説明

作業服用織編物

【課題】
吸水性、撥油性、制電性、抗菌性、防しわ性、防汚性の全てを満足する作業服用織編物を提供する。
【解決手段】
セルロース繊維を65〜100重量%含有しかつポリエステル繊維を0〜35重量%含有する作業服用織編物であって、フルオロアルキル系ビニルモノマー(A)とポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー(B1)と非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマー(B2)とからなるアクリレート系共重合体が0.1〜10重量%付着されていること、及び前記アクリレート系共重合体中のモノマーのモル比がA:(B1+B2)=1.0:0.5〜1.0:4.0であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性の高いセルロース繊維を高混率で含有する快適な織編物であって、撥油性と吸水性の両方の性能を持ち、しかも制電性と防汚性に優れた作業服用織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業服に使用される織編物は、その用途から汚れが付着しにくく、洗濯により落ちやすいものが好ましく、洗濯頻度も高いために防しわ性などの取り扱い利便性も必要とされている。さらに、作業環境によっては、防爆性や抗菌性などの機能が要求されるものもある。また、防爆性を要する制電作業服では、制電糸の部分が埃を引きつけ易く、防汚性が強く要望されている。
【0003】
これまで作業服に使用される織編物は、耐久性や防しわ性に優れるポリエステル100%のものや、ポリエステル65%/綿35%等のポリエステル高混率のものが多く使われてきた。しかし、このような織物は、吸湿性や吸水性が少なく、快適性に劣っていたり、疎水性繊維を多く使っているために油性の汚れが取れにくかったり、静電気が起こりやすい問題があった。また、防爆性を要する制電作業服では、導電糸の混率を高くする必要があり、コストが高くなったり、色が付いた導電糸により美観が低下していた。
【0004】
かかる問題に対して、例えば、制電性のポリエステル糸を含み、かつ撥水加工が施された制電撥水布帛(特許文献1参照)や、セルロース系繊維にカチオン系高分子化合物、アニオン系高分子化合物を付与した後にフッ素系撥水撥油加工剤を付与した繊維構造物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの布帛や繊維構造物は、撥水撥油加工を行ったとしても、制電性が低下したり、洗濯で汚れが落ちにくくなる問題があった。
【0005】
ところで、繊維製品の織編物に関する防汚加工には、様々な技術があるが、大別すると汚れを付着し難くする防汚加工と、付着した汚れが洗濯により落ちやすくする防汚加工の二つの方法がある。前者の方法は繊維を撥水性や撥油性にすることで実現でき、後者の方法は繊維を親水性にすることで実現できる。しかし、両者の方法は、全く逆の作用効果であるため、両方の機能を両立することは難しかった。
【0006】
過去この課題に取組んだ技術として、フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤を付与した繊維製品が提案されている(特許文献3、4参照)。しかしながら、この方法は、シャツ用の織物でポリエステルと綿の混率が特定の割合ものでないと効果を発揮することができず、綿高混率の織編物では親水・撥油性のバランスが損なわれて親水撥油性能が低下してしまう問題があった。また、この方法だけでは、作業服用織編物として要望されている、制電性(防爆性)や防塵性、抗菌防臭性等の性能を付与することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−263807号公報
【特許文献2】特開2007−191809号公報
【特許文献3】特開2005−330354号公報
【特許文献4】特開2006―152508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み創案されたものであり、その目的は、セルロース繊維を高混率で含有しながら、優れた防汚性と制電性を両立した作業服用織編物を提供すること、更には、制電性、吸水性を低下させずに抗菌性、防しわ性をも兼ね備えた作業服用織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、吸湿性に優れたセルロース繊維を高混率に用いた織物において特定のアクリレート系共重合体を付着させることにより、セルロースの吸湿性、吸水性を損なわずに撥油性を持たせることができることを見出した。また、本発明者は、あらかじめセルロース繊維に高度なアルカリ処理を行うことにより防汚性が向上して、防しわ性も付与できること、吸水性や撥油性を低下させない特定の金属系抗菌剤を使用することにより、高度な機能性を提供することができることも見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(5)の構成を有するものである。
