10年後の未来値について、ステップSa15の処理を実行する。すなわち、RAM301に一旦記憶しておいた、FFM(p+10)および%FAT(p+10)を演算式(3)に代入する。そして、取得した未来値をFM(p+10)として、RAM301に一旦記憶する。続いて、CPU110は、ステップSa17において、同じ指標について予測すべき未来値が他にあるか否かを再び判定し、この判定結果はNOとなるので、処理をステップSa9に進める。この場合、予測すべき別の指標があるので、ステップSa9の判定結果はYESとなり、処理はステップSa1に戻る。
【0045】
CPU110は、続いて、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の各指標について、ステップSa1:NO、Sa11:YES、Sa13およびSa15の処理を実行し、取得した各未来値をRAM301に記憶する。そして、Sa17の判定結果がNOとなり、且つ、ステップSa9の判定結果がNOとなると、処理をステップSa19に進める。ここで、ステップSa13においては、予測対象となる体組成の指標の推定に必要となる演算式が全て読み出される。例えば、体重Wを求めるための演算式(6)では体脂肪量FMがパラメータとして用いられるので、体重Wの未来値の推定の際には、式(3)および(6)がROM302から読み出される。
【0046】
ステップSa19において、CPU110は、RAM301に記憶しておいた各体組成の指標の現在値と未来値を示す表示データを生成する。生成された表示データは、例えば、図8の(A)に示すような表データIMG1となる。また、表データIMG1に加えて、図8の(B)に示すような、体脂肪率についての現在値、5年後の値および10年後の値が各々座標表示された画面データIMG2を生成する。
CPU110は、表データIMG1および画面データIMG2を生成すると、表データIMG1および画面データIMG2をRAM301に一旦記憶し、体組成予測処理を終了し、処理を図3のステップS13に進める。
【0047】
ステップS13において、CPU110は、体組成の判定が被験者によって指示されているか否か判定する。体組成の判定とは、体組成の指標について過去のある時点(例えば、5年前)から現在までの実変化と、同じ年齢における平均的な変化とを比較して、その良否の程度を判定(すなわち、評価)することを意味する。
本実施形態では、CPU110は、ステップS13において、表示部50に、「体組成の変化を評価しますか?」というメッセージを表示し、被験者に、「はい」または「いいえ」のいずれかを選択させる。「いいえ」が選択された場合、ステップS13の判定はNOに進み、CPU110は、体組成判定処理を実行することなく、次のステップS19に進む。すなわち、上述のステップ7において、体組成の予測が被験者によって指示されていると判定され、ステップS11における体組成予測処理を実行した場合には、ステップS19において、CPU110は、表データIMG1および画面データIMG2をRAM301から読み出して画面50に順に表示して処理を終了する。また、上述のステップ7において、体組成の予測が被験者によって指示されていると判定されなかった場合であり、且つ、ステップS13における判定結果がNOとなった場合には、ステップS19において、CPU110は、RAM301に記憶しておいた体組成の指標の各現在値を表示部50に表示して処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS13において、「はい」が選択された場合、ステップS13の判定はYESに進み、CPU110は入力処理(ステップS15)に進む。入力処理において、CPU110は、被験者に、体脂肪率および除脂肪量のうち、体組成の変化を評価したい体組成の指標を選択するよう促す画面を表示する。被験者による体組成の指標の選択が完了すると、すなわち、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、何年前の過去の値と現在値との変化について評価したいかについて、被験者に指定させる画面を表示する。本実施形態では、被験者は、「5年前」、「10年前」のいずれかを選択するか、または、1〜15までの所望の年数を指定することが可能である。被験者は、操作入力部40を操作することにより、体組成の指標の選択および年数の指定を行う。本実施形態では、被験者は、体脂肪率を評価対象の指標として選択し、過去の値の年数として、「5年前」を選択したものとする。
【0049】
