説明

体重計

【課題】大きな空間を要せずに一度に全体を持ち運ぶことができる、車椅子に搭乗した被験者の重量を測定することが可能な体重計を提供する。
【解決手段】体重計11は、被験者が搭乗した車椅子が載るプラットフォーム14と、被験者が把持する手摺り部材24を有する。手摺り部材24は、中央部27と一対の脚部27A,27Bとを有する。プラットフォーム14には、手摺り部材24の脚部27A,27Bが連結される一対の連結部材25a,25bが支持されている。連結部材25a,25bは、手摺り部材24の中央部27がプラットフォーム14から離れた位置にある時に手摺り部材24の脚部27A,27Bを受け入れることが可能であり、手摺り部材24の中央部27がプラットフォーム14に近い位置にある時に手摺り部材24の脚部27A,27Bを受け入れることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に搭乗した被験者の重量を測定することが可能な体重計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1および特許文献2に開示されるように、車椅子用体重計は広く知られている。これらの文献に開示された体重計本体には、手摺りが取り付けられている。被験者が車椅子に搭乗して体重計本体のプラットフォームに載る際に、被験者は手摺りを把持することができる。被験者が身体が震える症状を持つ身体障害者であったとしても、被験者は手摺りの把持によって身体の震えを収まらせることができる場合がある。身体の震えを抑制することで、測定される重量値が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−281350号公報
【特許文献2】特開平9−113344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車椅子用体重計は、被験者が搭乗した車椅子が載るプラットフォームを有するので広い面積を占める。しかもプラットフォームに直立した手摺りが取り付けられていると、体重計を移動する場合、体重計の通路として大きな空間が必要である。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、手摺りは体重計本体から取り外すことができ、体重計本体と手摺りとは別々に持ち運びうる。しかし、別々に持ち運ぶのでは、時間と労力がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、大きな空間を要せずに一度に全体を持ち運ぶことができる、車椅子に搭乗した被験者の重量を測定することが可能な体重計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、被験者が搭乗した車椅子が載るプラットフォームと、中央部と前記中央部の両端部から延びる一対の脚部とを有し、前記被験者が把持する手摺り部材と、前記プラットフォームに与えられた荷重を測定する荷重測定器と、前記プラットフォームに支持されており、前記手摺り部材の前記脚部がそれぞれ取り外し可能に連結される一対の連結部材とを備え、前記連結部材の各々は、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームから離れた位置にある時に前記手摺り部材の前記脚部が受け入れられる第1の受け入れ穴と、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームに近い位置にある時に前記手摺り部材の前記脚部が受け入れられる第2の受け入れ穴とを有する体重計が提供される。
この構成では、手摺り部材の中央部がプラットフォームから離れた位置にある時に手摺り部材の脚部を連結部材の第1の受け入れ穴に挿入することができる。この時、プラットフォームをほぼ水平な状態に配置し、被験者が搭乗した車椅子がプラットフォームに載る。被験者はプラットフォームから離れた位置にある手摺り部材の中央部を把持することができる。
他方、手摺り部材の中央部がプラットフォームに近い位置にある時に手摺り部材の脚部を連結部材の第2の受け入れ穴に挿入することができる。この時、手摺り部材全体がプラットフォームに近い位置にある。従って、体重計を移動する場合、体重計の通路としての大きな空間が必要ない。手摺り部材の脚部を連結部材の第2の受け入れ穴に挿入したまま、体重計の全体を一度に持ち運ぶことが可能である。
【0008】
体重計は、前記プラットフォームに対する定位置に取り付けられ、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームに近い前記位置にあって前記手摺り部材の前記脚部が前記連結部材の前記第2の受け入れ穴に受け入れられる時に、前記手摺り部材の前記中央部が掛けられるフックをさらに備えてもよい。手摺り部材の中央部をフックに掛けることによって、プラットフォームに対する手摺り部材の運動が抑制される。従って、体重計の全体を一度に持ち運ぶことがさらに容易である。
