説明

体表面心電計

【課題】ベッドに横になった患者の体表面の上面にスポット電極を理想的な状態で配置して、体表面に上方から安定して接触させて、体表面における心電位をより正確に測定する。
【解決手段】体表面心電計は、患者を横にさせるベッド3と、患者の心電位検出体表面領域Aの複数点に接触して、体表面に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極5を備える電極システム1と、電極システム1の各々のスポット電極5に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部2とを備える。電極システム1は、ベッド3に横になった患者の上側の体表面の複数ケ所の心電位を検出する上側電極1Aを備える。この上側電極1Aは、体表面の上面に上方から接触する複数のスポット電極5を備えている。さらに、ベッド3は、ベッド3の上面を傾斜させる傾動機構6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓電気現象を明確に捉えるため、心臓に近い体表面の多くの点から心電位を測定し、測定した心電位を演算してある時間の体表面電位分布図を表示する体表面心電計に関する。
【背景技術】
【0002】
体表面心電計は、心臓に近い体表面の100ヶ所以上に複数のスポット電極を配設し、すべてのスポット電極から心臓の鼓動に同期して発生する心電位を採取して、採取した複数点の心電位から総合的に心臓の電気現象を判断する体表面電位分布図を作成する。
【0003】
体表面心電計は、例えば図1に示すように、ある時間における心臓付近の体表面に誘導される体表面電位分布図を作成する。体表面電位分布図は、心臓電気現象の体表面における電位の分布図である。体表面電位分布図は、すべてのスポット電極で測定された心電位信号を基にして、コンピュータ等の演算回路で演算して求められる。すなわち、ある時間における各々のスポット電極が検出する心電位を、コンピュータのメモリに記憶させ、スポット電極の心電位に基づいて、等電位線を計算し、等電位線を、例えば、数十μVピッチ毎にモニタテレビやプリンター等に表示するものである。
【0004】
この構造の体表面心電計は、従来の心電計に比較して精密に心臓の電気現象を検査できる。ただ、体表面心電計は、多数のスポット電極から心電位を検出するので、全てのスポット電極から正確に安定して心電位を検出するのが極めて難しい。それは、全てのスポット電極を体表面に電気的に低抵抗な状態で、しかも安定して接触させることが難しいからである。スポット電極と体表面との接触抵抗が大きくなると、大きい接触抵抗がスポット電極に検出される心電位を低下させる原因となる。さらに、スポット電極を体表面に接触させると、体表面とスポット電極との間に局部電池が発生し、この局部電池の電圧が、数百mVと心電位に比較して極めて大きいことも正確な心電位の検出を難しくする。局部電池は直流電圧を発生するので、変化しない限りは変化する心電位と区別できる。しかしながら、局部電池の電圧は、心電位に比較して数十倍から百倍と極めて大きいので、わずかな電圧の変化が、心電位の正確な検出を難しくする。局部電池の電圧の変化と心電位の変化とを識別できないからである。
【0005】
このような弊害を避けるために、従来の体表面心電計は、導電ペーストを介して体表面に接着する使い捨て電極が使用される。この電極は導電ペーストを介して体表面に接着するので、正常に接着できるかぎり低抵抗な状態で体表面に接触できる。しかしながら、100個以上からなる全ての電極を剥離しないように体表面に接着することは現実には相当に難しく、いずれかの電極が体表面から剥離すると正確に心電位を検出できなくなる欠点がある。また、100個以上もの全ての電極を使い捨てにするので、一人の患者の心電測定のランニングコストが極めて高くなる欠点もある。
【0006】
本発明者は、このような欠点を解消することを目的として、多数のスポット電極を独立して体表面に押圧する体表面心電計を開発した(特許文献1参照)。この体表面心電計は、図2に示すように、患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に押圧させて、体表面に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極95を備える。この体表面心電計は、ベッド94の床面の上方に上側電極90としてロッド電極91を備えている。ロッド電極91であるスポット電極95は、患者の体表面に押圧される導電ロッド92と、導電ロッド92を出入りできるように装着している電極本体であるケース93と、このケース93から導電ロッド92を弾性的に押し出す弾性押圧材(図示せず)とを備えている。導電ロッド92は、ケース93に出入りできるように連結しているロッド部92Bと、このロッド部92Bの先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極92Aとを備える。この体表面心電計は、各々の導電ロッド92が体表面を独立して押圧するので、体表面に誘導される心電位を正確に検出できる。とくに、導電ペーストを使用しないで心電位を検出することができる。それは、導電ロッドが体表面に連続して押圧されると、導電ロッドと体表面との間に汗のような導電性の液体が介在するようになって、体表面と導電ロッドとの接触抵抗が小さくなるからである。この構造のスポット電極は、体表面の多数の部位から心電位を検出するのに適している。
【特許文献1】特開2004−166934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただ、この構造のスポット電極は、全ての導電ロッドを、患者の体表面に最適な圧力で確実に押圧させるのが難しい欠点がある。とくに、患者がベッドに横になる状態で、患者の体表面に対し全てのスポット電極を確実に押圧させるのが難しい。それは、この上側電極が、各々のスポット電極を独立して体表面に押圧させるために、複数の導電ロッドを電極本体であるケースに出入りできるように設けると共に、複数のケースを互いに連結する状態で体表面に配置するからである。
【0008】
導電ロッドを体表面に押圧させて心電位を検出するスポット電極は、全ての導電ロッドを確実に体表面に押圧させて配置することが大切である。たとえば、上側電極で患者の胸部の前面の心電位を測定する場合は、ベッドに上向きに仰臥する患者の胸部上面に上方から上側電極を載せて複数のスポット電極で複数ヶ所の心電位を測定する。ところが、一般に、人間の胸部は、図3に示すように仰臥した状態では、腹部から頭部に接近するにつれて下り勾配で傾斜する。このように傾斜する胸部上面に、導電ロッド92が出入りするケース93を載せると、ケース93が傾斜面に沿って傾斜する姿勢となって、全ての導電ロッド92で体表面を確実に押圧できなくなる。それは、導電ロッド92を体表面に押圧させる荷重が傾斜面によって小さくなるからである。スポット電極全体に働く重力は、傾斜面と垂直な方向に分解された分力が導電ロッドを体表面に押圧させる荷重となる。このため、胸部の傾斜が大きくなるほど体表面を押圧する荷重が小さくなって導電ロッドで充分に体表面を押圧できなくなる。すなわち、傾斜した姿勢で体表面を押圧するスポット電極の押圧方向とスポット電極に作用する重力の方向がずれるので、スポット電極で体表面を安定して押圧できなくなる。
【0009】
さらに、胸部上面の傾斜が大きくなると、スポット電極全体に働く重力は、傾斜面に沿う方向の分力が大きくなって、ケースを回転させようとするモーメントが大きくなる。このモーメントによって、最も腹部側に位置する導電ロッドは、体表面から離れやすくなる。このため、最も腹部側の導電ロッドは、体表面を最適な圧力で押圧できなくなって、心電位を正確に検出できなくなる。
【0010】
以上の弊害は、上側電極の下面である接触面を患者の体表面に沿う形状とすることで軽減できる。ところが、困ったことに、胸部上面の形状や傾斜の度合いは、患者の体型によって様々に変化する。このため、上側電極の下面の形状を全ての患者の胸部上面に沿う最適な形状とすることはできない。たとえば、太った体型の患者では、胸部の傾斜が急峻になるので、スポット電極のケース全体が大きく傾斜する姿勢となる。このため、最も腹部側に位置する導電ロッドが、体表面から離れやすくなり、このため、この導電ロッドが体表面を押圧する圧力が低下して、この導電ロッドで正確な心電位を測定できなくなる。反対に、やせた体型の患者では、胸部の傾斜が緩やかになるので、スポット電極のケース全体の傾斜は小さくなるが、最も頭部側に位置する導電ロッドが、体表面から離れやすくなり、このため、この導電ロッドが体表面を押圧する圧力が低下して、この導電ロッドで正確な心電位が測定できなくなる。
