説明

作動液の耐火性の監視方法

作動液の耐火性を監視する方法は、作動液を使用する際に変化する作動液の性質を測定し;この測定値を作動液の耐火性に関連させ、更に必要に応じ修復作用を行って作動液の耐火性を改善することを含む。適する性質はたとえばポリメチルメタクリレートのようなポリマーミスト防止添加剤の分子量であり、耐火性は測定分子量が許容しうる数値未満に低下した際に適する溶剤におけるポリマーの濃縮物を作動液に添加することにより改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作動液の耐火性を評価する方法に関するものである。更に本発明は 作動液の耐火性を監視して作動液の耐火性が所定レベル未満に低下すれば修復作用を採用しうる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
作動液は特殊処方の流体であって、パワー伝達および制御の目的で高圧流体系(たとえば345バール(5000psiまで))にて作動するよう設計されるものである。流体は腐食保護、磨耗耐性を含め各性質の群と流体系に存在するバルブ、パイプおよび貯槽におけるワニスもしくはスラッジを形成する傾向の低下とを組合わせるよう設計される。
【0003】
更に、作動液は格別レベルの耐火性を示すことが一般に極めて重要である。これは特に高度の火災の危険が存在する液体系、たとえば鉄およびスチール製造およびプロセス工業(たとえばブラスト・ファーネス、ホット・ストリップ・ミル、コイル取り扱い施設など)に使用される作動液である。この種のシステムにおいては高圧流体漏れが存在する際に問題が生じうる。何故なら、これはピンホール火災を生じうるからである。従って、使用される作動液は適する耐火性を示すことが重要である。望ましくは耐火性の作動液は火を拾う傾向が低下しており、更に火を拾う場合は着火源を除去した後に連続燃焼を支持しないことが望ましい。
【0004】
どのように作動液の耐火性を決定すべきか並びにどのようなレベルが許容しうると見なされるかを特定する種々の工業的基準がある。この種の1つの基準は、いわゆる第7回ルクセンブルグ・プロトコール[動力伝達(ヒドロスタチックおよびヒドロキネチック)につき使用される耐火性作動液に適用しうる要件および試験]である。このプロトコールの1つの要素はスプレー着火試験であり、ここでは試験すべき流体を加圧下で噴霧し(液体システムにおけるピンホール漏れを模倣する)と共に、固定特性の着火フレームを導入する。流体の着火に際し、火炎が引出される。着火フレームの引抜き後のスプレーにおける火炎の燃焼の最大持続を決定する。この試験における「合格」については、燃焼の最大持続を30秒を越えないものとする。
【0005】
作動液の耐火性は流体を使用する際に経時的に劣化する傾向を有し、この劣化の速度は使用に際し流体が剪断(shear)される(流体系におけるポンプなどによる)程度に関連する傾向を有する。
【0006】
米国特許5141663号明細書は、高分子量ポリマーミスト防止添加剤を使用してポリアルキレングリコール系作動液の耐火性程度を提供すると共に、ミスト防止添加剤が典型的には使用に際し作動液により遭遇する剪断力にかけられると劣化することを認識することに関する。米国特許5141663号は、比較流体で使用する添加剤と比較したミスト防止添加剤の分子量における損失を決定すべくGPCによる流体の分析を記載している。
【0007】
ホッジスP.K.B「作動液」(アーノルド社により出版、1996)、第20章は、耐火性流体および耐火性流体の保持に関するものである。システム設計と作動液との正確な組合わせが確立された後、経済的および効果的操作に対する鍵、製造業者に対する厳密な推奨である)と述べられており、「表20.2」に示されたように実験検査による作動液の推奨の系統的点検および定期的監視が重要であるとも述べられている。この種の監視プログラムは水分含有量、pH、粘度、微生物および粒子数を包含する。
【0008】
作動液の耐火性は或る種の修復作用が採用されなければ経時的に劣化する傾向を有するので、流体の耐火性は、或る時点にて許容レベル未満に低下する。現場で適切な耐火性試験を行って使用される流体の耐火性を直接に測定することは実用的または経済的でない。事実、たとえば第7回ルクセンブルグ・プロトコールに記載されたような或る種の試験につき、試験を実施すべく装備されかつオーソサイズされた分野には数種の施設しか存在しない。作動液の試料をこの種の施設に送って試験するのは実用的でない。何故なら、巡回時間は許容しえないほど遅いからである。工業で使用される大規模液体システムは連続的に操作する傾向を有することに注目すべきである。試験結果を試験システムから受入れる時点で、流体は或る時点で許容しうるレベル未満の耐火性しか持たないと思われる。
【0009】
