説明

余剰液吸引機構および化学分析装置

【課題】余剰液の吸引効率の高い余剰液吸引機構および該吸引機構を備えた化学分析装置を提供する。
【解決手段】余剰尿吸引機構は、試験紙2が載置されるテーブル200と、試験紙2に対向する面に形成された吸引口310と吸引口310に連通する内部空間320とを有し、テーブル200上に載置された試験紙2をその幅方向に押してスライド移動させるプッシュバー300と、プッシュバー300における内部空間320内の余剰尿を吸引する吸引ポンプ500とを備える。テーブル200は、テーブル200の主表面から突出し、試験紙2のスライド移動方向に延びるように形成された複数のレール210を有する。レール210には、凸部が形成されている。凸部は、スライド移動中の試験紙2を上下に移動させ、スライド移動中の試験紙2を試験紙2の幅方向に傾けるとともに、スライド移動中の試験紙2をプッシュバー300に向けて押し付けることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰液吸引機構および化学分析装置に関し、特に、短冊状の試験紙に付着した余剰液(余剰試料)を吸引するための余剰液吸引機構および該吸引機構を備えた化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば尿などの液体試料の検査を行なう方法として、複数の試薬パッドが長手方向に配列された短冊状の試験紙を液体試料に浸漬させ、上記試薬パッドの呈色の度合いを光学的に検知することにより、複数の項目の検査を行なうことが従来から行なわれている。
【0003】
上記のような検査を行なう際、各々の試薬パッドに過剰な量の液体試料が供給されると、試薬パッドから試薬が溶出して呈色の度合いが低くなったり、隣接する試薬パッドどうしの試薬が混ざり合ったりして、正確な検査が行なえなくなる場合がある。したがって、試験紙に付着した過剰な液体試料(本願明細書では、これを「余剰液」と称する。)を除去することが望ましい。
【0004】
上記のような観点から開発された余剰液を除去するための装置が、たとえば、特開2004−177203号公報(特許文献1)、特開2000−258413号公報(特許文献2)および特開2003−315224号公報(特許文献3)などに記載されている。
【特許文献1】特開2004−177203号公報
【特許文献2】特開2000−258413号公報
【特許文献3】特開2003−315224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験紙に付着した余剰液を吸引する機構として、当該試験紙をその幅方向に押してスライド移動させながら余剰液を吸引する機構が考えられる。この場合、試験紙を押すスライド機構に孔部を設けて当該孔部に余剰液を流入させる。
【0006】
しかしながら、試験紙は比較的薄いため反りが発生しやすく、このため、各々の試薬パッドの高さが安定しない傾向にある。また、各々の試薬パッドごとに高さが異なる場合がある。したがって、必ずしも、各々の試薬パッドに付着した余剰液をスライド機構の孔部に流入させるのに適した高さに該試薬パッドを位置させることができない場合がある。この結果、余剰液の吸引効率が低下することが懸念される。
【0007】
なお、特許文献1〜3には、上記の課題を解決可能な構成は記載されておらず、試験紙を幅方向に押してスライド移動させながら余剰液を吸引する機構において、試験紙の反りや各々の試薬パッドの高さの違いに起因して生じる吸引効率の低下の問題は、特許文献1〜3に記載の発明によっては解決されない。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、余剰液の吸引効率の高い余剰液吸引機構および該吸引機構を備えた化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る余剰液吸引機構は、複数の試薬パッドが長手方向に配列された短冊状の試験紙に付着した余剰液を吸引する余剰液吸引機構であって、試験紙が載置されるテーブルと、試験紙に対向する面に形成された孔部と該孔部に連通する内部空間とを有し、テーブル上に載置された試験紙を該試験紙の幅方向に押してスライド移動させるスライド機構と、スライド機構における内部空間内の余剰液を吸引する吸引装置とを備える。ここで、凸部、凹部および段差部のうち少なくとも1つがテーブル上に形成される。
【0010】
1つの局面では、凸部、凹部および段差部は、スライド移動中の試験紙を上下に移動させることが可能である。
