説明

体質顔料分散組成物の製造方法、該製造方法で得られる体質顔料分散組成物、およびその用途

【課題】製造にかかるエネルギーの削減および時間の短縮が可能であり、かつ、作業環境性が改善された体質顔料分散組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、および塩基性化合物の三成分を撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程、
次いで、酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型水性樹脂と塩基性化合物と水性媒体を含有するアルカリ可溶型水性樹脂ワニス、酸基含有高分子乳化剤の存在下、ラジカル重合性単量体を乳化重合して得られる、全体の酸価10〜110mgKOH/gの水性樹脂エマルジョン、および前記塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を撹拌しならが混合する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体質顔料分散組成物の製造方法等に関する。より詳しくは、製造にかかるエネルギーと時間の両方で削減が可能である体質顔料分散組成物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、段ボールやカートンなどの紙器、および種々の紙袋に印刷する業界では、世情を反映して、かつてないほどの厳しい価格競争にさらされ、原材料費抑制や印刷作業の合理化等によるトータルコストの削減が急務になっている。しかし、原材料費には適正価格が存在するため、抑制には自ずと限界がある。そこで、より一層のコスト削減を行うには、印刷作業の合理化が重要となる。そして、印刷作業の合理化の柱となるのが印刷時間の短縮であり、そのために印刷速度自体を高速にすることが不可欠と言える。さらに印刷の高速化には、それに対応できるインキを使用しなければならない。
【0003】
例えば、印刷基材が巻紙の場合、インキが印刷された後、印刷機のガイドローラーを通って巻き取られる。この時、印刷面はガイドローラーと接触したり、巻き取られた紙の裏面と接触する。また、印刷基材が板紙の場合でも、インキが印刷された後、印刷物が積み重ねられ、印刷面と他の板紙の裏面とが接触する。この様な、印刷面と、ガイドローラーや紙の裏面とが接触するまでの時間は、印刷速度が速くなるほど短くなる。したがって、印刷の高速化を図ろうとすると、インキには、印刷後、すぐにローラーや紙面と接触しても印刷面が汚れないための性能が求められる。
【0004】
従来、印刷基材が紙器や紙袋などの紙製品である場合、水性のインキ組成物が利用されるが、インキが印刷されてから乾燥に至るまでの状態の変化は、次のとおりである。
【0005】
セルロースからなる紙の繊維は、水による濡れ性が非常に高いため、まず、インキが印刷により紙表面に転移した時に、紙の繊維をつたって紙中に浸透する水性媒体などの液状成分と、紙表面にとどまる着色材や樹脂などの固形成分とで分離が起こる。固形成分は、濃縮されるにつれて高粘度となり、さらに樹脂の結着作用により固着力が増し、印刷後の巻き取りや積み重ねでも印刷面が汚れない着色皮膜を形成する(一般にセット状態と呼ばれ、この状態になるまでの時間が短いほど、より高速での印刷が可能になると言える)。その後、水分などが蒸発してインキが完全に乾燥する。
【0006】
上記のような乾燥の機構において、セット状態になるまでの時間を短くする(印刷・インキ業界では、通常、セット状態になるまでの時間の長短も乾燥性と称し、その時間が短いインキを速乾性インキ、非常に短いものを超速乾性インキと呼ぶこともある)には、紙面の固形成分が短時間で濃縮されることが必要である。そのために、液状成分と固形成分とを早く分離させるか、もとになるインキ中の固形成分を高濃度にして印刷するという二つの方法が考えられる。
【0007】
まず、インキの液状成分と固形成分とを早く分離させることは比較的容易であり、低粘度化や表面張力を下げる材料を用いて液状成分の浸透性を高める、アルカリ可溶性樹脂を利用する系では、中和する塩基性化合物を揮発性のものとして、顔料を包んだ樹脂を不溶化・析出させる、また、液状成分に蒸発しやすい成分(主に低沸点有機溶剤等)を併用するなどの方法が利用されている。
【0008】
しかし、液状成分として、浸透性を高めることは、紙表面の広がりや紙中への浸透深度が増して、にじみ、顔料の沈み込みによる色あせや濃度低下の発生につながることになる。また、揮発性の塩基性化合物の使用や蒸発しやすい低沸点有機溶剤等の併用では、印刷機上でもそれらが揮発・蒸発し、増粘等により良好な印刷適性を維持するのが困難になる。さらに、有機溶剤の使用は、環境負荷を高める原因であり、研究開発の時流に逆行するものと言える。
【0009】
本願出願人は、上記の問題を解決するために、例えば、低粘度インキの利用を可能にする技術(例えば、特許文献1参照)、印刷機上での粘度変化を抑え、低浸透性の紙に対してインキの浸透力を高める技術(例えば、特許文献2参照)なども提案しているが、印刷からセット状態になるまでの時間を大幅に短くするまでには至っていない。
【0010】
つぎに、インキ中の固形成分を高濃度にして印刷する方法は、全固形成分の含有濃度を一律に高くしただけでは、印刷機上での粘度変化が激しく、安定して美粧な印刷物が困難となる。また、個別に、顔料の固形分を多くすると、結着成分の樹脂の相対量が少なくなって、インキ皮膜の耐摩耗性が低下し、アルカリ可溶性樹脂の固形分を多くすると、かえって液状成分との分離が遅くなり、水性樹脂エマルジョンの固形分を多くすると、インキの流動性が低下するなど、全般的に良好な結果は得られにくい。
【0011】
