説明

余剰霧化塗料捕集フィルタ、及び塗装システム

【課題】水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を低コストで効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集フィルタを提供すること。
【解決手段】塗装室4において、塗装機13から塗料ミストP1を噴射することにより自動車部品2の塗装が行われ、自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1を含む汚染空気A1は、排気用配管22から排気室6内の塗料捕集器23に向けて排出される。排気室6の側面には排気ダクト18が接続され、その接続部には塗料捕集フィルタ31が縦置きで配置されている。塗料捕集フィルタ31は、各々独立して形成され、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1がその表面に付着可能な複数のボール32と、メッシュ状部材を用いて構成され、複数のボール32を集合させて移動不能に収容する通気性収容体33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物に塗料を噴霧して塗装を行うための塗装システムに用いられ、被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料を捕集するための余剰霧化塗料捕集フィルタ、及び塗装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗装ブースの塗装室内にて被塗物に対する霧化塗装を行うと、オーバースプレーにより、塗料ミストや揮発性有機溶剤などを含んだ汚染空気(排気体)が塗装室内に充満してしまう。その結果、塗料ミストのカブリによって被塗物の品質が損なわれたり、揮発性有機溶剤によって作業者の健康が害されたりする可能性がある。これらの問題を解決するために、汚染空気を吸引して塗装室外に排出する構造を備えた塗装ブースが従来提案されている。
【0003】
ところが、公害防止の観点から、塗装室の汚染空気をそのまま大気中に放出することはできない。そのため、従来の塗装ブースでは、塗装室の下部に排気室を設置し、塗装室から吸引した汚染空気を排気室にて浄化処理するように構成している。
【0004】
具体的には、自動車ボディや自動車部品の塗装を行う塗装ブースでは、排気室において、汚染空気を水などの液体に接触させて混合し、その汚染空気に含まれる塗料ミストを液体に捕捉させることで、汚染空気から塗料ミストを分離除去している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
自動車ボディや自動車部品の塗装は、一般に耐水性、耐薬品性、耐候性、耐久性、および高級感を確保する必要があり、従来は、有機溶剤を含む溶剤型塗料を用いて塗装が行われてきた。しかし、近年では、塗装工程での排出有機溶剤規制や塗料のVOC規制が高まってきているため、有機溶剤を少なく含んでいる水性塗料が開発され、自動車ボディや自動車部品の塗装に用いられるようになってきている。
【0006】
水性塗料を噴霧して塗装を行う塗装ブースにおいて、従来のように水を使用して汚染空気の塗料ミストを捕捉する場合、捕捉した塗料が水に溶け込んでしまうため、その排水の浄化処理(具体的には、水と塗料とを分離するための固液分離処理)が困難となる。また、塗料が腐敗して異臭を発するなどの問題が生じる。そのため、水を用いた湿式法ではなく、乾式法によって塗料ミストを効率よく捕集するシステムが検討されている。
【0007】
特許文献3には、乾式法によって塗料ミストを捕集するためのフィルタが開示されている。特許文献3のフィルタでは、複数の円筒状部材を塗料捕集固体として備え、それら外周面が接着剤にて互いに接合された状態で支持体内の空間に充填されている。このフィルタでは、各円筒状部材の空隙部が塗料ミストを捕集するための流路を構成している。
【特許文献1】特開2006−142208号公報
【特許文献2】特許第3656229号公報
【特許文献3】実用新案第3130780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献3のフィルタでは、複数の円筒状部材が互いに接着剤で接合されているため、各円筒状部材の再利用は困難となっている。このフィルタを再利用するために溶剤などを用いて複数の円筒状部材をばらばらに分離できたとしても、円筒状部材における内側の空隙部に塗料が付着しているので、塗料を完全に除去することはできず、塗料の捕集能力を十分に回復させることは困難である。このため、フィルタの捕集能力が低下した場合、そのフィルタは再利用されることなく廃棄される。また、塗料を捕集する塗料捕集部材として円筒状部材を用いているため、単純形状の粒体を用いる場合と比較して製造コストが嵩む。特に、自動車ボディなどの大型部品を塗装する塗装ブースでは、濾過面積が大きいフィルタが用いられるため、円筒状部材が大量に必要となる。またこの場合、新しいフィルタへの交換が定期的に必要となるため、塗装システムのランニングコストも高くなってしまう。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を低コストで効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集フィルタを提供することにある。