【0009】
体重計は、体重計における前記フックから離れた一端部に取り付けられ、前記フックが上方になるように前記プラットフォームを立てる時に下方に配置される車輪をさらに備えてもよい。この構成では、体重計を運搬するとき、フックが上方で連結部材と車輪が下方になるように、プラットフォームを立てることができる。手摺り部材の中央部がフックに掛かった状態で、車輪を使って体重計をスムースに床面上を移動させることができる。
【0010】
前記連結部材の各々は、前記第1の受け入れ穴を有するとともに外周面に雄ねじを有し半径方向に縮小自在なコレットを備え、体重計は、前記コレットの外周面に装着されて前記雄ねじに噛み合う雌ねじを有し、前記雄ねじへの前記雌ねじの噛み合いに応じて前記コレットの半径方向の縮小を引き起こすナット部材をさらに備えてもよい。
この構成では、手摺り部材の脚部は、コレットの第1の受け入れ穴に受け入れられる。手摺り部材の脚部が連結部材の第1の受け入れ穴に受け入れられる時、手摺り部材の中央部がプラットフォームから離れた位置にあり、プラットフォーム上の車椅子に乗った被験者は手摺り部材の中央部を把持することができる。ナット部材が締め付けられると、雌ねじおよび雄ねじの噛み合いによってコレットの第1の受け入れ穴が縮小する。その結果、コレットと手摺り部材との間で十分な接触圧が確保される。この接触圧に伴う摩擦力によって手摺り部材の抜けが防止される。こうして手摺り部材の脚部が連結部材に緊密に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る体重計の外観を示す斜視図である。
【図2】前記体重計の分解斜視図である。
【図3】前記体重計の手摺り部材の外観を示す斜視図である。
【図4】前記体重計の使用時の正面図である。
【図5】前記体重計の連結部材の拡大分解斜視図である。
【図6】前記連結部材の拡大縦断面図である。
【図7】前記連結部材の拡大平面図である。
【図8】前記手摺り部材の格納時の前記体重計を示す斜視図である。
【図9】図8の状態の前記体重計を示す正面図である。
【図10】前記連結部材の拡大縦断面図である。
【図11】前記体重計のフックの拡大斜視図である
【図12】直立姿勢の前記体重計を示す側面図である。
【図13】図9とは異なる方式で前記手摺り部材の格納時の前記体重計を示す正面図である。
【図14】図4とは異なる方式で前記手摺り部材が取り付けられた前記体重計の使用時の正面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る体重計の連結部材とその付近の拡大縦断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る体重計の使用時の正面図である。
【図17】本発明のさらに他の実施形態に係る体重計の使用時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る体重計11を示す。体重計11は、体重計本体12と、体重計本体12に取り付けられたフック18、連結部材25a,25bおよび手摺り部材24を備える。体重計本体12は、図2に示されるベース75、ベース75に支持された一対の第1ロードセル76aおよび一対の第2ロードセル76b、ベース75の上方に配置されてロードセル76a,76bに支持されたプラットフォーム14、プラットフォーム14に支持された第1のサイドカバー15および第2のサイドカバー16を備える。フック18は第1のサイドカバー15に固定されており、連結部材25a,25bは第2のサイドカバー16に固定されている。手摺り部材24は連結部材25a,25bに連結されている。
【0014】
図2に示されるように、体重計本体12はベース75を備える。ベース75は、例えば鋼製の矩形のフレーム75aを備える。フレーム75aの四隅にはロードセル76a,76b(荷重測定器)が配置されている。一対の第1ロードセル76aは第1ロードセル群を構成する。第1ロードセル76aから左右方向に隔てられて一対の第2ロードセル76bが配置される。二つの第2ロードセル76bは第2ロードセル群を構成する。
【0015】
ロードセル76a,76bはベース75に固定されて支持されている。具体的には、ベース75は、フレーム75aの四隅に固定された鋼製のコーナー板80を備えており、ロードセル76a,76bの各々はコーナー板80に取り付けられている。
【0016】