それに対して、体質顔料を多くしても、インキの印刷機上での粘度の変化が少ないうえに、流動性はかえって良好であり、インキ皮膜の耐摩耗性が低下することもない。さらに、期待通りの乾燥性の向上効果も得られ、体質顔料による固形成分の高濃度化は、速乾性インキや超速乾性インキの設計に非常に有効な方法となる。
【0012】
この様な知見のもと、本願出願人は、水性印刷用インキ組成物として、着色用顔料、水性樹脂、水性媒体の基本的な構成に、さらに炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料を添加して超速乾性のインキとし、性能的に低下傾向となる印刷時の増粘等については、特定の塩基性化合物を利用して抑制する技術(例えば、特許文献3参照)を開示している。しかし、これはインキとして既に体質顔料を含むものに対して、性能向上を図る技術である。今後は、印刷業界からの強い要望を受け、さらに社会的にも環境負荷軽減の機運が高まる中で、一歩進めて、いかに体質顔料を少ないエネルギーで効果的に分散し、インキ組成物に活用できるかが産業への貢献につながる技術と言える。
【0013】
体質顔料自体の製造方法として、例えば、代表的な炭酸カルシウムにおいては、一般に石灰石を湿式粉砕するか(重質炭酸カルシウム)、石灰石を焙焼して生石灰化し、水を加えて消石灰の溶液とした後、さらに炭酸ガスを反応させて不溶化する(コロイド、軽質炭酸カルシウム)方法がある。
【0014】
しかし、輸送上の問題などから、乾燥工程を経て粉末状で供給され、乾燥工程で、炭酸カルシウムは強固な凝集体を形成し、最終的には大粒径化した粉末(粗粒子)となる。水系で製造される他の体質顔料についても、乾燥の工程でほとんどが大粒子径化する。そこで、従来、体質顔料を水性印刷インキ組成物成分として含有させるために、体質顔料粉末を、ビーズミルなどの高い動力エネルギーを必要とする分散機で長時間混練して、凝集前の粒子径まで微細化して水性媒体に分散し、さらにアルカリ可溶性樹脂や水性樹脂エマルジョンなども含む体質顔料分散組成物としたものを添加する方法が利用されていた。この方法では、体質顔料の強固に凝集した粉末を使用するので、微細粒子まで分散するのに多大のエネルギーと時間を要し、また、微粉末状にしたものは飛散して、作業環境が悪化するといった問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−221537号公報
【特許文献2】特開2001−146563号公報
【特許文献3】特開平07−247455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明の課題は、製造にかかるエネルギーの削減および時間の短縮が可能であり、かつ、作業環境性が改善された体質顔料分散組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、炭酸カルシウムスラリーと、特定のHLB値を持つポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと、塩基性化合物を添加した重質炭酸カルシウムスラリー混合物を、特定の酸価を有するアルカリ可溶型水性樹脂および特定酸価を有する水性樹脂エマルジョンと撹拌しながら混合し体質顔料分散組成物を製造することにより、上記の課題を全て解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明のコンセプトについては以下のとおりである。
【0019】
まず、炭酸カルシウムの乾燥粉末から、炭酸カルシウムスラリーに変えて使用することを第一の特徴とする。湿式法のもとに調製される炭酸カルシウムスラリーでは、一次粒子の間に水が介在するために、凝集力の弱い凝集体を形成し、その凝集力よりわずかに大きな力を加えるだけで、一次粒子に近い状態まで分散が可能である。したがって、低動力エネルギーで駆動する分散機だけで、従来の方法と同等な粒子径まで微分散できる。しかし、そのままではすぐに再凝集がおこるため、さらに分散組成物としての安定化の工程が必要となる。この安定化の方法は、高濃度の体質顔料の状態で、アルカリ可溶性樹脂などの水性樹脂を加えて、適度な粘度と炭酸カルシウムの分散安定化を図るもので、本発明においては、さらに水性樹脂エマルジョンを含有する。
【0020】
本来、この様な第一の特徴により、通常の撹拌混合に用いる撹拌機を利用して、体質顔料分散組成物を調製することで本発明の課題を解決できるはずである。しかし、最終的な分散組成物とする際に凝集物が発生し、そのままでは良好な体質顔料分散組成物が得られないという結果となった。これは、分散安定性の高い樹脂の存在下、乾燥粉末から微粒子の状態になるまで、炭酸カルシウムを機械的に高い力をかけながら分散すると、炭酸カルシウムの表面に樹脂が吸着するのに対して、スラリー状のものからでは、樹脂の吸着がない分、分散が不安定になっていることが考えられる。
【0021】
そこで、さらに炭酸カルシウムの分散安定性を向上させるために、材料や混合方法などについて検討の結果、(a)炭酸カルシウムスラリーに、HLB値が5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを添加して分散処理すること、(b)当該炭酸カルシウムスラリーを水性樹脂ワニス、水性樹脂エマルジョンと撹拌混合する前に、当該炭酸カルシウムスラリー中に塩基性化合物を添加して、各材料間のpHの変化の幅を抑えること、(c)特定の酸価を有する樹脂の水性樹脂エマルジョンを利用すること、の第二の特徴を追加することを見出した。ここで、(b)の炭酸カルシウムスラリー中に塩基性化合物を添加する時期については、HLB値が5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーで処理する前後、および同時のいずれでも良い。しかし、水性樹脂ワニス、水性樹脂エマルジョンと撹拌混合する前には、必ず、炭酸カルシウムスラリー中に塩基性化合物が添加・混合されていなければ、凝集を抑えることができないという結果になっている。