(1)セルロース繊維を65〜100重量%含有しかつポリエステル繊維を0〜35重量%含有する作業服用織編物であって、フルオロアルキル系ビニルモノマー(A)とポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー(B1)と非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマー(B2)とからなるアクリレート系共重合体が0.1〜10重量%付着されていること、及び前記アクリレート系共重合体中のモノマーのモル比がA:(B1+B2)=1.0:0.5〜1.0:4.0であることを特徴とする作業服用織編物。
(2)導電性繊維が0.2〜3.0重量%含有され、JIS−L1094の摩擦帯電電荷量が7μc/m以下であることを特徴とする(1)に記載の作業服用織編物。
(3)銀、アルミニウム、カリウム、鉄、チタンまたは亜鉛の塩または酸化物からなる金属系抗菌剤が0.0001〜3重量%含有されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の作業服用織編物。
(4)液体アンモニア加工またはシルケット加工が施され、バリウム活性数が130〜190であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の作業服用織編物。
(5)導電性繊維以外の構成繊維が全て綿であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の作業服用織編物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の作業服用織編物は、セルロース繊維を高混率で含有するので、吸湿性が高く、着心地に優れるとともに、特定のアクリレート系共重合体を付着させているので、洗濯により落ちにくい油性の汚れが付着しにくく、また汚れが付着した場合も、親水性に優れることにより汚れが容易に除去可能であり、かつ優れた帯電防止性を備えることができる。また、アルカリ処理や金属系抗菌剤の使用により、前記機能性を損わずに、防しわ性、抗菌防臭性の機能を付与することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の作業服用織編物を詳細に説明する。
【0013】
本発明の織編物は、セルロース繊維を65〜100重量%の高い割合で含有することを特徴とする。セルロース繊維の含有率は、70〜100重量%がより好ましく、80〜100重量%がさらにより好ましく、特に100重量%が好ましい。セルロース繊維は吸水性や吸湿性に優れ、例えば、綿、麻、竹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生繊維、アセテート等の半剛性繊維が使用されるが、風合や耐久性の点から綿が特に好ましい。
【0014】
本発明の織編物は、35重量%以下の含有量であれば、セルロース繊維以外の他の繊維を含有してもよい。他の含有可能な繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アクリレート繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニンレンサルファイド繊維等の合成繊維、羊毛、絹のような天然繊維などが挙げられ、衣料に使用される一般的な繊維はいずれも使用可能である。また、2種類以上の繊維が含有されていてもよい。これらの繊維の中でもポリエステル系繊維が、その強度や耐久性の点から好ましく使用される。
【0015】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステルを挙げることができ、これらの中でも機械的性質、成形性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、これらのポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて他の成分が共重合されていてもよい。共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはペンタエリスリトールなどを挙げることができる。また、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸、グリセリン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどの多価ヒドロキシ化合物、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸なども使用可能である。繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、円形断面の他、扁平断面、三角断面、星型断面であってもよい。
【0016】
本発明でいう織編物とは、織物又は編物からなる布帛を意味する。織物の組織は、平、綾、朱子、およびその変化組織などの従来公知のものを使用することができる。編物は、トリコット地、ラッセル地などの経編地、およびシングル丸編地、ダブル丸編地などの丸編地のいずれであってもよく、特に限定されない。また、編物の組織は、経編地のハーフ組織、メッシュ組織、片面凹凸変化組織、サテン組織など、または、丸編地の天竺組織、インターロック組織および片面凹凸変化組織など、特に限定されない。
【0017】