ベース75にはプラットフォーム14が被さる。プラットフォーム14は例えば薄い鋼板から成形される。プラットフォーム14は、体重計11の使用時すなわち重量測定時に床面と平行に配置される平坦面17aを備える。平坦面17aには、第1ロードセル76aおよび第2ロードセル76bの位置に対応する位置に切欠77が形成される。切欠77上には、折り曲げられた取付板78が配置されている。取付板78は、平坦な上壁と上壁の前後の端壁を備える。取付板78の前後の両方の端壁はプラットフォーム14に固定されている。取付板78の上壁は、プラットフォーム14の平坦面17aよりも上方にあって、プラットフォーム14の平坦面17aに平行に広がる。
【0017】
プラットフォーム14がベース75に被せられる時、第1ロードセル76aおよび第2ロードセル76bの各々は、プラットフォーム14の切欠77内に配置され、プラットフォーム14の各取付板78の上壁は、第1ロードセル76aまたは第2ロードセル76bに覆い被さり、ロードセル76aまたは76bに支持される。従って、プラットフォーム14の荷重およびプラットフォーム14に与えられた荷重は、ロードセル76a,76bに伝達される。ロードセル76a,76bは、プラットフォーム14に与えられた重量、例えば被験者の重量を測定する。プラットフォーム14のうち、第1ロードセル群と第2ロードセル群との間の部分が、車椅子の通り道17である。
【0018】
第1のサイドカバー15および第2のサイドカバー16がプラットフォーム14の上面に取り付けられ、プラットフォーム14に支持されている。第1のサイドカバー15は、第1ロードセル76aを覆う取付板78を覆う。他方、第2のサイドカバー16は、第2ロードセル76bを覆う取付板78を覆う。第1のサイドカバー15と第2のサイドカバー16とは左右方向に間隔をおいている。第1のサイドカバー15および第2のサイドカバー16の間でプラットフォーム14には車椅子の通り道17が区画される。換言すれば、車椅子の通り道17は、プラットフォーム14のうち第1のサイドカバー15と第2のサイドカバー16で覆われていない部分である。
【0019】
プラットフォーム14の車椅子の通り道17は、上述の平坦面17aとスロープ17b,17cを備える。スロープ17b,17cの各々は、平坦面17aから前後方向に遠ざかるにつれて床面に近づく。重量測定にあたって被験者は車椅子に搭乗したまま平坦面17a上に上がる。スロープ17b,17cの働きで車椅子はスムースに床面と平坦面17aとの間で移動することができる。車椅子の走行方向が「前後方向」に相当する。
【0020】
一方のサイドカバーすなわち第1のサイドカバー15にはフック18が固定されている。すなわち、フック18は通り道17から外れた位置かつベース75およびプラットフォーム14に対する定位置で体重計本体12に固定される。
【0021】
他方のサイドカバーすなわち第2のサイドカバー16には3個の車輪19が取り付けられる。車輪19の各々は、プラットフォーム14の平坦面17aを含む仮想平面に直交する回転軸を有する。車輪19は体重計本体12の輪郭よりも外側にはみ出す。
【0022】
図1に示されるように、体重計11はコネクター23を備えており、コネクター23には操作ユニット13に接続されたケーブル90が切り離し可能に接続されうる。操作ユニット13には例えば操作パネル21およびディスプレイパネル22が組み込まれている。操作パネル21は、操作ユニット13の表面で露出する操作ボタン(図示せず)を有する。ディスプレイパネル22は、操作ユニット13の表面で露出するスクリーン(図示せず)を有する。操作ボタンの操作に応じて体重計11は重量測定動作を開始する。操作パネル21の内部には重量計算装置(図示せず)が配置されており、重量計算装置はロードセル76a,76bからの信号に基づいて、プラットフォーム14に与えられた重量値を算出する重量測定動作を実行する。ディスプレイパネル22のスクリーンには、例えば重量値が表示される。
【0023】
図2に示されるように、コネクター23が設けられた基板94はホルダー95に取り付けられ、ホルダー95はベース75のフレーム75aに取り付けられている。プラットフォーム14がベース75に被せられる時、ホルダー95がプラットフォーム14上に位置するように、ホルダー95はフレーム75aに取り付けられている。ホルダー95がフレーム75aに取り付けられているので、基板94およびコネクター23の荷重はフレーム75aに支持され、プラットフォーム14には支持されない。図示しないが、ロードセル76a,76bの各々と基板94はケーブルで接続されている。それらのケーブルとともに基板94は、第1のサイドカバー15で覆われる。
【0024】
通り道17から外れた位置で体重計本体12には手摺り部材24が着脱自在に固定される。具体的には、第2のサイドカバー16に固定された連結部材25a,25bに、手摺り部材24の脚部27A,27Bが連結される。
【0025】
手摺り部材24は一本の円筒体を湾曲させることにより形成されている。手摺り部材24は円筒体の中央部27と、中央部27の両端から延びる一対の脚部27A,27Bを有する。図1に示される重量測定のために体重計11が使用されるとき、中央部27はプラットフォーム14の平坦面17aに平行に延びる。
【0026】
図3に示されるように、手摺り部材24の脚部27Aは、脚部下部28aと脚部中部31aと脚部上部33aを有し、手摺り部材24の脚部27Bは、脚部下部28bと脚部中部31bと脚部上部33bを有する。脚部下部28a,28bは1つの仮想平面すなわち共通の仮想平面29に対して垂直に立ち上がる。すなわち、脚部下部28a,28bの軸心は仮想平面29に直交する。脚部中部31a,31bはそれぞれ脚部下部28a,28bに対して斜めに連なっている。すなわち手摺り部材24は、脚部中部31aと脚部下部28aの間で屈折し、脚部中部31bと脚部下部28bの間で屈折する。脚部中部31a,31bは、仮想平面29から遠ざかるにつれて、2本の脚部下部28a,28bの軸心を含む垂直仮想平面32から遠ざかる。脚部上部33a,33bはそれぞれ脚部中部31a,31bに対して斜めに連なっている。すなわち手摺り部材24は、脚部上部33aと脚部中部31aの間で屈折し、脚部上部33bと脚部中部31bの間で屈折する。脚部上部33a,33bは、仮想平面29に直交する垂直方向に直線的に延びる。2本の脚部上部33a,33bの軸心を含む垂直仮想平面34は前述の垂直仮想平面32に平行に広がる。つまり、脚部上部33a,33bは、脚部下部28a,28bに平行である。脚部上部33a,33bの上端は中央部27の両端にそれぞれ連なっている。手摺り部材24の中央部27は両端で脚部上部33a,33bに向かって湾曲する。
【0027】
図4に示されるように、体重計11の使用時に、プラットフォーム14はほぼ水平に配置される。この時、手摺り部材24は、中央部27がプラットフォームから離れて脚部下部28a,28bが鉛直に立つ状態で、体重計本体12の第2のサイドカバー16に連結部材25a,25bによって連結することができる。この時、脚部下部28a,28bの下端は連結部材25a,25bに受け入れられる。脚部中部31a,31bは通り道17から遠ざかる方向に延び、脚部上部33a,33bは鉛直方向に延びる。脚部下部28a,28bの高さは、車椅子Cに搭乗した被験者がハンドリム37に手をかけて主輪35を回転させても、被験者の腕または手が脚部下部28a,28bに触れないように、低く設定される。図4では、脚部下部28a,28bの高さは、図示された車椅子Cの主輪35の車軸36の高さに設定されているが、これには限定されない。手摺り部材24の中央部27の高さは、例えば一般的な車椅子Cの主輪35の直径の大きさよりも高く設定される。
【0028】
被験者が車椅子Cに搭乗してプラットフォーム14の平坦面17a上に載った際に、被験者は手摺り部材24の中央部27を把持することができる。被験者が身体が震える症状を持つ身体障害者であったとしても、被験者は手摺り部材24の把持によって身体の震えを収まらせることができる場合がある。身体の震えを抑制することで、測定される重量値が安定する。
【0029】
手摺り部材24は、体重計本体12の第2のサイドカバー16に連結部材25a,25bによって連結され、第2のサイドカバー16はプラットフォーム14に支持されている。従って、被験者が手摺り部材24に与えた荷重は、プラットフォーム14に伝達される。前述の通り、プラットフォーム14の荷重およびプラットフォーム14に与えられた荷重は、ロードセル76a,76bに伝達される。従って、被験者が手摺り部材24にその体重の大部分をかけたとしても、ロードセル76a,76bに与えられる荷重の合計は変わらない。
【0030】
手摺り部材24の脚部27A,27Bが湾曲しており、図4の状態では手摺り部材24の中央部27が連結部材25a,25bよりもプラットフォーム14に対して外側の位置にあって、プラットフォーム14の平坦面17aの真上から離れた位置にある。手摺り部材24の上方部分は、体重計本体12よりも外側にあって、プラットフォーム14の通り道17上の車椅子Cから遠ざかっている。従って、被験者が車椅子のハンドリム37に手をかけて主輪35を回転させても、被験者の腕または手が、手摺り部材24に衝突したり、手摺り部材24とハンドリム37の間に挟まれたりする事態を低減することができる。
【0031】
しかも、この状態では、脚部上部33a,33bが鉛直線上に延びているので、車椅子Cのハンドリム37と脚部上部33a,33bがほぼ平行な状態で、車椅子Cがプラットフォーム14の平坦面17aに載りやすい。車椅子Cのハンドリム37と脚部上部33a,33bがほぼ平行な状態であることにより、被験者が目測を誤って、被験者の腕または手が、手摺り部材24に衝突したり、手摺り部材24とハンドリム37の間に挟まれたりする事態を回避することができる。換言すれば、被験者は手摺り部材24に邪魔されることなく車椅子を操作することができる。