【0011】
また、図に示すように、上方から体表面に押圧させる上側電極は、多数のスポット電極が傾斜する状態で胸部上面に載置されるので不安定な状態となる。傾斜する胸部上面に装着されるスポット電極は、傾斜面に沿う方向の分力によって、傾斜面に沿って滑り落ちようとする。このように、傾斜する胸部上面に沿って滑り落ちようとするスポット電極は、呼吸運動によって胸部上面が上下動すると位置ずれしやすくなる。それは、スポット電極を傾斜面に沿って移動させようとする力と、胸部を上下運動させる力との方向が異なるからである。呼吸時の運動によってスポット電極の位置がずれすると、体表面との接触抵抗が変化するので、心電位を正確に検出できなくなる。スポット電極は、心電位を正確に検出するために、体表面との接触位置をできる限り変化させないことが重要である。したがって、スポット電極は、できる限り水平姿勢で胸部上面に配置されることが望ましい。このように、体表面を上方から押圧して複数ヶ所の心電位を測定する電極は、全てのスポット電極をいかに安定して体表面に押圧させるかが極めて重要である
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解決するために開発されたものである。本発明の重要な目的は、ベッドに横になった患者の体表面の上面にスポット電極を理想的な状態で配置して、体表面に上方から安定して接触させて、体表面における心電位をより正確に測定できる体表面心電計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の体表面心電計は、患者を横にさせるベッド3と、患者の心電位検出体表面領域Aの複数点に接触して、体表面に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極5を備える電極システム1と、電極システム1の各々のスポット電極5に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部2とを備える。電極システム1は、ベッド3に横になった患者の上側の体表面の複数ケ所の心電位を検出する上側電極1Aを備える。この上側電極1Aは、体表面の上面に上方から接触する複数のスポット電極5を備えている。さらに、ベッド3は、ベッド3の上面を傾斜させる傾動機構6を備えている。
【0014】
本発明の体表面心電計は、傾動機構6が、ベッド3の長手方向において上面を傾斜させることができる。この体表面心電計は、傾動機構6が、ベッド3の長手方向の端部を昇降させてベッド3を傾斜させる昇降機構7を備えることができる。
【0015】
本発明の体表面心電計は、ベッド3が、ベッド台71の上面に患者が横になる床面70を備えると共に、昇降機構7が、ベッド台71に連結されたナット75と、このナット75に挿通されると共に、下端を床62に連結しているネジ棒76と、ナット75を回転させる回転機構77と、ベッド台71の端部をネジ棒76に沿って移動させるガイド78とを備えることができる。この体表面心電計は、昇降機構7がベッド台71の端部を昇降させて床面70を傾斜させることができる。
【0016】
さらに、本発明の体表面心電計は、ベッド3が、下方の四隅に自在車輪74を備えて、昇降機構7のネジ棒76の下端を自在車輪74を介して床62に連結することができる。
【0017】
本発明の体表面心電計は、傾動機構6が、ベッド3の短手方向において上面を傾斜させることができる。
【0018】
本発明の体表面心電計は、上側電極1Aが、患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に押圧される複数本の導電ロッド12と、導電ロッド12を出入りできるように装着している電極本体13と、この電極本体13から導電ロッド12を弾性的に押し出す弾性押圧材14とを備えるロッド電極10とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の体表面心電計は、ベッドに横になった患者の体表面の上面にスポット電極を理想的な状態で配置して、体表面に上方から安定して接触し、体表面における心電位をより正確に測定できる特長がある。それは、本発明の体表面心電計が、ベッドに横になった患者の上側の体表面の上面に上方から接触する複数のスポット電極を備える上側電極を備えると共に、患者を横にさせるベッドの上面を傾斜させる傾動機構を備えているからである。この構造の体表面心電計は、患者が横になったベッドを傾動機構で傾斜させて、心電位を測定する患者の体表面の上面を水平な姿勢に近づけた状態として、上側電極のスポット電極を体表面に接触させて心電位を測定できる。したがって、ベッドに横になった患者の体表面の上面に、複数のスポット電極を理想的な状態で配置して、体表面に上方から安定して接触しながら、体表面における心電位をより正確に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための体表面心電計を例示するものであって、本発明は体表面心電計を下記のものに特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
本発明の一実施の形態である体表面心電計を図4ないし図7に示す。これらの図に示す体表面心電計は、患者を横にさせるベッド3と、患者の体表面の複数ヶ所に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極5を備える電極システム1と、電極システム1の各々のスポット電極5に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部2とを備える。
【0023】
ベッド3は、心電位を測定する患者を横にさせる床面70を所定の高さに設けている。図に示すベッド3は、支柱72の上下を縦横のフレーム73で連結してなるベッド台71を備える。図のベッド台71は、四隅に位置するコーナー支柱72Aを縦フレーム73Aと横フレーム73Bからなるフレーム73で連結して平面形状を長方形とすると共に、支柱72の上下を、上下のフレーム73で連結して、全体の骨格を直方体形状としている。さらに、図に示すベッド台71は、縦フレーム73Aの中間を、中間フレーム73Cと中間支柱72Bで連結して補強している。ベッド3は、直方体のベッド台71の上面に床面70を設けている。ベッド3の床面70は、患者が寝ることができる幅と全長を有する。さらに、図に示すベッド3は、ベッド台71の下方の四隅に自在車輪74を備える。四隅に自在車輪74を備えるベッド3は、簡単に移動させて、設置場所を自由に変更できる特長がある。
【0024】
ベッド3は、ベッド3の上面を傾斜させる傾動機構6を備える。この傾動機構3は、床面70に患者が寝た状態で、ベッド3の上面を傾斜させて、患者の体表面の上面であって、心電位を測定する部分を水平な姿勢に近づける。患者がベッド3に上向きで仰臥する状態では、患者の体表面の上面である胸部の前面は、図3に示すように、通常、頭部側が下がって腹部側が上がった傾斜面となる。傾動機構6は、図8と図9に示すように、患者の頭部側を上昇位置として腹部側を下降位置とするように、ベッド3の長手方向において上面を傾斜させて、患者の胸部前面を水平に近づける。さらに、患者がベッドに下向きでうつ伏せに寝た状態においても、患者の体表面の上面は、通常、頭部側が下がって腹部側が上がった傾斜面となる。したがって、この場合も、傾動機構は、患者の頭部側を上昇位置として腹部側を下降位置として、患者の背中である背面を水平に近づけることができる。
【0025】
ベッド3の長手方向において上面を傾斜させる傾動機構6の一例を図9ないし図11に示す。これらの図に示す傾動機構6は、ベッド3の長手方向における端部を昇降させる昇降機構7を備える。この昇降機構7は、ベッド台71の端部を昇降させてベッド3の上面を傾斜させる。昇降機構7は、ベッド台71に連結されたナット75と、このナット75に挿通されると共に、下端を床62に連結しているネジ棒76と、ナット75を回転させる回転機構77と、ベッド台71の端部をネジ棒76に沿って移動させるガイド78とを備える。図の昇降機構7は、直方体のベッド台71の端部であって、上下のフレーム73の中間に配設している。ベッド台71は、下段のフレーム73の上面に固定プレート79を固定しており、この固定プレート79に昇降機構7を配設している。
【0026】
