説明

作業機のボンネット構造

【課題】開き支持具の取付対象としてボンネット後端を選択して、開き支持具を取り付けるブラケットを固定した後に、バフ研磨等を必要とせず、作業能率を向上させることのできる作業機のボンネット取付構造を提供する。
【解決手段】ボンネット44の後端に、ボンネット44の内部空間に向けて内向きに折り曲げ形成された折り曲げ縁部44Aを形成する。ボンネット44後端の内面に取付用ステー15を配置してその取付用ステー15を折り曲げ縁部44Aに固着する。取付用ステー15に、ボンネット44を機体に開閉自在に支持するボンネット開閉用ブラケット16と、ボンネット44の開状態を維持する開き支持具18を取り付ける開き支持具用ブラケット17とを取付ける。開き支持具用ブラケット17をボンネット44の前方側に延出して、その延出端部に開き支持具18を取付てある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉自在なボンネットを開き状態に維持する開き支持具を設けている作業機のボンネット取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンネットは、左右の横ボンネットと前ボンネットとを機体に取付け、上ボンネットを、後端枢支点を中心に機体に揺動開放自在に取付けて、構成してあった。
上ボンネットを開き状態に維持するのに、上ボンネットの天井面にブラケットを取付け、このブラケットに上ボンネットの開き状態を維持する開き支持具の基端部を揺動自在に取付け、開き支持具の先端部に鉤フック部を形成して、エンジンに取り付けたブラケットから延出される開き支持具用ブラケットに鉤フック部を係止して、開き状態を維持する構成を採っていた(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−48264号公報(段落番号〔0033〕、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の場合には、上ボンネットの天井面の内面側に、開き支持具の取付用ブラケットを取り付けてある。その取付状態は溶接固定する方法を採らざるを得ないところから、上ボンネットのブラケット取付部位には溶接歪が発生し易い。そうすると、溶接後にバフ研磨や歪取り作業を必要とし、作業工程が増大し、作業能率の低下を招来していた。
【0005】
本発明の目的は、開き支持具の取付対象としてボンネット後端を選択して、開き支持具を取り付けるブラケットを固定した後に、バフ研磨等を必要とせず、作業能率を向上させることのできる作業機のボンネット取付構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、ボンネット後端に、ボンネットの内部空間に向けて内向きに折り曲げ形成された折り曲げ縁部を形成し、前記ボンネット後端の内面に取付用ステーを配置してその取付用ステーを前記折り曲げ縁部に固着し、前記取付用ステーに、前記ボンネットを機体に開閉自在に支持するボンネット開閉用ブラケットと、前記ボンネットの開状態を維持する開き支持具を取り付ける開き支持具用ブラケットとを取付け、前記開き支持具用ブラケットを前記ボンネットの前方側に延出して、その延出端部に前記開き支持具を取付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
開き支持具を取り付ける対象として取付用ステーを選択し、その取付用ステーをボンネット後端に形成してある折り曲げ縁部に固定した。
折り曲げ縁部は、ボンネットの天井面に比べて十分な強度を備えているので(折れ曲がりによるリブ効果及び加工効果等)、溶接歪みが発生し難く、かつ、仮に溶接歪みが発生したとしても、所定位置にボンネットを閉じ状態で装着した場合には、その溶接歪みが表に現れない部分である。したがって、その折り曲げ縁部に取付用ステーを固定することによって、折り曲げ縁部に対してバフ研磨や歪取りといった煩雑な作業を少なくできる。
また、取付用ステーには、ボンネット開閉用ブラケットと開き支持具用ブラケットとを設けてあるので、取付用ステーをボンネットに取付固定するだけで、開き支持具用ブラケットをもボンネットに取り付けることができ、ボンネット開閉用ブラケットと開き支持具用ブラケットとを別個にボンネットに取り付ける場合に比べて取付固定工程の簡素化を図ることができる。
【0008】
〔効果〕
以上のように、バフ研磨や歪取りといった仕上げ作業やブラケットの取付工程の簡素化を図ることができ、作業能率の向上を図ることができる。
【0009】
〔構成〕
本第2発明は、第1発明の構成において、前記開き支持具用ブラケットの上面と前記ボンネットの天井面との間に間隙を設けて、前記開き支持具用ブラケットを前記取付用ステーに取り付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
例えば、開き支持具用ブラケットとボンネットの天井面との間に間隙が設けられていない場合には、ボンネットが開き状態にある場合に、誤って無理に閉じ側に操作しようとすると、ボンネットの天井面が開き支持具用ブラケットの延出端と開き支持具の突っ張り作用とによって突き上げられるような力を受けることとなり、ボンネットの天井面における開き支持具用ブラケットの延出端に対応する部分が突出する形状を呈することとなる。