本発明の織編物を作業服に用いる場合、織物一完全組織の経糸及び/又は緯糸の浮き数の最大値は1本以上5本以下、より好ましくは3本以下とすることが防汚性の耐久性やピリング、スナッグ等の作業着で特に要求される消費性能にとって好ましい。浮き数の最大値が5本を超過すると、汚れ物質が生地組織の間に入り込みやすくなる。また、スナッグピルが生じ易くなる。具体的には2/2綾、2/1綾、3/1綾、平織やその変形組織等が好ましい。編物であればトリコットのハーフ組織等が好ましい。
【0018】
また、使用する糸は紡績糸であってもマルチフィラメントであってもよく、さらにそれらの複合糸であってもよいが、繊度は英式番手換算で10〜80番手のものが好ましい。80番手より大きいと、張りのない薄い織編物となり、また、10番手より小さくなると、地厚な織編物となる傾向がある。作業服として繰り返し着用の耐久性を得るためには、織物では10〜40番手の太番手を使用することが好ましく、編地でも15〜60番手を使用することが好ましい。
【0019】
編物の場合、その密度がウェル方向18〜82ウェル/インチ、コース方向22〜130コース/インチであることが好ましい。編地の密度が上記下限に満たない場合は、生地の破裂強力が低く、目ヨレが発生しやすくなる。また、上記上限を超えると、製編性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の織編物は、作業服に使用されることを意図されている。作業服は、工場、事業所または作業現場で作業するときに用いる衣料であり、例えば事務服、ワーキング作業服、防塵衣、防護衣、防爆作業服(帯電防止服)、防寒服、前掛け等が挙げられる。ここで帯電防止服とは、静電気帯電による災害や障害を防止するための作業服であり、JIS−T8118に説明されているものをいう。
【0021】
本発明の織編物は、フルオロアルキルビニルモノマー(A)とポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー(B1)と非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマー(B2)からなるアクリレート系共重合体が0.1〜10重量%付着されていることを特徴とする。
【0022】
フルオロアルキル系ビニルモノマー(A)は、フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルモノマーを言う。
具体的には、一般式(I):
Rf−XOCOCR=CH (I)
[式中、Rfはフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Xはアルキレン基、下記一般式:
−SO、NR−R
(式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、Rはアルキレン基である)で表される基、又は下記一般式:
−CHCH(OR)CH
(式中、Rは水素原子またはアシル基である)で表される基である]
【0023】
前記Rfのフルオロアルキル基としては、例えば下記一般式:
2y+1
(式中、yは3〜20の整数である)で表される直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又は該基の一部のフッ素原子が水素原子もしくは塩素原子で置換されたフルオロアルキル基が挙げられ、特に代表的なものは、炭素数が3〜20のパーフルオロアルキル基である。このようなRfの具体例としては、例えば、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、(CFCFCF−、(CFCF(CF−、(CFCF(CF−、(CFCF(CF−、(CFCF(CF−、(CFCF(CF−、(CF)CF(CF10−、H(CF10−、CFCl(CF10−などが挙げられる。
【0024】
前記Xのアルキル基としては、例えば炭素数が1〜10の直鎖状又は分岐状のものが挙げられ、具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−メチルプロピレン基などが挙げられる。前記Rのアルキレン基としては、例えば、炭素数が1〜10の直鎖状又は分岐状のものが挙げられ、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
【0025】
前記Rのアルキレン基としては、前記Xとして例示したものと同様のものが挙げられる。前記Rのアシル基としては、例えば炭素数が1〜10のものが挙げられ、具体例として、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基などが挙げられる。
【0026】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFSONCH(CHOCOCH=CH
CF(CFSONCH(CHOCOCCH=CH
(CFCF(CFCHCHOCOCHCHOCOCCH=CH
H(CF10CHOCOCH=CH
CFCl(CF10CHOCOC(CH)=CH
などが挙げられる。これらの化合物は単独でも二種以上の併用でもよい。
【0027】
次に、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー(B1)は、
下記一般式(II):
CH=CRCO−(OR−R (II)
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキレン基、Rはヒドロキシル基又はアルコキシ基であり、nは3〜50の整数である)で表される(メタ)アクリル酸エステル、または、一般式(III):