ナット75は、水平面内で回転できるように、ベアリング80を介して固定プレート79の上面に連結している。ナット75は、内面に雌ねじを設けており、この雌ねじに噛み合う雄ねじを有するネジ棒76を挿通している。図のベッド台71は、端部の両側に各々固定プレート79を固定しており、各固定プレート79にナット75を配設している。一対のナット75は、回転機構77で回転されて、ここに挿通されるネジ棒76を上下させる。一対のナット75は、チェーンベルト81で同期して回転される。したがって、一対のナット75は、外径を等しくしている。さらに、ナット75は、チェーンベルト81で回転されるように、外周面にチェーンベルト81の内面と噛み合う凹凸面を設けている。
【0027】
ネジ棒76は、ナット75に挿通している。図の昇降機構7は、一対のナット75に各々ネジ棒76を挿通している。ネジ棒76は、下端を床62に連結しており、回転するナット75をネジ棒76に沿って上下に移動させて、ベッド台71を上下に移動させるようにしている。図に示すネジ棒76の下端は、自在車輪74を介して床62に連結している。一対のネジ棒76は、互いの下端を連結して、支持プレート82を固定しており、この支持プレート82の両端部の下面に自在車輪74を固定している。図のベッド3は、長手方向の両端において、横フレーム73Bと平行に支持プレート82を配設しており、各支持プレート82の両端部の下面に自在車輪74を固定して、ベッド台71の下面の四隅に自在車輪74を配置している。自在車輪は、四隅の支柱の下端に設けることもできる。ただ、ベッドは、必ずしも自在車輪を備える必要はない。
【0028】
回転機構77は、ナット75を回転させるチェーンベルト81と、このチェーンベルト81を駆動する駆動部83とを備える。チェーンベルト81は、無限軌道のベルトで、一対のナット75と駆動部83に張設されている。チェーンベルト81は、駆動部83で駆動されて、ナット75を回転させる。図に示すチェーンベルト81は、内側面に、幅方向に延びる複数の凸条を設けており、ナット75の外周面に設けた凹凸面と噛み合いながら駆動できる構造としている。さらに、図に示す回転機構77は、チェーンベルト81を最適な張力で張設するために、ナット75と駆動部83との間に中間ローラー86を設けている。
【0029】
駆動部83は、チェーンベルト81が張設される駆動ローラー84と、この駆動ローラー84に連結されて、駆動ローラー84を回転させるハンドル85とを備える。駆動ローラー84は、水平面内で回転できるように、ベアリング80を介して固定プレート79の上面に連結している。この構造の駆動部83は、手動でハンドル85を回転させて駆動ローラー84を回転し、駆動ローラー84に張設されたチェーンベルト81を駆動させてナット75を回転させる。ただ、駆動部は、モーターで駆動ローラーを回転させて、チェーンベルトを駆動させることもできる。
【0030】
ガイド78は、回転するナット75がネジ棒76に沿って移動するとき、いいかえると、ネジ棒76がナット75から出入りするときに、ベッド台71の端部をネジ棒76に沿って移動させる。図に示すガイド78は、下端を支持プレート82に固定しているガイドロッド78Aと、このガイドロッド78Aが挿通されて、ガイドロッド78Aを内面に沿って往復運動させるガイド筒78Bとを備える。ガイドロッド78Aは、支持プレート82の上面に、垂直な姿勢で固定している。ガイド筒78Bは、固定プレート79を貫通して、垂直な姿勢で固定プレート79に固定している。ガイド筒78Bの内径は、ガイドロッド78Aの外径にほぼ等しく、ガイドロッド78Aをガイド筒78Bに沿って往復運動できるようにしている。図に示す昇降機構7は、左右に一対のガイド78を備えている。このように、一対のガイド78を備える昇降機構7は、ベッド台71の端部を安定して昇降できる特長がある。
【0031】
以上の構造の昇降機構7は、一対のナット75とネジ棒76を備えており、回転機構77で同期して回転される一対のナット75で2本のネジ棒76をベッド台71の端部の下面から出入りさせて、2本のネジ棒76でベッド台71を昇降させる構造としている。さらに、以上の構造のベッド3は、昇降機構7のネジ棒76の下端を、自在車輪74を介して床62に連結している。この構造のベッド3は、昇降機構7でベッド台71の端部を昇降させるときに、長手方向における両端の下端が床62と接触する部分の距離が変化してもスムーズに下端を移動させて傾斜できる。たとえば、ベッド3は、ベッド台71を傾斜させない状態における長手方向の両端の下端の間隔を(L)とすると、ネジ棒76を突出させてベッド台71の端部を上昇させた状態での間隔(L’)は(L)よりも大きくなる。図に示すように、ベッド3の下端を、自在車輪74を介して床62に接触させているベッド3は、長手方向の間隔が大きくなっても自在車輪74でベッド3の下端の位置をスムーズに移動できるので、ベッド台71を無理なく傾斜できる。さらに、この構造のベッド3は、上面を傾斜させた状態で、自在車輪74で走行させて移動できる特長がある。自在車輪74は、ストッパ88を設けているので、これをロック状態として、測定中などに不意に移動するのを防止できる。
【0032】
ただ、昇降機構7は、図12に示す構造とすることもできる。この図に示す昇降機構7は、1本のネジ棒76でベッド台71の端部を昇降させている。ネジ棒76の下端は、支持プレート82を介して直接に、床62に連結している。支持プレート82の下面には、ゴムやプラスチック等の接触部材87を固定しており、床の上面に安定して固定できるようにしている。さらに、図の昇降機構7は、支持プレート82が回転しないように、ネジ棒76の両側にガイド78を設けている。この構造の昇降機構7は、回転機構77で回転されるナット75でネジ棒76をベッド台71の端部の下面から突出させて、ネジ棒76の下端に連結された接触部材87で床62を押圧して、ベッド台71を昇降させる構造としている。
なお、図12に示す昇降機構7において、前述の実施例の昇降機構と同じ構成要素については、同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
図12に示す構造の昇降機構7は、下方に突出するネジ棒76が、自在車輪74を介することなく接触部材87を介して床62を押圧するので、この押圧部分を床62に密着させて、ベッド3が不意に移動するのを防止できる特長がある。さらに、このベッド3も、ベッド台71の端部を上昇させるときに長手方向の下端の距離が長くなるが、昇降機構7と反対側に位置する自在車輪(図示せず)が回転して移動するので、ベッド3の下端の位置をスムーズに移動させて、ベッド台71を無理なく傾斜できる。
【0034】
以上に示す昇降機構7は、以下のようにしてベッドの上面を傾斜させる。ただし、以下の説明は、ベッドの端部を上昇させて上面を傾斜させる場合を示している。ベッドの端部を下降させて上面を水平な姿勢に戻すときは、以下の動作と反対の動作をするものとする。
(1) 駆動部83のハンドル85を回転させて、チェーンベルト81を駆動し、ナット75を回転させる。
(2) 回転するナット75は、雌ねじに沿ってネジ棒76の雄ねじを移動させて、ネジ棒76を下方に突出させる。
(3) 下方に突出するネジ棒76は、下端が直接または間接的に床62を押圧する反作用でベッド台71を上昇させる。
(4) 端部が上昇されるベッド台71は、上面が傾斜される。
【0035】
以上の傾動機構6は、昇降機構7でベッド台71の長手方向の端部を昇降させて、いいかえるとベッド全体を傾斜させて上面を傾斜させている。このように、長手方向の上面を傾斜させる構造は、患者がベッドに横になる状態で、患者の頭部側を上昇させて、患者の体表面の上側面を水平に近づけることができる。ただ、傾動機構は、ベッドの床面の半面を傾斜させる構造とすることもできる。このベッドは、図示しないが、床面を長手方向の中間で分割すると共に、傾動機構で上半身側の半面を、頭部側が上昇位置となるように傾動させて、患者の体表面の上面を水平な姿勢に近づけることができる。
【0036】