【特許文献1】米国特許5141663号明細書
【非特許文献1】ホッジスP.K.B「作動液」(アーノルド社により出版、1996)、第20章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景に対し、従来使用される種類の耐火性試験の適用を含まない、作動液の耐火性を評価する方法を提供することが望ましい。更に液体システムの位置またはその近傍で行うことが便利であると共に、耐火性における低下をなくし或いは急速に修復する作動液の耐火性の評価方法を提供することも望ましい。また耐火性の定期的点検が実用的に可能となるよう実施するのが経済的である作動液の耐火性の評価方法を提供することも望ましい。これは、必須レベルの耐火性を維持するのに必要な修復作用を大抵の適切な時点で実施することを保証すると言う利点をも有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って1実施形態において本発明は作動液の耐火性の評価方法を提供し、この方法は:
(i)作動液を使用する際に変化すると共に作動液の耐火性に関連しうる作動液の性質を測定し;
(ii)工程(i)にて得られた測定値を作動液の耐火性に関連づける
ことを特徴とする。
【0012】
本発明のこの実施形態は、耐火性が流体を液体システムにて使用する際に変化する場合、作動液の耐火性を評価すべく用いられる。特記したように、この種の流体の耐火性は、流体が使用に際し剪断される際に劣化する傾向を有する。本発明のこの実施形態は流体の使用に際し変化する(剪断と共に耐火性自身と相関しうる作動液の或る種の性質の測定に依存する。問題とする性質は、耐火性だけでなく寧ろ耐火性の表示を与えるべく使用しうる性質でもあることに注目される。更に本発明の重要な性質は、測定すると共に耐火性の表示として使用すべき性質を同定することを含むことも注目される。
【0013】
流体を使用する際に変化する作動液の性質は流体の成分および化学に応じて流体毎に相違する。本発明の最も広い実施形態は特定の性質の測定のみに限定されず、ただし依存しうる性質は流体の耐火性に関連するものとする。
【0014】
好ましくは、依存すべき性質は容易かつ便利に測定しうると共に迅速な巡回時間を有して作動液の耐火性における許容しえない変化を同定すると共に遅延なく作用させうるものである。測定すべき性質は特殊な装置および手順の使用を必要とするが、これらを耐火性試験自身よりも評価可能かつ容易にする程度であり、本発明は作動液の耐火性の直接的測定と比較して利点を与える。事実、本発明が耐火性の直接的測定にわたり利点を与えるには、依存する性質を単に耐火性試験よりも少ない関連した実際の制約を有するもの、すなわち、位置、使用の容易さ或いはコストである。
【0015】
本発明の実施にて有用である任意特定の測定しうる性質については、この性質が試験/基準が適切であるかどうか決定して、耐火性に関連しうるものとせねばならない。すなわち、興味ある性質を参照して流体を特性化するには、耐火性試験を実施することがまだ必要である。しかしながら、その特性化が行われた後、この性質は耐火性試験に頼る必要なしに耐火性の表示に依存することができる。
【0016】
作動液を特性化するには、その耐火性および興味ある性質を流体が新鮮/新たである場合および更に流体の使用をシュミレートする目的である剪断の種々の期間の後(たとえば流体をポンプを介し循環させることにより)に測定する。このようにして、どのように流体の耐火性が劣化すると共にその劣化が興味ある性質における変化と相関するかを確認することができる。有利には、適切な耐火性試験にて低下するのに等しい性質の数値を決定することができる。作動液をこのようにして特性化することにより、興味ある性質のその後の測定を作動液の耐火性が許容しえないほど低くなって修復作用を必要に応じ行いうる時点の直接的表示として使用することができる。
【0017】
上記のように最も広い実施形態において、本発明は測定すべき任意特定の性質により限定されない。しかしながら実用上の観点から、依存すべき性質は適切な耐火性自身と比較した場合に関連利点(たとえば便利さ、コストなど)を有するものであることが明らかに望ましい。耐火性の代表としての測定すべき性質は液体毎に変化し、更に同じ性質に依存する場合にも許容しうる耐火性と許容しえない耐火性との間の変化が、異なる作動液の間で変化しうることを示す域値である。本発明は用いるべき流体の特定種類の予備特性化に依存し、得られる結果は異なる組成の流体の代表であると見なしてはならず、或いはこの種の流体を特性化するのに有用であると見なしてはならない。
【0018】
