説明

作業分析システム

【課題】RFIDを用いて作業者に負担をかけることなく作業者の位置情報を収集し、合わせて設備の電気信号を収集することにより作業者の作業比率を自動的に割り出す、作業分析システムを提供する。
【解決手段】作業者1が持つRFIDタグ2と、作業者の固有情報登録装置3と、RFIDタグからの情報受信装置4と、この情報を位置情報として処理する上位システムA7と、生産設備からの電気信号受信装置9と、この電気信号を処理する上位システムB10と、作業内容撮影カメラ11と、レコーダ12と、カメラの撮影とレコーダの録画再生を制御する上位システムC14と、ネットワーク機器13と、作業者とRFIDタグの対応付け情報と設備位置情報を蓄えるデータベースA15と、作業者の作業分析をする分析装置16と、分析したアウトプットを蓄えるデータベースB17と、アウトプットを視覚化するモニタリング端末18とを備える、作業分析システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification;電波による個体識別)を用いて作業者の位置情報を、設備の電気信号を用いて設備の稼動情報を収集し、カメラで録画した映像を活用して作業分析を行う作業分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業者の作業分析は、観測者が作業者の後を追って作業内容を観測し、観測した作業を観測用紙に逐一書き込む作業を行っており、観測終了後に観測用紙に書き込まれたデータに基づいて統計表又は分析グラフ等を、人的作業もしくはコンピューターによって、その都度作成していた。
【0003】
人の動きを自動的に追い観測者が作業者を追う負担を減らす技術としては、バーコードのような認証技術が挙げられる。バーコードリーダがついたゲートを各チェックポイントに設置すれば、作業者がそこを通るたびに作業者に付着させたバーコードを読み取らすことで作業者の位置を追うことができる。
【0004】
バーコード以外の認証技術としては、RFIDシステムが挙げられる。RFIDシステムは、移動可能な認識対象物に付着するタグがアンテナから受ける信号に対して回答信号としてタグの固有の情報を信号に伝送し、この信号をリーダーがアンテナを通じて受信して、リーダーに連結された端末は、受信された情報を分析して認識対象物の位置を識別する。電波による認証処理を行うため、認証対象となるICチップが見えている必要がなく非接触で認証できる。
【0005】
RFIDシステムを用いて認識対象物の位置を識別した先行技術としては、商品にタグをつけて在庫管理している例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−31218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、人手による作業分析は、作業者の後を追い作業内容を観測し観測用紙に記入する手間と、記録した作業データを、統計表又は分析グラフ等を人的作業か、コンピューターによって作成する手間がかかるという問題点があった。
また、バーコードは、認証させる際に、バーコード面をリーダーにかざさなければならず、バーコードを持った作業者に意識的にバーコードの向きを変更させたり、バーコードを探し出させるといった作業を、過度にさせてしまうという問題点があった。
本発明は、RFIDを用いて作業者に負担をかけることなく作業者の位置情報を収集し、合わせて設備の電気信号を収集することにより作業者の作業比率を自動的に割り出す、作業分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、製品の生産に関わる作業者が持つRFIDタグ、前記RFIDタグに作業者の固有情報を登録する登録装置と、前記RFIDタグから出される情報信号を受信する情報受信装置と、前記情報受信装置の情報を位置情報として処理する上位システムAと、生産設備から発信される電気信号を受信する電気信号受信装置と、前記電気信号受信装置の電気信号を処理する上位システムBと、作業者の作業内容を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した映像を録画再生するレコーダと、前記カメラの撮影と前記レコーダの録画再生を制御する上位システムCと、前記カメラ、レコーダ、上位システムCを接続するネットワーク機器と、前記上位システムAから位置情報を、前記上位システムBから設備の稼動情報を受け取り、且つ前記作業者と前記RFIDタグの対応付け情報と設備位置情報を蓄えるデータベースAと、前記データベースAから前記対応付け情報、前記位置情報及び稼動情報を受け取り作業者の作業分析をする分析装置と、前記分析装置で分析したアウトプットを蓄えるデータベースBと、前記データベースBで蓄えるアウトプットを視覚化するモニタリング端末とを備えることを特徴とする作業分析システムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業分析システムによれば、作業者の位置情報、設備の稼動情報から作業者の作業比率を自動で割り出し、また作業者の作業をカメラで撮影するため、観測者が作業者の作業を観測する手間が省ける。