【0011】
上記構成によれば、試験紙の反りや各々の試薬パッドごとの高さの違いが存在する場合にも、各々の試薬パッドが該試薬パッドに付着した余剰液をスライド機構の孔部に流入させるのに適した高さを通過するように、スライド移動中の試験紙を上下移動させることができる。この結果、各々の試薬パッドに付着した余剰液が吸引されやすくなる。
【0012】
他の局面では、凸部、凹部および段差部は、スライド移動中の試験紙を該試験紙の幅方向に傾けることが可能である。
【0013】
上記構成によれば、試験紙の反りや各々の試薬パッドごとの高さの違いが存在する場合にも、各々の試薬パッドにおけるスライド機構の孔部に面する部分が該試薬パッドに付着した余剰液を上記孔部に流入させるのに適した高さを通過するように、スライド移動中の試験紙を傾斜させることができる。この結果、各々の試薬パッドに付着した余剰液が吸引されやすくなる。
【0014】
さらに他の局面では、凸部、凹部および段差部は、スライド移動中の試験紙をスライド機構に向けて押し付けることが可能である。
【0015】
上記構成によれば、スライド移動中の試験紙がスライド機構に向けて押し付けられることにより、余剰液が付着した試薬パッドとスライド機構の孔部とが密着し、各々の試薬パッドに付着した余剰液が吸引されやすくなる。また、試験紙の方向のずれ(位置ずれ)を吸収するという効果も期待できる。
【0016】
好ましくは、上記余剰液吸引機構において、テーブルの主表面から突出し、試験紙のスライド移動方向に延びるように複数のレールが形成され、凸部、凹部または段差部は、レール上に形成されている。
【0017】
上記構成によれば、試験紙がレール上をスライド移動するため、試験紙のスライド抵抗が減少する。また、孔部に流入しない余剰液はレール間に流下するため、当該余剰液が他の試験紙に触れることがない。そして、当該レール上に上記の凸部、凹部または段差部を形成することにより、簡単な構造により、各々の試薬パッドに付着した余剰液が吸引されやすくなるという効果を得ることができる。
【0018】
本発明に係る化学分析装置は、試験紙における試薬パッドの呈色の度合いに基づいて化学分析を行なう化学分析装置であって、上述した余剰液吸引機構を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各々の試薬パッドに付着した余剰液を孔部に流入させやすくすることにより、余剰液吸引機構における余剰液の吸引効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0021】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の構成を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0022】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る化学分析装置の構成を示す分解斜視図である。図1を参照して、本実施の形態に係る化学分析装置は、尿を検体として所定の項目について検査を行なうための尿化学分析装置である。尿化学分析装置1は、本体100と、本体100に着脱可能に取り付けられるテーブル200と、テーブル200に取り付けられるプッシュバー300と、テーブル200に隣接するように本体100に挿入される廃棄トレイ400とを含んで構成される。
【0023】
本体100は、タッチスクリーン110と、プリンタ120と、測定部130とを含んで構成される。「操作・表示部」としてのタッチスクリーン110上には、操作ボタン等が表示される。尿化学分析装置1の使用者は、タッチスクリーン110を押圧することによって、分析を開始したり、終了したりするなどの操作を行なう。「出力部」としてのプリンタ120は、各々の検体尿についての各検査項目の検査結果を出力する。測定部130は、光源(たとえば白色LEDや陰極蛍光ランプなど)および検出器(たとえばフォトダイオード)を含む反射光学系の測定装置である。尿化学分析装置1によって尿検査を行なう際は、まず、測定者が検体尿を後述する尿検査用の試験紙に吸収させ、テーブル200上に載置する。テーブル200上に載置された試験紙は、プッシュバー300によってスライド移動させられた後、後述する搬送機構によって測定部130の直下に移動させられる。そして、測定部130によって、試験紙上に設けられた各試薬パッドの呈色度合いが測定され、これにより、検体尿中の種々の化学成分の測定が行なわれる。その後、試験紙は、テーブル200上をさらに移動して、テーブル200上から廃棄トレイ400内に投下される。このように、検体尿に浸した試験紙をテーブル200の所定の位置に載置するだけで、検体尿の化学成分の測定を自動的かつ連続的に行なうことができる。