依存すべき性質は、作動液を使用する際に変化すると共に流体の耐火性に関連しうる任意の物理的もしくは化学的性質とすることができる。有用な性質は粘度、密度、圧縮性、伝導率、プランドル数、比熱、表面張力、蒸気圧、分子量(数平均もしくは重量平均)および沸点を包含することができる。流体におけるポリマーミスト防止添加剤の分子量(特に好ましくは重量平均分子量)を使用するのが好適である。当業者は、どのようにこの種の性質を標準装置および技術を用いて測定しうるかに熟知している。作動液の試料を液体システムの便利な部分から採取すると共に、興味ある性質を評価しうるよう分析することができる。
【0019】
他の実施形態において、本発明は液体システムにて使用される作動液が充分な耐火性を有するよう確保する方法を提供する。この形態において、方法は:
(i)作動液を使用する際に変化すると共に作動液の耐火性に関連する性質を測定し;
(ii)工程(i)にて得られる測定値を作動液の耐火性に関連させ;
(iii)必要に応じ、作動液の耐火性を改善するには修復作業を行なう
ことからなっている。
【0020】
この形態においては作動液の適切な性質を定期的点検により監視して流体の耐火性における変化の理解を展開し、特に流体の耐火性が認めがたく低いレベルに達する際に同定することができる。実際には、監視システムは適切な耐火性試験にて「不合格」に相当する測定された性質の数値に基づいて設定されることは少ない。寧ろ、この方法は「不合格」に到達しつつある時点を同定することに用いられる。その時点に達した際、修復作用が行われて流体の耐火性を向上させることができる。
【0021】
工程(i)および(ii)は上記と同じであり、従って同様な原理を適用しうることが認められよう。本発明のこの形態において、適切な性質のサンプリングおよび測定の間の期間は液体システムの特徴および/または使用される作動液に依存して変化することができる。たとえば液体システムが作動液に対し高い剪断を付与するものであれば、流体の耐火性は同じ流体が低剪断システムにて使用する場合よりも急速に劣化することがある。この場合、作動液の一層頻繁なサンプリングが、作動液の耐火性を許容しえない低レベルに到達させる時点を決定する必要がある。
【0022】
好適面において、問題とする性質を測定するため使用される装置は、オンラインのサンプリングおよび測定を行いうるよう流体系の部分として組込まれる。測定すべき性質の本質およびこれに必要な装置の種類は明らかに、これが実際に可能であるかどうかを支配する。或いは作動液をサンプリングすると共に、これを試験のため除去する必要があろう。試験は「オンサイト」であるが、これも測定すべき性質の本質に依存することが好適である。
【0023】
使用される作動液の耐火性が許容しえない低レベルに到達しているのを決定した場合、修復作用を採用して耐火性を向上させることができる。たとえ必須でなくても、本発明の方法を耐火性の適するレベルが維持されるのを確保するよう採用することが特に極めて望ましい。これは、耐火性が許容しえない低レベルに到達しつつあるのを確定した後に、作用液の耐火性を向上させるべくどの工程を採用しうるかを示すように思われる。これは、本発明のこの面が特定種類の作動液(組成物)を予備特性化して、幾つかの性質を作動液の耐火性の代表として少なくとも定性的に認めうると言う事実に依存する。1つの極端な例において、修復作用は全作動液を初期に特性化されたと同じ初期組成物の新鮮液を有するシステムに置換することを含む。しかしながら、これは実際には行われない。それより多くはシステムにおける作動液に、適する濃厚物もしくは成分を投入して耐火性を促進することである。しかしながら使用される濃厚物もしくは諸成分は、その後の本発明による作動液の耐火性を監視する能力を破壊すべきでない。同様な理由から、システムで使用される作動液が異なる種類の作動液に変化されかつこれが本発明により異なる作動液の耐火性を監視することを意図する場合、このシステムは任意の残留/現存する作動液により導入すべき新鮮な作動液を阻害しないよう防止すべく適当にフラッシュさせることが重要である。
【0024】
例示の目的で、本発明を特定種類の市販入手しうる耐火性作動液を参照して以下説明する。
【0025】
耐火性作動流体として高分子量ポリマーのミスト防止添加剤を混入して必要レベルの耐火性を付与するベース流体を使用することが知られている。ミスト防止添加剤は、たとえば高圧ピンホール漏れが生じた場合のような作動液を噴霧させる場合、作動液の液滴の凝集を生ぜしめることを意図する化合物である。更に液体の液滴の凝集は、流体が火炎を支持する傾向を減少させる。ミスト防止添加剤として有用な化合物の多くの種類が存在し、たとえばポリメチルメタクリレート、アルキレン−ビニルエステルコポリマー、ポリブタジエンスチレンコポリマーおよびその組合わせのようなポリアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。ミスト防止添加剤のこれら種類をポリオールエステル種類のベース流体に用いることは公知である。
