説明

作動液及び蒸気腐食の防止方法

蒸気相腐食の阻害性能を有する金属グリコール系の作動液を開示する。当該作動液は、食品関連用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年8月28日に出願された米国仮特許出願番号61/092,483の利益を主張し、その全部を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、水−グリコール(W/G)系作動液に関する。また、本発明は、水−グリコール系作動液の使用に起因する蒸気相腐食の防止に関する。より詳しくは、本発明は、蒸気相腐食の阻害剤としてアンモニウム塩を含む水−グリコール系作動液を対象とする。当該作動液は、食品関連用途を含む様々な実用的用途に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
作動液(hydraulic fluid)は、動力を伝達する媒体として、様々な実用的用途に使用される。この作動液は、熱安定性、耐火性、幅広い温度範囲にわたる粘度変化に対し影響を受けにくいこと、良好な加水分解安定性及び良好な潤滑性等の厳しい性能基準を満たさなければならない。
【0004】
作動液には、鉱油系のものがある。これら炭化水素系の液は、性能基準を満たし、水を実質的に含まないため、深刻な腐食の問題をもたらさなかった。しかしながら、炭化水素系の作動液は、火災の原因となる可能性をもたらすものである。したがって、今日の作動液には、水−グリコール混合物系のものがある。それらの作動液は、火災の原因となる懸念を解消するものであるが、金属部の腐食が深刻な問題となっている。
【0005】
水−グリコール系作動液は、多量の水を含んでいる。液中の水の量は、60重量%程度と高くてもよく、通常は35重量%以上である。液中に水が高い割合で存在すると、液圧システム内で操作温度150oF以上に加熱し、空気/酸素が存在するときには、非ステンレス鋼又は鋳鉄で作られた金属部の腐食にとって理想的な条件が作り出される。
【0006】
様々な添加剤を水−グリコール系作動液に含有させて金属部の腐食を阻害している。例えば、モルホリンや他のアルキルアルカノールアミンが工業的な非食品関連用途に使用されてきた。しかしながら、有用な無機の蒸気相腐食(vapor phase corrosion(VPC))阻害剤を水−グリコール系作動液に含有させることへの要求、特に食品関連用途に使用する水−グリコール系作動液への要求は依然として存在する。現在のところ、水−グリコール系作動液用に設計した工業用の蒸気相腐食阻害剤で、食品関連用途に使用するための米国食品医薬品局(Food and Drug Administration(FDA))の要件を満たすものは、全くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、曝された金属表面の蒸気相腐食を阻害する水−グリコール系作動液を対象とする。より詳しくは、本発明は、蒸気相腐食阻害剤としてアンモニウム塩を含む水−グリコール系作動液を対象とする。本発明の液は、食品関連用途への使用に適している。食品関連用途に使用される従来の水−グリコール系作動液は、蒸気相腐食阻害剤を含んでいないため、重要な性能特性に欠けていた。本発明の水−グリコール系作動液は、この未解決の課題を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の1つの態様は、作動液の気化に起因する曝された金属表面の腐食を阻害する水−グリコール系作動液を提供することである。本発明の水−グリコール系作動液は、蒸気相腐食阻害剤としてアンモニウム塩を含む。
【0009】
また、本発明の別の態様は、水−グリコール系作動液に有効量、例えば約0.05重量%〜約1重量%、のアンモニウム塩を含ませることを特徴とする、作動液に起因する曝された金属表面の蒸気相腐食を阻害、遅延又は防止する方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の別の態様は、
(a)約25重量%〜約50重量%のグリコール、
(b)約0.5重量%〜約8重量%の部分的に中和された脂肪族C−C16カルボン酸、
(c)約15重量%〜約40重量%のポリアルキレングリコール、
(d)約0.05重量%〜約1重量%のアンモニウム塩、
(e)約20ml以上の予備アルカリ度(reserve alkalinity)とするのに十分な量の緩衝アルカリ、
(f)合計で0重量%〜約0.5重量%の消泡剤、染料及び金属不活性化剤のうちの1以上、及び
(g)約25重量%〜約50重量%の水
を含む、水−グリコール系作動液を提供することである。
【0011】
また、本発明の別の態様は、作動液の耐用年数(useful life)を延ばすため、約20ml以上の予備アルカリ度を有する水−グリコール系作動液を提供することである。