【0032】
図5ないし図7および図10を参照し、連結部材25aの詳細を説明する。連結部材25bも連結部材25aと同じ構造を有する。図5に示されるように、連結部材25aは、取付板41と、取付板41の上方に配置された中間空洞部47と、中間空洞部47の上方に配置されたコレット51が一体に成形されたものである。連結部材25aは、例えば樹脂またはアルミニウムから形成することができる。
【0033】
連結部材25aまたは25bの取付板41は、第2のサイドカバー16の上方の平坦面に重ね合わせられる。取付板41には、円形の開口42が形成される。取付板41は第2のサイドカバー16にねじ43によって固定される。
【0034】
図6および図10に最良に示されるように、連結部材25aまたは25bの中間空洞部47は内部空間を有する。この内部空間には、図6に示されるように、手摺り部材24の鉛直状態の脚部下部28a,28bを挿入することができる。また、この内部空間には、図10の仮想線または破線に示されるように、手摺り部材24の寝かせた状態の脚部下部28a,28bを挿入することができる。
【0035】
中間空洞部47には、左右一対の窓孔48が形成される。窓孔48を介して、中間空洞部47の内部空間と外部は連通している。窓孔48の直径は、手摺り部材24の外径よりも大きく設定される。二つの窓孔48および中間空洞部47の内部空間は、プラットフォーム14の平坦面17aに平行かつ体重計本体11の左右方向に貫通する一つの受け入れ穴49を協働して構成する。受け入れ穴49を以下、第2の受け入れ穴と呼ぶ。図10の仮想線または破線に示されるように、手摺り部材24の寝かせた状態の脚部下部28a,28bは、第2の受け入れ穴49に受け入れられる。
【0036】
連結部材25aまたは25bのコレット51は、土台52と可撓体53とを備える。土台52は円筒形に形成される。土台52の軸心は、プラットフォーム14の平坦面17aを含む仮想平面に直交する垂直方向に延びる。土台52の下端は中間空洞部47に連なっている。土台52の外周面には雄ねじ54が刻まれている。
【0037】
コレット51の可撓体53は、可撓片55の集合体として構成される。個々の可撓片55は土台52の上端から鉛直方向に上方に延びる。可撓体53は、鉛直方向に延びる仮想円柱体(図示せず)の外周面に一致する内面を有する。図5に最良に示されるように、可撓片55同士の間にはスリット56が形成されている。可撓体53の上端には、円錐台状の外面57を有する。可撓体53の上端には開口58が形成されている。個々の可撓片55は弾性変形可能である。こうした弾性変形の結果、可撓体53は半径方向に縮小自在である。
【0038】
コレット51は中空体であって、鉛直方向に貫通する受け入れ穴67を有する。受け入れ穴67を以下、第1の受け入れ穴と呼ぶ。図6に示されるように、手摺り部材24の鉛直状態の脚部下部28a,28bは、コレット51の第1の受け入れ穴67に受け入れられ、さらには中間空洞部47の内部空間および取付板41の開口42に受け入れられる。第1の受け入れ穴67の直径は、元々は、手摺り部材24の脚部下部28aの外径よりも若干大きく設定されている。第1の受け入れ穴67は、中間空洞部47の内部空間に通じている。
【0039】
コレット51にはナット部材61が装着される。ナット部材61は、例えば樹脂またはアルミニウムから形成されている。ナット部61aは、環状のナット部61aと、ナット部61aの上端に連なる環状の締め付け体61bを有する。図6に示されるように、ナット部61aの内面62は円柱形の内部空間を有する。ナット部61aの内面62には雌ねじ63が刻まれている。ナット部61aがコレット51に装着されると、雌ねじ63はコレット51の雄ねじ54に噛み合う。ナット部61aがコレット51にねじ込まれると、ナット部61aは下方に移動し第2のサイドカバー16に接近していく。
【0040】
ナット部61aの締め付け体61bは、上方内面64および下方内面65を有する。上方内面64は円柱形の内部空間を有する。この内部空間の外径は、ナット部61aの内部空間の外径よりも小さく設定される。ただし、上方内面64の内部空間の外径は、手摺り部材24の脚部下部28aの外径よりも大きく設定される。
【0041】
上方内面64の下端には下方内面65が連なっている。下方内面65の下端はナット部61aの内面62に連なっている。下方内面65は円錐台状の内部空間を有する。下方内面65の下端の直径すなわち最大径は、ナット部61aの内部空間の直径に一致する。下方内面65の上端の直径すなわち最小径は、上方内面64の内部空間の直径に一致する。