【0026】
本発明によれば、剪断に露呈した場合、ポリアルキル(メタ)アクリレートのミスト防止添加剤は劣化すると共に、これはミスト防止添加剤を含ませた場合の作動液の耐火性における低下に一致することが観察された。
【0027】
ポリマーであるミスト防止添加剤は各種のポリマー鎖長を含む。ミスト防止添加剤は従って特定の分子量分布を参照して特定化される。しかしながら、耐火性の特定レベルを観察するには、作動液がこの分子量分布内に特定フラクションの充分濃度を含有せねばならないと思われている。本発明によれば従って、この種のミスト防止添加剤を一体化した作動流の耐火性を、ミスト防止添加剤の適切なフラクションが存在する程度を決定することにより割合決定することができる。作動流体を用いるので、適するフラクションのモードは減少すると思われる。すなわち、作動液におけるミスト防止添加剤の分子量(特に重量平均分子量)を測定すると共に、作動液の耐火性に関連させることができる。流体のこの特徴的(ポリマーミスト防止添加剤の分子量)は従って耐火性に関する表示として使用することができる。事実、流体のポリマーミスト防止添加剤の分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて評価することができる。これは測定技術を使用するのが便利かつ簡単であると思われる。
【0028】
本発明による修復作用は、作動液に初期に存在すると同じタイプのポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することからなっている。ポリマーは新鮮もしくは未使用のものとすることができる。ポリマーは、流体の残部における適正希釈を達成するのに適する物理的形態、たとえば作動液と適合する溶剤におけるポリマーミスト防止添加剤の溶液とすべきである。
【0029】
本発明によれば、作動液が所要に応じ特性化された後、GPCデータを用いて作動液の耐火性が許容しえない低レベルに実際に到達する時点を確認することができる。作動液の耐火性は改善することができ、これは作動液に初期に存在すると同じタイプのミスト防止添加剤を作動液に添加することからなると思われる。これは、作動液の耐火性を同じ手法を用いて監視しうることを確保する。
【0030】
すなわち本発明によれば作動液の耐火性の改善方法が提供され、ここで作動液はミスト防止添加剤(その分子量は作動液を使用する際に変化する)を含み、この方法は作動液に最初に存在すると同じタイプのポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することを特徴とする。
【0031】
ポリマーミスト防止添加剤は、作動液に適合性の溶剤からなる濃厚物として添加すべきである。適する溶剤はカノーラ油または菜種油とすることができる。
【0032】
たとえば作動液におけるポリメチルメタクリレートミスト防止添加剤の重量平均分子量は、使用に際し1.4ミリオンの初期数値から約200000の数値(この時点で流体は許容しえない耐火性を有する)まで低下することができる。
【0033】
作動液の耐火性は、ポリメチルメタクリル酸を含むポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することにより改善することができる。ポリマーミスト防止添加剤は作動液に対し適合性の溶剤における濃厚物として添加することができ、たとえばカノーラ油もしくは菜種油におけるポリメチルメタクリレートである。
【0034】
更に本発明によれば本発明の方法に使用するための濃厚物が提供され、これはポリオールエステルとポリメチルメタクリレートとカノーラ油もしくは菜種油と必要に応じ酸化防止剤、耐摩耗性添加剤および消泡添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤からなっている。
【0035】
濃厚物は30〜50重量%のポリオールエステルと8〜17重量%のポリメチルメタクリレートと25〜43重量%のカノーラ油もしくは菜種油と0〜1重量%の酸化防止剤、耐摩耗性添加剤および消泡添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤とで構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を以下の非限定的実施例および作動液におけるポリメチルメタクリレートミスト防止添加剤の重量平均分子量とスプレー着火試験により測定される作動液の耐火性との間の関係を示すグラフである図1を参照して説明する。
【0037】
実施例1