【0012】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の好ましい形態の詳細な記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】比較例の水−グリコール系作動液の蒸気に曝された鋳鉄板の写真(左側)及びアンモニウム塩を含む本発明の水−グリコール系作動液の蒸気に曝された鋳鉄板の写真(右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水−グリコール系作動液を対象とする。水−グリコール系作動液は、耐火性であるため、広く使用されている。本発明の水−グリコール系作動液は、様々な実用的用途、特に食品関連用途等、に使用することができる。本発明の重要な特徴によれば、曝された金属表面は、高い操作温度における水−グリコール系作動液の蒸発に起因する蒸気相腐食への耐性を有する。
【0015】
本発明の水−グリコール系作動液は、曝された金属表面の腐食を阻害、遅延及び/又は防止する。アンモニウム塩を含まない又は実質的に含まない水−グリコール系作動液に起因して金属表面が目に見えて酸化される量に比べて、アンモニウム塩を含む水−グリコール系作動液の蒸気により金属表面が目に見えて酸化されにくいとき、金属表面の腐食は阻害され、遅延され、又は、防止される。
【0016】
アンモニウム塩を「実質的に含まない」水−グリコール系作動液は、約0.05重量%未満のアンモニウム塩を含む。本発明の組成物及び方法を使用して、幅広い様々な金属表面の腐食を阻害、遅延又は防止することができる。例えば、限定はされないが、鉄、チタン、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウムや他の金属等の金属表面の腐食を阻害することができる。本発明の組成物及び方法は、限定はされないが、鉄等の合金を保護するのに使用することもできる。
【0017】
本発明の水−グリコール系作動液は、
(a)約25重量%〜約50重量%のグリコール、
(b)約0.5重量%〜約8重量%の部分的に中和された脂肪族C−C16カルボン酸、
(c)約15重量%〜約40重量%のポリアルキレングリコール、
(d)約0.05重量%〜約1重量%のアンモニウム塩、
(e)約20ml以上の予備アルカリ度とするのに十分な量の緩衝アルカリ、
(f)合計で0重量%〜約0.5重量%の消泡剤、染料及び金属不活性化剤のうちの1以上、及び
(g)約25重量%〜約50重量%の水
を含む。
本発明の作動液は、食品関連用途を含む様々な実用的用途に使用するのに適している。本発明の水−グリコール系作動液は、これらの作動液の使用に起因する曝された金属表面の蒸気相腐食を阻害、遅延及び/又は防止する。
【0018】
本発明の重要な特徴は、本発明の作動液を食品関連用途に使用することができることである。現在のところ、作動液の使用の結果起こる蒸気相腐食の防止のために、米国食品医薬品局により認可されている工業用の蒸気相腐食阻害剤はない。鋭意検討の結果、偶発的に食品と接触する潤滑剤用組成物(米国連邦規則集第21巻第178条第3750項)にも使用することもできる、適した腐食阻害剤が見出された。
【0019】
本発明の作動液は、約25重量%〜約50重量%のグリコールを含む。好ましい形態では、本発明の作動液は、約30重量%〜約45重量%、より好ましくは約35重量%〜約40重量%のグリコールを含む。グリコールは、不凍液及び希釈剤として組成物に含まれ、いくらか粘度を調節する。当該グリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリヘキシレングリコール及びそれらの混合物であってよい。他の同様なグリコールも使用することができる。
【0020】
本発明の作動液は、約0.5重量%〜約8重量%、好ましくは約1重量%〜約6重量%、の部分的に中和された直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族C−C16カルボン酸も含む。当該部分的に中和された脂肪族C−C16カルボン酸は、境界潤滑剤として作用し、水−グリコール系作動液の性能、特に耐摩耗性及びスラッジ溶解性、を向上させる。
【0021】
前記脂肪族C−C16カルボン酸は、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ウンデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、トリデカン酸、2−エチルヘキサン酸及び2−プロピルヘキサン酸のうちの1以上であってよい。好ましいC−C16カルボン酸は、6〜10個の炭素原子を含む。前記C−C16カルボン酸のカルボキシ基の少なくとも一部を中和するのに十分な量の中和剤が、水−グリコール系作動液に加えられる。
【0022】
前記脂肪族C−C16カルボン酸は、中和剤で中和され、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はそれらの混合物等のアルカリ金属水酸化物で中和される。好ましい中和剤は、水酸化カリウムである。前記C−C16カルボン酸のカルボキシ基の約50%以上、好ましくは約60%以上、かつ、約99%以下で100%未満を中和するのに十分な量の当該中和剤が加えられる。
【0023】
本発明の水−グリコール系作動液は、約15重量%〜約40重量%のポリアルキレングリコールも含む。好ましい形態では、当該ポリアルキレングリコールは、作動液中に約20重量%〜約30重量%の量で存在する。当該ポリアルキレングリコールは、所望の粘度を得るための増粘剤としての機能を果たす。
【0024】
前記ポリアルキレングリコールが同一であることは限定されず、数種の工業用のポリアルキレングリコールが本発明の水−グリコール系作動液に利用できる。前記ポリアルキレングリコールは、通常、エチレンオキシド(EO)−プロピレンオキシド(PO)共重合体で、プロピレンオキシドに対するエチレンオキシドの比は約1対10〜約10対1である。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの単一重合体、即ち、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールも前記ポリアルキレングリコールとして使用することができる。前記ポリアルキレングリコールの分子量は、約5,000以上であり、通常、例えば、約10,000を超え、約200,000以下である。1つのポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールの混合物を、本発明の水−グリコール系作動液に使用することができる。
【0025】
本発明の水−グリコール系作動液に有用な工業用のポリアルキレングリコールは、製品PLURASAFE(登録商標)であり、米国ニュージャージー州、フローラル・パーク、バスフ コーポレイション(BASF Corp., Floral Park, NJ)から入手できる。有用な製品PLURASAFE(登録商標)の例としては、オキシラン(CAS番号9003−11−6)を含むメチル−オキシランポリマー60重量%と水40重量%を含む組成物であるPLURASAFE(登録商標)WT90000 Hである。PLURASAFE(登録商標)WT 90000 Hは、偶発的に食品と接触することについて認可されている。他の有用な製品PLURASAFE(登録商標)は、WS−660、WS−2000、WS−5100、WT−1400、WT−9150及びWT−150,000である。これら製品PLURASAFE(登録商標)はそれぞれ偶発的に食品と接触することについて認可されている。
【0026】
本発明の重要な特徴によれば、本発明の水−グリコール系作動液は、水−グリコール系作動液の蒸気に曝された金属表面の蒸気相腐食を阻害、遅延及び/又は防止するのに十分な量のアンモニウム塩を含む。通常、当該水−グリコール系作動液は、約0.05重量%〜約1重量%のアンモニウム塩を含む。好ましい形態では、当該水−グリコール系作動液は、約0.1重量%〜約0.8重量%、より好ましくは約0.15重量%〜約0.6重量%、のアンモニウム塩を含む。
【0027】
前記アンモニウム塩が同一であることは、特に限定されない。しかしながら、前記アンモニウム塩は、作動液への添加量で水溶性でなければならず、かつ、曝される金属表面を蒸気相腐食から保護するために操作温度でアンモニアを気化させなければならない。適したアンモニウム塩としては、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。これらのアンモニウム塩はそれぞれ食用としての食品添加物として認可されている。
【0028】
本発明の水−グリコール系作動液の別の成分は、約20ml以上の予備アルカリ度とするのに十分な量の緩衝アルカリ(buffering alkali)である。作動液の耐摩耗性は、液のpHに直接関係する。したがって、そのpHは、十分に高い値で維持される。緩衝アルカリは、作動液の予備アルカリ度、pH及び酸度を調節する。予備アルカリ度は、100mlの水−グリコール系作動液を滴定してpH5.5とするのに要する0.1M塩酸の体積(ミリリットル)として報告されている。
【0029】
好ましい形態では、約22ml以上、より好ましくは約25ml以上で、約35ml以下の予備アルカリ度とするのに十分な量の緩衝アルカリが存在する。この予備アルカリ度の水準で、水−グリコール系作動液の耐用年数は、液のpHを約9以上、例えば約10〜約12、に維持し、大きくて急速なpH変動を回避するのに十分な緩衝能力を有する。好ましくは、作動液のpHは、約9〜約11に維持される。したがって、有用な緩衝アルカリとしては、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、リン酸塩及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。当該緩衝アルカリは、例えばナトリウム塩又はカリウム塩として加えることができる。
【0030】
本発明の水−グリコール系作動液は、さらに、作動液の技術分野における当業者に公知の任意の成分を含む。この任意成分としては、消泡剤、漏洩検出用の染料、作動液と接触する金属の腐食を防止する金属不活性化剤が挙げられる。これらの任意成分は、合計で、作動液中に0重量%〜約0.5重量%の量で存在する。適した金属不活性化剤としては、CIBAから入手可能な金属不活性化剤であるIRGAMET(登録商標)30、39、42、BTZ及びTTS等の一連のIRGAMET(登録商標)が挙げられる。消泡剤は、通常、シリコン系の消泡剤である。
【0031】