さらに、ベッド3は、図13に示すように、短手方向において上面を傾斜させることもできる。このベッド3は、ベッド3の床面70を傾斜させる傾動機構6を備える。床面70は、図において右側の端部を回動できるようにベッド台のフレーム73に連結している。さらに、床面70は、図において左側の端部を昇降機構64を介して昇降できる構造としている。図に示す昇降機構64は、床面70を昇降させるネジ棒66と、ベッド台71に連結されて、ネジ棒66が挿通されてなるナット65と、ネジ棒66を回転させる駆動部67とを備える。ネジ棒66の上端は、ネジ棒66を回転できると共に、床面70との相対的な角度を変更できる構造で床面70の下面に連結している。ネジ棒66の上端は、たとえば、球関節を介して床面の下端に連結される。ナット65は、傾斜するネジ棒66に沿って回動できるようにベッド台71に連結している。駆動部67はハンドルで、ネジ棒66の下端に固定している。この昇降機構64は、駆動部67であるハンドルを回転させてネジ棒66を回転させ、ネジ棒66をナット65から突出させて床面70の端部を持ち上げて床面70を傾斜させる。ただ、傾動機構は、ベッドの短手方向の上面を傾斜させる構造を以上の構造に特定しない。傾動機構は、たとえば、ベッド台の短手方向の端部を昇降させて上面を傾斜させることもできる。
【0037】
このように、ベッド3の短手方向において上面を傾斜させる構造は、患者の体表面の上面であって体側よりの体表面の心電位をより安定して測定できる特長がある。たとえば、胸部前面の心電位を測定するときには、患者の左右方向の片側の心電位を測定することもある。この場合は、患者の左右方向である、ベッドの短手方向の上面を傾動させて、患者の体表面の測定したい部分を水平に近づける状態でスポット電極を上方から接触させて、より安定して心電位を測定できる。
【0038】
とくに、図13に示すように、ベッド3の床面70の端部を昇降させてを短手方向に傾斜させる構造は、前述のベッド台71の長手方向の端部を昇降させる昇降機構7と併用することによって、ベッド3の長手方向における上面を傾斜させながら、短手方向における上面を傾斜させて、患者の体表面の測定したい部分を水平に近づける状態で、より安定して心電位を測定できる特長がある。
【0039】
以上の実施例において、傾動機構は、昇降機構として、ネジ棒とナットを使用している。ただ、昇降機構には、シリンダーやクレーン等を使用することもできる。さらに、図示しないが、傾動機構は、ベッドの床面を垂直面内で傾動させる回動機構とすることもできる。
【0040】
電極システム1は、患者の心電位検出体表面領域の複数点に接触して、体表面に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極5を備える。電極システム1を構成する各々のスポット電極5は、図6と図7に示すように、体内側に心臓を配置している心電位検出体表面領域Aの複数点に接触されて、接触点に誘導される心電位を検出する。心電位検出体表面領域Aは、胸部体表面、あるいは胸部体表面から背中体表面にいたる領域である。電極システム1は、ベッド3に横になった患者の上側の体表面の複数ヶ所の心電位を検出する上側電極1Aを備えている。図4ないし図7の電極システム1は、ベッド3の上方に配置されて、患者の体表面の上面に接触する上側電極1Aと、ベッド3の上面に配設されて、患者の体表面の下面に接触する下側電極1Bと患者の体表面の側面に接触する体側電極1Cとを備える。
【0041】
上側電極1Aと下側電極1Bと体側電極1Cは、一定の間隔で配設している複数のスポット電極5を備えている。上側電極1Aのスポット電極5は、患者の体表面の上面の60%以上からほぼ全体に対向する領域に分布される。下側電極1Bのスポット電極5は、患者の体表面の下面の50%以上からほぼ全体に対向する領域に分布される。体側電極1Cのスポット電極5は、脇下の体側に対向して配設されて体側に接触させる。図7に示すように、患者がベッド3に上向きに仰臥して体表面の心電位を検出するとき、上側電極1Aのスポット電極5は患者の胸部上面に接触し、下側電極1Bのスポット電極5は患者の背中に接触し、体側電極1Cのスポット電極5は体側に接触して体表面に誘導される心電位を検出する。患者が上下反転して下向きにベッドに寝ると、下側電極は患者の胸部に接触し、上側電極は患者の背中に接触する。
【0042】
上側電極1Aは、体表面の上面に上方から接触する複数のスポット電極5を備えている。図に示す上側電極1Aは、体表面に上方から接触するスポット電極5として、患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に導電ロッド12を押圧させるロッド電極10を使用している。ただ、上側電極は、体表面に上方から接触するスポット電極として、スポット電極自体の重みで体表面の上面に上方から接触するものを使用することも、あるいは、スポット電極を体表面に巻き付けて上面に接触するものを使用することもできる。
【0043】
図5と図6の体表面心電計は、上側電極1Aと体側電極1Cをロッド電極10とし、下側電極1Bをクッション電極20としている。ただ、体表面心電計は、体側電極をクッション電極とし、あるいは下側電極をロッド電極とすることもできる。体表面心電計は、たとえば、図23に示すように、上側電極1Aと下側電極1Bと体側電極1Cの全てをロッド電極10とすることもできる。下側電極1Bをロッド電極10とする体表面心電計の構造の詳細については後述する。
また、体表面心電計は、必ずしも電極を上側電極と下側電極と体側電極とに分離することなく、全体をひとつのロッド電極とすることもできる。この電極は、胸と背中に接触するもの、胸と体側に接触するもの、体側と背中に接触するもの、さらに胸と体側と背中に接触するものとすることができる。
【0044】
ロッド電極10である上側電極1Aは、図5、図6及び図14ないし図17に示すように、スポット電極5を、金属ロッドである導電ロッド12としている。ロッド電極10は、この導電ロッド12を患者の体表面に独立して弾性的に押圧して、体表面に誘導される心電位を検出する。
【0045】
図に示すロッド電極10は、8個の電極ユニット11を備える。8個の電極ユニット11は、2列に4個ずつ配置している。各々の電極ユニット11は、図14の正面図と図15の底面図に示すように、紐状のゴム状弾性体である可動性部材15でもって連結されている。さらに、これらの図に示すロッド電極10は、各列の電極ユニット11の下面に弾性変形プレート16を固定して、この弾性変形プレート16で4個の電極ユニット11を連結している。この弾性変形プレート16は、曲げ方向に弾性を有するゴム板や合成樹脂プレート等の板材やシート材で、互いに隣接する電極ユニット11の間隔を所定の間隔に保持しながら、各電極ユニット11の姿勢を患者の体表面の上面に沿う状態に配置している。ただ、複数の電極ユニットは、必ずしも弾性変形プレートで連結する必要はない。
【0046】
複数の電極ユニット11で構成されるロッド電極10である上側電極1Aは、図5と図6に示すように、吊下機構4で吊り下げて患者の体表面の上面の所定の位置に配置される。これらの図に示す吊下機構4は、複数の電極ユニット11を水平の姿勢で吊り下げる上下台4Aと、この上下台4Aを水平の姿勢で上下、左右に移動させる支持台4Bとを備える。複数の電極ユニット11は、吊り紐18を介して上下台4Aから吊り下げられている。上側電極1Aは、上下台4Aを水平の姿勢で移動させて、複数の電極ユニット11からなるロッド電極10を所定の位置に配置する。患者の体表面の上面に配置された上側電極1Aは、その自重により所定の位置に保持される。ただ、上側電極1Aは、図14の鎖線で示すように、装着バンド40を介して複数の電極ユニット11からなるロッド電極10を患者にしっかりと装着することもできる。この上側電極1Aは、図9に示すように、最も外側に位置する電極ユニット11に伸縮性の装着バンド40を連結し、この装着バンド40の先端を連結具41を介してベッド3に連結して、これでもって患者にしっかりと装着することができる。
【0047】
それぞれの電極ユニット11は、図16と図17に示すように、患者の体表面の複数ヶ所に押圧される複数本の導電ロッド12と、これらの導電ロッド12を出入りできるように装着している電極本体13と、この電極本体13から導電ロッド12を弾性的に押し出す弾性押圧材14とを備える。
【0048】
図14ないし図17に示す電極ユニット11は、8本の導電ロッド12を備える。8本の導電ロッド12は、底面の形状を長方形とする電極ユニット11に、2列に4個ずつ配置している。これらの導電ロッド12は、等しい中心間隔(d)で配置されている。図のロッド電極10は、8個の電極ユニット11に各8本の導電ロッド12を配設しているので、全体では64個のスポット電極5を備えている。このロッド電極10は、たとえば、中心間隔(d)を35mmとして、約600cmの領域の心電位を測定できる。ただ、ロッド電極は、電極ユニットの個数を2〜64とし、導電ロッドの本数、すなわちスポット電極の測定ポイント数を25〜500とし、測定領域を200〜900cmとし、中心間隔を10〜60mmとすることができる。さらに、ロッド電極は、配置される複数の導電ロッドの中心間隔(d)を、必ずしも全て等しくする必要はなく、患者の上下方向と左右方向とで変更することができ、あるいは、部分的に変更することもできる。