【0022】
第二の特徴について、まず、(a)により炭酸カルシウムの分散安定性を向上させ、(b)では、それぞれの材料間のpHの変化の度合いを少なくするために、炭酸カルシウムスラリー中に塩基性化合物を添加することで、撹拌混合するときに、pHの変化に伴う系の分散安定性の低下(ショックと呼ばれる)を防止する効果があるものと考えられる。
【0023】
以上、第一の特徴に第二の特徴を付加することにより、体質顔料分散組成物の製造方法として、本発明の課題をすべて解決することができる。
【0024】
すなわち、本発明は、(1)少なくとも炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、および塩基性化合物の三成分を撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程と、(2)次いで、酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型水性樹脂と塩基性化合物と水性媒体を含有するアルカリ可溶型水性樹脂ワニス、酸基含有高分子乳化剤の存在下、ラジカル重合性単量体を乳化重合して得られる、全体の酸価10〜110mgKOH/gの水性樹脂エマルジョン、および前記塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を撹拌しならが混合する工程とを有する体質顔料分散組成物の製造方法に関する。
【0025】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリーと、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとを撹拌混合して混合物を調製した後、当該混合物に、さらに塩基性化合物を撹拌混合して、塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程であることが好ましい。
【0026】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、塩基性化合物の三成分を同時に撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程であることが好ましい。
【0027】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリーと、塩基性化合物とを撹拌混合して混合物を調製した後、当該混合物に、さらにHLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程であることが好ましい。
【0028】
前記炭酸カルシウムスラリーが重質炭酸カルシウムスラリーであることが好ましい。
【0029】
また、本発明は、前記体質顔料分散組成物の製造方法により得られる体質顔料分散組成物に関する。
【0030】
さらに、本発明は、当該体質顔料分散組成物と、水性樹脂と、着色剤と、水性媒体とを含有する水性印刷用インキ組成物に関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の体質顔料分散組成物の製造方法によれば、製造にかかるエネルギーの削減および時間の短縮が可能であり、かつ、作業環境性が改善された体質顔料分散組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明についてより詳細に説明する。
【0033】
まず、本発明の体質顔料分散組成物の製造方法について説明する。
【0034】
<体質顔料分散組成物の製造方法で用いる材料>
(炭酸カルシウムスラリー
本発明で利用可能な炭酸カルシウムスラリーは、湿式法により炭酸カルシウムの粒子を水中に固形分10〜80質量%程度含有させたものである。この様な炭酸カルシウムスラリーとしては、まず、天然の石灰石をポリカルボン酸等の分散剤を用いて水中で湿式粉砕した製紙用重質炭酸カルシウムスラリーが利用できる。この方法から得られる重質炭酸カルシウムスラリーは安価で簡単に製造できるという特徴がある。また、石灰石を焙焼して生石灰化し、水を加えて消石灰の溶液とした後、さらに炭酸ガスを反応させて得られるコロイド(軽質)炭酸カルシウムスラリーも利用できる。コロイド炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムと比較して微細な粒子径で形状も均一であるため、得られる水性インキ組成物において、高い光沢を有するという特徴がある。なお、重質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウムともに、インキ組成物の光沢や流動性等の面から、その一次粒子径は、好ましくは0.06〜3.0μm、より好ましくは0.06〜1.0μmの範囲である。
【0035】
(ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー)
本発明で利用可能なポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとしては、2以上のブロックを含み、それぞれのブロックは、ポリエチレンオキサイドまたはポリプロピレンオキサイドで構成されている。
【0036】
当該ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーは、公知の方法で合成することができる。例えば、ポリエチレンオキサイドポリマーがプロピレンオキサイドと反応し、ポリ(プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを形成でき、別の方法としては、ポリプロピレンオキサイドポリマーがエチレンオキサイドと反応して、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーを形成することができる。
