説明

作業機のドア開閉機構

【課題】容易且つスムーズにドアの開閉操作ができると共にガイドレールが運転室の外側に突出しない。
【解決手段】ホイールローダ1のリンク式ドア開閉機構17は、運転室10に設けた出入口12の上側及び下側にガイド溝15,16のガイドレールを設ける。ドア13の前端上下にローラ26,34を備えたガイドローラ部27,35を設ける。ローラをガイドレールに沿って移動させる。運転室の出入口12に隣接する外壁11に連結軸37aを取り付けると共に他端の可動軸37bをドア13の後端に取り付けたリンク37を備える。リンク37はドア13の閉鎖位置と開放位置とで連結軸37aを中心にして可動軸37bが反対側に位置するように回動可能とした。ドア13の開放時に、ドア前端ではローラがガイドレールに沿ってスライドし、ドア後端ではリンク37の連結軸37aを中心に可動軸37bでドア13の後部を回動させて開放位置にドアを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械を含む各種作業機の運転室等に設けたドア開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば油圧ショベルやホイールローダ等に設けた運転室の出入口のドアは運転室の外壁とヒンジで連結され、ヒンジを中心に回動して開閉するものが一般的である。また、小型の油圧ショベルでは上部旋回体の旋回半径が小さいことを特徴とするものがあり、このような小型油圧ショベルではドアが運転室の外壁に設けられたレール上を滑動して出入口を開閉作動させるスライドドアもある。
【0003】
このような建設機械の一例である図9に示すホイールローダ1では、車両本体にタイヤを設けており、ホイールローダ本体2に設けた運転室3は比較的高所にある。運転室3にはオペレータが出入りするドア4が設けられており、オペレータが運転室3に出入りするためには前後車輪5,6の間に設けられたハシゴまたはステップ7を昇り降りして、運転室3のドア4を開閉することになる。また、運転室3の横には運転室3の床と同一高さの通路上のスペース8が外側に張り出しており、車両をメンテナンスする際、容易に作業を行えるようになっている。
ホイールローダ1の運転室3に設けられたドア4は運転室3の出入口の外側に設けた通路上のスペース8よりも幅広に形成されているため、スペース8に立ったままではドア4をスムーズに開けることができない。そのため、ホイールローダ1では、ステップ7上の運転室3より低い位置に立ってドア4を開閉する必要があり、ドアノブやロック解除レバーもステップ7上の位置で操作し易い箇所に設けられている。
【0004】
また、例えば特許文献1に記載された作業車用キャビンのドア構造では、スライド式のドアが採用されている。このスライドドアは、ドアをスライド移動可能に支持するガイドレールを出入口後端側の運転室外壁に設けている。そして、スライドドアの幅が運転室の出入口後端側の外壁の幅より大きいため、ガイドレールは外壁よりも後方外側に飛び出すように延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−62576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したホイールローダ1は、ハシゴやステップ7上でドア4を開閉操作するためには、片手で手すりやホイールローダ本体2をつかんで体を支えながら他方の片手でドア4の開閉操作をしなければならず、かつヒンジを中心に回動するドア4を避ける動作が必要であり、ハシゴやステップ7上での作業は繁雑であった。
また、特許文献1に記載されたドア構造では、スライドさせて開放させたスライドドアの後端を運転室外壁の後方外側に突出するガイドレールに沿って摺動するため、スライドドアの後端をガイドレールで支えなければならない。そのため、外壁から突出したガイドレールの領域にスライドドアの荷重がかかってしまう。しかも、ガイドレールの後端が運転室の外壁から突出する構成は見栄えが悪い上に、メンテナンス作業を行い難いという不具合があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、容易且つスムーズにドアの開閉操作ができると共にガイドレールが運転室の外側に突出しないようにした作業機のドア開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による作業機のドア開閉機構は、運転室に設けた出入口の上側及び下側の少なくともいずれかに位置するガイドレールに沿ってスライドさせてドアを開閉させる支持構造を備えた作業機のドア開閉機構において、