年数の指定が完了すると、すなわち、年数を指定させる画面において、「SET」キーが押し下げされると、CPU110は、続いて、被験者の現在の年齢から、指定された年数だけ遡った年齢における測定値が、指定された体組成の指標について、被験者を示す識別情報に対応付けて書き換え可能メモリ303に記憶されているか否かを判定する。記憶されている場合にはその記憶値を読み出し、過去の値として表示部50に表示する。記憶されていない場合には、被験者に、過去の値を入力するように促す画面を表示することにより、過去の値を取得する。評価の対象となる全ての指標について過去の値が表示された状態において、「SET」キーが押し下げされると、表示された過去の値はRAM301に一旦記憶され、CPU110は、体組成判定処理を実行する(ステップS17)。
なお、被験者を示す識別情報に対応付けて書き換え可能メモリ303に記憶されている過去の値(例えば、5年前の年齢における測定値)は、1つだけであるとは限らない。その場合、その年齢に対応づけて記憶されている複数の測定値の平均値を上記過去の値としてもよい。
【0050】
図9は、図3のステップS17における体組成判定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。CPU110は、ROM302から読み出された体組成判定プログラムP2にしたがって、当該体組成判定処理を実行する。
図9に示されるように、まず、CPU110は、ステップSc1において、評価すべき指標の過去の値(5年前の値)をRAM301から読み出すとともに、同指標について、ステップS5(図3)で測定した現在値を読み出す。続いて、ステップSc3において、現在値から過去の値を減算することにより実変化量を求める。具体的には、CPU110は、体脂肪率%FATについて、上記実変化量を求め、%FAT(f)としてRAM301に一旦記憶する。
【0051】
続いて、CPU110は、ステップSc5において、過去−現在変化量演算処理を実行する。図10は、過去−現在変化量演算処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図10に示されるように、まず、ステップSd1において、CPU110は、ROM302から、評価対象である指標の回帰式を読み出す。評価の対象である指標は体脂肪率なので、読み出される回帰式は上記式(A)である。続いて、ステップSd3において、現在の年齢(p歳)を式(A)に代入する。その結果、変化量Y1(p)が得られる。
【0052】
続いて、ステップSb5において、CPU110は、m年前(mは自然数)の年齢を回帰式(A)に代入して、変化量Y1(p−m)を得る。なお、この場合、過去の値の年数として「5年前」が指定されているので、m=5となる。そして、ステップSd7において、m年前の年齢から現在までの体脂肪率%FATの変化量Y1(m)=Y1(p)−Y1(p−m)を求め、処理を図9のステップSc7に戻す。
【0053】
ステップSc7において、CPU110は、RAM301に一旦記憶しておいた実変化量%FAT(f)と、回帰式に基づいて求められた平均的な変化量である変化量Y1(m)とを比較して、実変化の良否の程度を判定する。
体組成の指標には加齢により数値が増加する傾向にあるものと、減少する傾向にあるものとがある。例えば、図6から理解されるように、体脂肪率は、加齢により数値が増加する傾向にある。よって、ステップSc7における良否判定処理では、加齢により数値が増加する指標について行った体組成判定処理において実変化量がマイナスの値になった場合には、直ちに、変化の良否の程度が「優良」であると判定する。一方、加齢により数値が減少する指標について行った体組成判定処理において実変化量がプラスの値になった場合には、直ちに「優良」であると判定する。なお、「優良」であるとは、後述の「キープ」よりも変化の良否の程度が良いことを示す判定指標である。
【0054】
CPU110は、「優良」と判定されなかった場合について、例えば、以下のような判定を行う。
一例として、現在(30歳)の体脂肪率が23.00%であり、25歳の時の体脂肪率が22.00%であった被験者A(女性)について説明する。過去−現在変化量演算処理において回帰式(A)に基づいて、25歳〜30歳女性の平均的な体脂肪率変化量が1.09%であると求められたとする。良否の程度の判定においては、まず、実変化量1.00%と平均的な変化量1.09%とが比較される。この比較は、平均的な変化量1.09%を基準として実変化量を点数化することにより行われる。すなわち、平均的な変化量1.09%を50点とし、0%(すなわち、変化なし)を100点として、実変化量を点数(以下「キープ点」という)に換算する。具体的には、(x,y)=(1.09,50)、(x,y)=(0,100)を満たす方程式y=−45.875x+100を見出す。次に、この方程式にx=1(実変化量)を代入してy=54.1(小数点以下を四捨五入して54点)を求める。CPU110は、算出したキープ点に基づいて、実変化の良否の程度を判定する。本実施形態では、キープ点が40点未満のときに、変化が「過大」であったと判定し、40点以上60点未満のときに「年齢相当」であったと判定し、60点以上80点未満のときに「ほぼキープ」、80点以上のときに「キープ」であると判定する。