【0049】
複数本の導電ロッド12は、電極本体13から体表面に向かって弾性的に突出しており、患者の体表面を独立して押圧する。これらの導電ロッド12は、電極本体13に出入りできるように連結しているロッド部12Bと、このロッド部12Bの先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極12Aとを備える。図の導電ロッド12は、ロッド部12Bを金属ロッドとしている。ロッド部12Bは、直径を1.5〜6mm、好ましくは3〜4mmとする金属線である。ロッド部12Bは、細すぎると曲がりやすく、太すぎると摺動抵抗が大きくなってスムーズに出入りさせるのが難しくなる。ロッド部12Bは、SUS304等のステンレス線、表面をメッキしているピアノ線等の曲がり難い金属線が適している。さらに、ロッド部は、円筒状として軽くすることもできる。ただし、ロッド部は、必ずしも金属製のロッドとする必要はなく、たとえば、硬質プラスチックロッドの表面や内面に導電膜をコーティングしたもの、あるいは導電性のあるカーボン繊維をロッド状に成形したものも使用できる。ロッド部12Bは、軸方向に移動できるように電極本体13に装着されて、弾性押圧材14で体表面に向かって押圧される。
【0050】
接触電極12Aは金属製で、体表面に弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する。接触電極12Aは、金属を切削加工し、あるいは鋳造し、あるいはまたプレス加工して製作される。金属製の接触電極12Aは、たとえば、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀等の金属で成形することができる。さらに、金属製の接触電極12Aは、安定して心電位を検出するために、接触面12aの表面、あるいは全面に金属メッキ層を設けることができる。金属メッキ層は、金メッキ、白金メッキ、銀メッキ、塩化銀メッキ、ニッケルメッキ、クロームメッキ、シンチュウメッキ、鉛メッキ等が使用できる。さらに、接触電極12Aは、体表面との接触面12aを中央凸に湾曲する湾曲面としている。このように、接触面12aが中央凸に湾曲している接触電極12Aは、体表面に対する角度が変わっても、体表面に常に広い面積で接触できる特長がある。
【0051】
電極本体13は、図17において、下方を開口している箱形のケース50と、2枚の絶縁性の板材51とを備えている。2枚の板材51には、これを貫通して導電ロッド12のロッド部12Bを出入自在に挿通している。2枚の板材51は、互いに平行に配設されており、対向する位置に挿通孔51Aを開口して、これらの挿通孔51Aに導電ロッド12のロッド部12Bを挿通している。2枚の板材51は、間に配設された複数本の支柱52に固定されて所定の間隔に保持されている。ロッド部12Bは、その中間部分であって、2枚の板材51の間に位置して固定リング55を固定しており、この固定リング55で導電ロッド12が電極本体13から抜けるのを阻止すると同時に、導電ロッド12の突出量を特定している。さらに、2枚の板材51には、電極本体13に出入りするロッド部12Bの摺動抵抗を小さくするために、ガイドプレート53を積層して配設している。ガイドプレート53は、ロッド部12Bを貫通させるためのガイド孔53Aを開口しており、このガイド孔53Aにロッド部12Bを挿入している。ガイドプレート53には、ロッド部12Bの摺動抵抗を小さくする材質のもの、たとえば、テフロン(登録商標)樹脂が使用できる。
【0052】
弾性押圧材14は、ロッド部12Bに挿通しているコイルスプリングで、2枚の板材51の間に配設している。このコイルスプリングは押バネで、下端をロッド部12Bの中間に、上端を上方の板材51にプリント印刷された銅膜等の導電層54に接続している。押バネである弾性押圧材14は、導電ロッド12を電極本体13から弾性的に押し出して、接触電極12Aを体表面に押圧する。さらに、弾性押圧材14は、導電ロッド12を導電層54に電気接続するリード線に併用している。図17に示す導電ロッド12は、弾性押圧材14に加えて、リード線57によっても板材51の導電層54に接続している。ただ、導電ロッドは、弾性押圧材とリード線のどちらか一方を介して導電層に接続することもできる。
【0053】
図18は、上方の板材51の底面図を示す。この図に示す板材11は、銅膜等の導電層54をプリント印刷している。この導電層54は、引出線60を接続している。導電ロッド12に接続された引出線60は、図17に示すように1本のリード線61に集合されて、リード線61でもって演算回路2Aに接続される。
【0054】
さらに、ロッド電極10である体側電極1Cを図19に示す。この体側電極1Cも導電ロッド12を電極本体13から押し出す構造としている。この体側電極1Cは、2列に6個ずつ、全体で12個の導電ロッド12をスポット電極5として配置している。複数本の導電ロッド12は、電極本体13から体表面である体側に向かって弾性的に突出しており、患者の体表面を独立して押圧する。これらの導電ロッド12も、電極本体13に出入りできるように連結しているロッド部12Bと、このロッド部12Bの先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極12Aとを備える。体側電極1Cは、患者の側面を押圧するので、図19において、右側を開口している箱形のケース50から水平方向に突出するように複数の導電ロッド12を弾性的に突出させている。図19の体側電極1Cは、上述の図17に示す上側電極1Aと同様の構造で、複数の導電ロッド12を電極本体13から弾性的に突出させて体表面を押圧する構造としている。したがって、図17のロッド電極10と同様の構成要素については、同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
さらに、図19に示す体側電極1Cは、ケース50の上下位置と左右位置を変更できるようにベッド3の上面に配設している。体側電極1Cのケース50は、昇降機構34に連結されており、図19の矢印Aで示す上下位置を変更できるように配置されている。さらに、この昇降機構34は、スライド機構35に連結されており、図19の矢印Bで示す左右方向の位置を変更できるように配置されている。したがって、体側電極1Cは、昇降機構34で上下位置が、スライド機構35で左右位置が調整されて、患者の体側の最適な位置に配置されて、導電ロッド12で体表面を弾性的に押圧する。
【0056】
クッション電極20である下側電極1Bを、図20の斜視図と図21の拡大断面図に示す。クッション電極20は、これらの図に示すように、表面または全体を絶縁材とする可撓性シート21と、この可撓性シート21に所定の間隔で固定している複数のスポット電極5である局部電極22と、可撓性シート21の裏面に配設されて、各々のスポット電極5を弾性的に体表面に押圧する弾性押圧材23とを備える。
【0057】
図20に示す下側電極1Bは、6列に8個ずつ、全体で48個の局部電極22をスポット電極5として配置している。これらの局部電極22は、等しい中心間隔(d)で配置されている。局部電極22の中心間隔(d)は、たとえば、ロッド電極10である上側電極1Aの導電ロッド12の中心間隔(d)と等しくすることができる。ただ、下側電極1Bの局部電極22の中心間隔(d)は、種々に変更することもできる。
【0058】
可撓性シート21は、自由に変形できる合成皮革である。合成皮革は、表面をプラスチック層でコーティングしているので汗が染み込まず、また表面に付着した汗等の汚れを簡単に払拭できる特長がある。ただ、可撓性シートには、合成皮革でないプラスチックシートも使用できる。また、布地や不織布も使用できる。さらにまた、可撓性シートは、プラスチックシート、布地、不織布等を積層したシートとすることができる。可撓性シート21には、患者の体表面の凹凸に沿って変形できる可撓性のある全てのシートが使用できる。さらに、可撓性シート21は、好ましくは伸縮性のあるシートを使用する。伸縮性のあるシートは、凹凸のある体表面に沿って変形できる特長がある。ただ、可撓性シート21は、多少の遊びがある状態で弾性押圧材23の表面に配設して、体表面の凹凸に沿って変形できる。可撓性シート21は、弾性押圧材23の表面とその周囲を被覆している。さらに、可撓性シート21は、弾性押圧材23の裏面も被覆して、裏面で連結することができる。