また、別の目的は、余剰霧化塗料捕集フィルタを用いて塗料を効率よく捕集して塗料を確実に廃棄することができる塗装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気流路とを備えた塗装システムに用いられ、前記排気流路の入口または途中に設けられ、前記排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集フィルタであって、各々独立して形成され、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され、前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収容する通気性収容体とを備えたことを特徴とする余剰霧化塗料捕集フィルタをその要旨とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、メッシュ状部材を用いて通気性収容体が構成され、その通気性収容体内に複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収容することにより、余剰霧化塗料捕集フィルタが構成されている。この余剰霧化塗料捕集フィルタは、塗装システムにおける排気流路の入口または途中に設けられており、排気流路を通過する排気体が複数の塗料捕集固体の表面に接触する。このとき、排気体に含まれる余剰霧化塗料が塗料捕集固体の表面に付着され、余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる。また、余剰霧化塗料捕集フィルタのメンテナンス時には、通気性収容体から各塗料捕集固体を取り出してばらばらに分離させることができ、塗料捕集固体の表面に付着した塗料粕を容易に取り除くことができる。そして、塗料粕を除去した各塗料捕集固体を通気性収容体の中に入れて集合させることにより、塗料捕集固体による塗料の捕集能力が回復されて余剰霧化塗料捕集フィルタが元の状態に戻るため、余剰霧化塗料捕集フィルタを再利用することができる。従って、従来技術のように塗料捕集固体を廃棄する必要がなく、低コストで効率よく余剰霧化塗料を捕集することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記複数の塗料捕集固体は略球体であることをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、複数の塗料捕集固体は略球体であるため、塗料捕集固体の表面積を十分に確保することができ、その表面に塗料を確実に付着させることができる。また、球体の表面には角部が存在しないため、その表面に付着した塗料粕を容易に除去することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記排気流路において前記排気体が流れる上流側から下流側に向けて前記通気性収容体が多段状に配置され、各段の通気性収容体は、それぞれ個別に前記排気流路に対して着脱可能に設けられていることをその要旨とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、排気流路において上流側から下流側に向けて通気性収容体が多段状に配置されているため、各段の通気性収容体に収納される複数の塗料捕集固体によって、排気体に含まれる余剰霧化塗料を確実に捕集することができる。また、各段の通気性収容体は、それぞれ個別に排気流路に対して着脱可能に設けられているので、各段の通気性収容体のいずれかにおいて各塗料捕集固体に塗料粕が付着して塗料の捕集能力が低下した場合、その通気性収容体だけ排気流路から取り外すことができる。このとき、排気流路に配置されている他の通気性収容体の各塗料捕集固体によって余剰霧化塗料の捕集を継続的に行うことができるため、塗装システムの連続稼動が可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気室と、前記排気室の側面に接続され、その側面から前記排気体を排出する排気ダクトと、各々独立して形成され前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収容する通気性収容体とを有し、前記排気室内にて横置きで配置される面状の余剰霧化塗料捕集フィルタとを備えた塗装システムにおいて、前記排気室には、前記排気ダクトが接続される第1の側面からその反対側の第2の側面に向けて徐々に低くなるよう傾斜させた底面が設けられ、前記余剰霧化塗料捕集フィルタは、前記第2の側面側ほど低くなるよう傾斜させた状態で配置され、前記排気室の底面における第2の側面側の位置に塗料廃液機構が設けられることを特徴とする塗装システムをその要旨とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、排気室の底面は、排気ダクトが接続される第1の側面からその反対側の第2の側面に向けて徐々に低くなるよう傾斜されており、その第2の側面側の位置に塗料廃液機構が設けられている。この場合、排気室において、壁面等に付着して底面に流れ落ちた液体状の塗料がその底面の傾斜に沿って排気方向の反対側に流れ、塗料廃液機構から確実に排出される。さらに、余剰霧化塗料捕集フィルタは、第2の側面側ほど低くなるよう傾斜させた状態で配置されているので、余剰霧化塗料捕集フィルタに付着した液体状の塗料は、排気方向の反対側に流れ、塗料廃液機構から確実に排出される。このようにすれば、余剰霧化塗料捕集フィルタを用いて塗料を効率よく捕集して、塗料を確実に廃棄することができる。また、排気ダクト側に塗料が流れることを防止でき、排気ダクトを通じて塗料を含まない浄化された空気を排出することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気室と、前記排気室の側面に接続され、その側面から前記排気体を排出する排気ダクトと、各々独立して形成され前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収納する通気性収容体とを有し、前記排気ダクト内にて縦置きで配置される面状の余剰霧化塗料捕集フィルタとを備えた塗装システムにおいて、前記排気ダクトには、上流側ほど低くなるよう傾斜部が設けられ、前記余剰霧化塗料捕集フィルタは、前記傾斜部に装着されることで上流側に傾斜した状態で配置され、前記排気ダクトにおける傾斜部の上流側の位置に塗料廃液機構が設けられることを特徴とする塗装システムをその要旨とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、排気ダクトに設けられた傾斜部に余剰霧化塗料捕集フィルタが装着されることで、余剰霧化塗料捕集フィルタが上流側に傾斜した状態で配置されている。また、傾斜部の上流側の位置には塗料廃液機構が設けられている。この場合、余剰霧化塗料捕集フィルタに付着して下方に流れ落ちた液体状の塗料は、排気ダクトの傾斜部に沿って捕集フィルタの上流側に流れ、塗料廃液機構から確実に排出される。このようにすれば、余剰霧化塗料捕集フィルタを用いて塗料を効率よく捕集して、塗料を確実に廃棄することができる。また、排気ダクトの下流側に塗料が流れることを防止でき、排気ダクトを通じて塗料を含まない浄化された空気を排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によると、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を低コストで効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集フィルタを提供することができる。また、請求項4または5に記載の発明によると、余剰霧化塗料捕集フィルタを用いて塗料を効率よく捕集して塗料を確実に廃棄することができる塗装システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
【0022】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態における塗装システムを構成する塗装ブースの概略構成を示す斜視図である。
【0023】
図1に示されるように、塗装ブース1は、自動車部品2(被塗物)に水性塗料を吹き付けることにより、その自動車部品2の表面に塗膜を形成させるためのものである。この塗装ブース1には、ダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気が流通されるとともに、自動車部品2が収容される塗装空間3を有する塗装室4と、塗装室4の上側に設けられ塗装室4にダウンフローの空気を供給するための給気室5と、塗装室4の下側に設けられその塗装室4内の空気を排気するための排気室6とが設けられている。なお、図1の塗装ブース1においては、塗装室4及び排気室6における前面側の壁を省略して示している。
【0024】
塗装室4の床部7は簀子状の部材(グレーチング)で形成され、その床部7の略中央部には、自動車部品2が載せられた塗装用テーブル8が設けられている。また、塗装室4において、塗装用テーブル8の近傍には塗装ロボット11が設けられ、該塗装ロボット11のアーム12に取り付けられた塗装機13で自動車部品2が塗装される。本実施の形態で用いられる塗装機13は、回転霧化式の塗装機であり、空気と微粒化塗料とを混合した塗料ミストP1(霧化塗料)を噴射することで自動車部品2の塗装を行う。
【0025】
給気室5には、フィルタ等を含んで構成された整流ユニット15が設けられている。そして、給気ダクト16を通じて給気室5に圧送された空気が整流ユニット15により整流された後、空調空気として塗装室4に流下させられる。本実施の形態では、給気ダクト16や整流ユニット15を通じて整流された空調空気が塗装室4に供給されるようになっている。
【0026】
排気室6は、塗装室4内の汚染空気A1(排気体)を排気ファン(図示略)の吸引力によって吸引し、吸引した汚染空気A1の処理を行うようになっている。汚染空気A1には、塗装室4内の塗装機13からオーバースプレーされ、自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1(余剰霧化塗料)が含まれている。また、排気室6の一方の側面には、排気室6内にて浄化された空気を外部に排出する排気ダクト18が設けられている。そして、排気ダクト18から排出された空気は、図示しないファンによって圧送され、排気される。なお、排気ダクト18から排出された空気の一部が再び給気室5に導かれるようになっていてもよい。本実施の形態では、排気室6及び排気ダクト18により排気流路が構成されている。
【0027】
また、塗装機13の下流側であって排気室6の上部となる位置には、汚染空気A1を集めるために角錐状に形成された空気集合部材21(集合手段)が設けられている。この空気集合部材21は、下側に行くほど徐々に小断面積となる経路が形成されており、塗装室4の汚染空気A1をその経路に集合させつつ増速させる。また、空気集合部材21の下端部には、排気用配管22が接続されており、その排気用配管22により、空気集合部材21で増速させた汚染空気A1を排気室6へ排出する。
【0028】
排気室6において、排気用配管22の直下流側には、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を付着させて分離する塗料捕集器23(余剰霧化塗料捕集器)が配置されている。本実施の形態の塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気A1を受け止める容器24と、その容器24の内部にて収容され、塗料ミストP1に由来する液体状の塗料が付着可能な複数のボール25(非固定の塗料捕集固体)とを備える。容器24は、底部26及び側壁27を有し上端に開口部28を有する釜状の容器であり、塗料の付着性が低い材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の難接着樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦樹脂、表面にポリテトラフルオロエチレン等のコーティングを施した材料)を用いて形成されている。この容器24において、底部26には排気用配管22から排出された汚染空気A1が略直角に衝突する。側壁27は、その底部26によって偏向された汚染空気A1の気流に対し略直角となるよう折り返されている。
【0029】
容器24内に収容されるボール25は、直径が50mm程度の球体であって、塗料の付着性が高い材料(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料やセラミック材料)を用いて形成されている。各ボール25は、容器24の内部にて個々に独立して移動可能かつ容器24の内部表面に接触可能な状態で収容されている。
【0030】
また、本実施の形態の塗装ブース1では、排気室6の側面において排気ダクト18との接続部(排気ダクト18の基端側)には、面状の塗料捕集フィルタ31(余剰霧化塗料捕集フィルタ)が縦置きで配置されている。この塗料捕集フィルタ31は、各々独立して形成され、塗料ミストP1が付着可能な複数のボール32(塗料捕集固体)と、ステンレス製の金網を用いて構成され、複数のボール32を集合させて移動不能に収容する通気性収容体33とを備える。各ボール32は、直径が20mm程度の球体であって、難接着樹脂(例えば、ポリプロピレン)を用いて形成されている。本実施の形態の塗料捕集フィルタ31は、60mm程度の厚さを有し、3層分に相当する個数のボール32が通気性収容体33に収納されている。
【0031】
さらに、塗料捕集フィルタ31の上流側(排気室6側)及び下流側(排気ダクト18側)には、気圧を検出するための圧力センサ34,35が配置されている。各圧力センサ34,35は制御装置37(信号出力手段)に接続されており、この制御装置37には、塗料捕集フィルタ31の上流側及び下流側の気圧に応じたセンサ信号が取り込まれるようになっている。
【0032】
制御装置37は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置37は、各圧力センサ34,35のセンサ信号に基づいて、塗料捕集フィルタ31の上流側と下流側との差圧を判定し、その差圧が予め決められた設定値よりも高くなったとき、メンテナンス信号を出力する。そして、制御装置37は、このメンテナンス信号によって、図示しない警告装置(警告ランプや警告ブザー等)を駆動する。このとき、作業者は、塗料捕集フィルタ31のメンテナンスが必要であると判断して、そのメンテナンスを行う。
【0033】
次に、本実施の形態の塗装ブース1の作用について説明する。
【0034】
まず、塗装機13から水性塗料を噴霧して自動車部品2の塗装を行うと、オーバースプレーされた塗料ミストP1を含む汚染空気A1が空気集合部材21で増速され、排気用配管22を通して排気室6に排出される。ここで、汚染空気A1は、例えば、5m/秒〜50m/秒の流速に増速され、その汚染空気A1が容器24の底部26に略直角に吹き付けられる。さらに、その底部26で偏向された汚染空気A1は、底部26に沿って流れて側壁27に吹き付けられる。このとき、空気は底部26や側壁27の表面に沿って流れるが、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1は空気よりも重いためその慣性力により底部26や側壁27に衝突する。これにより、塗料ミストP1は、液化した塗料として底部26や側壁27の表面に付着する。
【0035】
また、各ボール25の表面にも汚染空気A1が吹き付けられ、その空気に含まれる塗料ミストP1がボール25の表面に衝突し、液化した塗料が付着する。さらに、容器24の内部において、5m/秒〜50m/秒に増速された汚染空気A1の気流が各ボール25に作用しその空気抵抗によって各ボール25が転動する。本実施の形態では、容器24よりもボール25の方が塗料の付着性が高いため、ボール25が転動することにより、容器24の底部26や側壁27に付着していた塗料が擦り取られてボール表面に満遍なく付着する。
【0036】
さらに、排気室6内において、塗料捕集器23から流出した汚染空気A1は、塗料捕集フィルタ31を通過して排気ダクト18に排出される。この塗料捕集フィルタ31を通過する際の汚染空気A1の風速は0.5m/秒〜4m/秒の速さに設定されている。汚染空気A1が塗料捕集フィルタ31を通過するとき、汚染空気A1に残存する塗料ミストP1が塗料捕集フィルタ31における複数のボール32に衝突し、それらボール32の表面に塗料が付着して汚染空気A1から分離される。
【0037】
ここで、塗料捕集フィルタ31において各ボール32の表面に塗料が十分に付着し、各ボール32間の隙間が狭くなると、該フィルタ31の通気性が悪化して塗料の捕集能力が低下する。このとき、塗料捕集フィルタ31での圧力損失が大きくなる。
【0038】
制御装置37は、圧力センサ34,35のセンサ信号に基づいて、塗料捕集フィルタ31の上流側の気圧と下流側との気圧をモニタしており、その上流側と下流側との差圧が予め決められた設定値よりも高くなると、メンテナンス信号を出力し、警告装置を駆動する。これにより、塗料捕集フィルタ31のメンテナンス時期が来たことを作業者に通知する。
【0039】
そして、警告装置の警告ランプの点灯やブザー音を確認した作業者は、塗装ブース1の塗装処理を停止して塗料捕集フィルタ31のメンテナンスを行う。このメンテナンスでは、まず、塗料捕集フィルタ31を排気室6の側面から取り外し、塗料粕が付着した各ボール32を通気性収容体33から取り出す。そして、振動ミルなどの装置を利用して各ボール32の表面に付着している塗料粕が剥離される。その後、それらボール32を通気性収容体33内に充填することで塗料捕集フィルタ31を再生した後、その塗料捕集フィルタ31を排気室6の側面に装着する。この後、塗装ブース1を再度稼動させることにより、塗料捕集フィルタ31にて塗料ミストP1が効率よく捕集される。
【0040】
本発明者は、塗料捕集フィルタ31における通過風速を変えて塗料の捕集効率を測定した。その結果を図2に示している。図2に示されるように、塗料捕集フィルタ31を用いることにより、4m/秒以下の風速とすることで、96%以上の捕集効率が確保されることが確認された。
【0041】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0042】
(1)本実施の形態の塗装ブース1において、塗装室4には給気室5から取り入れられた空調空気が下方に向けて流通されている。この塗装室4において、その空気と塗料とを混合した塗料ミストP1が塗装機13から自動車部品2に噴射されることでその塗装が行われる。また、給気室5から取り入れられた空気と自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1との混合気体である汚染空気A1は、空気集合部材21によって徐々に小断面積となる経路に集合され増速された後、排気用配管22を介して排気室6の塗料捕集器23に向けて排出される。このようにすれば、塗装空間3の汚染空気A1をスムーズに排気することができ、自動車部品2の塗装品質を十分に確保することができる。また、本実施の形態の塗料捕集器23は、汚染空気A1を受け止める容器24と、その容器24の内部に移動可能な状態で収容される複数のボール25とで構成されており、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が各ボール25表面に付着して空気から分離される。さらに、排気室6の側面において排気ダクト18の接続部には、複数のボール32と、各ボール32を収容する通気性収容体33とを備えた塗料捕集フィルタ31が設けられている。塗料捕集フィルタ31において、汚染空気A1が各ボール32の表面に接触し、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が各ボール32表面に付着して空気から分離される。このように、塗装ブース1において、塗料捕集器23や塗料捕集フィルタ31を設けることにより、従来技術のように水などの液体を用いることなく、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を効率よく捕集することができる。
【0043】
(2)本実施の形態の場合、塗料捕集フィルタ31のメンテナンス時には、通気性収容体33から各ボール32を取り出してばらばらに分離させることができ、各ボール32表面に付着した塗料粕を容易に取り除くことができる。そして、塗料粕を除去した各ボール32を通気性収容体33の中に入れて集合させることにより、各ボール32による塗料の捕集能力が回復されて塗料捕集フィルタ31が元の状態に戻るため、塗料捕集フィルタ31を再利用することができる。従って、従来技術のように塗料捕集固体を廃棄する必要がなく、低コストで効率よく塗料ミストP1を捕集することができる。
【0044】
(3)本実施の形態では、塗料捕集器23や塗料捕集フィルタ31の塗料捕集固体として球状のボール25,32を用いた。この場合、ボール25,32の表面積を十分に確保することができ、その表面に塗料を確実に付着させることができる。また、ボール25,32表面には角部が存在しないため、その表面に付着した塗料粕を容易に除去することができる。
【0045】
(4)本実施の形態の塗装ブース1では、塗料捕集フィルタ31の上流側と下流側とで気圧を検出し、その上流側と下流側との差圧が設定値を超えたときに、塗料捕集フィルタ31のメンテナンス信号を出力するようにした。このようにすれば、塗料捕集フィルタ31の再生が必要なメンテナンス時期を適切に判断することができ、実用上好ましいものとなる。
[第2の実施の形態]
【0046】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図3に基づき説明する。
【0047】
本実施の形態の塗装ブース1では、排気室6内において、塗料捕集器23が省略され、その代わりに塗料捕集フィルタ40が横置きで配置される点が第1の実施の形態と異なる。なお、給気室5や塗装室4の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0048】
図3に示されるように、本実施の形態の塗料捕集フィルタ40は、排気室6内において汚染空気A1が流れる上流側から下流側に向けて通気性収容体41,42,43が多段状に配置され、各通気性収容体41〜43に複数のボール32(塗料捕集固体)が収容されている。各通気性収容体41〜43は、それぞれ個別に排気室6の側壁に対して着脱可能に設けられている。
【0049】
この塗料捕集フィルタ40を設ける場合、各段の通気性収容体41〜43に収納される複数のボール32によって、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を確実に捕集することができる。また、塗装ブース1の稼動時には、塗料捕集フィルタ40の各通気性収容体41〜43において、上流側のボール32ほど塗料が多く付着
するため塗料の捕集能力が低下していく。この場合、塗料の捕集能力が低下した上流側の通気性収容体41だけ排気室6から取り外すことができる。このとき、排気室6内に配置されている他の通気性収容体42,43の各ボール32により、塗料ミストP1の捕集を継続的に行うことができる。また、排気室6から取り外した通気性収容体41については、塗料粕が付着した各ボール32をその通気性収容体41から取り出し、各ボール32の表面に付着している塗料粕を剥離する。その後、それらボール32を通気性収容体41内に充填した後、その通気性収容体41を排気室6に装着する。このようにすれば、塗装ブース1の連続稼動が可能となり、自動車部品2の塗装効率を高めることができる。
[第3の実施の形態]
【0050】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を図4に基づき説明する。
【0051】
本実施の形態の塗装ブース51は、小型の部品52(被塗物)を塗装するブースであり、塗装室53内においてその部品52が天井から吊るされている。そして、作業者によって塗装機54が操作されることにより、空気と微粒化塗料とを混合した塗料ミストP1が噴射され部品52の塗装が行われる。
【0052】
また、塗装室53の下流側(図4では右側)には排気室55が設けられおり、その排気室55の入口に、塗料捕集フィルタ57(余剰霧化塗料捕集フィルタ)が縦置きで配置されている。図5に示されるように、塗料捕集フィルタ57は、正方形の面状に形成されており、第1の実施の形態の塗料捕集フィルタ31と同様に、ステンレス製の金網を用いて構成される通気性収容体58と、その通気性収容体58に収納される複数のボール59(塗料捕集固体)とを備える。
【0053】
さらに、排気室55の天井面には排気ダクト61が接続されており、その接続部(排気ダクト61の基端側)には、排気ファン62が設けられている。この排気ファン62の駆動により、塗装室53内の汚染空気A1が塗料捕集フィルタ57を通過して排気室55内に吸い込まれ、さらに排気ダクト61を通じて排気される。
【0054】
また、塗料捕集フィルタ57のメンテナンス時には、通気性収容体58から各ボール59を取り出してばらばらに分離させることができ、各ボール59表面に付着した塗料粕を容易に取り除くことができる。そして、塗料粕を除去した各ボール59を通気性収容体58の中に入れて集合させることにより、塗料捕集フィルタ57を再利用することができる。
【0055】
このように、本実施の形態の塗装ブース51においても、塗料捕集フィルタ57を用いることにより、従来技術のように塗料捕集固体を廃棄する必要がなく、低コストで効率よく塗料ミストP1を捕集することができる。
[第4の実施の形態]
【0056】
次に、本発明を具体化した第4の実施の形態を図6に基づき説明する。
【0057】
本実施の形態の塗装ブース1では、第2の実施の形態と同様に、排気室6内において、面状の塗料捕集フィルタ70が横置きで配置されている。この塗料捕集フィルタ70は、排気室6内において汚染空気A1が流れる上流側から下流側に向けて通気性収容体71,72,73が多段状に配置され、各段の通気性収容体71〜73には複数のボール74,75,76(塗料捕集固体)が収容されている。より詳しくは、各段の通気性収容体71〜73には、上流側ほど下流側よりもサイズが大きなボール74〜76が収容されている。さらに、塗料捕集フィルタ70(各通気性収容体71〜73)は、排気ダクト18が接続される第1の側面側(図6の右側)ほど高く、その反対側の第2の側面側(図6の左側)ほど低くなるよう傾斜させた状態で配置されている。
【0058】
また、排気室6には、第1の側面から第2の側面に向けて徐々に低くなるよう傾斜させた底面78が設けられている。この排気室6の底面78において、第2の側面側の位置に塗料排出用のドレイン79(塗料廃液機構)が接続されている。
【0059】
このように塗装ブース1を構成することにより、排気室6において、壁面等に付着して底面78に流れ落ちた液体状の塗料P2がその底面78の傾斜に沿って排気方向の反対側に流れ、塗料排出用のドレイン79から確実に排出される。さらに、塗料捕集フィルタ70は、第2の側面側ほど低くなるよう傾斜させた状態で配置されているので、塗料捕集フィルタ70に付着した液体状の塗料P2は、排気方向の反対側に流れ、塗料排出用のドレイン79から確実に排出される。
【0060】
このようにすれば、排気ダクト18側に塗料P2が流れることを防止でき、排気ダクト18を通じて塗料P2を含まない浄化された空気を排出することができる。また、塗料捕集フィルタ70において、各段の通気性収容体71〜73には、上流側ほど下流側よりもサイズが大きなボール74〜76が収容されているので、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を効率よく捕集することができる。
[第5の実施の形態]
【0061】
次に、本発明を具体化した第5の実施の形態を図7に基づき説明する。
【0062】
本実施の形態の塗装ブース1では、第1の実施の形態と同様に、排気室6内において、塗料捕集器23が配置されている。また、排気室6の側面に接続される排気ダクト18内において、面状の塗料捕集フィルタ80が縦置きで配置されている。
【0063】
より詳しくは、排気ダクト18には、上流側ほど低くなるよう傾斜部81が設けられており、塗料捕集フィルタ80はその傾斜部81に装着されることで上流側に傾斜した状態で配置されている。塗料捕集フィルタ80は、第1の実施の形態の塗料捕集フィルタ31と同様に、ステンレス製の金網を用いて構成される通気性収容体82と、その通気性収容体82内に収容される複数のボール83(塗料捕集固体)とを備える。また、排気ダクト18において、塗料捕集フィルタ80の上流側の位置には、塗料排出用のドレイン84(塗料廃液機構)が接続されている。
【0064】
このように塗装ブース1を構成することにより、塗料捕集フィルタ80に付着して下方に流れ落ちた液体状の塗料P2は、排気ダクト18の傾斜部81に沿って塗料捕集フィルタ80の上流側に流れ、塗料排出用のドレイン84から確実に排出される。このように、塗料捕集フィルタ80を用いて塗料P2を効率よく捕集することができ、その塗料P2を確実に廃棄することができる。また、排気ダクト18の下流側に塗料P2が流れることを防止でき、排気ダクト18を通じて塗料P2を含まない浄化された空気を排出することができる。
【0065】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0066】
・上記第1の実施の形態において、塗料捕集器23のボール25は、塗料の付着性が高い材料を用いるものであったが、これ以外に、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の難接着樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦樹脂、表面にポリテトラフルオロエチレン等のコーティングを施した材料を用いてもよい。また、塗料捕集フィルタ31は、ポリプロピレン製のボール32を用いたが、他の難接着樹脂や低摩擦樹脂等からなるボールを用いてもよいし、金属材料やセラミック材料からなるボールを用いてもよい。
【0067】
また、塗料捕集器23は、塗料捕集フィルタ31のボール32(直径が20mm)よりも大きなボール25(直径が50mm)を用いていたが、各ボール25,32のサイズは適宜変更することができる。ただし、各ボール25,32のサイズは直径が20mm〜50mm程度とすることが好ましい。各ボール25,32のサイズが大きすぎると、汚染空気A1の通過する隙間が大きくなり捕集効率が低下してしまう。また逆に、各ボール25,32のサイズが小さすぎると、汚染空気A1の通過する隙間が小さくなるため、汚染空気A1が通過する際の圧力損失が大きくなってしまう。この場合、排気ダクト18を介して空気を排気するためのファンの出力を大きくする必要があり、部品コストやランニングコストが増大してしまう。従って、直径が20mm〜50mm程度のボール25,32を用いることにより、塗料捕集器23や塗料捕集フィルタ31において、各ボール25,32の間に適切な隙間が形成されるため、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を効率よく捕集することができる。
【0068】
さらに、塗料捕集器23と塗料捕集フィルタ31とで同じサイズ、同じ材質のボールを用いてもよい。この場合、塗料捕集器23と塗料捕集フィルタ31とで共通のボールを使用することができるため、塗料捕集器23及び塗料捕集フィルタ31の各ボールを区別して再生処理を行う必要がなく、コスト的に有利なものとなる。
【0069】
・上記第1の実施の形態では、塗料捕集フィルタ31の上流側と下流側との差圧が設定値よりも大きくなったときに、塗料捕集フィルタ31のメンテナンスを行うようにしていたが、これに限定されるものではない。例えば、塗装ブース1の稼働時間に基づいて、塗料捕集フィルタ31のメンテナンスを定期的に行うように構成してもよい。
【0070】
・上記第4及び第5の実施の形態では、塗料廃液機構として塗料排出用のドレイン79,84を設けたが、塗料排出用のドレイン79,84に代えて塗料たまり(図示略)を設け、その塗料たまりに溜まった塗料P2を定期的に回収するよう構成してもよい。あるいは、塗料排出用のドレイン79,84に代わる塗料廃液機構として、例えばポンプを設け、このポンプを用いて、溜まった塗料P2を常時または定期的に排出するようにしてもよい。
【0071】
・上記各実施の形態において、水性塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うものであったが、溶剤型塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うように構成してもよい。また、被塗物として自動車部品2以外に家電製品などの部品を塗装するものであってもよい。
【0072】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0073】
(1)請求項3において、各段の通気性収容体には、上流側ほど下流側よりもサイズが大きな塗料捕集固体を収容するようにしたことを特徴とする余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【0074】
(2)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記塗料捕集固体は、難接着樹脂または低摩擦樹脂を用いて球状に形成されていることを特徴とする余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【0075】
(3)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記塗料捕集固体は、金属またはセラミックを用いて球状に形成されていることを特徴とする余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【0076】
(4)外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気室と、前記排気室の側面に接続され、その側面から前記排気体を排出する排気ダクトと、前記排気室内または排気ダクト内に設けられるフィルタであって、各々独立して形成され前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収納する通気性収容体とを有する余剰霧化塗料捕集フィルタとを備えた塗装システムにおいて、前記余剰霧化塗料捕集フィルタの上流側と下流側とにおける気圧を検出し、その上流側と下流側との差圧が設定値よりも高くなったときに、前記余剰霧化塗料捕集フィルタのメンテナンス信号を出力する信号出力手段を備えたことを特徴とする塗装システム。
【0077】