CH=CRCO−(OR−OCOCR=CH (III)
(式中、Rは水素原子か又はメチル基で、Rはアルキレン基であり、nは3〜50の整数である)で表されるジ(メタ)アクリル酸エステルを言う。
【0028】
一般式(II)及び(III)で表される化合物の具体例としては、例えば
CH=CHCOO(CHCHO)10
CH=CHCOO(CHCHCH
CH=CHCOO(CHCHO)23
CH=CHCOO(CHCH2O)30
CH=CCHCOO(CHCHO)
CH=CCHCOO(CHCHO)23
CH=CCHCOO(CHCHO)40
CH=CHCOO(CHCHO)10OCOCH=CH
CH=CHCOO(CHCHO)23OCOCH=CH
CH=CHCOO(CHCHO)36OCOCH=CH
CH=CCHCOO(CHCHO)10OCOCHC=CH
CH=CCHCOO(CHCHO)23OCOCHC=CH
CH=CCHCOO(CHCH2O)36OCOCHC=CH
などの化合物が挙げられる。これらの化合物は単独でも二種以上の併用でもよい。
【0029】
次に、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマー(B2)は、
一般式(IV):
CH=CRCO−(OR)m−R (IV)
(式中、R、R、Rは前記と同様であり、mは0もしくは1の整数である)で表される(メタ)アクリル酸エステルを言う。
【0030】
一般式(IV)で表されるような化合物の具体例としては、例えば
CH=CHCOOCHCHOH
CH=CCHCOOCHCHOH
CH=CHCONH
CH=CCHCONH
CH=CHCONH・CHOH
CH=CCHCONH・CHOH
CH=CHCOOH
CH=CCHCOOH
などの化合物が挙げられる。これらの化合物は単独でも二種以上の併用でもよい。
【0031】
上述の各モノマーを共重合する方法としては、通常のビニル重合方法が挙げられる。重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド及びその誘導体、アゾビスブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどの有機系重合開始剤が好ましい。これらの重合開始剤と前述のモノマー成分を重合釜に入れ窒素パージにより、酸素を除去した状態で加熱重合することにより、本発明のアクリレート系共重合体を得ることができる。
【0032】
上述のモノマー成分(A)、(B1)、(B2)を共重合する際の(A)、(B1)、(B2)のモノマーのモル比はA:(B1+B2)=1.0:0.5〜1.0:4.0であり、好ましくは1.0:1.0〜1.0:3.5、特に好ましくは1.0:1.5〜1.0:3.5である。また、共重合体中の(B1)と(B2)のモノマーのモル比はB1:B2=1.0:0.5〜1.0:5.0が好ましく、特に1.0:1.0〜1.0:4.0がより好ましい。
【0033】
モノマー成分(A)、(B1)、(B2)の配合割合において、(A)の割合が上記範囲より多くなると撥水・撥油性が良くなるが、吸水性が極端に低下する傾向があり、上記範囲より少なくなると撥油性が著しく低下する傾向がある。また(B1+B2)の割合が上記範囲より多くなると吸水性は向上するが、撥油性が低下する傾向があり、上記範囲より少なくなると撥油性は著しく向上するが、吸水性能が低下する傾向がある。一方、(B2)の割合が多くなりすぎると吸水・撥油性能が共に低下する傾向があり、上記範囲より少なくなると吸水・撥油性能の洗濯耐久性が低下する傾向がある。
【0034】
本発明の織編物は、上記のアクリレート系共重合体が織編物の重量に対して0.1〜10重量%付着されていることが必要である。織編物への付着量は0.5重量%〜8.0重量%が好ましく、1.0重量%〜5.0重量%がさらに好ましい。上記アクリレート系共重合体が上記範囲より少ないと十分な吸水・撥油性能が得られず、上記範囲より多いと風合いを損なうおそれがある。
【0035】
本発明の織編物では、上記のアクリレート系共重合体を染色と同時にまたは染色後に繊維表面に付着するが、その付着方法としては、公知のパッドドライキュア法、パッドスチームキュア法等の連続パディング処理の他、ウインス染色機やビーム染色機等によるバッチ式の吸尽処理を挙げることができる。例えばパディング処理の場合、パッダーマングル等により薬液ピックアップが50〜90%程度の条件で薬液を付与した後、雰囲気温度120〜160℃の拡布型ピンテンター式ドライヤー等を用いて処理することができる。
【0036】
本発明の織編物は、上記のアクリレート系共重合体の存在により、吸水性(JIS−L1907滴下法)60秒以下、撥油性(AATCC TM−188(1997)3級以上を達成することができ、さらには吸水性30秒以下、撥油性5級を達成することができる。吸水性が上記範囲にないと着用快適感を損なうと共に、洗濯時の汚れ落ち性を著しく低下する。また、撥油性が上記範囲にないと、油性汚れが繊維内部に浸透しやすくなる。
【0037】
本発明の織編物は、以下の抗菌剤の付着により、JIS−L1902の黄色ブドウ球菌を使った菌液吸収法における制菌活性値2.2以上を達成することができ、さらには殺菌活性値0以上もしくは菌転写法での菌減少値0.5以上を達成することができる。
【0038】
抗菌剤としては、銀、アルミニウム、カリウム、鉄、チタンまたは亜鉛の塩または酸化物からなる金属系抗菌剤が挙げられ、特に鉄、アルミニウム、カリウムの塩または酸化物であり、かつ触媒機能を有するものが好ましい。本発明の織編物は、これらの金属系抗菌剤によって、吸水撥油性を損なうことなく、抗菌性を付与することができる。このような金属系抗菌剤の例としては、東洋興業製のTC43やニチリンケミカル製のセルフィールが挙げられる。
【0039】
上記の抗菌剤の付着量は0.0001〜3重量%であることが好ましい。付着量が多すぎると吸水撥油性を損ない、少なすぎると抗菌効果が薄れてしまうおそれがある。触媒機能を有する金属系抗菌剤の場合、付着量は極微量でよく、一般的には0.0001〜1重量%でよく、好ましくは0.001〜0.1重量%でよい。
【0040】
本発明の織編物は、以下の液体アンモニア加工またはシルケット加工を施すことにより、バリウム活性数130〜190、さらには140〜180を達成することができる。バリウム活性数はセルロースのマーセライズ効果の指標となる数値であり、測定方法はJIS−L1096に記載されている。バリウム活性数が上記範囲未満の場合、防汚性の向上や防しわ性の十分な効果が得られず、上記範囲を超えると、非常に強いアルカリ処理を行う必要があり、工程が増えたり、処理のコストが高くなるおそれがある。本発明の織編物はこのマーセラズ処理により、防しわ性が得られるだけでなく、防汚性が更に向上する。
【0041】
液体アンモニア加工やシルケット加工は、一般的に用いられている液体アンモニア加工機やシルケット加工機を使えばよい。液体アンモニア加工機は、液体アンモニアに浸漬した後、加熱・スチーミングしてアンモニアを除去しても、水洗等により除去してもよいが、スチーミング処理する方がより好ましく用いられる。シルケット加工機は、丸シルケット加工機や拡布状で加工するオープンシルケット加工機等を用いることができる。また、マーセル化の効果を上げるために液体アンモニア加工とシルケット加工を併用してもよい。その場合、液体アンモニア加工とシルケット加工の順番はどちらを先に行っても良いが、風合の面からシルケット加工してから液体アンモニア加工をする方がよい。シルケット加工のための苛性ソーダの濃度の好適な範囲は10.0〜30.0°Be(ボーメー)であり、より好適な範囲は12〜25°Beである。苛性ソーダ濃度が30°を越えると高い苛性ソーダの濃度の割にシルケット効果の向上が少なく不経済である。また、苛性ソーダ濃度が10°Beより少ないとマーセル化効果が少なく、防汚性や防しわ性が得られにくい。また、苛性ソーダ温度は常温でも、低温(冷シル)でも高温で行ってもよい。温度は低温になるほど、マーセル化効果が高くなるが、風合は硬くなるので所望の品質に合わせて適宜洗濯すればよい。
【0042】
本発明の織編物においてセルロース繊維以外の繊維を含む場合、バリウム活性数はセルロース繊維が含有された部分についての数値を指すことに注意することが必要である。例えばポリエステル20重量%、綿80重量%の織物の場合で、織物全体の実測バリウム活性数が120であるとき、この織物のセルロース繊維のバリウム活性数は120×100/80=150となる。
【0043】
本発明の織編物は、0.5〜2.0重量%の少ない量の導電性繊維の含有により、JIS−L1094の摩擦帯電電荷量7μc/m以下を達成することができる。導電性繊維としては、導電性物質を練り込んだ導電性合成繊維や、カーボン繊維、金属繊維等、導電性を有する繊維状のものを使用することができる。本発明では、導電性物質を練り込んだ導電性合成繊維の長繊維が好ましい。
【0044】
導電性合成繊維の導電性物質としては、カーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子を使用することができる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられ、これらの中で10〜500ミリミクロンの平均粒子径を持つものが熱可塑性重合体組成物への分散を良くし、目的とする製品に良好な制電性能を得やすい。また、酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子としては、酸化チタン微粒子を錫塩の溶液、例えば塩化錫水溶液中に浸漬して微粒子の表面を錫塩でコーティングした後、か焼して表面の錫塩を酸化第二錫にすることによって得られるものが挙げられ、この際に用いられる錫塩は、第一錫塩、第二錫塩のいずれでもよい。コーティング量としては、酸化チタンに対して酸化第二錫を10〜50重量%とすることが好ましい。酸化チタン微粒子においても、熱可塑性重合体組成物への分散性と目的とする制電性能から10〜500ミリミクロンの平均粒子径を持つものが好ましい。
【0045】
カーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子を分散せしめる熱可塑性重合体組成物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−P−エチレンオキシベンゾエート等のポリエステル、ポリエチレングリコール系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマー等のポリアルキレングリコール系ポリマーなどで代表される溶融成形可能な合成重合体が挙げられる。これらの熱可塑性重合体組成物に対するカーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子の配合量は、要求される性能や使用用途等によって適宜調節されるが、良好な製糸性と制電性能を得るためには、熱可塑性重合体組成物に対して3〜30重量%とすることが好ましい。
【0046】
また、カーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子の熱可塑性重合体組成物への配合は、紡糸以前の任意の段階でなされることができるが、配合時には、該微粒子の分散をできるだけ均一にするため溶融状態で攪拌混合することが好ましく、該微粒子を大量に含むマスターポリマーを作り、これを他の熱可塑性重合体組成物にブレンドして混合することも可能である。
【0047】
導電性合成繊維は、カーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子を分散せしめた熱可塑性重合体組成物を10〜70重量%含み、溶融紡糸で繊維形成性良好なポリマーからなる合成繊維であることが好ましく、繊維形成性良好なポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−P−エチレンオキシベンゾエート等で代表されるポリエステル類、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610等で代表されるポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン等で代表されるポリオレフィン類等が挙げられる。導電性合成繊維の性能としては、電気抵抗値が10〜10Ω/cmであることが好ましい。この導電性合成繊維は、芯鞘や海島状の複合繊維として、その芯成分や島成分の熱可塑性重合体組成物にカーボンブラックもしくは酸化第二錫で表面をコーティングした酸化チタン微粒子を配合してもよい。なお、本発明で使用される導電性合成繊維は、電気抵抗値が10〜10Ω/cmであることが好ましい。
【0048】
なお、一般的に用いられるポリエステル織物の場合、防爆性を得るために導電性繊維を高密度に配置することが必要であり、経糸と緯糸の両方に5〜10mm程度の間隔で配置しないと十分な性能が得られなかった。しかし、本発明の織編物は、導電性繊維を使わなくても良好な制電性があるため、十分な防爆性を得るために必要な導電性繊維は従来に比べて少なくて済む利点がある。
【0049】
導電性繊維を織物に配列する場合、経糸または緯糸のみにストライプ状に配列するときは5〜30mmの間隔で規則的に配置されていることが好ましい。経糸と緯糸の両方に格子状に配列する場合は10〜30mmの間隔で配列することが好ましい。一般のポリエステルマルチフィラメントに比べて、導電性合成繊維フィラメントは強度的に弱いため、必要以上に用いると引裂強度など織物の力学的性能が低下する他、価格が割高であり製品コストが高くなる。従って、ストライプ5mm未満、格子10mm未満に配列する必要がない。また、30mmを超過する間隔では、防爆性に要求される除電効果が安定的に得られにくい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明の織編物の効果を示す。実施例中の特性値は下記評価方法に従った。
【0051】
<吸水性>
JIS−L1907の滴下法に準拠して評価した。
【0052】
<撥油性>
AATCC TM−188(1997)に準拠して評価した。
【0053】
<摩擦帯電電荷量>
JIS−L1094 5.3の摩擦帯電電荷量測定法に準拠して評価した。
【0054】
<静菌活性値>
JIS−L1902の黄色ぶどう球菌を使用した菌液吸収法に準拠して静菌活性値(抗菌性)を評価した。
【0055】
<洗濯後のしわ>
AATCC 124−1984の5段階レプリカ法に基づいて判定を行った。洗濯機はパナソニック製の2槽式洗濯機NA−W40G2を用いて、JIS−L0217 103法に従って洗濯して、吊り干し乾燥とした。判定は5段階で5級(良好)〜1級(不良)とした。評価結果はn=3回の評価の平均値とした。
【0056】
<防汚性>
防汚性は、汚れ物質とともに生地を洗濯したときに、生地がどれだけ汚れたかを判定する。具体的には、AATCC Test Method 61−1996を基にして下記のように行った。
試料から10cm×5cmの試験片を2枚採取する。Launder Ometerに付属する標準瓶(canister)1個に対して下記処方の汚染液100ccを入れて、40℃×10分間42rpmで攪拌し、汚染液の温度を安定させる。その後、標準瓶1個に対して上記試験片2枚とステンレス球10個を入れて42rpmで40℃×30分間処理する。汚染液を捨て、浴比1:100の割合で常温水を入れて2回(1分+2分)水洗いして、濾紙で脱水後風乾する。そして、JIS−L0805汚染用グレースケールを用いて汚れ具合を級判定する。
汚染母液の処方と汚染液
下記処方の汚染母液を作成して、それをイオン交換水で100倍に希釈したものを汚染液とした。
カーボンブラック(三菱チャンネルブラック♯100) 1重量部
牛脂硬化脂肪酸(mp.51℃ 日本油脂製) 15重量部
石鹸(JIS−K3302のU) 10重量部
水(常温のイオン交換水) 74重量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100重量部
但し、母液を作成する際、温浴中で85℃に暖めながら、しっかり攪拌して、牛脂、石鹸、カーボンブラックを完全に溶かした後、攪拌しながら30℃になるまで冷却する。
【0057】
(織物試料の調製)
撚係数(K)3.7(撚数23.4T/inch)40′sのアメリカ産スーピマ綿100重量%紡績糸をリング式の撚糸機を用いて英式番手で40番双糸(40/2)を作成した。そのときの双糸撚数は16.5T/inchであった。また、前記双糸を作る時に、クラレ社製ポリエステル導電糸(クラカーボ(R))28デシテックス2フィラメントを合撚することで導電糸入り紡績糸を作成した。
【0058】
前記40/2の綿紡績糸と導電糸入り紡績糸を、一本糊付機(柿木製作所製)にて糊付けして、NAS整経機(スズキワーパー社製)を用いて整経した。この時、前記導電糸入り紡績糸を、経糸24.5本に1本の割合で配列した。前記40/2の紡績糸を緯糸に用いてエアージェットルーム(豊田自動織機社製)にて経糸密度124本/インチ緯糸密度61本/インチの2/2ツイルの織物を製織した。この生機の導電糸入り紡績糸の配列間隔は約5mmであった。この生機を通常の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行い、引続き精練・漂白処理(塩素系)を行った。次にクリップテンター方式の連続シルケット機にてマーセライズ処理(苛性ソーダ25°Be、常温処理)を行った。更にパッダーで水に濡らした後、マングルで絞り、ピンテンターにて120℃で幅出し乾燥したものを試料1とした。
【0059】
アメリカ産スーピマ綿を70重量%、東洋紡績製ポリエステル短繊維(1.3dtex、繊維長38mm、丸断面、セミダル)30重量%を混綿混紡した以外は試料1と同様に作った綿70重量%ポリエステル30重量%の40番手双糸を経及び緯糸に用いた以外は、試料1と同じ生機を作り、試料2とした。
【0060】
アメリカ産スーピマ綿を35重量%、東洋紡績製ポリエステル短繊維(1.3dtex、繊維長38mm、丸断面、セミダル)65重量%を混綿混紡した以外は試料1と同様に作った綿35重量%ポリエステル65重量%の40番手双糸を経及び緯糸に用いた以外は、試料1と同じ生機を作り、試料3とした。なお、試料3では、試料1の織物の経糸に導電糸入り紡績糸を用いず、経緯共に綿100%の40番手双糸を100%使って製織した。
【0061】
(アクリレート系共重合体の調製)
(A)2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、(B1)メトキシポリエチレングリコール(PEG400)アクリレート、(B2)2−ヒドロキシエチルアクリレートの各モノマーを下記モル比で共重合反応させ、親水撥油剤1〜4を調製した。
A:B1:B2=1.00:0.75:1.75(親水撥油剤1)
A:B1:B2=1.0:1.0:2.0(親水撥油剤2)
A:B1:B2=1.0:0.5:1.5(親水撥油剤3)
A:B1:B2=1.0:3.0:4.0(親水撥油剤4)
変性エタノール溶媒として、攪拌しながら温度を60℃に設定した後、アゾビス2、4−ジメチルバレロニトリル2.0gを入れ、70〜75℃で7時間重合反応を行い、冷却後イオン交換水を580g加えて、共重合体を22重量%含有する水溶液1000gを得た。
【0062】
(実施例1)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液1に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は2.2重量%であった。
〈処理液1〉
親水撥油剤1の水溶液 10.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0063】
(実施例2)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液2に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は2.2重量%であった。
〈処理液2〉
親水撥油剤2の水溶液 10.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0064】
(実施例3)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液3に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は2.2重量%であった。
〈処理液3〉
親水撥油剤3の水溶液 10.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0065】
(実施例4)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液4に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は1.1重量%であった。
〈処理液4〉
親水撥油剤1の水溶液 5.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0066】
(実施例5)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液5に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は3.3重量%であった。
〈処理液5〉
親水撥油剤1の水溶液 15.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0067】
(実施例6)
試料2に対して実施例1と同様の処理を行った。
【0068】
(比較例1)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液6に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。アクリレート系共重合体の付着量は2.2重量%であった。
〈処理液6〉
親水撥油剤4の水溶液 10.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0069】
(比較例2)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液7に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。
〈処理液7〉
ポリエステル系親水加工剤(高松油脂(株)製SR1000) 2.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(一方社油脂(株)製ESN741) 1.0重量%
親水性シリコーン系柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0070】
(比較例3)
試料1を液体アンモニア処理した後、下記の配合の処理液8に浸漬し、ピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で1分間の乾燥の後、更に150℃で2.5分間キュアした。
〈処理液8〉
フッ素系撥水撥油剤(明成化学(株)製AG7600) 5.0重量%
イソシアネート系架橋剤(明成化学(株)製MF) 1.0重量%
鉄、アルミニウム、及びカリウムの全てを含む触媒機能を有する
金属組成物(東洋興業(株)製TC−42) 0.5重量%
ポリエチレン系柔軟剤(日華化学(株)製PE713) 2.0重量%
親水性シリコーン柔軟剤(第一工業製薬(株)製S1515) 0.5重量%
【0071】
(比較例4)
試料3に対して実施例1と同様の処理を行った。
【0072】
上記の実施例1〜6と比較例1〜4で得られた試料に対する評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、本発明の織編物の範囲にある実施例1〜6は、作業服として必要な特性(吸水性、撥油性、制電性、抗菌性、防しわ性、防汚性)の全ての点で優れているのに対し、本発明のアクリレート系共重合体とはモノマー割合が異なる比較例1、本発明のアクリレート系共重合体とは異なるものを使用した比較例2,3、及び綿の含有率が低い比較例4は、実施例1〜6に比べて複数の特性で劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の織編物は、吸水性、撥油性、制電性、抗菌性、防しわ性、防汚性の全てを満足しているので、作業服に使用するのに極めて好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を65〜100重量%含有しかつポリエステル繊維を0〜35重量%含有する作業服用織編物であって、フルオロアルキル系ビニルモノマー(A)とポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー(B1)と非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマー(B2)とからなるアクリレート系共重合体が0.1〜10重量%付着されていること、及び前記アクリレート系共重合体中のモノマーのモル比がA:(B1+B2)=1.0:0.5〜1.0:4.0であることを特徴とする作業服用織編物。
【請求項2】
導電性繊維が0.2〜3.0重量%含有され、JIS−L1094の摩擦帯電電荷量が7μc/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の作業服用織編物。
【請求項3】
銀、アルミニウム、カリウム、鉄、チタンまたは亜鉛の塩または酸化物からなる金属系抗菌剤が0.0001〜3重量%含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業服用織編物。
【請求項4】
液体アンモニア加工またはシルケット加工が施され、バリウム活性数が130〜190であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業服用織編物。
【請求項5】
導電性繊維以外の構成繊維が全て綿であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業服用織編物。

【公開番号】特開2012−12718(P2012−12718A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149102(P2010−149102)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(508179545)東洋紡スペシャルティズトレーディング株式会社 (51)
【Fターム(参考)】