【0059】
局部電極22は金属製で、体表面に弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する。局部電極22は、金属板をプレス加工して製作される。この局部電極22は、金属板の表面に金属メッキ層を設けている。金属メッキ層は、金メッキ、白金メッキ、銀メッキ、塩化銀メッキ、ニッケルメッキ、クロームメッキ、シンチュウメッキ、鉛メッキ等が使用できる。ただ、局部電極22は、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀等の金属板で成形して表面に金属メッキ層を設けない構造とすることもできる。図22の拡大断面図に示す局部電極22は、金属板をプレス加工して体表面との対向する接触面24を中央凸に湾曲させてなる接触電極22Aと、可撓性シート21の裏面に配設されてなる固定部22Bとからなる。接触電極22Aと固定部22Bは、可撓性シート21を挟着するように連結されて、局部電極22を可撓性シート21に固定している。
【0060】
接触電極22Aは、体表面と対向する装着面24を円形としている。接触電極22Aは、心電位を安定して検出する外径に製作される。さらに、接触電極22Aは、可撓性シート21を貫通する連結凸部25を有する。この連結凸部25は、可撓性シート21を貫通して、可撓性シート21の内面で固定部22Bに連結される。図22の接触電極22Aは、連結凸部25を別の金属板で製作している。この連結凸部25は、筒部25Aの一端に鍔25Bを設けた形状で、鍔25Bを接触面24の周縁で挟着している。
【0061】
固定部22Bは、連結凸部25を貫通する貫通孔26を中心に設けている。貫通孔26に挿通された連結凸部25は、図22の矢印で示すように筒部25Aの下端を拡開するように変形して、固定部22Bに抜けないように連結される。図22の固定部22Bは、接触電極22Aの外形にほぼ等しい外形としている。この固定部22Bは、局部電極22を可撓性シート21に抜けないように固定できる。この形状の固定部22Bは、金属板をプレス成形して製作され、あるいはプラスチックを成形して製作される。
【0062】
局部電極22にはリード線27が接続される。リード線27は、半田付けして、あるいはスポット溶接して局部電極22に接続される。リード線27は接触電極22Aと固定部22Bのいずれに接続される。リード線27の接続部分は、接着剤28に埋設している。この構造は、リード線27の接続部分の断線を有効に防止できる。局部電極22は、弾性押圧材23が変形する毎に変位する。このときリード線27の接続部分が変形すると断線しやすくなる。図22に示すように、接続部を接着剤28に埋設する構造は、局部電極22が移動しても接続部は変形せず、この部分の断線を有効に防止できる。
【0063】
弾性押圧材23は、弾性変形するプラスチック発泡体である。プラスチック発泡体は、連続気泡を有するように発泡成形された軟質のウレタンフォームが適している。ただ、プラスチック発泡体には、軟質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、エチレン酢酸ビニル発泡体等が使用できる。弾性押圧材23は、図21に示すように、弾性係数の異なる複数の弾性変形プレート23Aを積層する構造とすることもできる。この弾性押圧材23は、局部電極22を固定する電極側には柔軟な弾性変形プレート23Aを積層して、局部電極22から離れた反対側には電極側の弾性変形プレート23Aよりも変形し難い弾性変形プレート23Aを積層する。この構造は、電極側の柔軟な弾性変形プレート23Aで局部電極22を体表面に押圧しながら、変形し難い弾性変形プレート23Aでしっかりと押圧できる。
【0064】
弾性押圧材23は、厚さを110〜130mmとする板状である。ただ弾性押圧材は、その厚さを30〜200mmとすることもできる。また、弾性押圧材23は、上面を患者の体表面に沿って湾曲する形状とすることもできる。さらに、弾性押圧材は、図示しないが、局部電極と対向する部分に突出部を設けて、この突出部で局部電極を体表面に押圧することもできる。さらにまた、弾性押圧材は、局部電極に対向する押圧部分を、他の部分よりも変形し難くして、この押圧部分で局部電極をしっかりと体表面に押圧することもできる。
【0065】
さらに、図20に示す下側電極1Bは、クッション電極20の正確な位置に患者を寝かせることができるように、位置決ライン36を表示している。この図に示すクッション電極20は、左右対称の位置にそれぞれ4本の位置決ライン36を互いに平行に表示している。これらの位置決ライン36は、患者が正しい測定位置についたときの肩や乳首や肋骨等の位置を表示しており、この位置決ライン36を基準にして患者を正確な位置に寝かせることができるようにしている。図20の下側電極1Bは、たとえば、中央の2本の位置決ライン36の間に患者の乳首が位置するように患者の上下位置を決めて、下側電極1Bを所定の位置に配設できるようにしている。このように、位置決ライン36を備えるクッション電極20は、常に患者を正確な位置に寝かせることができる。
【0066】
さらに、下側電極1Bをロッド電極10とする実施例を図23ないし図26に示す。これらの図に示す下側電極1Bは、ベッド3の床面70に貫通部70Aを設けて、この貫通部70Aを貫通するロッド電極10を床面70の下方に配置している。図に示す下側電極1Bも、前述の図17に示す上側電極1Aと同じ構造のものが使用できる。この下側電極1Bは、図17に示す上側電極1Aを上下反転した状態、すなわち、上方開口のケース50である電極本体13に弾性的に突出する導電ロッド12を配設してロッド電極10としている。
【0067】
さらに、この下側電極1Bは、図24ないし図26に示すように、導電ロッド12の先端である接触電極12Aの左右位置を調整する左右位置調整機構37と、接触電極12Aの上下位置を調整する上下位置調整機構39とを備える。
【0068】
図に示す左右位置調整機構37は、複数の導電ロッド12を配設してなるケース50を所定の間隔で固定してなる移動台42と、左右方向に水平な姿勢で配設されて移動台42を軸方向に移動させる駆動ロッド43と、移動台42に固定されて、駆動ロッド43の中間に設けたネジ部43Aが挿通されたナット44と、駆動ロッド43の両端に連結されて、駆動ロッド43を回転させるハンドル45と、移動台42を上下台46の上面に沿って移動させるガイド47とを備える。この構造の左右位置調整機構37は、ハンドル45を回転させると、回転する駆動ロッド43のネジ部43Aに沿ってナット44が移動し、ナット44を介して移動台42が駆動ロッド43の軸方向に移動する。移動台42は、上下台46の上面に設けたガイド47に案内されて、駆動ロッド43に沿って左右方向に移動する。ハンドル45を反転させると移動台42は、反対方向に移動する。
【0069】
上下位置調整機構38は、上面に移動台42を配設している上下台46と、上下方向に垂直な姿勢で配設されて上下台46を軸方向に移動させるネジ棒48と上下台46に固定されて、ネジ棒48が挿通されたナット49と、ネジ棒48を回転させる駆動部68と、上下台46を回転しないようにネジ棒48に沿って移動させるガイド69とを備える。上下台46は、前述の左右位置調整機構37を介して、複数のスポット電極5を上方に備えている。ネジ棒48は、垂直姿勢で回転できるようにベッド台71に連結している。図に示すネジ棒48は、下端を、ベッド台71の中間フレーム73Cの上面に固定された固定プレート63の上面に回転できるように連結している。
【0070】
駆動部68は、ネジ棒48に噛み合ってネジ棒48を回転させる駆動歯車68Aと、この駆動歯車68Aを一端に固定している駆動ロッド68Cと、駆動ロッド68Cの他端に固定されて、駆動歯車を回転させるハンドル68Bと、駆動ロッド68Cを水平の姿勢に支持している軸受68Dとを有する。図に示す駆動部68は、ベッド3の両側に設けており、左右の両側から操作できるようにしている。ただ、操作部はベッドの片側にのみ配置することもできる。駆動歯車68Aは傘歯車で、回転する歯をネジ棒48の雄ねじに噛み合わせてネジ棒48を回転できるようにしている。駆動ロッド68Cは、水平姿勢で回転できるように両端部を軸受68Dで支持している。一方の軸受68Dは、ベッド台71のフレーム73に、他方の軸受68Dは、固定プレート63に固定されたガイド69の側面に固定している。
【0071】