(5)請求項4または5において、前記塗装室と排気室との間に設けられ、前記排気体を、徐々に小断面積となる経路に集合させつつ増速させる集合手段と、前記排気室において前記集合手段の直下流側に設置され、増速させた排気体を受け止める容器と、その容器の内部にて移動可能な状態で収納され、前記余剰霧化塗料を凝集させた液体状の塗料がその表面に付着可能な非固定の塗料捕集固体とを含んで構成された余剰霧化塗料捕集器とを備え、前記余剰霧化塗料捕集フィルタが前記余剰霧化塗料捕集器よりも下流側に配置されていることを特徴とする塗装システム。
【0078】
(6)技術的思想(5)において、前記余剰霧化塗料捕集フィルタの塗料捕集固体は、前記余剰霧化塗料捕集器の塗料捕集固体よりもサイズが小さいことを特徴とする塗装システム。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の塗装ブースを示す斜視図。
【図2】塗料捕集フィルタの通過風速と捕集効率との関係を示すグラフ。
【図3】本発明を具体化した第2の実施の形態の塗装ブースを示す斜視図。
【図4】本発明を具体化した第3の実施の形態の塗装ブースを示す断面図。
【図5】塗料捕集フィルタを示す平面図。
【図6】本発明を具体化した第4の実施の形態の塗装ブースを示す断面図。
【図7】本発明を具体化した第5の実施の形態の塗装ブースを示す断面図。
【符号の説明】
【0080】
1,51…塗料システムを構成する塗装ブース
2…被塗物としての自動車部品
4,53…塗装室
6,55…排気流路を構成する排気室
18,61…排気流路を構成する排気ダクト
31,40,57,70,80…余剰霧化塗料捕集フィルタとしての塗料捕集フィルタ
32,59,74〜76,83…塗料捕集固体としてのボール
33,41〜43,58,71〜73,82…通気性収容体
52…被塗物としての部品
78…排気室の底面
79,84…塗料廃液機構としてのドレイン
81…傾斜部
A1…排気体としての汚染空気
P1…霧化塗料としての塗料ミスト
P2…塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気流路とを備えた塗装システムに用いられ、前記排気流路の入口または途中に設けられ、前記排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集フィルタであって、
各々独立して形成され、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、
メッシュ状部材を用いて構成され、前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収容する通気性収容体と
を備えたことを特徴とする余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【請求項2】
前記複数の塗料捕集固体は略球体であることを特徴とする請求項1に記載の余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【請求項3】
前記排気流路において前記排気体が流れる上流側から下流側に向けて前記通気性収容体が多段状に配置され、各段の通気性収容体は、それぞれ個別に前記排気流路に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の余剰霧化塗料捕集フィルタ。
【請求項4】
外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、
前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気室と、
前記排気室の側面に接続され、その側面から前記排気体を排出する排気ダクトと、
各々独立して形成され前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収容する通気性収容体とを有し、前記排気室内にて横置きで配置される面状の余剰霧化塗料捕集フィルタと
を備えた塗装システムにおいて、
前記排気室には、前記排気ダクトが接続される第1の側面からその反対側の第2の側面に向けて徐々に低くなるよう傾斜させた底面が設けられ、
前記余剰霧化塗料捕集フィルタは、前記第2の側面側ほど低くなるよう傾斜させた状態で配置され、
前記排気室の底面における第2の側面側の位置に塗料廃液機構が設けられることを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
外部から取り入れた空気が流通されるとともに、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を噴射して被塗物の塗装を行う塗装室と、
前記塗装室の下流側に設けられ、前記空気と被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を排出するための排気室と、
前記排気室の側面に接続され、その側面から前記排気体を排出する排気ダクトと、
各々独立して形成され前記排気体に含まれる余剰霧化塗料がその表面に付着可能な複数の塗料捕集固体と、メッシュ状部材を用いて構成され前記複数の塗料捕集固体を集合させて移動不能に収納する通気性収容体とを有し、前記排気ダクト内にて縦置きで配置される面状の余剰霧化塗料捕集フィルタと
を備えた塗装システムにおいて、
前記排気ダクトには、上流側ほど低くなるよう傾斜部が設けられ、
前記余剰霧化塗料捕集フィルタは、前記傾斜部に装着されることで上流側に傾斜した状態で配置され、
前記排気ダクトにおける傾斜部の上流側の位置に塗料廃液機構が設けられることを特徴とする塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−125647(P2009−125647A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302245(P2007−302245)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】