更に、作業分析結果を視覚化するモニタリング端末を備えていることから、観測後に観測用紙に書き込まれたデータに基づいて、統計表又は分析グラフ等を、人的作業又はコンピューターによって作成する手間が省ける。
観測終了後に直ちに統計表又は分析グラフ等をモニタリング端末で視覚化、また撮影したカメラ映像を活用して作業を観測することで、前記の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の作業分析システムの基本構成を示す模式図である。
【図2】本発明の作業分析装置の作用を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のモニタリング端末の出力結果例を示す模式図である。
【図4】アンテナの設置例を示す模式図である。
【図5】本発明のモニタリング端末の無効作業内エリア比率出力結果を示す図である。
【図6】本発明を活用した段取り作業分析の作業フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の作業分析システムの一形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の作業分析システムの基本構成を示す図である。本発明の作業分析システムは、製品の生産に関わる作業者1が持つRFIDタグ2、前記RFIDタグ2に作業者の固有識別コードを登録する登録装置3、前記RFIDタグ2から出される情報信号を受信する情報受信装置4、生産設備8から発信される電気信号を受信する電気信号受信装置9、作業者の作業内容を撮影するカメラ11、前記カメラで撮影された映像を録画、再生するレコーダ12、前記カメラとレコーダを接続するネットワーク機器13、作業者の位置情報、設備の稼動情報、前記作業者と前記RFIDタグの対応付け情報と設備位置情報を蓄えるデータベースA;15、前記データベースA;15から前記対応付け情報、設備位置情報、前記位置情報及び稼動情報を受け取り作業者の作業比率を割り出す分析装置16、前記分析装置で分析したアウトプットを蓄えるデータベースB;17、及び前記データベースB;17で蓄えるアウトプットを視覚化するモニタリング端末18を有してなるものである。
以下、それぞれの構成について順に説明する。
【0012】
RFIDタグ2としては、内部アンテナとICチップがケース内に収納されてなるRFIDタグが使用される。RFIDタグ内部のICチップには、ID用メモリや通信に必要な制御回路等が収められており、ID用メモリには装着される作業者に固有の識別コードが登録装置3によって書き込まれる。作業者固有の識別コードの情報は、データベースA;15に登録される。
使用されるRFIDタグの種類としては、パッシブタグ(受動)、アクティブタブ(能動)、双方を組み合わせたセミアクティブタグ(起動型能動)が挙げられる。通信距離は、タグの種類で異なるが、生産設備、情報受信装置の配置に応じて適したものを、適宜選択して使用すればよい。
使用されるRFIDタグの形状は、特に限定されず、カード型、ラベル型、リストバンド型等の種々の形状のものから作業者に装着するのに適したものを適宜選択して使用すればよい。
【0013】
情報受信装置4は、RFIDタグに対して電源を供給するとともに情報の送受信を行うアンテナ5と通信内容のエンコード・デコードや上位システムとの通信を行う制御部6から構成される。制御部には入出力インターフェイスが備えられており、制御部は、この入出力インターフェイスを介して上位システムA;7と接続されている。使用される情報受信装置4の形状としては、パーソナルコンピュータ併用型、ハンディ型、ゲート型などが挙げられる。
【0014】
上位システムA;7は、情報受信装置で受信した位置情報を処理し、データベースA;15に登録する。使用される上位システムとしては、パーソナルコンピュータが挙げられる。
【0015】
電気信号受信装置9としては、入出力インターフェイスを備えたシーケンサーが挙げられる。シーケンサーの入力部は、生産設備8の設備稼動開始ボタンと接続し、出力部は上位システムB;10と接続されている。設備稼動開始ボタンがONになると出力部から電気信号を出力し、設備開始ボタンがOFFになると出力部から電気信号を出力しないようにプログラムされ制御されている。
【0016】
上位システムB;10は、電気信号受信装置から出力された電気信号をデジタル信号に変換し、データベースA;15に、設備稼働情報を登録する。使用される上位システムとしては、パーソナルコンピュータが挙げられる。
【0017】
カメラ11としては、PoE(Power over Ethernet(登録商標))に対応したネットワークカメラが挙げられる。
【0018】
レコーダ12としては、HDD(Hard Disk Drive)を内蔵したネットワークディスクレコーダが挙げられる。
【0019】
ネットワーク機器13としては、PoEに対応したハブが挙げられる。ハブは、Ethernet(登録商標)ケーブルを通じてカメラ11とレコーダ12に接続されており、カメラ11に電源を供給するのとカメラ11の映像をレコーダ12に送る役割を果たしている。
【0020】
上位システムC;14は、カメラの撮影とレコーダの映像録画、再生を制御している。使用される上位システムとしては、パーソナルコンピュータが挙げられる。
【実施例】
【0021】
本発明の作業分析装置16の作用を、設備が単体の場合を例にし、図2のフローチャート図に基づいて説明する。まず、データベースA;15から作業者固有の識別情報を受け取り、分析対象作業者を決定する。次に作業者の位置情報と設備の位置情報を受け取る。受け取った作業者の位置情報と設備の位置情報を比較し、同じでなかった場合は設備に関わる作業をしていなかったことから作業者の作業を無効作業と判断し、データベースB;17に登録する。同じ場合は設備の稼動情報を受け取り、設備が不稼動の場合は設備を不稼動にさせながら設備に関わる作業をしていたことから段取り作業と判断し、データベースB;17に登録する。設備が稼動の場合は設備を稼動させながら設備に関わる作業をしていたことから作業者の作業を有効作業と判断し、データベースB;17に登録する。
【0022】
モニタリング端末18には、データベースB;17の作業分析結果のデータに基づいて統計表ないしは分析グラフ等を自動的に作成するプログラムが組み込まれている。使用するモニタリング端末としては、パーソナルコンピュータが挙げられる。
【0023】
図3は、モニタリング端末18に表示される分析結果の例である。作業者の有効、段取り、無効作業の作業比率が分析後すぐに視覚化されるようになっている。
【0024】
モニタリング端末18には、無効作業内のエリア比率のグラフを自動的に作成するプログラムが組み込まれている。図4は、アンテナ設置図である。図4のようにアンテナを設置した場合、図5のように無効作業内のエリア比率がモニタリング端末に表示されるようになっている。
【0025】
作業比率を把握した後、段取り作業の中身の詳細を把握したい場合は、カメラ11で撮影された映像を活用して作業分析を行う。図6の作業フローと操作イメージ図に基づいて分析の仕方を説明する。まずモニタリング端末18を通して、データベースB;17から作業者の作業内容の情報を取り出す。データベースB;17には、時刻ごとに作業者の作業内容と作業エリアが記録されている。次に作業内容の段取り作業のみを選択する。再生したい時刻を選択する。データベースB;17の時刻情報はレコーダとリンクされており、選択した時刻の映像がモニタリング端末18に表示される。その映像を活用して段取り作業分析を行う。
【符号の説明】
【0026】
1;作業者、2;RFIDタグ、3;登録装置、4;情報受信装置、5;アンテナ、6;制御部、7;上位システムA、8;生産設備、9;電気信号受信装置、10;上位システムB、11;カメラ、12;レコーダ、13;ネットワーク機器、14;上位システムC、15;データベースA、16;作業分析装置、17;データベースB、18;モニタリング端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の生産に関わる作業者が持つRFID(Radio Frequency Identification;電波による個体識別)タグと、前記RFIDタグに作業者の固有情報を登録する登録装置と、前記RFIDタグから出される情報信号を受信する情報受信装置と、前記情報受信装置の情報を位置情報として処理する上位システムAと、生産設備から発信される電気信号を受信する電気信号受信装置と、前記電気信号受信装置の電気信号を処理する上位システムBと、作業者の作業内容を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した映像を録画再生するレコーダと、前記カメラの撮影と前記レコーダの録画再生を制御する上位システムCと、前記カメラ、レコーダ、上位システムCを接続するネットワーク機器と、前記上位システムAから位置情報を、前記上位システムBから設備の稼動情報を受け取り、且つ前記作業者と前記RFIDタグの対応付け情報と設備位置情報を蓄えるデータベースAと、前記データベースAから前記対応付け情報、前記位置情報及び稼動情報を受け取り作業者の作業分析をする分析装置と、前記分析装置で分析したアウトプットを蓄えるデータベースBと、前記データベースBで蓄えるアウトプットを視覚化するモニタリング端末とを備えることを特徴とする作業分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203770(P2012−203770A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69345(P2011−69345)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】