この実施例で使用した作動液はアンボールSWX−P68(カストロール社から市販入手しうる)とした。これはポリオール−エステルのベース流体からなり、ミスト防止添加剤として高分子量ポリマーを含む。この添加剤の分子量分布は公知であり或いは予め測定することができる。
【0038】
作動液を種々の時間にわたり、逃し弁およびラジエータを装着したビッカース20DT5A羽根ポンプを備える閉鎖ループ液体系を用いて剪断にかけた。温度プローブを48〜53℃に設定し、ラジエータファンを所要に応じ冷却のために用いた。レベルスイッチをシステム内に組み込んで、漏れを検出すると共に、漏れが確認されたならばシステムを遮断した。操作に際し流体ポンプを約800psiにて操作し、流体温度を約49℃に設定した。循環した流体の容積は室温にて約70リットルとした。流体の流速は1分間当たり約23リットルとした。
【0039】
流体を所定時間にわたりポンプを介する循環により剪断し、試料を所定の間隔で採取した。この試料をその耐火性を決定すべく試験すると共に耐火性につき重要であると思われるミスト防止添加剤のフラクションの濃度を確認した。これは下記するようにGPCを用いて行った。
【0040】
ゲル透過クロマトグラフィー分析は、テトラヒドロフランにおける試料の溶解(約30mg/ml)を含むと共に、ポリマー・ラボラトリース・ミックスド・ベッドAゲル・パーミウエーション・クロマトグラフィー・カラムを用いたその後の分析をも含み、テトラヒドロフランを可動相として使用し、アジレントHP1100およびアジレントGPCをソフトウェアーとして使用した。ミスト防止添加剤化合物の10個の試料をも分析して検定とした。試験に際し試料を2回分析して平均結果を与えた。
【0041】
このようにして、耐火性試験における失敗の結果に相当する作動液の特徴である分子量を決定することができる。この分子量の特徴を次いで実際に使用して、作動液の耐火性が許容しえない低レベルに到達する時点を決定することができる。
【0042】
次表は剪断の期間に対する分子量(数平均および重量平均)を示す。各分子量は標準的方法を用いてGPCにより測定した。
【0043】
スプレー着火試験(第7回ルクセンブルグ・プロトコール)を0時間および25時間に行った。0時間につき合格の結果が得られた(燃焼の最大持続6s)。25時間後失敗の結果(33秒間)が観察された。
【0044】
重量平均分子量MWは、図1にグラフで示す平均スプレー着火試験の結果により測定した作動液の耐火性に関連する。これは作動液の耐火性が許容しうるスプレー着火時間30秒未満に低下することを示し、この場合ポリマーミスト防止添加剤の重量平均分子量は約190000に低下した。
【0045】
【表1】

【0046】
かくして、作動液を使用する際に変化する作動液の性質(ポリマーミスト防止添加剤の分子量)を測定することができると共に、作動液の耐火性に関連させることができる。この測定は慣用スプレー着火試験よりも容易に行うことができ、従って作動液の耐火性を使用に際し監視することができる。測定値を用いて、作動液の耐火性を改善すべく修復作用を行いうることを示す。この種の修復作用は作動液中に初期に存在したと同じ種類のポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することからなっている。たとえばポリメチルメタクリレートのカノーラ油における濃厚物を作動液に添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ポリメチルメタクリレートミスト防止添加剤の重量平均分子量と噴霧着火試験により測定される作動液の耐火性との間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液の耐火性を評価する方法において、
(i)作動液を使用する際に変化すると共に作動液の耐火性に関連しうる作動液の性質を測定し;
(ii)工程(i)にて得られた測定値を作動液の耐火性に関連させる
ことを特徴とする作動液の耐火性の評価方法。
【請求項2】
作動液がポリマーミスト防止添加剤からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
作動液を使用する際に変化する作動液の性質がポリマーミスト防止添加剤の分子量である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
作動液を使用する際に変化する作動液の性質がポリマーミスト防止添加剤の重量平均分子量である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーミスト防止添加剤の重量平均分子量を、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーミスト防止添加剤をポリアルキル(メタ)アクリレート、アルキレン−ビニルエステルコポリマー、ポリブタジエン−スチレンコポリマーおよびその組合わせよりなる群から選択する請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリアルキル(メタ)アクリレートがポリメチルメタクリレートである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)作動液を使用する際に変化すると共に作動液の耐火性に関連しうる作動液の性質を測定し;