ガイド69は、垂直に配設されたガイドレール69Aと、このガイドレール69Aのガイド溝を移動する移動部69Bとを備える。ガイドレール69Aは、固定プレート63の上面に垂直な姿勢で固定している。移動部69Bは、ガイドレール69Aのガイド溝の内形に沿うガイド部を有し、ガイドレール69Aに沿って移動できるようにしている。移動部69Bは、上下台46の側面に固定しており、上下台46をガイドレール69Aに沿って上下に往復運動できるようにしている。
【0072】
この上下位置調整機構38は、駆動部68のハンドル68Bを操作して、駆動ロッド68Cを回転させてネジ棒48を回転させると、回転するネジ棒48に沿ってナット49が上下方向に移動する。上下方向に移動するナット49は、上下台46をネジ棒48の軸方向に移動させる。このとき、上下台46は、固定プレート63の上面に垂直に固定したガイド47に案内されて、ネジ棒48に沿って上下方向に移動する。ハンドル48を反転させると上下台46は、反対方向に移動する。
【0073】
ただ、下側電極は、左右位置調整機構と上下位置調整機構の構造を、以上の構造に特定しない。左右位置調整機構と上下位置調整機構は、下側電極の左右位置と上下位置とを変更して調整できる他の全ての構造とすることができる。
【0074】
以上の構造の下側電極1Bは、以下のようにして複数のスポット電極5の測定位置を変更する
(1) 上下位置調整機構38でスポット電極5を下降させて患者の体表面に接触しない状態とする。
(2) 左右位置調整機構37を操作して、スポット電極5の位置を左右方向に移動させて最適な位置に調整する。スポット電極5を左右方向に移動できるように、床面70の貫通部70Aは、左右方向に延長されたスリット状としている。
(3) 左右位置を特定した状態で、上下位置調整機構38を操作してスポット電極5を上昇させて体表面に接触させる。スポット電極5は、接触部が最適な押圧力で体表面を押圧できる位置まで上昇させる。
【0075】
以上のように、複数のスポット電極5の位置を上下左右に変更できる下側電極1Bは、体表面の下側面における測定位置を変更させて理想的に体表面の下側面の心電位を測定できる特長がある。とくに、この構造の下側電極1Bは、床面70に患者が寝た状態で、複数のスポット電極5の位置を、簡単かつ容易に上下左右に変更できる特長がある。しかも、この下側電極1Bは、複数のスポット電極5の上下位置を変更できるので、これらのスポット電極が体表面を押圧する負荷を調整できる特長もある。
【0076】
演算表示部2は、電極システム1のスポット電極5で検出する心電位から体表面に誘導される体表面電位分布図を演算する演算回路2Aと、この演算回路2Aで演算された体表面電位分布図を表示する外部出力装置2Bと、演算回路2Aに接続している入力装置2Cとを備える。図4の演算表示部2は、外部出力装置2Bとして、モニタ2aと、プリンター2bを備える。外部出力装置と入力装置は、インターネット等の通信回線を介して演算回路に接続することもできる。
【0077】
以上の体表面心電計で、患者の心電位を検出する状態を、図6の概略断面図と、図7の概略斜視図に示す。電極システム1は、これらの図に示すように、下側電極1Bの上に患者が載り、体側電極1Cを患者の脇下の体側に押圧し、上側電極1を患者の体表面の上面に載置して、患者の体表面の心電位検出表面領域Aに配置される。このとき、患者の体表面の上面を水平な姿勢に近づけるために、傾動機構6を操作してベッド3の上面を傾斜させる。たとえば、ベッド3の上面に患者が上向きで仰臥するときには、図8と図9に示すように、ベッド3の長手方向の端部を昇降させてベッド3の上面を傾斜させて、患者の体表面の上面を水平な姿勢に近づける。この状態では、図に示すように、上側電極1Aを体表面の上面に安定して載置でき、複数のスポット電極5を安定して体表面に押圧できる。
【0078】
ロッド電極10である上側電極1Aと体側電極1Cは、弾性押圧材14が導電ロッド12を弾性的に押し出して接触電極12Aを体表面に押圧し、接触電極12Aで検出した心電位を演算回路2Aに出力する。クッション電極20である下側電極1Bは、この上に患者が載ると弾性押圧材23が各々の局部電極22を体表面に弾性的に押圧し、局部電極22で検出した心電位を演算回路2Aに出力する。
【0079】
スポット電極5は、体表面の複数ヶ所に誘導される心電位を検出し、検出した信号を演算回路2Aに送る。電位の測定は、所定の時間毎に行われ、測定する時間間隔は使用者が入力装置2Cから演算回路2Aに入力する。したがって、演算回路2Aからの指令に基づき、スポット電極5は各点の電位を測定し、電圧値をデータとして演算回路2Aに返す。
【0080】
演算回路2Aは、電極システム1の各々のスポット電極5から送られてくる心電位である電気信号を、決められた方式に従って演算処理する。演算回路2Aは、一定時間おきに各々のスポット電極5の測定電位から等電位点を演算し、これから等電位線の位置を算出する。得られた出力信号は外部出力装置2Bに送られ、外部出力装置2Bで等電位線を描き体表面の体表面電位分布図を作成する。
【0081】
演算回路2Aは、電極システム1の各スポット電極5で検出された心電位を基準電位と比較して、各スポット電極5に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を作成する。演算回路2Aは、図27の概略平面図に示すように、患者の手足に接続している不関電極8に誘導される電位を基準電位として、心電位の時間に対する変化を演算する。図27において、患者の両手と左足に不関電極8を接続しており、患者の右足にはアース電極9を接続してアースしている。演算回路2Aは、これらの不関電極8から検出される電位から基準電位を演算する。演算回路2Aは、たとえば、3つの不関電極8から検出される電位を加算平均して基準電位とする。ただ、基準電位は、これらの測定電位を加算平均することなく、他の関数に基づいて演算することもできる。さらに、基準電位は、必ずしもこれら3ヶ所の電位から演算する必要はない。基準電位は、両手、両足のいずれか1ヶ所の不関電極に誘導される電位とし、または、いずれか2ヶ所の不関電極に誘導される電位から演算することもできる。
【0082】
演算回路2Aは、スポット電極5から入力された電位信号を演算し、等電位点を算出して等電位線を決定できるすべての装置が使用できる。演算回路2Aには、これらの処理を可能にするようカスタマイズされたICや電算機の他、汎用的なMPUやCPUを使用したコンピュータ、いわゆるマイクロコンピュータやパーソナル・コンピュータ、ワークステーション等が使用できる。
【0083】
さらに演算回路2Aは、スポット電極5から送られてきた心電位の値を各時間毎に保持、記憶する記憶媒体を有する(図示せず)。記憶媒体には、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、レジスタ等の記憶素子や、ハードディスク等の固定記憶装置、光磁気ディスク、CD−R、DVD、フレキシブルディスク等の記憶媒体が使用できる。ただ、処理速度の向上を図るためには、アクセス速度の速いメモリ素子を使用することが好ましい。記憶媒体に記憶されたデータ、若しくはスポット電極から送られてきた電圧値に基づき、演算回路2Aは等電位点を算出し、等電位線を描くための線データを演算する。演算されたデータは外部出力装置2Bに送られる。
【0084】
外部出力装置2Bは、与えられた等電位線のデータに基づき、体表面電位分布図を表示する。外部出力装置2Bには、モニタやプリンター、プロッタ等が複数使用できる。図において、外部出力装置2Bには、モニタ2aと、プリンター2bを使用している。使用者は、モニタ2aを使用して体表面電位分布図を随時観測でき、一方でプリンター2bで所定の時間おきに体表面電位分布図を印刷したり、あるいは所望の時間での体表面電位分布図を印刷することができる。
【0085】
記憶媒体に保持されるデータは、体表面の各電位である必要はない。任意の時間における体表面電位分布図を記憶することもできる。例えば、演算回路2Aで演算された等電位線のデータを保持して、このデータを呼び出すことで各時間毎の体表面電位分布図を切り替えて表示することもできる。特に、演算前のデータでなく、演算後のデータを記憶しておくことは、演算に要する時間を省略できるので、外部出力装置に表示されるまでに要する時間を短縮し、より高速に体表面電位分布図を表示することができる。ただ、各点の電位値と等電位線の両方のデータを記憶することも、また演算回路で演算途中のデータを保持しておくこともできるのはいうまでもない。
【0086】