【0024】
なお、搬送機構は、試験紙を測定部130の直下に搬送するまでに所定の時間(たとえば30秒〜120秒程度)を要するように設定されている。これにより、検体尿と試薬との反応時間が確保される。
【0025】
尿化学分析装置1による検査項目としては、たとえば、ウロビリノーゲン濃度、亜硝酸塩濃度、ビリルビン濃度、ケトン体濃度、蛋白質濃度、ブドウ糖濃度、pH、潜血、白血球濃度などが挙げられる。
【0026】
図2は、尿化学分析装置1におけるテーブル200の周辺を示す上面図である。図2を参照して、テーブル200は、プッシュバー300の移動方向(矢印DR1方向)に延びる複数本のレール210を有する。レール210は、テーブル200の上面から上方(図2における紙面の手前側)に突出するように形成されている。また、テーブル200は、プッシュバー300により供給された試験紙を測定部130に向けて搬送する持ち上げ板220を有する。さらに、テーブル200は、レール210と同様に、テーブル200の上面から上方に突出するように形成されたガイド部230を有する。ガイド部230の突出高さは、レール210の突出高さよりも高い。
【0027】
検体尿を吸収させた試験紙は、テーブル200における載置部200A上に載置される。試験紙は、その先端を奥側(図2における上側)のガイド部230に接触させるように載置される。このようにすることで、試験紙の矢印DR2方向の位置決めを行なうことができる。
【0028】
載置部200A上に試験紙が載置されたことが検知されると、プッシュバー300が矢印DR1方向に動き、試験紙は矢印DR1方向にスライド移動し、持ち上げ板220上に達する。なお、プッシュバー300は、所定の時間毎(たとえば6秒毎)に動作するように設定されている。したがって、持ち上げ板220上には、所定の間隔で試験紙が供給される。
【0029】
上述した「搬送機構」としての持ち上げ板220は、プッシュバー300と同様に、所定の時間毎(たとえば6秒毎)に試験紙を持ち上げながら該試験紙を測定部130の直下に向けて所定量だけ移動させる。このようにして、測定部130の直下には、持ち上げ板220上に達してから所定の時間が経過した試験紙が順次搬送されてくる。測定部130は、各試薬パッドの呈色の度合いを測定する。これにより、複数の検体尿の検査を、所定の時間毎(たとえば6秒毎)に連続的に行なうことができる。測定部130による測定結果は、プリンタ120から出力することが可能である。測定部130を通過した検査後の試験紙は、持ち上げ板220によってテーブル200上から廃棄トレイ400に投下される。
【0030】
尿化学分析装置1を用いて検査を行なう際、各々の試薬パッドに過剰な量の検体尿が供給されると、試薬パッドから試薬が溶出して呈色の度合いが低くなったり、隣接する試薬パッドどうしの試薬が混ざり合ったりして、正確な検査が行なえなくなる場合がある。したがって、試験紙に付着した過剰な検体尿(余剰尿)は、可能な限り除去することが望ましい。本実施の形態に係る尿化学分析装置1では、上記の余剰尿を吸引するための余剰尿吸引機構が設けられている。
【0031】
図3は、尿化学分析装置1に含まれる余剰尿吸引機構の構成を模式的に示す図である。図3を参照して、本実施の形態に係る余剰尿吸引機構は、プッシュバー300に形成された吸引口310と、吸引口310に連通するプッシュバー300の内部空間320とを含んで構成される。
【0032】
図3(および図4)に示すように、吸引口310は、短冊状の試験紙2に設けられた複数の試薬パッド2Aに対応する位置に設けられている。吸引口310からプッシュバー300の内部空間320内に流入した余剰尿は、吸引ポンプ500により吸引される。プッシュバー300による余剰尿の吸引は、プッシュバー300により試験紙2を矢印DR1方向に押しているときに行なわれる。なお、プッシュバー300は、駆動機構600により矢印DR1方向に駆動される。駆動機構600は、モータ610およびボールねじ620を含んで構成される。モータ610の回転力がボールねじ620によって直進方向の力に変換され、当該直進力がプッシュバー300に伝達される。
【0033】
図5,図6は、それぞれ、図3に示される余剰尿吸引機構を矢印V,矢印VIの方向から見た図である。図5,図6に示すように、試験紙2は、レール210によって支持されながら、プッシュバー300に押されることによってスライド移動する。
【0034】
試験紙2は比較的薄い部材であるため、上記のようにレール210によって支持することで反りが発生しやすく、各々の試薬パッド2Aの高さが安定しない傾向にある。また、試験紙2上の複数の試薬パッド2Aは、それぞれに高さが異なる場合がある。したがって、各々の試薬パッド2Aをプッシュバー300の吸引口310に対応した高さに位置させることができない場合が生じることが懸念される。
【0035】
上記のような問題に鑑みて、本実施の形態に係る尿化学分析装置においては、図5に示すように、レール210上に凸部211が設けられている。なお、凸部211は、典型的には、試験紙2の長手方向(矢印DR2方向)に並ぶように、複数のレール210上に設けられている。
【0036】
次に、図7を用いて、凸部211上を通過する試験紙2の挙動について説明する。試験紙2が凸部211の手前に位置するときは、図7(a)に示すように、試験紙2は比較的低い高さに位置している。次に、試験紙2が凸部211上に達すると、まず、図7(b)に示すように、試験紙2は、プッシュバー300に近い側が下がるように(プッシュバー300から遠い側が上がるように)傾斜する。次に、試験紙2が凸部211を登りきると、図7(c)に示すように、試験紙2は、図7(a)の状態に対して比較的高い高さに位置する。そして、試験紙2が凸部211上から離れようとするときは、試験紙2は、プッシュバー300に近い側が上がるように(プッシュバー300から遠い側が下がるように)傾斜する。以上のように、プッシュバー300に押される試験紙2が凸部211を通過することにより、試験紙2は幅方向に傾きながら上下に移動する。これにより、試験紙2における吸引口310に面する部分の高さが変動し、余剰尿の吸引に適した試薬パッド2Aと吸引口310との位置関係(高さ関係)を確実に得ることができる。
【0037】
なお、凸部211の形状は、適宜変更可能であるが、典型的には、レール210の高さがたとえば1mm〜2mm程度であるのに対し、凸部211の高さはたとえば0.5mm程度である。すなわち、レール210の高さに対する凸部211の高さの割合は、たとえば25%〜50%程度である。また、凸部211は台形状に形成されているが、この台形の斜辺の傾斜角度は、たとえば30°〜45°程度である。なお、凸部211の形状は、台形状に限定されず、たとえば半円状に形成されてもよい。
【0038】
次に、図8〜図11を用いて、プッシュバー300の構成についてより詳細に説明する。図8は、プッシュバー300を試験紙2側から見た状態を示す図であり、図9(図8中のIX−IX断面図に相当)は、プッシュバー300による試験紙2の押出機能を説明する図である。また、図10,図11は、それぞれ、図8,図10におけるX−X断面図,XI−XI断面図である。
【0039】
図8に示すように、プッシュバー300には、試薬パッド2Aに対応する位置に複数の吸引口310が形成されている。なお、吸引口310からのみならず、プッシュバー300の長手方向(図8における左右方向)の全体から余剰尿を吸引するようにしてもよい。
【0040】
プッシュバー300は、第1部材330、第2部材340および第3部材350を含んで構成される。第1〜第3部材330,340,350は、それぞれ樹脂製の部材である。第3部材350には、押出部材360が取り付けられている。図9に示すように、押出部材360は、ピン361およびスプリング362を介して第3部材350に取り付けられている。プッシュバー300が試験紙2を持ち上げ板220に向けて押しているときは、押出部材360は第1部材330および第2部材340よりも若干後方側に位置し、試験紙2には接触しない状態にある(図9(a))。他方、プッシュバー300が持ち上げ板220近傍に達すると、押出部材360は、本体100に固定されたリリース棒370に当接し、ピン361を中心に矢印DR360方向に回動する。これにより、押出部材360は第1部材330および第2部材340よりも前方側に突出し、試験紙2を持ち上げ板220に向けて押し出す(図9(b))。このようにすることで、試験紙2が第1部材330および第2部材340に付着したままプッシュバー300が元の位置(持ち上げ板220から離れた位置)に戻ることを抑制し、試験紙2を確実に持ち上げ板220上に移動させることができる。なお、プッシュバー300がリリース棒370から離れると、スプリング362の付勢力により、押出部材360は、再び図9(a)の状態に戻る。