【0037】
なお、本発明で使用できるポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーの市販されている具体例としては、(株)アデカ製のアデカプルロニックシリーズ、三洋化成工業(株)製ニューポールEPシリーズ等が挙げられる。
【0038】
また、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーは、水性媒体中での安定性の面から、HLBが5〜18であることが好ましい。
【0039】
ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーの使用量は、重質炭酸カルシウムスラリー100質量部に対して、0.5〜3質量部の範囲であることが好ましい。
【0040】
(エチレンオキサイド/)ブロックポリマーの使用量が0.5質量部未満の場合、体質顔料分散組成物の製造時に凝集物が発生するので好ましくなく、一方3質量部を超える場合は、泡立ち、耐水性が低下するので好ましくない。
【0041】
ここで、HLBとは、界面活性剤の分野で利用されている、分子の親水性部分と親油性部分とのバランス(hydrophile-lipophile balance)を表すものであり、上記HLBは、下記に示すグリフィン式(一定の油に対する乳化効率の測定から求めた実験値と親水部の質量分率に基づく式)を適用して求める事ができる。
[グリフィンの式]HLB=(100/5)×親水基質量/(親水基質量+疎水基質量)
【0042】
通常、ポリエチレンオキサイド鎖は親水性基、プロピレンオキサイド鎖は疎水性基として計算される。したがって、上記のHLBが5〜18とは、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー中の、ポリエチレンオキサイド鎖の質量比率が25〜90%である化合物が相当する。
【0043】
(塩基性化合物)
本発明で利用可能な塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等の有機塩基性化合物が例示できる。
【0044】
塩基性化合物の使用量は、塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリーのpHの値が8〜8.5の範囲であることが好ましい。
【0045】
本発明の、塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリーにおいて、塩基性化合物を上記の条件でpHの値が8〜8.5となるよう含むと、通常、インキ材料として利用される他の塩基性を示す材料と比較しても、pHの差が小さくなり、凝集物の発生を抑えることができるので好ましく、一方で、pHの値が8〜8.5を超える場合は、最終的にインキ用途などで利用したときに耐水性が低下するので好ましくない。
【0046】
(アルカリ可溶型水性樹脂ワニス
本発明で利用可能なアルカリ可溶型水性樹脂ワニスとしては、従来から水性印刷インキ組成物に使用されている、酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型樹脂を、塩基性化合物を使用して水性媒体中に溶解させたものが利用できる。
【0047】
酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型樹脂
酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型樹脂としては、カルボキシル基等のアニオン性基を含有するラジカル重合性単量体と、他の共重合可能なラジカル重合性単量体を重合して得られる樹脂が挙げられるが、その中でもスチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、およびアクリル系樹脂等が好ましく使用される。
【0048】
例えば、上記アニオン性基を含有するラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびそのモノエステル化合物などが好適に利用できる。また、他の共重合可能なラジカル重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンとそれらの誘導体等のスチレン系単量体、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステル化合物が利用できる。また、これらの共重合体樹脂は、必要に応じて、(メタ)アクリルアミド、クロトン酸とそのエステル化合物、イタコン酸とそのエステル化合物、シトラコン酸とそのエステル化合物、アクリロニトリル等などの他の共重合可能な単量体を共重合成分として含有していてもよい。
【0049】
これらのラジカル重合性単量体を利用して樹脂を合成する方法は、従来から公知の方法で行われる。合成方法の具体例としては、上記各種単量体を酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤等の不活性な有機溶剤に溶解させた混合液に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ジt−ブチル等、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等の有機ラジカル重合触媒を加え、通常40〜120℃で重合する方法などがあげられるが、合成方法は特に限定されない。
【0050】
なお、上記の方法で得られるアルカリ可溶型樹脂において、酸価が60mgKOH/gより小さいと、樹脂の水性媒体中での溶解安定性の低下という問題が発生するので好ましくなく、一方300mgKOH/gより大きいと、本発明の体質顔料分散組成物の製造中に凝集物が発生しやすくなるので好ましくない。
【0051】
塩基性化合物
塩基性化合物としては、上記アルカリ可溶性樹脂を水性媒体に溶解させるもので、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基性化合物や、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンのような有機塩基性化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
水性媒体
水性媒体としては、水、または水と水混和性有機溶剤との混合物が使用できる。
【0053】
水混和性有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコーモノメチルエーテル、エチレングリコーモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート等の(ポリ)アルキレングリコ−ルのモノ脂肪酸エステル類などが挙げられる。これら水混和性有機溶剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
(水性樹脂エマルジョン
本発明で利用可能な水性樹脂エマルジョンとしては、酸価10〜110mgKOH/gである従来から水性印刷インキ組成物に使用されている、乳化剤あるいは高分子乳化剤の存在下、ラジカル重合性単量体を重合して得られるアクリル系水性樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル系水性樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル−マレイン酸系水性樹脂エマルジョン等の水性樹脂エマルジョンが利用できる。
【0055】
なお、水性樹脂エマルジョンの酸価が10mgKOH/gより小さいとエマルジョンの製造が困難となる問題が発生するので好ましくなく、一方110mgKOH/gより大きいと凝集の発生という問題が発生するので好ましくない。
【0056】
これら水性樹脂エマルジョンの合成は、従来から公知の方法で行われる。合成方法の具体例としては、ラジカル重合性開始剤と上記アルカリ可溶型樹脂で記載した各種ラジカル重合性単量体の混合物を、乳化剤或いは高分子乳化剤を加えた水中に滴下して、通常40〜120℃で重合する方法等が例示できるが、合成方法は特に限定されない。
【0057】
なお、乳化剤としては、乳化重合の安定性や、得られる水性印刷用インキ組成物の耐水性、印刷適性あるいは抑泡等の理由から、酸価を有する分子量が5,000〜50,000程度のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂等を高分子乳化剤として利用することが好ましい。
【0058】
<体質顔料分散組成物の製造方法>
本発明の体質顔料分散組成物の製造法としては、上記構成材料の添加順が重要であり、最初に、炭酸カルシムスラリー(購入したコンテナまたはコンテナから移しかえたタンク等の別容器)に、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物を添加し、撹拌混合して得られた塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る(なお、炭酸カルシウムスラリーとポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物の混合の順番は、(1)炭酸カルシウムスラリーとポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー化合物とを撹拌混合して混合物を調製した後、さらに塩基性化合物を撹拌混合する、(2)炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、塩基性化合物の三成分を同時に撹拌混合する、(3)炭酸カルシウムスラリーと塩基性化合物とを撹拌混合して混合物を調製した後、さらにHLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを撹拌混合する、等どのような順番でもかまわない)。
【0059】
次いで、上記塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を撹拌しながら、上記アルカリ可溶型水性樹脂ワニスと上記水性樹脂エマルジョンとを順次添加し、撹拌混合することによる製造方法により実施することができる。
【0060】
なお、上記塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物と上記アルカリ可溶型水性樹脂ワニスと上記水性樹脂エマルジョンの混合の順番でどのような順番でもかまわない。
【0061】
次に、本発明の体質顔料分散組成物を使用した水性印刷用インキ組成物について説明する。
【0062】
<水性印刷用インキ組成物の構成材料>
顔料
本発明の水性印刷用インキ組成物を構成する有色顔料としては、一般に水性印刷用インキ組成物や塗料で使用できる各種の無機有色顔料や有機有色顔料が利用できる。
【0063】
具体的に無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。さらに有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などを挙げることができる。上記顔料は、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0064】
上記有色顔料の含有量は、水性印刷用インキ組成物中に、好ましくは1〜40質量%である。
【0065】
水性バインダー樹脂
本発明の水性印刷用インキ組成物を構成する水性バインダー樹脂としては、従来から水性印刷用インキ組成物に使用されているアルカリ可溶型樹脂ワニス、水性樹脂エマルジョンが利用できる。
【0066】
アルカリ可溶型樹脂ワニスとしては、カルボキシル基などのアニオン性基を含有する酸価80〜300mgKOH/gのビニル系樹脂を塩基性化合物を用いて水性媒体に溶解したワニスが挙げられるが、その中でもスチレン−アクリル系樹脂ワニス、スチレン−マレイン酸系樹脂ワニス、およびアクリル系樹脂ワニス等から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0067】
また、必要に応じて、これらのアルカリ可溶型樹脂ワニスと併用する形で、従来から水性印刷用インキ組成物に使用されている水性樹脂エマルジョンを水性バインダー樹脂として使用することもできる。
【0068】
これらの水性樹脂エマルジョンの具体例としては、アクリル系水性樹脂エマルジョン、スチレン系水性樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル系水性樹脂エマルジョン、スチレン−マレイン酸系水性樹脂エマルジョンワニス、スチレン−アクリル−マレイン酸系水性樹脂エマルジョンワニス等が例示できる。
【0069】
<体質顔料>
本発明の水性印刷用インキ組成物を構成する体質顔料としては、上記体質顔料分散組成物の製造方法で記載したものおよび必要に応じてそれ以外の体質顔料が使用できる。
【0070】
水性印刷用インキ組成物中の体質顔料の含有量は、固形分で2〜17質量%の範囲が好ましい。
【0071】
<水性媒体>
本発明の水性印刷用インキ組成物を構成する水性媒体は、水単独、または水と水混和性溶剤との混合物である。
【0072】
水混和性溶剤としては、例えば、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテル類、アルキルエステル類等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
<添加剤>
さらに、本発明の水性印刷用インキ組成物には、前記構成成分以外に、必要に応じて、顔料分散剤、ワックス、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤等、種々の添加剤を適宜選択して使用することができる。
【0074】
<水性印刷用インキ組成物の製造方法>
これら本発明の水性印刷用インキ組成物の各種構成材料を使用して、水性印刷インキ組成物を製造する方法としては、顔料と、水性バインダー樹脂、顔料分散剤等の顔料分散用材料と、水、水混和性溶剤等の水性媒体とを混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等を利用して練肉し、さらに、体質顔料分散組成物、所定の構成材料の残りを添加、混合する方法が例示できる。
【0075】
以上の本発明の水性印刷用インキ組成物の各種構成材料と製造方法等から得られる本発明の水性印刷用インキ組成物は、段ボール用を中心とした水性フレキソ印刷用インキとして利用されるものである。通常、この印刷方式で利用されるインキの粘度は、ザーンカップ等の流出秒数で管理され、必要に応じて、適正な粘度(ザーンカップNo.4で7〜14秒)となるまで、水性媒体等に利用する材料を用いて希釈して印刷することが可能である。さらに、最近の印刷が高希釈・低粘度化の傾向にあることから、この様な印刷に対応するために、極力、高固形分のインキ組成物を利用することが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例でもって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
なお、特に断りのない限り本実施例において「部」および「%」は「質量部」および「質量%」を表す。
【0078】
<実施例の塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー混合物>
一次粒子径が0.1μmの重質炭酸カルシウムが75%含有しているスラリーに表1の割合となるように、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物を添加し、撹拌混合し実施例1〜9の塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー混合物を得た。
【0079】
<比較例の重質炭酸カルシウムスラリー混合物>
一次粒子径が0.1μmの重質炭酸カルシウムが75%含有しているスラリーに表1の割合となるように、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物を添加し、撹拌混合し比較例1〜3の重質炭酸カルシウムスラリー混合物を得た。
【0080】
<実施例の塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー混合物>
一次粒子径が0.1μmのコロイド炭酸カルシウムが75%含有しているスラリーに表1の割合となるように、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物を添加し、撹拌混合し実施例12の塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー混合物を得た。
【0081】
<比較例のコロイド炭酸カルシウムスラリー混合物>
一次粒子径が0.1μmのコロイド炭酸カルシウムが75%含有しているスラリーに表1の割合となるように、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物を添加し、撹拌混合し比較例4のコロイド炭酸カルシウムスラリー混合物を得た。
【0082】
【表1】

※1:いずれも三洋化成工業(株)社製
※2:塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー
※3:コロイド炭酸カルシウムスラリー
実施例1〜9、11:炭酸カルシウムスラリーとポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとを撹拌混合して混合物を調製した後、塩基性化合物を加え撹拌混合したもの
実施例10:炭酸カルシウムスラリーとポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーと塩基性化合物とを同時に撹拌混合したもの
実施例11:炭酸カルシウムスラリーと塩基性化合物とを撹拌混合して混合物を調製した後、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを加え撹拌混合したもの
【0083】
<実施例1〜11の塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、実施例12の塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー、比較例1〜3の重炭酸カルシウムスラリー、比較例4のコロイド炭酸カルシウムスラリーのpH>
各スラリーのpHは、pHメーター(型式:F−24、(株)堀場製作所製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
<体質顔料分散組成物>
表2〜4の配合組成および添加順番となるように、上記実施例1〜11の塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー混合物、比較例1〜3の重質炭酸カルシウムスラリー混合物、実施例12の塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー混合物、比較例4のコロイド炭酸カルシウムスラリー混合物と酸価が異なる各種アルカリ可溶型水性樹脂ワニスと酸価が異なる各種水性樹脂エマルジョンとを撹拌混合し、実施例1〜19、比較例1〜4体質顔料分散組成物を得た。
【0085】
(体質顔料分散組成物の混合性の評価)
100メッシュの網で体質顔料分散組成物の網こしを行い網に残存している凝集物により混合性の評価をした。
評価基準
○:網に凝集物がないもの
△:網に凝集物がわずかに見られるもの
×:網に凝集物が多く見られるもの
【0086】
<従来の体質顔料分散組成物>
酸価180mgKOH/gのgアルカリ可溶型水溶性樹脂ワニスの27部、コロイド炭酸カルシウムの28部、酸価20mgKOH/gの水性樹脂エマルジョンの34.5部、水の10.5部を混合し、3本ロールミルで練肉し体質顔料分散組成物を得た。
【0087】
水性印刷インキ組成物
<着色ベースインキ製造例>
顔料(フタロシアニンブルー、B−15:3)の30質量部、アルカリ可溶型水溶性樹脂ワニス(商品名:ジョンクリルHPD−671、ジョンソンポリマー(株)製、固形分25%)の25質量部、イソプロピルアルコールの2質量部、水の15質量部の混合物をビーズミルで混合練肉し、その後、上記アルカリ可溶型水溶性樹脂の20質量部と水の8質量部を添加混合し着色ベースインキを調製した。
【0088】
<実施例、参照例の水性印刷インキ組成物>
着色ベースインキの30質量部、体質顔料分散組成物(実施例の体質顔料分散組成物、従来の体質顔料分散組成物)の30質量部、アルカリ可溶型水溶性樹脂ワニス(商品名:ジョンクリルHPD−671、ジョンソンポリマー(株)製、固形分25%)の20質量部、水性樹脂エマルジョン(商品名:ジョンクリル631、ジョンソンポリマー(株)製、固形分50%)の20質量部を添加混合し実施例、参照例の水性印刷インキ組成物を得た。
【0089】
なお、体質顔料分散組成物の混合性の評価で評価が×のものについては、評価は行わなかった。
【0090】
<比較例5>
着色ベースインキの30質量部に、重質体質顔料カルシウムスラリーの11.1質量部、アルカリ可溶型水溶性樹脂ワニス(商品名:ジョンクリルHPD−671、ジョンソンポリマー(株)製、固形分25%)の28.1質量部、水性樹脂エマルジョン(商品名:ジョンクリル631、ジョンソンポリマー(株)製、固形分50%)の30.8質量部を添加混合し比較例5の水性印刷インキ組成物を得た。
【0091】
(水性印刷インキ組成物の混合性の評価)
100メッシュの網で実施例、比較例の水性印刷インキ組成物の網こしを行い網に残存している凝集物により混合性の評価をした。その結果を表2〜4に示す。比較例5の混合性については、網に凝集物が多く見られるもので評価は×であった。
評価基準
○:網に凝集物がないもの
△:網に凝集物がわずかに見られるもの
×:網に凝集物が多く見られるもの
【0092】
(印刷評価)
<耐摩擦性>
Kライナーに前記実施例、参照例で得られた水性印刷インキ組成物を0.15mmメーヤバーで展色し、学振型耐摩擦試験機((株)大栄化学精機製作所製)で500gの荷重、500回の条件で摩擦試験を行った。その結果は表2〜4に示す。
評価
A:あて紙が全く汚れなく印刷物に傷がつかないもの
B:あて紙は汚れるが印刷物に傷がつかないもの
C:あて紙が汚れ印刷物に傷がつくもの(耐摩擦性がCの評価となるものは本実施例、参照例では見られなかった)
(なお、評価のうちA、Bが実用上の許容範囲である)
【0093】
<乾燥性>
室温20℃、相対湿度60%の環境下、Kライナーに0.15mmメーヤバーで前記実施例、参照例で得られた水性印刷インキ組成物を展色し、指触して乾燥性を評価した。その結果は表2〜4に示す。
評価
A:展色後5秒以内に乾燥するもの
B:展色後5秒を超えて乾燥するもの(乾燥性がBの評価となるものは本実施例、参照例では見られなかった)
【0094】
<粘度安定性>
前記実施例、参照例で得られた水性印刷インキ組成物について、その初期粘度と、40℃で1週間保存後の粘度をB型粘度計により測定し、それら粘度比(40℃で1週間保存後の粘度/初期粘度)から粘度安定性を評価した。その結果は表2〜4に示す。
評価
A:粘度比が2.0以下のもの
B:粘度比が2.0を超え5.0以下のもの
C:粘度比が5.0を超えるもの(粘度安定性がCの評価となるものは本実施例、参照例では見られなかった)
【0095】
【表2】

※4:評価が○、△のものについて水性印刷用インキ組成物を作成し印刷評価
構成成分
A:顔料分散ベース
B:塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー、重質炭酸カルシウムスラリー、コロイド炭酸カルシウムスラリー
C:アルカリ可溶型水性樹脂ワニス(重量平均分子量16,000のスチレン−マレイン酸共重合体の27質量部を、該共重合体の全量を中和するのに必要な量のアンモニアを含む水73質量部中に加熱溶解させたもの)
D:水性樹脂エマルジョン(スチレン系エマルジョン、固形分52%)
【0096】
【表3】

※5:評価が○、△のものについて水性印刷用インキ組成物を作成し印刷評価
構成成分
A:顔料分散ベース
B:塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー、重質炭酸カルシウムスラリー、コロイド炭酸カルシウムスラリー
C:アルカリ可溶型水性樹脂ワニス(重量平均分子量16,000のスチレン−マレイン酸共重合体の27質量部を、該共重合体の全量を中和するのに必要な量のアンモニアを含む水73質量部中に加熱溶解させたもの)
D:水性樹脂エマルジョン(スチレン系エマルジョン、固形分52%)
【0097】
【表4】

※6:評価が○、△のものについて水性印刷用インキ組成物を作成し印刷評価
構成成分
A:顔料分散ベース
B:塩基性化合物含有重質炭酸カルシウムスラリー、塩基性化合物含有コロイド炭酸カルシウムスラリー
C:アルカリ可溶型水性樹脂ワニス(重量平均分子量16,000のスチレン−マレイン酸共重合体の27質量部を、該共重合体の全量を中和するのに必要な量のアンモニアを含む水73質量部中に加熱溶解させたもの)
D:水性樹脂エマルジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、および塩基性化合物の三成分を撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程と、
(2)次いで、酸価60〜300mgKOH/gのアルカリ可溶型水性樹脂と塩基性化合物と水性媒体を含有するアルカリ可溶型水性樹脂ワニス、酸基含有高分子乳化剤の存在下、ラジカル重合性単量体を乳化重合して得られる、全体の酸価10〜110mgKOH/gの水性樹脂エマルジョン、および前記塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を撹拌しならが混合する工程とを有する体質顔料分散組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリーと、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとを撹拌混合して混合物を調製した後、当該混合物に、さらに塩基性化合物を撹拌混合して、塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程である請求項1記載の体質顔料分散組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリー、HLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー、塩基性化合物の三成分を同時に撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程である請求項1記載の体質顔料分散組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(1)塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程が、炭酸カルシウムスラリーと、塩基性化合物とを撹拌混合して混合物を調製した後、当該混合物に、さらにHLB値5〜18のポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを撹拌混合して塩基性化合物含有炭酸カルシウムスラリー混合物を得る工程である請求項1記載の体質顔料分散組成物の製造方法。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムスラリーが重質炭酸カルシウムスラリーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の体質顔料分散組成物の製造方法
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の体質顔料分散組成物の製造方法により得られる体質顔料分散組成物。
【請求項7】
請求項6記載の体質顔料分散組成物と、水性樹脂と、着色剤と、水性媒体とを含有する水性印刷用インキ組成物。

【公開番号】特開2011−122022(P2011−122022A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279474(P2009−279474)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】