体表面電位分布図の表示は、心電位をサンプリングする時間間隔や各時点での電位分布の表示を切り替える時間等を調整することによって精度を向上できる。より高速かつ詳細に表示するには、処理能力の高い高速なコンピュータや、画面表示用のチップ、RAM等を備えるいわゆるグラフィックアクセラレータ等を使用した描画が高速なコンピュータ等を、演算回路2Aに使用することで改善できる。
【0087】
さらに、演算表示部は、入力装置で指定された特定位置の時間に対する心電位の変化である心電波形を、演算回路でもって、特定位置の近傍に位置する複数のスポット電極に誘導される心電位から演算し、演算された心電波形を、外部出力装置に表示することもできる。この演算表示部は、マウスやキーボード等の入力装置を使用してモニタの画面上で心電位検出体表面領域の特定の位置を指定し、この特定位置における心電波形を、演算回路で演算して外部出力装置に表示することができる。
【0088】
さらに、本発明の体表面心電計は、モニタに表示した心電波形を元にして、特定時間における体表面電位分布図を外部出力装置に表示することもできる。この体表面心電計は、モニタに表示された心電波形を見ながら、体表面電位分布図を表示したい特定時間を指定し、その特定時間における体表面電位分布図をモニタに表示する。特定時間は入力装置を操作して入力される。特定時間は、心電波形が表示されたモニタの画面上でカーソルを移動させて指定することができる。演算回路は、入力装置で指定された特定時間を読み取り、この時間における体表面電位分布図を記憶媒体から呼び出してモニタに表示する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】体表面電位分布図の一例を示す図である
【図2】従来の体表面心電計の概略斜視図である。
【図3】従来の体表面心電計の上側電極で患者の胸部の心電位を測定する状態を示す概略側面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる体表面心電計のブロック図である。
【図5】本発明の一実施例にかかる体表面心電計の概略斜視図である。
【図6】図5に示す体表面心電計の使用状態を示す概略横断面図である。
【図7】心電位検出体表面領域を示す概略斜視図である。
【図8】図5に示す体表面心電計の上側電極で患者の胸部の心電位を測定する状態を示す概略側面図である。
【図9】図5に示す体表面心電計のベッドの側面図である。
【図10】図5に示す体表面心電計の傾動機構を示す平面図である。
【図11】図10に示す傾動機構のA−A線断面図である。
【図12】傾動機構の他の一例を示す正面図である。
【図13】傾動機構の他の一例を示す断面図である。
【図14】図5に示す体表面心電計の上側電極であるロッド電極の正面図である。
【図15】図9に示すロッド電極の底面図である。
【図16】図5に示すロッド電極の電極ユニットの斜視図である。
【図17】図16に示す電極ユニットの断面図である。
【図18】図17に示す電極ユニットの上方の板材の底面図
【図19】図5に示す体表面心電計の体側電極であるロッド電極の断面図である。
【図20】図5に示す体表面心電計の下側電極であるクッション電極の斜視図である。
【図21】図20に示す下側電極の拡大断面図である。
【図22】局部電極の拡大断面図である。
【図23】本発明の他の実施例にかかる体表面心電計の概略斜視図である。
【図24】図23に示す体表面心電計の下側電極の正面図である。
【図25】図24に示す下側電極の平面図である。
【図26】図24に示す下側電極の断面図である。
【図27】本発明の一実施例にかかる体表面心電計の使用状態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0090】
1…電極システム 1A…上側電極 1B…下側電極
1C…体側電極
2…演算表示部 2A…演算回路 2B…外部出力装置
2C…入力装置
2a…モニタ 2b…プリンター
3…ベッド
4…吊下機構 4A…上下台 4B…支持台
5…スポット電極
6…傾動機構
7…昇降機構
8…不関電極
9…アース電極
10…ロッド電極
11…電極ユニット
12…導電ロッド 12A…接触電極 12B…ロッド部
12a…接触面
13…電極本体
14…弾性押圧材
15…可動性部材
16…弾性変形プレート
18…吊り紐
20…クッション電極
21…可撓性シート
22…局部電極 22A…接触電極 22B…固定部
23…弾性押圧材 23A…弾性変形プレート
24…接触面
25…連結凸部 25A…筒部 25B…鍔
26…貫通孔
27…リード線
28…接着剤
34…昇降機構
35…スライド機構
36…位置決ライン
37…左右位置調整機構
38…上下位置調整機構
40…装着バンド
41…連結具
42…移動台
43…駆動ロッド 43A…ネジ部
44…ナット
45…ハンドル
46…上下台
47…ガイド
48…ネジ棒
49…ナット
50…ケース
51…板材 51A…挿通孔
52…支柱
53…ガイドプレート 53A…ガイド孔
54…導電層
55…固定リング
57…リード線
60…引出線
61…リード線
62…床
63…固定プレート
64…昇降機構
65…ナット
66…ネジ棒
67…駆動部
68…駆動部 68A…駆動歯車 68B…ハンドル
68C…駆動ロッド 68D…軸受
69…ガイド 69A…ガイドレール 69B…移動部
70…床面 70A…貫通部
71…ベッド台
72…支柱 72A…コーナー支柱 72B…中間支柱
73…フレーム 73A…縦フレーム 73B…横フレーム
73C…中間フレーム
74…自在車輪
75…ナット
76…ネジ棒
77…回転機構
78…ガイド 78A…ガイドロッド 78B…ガイド筒
79…固定プレート
80…ベアリング
81…チェーンベルト
82…支持プレート
83…駆動部
84…駆動ローラー
85…ハンドル
86…中間ローラー
87…接触部材
88…ストッパ
90…上側電極
91…ロッド電極
92…導電ロッド 92A…接触電極 92B…ロッド部
93…ケース
94…ベッド
95…スポット電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を横にさせるベッド(3)と、患者の心電位検出体表面領域(A)の複数点に接触して、体表面に誘導される心電位を検出する複数のスポット電極(5)を備える電極システム(1)と、電極システム(1)の各々のスポット電極(5)に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部(2)とを備える体表面心電計において、
電極システム(1)が、ベッド(3)に横になった患者の上側の体表面の複数ヶ所の心電位を検出する上側電極(1A)を備え、この上側電極(1A)は、体表面の上面に上方から接触する複数のスポット電極(5)を備えており、
さらに、ベッド(3)は、ベッド(3)の上面を傾斜させる傾動機構(6)を備えてなることを特徴とする体表面心電計。
【請求項2】
傾動機構(6)が、ベッド(3)の長手方向において上面を傾斜させる請求項1に記載される体表面心電計。
【請求項3】
傾動機構(6)が、ベッド(3)の長手方向の端部を昇降させてベッド(3)を傾斜させる昇降機構(7)を備える請求項2に記載される体表面心電計。
【請求項4】
ベッド(3)が、ベッド台(71)の上面に患者が横になる床面(70)を備えており、昇降機構(7)が、ベッド台(71)に連結されたナット(75)と、このナット(75)に挿通されると共に、下端を床(62)に連結しているネジ棒(76)と、ナット(75)を回転させる回転機構(77)と、ベッド台(71)の端部をネジ棒(76)に沿って移動させるガイド(78)とを備えており、昇降機構(7)がベッド台(71)の端部を昇降させて床面(70)を傾斜させるようにしてなる請求項3に記載される体表面心電計。
【請求項5】
ベッド(3)が下方の四隅に自在車輪(74)を備えており、昇降機構(7)のネジ棒(7)の下端を自在車輪(74)を介して床(62)に連結してなる請求項4に記載される体表面心電計。
【請求項6】
傾動機構(6)が、ベッド(3)の短手方向において上面を傾斜させる請求項1に記載される体表面心電計。
【請求項7】
上側電極(1A)が、患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に押圧される複数本の導電ロッド(12)と、導電ロッド(12)を出入りできるように装着している電極本体(13)と、この電極本体(13)から導電ロッド(12)を弾性的に押し出す弾性押圧材(14)とを備えるロッド電極(10)である請求項1ないし6のいずれかに記載される体表面心電計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate