説明

作動力調整機構および操作力伝達機構

【課題】操作者に作動力の調整具合を認識させると共に、強い操作力が加えられても破損を防止することができる作動力調整機構および操作力伝達機構を提供すること。
【解決手段】作動力調整用板ばね25と、作動力調整用板ばね25に操作力を伝達して制動力を調整する操作力伝達機構とを備え、操作力伝達機構は、操作力を受けて回転するウォーム51と、ウォーム51に連結したウォームホイール52と、ウォームホイール52に摩擦接触し、ウォームホイール52の回転を受けて回転する連結部材53と、連結部材53に一体回転可能に連結したカム27とを有し、カム27を所定の回転範囲内に回転規制するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動力調整機構に関し、特に、ミキサ等の音響機器の音量調整や、劇場等での光量調整に使用されるフェーダに好適な作動力調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミキサ等の音響機器に搭載されるフェーダにおいて、操作者の操作機能特性を微妙に調整することができる作動力調整機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この作動力調整機構においては、フェーダの摘みに連動するスライド部材と、このスライド部材を軸方向に摺動案内する案内軸と、上記スライド部材と案内軸との間に介在するバネ手段および緩衝手段とを備え、バネ手段と緩衝手段とで案内軸を挟み込み、上記バネ手段の挟み込む挟持力の大きさを調整ネジの操作で外部から任意に調整可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−8907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の作動力調整機構においては、調整ネジの締め具合とフェーダの作動力との対応関係が不明確であるため、操作者に作動力の調整具合を認識させることが困難となっていた。また、調整ネジに強い操作力が加えられて、調整ネジの許容回転量の限界を超えて締められると、ネジ山およびネジ孔を破損させてしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、操作者に作動力の調整具合を認識させると共に、強い操作力が加えられても破損を防止することができる作動力調整機構および操作力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作動力調整機構は、作動体に制動力を付与する制動部と、前記制動部に操作力を伝達して制動力を調整する操作力伝達機構とを備え、前記操作力伝達機構は、操作力を受けて回転する第1の回転部材と、前記第1の回転部材に摩擦接触し、前記第1の回転部材の回転を受けて回転して前記制動部に操作力を出力する第2の回転部材とを有し、前記第2の回転部材は、所定の回転範囲内に回転規制されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の操作力伝達機構は、操作力を受けて回転する第1の回転部材と、前記第1の回転部材に摩擦接触し、前記第1の回転部材の回転を受けて回転し、作動体に制動力を付与する制動部に対して操作力を出力する第2の回転部材とを有し、前記第2の回転部材は、所定の回転範囲内に回転規制されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第2の回転部材が所定の回転範囲に回転規制されているため、例えば、回転範囲の上限を制動部の最大制動力に、回転範囲の下限を制動部の最小制動力に対応づけるように第2の回転部材を回転規制することにより、操作力伝達機構に付与する操作量と作動体の作動力との対応関係を明確にすることができる。これにより、操作者に作動体の作動力の調整具合を認識させることができる。また、第2の回転部材が所定の回転範囲内にある場合には、第1の回転部材に第2の回転部材が連れ回りすることで操作力が伝達され、第2の回転部材が回転規制されている場合には、第1の回転部材が空転することで操作力の伝達が停止される。したがって、操作力伝達機構に強い操作力が入力されても、操作力伝達機構が破損することが防止される。
【0009】
また本発明は、上記作動力調整機構において、前記操作力伝達機構は、摩擦部材を有し、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とが前記摩擦材を介して摩擦接触することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1の回転部材と第2の回転部材とを簡易な構成で摩擦接触させることができる。
【0011】
また本発明は、上記作動力調整機構において、前記操作力伝達機構は、工具により前記第1の回転部材の回転軸に対して直交する軸回りに回転されるウォームを有し、前記第1の回転部材は、前記ウォームに係合して回転するウォームホイールであることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、工具により第1の回転部材の回転軸に対して直交する軸回りにウォームを回転させることで、作動体の作動力を調整することができる。
【0013】
また本発明は、上記作動力調整機構において、前記第2の回転部材は、前記第1の回転部材に摩擦接触して前記第1の回転部材から操作力が入力される入力部材と前記所定の回転範囲内に回転規制された状態で前記制動部に操作力を出力する出力部材とに回転軸方向に分離可能に構成され、前記入力部材には前記出力部材に係合する係合部が形成され、前記出力部材には前記入力部材と一体回転可能に前記係合部に係合する被係合部が形成され、前記係合部が前記工具と係合可能なことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2の回転部材の入力部材と出力部材と分離させることにより工具による操作方向を変更することが可能となる。すなわち、第2の回転部材の入力部材と出力部材とを係合させた場合には、工具により第1の回転部材の回転軸に対して直交する軸回りにウォームを回転させることで、作動体の作動力を調整することができる。一方、第2の回転部材の入力部材と出力部材とを分離させた場合には、工具により出力部材を軸回りに回転させることで、作動体の作動力を調整することができる。
【0015】
また本発明は、上記作動力調整機構において、前記制動部は板バネを含み、前記第2の回転部材には板バネの押圧力を調整するカムが設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2の回転部材に形成されたカムの回転により、板バネによる作動体に対する制動力を調整できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作者に作動力の調整具合を認識させると共に、強い操作力が加えられても破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、フェーダの外観斜視図である。
【図2】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、作動力調整機構の外観斜視図である。
【図3】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、作動力調整機構からスライド部材を分離した斜視図である。
【図4】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、操作力伝達機構の分解斜視図である。
【図5】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、操作力の伝達構成の一例を模式的に説明した遷移図である。
【図6】本発明に係る作動力調整機構の実施の形態を示す図であり、作動力調整機構による作動力調整を模式的に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本件特許出願人は、この技術を開発する前に工具によりカムを回転させて板バネの制動力を調整する作動力調整機構において、カムの回転を所定の回転範囲内に回転規制してカムの操作量と板バネの制動力との対応関係を明確にする構成について考案している。本発明では、この作動力調整機構に対して強い操作力が加わったときの耐久性の観点から改良したものである。すなわち、本発明は回転規制されたものにダイレクトに操作力を伝達する構造に対し、入力側と出力側との間に摩擦接触により接続する部材を介在させて、回転規制による反力を吸収させるようにしたものである。この改良により、カムが回転規制されている状態で、強い操作力が加わってもカムの破損を防止することが可能となる。
【0020】
なお、以下においては、本実施の形態に係る作動力調整機構を、ミキサ等の音響機器の音量調整や、劇場等での光量調整に使用されるフェーダに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係る作動力調整機構の適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構が適用されるフェーダについて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構が適用されるフェーダの外観斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係るフェーダ1は、前面が開口されたケース2と、ケース2の開口に装着されて収容部を形成するカバー3とを備え、ケース2およびカバー3が組み合わされて直方体形状の箱状体をなしている。また、フェーダ1には、ケース2に隣接させて一側面が開口された小型ケース4が開口部分をケース2に向けて取り付けられており、小型ケース4内には後述する作動力調整機構6の一部を構成する操作方向変換ユニット7の構成部品が収容されている。
【0023】
ケース2の上壁には長手方向に延在するように切欠部2aが形成され、カバー3に組み合わされてスリットが形成される。ケース2の長手方向に位置する両側壁には、それぞれ図示上下方向に離間して2つの切欠部2b、2cが形成され、上側に位置する切欠部2bに第1のシャフト11が水平に横架され、下側に位置する切欠部2cに第2のシャフト12が水平に横架されている。第1のシャフト11および第2のシャフト12にはスライド部材13が支持されており、スライド部材13は第1のシャフト11および第2のシャフト12に沿って収容部内をスライド可能に収容されている。
【0024】
スライド部材13には上方に突出するようにレバー部材14が設けられており、このレバー部材14はケース2およびカバー3により形成されるスリットを介して外部に露出される。レバー部材14の露出部分には図示しない操作摘みが取り付けられ、この操作摘みによりスライド部材13がスライド方向に操作される。また、スライド部材13にはフェーダ1の作動力を調整するための作動力調整機構6の一部が組み込まれている。
【0025】
また、スライド部材13には略中央部分に磁気抵抗効果素子17(GMR素子)を備える磁気検出部材15が設けられ、ケース2およびカバー3のスライド部材13のスライド方向に沿う側壁には、それぞれ内面に薄板状の磁石18(カバー3に取り付けられた磁石は不図示)が取り付けられている。また、ケース2に取り付けられた磁石18およびカバー3に取り付けられた磁石は、対向する面がそれぞれ異極に着磁され、スライド方向に沿ってそれぞれ逆方向に傾斜した外形形状を有している。したがって、収納部内にはスライド部材13の位置によって、磁気抵抗効果素子17に作用する磁場方向が回転変位するように磁界が形成されている。
【0026】
磁気抵抗効果素子17は、作用する磁場方向に応じて電気抵抗値が変化するように構成されている。したがって、磁気抵抗効果素子17の電気抵抗値に基づく出力信号により、スライド部材13の位置を検出することが可能となる。また、磁気抵抗効果素子17は、FPC21(フレキシブルプリント基板)を介して基板22に接続されており、基板22に出力信号が出力される。
【0027】
図2から図4を参照して、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構の外観斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構からスライド部材を分離した斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る操作力伝達機構の分解斜視図である。
【0028】
図2および図3に示すように、作動力調整機構6は、スライド部材13および第1のシャフト11と、スライド部材13のカバー3側の側面に取り付けられる作動力調整用板ばね25と、作動力調整用板ばね25に押圧されて第1のシャフト11に押し付けられる制動板26と、作動力調整用板ばね25の制動板26に対する押圧力を調整するカム27とを備えている。また、カム27には、小型ケース4に収容された操作方向変換ユニット7の構成部品が連結し、操作力が伝達される。
【0029】
スライド部材13の上部には第1のシャフト11が挿通される挿通路31がスライド方向に延在して形成されており、スライド方向の両端部分を除く中間部分のカバー3側が開口されている。スライド部材13の挿通路31の下方にはカム27が収容されるカム収容部32が形成されており、カバー3側を開口した凹部を構成している。また、カム収容部32には、カム27をカバー側から支持する押え部33が形成されており、この押え部33によりカム27の脱落が防止される。
【0030】
カム収容部32の下方には作動力調整用板ばね25が取り付けられる板ばね取付部34が形成されており、支持面34aからカバー3側に突出した凸部34b、34cと位置決めピン34dを有して構成されている。作動力調整用板ばね25は、凸部34b、34cにより保持されると共に、位置決めピン34dにより位置決めされる。
【0031】
制動板26は、挿通路31の中間部分の開口を覆うように配設されており、第1のシャフト11の外周面に当接している。制動板26の第1のシャフト11との当接面は、第1のシャフト11の外周面と相補形状となるように形成されている。また、制動板26のカバー3側の面には作動力調整用板ばね25からの押圧力を受ける周面部26aが僅かに突出して形成されている。
【0032】
カム27は、カム収容部32に収容されており、円柱状に形成された回転体41と、回転体41の一端面に連なり押え部33に支持される略円盤状の支持部42と、支持部42の端面から突出し、回転体41の回転軸に対して偏芯した位置に設けられた駆動ピン43とから構成されている(図4参照)。また、回転体41には回転軸上において他端面側から内部に向かって六角穴41aが形成されており、この六角穴41aには操作方向変換ユニット7の連結部材53の六角部58が差し込まれる。
【0033】
支持部42は、外周面から径方向外側に突出して凸部42aが形成されており、この凸部42aと上記した押え部33とによりカム27が所定の回転範囲に回転規制される。すなわち、押え部33には半円弧状の内周面33aと、内周面33aに上下方向に連なる一対の規制面33b、33cとが形成されており(図3参照)、支持部42の外周面が押え部33の内周面33aに摺接すると共に、凸部42aが一対の規制面33b、33cに所定の回転位置で当接する。このように、カム27は、支持部42の凸部42aおよび押え部33の一対の規制面33b、33cにより180度の回転範囲に回転規制される。駆動ピン43は、回転体41の回転軸に対して偏芯した位置に設けられており、回転体41の回転に応じて半円弧状に周回移動する。
【0034】
作動力調整用板ばね25は、板ばね取付部34に固定される平面部45と、平面部45からカム27に向かって延出してカム27の回転体41と接触する接触片46と、平面部45から制動板26に向かって延出して制動板26の周面部26aを押圧する押圧片47とを有している。また、平面部45には、切欠部45a、45bおよび位置決め孔45cが形成されている。作動力調整用板ばね25は、板ばね取付部34の位置決めピン34dを位置決め孔45cに挿通させて、切欠部45a、45bを凸部34b、34cに係合させることで板ばね取付部34に取り付けられる。
【0035】
また、作動力調整用板ばね25には、押圧片47に対して垂直に立ち上がりカム27の駆動ピン43に牽引される牽引片48が設けられている。牽引片48は、中央に矩形状の孔部48aが形成されており、この孔部48aに駆動ピン43が挿通されている。そして、カム27の回転体41を回転させて、回転体41の編芯位置に設けられた駆動ピン43が周回移動することより、駆動ピン43に牽引片48が牽引されて作動力調整用板ばね25が変形し、制動板26における制動力を変化させることが可能となる。
【0036】
図4に示すように、操作方向変換ユニット7は、六角レンチによる操作方向を変換するものであり、カム27の六角穴41aに連結される。すなわち、操作方向変換ユニット7をカム27に連結させない場合には、六角レンチをカム27の六角穴41aに差し込むことで、六角レンチを回転軸回りに操作して直にカム27に操作力を伝達することが可能となる。一方、六角レンチの代わりにカム27に操作方向変換ユニット7を連結させることで、六角レンチの操作方向を90度回転させることが可能となる。
【0037】
操作方向変換ユニット7は、六角穴51aが形成されたウォーム51と、ウォーム51の回転軸方向を90度変換するウォームホイール52と、ウォームホイール52に摩擦接触すると共に、カム27に連結する連結部材53とを備えている。ウォーム51は、小型ケース4に上下方向を回転軸として回転自在に軸支されており、小型ケース4の上壁に形成された開口部4aを介して上端部に形成された六角穴51aが露出している(図1参照)。ウォームホイール52は、連結部材53側から内側に向けて摺接穴52aが形成されており、この摺接穴52aにOリング54が収容されている。この摺接穴52aの径はOリング54の外径よりも小さく形成されており、Oリング54は弾性力により摺接穴52a内に保持される。
【0038】
連結部材53は、Oリング54を介して摺接穴52a内に挿入される円柱部56と、円柱部56に回転軸方向に連なりウォームホイール52の連結部材53側の端面に当接するフランジ部57と、フランジ部57に回転軸方向に連なりカム27の六角穴41aに係合する六角部58とを有している。円柱部56の外径はOリング54の内径よりも大きく形成されており、円柱部56はOリング54の弾性力によりOリング54に保持される。よって、連結部材53は、Oリング54の摩擦力によりウォームホイール52と一体回転するように構成されている。六角部58は、六角レンチと同様に六角形の外周面が形成されており、先端部分が先細状に傾斜してカム27の六角穴41aに差し込み易く形成されている。
【0039】
このように、ウォームホイール52は、Oリング54の摩擦力により連結部材53と一体回転すると共に、連結部材53がカム27に連結されているため、ウォーム51から出力される操作力はウォームホイール52、Oリング54、連結部材53を介してカム27に伝達される。なお、本実施の形態においては、請求項に記載の操作力伝達機構がウォーム51、ウォームホイール52、Oリング54、連結部材53、およびカム27により構成されている。
【0040】
次に、図5を参照して、操作力の伝達構成の一例について説明する。図5は、操作力の伝達構成の一例を模式的に説明した遷移図である。なお、図5(a)、(c)、(e)、(g)は、操作力の伝達構成を模式的に説明した図であり、図5(b)、(d)、(f)、(h)は、カムの回転規制構成を模式的に説明した図である。
【0041】
図5(a)は、ウォーム51に対して操作力が作用していない初期状態を示している。このとき、図5(b)に示すように、カム27の凸部42aが最下位置にあり、下側に位置する規制面33cによりカム27の時計回りの回転が規制されている。この初期状態から図5(c)に示すように、ウォーム51が矢印方向に回転すると、ウォームホイール52が回転すると共に、ウォームホイール52に対して連結部材53およびカム27が連れ回りする。このとき、図5(d)に示すように、連結部材53の回転により、カム27に設けられた凸部42aも反時計回りに移動する。
【0042】
図5(e)に示すように、ウォーム51がさらに矢印方向に回転すると、図5(f)に示すように、カム27の凸部42aが最上位置に移動し、上側に位置する規制面33bに当接する。このとき、カム27の凸部42aが上側の規制面33bに当接しているため、ウォームホイール52および連結部材53間にOリング54を介して摩擦力Fが発生する。この摩擦力Fにより、操作力の負荷が大きくなるため、操作者に対してカム27の許容回転範囲を認識させることが可能となる。
【0043】
この状態から図5(g)に示すように、さらにウォーム51を回転させると、図5(h)に示すように、カム27の回転が規制されているため、Oリング54を介したウォームホイール52および連結部材53間の摩擦力Fに抗してウォームホイール52が連結部材53に対して空転する。このように、ウォームホイール52および連結部材53間の摩擦力Fよりも強い操作力でウォーム51が操作された場合には、ウォーム51からカム27に対する操作力の伝達が停止される。なお、本実施の形態においては、一方向にウォーム51を回転させた場合の操作力の伝達構成について説明したが、逆方向にウォーム51を回転させた場合も同様である。
【0044】
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構による作動力調整について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る作動力調整機構による作動力調整を模式的に説明した図であり、(a)はカムの駆動ピンが作動力調整用板ばねに接近した接近位置にある状態を示し、(b)はカムの駆動ピンが接近位置から離間した離間位置にある状態を示している。なお、図6においては、制動板26による制動力を矢印の大きさで表わしている。
【0045】
図6(a)、(b)に示すように、駆動ピン43は作動力調整用板ばね25に接近した接近位置と接近位置から離間した離間位置との間で周回移動可能に構成されている。この場合、図5(b)に示すように、カム27の凸部42aが下側の規制面33cに当接している場合に、駆動ピン43が接近位置に移動し、図5(f)に示すように、カム27の凸部42aが上側の規制面33bに当接している場合に、駆動ピン43が離間位置に移動する。
【0046】
図6(a)に示すように、カム27の駆動ピン43が接近位置にある場合においては、駆動ピン43に牽引片48が牽引されない。したがって、牽引片48に連なる押圧片47により制動板26が押圧されないため、制動板26における制動力が最少となる。
【0047】
一方、図6(b)に示すように、カム27の駆動ピン43が離間位置にある場合においては、牽引片48が駆動ピン43に牽引されて同図に示す右方向に引き出される。これに伴い、牽引片48に連なる押圧片47も同図に示す右方向に引き出されて制動板26を押圧し、制動板26における制動力が最大となる。
【0048】
このように、カム27の駆動ピン43が接近位置にある場合に、カム27の凸部42aが下側の規制面33cに当接し、カム27の駆動ピン43が離間位置にある場合に、カム27の凸部42aが上側の規制面33bに当接しているため、操作者に対してフェーダ1の作動力を認識させることが可能となる。すなわち、カム27の凸部42aが上下の規制面33b、33cに当接した場合には、ウォームホイール52および連結部材53間の摩擦力により操作力の負荷が大きくなるため、操作者にフェーダ1の作動力を認識させることが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係る作動力調整機構6によれば、カム27の回転範囲の上限を制動板26の最大制動力に、回転範囲の下限を制動板26の最小制動力に対応づけられているため、ウォーム51に作用させる操作量とフェーダ1の作動力との対応関係を明確にすることができる。これにより、操作者に作動力の調整具合を認識させることが可能となる。また、カム27が所定の回転範囲内にある場合には、ウォームホイール52に連結部材53が連れ回りすることで操作力が伝達され、カム27が回転規制されている場合には、ウォームホイール52が空転することで操作力の伝達が停止される。したがって、ウォーム51に強い操作力が入力されても、カム27が破損することが防止される。
【0050】
なお、上記した実施の形態においては、操作方向変換ユニット7をカム27に連結させて、操作方向変換ユニット7を介してカム27を回転させる構成としたが、操作方向変換ユニット7を設けない構成としてもよい。この場合、カム27を六角穴が形成された入力部材と駆動ピンが形成された出力部材に分離可能に構成し、入力部材と出力部材とを摩擦接触させるようにする。このように構成し場合、入力部材に強い操作力が入力されても、カム27の破損を防止することが可能となる。
【0051】
また、上記した実施の形態においては、連結部材53とカム27とが分離可能に構成されているが、一体に形成する構成としてもよい。このように構成しても、ウォームホイール52と連結部材53との間が摩擦接触されているため、操作者にフェーダ1の作動力の調整具合を認識させると共に、強い操作力が加えられてもカム27の破損を防止することが可能となる。
【0052】
また、上記した実施の形態においては、Oリング54を介してウォームホイール52と連結部材53とを摩擦接触させる構成としたが、この構成に限定されるものではない。ウォームホイール52と連結部材53とを摩擦接触させる構成であればどのような構成でもよく、摩擦部材を介さずにウォームホイール52および連結部材53のそれぞれの摩擦力により連結してもよいし、摩擦部材としてOリング以外のものを使用してもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態においては、六角レンチによりウォーム51を操作する構成としたが、この構成に限定されるものではない。ウォーム51を操作する構成であれば、どのような構成でもよく、例えば、ウォーム51に六角穴51aの代わりに六角形状の外周面を形成し、モンキーレンチによりウォーム51を操作するようにしてもよい。
【0054】
また、上記した実施の形態においては、作動力調整用板ばね25に牽引片48を形成してフェーダ1の作動力を調整する構成としたが、この構成に限定されるものではない。フェーダ1の作動力を調整する構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0055】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、操作者に作動力の調整具合を認識させると共に、強い操作力が加えられても破損を防止することができるという効果を有し、特にミキサ等の音響機器の音量調整や、劇場等での光量調整に使用されるフェーダに好適な作動力調整機構および操作力伝達機構に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 フェーダ
6 作動力調整機構
7 操作方向変換ユニット
13 スライド部材(作動体)
25 作動力調整用板ばね(板バネ、制動部)
26 制動板(制動部)
26a 周面部
27 カム(操作力伝達機構、第2の回転部材、出力部材)
33 押え部
33a 内周面
33b、33c 規制面
41a 六角穴(被係合部)
42a 凸部
43 駆動ピン
48 牽引片
48a 孔部
51 ウォーム(操作力伝達機構)
51a 六角穴
52 ウォームホイール(操作力伝達機構、第1の回転部材)
52a 摺接穴
53 連結部材(操作力伝達機構、第2の回転部材、入力部材)
54 Oリング(操作力伝達機構、摩擦部材)
56 円柱部
58 六角部(係合部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動体に制動力を付与する制動部と、
前記制動部に操作力を伝達して制動力を調整する操作力伝達機構とを備え、
前記操作力伝達機構は、操作力を受けて回転する第1の回転部材と、前記第1の回転部材に摩擦接触し、前記第1の回転部材の回転を受けて回転して前記制動部に操作力を出力する第2の回転部材とを有し、
前記第2の回転部材は、所定の回転範囲内に回転規制されていることを特徴とする作動力調整機構。
【請求項2】
前記操作力伝達機構は、摩擦部材を有し、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とが前記摩擦材を介して摩擦接触することを特徴とする請求項1に記載の作動力調整機構。
【請求項3】
前記操作力伝達機構は、工具により前記第1の回転部材の回転軸に対して直交する軸回りに回転されるウォームを有し、
前記第1の回転部材は、前記ウォームに係合して回転するウォームホイールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作動力調整機構。
【請求項4】
前記第2の回転部材は、前記第1の回転部材に摩擦接触して前記第1の回転部材から操作力が入力される入力部材と前記所定の回転範囲内に回転規制された状態で前記制動部に操作力を出力する出力部材とに回転軸方向に分離可能に構成され、
前記入力部材には前記出力部材に係合する係合部が形成され、前記出力部材には前記入力部材と一体回転可能に前記係合部に係合する被係合部が形成され、
前記係合部が前記工具と係合可能なことを特徴とする請求項3に記載の作動力調整機構。
【請求項5】
前記制動部は板バネを含み、
前記第2の回転部材には板バネの押圧力を調整するカムが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の作動力調整機構。
【請求項6】
操作力を受けて回転する第1の回転部材と、前記第1の回転部材に摩擦接触し、前記第1の回転部材の回転を受けて回転し、作動体に制動力を付与する制動部に対して操作力を出力する第2の回転部材とを有し、
前記第2の回転部材は、所定の回転範囲内に回転規制されていることを特徴とする操作力伝達機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−166492(P2010−166492A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8902(P2009−8902)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】