運転室の出入口に隣接する外壁に一端の連結軸を取り付けると共に他端の可動軸をドアに取り付けた接続部材を備え、接続部材はドアの閉鎖位置と開放位置とで連結軸を中心にして可動軸が反対側に位置するように回動可能としたことを特徴とする。
本発明による作業機のドア開閉機構によれば、ドアを開閉作動する際、ドアをガイドレールに沿ってスライドさせながら、ドアと運転室の外壁とを連結する接続部材を連結軸回りに回動させることで出入口からドアを開放位置に移動させることができ、また、開放位置にあるドアを、接続部材を連結軸回りに回動させながらガイドレールに沿ってスライドさせることで出入口を閉鎖させることができる。そのため、作業者がドアを作動させる出入口付近の領域ではドアをガイドレールに沿ってスライドさせながら、作業者の位置から離れた外壁の領域では接続部材による回動を行うことができるから、容易且つスムーズにドアの開閉作動を行え、ガイドレールが運転室の外壁から突出する構成を採用しなくてもよい。しかも、接続部材回動時の径方向突出長さをドア幅の半分以下に設定できて占有スペースが小さくて済む。
なお、ドアは前端側をスライド移動させ、後端側を接続部材で回動させることが好ましい。
【0009】
また、運転室の外壁には接続部材を収容可能な凹部が形成されていることが好ましい。
ドアの閉鎖状態で、接続部材を外壁の凹部に収容させておくことで、運転室のドアと外壁の領域で不要な出っ張りを抑制できて接続部材の可動範囲を広げると共に、ドアを開放するためにスライド作動させる際に接続部材に連結軸回りの回動方向の荷重を付与できる。
【0010】
また、接続部材の連結軸は、ドアの閉鎖位置における可動軸と開放位置における可動軸との中間位置で外壁に取り付けられていることが好ましい。
ドアを開閉作動させて接続部材を連結軸回りに回動させる際、接続部材はドアの開閉移動範囲の略半分以下の長さで済むから回動時のドアの突出量が小さくて済む。そのため、作業者が容易且つスムーズにドアを開閉作動させることができる。
【0011】
接続部材はリンク部材であることを特徴とする。
この場合には、開閉するドアをリンク部材の長さによる回転半径で略2倍の長さ分移動して開閉作動できる。
【0012】
また、接続部材は、シリンダ部とシリンダ部から進退可能なロッド部とを備えたスライドロッドであり、ドアの閉鎖位置と開放位置の少なくとも一方でシリンダ部からロッド部が突出して伸張していることを特徴とする。
この場合には、スライドロッドがロッド部をシリンダ部から進退可能に制御できるから、ドアの開閉作動によるスライドロッドの伸縮変化によってシリンダ部の略3〜4倍の長さ分ドアを移動して開閉作動できると共に、開閉するドアを収縮したシリンダ部の長さによる回転半径で径方向に突出するにすぎないから、ドア開閉時の占有スペースが小さく容易に開閉作業を行える。
スライドロッドは、連結軸からドアの閉鎖位置における可動軸までの距離が開放位置における可動軸までの距離の約2倍に設定されているから、ドアを閉鎖位置から開放位置に作動させる場合に、スライドロッドを約1/2に収縮できて占有スペースが小さくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による作業機のドア開閉機構によれば、ドアを開閉作動する際、ドアをガイドレールに沿ってスライドさせながらドアと運転室の外壁とを連結する接続部材を連結軸回りに回動させることで、ドアを開閉移動させることができる。そのため、作業者がドアを開閉作動させる出入口の領域ではドアをガイドレールに沿ってスライドさせるから容易且つスムーズにドアの開閉作動を行え、出入口から離れた外壁の領域では接続部材の長さによる回転半径でドアの回動を行うから、径方向の突出長さはドアの幅の1/2以下に低減できてドア開閉時の占有スペースが小さく容易に作業できる。そのため、従来のドア開閉機構のようにガイドレールを運転室の外壁から突出する位置まで延ばす必要がなく、見栄えが良い上にメンテナンス作業を行い易い。
【0014】
また、本発明は、運転室の外壁に接続部材を収容可能な凹部が形成されているから、運転室のドアと外壁の領域で不要な出っ張りを抑制できて接続部材の可動範囲を広げると共に、ドアを開放するためにスライド作動させる際に接続部材に連結軸回りの回動方向の荷重を付与できる。
【0015】