上述の例の場合、キープ点は54点なので、「年齢相当」であると判定される。CPU110は、この判定結果とキープ点の点数とをRAM301に一旦記憶する。
【0055】
次に、CPU110は、他に判定すべき指標があるか否か判定する(ステップSc9)。この判定結果がYESの場合、すなわち、他に判定すべき指標がある場合、CPU110は、その指標について、上述のステップSc5およびSc7の処理を再び実行し、ステップSc7の判定結果とキープ点の点数とをRAM301に一旦記憶する。
本実施形態では、図3のステップS15の入力処理において被験者によって指定された体組成の指標は体脂肪率のみなので、ステップSc9の判定結果はNOとなる。続いて、CPU110は、ステップSc11において、RAM301から、ステップSc7における良否の程度の判定結果とキープ点の数値とを読み出し、表示部50に表示するための表示データを生成する。表示データとしては、例えば、図11に示すように、5年前の実測定値と現在の実測定値とを座標表示するとともに、キープ点「54点」および判定結果「年齢相当」を表示した画面データIMG3を生成する。CPU110は、生成した画面データIMG3をRAM301に一旦記憶し、表示データの生成処理を終了する。続いて、処理は図3のステップS19に戻る。
なお、本実施形態では、一つの時点(5年前)の過去の値と現在値との差を実変化として求め、その変化について判定を行ったが、複数の時点(例えば、5年前と10年前)の過去の値と現在値との差を各々実変化として求め、各々について判定を行ってもよい。
【0056】
ステップS19において、CPU110は、RAM301に記憶されている、表データIMG1、画面データIMG2およびIMG3を画面50に順次表示する。あるいは、表データIMG1および画面データIMG2が生成されていない場合には画面データIMG3のみを画面50に表示して処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る体組成計においては、回帰分析によって得られた回帰式に基づいて、ある母集団における、加齢に伴う体組成の指標の平均的な変化量を求める。よって、上記体組成計によれば、加齢が体組成に及ぼす影響を考慮して、5年後、10年後といった体組成の長期的な変化を予測することが可能になるとともに、過去のある時点から現在までの変化を評価することが可能になる。したがって、従来のように、被験者本人の過去の記録値に基づいて体組成の指標の未来値を予測する場合と比較して、加齢が体組成に及ぼす影響を適切に反映した、長期的な未来値の予測を行うことが可能となる。また、回帰式に基づいて平均的な変化量を取得することが可能なので、過去のある時点から現在までの変化についても、その変化の程度を評価することが可能となる。
【0058】
上記体組成計を用いれば、被験者は、5年後、10年後といった体組成の未来値を知ることができるので、食事や運動といった現在の生活習慣を見直すきっかけとなる。また、過去から現在までの変化の程度が評価されることも、生活習慣を見直すきっかけとなり得る。例えば、キープ点の数値が低い場合には、食生活を見直し、ダイエットを始める動機付けとなり得る。また、図8(A)の表に示されるような数値の変化予測によれば、年齢とともに体脂肪率や体脂肪量は増加し基礎代謝量が減少するといった傾向を、自らの体組成の数値予測を見ることで実感できる。体組成の数値が加齢と共に変化することは、自らの体型が加齢と共に崩れていくことを暗示している。よって、危機感をあおることで体型を維持するために食習慣や生活習慣に気をつけようという意識付けにもつながる。
さらには、上記体組成計を用いて現在値を測定することのみで未来値の予測が可能なので、単なる現在値の測定結果に加えて予言的な表示を簡単に得ることが可能になる。よって、測定の楽しみ、面白みにつながる。
【0059】
<変形例>
変形例1:
上述した実施形態においては、未来値を直接予測可能でない第2未来予測指標として、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積について説明したが、筋肉量についても同様に予測可能である。例えば、筋肉量MVは、以下の演算式にしたがって算出することが可能である。
BMC=r1・FFM・r2……(7)
MV=FFM−BMC……(8)
ただし、BMCは骨量、FFMは除脂肪量であり、r1およびr2は回帰分析によって見出された係数である。
さらに、上述した実施形態において、体脂肪率、除脂肪量、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積のうち、体脂肪量、体重、基礎代謝量、および内臓脂肪面積は、第2未来予測指標であるとして説明したが、体脂肪率や除脂肪量について図6および図7に示したように、観測値に基づいて回帰式を求め、その回帰式に基づいて、未来値を直接予測するようにしてもよい。すなわち、第2未来予測指標についても回帰式が利用可能とすれば、第1未来予測指標となり得る。筋肉量についても同様のことが云える。各体脂肪量、体重、基礎代謝量、内臓脂肪面積および筋肉量について回帰式が利用可能な場合、これらの指標についても回帰式に基づいた体組成判定処理を行うことが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態においては、第1未来予測指標である体脂肪率および除脂肪量について、体組成判定処理を実行可能な態様について説明したが、第2未来予測指標である他の指標についても、体組成判定処理を実行可能である。すなわち、回帰式が利用可能でない体組成の指標についても体組成判定処理を行うことが可能である。例えば、体脂肪量について体組成判定処理を行う場合、図9におけるステップSc5における処理は以下のようになる。
CPU110は、まず、回帰式(A)に基づいて過去の年齢における体脂肪率の平均的な変化量Y1(p−m)および現在の年齢における平均的な変化量Y1(p)を得る。同様に、回帰式(B)に基づいて過去の年齢における除脂肪量の平均的な変化量Y2(p−m)および現在の年齢における平均的な変化量Y2(p)を得る。体脂肪量は式(3)(FM=FFM・%Fat/(100−%Fat))によって求められるから、Y1(p−m)およびY2(p−m)を式(3)に代入して、過去の年齢における体脂肪量の平均的な変化量FM(p−m)を得る。同様にして、現在の年齢における体脂肪量の平均的な変化量FM(p)を得る。そして、両者の差(FM(p)−FM(p−m))を体脂肪量の平均的な変化量として取得する。CPU110は、この平均的な変化量と実変化量とを比較して、良否判定処理(ステップSc7)を実行する。
【0061】
体脂肪量、体重、および内臓脂肪面積は加齢とともに増加傾向にある指標である。これに対し、基礎代謝量や筋肉量は、加齢とともに減少傾向にある指標である。すなわち、加齢とともに筋肉量が減少し体脂肪が増加すると、これに伴い基礎代謝量が減少する。また、筋肉量が減少すると、特に老齢期において骨折や腰痛、膝痛などの要因となり得る。よって、加齢に伴う基礎代謝量や筋肉量の減少を予測することで、健康的な生活を長期にわたって維持するための指標とすることができる。
【0062】
なお、いずれの指標においても、回帰分析に用いられる母集団の最も単純な区分は、性別である。性別に加えて、人種、国、居住地など、人体の体型に影響を与え得る区分を用いるようにしてもよい。
【0063】
変形例2:
上記実施形態では、回帰式(A)または(B)に年齢を代入して、CPU110に演算させる態様について説明したが、予め回帰式から得られる年齢ごとの変化量をテーブルとして指標ごとに保持しておき、CPU110に、年齢に対応する変化量を取得させるようにしてもよい。この態様によれば、CPU110の処理負荷が軽減される。
また、上記回帰式(A)または(B)は、いずれも2次曲線(2次式)を表していたが、加齢の影響を加味した指標の変化を表すものとして適切である場合には、Y=ax+bによって表される直線(1次式)であってもよい。
【0064】
変形例3:
上記実施形態においては、体組成判定処理の判定は、実変化量を、平均的な変化量に基づいて点数化した上で、点数が、「過大」、「年齢相当」、「ほぼキープ」あるいは「キープ」である等の判定を行っていたが、必ずしも指標値を点数化する必要はない。例えば、平均的な変化量(絶対値)を用いて、平均的な変化量を中心とした(または平均的な変化量を含む)所定の範囲を設定し、実変化量(絶対値)が当該所定の範囲内にある場合には年齢相当であると判定し、所定の範囲の上限よりも大きい場合には過大であると判定し、所定の範囲の上限よりも小さい場合には良好であると判定するようにしてもよい。良好であるとは、加齢の影響を抑制し、体型を維持している状態を示す。
また、上記実施形態においては、「年齢相当」よりも評価が良い判定指標として「ほぼキープ」および「キープ」を設けたが、両者をまとめて「キープ」または「良好」と判定してもよいし、「過大」、「年齢相当」、「ほぼキープ」あるいは「キープ」なる判定指標を、さらに細分化してもよい。体組成判定処理における判定の指標は、上記実施形態および当該変形例に記載した態様に限定されない。
【0065】
変形例4:
上記実施形態では、体組成計で体組成の指標の現在値を計測し、計測した現在値に基づいて体組成予測処理および体組成判定処理を実行する態様について説明したが、この態様に限られない。例えば、体組成計の代わりに体脂肪計において、体脂肪率の未来値を予測する処理や体脂肪率の変化を評価する処理を行ってもよい。また、上記実施形態においては、体組成予測処理および体組成判定処理の両方を実行することが可能な体組成計について説明したが、いずれか一方の機能のみを有する態様としてもよい。よって、体組成予測装置と体組成判定装置とは別体の装置であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、体組成計に体組成予測処理および体組成判定処理を実行させる態様としたが、装置自体が、体組成の指標を計測する機能を有していなくともよい。よって、例えば、体組成計で体組成の指標の現在値を計測し、計測した現在値のデータをパーソナルコンピュータに転送し、パーソナルコンピュータにおいて上記体組成予測処理および上記体組成判定処理の少なくともいずれかを行ってもよい。すなわち、パーソナルコンピュータを、体組成予測装置および体組成判定装置の少なくともいずれかとして機能させてもよい。具体的には、例えば、図3におけるステップS1〜S5は、従来型の体組成計を用いて処理し、ステップS7以降の処理をパーソナルコンピュータで処理する。また、図3におけるステップS1〜S19の各処理のうち、ステップS19の表示処理のみを外部の表示装置に行わせる態様としてもよい。
【0067】
体組成計からパーソナルコンピュータに対して転送する現在値のデータは、体組成計に出力インターフェースを設けることにより出力すればよい。この出力インターフェースは、当該体組成計とパーソナルコンピュータとを有線で接続するための接続端子であってもよいし、例えば、赤外線通信によりデータを出力する赤外線通信ポートなどの無線通信手段であってもよい。さらに、被験者が、パーソナルコンピュータの入力インターフェースを用いて、体組成の指標の測定値を自ら入力してもよいし、USB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROMなどの可搬記録媒体を介して、パーソナルコンピュータに読み込んでもよい。体組成予測装置または体組成判定装置として機能するパーソナルコンピュータは、体組成計の出力インターフェースから出力された現在値のデータを取得する手段を有する。すなわち、体組成計と有線で接続されている場合にはデータ入力端子を有し、赤外線通信によりデータを受信する場合には、赤外線受信ポート等の無線通信手段を有する。また、USB接続端子やCD−ROMドライブ等の記録媒体接続/再生装置を有する。さらに、体組成判定処理では、被験者の過去の測定値が必要である。よって、パーソナルコンピュータにおいて、被験者の過去の測定値を記録しておき、体組成の判定処理に利用する構成としてもよい。
【0068】
なお、体組成計以外の装置に体組成予測処理および体組成判定処理の少なくとも一方を実行させる場合、PDA(Personal Digital Assistant)および携帯電話などの携帯型情報処理端末であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
5…電源キー、10…本体、30…記憶部、40…操作入力部、50…表示部、60…重量測定装置、70…生体インピーダンス測定装置、70A…電流供給部、70B…電圧検出部、71…電流供給用電極、72…電圧測定用電極、100…体組成計、110…CPU、301…RAM、302…ROM、303…書き換え可能メモリ,F1〜F5…機能指定ボタン、IMG1…表データ、IMG2,IMG3…画面データ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体組成の指標の未来値を予測することが可能な体組成計であって、
前記被験者の前記体組成の指標の現在値を取得する現在値取得手段と、
現在の年齢から未来の年齢に達するまでの前記指標の値の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、
前記現在値取得手段が取得した前記現在値と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とに基づいて、前記被験者の未来の年齢における前記指標の値を前記未来値として求める第1未来値取得手段と、
を備えた体組成計。
【請求項2】
前記第1未来値取得手段は、前記現在値と前記変化値とを足し合わせて前記未来値を得る、