これに対して、開き支持具用ブラケットとボンネットの天井面との間に間隙を設けることによって、誤ってボンネットを閉じ姿勢に切換えようとして押し下げた場合に、ボンネットの天井面が開き支持具用ブラケットの延出端に当接するまでに融通があるので、直接、その延出端がボンネットの天井面を突き上げる力を緩和でき、ボンネットの天井面の一部が突出することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の実施例に係るトラクタは、左右一対の操向操作および駆動自在な前輪1,1と、左右一対の駆動自在な後輪2,2と、車体前部に設けたエンジン3及び燃料タンク25と、ステアリングホィール4および運転座席5が装備された運転部6と、運転座席5の後側近くに位置したロプスフレーム7とを有した自走車体を備え、かつ、自走車体の車体フレームの後部を構成するミッションケース9に支持されたリンク機構10と、前記ミッションケース9の後部に設けた動力取り出し軸11とを備えている。リンク機構10は、ミッションケース9の上部の両横側に上下に揺動操作自在に支持されたリフトアーム12と、ミッションケース9の下部の両横側に上下揺動自在に支持されたロワーリンク13と、左右のリフトアーム12と左右のロワーリンク13とを連結する左右のリフトロッド14とを備えている。
このトラクタは、車体後部に前記リンク機構10によってロータリ耕耘装置(図示せず)を昇降操作自在に連結し、動力を動力取り出し軸11からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して乗用型耕耘機を構成するなど、車体後部に各種の作業装置を昇降操作および駆動自在に連結して、各種の乗用型作業機を構成する。
【0012】
ボンネット41は、左右一対の横ボンネット42、両横ボンネット42,42の前方に位置するフロントグリル43、前記横ボンネット42やフロントグリル43の上方に位置する上ボンネット44を備えて構成してある。
【0013】
上ボンネット44は、図3に示すように、後記する防熱板26の前面に取り付けた受華ブラケットに揺動自在に支持されており、横ボンネット42やフロントグリル43から上方に離間して上方を開放するように開き状態になる。その開き状態より、図2に示すように、下降側に揺動操作すると、上ボンネット44は、横ボンネット42やフロントグリル43の上端付近まで下降してエンジン3の上方を覆う閉じ状態になる。
【0014】
図1〜図3に示すように、ボンネット41の後方に車体前後方向視で門形の連結フレーム45を立設するとともに、連結フレーム45の内部空間内からハンドルポスト内に掛けて燃料タンク25を配置し、その燃料タンク25とエンジン3との間で、連結フレーム45の前面から中間部位に掛けて、防熱板26を配置してある。
【0015】
連結フレーム45には燃料タンク25の給油口を臨ませる開口を設けてある。このように、給油口を臨ませる開口を、上ボンネット44の天井面に比べて強度の高い連結フレーム45に設定してあるので、上ボンネット44の強度低下を抑制できる。図2及び図3における符号25Aは、燃料タンク25の給油口に取付けてある給油栓である。
【0016】
上ボンネット44を閉じた場合、図2の如く上ボンネット44の前端側の内部に設けた閉じフック46により上ボンネット44を閉じ状態にロックする。閉じフック46は上ボンネット44の左右の側板部分に渡って架設したステー47に支持される。
【0017】
上ボンネット44の開閉支持構造について説明する。図2〜図4に示すように、上ボンネット44の後端に、ボンネット内部空間に向けて内向きに折り曲げ形成された折り曲げ縁部44Aを形成する。つまり、上ボンネット44の後端に、下向きの折り曲げ縁部44Aと、互いに対向する左右向きの折り曲げ縁部44Aを形成して、上ボンネット44の補強を行っている。
【0018】
上ボンネット44の後端の内面に取付用ステー15を配置し、取付用ステー15の後端面を折り曲げ縁部44Aに溶接固定してある。つまり、図3〜図5に示すように、取付用ステー15は、帯板材をボンネット44の後端の内面に沿った状態でアーチ状に折り曲げたものであり、帯板材の後端面を折り曲げ縁部44Aの内側に十分近接させた状態で、帯板材の長手方向における複数箇所において隅肉溶接を施して取り付けてある。
このように、折り曲げ縁部44Aに取付用ステー15を溶接固定することとしたので、後記する開き支持具18を取り付けるための開き支持具用ブラケット17を固定した後に、バフ研磨等を必要とせず、開き支持具18を取り付けるためのボンネット44側の補強等が不要になって、作業能率を向上させることのできる作業機のボンネット取付構造を提供する。
【0019】
取付用ステー15には、上ボンネット44を機体としての連結フレーム45に開閉自在に支持する左右一対のボンネット開閉用ブラケット16と、上ボンネット44の開状態を維持する開き支持具18を取り付ける開き支持具用ブラケット17とを取付てある。一方、防熱板26の前面に取り付けた受けブラケット24と取付用ステー15に取り付けられたボンネット開閉用ブラケット16とが相対揺動可能に連結されて、上ボンネット44が横軸芯周りで上下揺動可能に取付構成してある。
【0020】
図2〜図4に示すように、取付用ステー15の左右二箇所に設けてあるボンネット開閉用ブラケット16の間に、開き支持具用ブラケット17を取付固定してある。開き支持具用ブラケット17は、内部空間を下向きに開放した状態で取付用ステー15に取り付けてあるチャンネル部材であり、後端部を取付用ステー15に取り付けた状態で機体前方側に向けて片持ち状に延出されている。