また、本発明では、接続部材の連結軸は、ドアの閉鎖位置における可動軸と開放位置における可動軸との中間位置で外壁に取り付けられているから、ドアを開閉作動させて接続部材を連結軸回りに回動させる際、接続部材はドアの開閉移動範囲の略半分以下の長さで済むから回動時のドアの突出量が小さくて済む。そのため、ドア開閉時の専有スペースが小さくて済むと共に作業者が容易且つスムーズにドアを開閉作動させることができる。
【0016】
また、接続部材はリンク部材であるから、開閉するドアをリンク部材の長さによる回転半径で略2倍の長さ分移動して開閉作動できる。
また、接続部材は、シリンダ部とシリンダ部から進退可能なロッド部とを備えたスライドロッドであり、ドアの閉鎖位置と開放位置の少なくとも一方でシリンダ部からロッド部が突出して伸張している構成であるから、スライドロッドがロッド部をシリンダ部から進退可能に制御でき、ドアの開閉作動によるスライドロッドの伸縮変化によってシリンダ部の略3〜4倍の長さ分ドアを移動して開閉作動できると共に、開閉するドアを収縮したシリンダ部の長さによる回転半径で径方向に突出するにすぎないから、ドア開閉時における占有スペースが小さくスムーズな開閉ができる。
【0017】
また、スライドロッドは、連結軸からドアの閉鎖位置における可動軸までの距離が開放位置における可動軸までの距離の約2倍に設定されているため、ドア開閉時にスライドロッドを伸縮でき、ドア開放時のスライドロックを収縮して占有スペースが小さくて済み、従来技術のように開放時にガイドレールが運転室の外側に突出することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態による建設機械の運転室とドア開閉機構を示す要部構成図である。
【図2】(a)、(b)は図1に示すドア開閉機構によるドアの開閉作動を示す平面図である。
【図3】ドア上端に設けたガイドローラ部と上部ガイドレールとを示す要部分解斜視図である。
【図4】図3に示すガイドローラ部と上部ガイドレールとの関係を示すA−A線要部縦断面図である。
【図5】ドア下端に設けたガイドローラ部と下部ガイドレールとを示す要部分解斜視図である。
【図6】図5に示すガイドローラ部と下部ガイドレールとの関係を示すB−B線要部縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態による建設機械の運転室とドア開閉機構を示す要部構成図である。
【図8】図7に示すドア開閉機構によるドアの開閉作動を示す平面図である。
【図9】一般的なホイールローダの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による建設機械におけるドア開閉機構について説明する。建設機械として、例えば図9に示すホイールローダを用いるものとし、上述した従来技術と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
図1乃至図6は本発明の第一実施形態によるホイールローダ1における運転室を示すものである。
本実施形態による建設機械の一例であるホイールローダ1は、図1に示すように前後車輪5,6の中間上部に運転室10が設けられている。運転室10の一方の側面には運転席に出入りするための出入口12を開閉するドア13と外壁11が設けられている。なお、ドア13の前端側の下部に取っ手14が設けられているが、高さ方向中間部に取っ手14を設けてもよい。
なお、本明細書では、図1に示す運転室10において、ドア13を閉鎖する方向の後端側(図中右側)を後端または後部といい、閉鎖する方向の前端側(図中左側)を前端または前部という。
【0020】
図1に示す運転室10において、出入口12の上下端部にはドア13を水平移動可能に支持するリンク式またはレール式のガイド機構15、16が設けられ、またドア13の開閉機構としてリンク式のドア開閉機構17が設けられている。
次に、ガイド機構15,16について図3乃至6により説明する。
図3及び図4に示す上部ガイド機構15において、運転室10の出入口12の上部には外壁11の裏面側にガイド溝19がドア13の開閉方向に延在して形成されている。ガイド溝19は出入口12の前端から後端まで延びて更に外壁11を一部切除して後端方向に延びている。
図4に示すガイド溝19の断面図において、ガイド溝19は側面に開口が形成された凹溝形状とされ、ガイド溝19の上端から下方に向けて外壁11の延長上に延びるガイド壁20が設けられ、ガイド壁20によってガイド溝19の開口を狭めた下部の開口21が設けられている。開口21は運転室10の外壁11の領域で下端が外壁11で仕切られているが、出入口12の領域では開口21の下端は仕切られていない。
また、ガイド壁20のガイド溝19側の裏面にガイドレール22が設けられている。
【0021】
そして、ドア13の上部前端には、ガイド溝19に対向する裏面にアーム部25が形成され、アーム部25の先端には例えば上向きのローラ26が回転可能に取り付けられている。これらアーム部25とローラ26はガイドローラ部27を構成する。ローラ26は開口21を通してガイド溝19内に挿入され、ドア13を水平方向に開閉作動させる際に、ローラ26の周面をガイド壁20のガイドレール22に当接させながら水平移動させる。
【0022】
また、図5及び図6に示す下部ガイド機構16は上部ガイド機構15と概略同一の構成を備えている。即ち、図5,図6において、運転室10の出入口12の下部には外壁11の裏面側にガイド溝28がドア13の開閉方向に延在して形成されている。ガイド溝28は出入口12の前端から後端まで延びて更に外壁11を一部切除して後端方向に延びている。
図6に示すガイド溝28の断面図において、ガイド溝28は側面に開口が形成された凹溝形状とされ、ガイド溝28の上端から下方に向けて外壁11の延長上に延びるガイド壁29が設けられ、ガイド壁29によってガイド溝28の開口を狭めた下部の開口30が設けられている。開口30は、ガイド溝28の延在方向に沿ってガイド溝28と同一長さに亘って設けられている。
また、ガイド壁29のガイド溝28側の裏面にガイドレール31が設けられている。
なお、ガイド溝19,28に設けたガイドレール22,31は、前端側の領域で運転室10内に食い込むように湾曲した先端部を有しているものとする。
【0023】
そして、図5に示すように、ドア13の下部前端には、ガイド溝28に対向する裏面にアーム部33が形成され、アーム部33の先端には例えば上向きのローラ34が回転可能に取り付けられている。これらアーム部33とローラ34はガイドローラ部35を構成する。ローラ34は開口30を通してガイド溝28内に挿入され、ドア13を水平方向に開閉作動させる際に、ローラ34の周面をガイド壁29のガイドレール31に当接させながら水平移動させる。
【0024】
次に、リンク式ドア開閉機構17について図1及び図2により説明する。
開放時にドア13がスライド移動して重ねられる外壁11において、高さ方向中央部には、略棒状のリンク37の長手方向一端部は連結軸37aとして外壁11に回転可能に固定されている。リンク37の他端部は可動軸37bとしてドア13の外壁11側を向く裏面の後部における高さ方向中央部に回転可能に連結されている。
リンク37における連結軸37aと可動軸37bの回動構造は任意であるが、例えば外壁11やドア13裏面にその上下面で連結された支軸38、38の外周に円筒軸39、39が回転可能に配設された二重軸とされている。そして、各円筒軸39、39にはリンク37の連結ロッド40が連結されている。
【0025】
そして、図2(a)及び(b)に示すように、ドア13で出入口12を閉鎖した状態におけるリンク37の可動軸37bの位置とドア13を開放して外壁11に重ねた状態における可動軸37bの位置とを結ぶ直線の中間位置に連結軸37aが外壁11に固定されている。ドア13の開閉時における可動軸37bの位置同士を結ぶ線がリンク37の略2倍の長さになっており、リンク37は連結軸37aを中心に略180°往復回転可能とされている。
また、ドア13の閉鎖位置におけるドア13の裏面側に取り付けられた可動軸37b、連結ロッド40、外壁11に支持された連結軸37a、そしてドア13の開放位置における連結軸37a及び連結ロッド40の各一部が収まるための凹部42が外壁11に形成されている。これにより、リンク37の可動範囲を広げることができる。
【0026】
本実施形態によるホイールローダ1のリンク式のドア開閉機構17は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
オペレータがホイールローダ1を運転するために閉鎖状態にある運転室10のドア13を開放する場合、ステップ7を昇って運転室10の出入口12のドア13の前におけるスペース8に立つ。そして、取っ手14を把持してドア13を図1で右方向にスライド移動させる。
すると、図2に示すように、ドア13は出入口12の閉鎖位置からドア13の前側上下端部に設けたガイドローラ部27、35におけるローラ26、34が、出入口12の上下部に設けたガイド溝19,28内のガイドレール22、31に沿って摺動して開放移動を行う。
【0027】
ドア13が押されることで、図2(a)に示すように、ドア13の後端がリンク37の可動軸37bに連結されているため、外壁11に対して傾斜した凹部42に配設されたリンク37が連結軸37aを中心として起きあがる。すると、ドア13の前端は上下に設けたガイドローラ部27,35のローラ26,34がガイドレール22、31に沿って略直線移動すると共に、ドア13の後端が連結軸37aを中心としてリンク37の長さを半径として回転運動する。
そして、ドア13の後端はリンク37によって連結軸37aを中心に略180度回転して出入口12とは反対側の位置に可動軸37bが回転して凹部42に停止する(図2(b)参照)。この状態で、開放されたドア13はリンク37に重ねられている。
【0028】
そのため、オペレータが出入口12の前のスペーサ8に立ってドア13の開放動作を行っても、オペレータが立つドア13の前端側ではドア13がスライド移動するため、ドア開閉時の占有スペースが小さくて済み、ドア13に接触したり衝突したりせず容易且つスムーズにドア13の開放作動が行える。
しかも、リンク37の長さはドア13の幅の略1/2であるから、リンク37でドア13の後端を回動させる際、連結軸37aを中心としたリンク37の回転半径はドア13の幅の略1/2の長さにすぎない。
【0029】
次に、ドア13を開放状態から閉鎖作動する場合には、上述の開放作動とは逆に、開放状態にあるドア13の取っ手14を前端側に押すことで、ドア13は前端上下のローラ26,34がガイドレール22,31に沿って略直線的にスライド移動すると共に、ドア13の後端はリンク17の連結軸37aを中心にした略180度の回転運動をする。
これにより、ドア13は出入口12を閉鎖させた位置に戻る。その際、ドア13の前端側はローラ22、34がガイドレール22,31に沿ってスライド移動するから、オペレータ等の作業者がステージ8上に立っていても開閉移動するドア13に干渉するおそれはない。
【0030】
上述のように、本実施形態によるリンク式開閉機構17によれば、ドア13を押してリンク37を略180度回転させることで、ドア13を開放位置と閉鎖位置とに移動できる。
また、作業者がドア13の開閉操作を行う場合、ドア13の前端側はガイドレール22,31に沿ってスライド移動するから、出入口12のスペース8に立つ作業者に干渉のおそれがなくドア13の開閉操作を行える。
また、ドア13の開閉作動に際し、ドア13の後端部分が最大でリンク37の長さ分だけ、即ちドア13の幅の略1/2の長さだけ外壁11から外側に突出して回転運動するにすぎない。しかも、ドア13を開閉作動する際、ドア13が外壁11から最も突出する時にドア13は半分ほど開いており、作業者が出入口12の前のスペース8に立っていても開閉作業がスムーズである。そのため、ステップ7上でドア13の開閉操作を行う必要が無く、容易且つスムーズにドア13の開閉操作を行える。
また、ガイドレールが外壁11から後端側へ突出しないので、見栄えがよくメンテナンス作業の邪魔にならない。
【0031】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を変更しない限り種々の変更が可能である。
次に本発明の第二実施形態によるドア開閉機構について図7及び図8により説明する。
本第二実施形態では、第一実施形態によるリンク式ドア開閉機構17に代えてスライドロッド式ドア開閉機構45を採用した点で相違する。従って、本第二実施形態では第一実施形態との相違点についてのみ説明し、その余の構成は第一実施形態と同一の符号を用いて説明を省略する。
【0032】
本第二実施形態によるスライドロッド式ドア開閉機構45では、第一実施形態における外壁11とドア13の後端を連結するリンク37に代えてスライドロッド46を用いている。
図7及び図8において、スライドロッド46は有底筒状のシリンダ47とシリンダ47の内部に進退可能に設けられたロッド48とで構成され、ねじり剛性を有している。そして、ロッド48は例えば図示しないコイルバネなどの弾性体でシリンダ47内へ収納する方向に付勢されていてもよい。
そして、シリンダ47の底部には第一実施形態による連結軸37aと同様な構成の連結軸47aが運転室10の外壁11に固定され、ロッド48の先端には同じく可動軸37bと同様な可動軸48aがドア13の略後端に固定されている。そのため、スライドロッド46はロッド48をシリンダ47から突出させた伸張状態で、出入口12の後方の外壁11の幅より短く設定されている。
【0033】
そして、図8に示すように、ドア13の閉鎖状態におけるスライドロッド46の可動軸48aとドア13の開放位置における可動軸48aとを結ぶ直線の中間位置に、連結軸47aが外壁11に固定されている。ドア13の閉鎖時における可動軸48aと連結軸47aとの距離をLaとし、ドア13の開放時における可動軸48aと連結軸47aとの距離をLbとした場合、La:Lb=略2:1に設定されている。
即ち、ドア13の閉鎖時においては、外壁11に連結軸47aが固定されたシリンダ47からロッド48が突出して先端の可動軸48aにドア13の後端が連結されている。また、ドア13の開放時においては、ドア13の閉鎖時から連結軸47aを中心に略180度回転した位置で、スライドロッド46のシリンダ47内に収容されたロッド48の先端の可動軸48aにドア13の後端が連結されている。
そのため、スライドロッド46は、ドア13の閉鎖位置ではロッド48はシリンダ47から突出した最も伸張した長さとなり、ドア13の開放位置と回転途中の径方向に最も突出した位置ではロッド48がシリンダ47内に収容された最も収縮した長さとなる。
【0034】
また、ドア13の閉鎖位置におけるドア13の裏面側に取り付けられた可動軸48a、スライドロッド46のロッド48及びシリンダ47、外壁11に支持された連結軸47a、そしてドア13の開放位置における連結軸47a及びシリンダ47の各一部が収まるための凹部50が外壁11に形成されている。これにより、スライドロッド46の可動範囲を広げることができる。
【0035】
本実施形態によるホイールローダ1のスライドロッド式ドア開閉機構45は上述の構成を備えているから、図7において、オペレータが閉鎖状態にある運転室10のドア13を開放する場合、例えばスペース8上において、取っ手14を把持してドア13を右方向にスライド移動させる。
すると、ドア13は閉鎖位置からドア13の前側上下端部に設けたガイド機構15,16のガイドローラ部27、35におけるローラ26、34が、上下部に設けたガイド溝19,28内のガイドレール22、31に沿ってスライドして開放移動を行う。
【0036】
ドア13を前端(左側)から後端(右側)側へ移動させると、図8に示すように、外壁11に対して傾斜した凹部50に配設されたスライドロッド46が起きあがる。すると、ドア13の後端に可動軸48aで連結されたロッド48はシリンダ47から突出した状態から、弾性部材の付勢力によりシリンダ47内に押し込まれて全長を短縮させながら連結軸47aを中心としてシリンダ47が回転運動する。
そして、ドア13が最も外側に突出する位置は連結軸47a付近でスライドロッド46のロッド48がシリンダ47内に収納された最も短縮された長さ位置となる。
次いで、ドア13の後端の可動軸48aがスライドロッド46によって連結軸47aを中心に略180度回転して出入口12とは反対側の凹部50に到達して停止する。このとき、スライドロッド46はロッド48がシリンダ47内に収容された最も短い長さに保持される。そのため、ドア13は前端側が略直線移動しながら且つ後端側のスライドロッド46が長さを縮めながら、180度回転してスライドロッド46と重なって停止する(図8参照)。
【0037】
次に、ドア13を開放状態から閉鎖作動する場合には、上述の開放作動とは逆に、開放状態にあるドア13の取っ手14を前端側に押すことで、ドア13は前端上下のローラ26,34がガイドレール22,31に沿って直線的にスライド移動すると共に、ドア13の後端はスライドロッド46の連結軸37aを中心にした回転作動によりドア13の後端が最も突出した位置を超えた時点から、徐々にロッド48がシリンダ47から突出しながら回転運動する。
これにより、ドア13は出入口12を閉鎖させた位置に戻る。その際、ドア13の前端側はローラ22、34がガイドレール22,31に沿ってスライド移動するから、オペレータ等の作業者がステージ8上に立っていてもドア13の開閉時に干渉するおそれはない。
【0038】
上述のように、本第二実施形態によるスライドロッド式開閉機構によれば、ドア13の開け始め及び閉め終わりの領域で、ドア13はほぼ前後方向にスライドすることになり、しかも、ドア13が最も径方向外側に突出する連結軸47a付近の領域ではロッド48がシリンダ47内に収容された最も短いほぼシリンダ47の長さで回動するから、ドア13の突出量を第一実施形態のリンク式開閉機構17より小さくすることができる。
そのため、ドア13を開放作動する際、作業者が出入口12の前のスペース8に立っていても、ドア13の前端はスライド移動するから作業者に干渉することなく占有スペースが小さくて済み、容易且つスムーズに開閉作動できる。
【0039】
なお、第二実施形態によるスライドロッド式ドア開閉機構45の変形例として、ドア13が開放された位置で、スライドロッド46におけるロッド48がシリンダ47から突出する位置にあってもよい。この場合には、ドア13の開放及び閉鎖位置におけるスライドロッド46の長さの比はLa:Lb=2:2になる。しかも、ドア13の開閉時にスライドロッド46を180度回転させる際、径方向に最も突出する位置ではスライドロッド46の長さはロッド48がシリンダ47内に収縮したシリンダ47長さになる。
なお、スライドロッド46は、ドア13の閉鎖状態にロッド48がシリンダ47内に収容され、開放状態でロッド48がシリンダ47から突出した状態、即ちLa:Lb=1:2の状態となるように構成してもよい。
【0040】
なお、ガイド機構15,16とガイドローラ部27,35は出入口12の上下に設けなくてもよく、少なくともいずれか一方に設ける構成でもよい。
また、本発明はホイールローダ1に限定されることなく、油圧ショベル等、各種の建設機械をふくむ作業機に適用できることはいうまでもない。
リンク式ドア開閉機構17とスライドロッド式ドア開閉機構45はドア開閉機構を構成する。そして、リンク式ドア開閉機構17におけるリンク37と、スライドロッド式ドア開閉機構45におけるシリンダ47及びロッド48からなるスライドロッド46とは接続部材を構成する。
なお、ガイドローラ部27,35について、アーム部25,33を直接ドア13に連結することなく、ボルト等で他の部材を相対回転可能に介在させて連結してもよい。この場合には、ガイドレール22,31の湾曲やドア13の開閉移動位置に応じてアーム部25,33と他の部材との相対角度を調整でき、ドア13の開閉がよりスムーズになる。
【符号の説明】
【0041】
1 ホイールローダ
10 運転室
11 外壁
12 出入口
13 ドア
15、16 ガイド機構
19、28 ガイド溝
17 リンク式ドア開閉機構
22、31 ガイドレール
27,35 ガイドローラ部
26、34 ローラ
37 リンク
37a、47a 連結軸
37b、48a 可動軸
40 リンクロッド
42、50 凹部
45 スライドロッド式ドア開閉機構
46 スライドロッド
47 シリンダ
48 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室に設けた出入口の上側及び下側の少なくともいずれかに位置するガイドレールに沿ってスライドさせてドアを開閉させる支持構造を備えた作業機のドア開閉機構において、
運転室の出入口に隣接する外壁に一端の連結軸を取り付けると共に他端の可動軸をドアに取り付けた接続部材を備え、接続部材はドアの閉鎖位置と開放位置とで連結軸を中心にして可動軸が反対側に位置するように回動可能としたことを特徴とするドア開閉機構。
【請求項2】
運転室の外壁には接続部材を収容可能な凹部が形成されている請求項1に記載されたドア開閉機構。
【請求項3】
接続部材の連結軸は、ドアの閉鎖位置における可動軸と開放位置における可動軸との中間位置で外壁に取り付けられている請求項1または2に記載されたドア開閉機構。
【請求項4】
接続部材はリンク部材である請求項1または2に記載されたドア開閉機構。
【請求項5】
接続部材は、シリンダ部とシリンダ部から進退可能なロッド部とを備えたスライドロッドであり、ドアの閉鎖位置と開放位置の少なくとも一方でシリンダ部からロッド部が突出して伸張していることを特徴とする請求項1または2に記載されたドア開閉機構。
【請求項6】
スライドロッドは、連結軸からドアの閉鎖位置における可動軸までの距離が開放位置における可動軸までの距離の2倍に設定されている請求項5に記載されたドア開閉機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−35764(P2012−35764A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177777(P2010−177777)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】