水−グリコール系作動液の担体は水であり、作動液中に約25重量%〜約50重量%の量で存在する。当該水は、好ましくは脱イオン水である。飲料水中に存在するカルシウムイオン及びマグネシウムイオンは、作動液の添加剤と反応し、凝集物又は沈殿物の形成を引き起こし、液性能に悪影響を及ぼし得るからである。液及び成分の寿命を延ばすために、水−グリコール系作動液に含まれる水は、最大で5ppm(parts per million)の総硬度(total hardness)を有するべきである。
【0032】
本発明の組成物は、均一な溶液が得られるまで組成成分を単に混合することにより製造される。通常は、水、水酸化アルカリ(例えば、水酸化カリウム)及び炭酸アンモニウムを前もって混合し、続いてC−C16カルボン酸を添加する。この添加に続いて、通常、グリコール及びポリアルキレングリコールを添加した後、残り全ての作動液成分を添加する。
【実施例】
【0033】
本発明の水−グリコール系作動液及びその作動液が曝される金属表面の蒸気相腐食を阻害、遅延及び/又は防止する能力を示すために、以下の作動液を製造し、腐食阻害の試験を行った。
【表1】

【0034】
この比較例は、蒸気相腐食阻害剤を含んでおらず、現在市販されている水−グリコール系作動液と同様である。
【表2】

1)代表的には、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム又はそれらの混合物。100%活性ベース。

【0035】
試験したアンモニウム塩は、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムであった。それぞれのアンモニウム塩は、食用の食品添加剤の一覧表に記載されている。1つめの試験は、水−グリコール系作動液、即ち、0.5重量%の水酸化アンモニウム、約40重量%のプロピレングリコール、約22.5重量%のPLURASAFE(登録商標)WT−90,000H、約0.2重量%の炭酸ナトリウム及び約3.5重量%の部分的に中和されたカプリン酸を含む上記した代表実施例を用いて行った。この腐食阻害試験は、円筒瓶内の100mlの作動液に吊した3枚の鋳鉄板を用いた。瓶の上端は、凝縮管用の穴を有するコルクで蓋をした。その瓶を150oFに設定した一定温度の浴に設置し、試料を96時間加熱した。鋳鉄板の錆及び腐食を目視で観察した。目に見える腐食は、どの板にも観察されなかった。同一の作動液であるが、水酸化アンモニウムを含まないもの(例えば、比較例1)を含む対照(コントロール)の瓶を用いた別の試験では、3枚の鋳鉄板全てがひどく錆びる結果となった。
【0036】
この試験は、炭酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムを含む水−グリコール系作動液を用いて繰り返した。いずれの試験でも、どの鋳鉄板にも全く腐食は観察されなかった。
【0037】
図1は、現在市販されている水−グリコール系作動液の腐食阻害効果を示す。左側の鋳鉄板の写真は多量の蒸気相腐食を示しているのに対し、右側の鋳鉄板は蒸気相腐食が全くない。左側のパネルはアンモニウム塩を含まない水−グリコール系作動液の蒸気に曝したのに対し、右側のパネルは同一の水−グリコール系作動液であるが、0.5重量%の水酸化アンモニウムを含む液の蒸気に曝したものである。
【0038】
現在のところ、工業用の水−グリコール系作動液で、食品関連用途に適したものは全くない。そのような液に利用できる食品工業用の蒸気相腐食添加剤はなかったからである。蒸気相腐食添加剤として直接食品添加剤(direct food additive)に認可されている様々な化合物を試験すると、次の表3に示すように、アンモニウム塩のみが十分な蒸気相腐食保護をもたらすことが見出された。
【表3】

1)上記した代表比較例

【0039】
表3は、蒸気相腐食阻害剤を含まない作動液又は亜硝酸ナトリウム若しくは炭酸ナトリウムを含む作動液は、48時間又は96時間の蒸気相腐食試験に合格しなかったことを示す。亜硝酸ナトリウムは、24時間試験には合格したが、この時間の長さは実用的な作動液用途には不十分である。水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムを含む作動液は、それぞれ96時間の蒸気相腐食試験に合格した。この蒸気相腐食の阻害は、少なくとも部分的には、アンモニアの揮発に起因し、それにより曝された金属表面の蒸気相腐食が阻害される。ベンゾトリアゾールやポリ第4級(polyquaternary)化合物等の標準的な腐食阻害剤を用いた試験では、蒸気相腐食は阻害されなかった。そのような化合物は、作動液の操作条件下で揮発性ではないからである。
【0040】
本発明の水−グリコール系作動液の性能をさらに向上させるために、緩衝アルカリを添加することにより予備アルカリ度を増大させ、20mlよりも大きくする。予備アルカリ度は、作動液の耐用年数を増大させるのに重要である。低い予備アルカリ度を有する作動液は、短時間で高い摩耗を示し始める。
【0041】
この試験では、0.25重量%の炭酸アンモニウムを含む作動液に炭酸ナトリウム(0.5重量%)を添加した。炭酸ナトリウムを添加することにより、予備アルカリ度を15mlから22.5mlへと増加させた。その水−グリコール系作動液を標準的な条件である150oF、1500及び1750psiで操作した。米国材料試験協会(ASTM)D2882の手順を用いて行ったポンプ試験により、平均摩耗で、70mg未満の摩耗の再現が示される。そのASTM D2882試験は、2,000psi(13.8MPa)で100時間、Sperry Vickers V104−C羽根ポンプ(vane pump)で毎分8ガロン(30.6L/分)で行われる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約25重量%〜約50重量%のグリコール、
(b)約0.5重量%〜約8重量%の部分的に中和された脂肪族C−C16カルボン酸、
(c)約15重量%〜約40重量%のポリアルキレングリコール、
(d)0.05重量%〜約1重量%のアンモニウム塩、
(e)約20ml以上の予備アルカリ度とするのに十分な量の緩衝アルカリ、
(f)合計で約0重量%〜約0.5重量%の消泡剤、染料及び金属不活性化剤のうちの1以上、及び
(g)約25重量%〜約50重量%の水
を含む、作動液。
【請求項2】
グリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリヘキシレングリコール及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項3】
−C16カルボン酸が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ウンデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、トリデカン酸、2−エチルヘキサン酸及び2−プロピルヘキサン酸のうちの1以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項4】
−C16カルボン酸が、50%以上100%未満中和されていることを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールが、約5000以上かつ約200,000以下の分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールが、メチル−オキシランポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項8】
アンモニウム塩が、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及び酢酸アンモニウムのうちの1以上であることを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項9】
緩衝アルカリが、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、リン酸塩及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の作動液。
【請求項10】
請求項1に記載の作動液に圧力を加えることを特徴とする、動力を伝達する又は荷を運搬する方法。
【請求項11】
食品加工設備、食品調理設備又は食品提供設備において、動力を伝達する又は荷を運搬することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
水−グリコール系作動液に有効量のアンモニウム塩を含ませることを特徴とする、作動液に起因する曝された金属表面の蒸気相腐食を阻害、遅延又は防止する方法。
【請求項13】
水−グリコール系作動液が、約0.5重量%〜約1重量%のアンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水−グリコール系作動液が、
(a)約25重量%〜約50重量%のグリコール、
(b)約0.5重量%〜約8重量%の部分的に中和された脂肪族C−C16カルボン酸、
(c)約15重量%〜約40重量%のポリアルキレングリコール、
(d)0.05重量%〜約1重量%のアンモニウム塩、
(e)約20ml以上の予備アルカリ度とするのに十分な量の緩衝アルカリ、
(f)合計で約0重量%〜約0.5重量%の消泡剤、染料及び金属不活性化剤のうちの1以上、及び
(g)約25重量%〜約50重量%の水
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。


【図1】
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【公表番号】特表2012−501371(P2012−501371A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525112(P2011−525112)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/054643
【国際公開番号】WO2010/027707
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(507282635)バスフ・コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】