【0042】
第2のサイドカバー16の上方の平坦面には、円板形の受け部材44がねじ46によって固定されている。連結部材25a,25bの取付板41の開口42の下端42aは、受け部材44が嵌まり込むように、開口42の他の部分よりも大きい直径を有している。
【0043】
受け部材44は、第2のサイドカバー16の上方の平坦面から遠ざかるにつれて先細る円錐台形状に形成された部分、すなわち部分円錐面45を有する。部分円錐面45の下端は、その円錐台の最大直径を有する。部分円錐面45の上端は、その円錐台の最小直径を有する。図6に示されるように、円錐台の最大直径は、手摺り部材24の脚部下部28a,28bの内径よりも若干大きく設定される。円錐台の最小直径は脚部下部28a,28bの内径よりも若干小さく設定される。
【0044】
図6に示されるように、手摺り部材24の鉛直状態の脚部下部28a,28bが連結部材25a,25bの内部(コレット51の第1の受け入れ穴67、中間空洞部47の内部空間および取付板41の開口42)に挿入されると、脚部下部28aまたは28bの下端は、受け部材44の部分円錐面45に接触し、部分円錐面45は脚部下部28aまたは28bの下端の内面に嵌まり込む。従って、受け部材44は、手摺り部材24の脚部下部28aまたは28bの位置決め部材および揺れ止め部材として機能する。
【0045】
ナット部材61がコレット51に対して締め付けられると、雌ねじ63および雄ねじ54の噛み合いによって、ナット部材61は下方に移動し第2のサイドカバー16に接近していく。そして、ナット部材61の締め付け体61bの下方内面65は、コレット51の可撓片55の上端の円錐台状の外面57に接触する。その後、ナット部材61が第2のサイドカバー16に接近するにつれて、下方内面65によって外面57が押され、個々の可撓片55にはコレット51の軸心に向かう押し付け力が作用する。こうして可撓体53はコレット51の半径方向に縮小し、コレット51の第1の受け入れ穴67のうち可撓体53の内面は、手摺り部材24の脚部下部28aまたは28bの外面に押し付けられる。その結果、可撓体53の内面と手摺り部材24の脚部下部28aまたは28bの外面との間で十分な接触圧が確保される。この接触圧に伴う摩擦力によって、連結部材25a,25bに対して手摺り部材24の抜けが防止される。こうして手摺り部材24の脚部下部28a,28bは、連結部材25a,25bに結合される。
【0046】
このようにして、手摺り部材24の中央部27がプラットフォーム14から離れた位置にある時に、手摺り部材24の脚部27A,27Bを連結部材25a,25bの第1の受け入れ穴67に挿入することができる。この時、プラットフォーム14はほぼ水平な状態に配置されており、被験者が搭乗した車椅子がプラットフォーム14に載る。被験者はプラットフォーム14から離れた位置にある手摺り部材24の中央部27を把持することができる。
【0047】
ナット部材61のコレット51への締め付けが緩められると、雌ねじ63および雄ねじ54の噛み合いによって、ナット部材61は上昇して第2のサイドカバー16から遠ざかっていく。その結果、個々の可撓片55は、ナット部材61の締め付け体61bに起因する押し付け力から解放され、可撓体53はコレット51の半径方向に拡大する。コレット51の第1の受け入れ穴67のうち可撓片55の内面は、手摺り部材24の脚部下部28a,28bの外面から離れる。こうして手摺り部材24の脚部27A,27Bは、連結部材25a,25bから引き抜くことができ、手摺り部材24は体重計本体12から分離される。
【0048】
次に、体重計11を移動する場面を説明する。例えば、図8および図9に示されるように、手摺り部材24は体重計本体12に取り付けられる。すなわち、プラットフォーム14に対して、中央部27を含む手摺り部材24全体を接近させた状態すなわち寝かせた状態に配置する。この時、図10の仮想線に示されるように、手摺り部材24の寝かせた状態の脚部下部28a,28bは、第2の受け入れ穴49に受け入れられる。
【0049】
図9および図10に示されるように、連結部材25a,25bの取付板41には、ガイド68が結合されている。ガイド68は、一方の開口48の縁からプラットフォーム14の通り道17に向かって突き出ている。ガイド68は、手摺り部材24の寝かせた状態の脚部下部28a,28bを第2の受け入れ穴49に挿入する時に、脚部下部28a,28bを案内する。従って、作業者は手摺り部材24を簡単に体重計本体12に取り付けることができる。
【0050】
また、図8および図9に示される状態において、手摺り部材24の中央部27は、フック18に掛けられる。図11に示されるように、フック18は、棒状のハンドル71と、ハンドル71の両端が連結された一対の支持板72を備える。ハンドル71は、第2のサイドカバー16の長手方向に平行に、かつ、プラットフォーム14の平坦面17aに平行に延びている。ハンドル71は、体重計11の持ち運びにあたって作業者によって掴まれる。
【0051】
フック18の支持板72は、第1のサイドカバー15に固定される。この固定のためには、例えばねじが用いられる。支持板72には、手摺り部材24の中央部27が掛けられる窪み73が形成されている。窪み73は、プラットフォーム14上の通り道17に向かって窪んでいる。
【0052】
図8および図9に示される状態において、作業者はフック18のハンドル71を掴む。フック18を引き上げることで、図12に示されるように、体重計11を直立姿勢まで立ち上げることができる。体重計11は車輪19で床面に支持される。車輪19によって体重計11はスムースに床面上を移動することができる。しかも、手摺り部材24の脚部27A,27Bを連結部材25a,25bの第2の受け入れ穴49に挿入したまま、体重計本体12および手摺り部材24を同時に運搬することができる。
【0053】
体重計11の運搬時には、手摺り部材24全体がプラットフォーム14に近い位置にある。従って、体重計11を移動する場合、体重計11の通路としての大きな空間が必要ない。また、手摺り部材24の中央部27をフック18の支持板72の窪み73に掛けることによって、体重計本体12に対する手摺り部材24の運動が抑制される。従って、体重計11の全体を一度に持ち運ぶことがさらに容易である。
【0054】
図8および図9に示される状態では、手摺り部材24の脚部下部28aが連結部材25aに挿入され、脚部下部28bが連結部材25bに挿入されている。しかし、図13に示されるように、手摺り部材24を裏返して、脚部下部28bを連結部材25aに挿入し、脚部下部28aを連結部材25bに挿入してもよい。この時、図10の破線に示されるように、手摺り部材24の寝かせた状態の脚部下部28a,28bは、第2の受け入れ穴49に受け入れられる。
【0055】
手摺り部材24を裏返しても、手摺り部材24の脚部が連結部材25a,25bに挿入可能であるので、作業者は手摺り部材24を簡単に体重計本体12に取り付けることができる。図10に示されるように、手摺り部材24の脚部下部28a,28bが図10の仮想線および破線のいずれの場合でも、脚部下部28a,28bが第2の受け入れ穴49に受け入れられるように開口48の大きさは設定されている。
【0056】
図13に示される状態の場合も、連結部材25a,25bのガイド68は、連結部材25a,25bへの脚部下部28a,28bの進入を案内する。従って、作業者は手摺り部材24を簡単に体重計本体12に取り付けることができる。
【0057】
図4に示される体重計11の使用状態では、手摺り部材24の脚部下部28aが連結部材25aに挿入され、脚部下部28bが連結部材25bに挿入されている。手摺り部材24の上方部分は、体重計本体12よりも外側にあって、プラットフォーム14の通り道17上の車椅子Cから遠ざかっている。
【0058】
しかし、図14に示されるように、手摺り部材24を裏返して、脚部下部28bを連結部材25aに挿入し、脚部下部28aを連結部材25bに挿入してもよい。この場合にも、手摺り部材24の中央部27がプラットフォーム14から離れた位置にあり、手摺り部材24の脚部下部28a,28bは連結部材25a,25bの第1の受け入れ穴67に挿入される。図14に示される使用状態では、手摺り部材24の上方部分は、連結部材25a,25bよりもプラットフォーム14に対して内側の位置にあって、プラットフォーム14の通り道17の平坦面17aの真上にある。この時、車椅子に搭乗していない被験者がプラットフォーム14上に立つと、手摺り部材24の上方部分が被験者に近い位置にある。よって、被験者は容易に中央部27を掴むことができる。このように、単一の体重計11によって、車椅子に搭乗した被験者の重量だけでなく、車椅子に搭乗していない被験者の重量を測定することができる。
【0059】
図14に示される使用状態でも、体重計本体12には手摺り部材24がしっかりと立てられているので、車椅子に搭乗していない被験者は、手摺り部材24を掴むことができる。被験者が身体が震える症状を持つ身体障害者であったとしても、被験者は手摺り部材24の把持によって身体の震えを収まらせることができる場合がある。身体の震えを抑制することで、測定される重量値が安定する。また、被験者が脚が不自由な場合でも、被験者は手摺り部材24の把持によってプラットフォーム14上に立つことができる。
【0060】
上記の実施の形態では、手摺り部材24の脚部下部28aまたは28bの位置決め部材および揺れ止め部材として、第2のサイドカバー16に固定された受け部材44が使用されている。しかし、受け部材44の代わりに、図15に示されるように、第2のサイドカバー16の上面に、脚部下部28aまたは28bの下端が嵌め込まれる円環溝96を形成してもよい。あるいは、円環溝96の代わりに、第2のサイドカバー16の上面に、脚部下部28aまたは28bの下端が嵌め込まれる円形穴を形成してもよい。
【0061】
第1の受け入れ穴および第2の受け入れ穴の位置、形状、寸法、その他の形式は、上記の実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施の形態では、連結部材25a,25bにおいて、第1の受け入れ穴67と第2の受け入れ穴49が交わっているが、そうでなくてもよい。
【0062】
手摺り部材24の脚部下部28a,28bを連結部材25a,25bに固定する方式は、コレット51に限られない。他のねじ、またはその他の締結手段が利用可能である。
【0063】
手摺り部材24の脚部27A,27Bの形状およびその各部の寸法は前述の好ましい実施形態に限定されない。例えば、図16および図17に示されるように、脚部27A,27Bの脚部上部33a,33bが傾いていてもよい。図17に示されるように、脚部下部28a,28bが脚部上部33a,33bよりかなり短くてもよい。
【0064】
前記の実施の形態では、プラットフォーム14を支持する荷重測定器(ロードセル76a,76b)がベース75に支持されている。しかし、ベースがなく、重量測定時に荷重測定器が床面に直接接触する体重計も本発明の範囲内にある。この場合、体重計を直立姿勢まで立ち上げても荷重測定器がプラットフォームから離れないように、荷重測定器がプラットフォームにしっかりと固定される。
【符号の説明】
【0065】
11 体重計、12 体重計本体、14 プラットフォーム、17 通り道、18 フック、19 車輪、24 手摺り部材、27 中央部、27A,27B 脚部、47 中間空洞部、49 第2の受け入れ穴、51 コレット、54 雄ねじ、58 開口、61 ナット部材、63 雌ねじ、67 第1の受け入れ穴、75 ベース、76a 第1ロードセル(荷重測定器)、76b 第2ロードセル(荷重測定器)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が搭乗した車椅子が載るプラットフォームと、
中央部と前記中央部の両端部から延びる一対の脚部とを有し、前記被験者が把持する手摺り部材と、
前記プラットフォームに与えられた荷重を測定する荷重測定器と、
前記プラットフォームに支持されており、前記手摺り部材の前記脚部がそれぞれ取り外し可能に連結される一対の連結部材とを備え、
前記連結部材の各々は、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームから離れた位置にある時に前記手摺り部材の前記脚部が受け入れられる第1の受け入れ穴と、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームに近い位置にある時に前記手摺り部材の前記脚部が受け入れられる第2の受け入れ穴とを有する
を備えることを特徴とする体重計。
【請求項2】
前記プラットフォームに対する定位置に取り付けられ、前記手摺り部材の前記中央部が前記プラットフォームに近い前記位置にあって前記手摺り部材の前記脚部が前記連結部材の前記第2の受け入れ穴に受け入れられる時に、前記手摺り部材の前記中央部が掛けられるフックを
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の体重計。
【請求項3】
体重計における前記フックから離れた一端部に取り付けられ、前記フックが上方になるように前記プラットフォームを立てる時に下方に配置される車輪を
さらに備えることを特徴とする請求項2に記載の体重計。
【請求項4】
前記連結部材の各々は、前記第1の受け入れ穴を有するとともに外周面に雄ねじを有し半径方向に縮小自在なコレットを備え、
前記コレットの外周面に装着されて前記雄ねじに噛み合う雌ねじを有し、前記雄ねじへの前記雌ねじの噛み合いに応じて前記コレットの半径方向の縮小を引き起こすナット部材
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の体重計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−208982(P2011−208982A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74619(P2010−74619)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)