【0041】
図10,図11に示すように、プッシュバー300の内部空間は、主配管321と、主配管321から枝分かれした複数の副配管322とによって構成される。主配管321は、第1部材330に長手方向の孔を設けることにより形成される。副配管322は、第1部材330の側面に溝部を設け、該溝部を覆うように第2部材340を取り付けることにより形成される。なお、第1と第2部材330,340の間には、シール部材341が設けられる。また、図11に示すように、プッシュバー300にはレール210を受け入れる溝部300Aが設けられている。
【0042】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る余剰液吸引機構は、複数の試薬パッド2Aが長手方向(矢印DR2方向)に配列された短冊状の試験紙2に付着した「余剰液」としての余剰尿を吸引する余剰尿吸引機構である。余剰尿吸引機構は、試験紙2が載置されるテーブル200と、試験紙2に対向する面に形成された「孔部」としての吸引口310と吸引口310に連通する内部空間320とを有し、テーブル200上に載置された試験紙2をその幅方向(矢印DR1方向)に押してスライド移動させる「スライド機構」としてのプッシュバー300と、プッシュバー300における内部空間320内の余剰尿を吸引する「吸引装置」としての吸引ポンプ500とを備える。
【0043】
テーブル200は、テーブル200の主表面から突出し、試験紙2のスライド移動方向に延びるように形成された複数のレール210を有する。レール210には、凸部211が形成されている。凸部211は、スライド移動中の試験紙2を上下に移動させ、スライド移動中の試験紙2を試験紙2の幅方向に傾けるとともに、スライド移動中の試験紙2をプッシュバー300に向けて押し付けることが可能である。
【0044】
本実施の形態に係る余剰尿吸引機構によれば、各々の試薬パッド2Aが該試薬パッド2Aに付着した余剰尿をプッシュバー300の吸引口310に流入させるのに適した高さを通過するように、スライド移動中の試験紙2を上下移動または傾斜させることができる。また、スライド移動中の試験紙2をプッシュバー300に向けて押し付けることにより、余剰尿が付着した試薬パッド2Aとプッシュバー300の吸引口310とを密着させることができる。この結果、試験紙2の反りや各々の試薬パッド2Aごとの高さの違いが存在する場合にも、各々の試薬パッド2Aに付着した余剰尿を吸引させやすくすることができる。また、試験紙2をプッシュバー300に密着させることによって、試験紙2の方向のずれ(位置ずれ)を矯正することもできる。
【0045】
また、本実施の形態に係る余剰尿吸引機構によれば、試験紙2がレール210上をスライド移動するため、試験紙2のスライド抵抗が減少する。また、吸引口310に流入しない余剰尿はレール210間に流下するため、当該余剰尿が他の試験紙2に触れることがない。したがって、各項目の正確な検査を行なうことが可能である。
【0046】
なお、上記の例では、レール210上に凸部211を設ける例について説明したが、凸部211が設けられる位置は、レール210上に限定されず、たとえば、2本のレールの間から凸部211が突出していてもよい。また、凸部211に代えて、たとえば、図12に示すような凹部212が設けられてもよいし、凸部211に代えて、たとえば、図13に示すような段差部213が設けられてもよい。
【0047】
また、上記の例では、プッシュバー300が尿化学分析装置1の前方からみて右側から左側に向かう方向(矢印DR1方向)に試験紙2を押す例について説明したが、尿化学分析装置1は、プッシュバー300が上記の例とは逆の方向(すなわち、尿化学分析装置1の前方からみて左側から右側に向かう方向)に試験紙2を押すように構成されてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係る化学分析装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示される化学分析装置におけるテーブルの周辺を示す上面図である。
【図3】図1に示される化学分析装置における余剰尿吸引機構の構成を模式的に示す図である。
【図4】図3に示される余剰尿吸引機構における試薬パッドと吸引口との位置関係を示す斜視図である。
【図5】図3に示される余剰尿吸引機構を矢印Vの方向から見た図である。