ボンネット開閉用ブラケット17の取付用ステー15から前方に延出されている部分は、上ボンネット44の天井面と間隙aを設けた状態で設置されている。
【0021】
開き支持具用ブラケット17の前端には、開き支持具18が揺動自在に取り付けてある。開き支持具18は、単一のロッド部材で構成されており、上端部18Aは横向きに屈曲形成されている。開き支持具18は、開き支持具用ブラケット17に横向きに差込み装着されて、その上端部18Aの横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持されている。
【0022】
開き支持具18の先端部には、鉤フック部18Bが設けてあり、鉤フック部18Bは、上ボンネット44が開き状態を維持する際に機能する。開き支持具用ブラケット17に差し込み装着された上端部18Aには、巻きバネ19が装着してあり、開き支持具18が上向きに付勢されている。
【0023】
一方、図2〜図4に示すように、エンジン3の上端部には開き支持具18の先端部における鉤フック部18Bを受け止める支持ブラケット20を立設してある。支持ブラケット20は、エンジン3の上端部に取り付けてあるエアークリーナ用ブラケット21に取付固定してあり、エアークリーナー22に沿って立設してある。エアークリーナ22は、エアクリーナ用ブラケット21に取付固定した板バネ支持具23に装着されて支持されている。
【0024】
支持ブラケット20には、その支持ブラケット20の上端部に貫通孔20Aを設けてあり、貫通孔20Aは上下に長い長孔を呈している。この貫通孔20Aに開き支持具18の鉤フック部18Bを係止し、かつ、鉤フック部18Bの係止状態を解除して鉤フック部18Bを、貫通孔20Aを貫通させて前方側に突出すべく構成してある。
【0025】
つまり、図3に示すように、鉤フック部18Bは、貫通孔20Aを貫通するだけの大きさに形成されており、その鉤フック部18Bを貫通孔20Aの縁部に係止することによって、開き支持具18が上ボンネット44を開き状態に支持する。
上ボンネット44を閉じ状態に切換えるには、図2に示すように、鉤フック部18Bを縁部から取り外し、取り外した鉤フック部18Bを貫通孔20Aの下方に突出させて、ロッド部分をスライド移動自在に貫通孔20Aに支持することで、上ボンネット44を閉じ状態に切換えることができる。
【0026】
〔別実施の形態〕
(1)開き支持具18としては、ロッド部材の両端部を成形したものを使用したが、ロッド部材ではなく板材等を使用してもよい。
【0027】
(2)開き支持具18として、先端部に鉤フック部18Bを形成して、その鉤フック部18Bを支持ブラケット20に係止して、開き支持具18で上ボンネット44を開き状態に維持し、鉤フック部18Bを支持ブラケット20から取り外し、ロッド部分を貫通させることによって上ボンネット44を閉じ状態に切換える構成を採った。これに対して、開き支持具18として、上端部を開き支持具用ブラケット17に連結し、先端部を支持ブラケット20に連結し、中間部に折れ曲がり部を有する、折れ曲がりリンクに形成してもよい。
【0028】
(3)開き支持具用ブラケット17を取り付けるに、取付用ステー15を介して上ボンネット44に取り付ける構成を採ったが、直接、開き支持具用ブラケット17を上ボンネット44の折り曲げ縁部に取り付け固定する構成を採ってもよい。
【0029】
(4)ボンネット41の構成として、上ボンネット44のみが開放揺動自在に構成してあるが、ボンネット41の全体が揺動開放するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】ボンネットの閉じ状態を示す縦断側面図
【図3】ボンネットの開き状態を示す縦断側面図
【図4】開き支持具の上端、下端の連結支持状態を示す背面図
【図5】取付用ステーをボンネット後端の折り曲げ縁部に溶接固定した状態を示す縦断側面
【符号の説明】
【0031】
15 取付用ステー
16 ボンネット開閉用ブラケット
17 開き支持具用ブラケット
18 開き支持具
18A 上端部
18B 鉤フック部
19 巻きバネ
20 支持ブラケット
20A 貫通孔
21 エアクリーナ用ブラケット
22 エアクリーナ
23 板バネ支持具
41 ボンネット
42 横ボンネット
43 フロントグリル
44 上ボンネット
44A 折り曲げ縁部
45 連結フレーム
46 閉じフック
47 ステー
a 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネット後端に、ボンネットの内部空間に向けて内向きに折り曲げ形成された折り曲げ縁部を形成し、前記ボンネット後端の内面に取付用ステーを配置してその取付用ステーを前記折り曲げ縁部に固着し、前記取付用ステーに、前記ボンネットを機体に開閉自在に支持するボンネット開閉用ブラケットと、前記ボンネットの開状態を維持する開き支持具を取り付ける開き支持具用ブラケットとを取付け、前記開き支持具用ブラケットを前記ボンネットの前方側に延出して、その延出端部に前記開き支持具を取付てある作業機のボンネット取付構造。
【請求項2】
前記開き支持具用ブラケットの上面と前記ボンネットの天井面との間に間隙を設けて、前記開き支持具用ブラケットを前記取付用ステーに取り付けてある請求項1記載の作業機のボンネット取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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