請求項1に記載の体組成計。
【請求項3】
前記回帰式は、
Y=aX2+bX+c、
ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、
前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する、
請求項1または2に記載の体組成計。
【請求項4】
前記回帰式は、
Y=ax+b、
ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、bは回帰分析によって求められた係数であり、
前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する、
請求項1または2に記載の体組成計。
【請求項5】
前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つである、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項6】
前記第1未来値取得手段によって取得された前記体組成の指標の未来値に基づいて、当該体組成の指標とは異なる体組成の指標の未来値を予測する第2未来値取得手段をさらに備えた、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項1】
被験者の体組成の指標の未来値を予測することが可能な体組成計であって、
前記被験者の前記体組成の指標の現在値を取得する現在値取得手段と、
現在の年齢から未来の年齢に達するまでの前記指標の値の平均的な変化量を、年齢を独立変数とした回帰式に基づいて求める変化量取得手段と、
前記現在値取得手段が取得した前記現在値と、前記変化量取得手段が取得した前記変化量とに基づいて、前記被験者の未来の年齢における前記指標の値を前記未来値として求める第1未来値取得手段と、
を備えた体組成計。
【請求項2】
前記第1未来値取得手段は、前記現在値と前記変化値とを足し合わせて前記未来値を得る、
請求項1に記載の体組成計。
【請求項3】
前記回帰式は、
Y=aX2+bX+c、
ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、b、cは回帰分析によって求められた係数であり、
前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する、
請求項1または2に記載の体組成計。
【請求項4】
前記回帰式は、
Y=ax+b、
ただし、Yは所定の年齢における前記指標の値の平均値を基準とした変化量であり、Xは年齢であり、a、bは回帰分析によって求められた係数であり、
前記変化量取得手段は、前記現在の年齢を前記回帰式に代入することにより前記現在の年齢における変化量を現在年齢変化量として求めるとともに、前記未来の年齢を前記回帰式に代入して前記未来の年齢における変化量を未来年齢変化量として求め、前記未来年齢変化量と前記現在年齢変化量との差を前記平均的な変化量として取得する、
請求項1または2に記載の体組成計。
【請求項5】
前記体組成の指標は、体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量、および内臓脂肪面積の少なくとも1つである、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の体組成計。
【請求項6】
前記第1未来値取得手段によって取得された前記体組成の指標の未来値に基づいて、当該体組成の指標とは異なる体組成の指標の未来値を予測する第2未来値取得手段をさらに備えた、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の体組成計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−81800(P2013−81800A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−17(P2013−17)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2008−212254(P2008−212254)の分割
【原出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2008−212254(P2008−212254)の分割
【原出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
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