説明

余掘り用カッター装置、掘削機、余掘り用カッターの磨耗検出方法

【課題】コピーカッターの磨耗を検出するために流体圧をコピーカッターの内部まで供給する流体圧駆動式のコピーカッター装置を、設置スペースの制約に対応可能に構成する。
【解決手段】シールド掘削機のカッターヘッド110に設けられるコピーカッター20と、カッターヘッド110に設けられ、コピーカッター20をカッターヘッド110の外周側に進退させる油圧シリンダー30とを備えるコピーカッター装置10であって、油圧シリンダー30は、シールド掘削機の油圧回路140により昇圧されることによって、コピーカッター20をカッターヘッド110の外周側へ移動させる第1の油圧室36と、油圧回路140により昇圧されることによって、コピーカッター20をカッターヘッド110の内周側へ移動させる第2の油圧室38と、第1の油圧室36からコピーカッター20の内部へ油を供給する油路31とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機に設けられる余掘り用カッター装置、該余掘り用カッター装置を備える掘削機、及び、余掘り用カッターの磨耗検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘削機として、急曲線施工時の余掘りや姿勢制御などに使用するコピーカッターを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコピーカッターは、カッタースポーク内に設けられており、コピーカッター内に設けられた油圧シリンダーの伸縮によりカッターヘッドの外周側に進退される。
【0003】
また、シールド掘削機のカッターヘッドに設けられたカッタービットの磨耗を検出する流体圧式の磨耗検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この磨耗検出装置では、カッタービットに、所定圧力の流体を封入した密閉容器が内蔵されており、密閉容器の内圧が圧力計で計測されるところ、カッタービットの磨耗が密閉容器の位置まで進行して密閉容器の一部が破損すると、密閉容器から流体が流出して密閉容器の内圧が低下するので、その低下度に基づいてカッタービットの磨耗を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−355386号公報
【特許文献2】特開平10−221005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、流体圧式の磨耗検出装置を用いてコピーカッターの磨耗を検出する場合、コピーカッター進退用の油圧シリンダ等の流体圧駆動装置とは別に、コピーカッターの内部まで流体圧を供給するための流路を設けなければならない。例えば、図8に示すように、油圧シリンダー30の可動部(シリンダー部)34の筒部に、コピーカッター20の磨耗検出のための油路2を形成したり、該油路2を油圧シリンダー30の伸縮に合わせて伸縮可能とするべく、油路2の途中に油圧シリンダー30の収縮時に弛む可撓性のホース3を設けたりすることが考えられる。しかしながら、小断面シールド掘削機では、カッタースポークが大断面シールド掘削機のものと比して細くなっており、磨耗検出装置用の流路を設けることに対するスペースの制約が大きく、可動部34の筒部に油路2を形成したり、また、油圧シリンダー30の収縮時に可撓性のホース3を収容するスペースを確保したりすることは難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コピーカッター等の余掘り用カッターの磨耗を検出するために流体圧を余掘り用カッターの内部まで供給する流体圧駆動式の余掘り用カッター装置を、カッターヘッド内の設置スペースの制約に対応可能に構成することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、余掘り用カッター装置は、掘削機のカッターヘッドに設けられる余掘り用カッターと、前記カッターヘッドに設けられ、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側に進退させる流体圧駆動装置とを備える余掘り用カッター装置であって、前記流体圧駆動装置は、前記掘削機の流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側へ移動させる第1の流体圧室と、前記流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの内周側へ移動させる第2の流体圧室と、前記第1の流体圧室から前記余掘り用カッターの内部へ流体を供給する流体供給部と、を備える。
【0008】
上記余掘り用カッター装置において、上記流体圧駆動装置は、上記流体供給部に設けられ、上記余掘り用カッターの側から上記第1の流体圧室の側へ流れる流体を止める逆止弁を備えてもよい。
【0009】
上記余掘り用カッター装置において、上記流体圧駆動装置は、上記流体供給部に設けられ、上記流体供給部の流体圧が所定値未満の場合に閉状態、前記所定値以上の場合に開状態となるリリーフ弁を備えてもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、掘削機は、上記余掘り用カッター装置と、上記第1及び第2の流体圧室を昇圧または減圧させる流体回路と、上記第1の流体圧室の流体圧を計測する流体圧計と、を備える。
【0011】
また、上記課題を解決するために、掘削機は、上記リリーフ弁を備える上記余掘り用カッター装置と、上記第1及び第2の流体圧室を昇圧または減圧させる流体回路と、上記第1の流体圧室の流体圧を計測する流体圧計とを備え、上記所定値は、上記余掘り用カッターの上記カッターヘッドの外周側への移動時の上記第1の流体圧室の流体圧よりも高く設定されている。
【0012】
また、上記課題を解決するために、余掘り用カッターの磨耗検出方法は、掘削機のカッターヘッドに設けられる余掘り用カッターと、前記カッターヘッドに設けられ、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側に進退させる流体圧駆動装置とを備える余掘り用カッター装置における前記余掘り用カッターの磨耗を検出する方法であって、前記流体圧駆動装置は、前記掘削機の流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側へ移動させる第1の流体圧室と、前記流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの内周側へ移動させる第2の流体圧室とを備えており、前記第1の流体圧室から前記余掘り用カッターの内部へ流体を供給する流体供給部を、前記流体圧駆動装置に設け、前記第1の流体圧室の流体圧を計測し、計測した流体圧の低下度に基づいて前記余掘り用カッターの磨耗を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、余掘り用カッターの磨耗を検出するために流体圧を余掘り用カッターの内部まで供給する流体圧駆動式の余掘り用カッター装置を、カッターヘッド内の設置スペースの制約に対応可能に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る油圧駆動式のコピーカッター装置を備えるシールド掘削機を示す側断面図である。
【図2】シールド掘削機の前面を示す正面図である。
【図3】コピーカッター装置を示す側断面図である。
【図4】コピーカッターが磨耗した状態を示す側断面図である。
【図5】他の実施形態に係るコピーカッター装置を示す側断面図である。
【図6】他の実施形態に係るコピーカッター装置を示す側断面図である。
【図7】他の実施形態に係るコピーカッター装置を示す側断面図である。
【図8】比較例に係るコピーカッター装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る油圧駆動式のコピーカッター装置10を備えるシールド掘削機100を示す側断面図である。また、図2は、当該シールド掘削機100の前面を示す正面図である。これらの図に示すように、シールド掘削機100は、下水道等の小断面のシールドトンネルの施工に用いられると共に、当該シールドトンネルの急曲線施工に対応する泥土圧式のシールド掘削機であり、大断面のシールドトンネルの施工に用いられるシールド掘削機と比して小径のシールド掘削機である。このシールド掘削機100は、カッターヘッド110を掘進方向の先頭部に備える円筒状の前胴部120と、中折れジャッキ132を介して前胴部120の後部に連結された円筒状の後胴部130とを備えている。中折れジャッキ132は、伸縮することにより、前胴部120を後胴部130に対して屈曲させる。
【0016】
後胴部130には、エレクタ134とシールドジャッキ136とが設けられている。エレクタ134は、セグメント1をシールドジャッキ136の後方に設置する。また、シールドジャッキ136は、主推進ジャッキであり、後方のセグメント1を押すことでシールド掘削機100に推力を与える。
【0017】
前胴部120には、カッターヘッド110が設けられたチャンバ122とシールド機内とを仕切る隔壁124が設けられている。この隔壁124には、注入口125が形成され、また、カッターヘッド110の中心には、注入口126が形成され、前胴部130の外殻には、注入口127が形成されている。隔壁124に形成された注入口125からは、加泥材がチャンバ122に注入され、カッターヘッド110の中心に形成された注入口126からは、加泥材がカッターヘッド110の掘削領域に注入され、前胴部130の外殻に形成された注入口127からは、加泥材が前胴部120の外殻の外側の余堀部に注入される。
【0018】
また、前胴部120のシールド機内から後胴部130の後方までに亘ってスクリューコンベア138が延びている。このスクリューコンベア138の先端は、隔壁124の開口部に取付けられており、スクリューコンベア138のスクリューの先端は、チャンバ122内に挿入されている。スクリューコンベア138は、スクリューを回転させてチャンバ122からシールド機体後方へ泥土を搬送する。
【0019】
カッターヘッド110は、十字状に配された4本のカッタースポーク112と、カッタースポーク112の前面に設けられた複数のカッタービット114と、一対のカッタースポーク112に内蔵された一対のコピーカッター装置10とを備えている。カッタースポーク112は、円筒状に形成されており、大断面シールド掘削機のカッタースポーク112と比して短く、また、細く設計されている。また、一対のコピーカッター装置10のうちの一方は、他方のコピーカッター装置10の予備として設置されている。
【0020】
図3は、コピーカッター装置10を拡大して示す側断面図である。この図に示すように、コピーカッター装置10は、コピーカッター20と、コピーカッター20が頭部に固定された油圧シリンダー30とを備えている。コピーカッター20は、円錐台形状の金属製のカッタービットである。また、油圧シリンダー30は、カッタースポーク112に固定された固定部32と、コピーカッター20が頭部に固定された可動部34とを備えている。可動部34は、円筒状のシリンダーであり、底部(頭部の反対側の部分)には、円状の開口34Aが形成されている。
【0021】
固定部32は、可動部34の開口34Aと相対的に摺動可能に嵌合する円柱状の軸部32Aと、軸部32Aの一端に設けられ、前記可動部34の内周壁と相対的に摺動可能に嵌合する円柱状のピストン部32Bと、軸部32Aの他端に設けられ、カッタースポーク112に取付けられた取付部32Cとを備えている。軸部32Aと開口34Aとの間、及びピストン部32Bと可動部34の内周壁との間は、パッキン等によりシールされている。また、ピストン部32Bの軸長は、可動部34の内部空間の軸長よりも短く、可動部34の内部は、ピストン部32Bより2室に仕切られており、可動部34の内部には、コピーカッター20側の第1の油圧室36と、開口34A側の第2の油圧室38とが形成されている。
【0022】
また、固定部32には、固定部32をその軸方向に貫通する第1の油路40と、取付部32C及び軸部32Aをその軸方向に貫通しピストン部32Bにおいて外周側に屈曲する第2の油路42とを備えている。第1の油路40及び第2の油路42には、シールド掘削機100に設置された油圧回路140が接続されている。なお、シールド掘削機100には、一対のコピーカッター装置10が設置されているところ、油圧回路140は、各コピーカッター装置10に対応して設けられている。
【0023】
各油圧回路140は、第1の油路40に接続された伸長ポート142と、第2の油路42に接続された収縮ポート144と、伸長ポート142と収縮ポート144とにそれぞれ設けられた開閉弁146及び油圧計147と、伸長ポート142と収縮ポート144とに接続された油圧ポンプ148等を備えている。
【0024】
油圧回路140は、伸長ポート142から第1の油路40を通して第1の油圧室36に油圧を供給することにより第1の油圧室36を昇圧させ、収縮ポート144から第2の油路42を通して第2の油圧室38に油圧を供給することにより第2の油圧室38を昇圧させる。ここで、油圧回路140により第1の油圧室36が昇圧され、第2の油圧室38が減圧されることにより、第1の油圧室36が第2の油圧室38よりも高圧になり、可動部34がカッターヘッド110の外径方向へ移動する。これにより、油圧シリンダー30が伸長する。一方、油圧回路140により第2の油圧室38が昇圧され、第1の油圧室36が減圧されることにより、第2の油圧室38が第1の油圧室36よりも高圧になり、可動部34がカッターヘッド110の内径方向へ移動する。これにより、油圧シリンダー30が収縮する。
【0025】
ここで、油圧シリンダー30が収縮した状態では、コピーカッター20がカッタースポーク112内に収容されることにより、コピーカッター20による余堀りが行われない。一方、油圧シリンダー30が伸長した状態では、コピーカッター20がカッタースポーク112から外周側へ突出して余掘りを行う。そして、シールド掘削機100で急曲線施工を実施する際には、急曲線の内周側となる部分をコピーカッター20で余掘りするべく、コピーカッター20が急曲線の内周側となる部分を通過する際に油圧シリンダー30を伸長させ、コピーカッター20が急曲線の外周側となる部分を通過する際に油圧シリンダー30を収縮させる。
【0026】
また、伸長ポート142に設けられた油圧計147は、第1の油圧室36とそれに繋がる油路の油圧(即ち、第1の油圧室36の油圧)を計測する。また、収縮ポート144に設けられた油圧計147は、第2の油圧室38とそれに繋がる油路の油圧(即ち、第2の油圧室38の油圧)を計測する。
【0027】
また、伸長ポート142に設けられた開閉弁146は、伸長ポート142を開閉し、収縮ポート144に設けられた開閉弁146は、収縮ポート144を開閉する。開閉弁146により伸長ポート142が閉止されると第1の油圧室36の油圧が一定に維持され、開閉弁146により収縮ポート144が閉止されると第2の油圧室38の油圧が一定に維持される。
【0028】
ここで、可動部34及びコピーカッター20には、第1の油圧室36とコピーカッター20との間の部分(可動部34の頭部)を貫通してコピーカッター20の内部まで延びる油路31が形成されている。この油路31は、第1の油圧室36からコピーカッター20の内部まで直線状に延びており、これにより、第1の油路40は、コピーカッター20の内部まで延長されている。また、油路31のコピーカッター20内の部分の長さL2は、コピーカッター20の刃先長さL1よりも短く設定されている。なお、本実施形態では、コピーカッター20の刃先長さL1が9mmであるのに対し、油路31のコピーカッター20内の部分の長さL2は4mmである。
【0029】
シールド掘削機100の制御部102には、油圧計147から計測信号が入力され、制御部102は、入力された計測信号に基づいて開閉弁146の開閉を制御する。詳細には、油圧ポンプ148により第1の油圧室36に油圧を供給している間に、設定値P1より低い所定の閾値P0が、伸長ポート142に設けられた油圧計147により計測された場合に、制御部102は、伸長ポート142に設けられた開閉弁146を閉状態に切り換え、また、シールド掘削機100の管理室等に設置されたモニタや表示灯等の報知装置104に、警告信号を送信し、警告情報を表示させたり、警告音を発生させたりする。
【0030】
図4は、コピーカッター20が磨耗した状態を示す側断面図である。この図に示すように、コピーカッター20が長期間の使用により磨耗し、コピーカッター20の磨耗量が突出高さの約半分までになると、油路31が、コピーカッター20を貫通した状態になる。このような状態になると、第1の油圧室36内は、油圧シリンダー30の外部に開放されることにより、上記所定の閾値P0未満にまで減圧される。そして、伸長ポート142に設けられた油圧計147が所定の閾値P0未満の圧力を計測し、制御部102が、報知装置104に、コピーカッター20の磨耗を警告する警告情報を表示させたり、警告音を発生させたりする。これにより、シールド掘削機100の管理者等は、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したことを認知し、予備のコピーカッター装置10を使用するように切り替えることができる。
【0031】
また、制御部102は、伸長ポート142に設けられた油圧計147が所定の閾値P0未満の圧力を計測すると、伸長ポート142に設けられた開閉弁146により伸長ポート142を閉止状態にすると共に、油圧ポンプ148により第2の油圧室38を昇圧させる。これにより、第1の油圧室36への油の供給を止めることができると共に、油圧シリンダー30を収縮させてコピーカッター20をカッタースポーク112の内部に引き込むことができる。
【0032】
さらには、カッタースポーク112の内部には、配管をコピーカッター装置10と共に設置するだけのスペースは存在しないところ、油圧シリンダー30の外部の配管を不要にできる。
【0033】
従って、コピーカッター20の磨耗を検出するために油圧をコピーカッター20の内部まで供給した、油圧駆動式のコピーカッター装置10を、カッタースポーク112内の設置スペースに制約がある小断面シールドトンネルの施工用のシールド掘削機100に設置することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係るコピーカッター装置10では、油圧シリンダー30のシリンダーを可動部34、ピストンを固定部32とし、油圧シリンダー30が伸長する際に昇圧される第1の油圧室36をピストンよりもコピーカッター20側に配置した。これにより、第1の油圧室36とコピーカッター20との間には油圧シリンダー30のシリンダーの頭部が介在するのみとなり、該頭部とコピーカッター20とに跨るように油路31を形成するだけという単純な構成で、第1の油路40をコピーカッター20の内部まで延長することができる。
【0035】
図5は、他の実施形態に係るコピーカッター装置200を示す側断面図である。この図に示すように、コピーカッター装置200は、可動部34の頭部に埋設された直動型のリリーフ弁202を備える。このリリーフ弁202は、油路31の油圧が所定値P2(例えば、本実施形態では、26MPa)未満の場合には油路31を閉塞し、油路31の油圧が所定値P2以上の場合には油路31を開放する。
【0036】
ここで、所定値P2は、上述した第1の油圧室36に油圧を供給している間の設定値P1(例えば、本実施形態では、21MPa)よりも高く設定されている。また、制御部102において、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したか否かを判定するための閾値P3(例えば、本実施形態では、30MPa)は、設定値P1、所定値P2より高く設定されている。さらに、コピーカッター20の磨耗検出を実施する際の第1の油圧室36の油圧は、所定の上限値P4(例えば、本実施形態では、34MPa)より低く、上記閾値P3よりも高く設定されている。
【0037】
以上のような構成のコピーカッター装置200では、油圧ポンプ148により第1の油圧室36が設定値P1に昇圧されると、油圧シリンダー30が伸長して、コピーカッター20が、通常の突出動作を実施する。この際、油路31は、リリーフ弁202により閉塞されており、コピーカッター20内への油圧の供給は実施されない。
【0038】
そして、油圧ポンプ148により第1の油圧室36が閾値P3に昇圧される途中で、リリーフ弁202が油路31を開放してコピーカッター20へ油圧を供給させる。この状態で、制御部102において、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したか否かが判定され、伸長ポート142に設けられた油圧計147の計測値Psが、Ps≧P3である場合には、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達していないと判定される。一方、上記計測値Psが、Ps<P3である場合には、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したと判定され、制御装置102は、報知装置104にコピーカッター20の磨耗を警告する信号を送信し、警告情報を表示させたり、警告音を発生させたりする。
【0039】
ここで、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達し、油路31がコピーカッター20の外部に開放されると、第1の油圧室36の油圧がP3、P2と低下するところ、第1の油圧室36の油圧がP2まで低下した時点で、リリーフ弁202が油路31を閉塞する。即ち、リリーフ弁202が、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達するまでの間は、コピーカッター20への油の供給を許容し、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達した後は、コピーカッター20から第1の油圧室36への流体の逆流を阻止する逆止弁として機能する。従って、地下水や泥土が、油路31を通して第1の油圧室36へ侵入することを阻止でき、油圧シリンダー30を保護できる。
【0040】
図6は、他の実施形態に係るコピーカッター装置300を示す側断面図である。この図に示すように、コピーカッター装置300は、可動部34の頭部に埋設された逆止弁302を備える。この逆止弁302は、油路31に設けられており、第1の油圧室36側からコピーカッター20側への油の流れを許容し、コピーカッター20側から第1の油圧室36側への油の流れを止める。従って、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達して油路31が外部に開放された後に、地下水や泥土が、油路31を通して第1の油圧室36へ侵入することを阻止でき、油圧シリンダー30を保護できる。
【0041】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、コピーカッター装置10、200を備えるシールド掘削機100を例に挙げて本発明を説明したが、コピーカッター装置を備えるトンネルボーリングマシーン等の他の掘削機にも本発明を適用できる。
【0042】
また、上述の実施形態では、油圧シリンダー30を備えるコピーカッター装置10を例に挙げて本発明を説明したが、空気圧シリンダー等の他の流体圧式駆動装置を備えるコピーカッター装置にも本発明を適用できる。また、上述の実施形態では、油圧シリンダー30のピストンを固定部32とし、シリンダーを可動部34としたが、図7に示すように、ピストンを可動部340とし、シリンダーを固定部320と、逆にしてもよい。この場合、第2の油圧室38をピストン部32Bよりコピーカッター20側に配し、第1の油圧室36をその反対側に配すればよい。また、可動部340を、ピストン部340Aと、ピストン部340Aからコピーカッター20側に延びて先端部にコピーカッター20が固定される軸部340Bとを備える構成にし、油路31を、ピストン部340Aと軸部340Bとを貫通するように形成すればよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、第1の油圧室36からコピーカッター20の内部へ油を供給する油供給部を油路31としたが、例えば、第1の油圧室36をシリンダーの頭部まで延長し、この第1の油圧室36と一体化される油供給部としての凹部(流体供給部に相当)を、コピーカッター20の内部に形成してもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、余掘り用カッターを備える余堀り用カッター装置としてコピーカッターを備えるコピーカッター装置を例に挙げて本発明を説明したが、オーバーカッターを備えるオーバーカッター装置等の他の余掘り用カッター装置にも本発明を適用できる。
【0045】
さらに、上述の実施形態では、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したか否かが、制御部102において判定され、制御部102により伸長ポート142の開閉弁146の閉止と、第2の油圧室38の昇圧とが行われるように構成した。しかし、コピーカッター20の磨耗量が予め設定された所定量に達したか否かの判断と、伸長ポート142の開閉弁146の閉止と、第2の油圧室38の昇圧とは、人為的に行われてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 セグメント、2 配管、3 可撓性のホース、10 コピーカッター装置(余掘り用カッター装置)、20 コピーカッター(余掘り用カッター)、30 油圧シリンダー(流体圧駆動装置)、31 油路(流体供給部)、32 固定部、32A 軸部、32B ピストン部、32C 取付部、34 可動部、34A 開口、36 第1の油圧室(第1の流体圧室)、38 第2の油圧室(第2の流体圧室)、40 第1の油路、42 第2の油路、100 シールド掘削機(掘削機)、110 カッターヘッド、112 カッタースポーク、114 カッタービット、116 カッタースポーク、120 前胴部、122 チャンバ、124 隔壁、125、126、127 注入口、130 後胴部、132 中折れジャッキ、134 エレクタ、136 シールドジャッキ、138 スクリューコンベア、140 油圧回路(流体圧回路)、142 伸長ポート、144 収縮ポート、146 開閉弁、147 油圧計(流体圧計)、148 油圧ポンプ、200 コピーカッター装置(余掘り用カッター装置)、202 リリーフ弁、300 コピーカッター装置(余掘り用カッター装置)、302 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機のカッターヘッドに設けられる余掘り用カッターと、前記カッターヘッドに設けられ、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側に進退させる流体圧駆動装置とを備える余掘り用カッター装置であって、
前記流体圧駆動装置は、
前記掘削機の流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側へ移動させる第1の流体圧室と、
前記流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの内周側へ移動させる第2の流体圧室と、
前記第1の流体圧室から前記余掘り用カッターの内部へ流体を供給する流体供給部と、
を備える余掘り用カッター装置。
【請求項2】
前記流体圧駆動装置は、前記流体供給部に設けられ、前記余掘り用カッターの側から前記第1の流体圧室の側へ流れる流体を止める逆止弁を備える請求項1に記載の余掘り用カッター装置。
【請求項3】
前記流体圧駆動装置は、前記流体供給部に設けられ、前記流体供給部の流体圧が所定値未満の場合に閉状態、前記所定値以上の場合に開状態となるリリーフ弁を備える請求項1に記載の余掘り用カッター装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の余掘り用カッター装置と、
前記第1及び第2の流体圧室を昇圧または減圧させる流体回路と、
前記第1の流体圧室の流体圧を計測する流体圧計と、
を備える掘削機。
【請求項5】
請求項3に記載の余掘り用カッター装置と、
前記第1及び第2の流体圧室を昇圧または減圧させる流体回路と、
前記第1の流体圧室の流体圧を計測する流体圧計とを備え、
前記所定値は、前記余掘り用カッターの前記カッターヘッドの外周側への移動時の前記第1の流体圧室の流体圧よりも高く設定されている掘削機。
【請求項6】
掘削機のカッターヘッドに設けられる余掘り用カッターと、前記カッターヘッドに設けられ、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側に進退させる流体圧駆動装置とを備える余掘り用カッター装置における前記余掘り用カッターの磨耗を検出する方法であって、
前記流体圧駆動装置は、
前記掘削機の流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの外周側へ移動させる第1の流体圧室と、
前記流体圧回路により昇圧されることによって、前記余掘り用カッターを前記カッターヘッドの内周側へ移動させる第2の流体圧室とを備えており、
前記第1の流体圧室から前記余掘り用カッターの内部へ流体を供給する流体供給部を、前記流体圧駆動装置に設け、前記第1の流体圧室の流体圧を計測し、計測した流体圧の低下度に基づいて前記余掘り用カッターの磨耗を検出する余掘り用カッターの磨耗検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207412(P2012−207412A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72800(P2011−72800)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】