(ii)工程(i)にて得られた測定値を作動液の耐火性に関連させ;
(iii)必要に応じ、修復作用を採用して作動液の耐火性を改善させる
ことをからなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
作動液がポリマーミスト防止添加剤からなる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
作動液を使用する際に変化する作動液の性質がポリマーミスト防止添加剤の分子量である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
作動液を使用する際に変化する作動液の性質がポリマーミスト防止添加剤の重量平均分子量である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーミスト防止添加剤の重量平均分子量をゲル透過クロマトグラフィーにより測定する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
作動液の耐火性を改善するための修復作用が作動液に最初に存在すると同じ種類のポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することからなる請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー分子量のポリマーミスト防止添加剤(その分子量は使用する際に変化する)からなる作動液の耐火性を改善する方法において、作動液に最初に存在すると同じ種類のポリマーミスト防止添加剤を作動液に添加することからなる作動液の耐火性の改善方法。
【請求項15】
ポリマーミスト防止添加剤を、作動液に適合性である溶剤に添加する請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーミスト防止添加剤をポリアルキル(メタ)アクリレート、アルキレン−ビニルエステルコポリマー、ポリブタジエン−スチレンコポリマーおよびその組合わせよりなる群から選択する請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリアルキル(メタ)アクリレートがポリメチルメタクリレートである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カノーラ油または菜種油におけるポリメチルメタクリレートからなる濃厚物を作動液に添加することからなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、カノーラ油もしくは菜種油および必要に応じ酸化防止剤、磨耗防止添加剤および消泡添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤からなる濃厚物を添加することからなる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ポリオールエステル、ポリメチルメタクリレート、カノーラ油もしくは菜種油および酸化防止剤、磨耗防止添加剤および消泡添加剤よりなる群から選択される必要に応じ少なくとも1種の添加剤からなる請求項19に記載の方法に使用するための濃厚物。
【請求項21】
30〜50重量%のポリオールエステルと8〜17重量%のポリメチルメタクリレートと25〜43重量%のカノーラ油もしくは菜種油と0〜1重量%の少なくとも1種の酸化防止剤、磨耗防止添加剤および消泡添加剤よりなる群から選択される添加剤とからなる請求項20に記載の濃厚物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507953(P2009−507953A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529675(P2008−529675)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003136
【国際公開番号】WO2007/028945
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501354624)カストロール リミテッド (8)
【Fターム(参考)】