【図6】図3に示される余剰尿吸引機構を矢印VIの方向から見た図である。
【図7】図3〜図6に示される余剰尿吸引機構において、試験紙が凸部を通過する際の挙動を説明する図である。
【図8】図3〜図6に示される余剰尿吸引機構に含まれるプッシュバーを示す図である。
【図9】図8に示されるプッシュバーによる試験紙の押出機能を説明する図である。
【図10】図8におけるX−X断面図である。
【図11】図10におけるXI−XI断面図である。
【図12】余剰尿吸引機構に含まれるレール形状の1つの変形例について説明する図である。
【図13】余剰尿吸引機構に含まれるレール形状の他の変形例について説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1 尿化学分析装置、2 試験紙、2A 試薬パッド、100 本体、110 タッチスクリーン、120 プリンタ、130 測定部、200 テーブル、200A 載置部、210 レール、211 凸部、212 凹部、213 段差部、220 持ち上げ板、230 ガイド部、300 プッシュバー、300A 溝部、310 吸引口、320 内部空間、321 主配管、322 副配管、330 第1部材、340 第2部材、341 シール部材、350 第3部材、360 押出部材、361 ピン、362 スプリング、370 リリース棒、400 廃棄トレイ、500 吸引ポンプ、600 駆動機構、610 モータ、620 ボールねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬パッドが長手方向に配列された短冊状の試験紙に付着した余剰液を吸引する余剰液吸引機構であって、
前記試験紙が載置されるテーブルと、
前記試験紙に対向する面に形成された孔部と該孔部に連通する内部空間とを有し、前記テーブル上に載置された前記試験紙を該試験紙の幅方向に押してスライド移動させるスライド機構と、
前記スライド機構における前記内部空間内の前記余剰液を吸引する吸引装置とを備え、
前記スライド移動中の前記試験紙を上下に移動させることが可能な凸部、凹部および段差部のうち少なくとも1つが前記テーブル上に形成された、余剰液吸引機構。
【請求項2】
複数の試薬パッドが長手方向に配列された短冊状の試験紙に付着した余剰液を吸引する余剰液吸引機構であって、
前記試験紙が載置されるテーブルと、
前記試験紙に対向する面に形成された孔部と該孔部に連通する内部空間とを有し、前記テーブル上に載置された前記試験紙を該試験紙の幅方向に押してスライド移動させるスライド機構と、
前記スライド機構における前記内部空間内の前記余剰液を吸引する吸引装置とを備え、
前記スライド移動中の前記試験紙を該試験紙の幅方向に傾けることが可能な凸部、凹部および段差部のうち少なくとも1つが前記テーブル上に形成された、余剰液吸引機構。
【請求項3】
複数の試薬パッドが長手方向に配列された短冊状の試験紙に付着した余剰液を吸引する余剰液吸引機構であって、
前記試験紙が載置されるテーブルと、
前記試験紙に対向する面に形成された孔部と該孔部に連通する内部空間とを有し、前記テーブル上に載置された前記試験紙を該試験紙の幅方向に押してスライド移動させるスライド機構と、
前記スライド機構における前記内部空間内の前記余剰液を吸引する吸引装置とを備え、
前記スライド移動中の前記試験紙を前記スライド機構に向けて押し付けることが可能な凸部、凹部および段差部のうち少なくとも1つが前記テーブル上に形成された、余剰液吸引機構。
【請求項4】
前記テーブルの主表面から突出し、前記試験紙のスライド移動方向に延びるように複数のレールが形成され、
前記凸部、前記凹部または前記段差部は、前記レール上に形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の余剰液吸引機構。
【請求項5】
前記試験紙における前記試薬パッドの呈色の度合いに基づいて化学分析を行なう化学分析装置であって、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の余剰液吸引機構を備えた、化学分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−74801(P2009−74801A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241193(P2007−241193)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】